以下、本開示を詳細に説明する。本開示は、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位(B)及び上記構造式(1)に由来する構成単位(C)を有する共重合体である。
上記構成単位(A)のみを単独で使用した単独重合体よりも、構成単位(B)との共重合体は屈折率が小さいものとなる。よって、低屈折率の樹脂を得るためには、これらを併用することが好ましい。構成単位(A)及び構成単位(B)のみの共重合体の場合は、透明性が悪化しやすい。このため、更に、構成単位(C)を所定の割合で併用することによって、低屈折率を有し、同時に透明性にも優れる樹脂とすることができる。また、本開示の樹脂組成物は、溶融成形可能な樹脂であることから、溶融成形の分野において好適に使用することができる。さらに、各種のコーティング材の分野においても好適に使用することができる。
(構成単位(A))1,2-ジフルオロエチレンは、公知化合物であるが、従来は、主に冷媒としての使用について検討されており、重合単量体としての検討はほとんど行われていない。
上記1,2-ジフルオロエチレンは、トランス体(E体)とシス体(Z体)とが存在する。
よって、トランス体のみを原料として使用した場合、シス体のみを原料として使用した場合、これらの混合物を原料として使用した場合とで、その立体配置に相違を生じる。本開示の重合体は、これらのいずれであってもよい。また、これらの任意の割合の混合物であってもよい。
上記1,2-ジフルオロエチレンは、その他の単量体と一般的な方法で共重合体を得ることができる。さらに、その共重合割合も容易に変化させることができる。したがって、本願発明の特定の単量体割合である重合体を容易に得ることができる。
なお、上述した非特許文献1においては、上記一般式(10)で表される単量体又はこれを含有する単量体組成物を原料として使用した重合反応によって重合体を得ることが開示されている。しかし、当該非特許文献1中においては、構成単位(B)を有する重合体については、開示されていない。
また、非特許文献1では、純度が高い単量体を得ることができない。したがって、本開示と同様の重合体を得ることができない。本発明者らの検討によると、非特許文献1における合成方法によって一般式(10)で表される化合物を合成すると、フッ化ビニリデン等の各種不純物が発生する。更に、非特許文献1においては、前駆体の純度が90%であることから、このような前駆体中の不純物に由来する成分も発生する。非特許文献1においては、ドライアイストラップ(-78℃)で不純物を除去する旨の記載が存在する。しかし、このような方法では、高沸点化合物は除去することができない。上述したように、非特許文献1においては、重合体のガラス転移温度が50℃程度である旨の記載が存在していることも考慮すれば、非特許文献1においては、高純度のモノマーを得ることができていない。
本開示の重合体は、特定の樹脂組成に由来する各種効果が期待されるものであることから、本開示においては、単量体として純度が99.5質量%以上(より好ましくは、99.8質量%以上、最も好ましくは、99.9質量%以上)である1,2-ジフルオロエチレンで表される化合物を原料として使用して、得られたものであることが好ましい。
(構成単位(B))本開示の重合体は、更に、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位(B)を有するものである。このような構成単位を有することで、本開示の特定の効果を奏する重合体とすることができる。
(構成単位(C))本開示の重合体は、下記構造式(1)に由来する構成単位(C)を特定の割合で有するものである。このような重合体は、低屈折率であり、適度な結晶性を維持することで耐熱性を有するものである。さらに、良好な透明性を有する樹脂とすることもできる。
上記構成単位(C)は、
(R
1は、水素、フッ素、一部若しくは全部がフッ素化された炭素数5以下の炭化水素基、又は、OR
5基(R
5基は、一部若しくは全部がフッ素化された炭素数5以下の炭化水素基。R
2,R
3,R
4は、それぞれ独立し水素又はフッ素である)である。なお、上記構成単位(C)は、構成単位(B)と相違するものであり、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位は、構成単位(C)に包含されない。
上記一般式(1)で表される構造単位としては、水素原子の少なくとも1つがフッ素で置換されていてもよいエチレン性単量体に由来する構造、水素原子の少なくとも1つがフッ素で置換されていてもよいプロピレン性単量体に由来する構造単位、水素原子の少なくとも1つがフッ素で置換されていてもよいブテン性単量体に由来する構造単位、水素原子の少なくとも1つがフッ素で置換されていてもよいペンテン性単量体に由来する構造単位等を挙げることができる。本開示の含フッ素重合体は、構成単位(C)に該当する2種以上の共重合構造単位を併用するものであってもよい。上記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(2)~(6)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1の構造単位であることが好ましい。
構成単位(C)は、更には、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z体)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E体)及びパーフルオロメチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造であることが特に好ましい。これらの単量体は、一般的に知られたものであるから、安価で入手が容易であり、かつ、本開示の目的を好適に達成することができる。
本開示の重合体は、構成単位(A)と構成単位(B)の共重合比が10/90~85/15モル%である。このような範囲内であることで、低屈折率の樹脂が得られる点で好ましい。構成単位(A)(B)のいずれかが多すぎる場合には、充分な低屈折率を得ることができない点で好ましくない。上記共重合比は、15/85~85/15モル%であることがより好ましく、15/85~82/18モル%であることがより好ましい。
本開示の重合体は、構成単位(C)が樹脂全量に対して0.1~30モル%である。このような割合で構成単位(C)を含むことで、結晶性を維持した状態で、透明性を向上させることができるという点で好ましい。また、構成単位(C)が30モル%を超えると、樹脂の結晶性が低下して、非晶樹脂あるいはエラストマーとなりやすく、比較的温度の高い雰囲気下で成型体を維持できない点で好ましくない。上記構成単位(C)の含有量の上限は、30モル%であることがより好ましく、27モル%であることが最も好ましい。
構成単位(C)が0.1モル%未満であると、低屈折率と透明性を両立することが困難である点で好ましくない。上記構成単位(C)の含有量の下限は、1.0モル%であることがより好ましく、4.0モル%であることが最も好ましい。
本開示の重合体は、本開示の効果を損なわない範囲で、上述した構成単位(A)~(C)以外の構成単位を有するものであっても差し支えないし、上記構成単位(A)~(C)のみからなるものであってもよい。なお、構成単位(A)~(C)以外の構成単位の使用量は特に限定されるものではないが、重合体全量に対して20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが最も好ましい。
本開示の重合体は、屈折率が1.320~1.380であることが好ましい。すなわち、低屈折率の重合体とすることが好ましい。このような屈折率を満たす重合体は、光学用途等、低屈折率が求められる用途において好適に使用することができる。本開示の重合体は、モノマーの配合比等を調整することで、上述した範囲の屈折率とすることができる。
上記屈折率の下限は、1.320であることがより好ましく、1.328であることが最も好ましい。上記屈折率の上限は、1.380であることがより好ましく、1.378であることが最も好ましい。
本開示の重合体は、0.5mm厚さのプレスシートを形成した場合、全光線透過率80%以上且つ、ヘイズ値が45%以下であることが好ましい。すなわち、本開示の重合体は、光透過性に優れ、かつ、ヘイズ値も小さいことから、透明性が優れた重合体とすることができる。このような屈折率を満たす重合体は、光学用途等、透明性が求められる用途において好適に使用することができる。本開示の重合体は、その樹脂組成を調整することで、上述した範囲内のものとすることができる。
上記「0.5mm厚さのプレスシートの形成」は、共重合体の粉体を共重合体の融点よりも20~40℃高い温度で圧縮成形し、厚み0.5mmのシート状の成形品を得ることによって行った。
上記方法で得た厚さ0.5mmのプレスシートについて、全光線透過
率測定は、JIS K7361-1、ヘイズの測定はK7136にそれぞれ従って測定した。測定器は、HAZE Meter NDH7000SP(日本電色工業株式会社製)を用いた。
本開示の重合体は、屈折率、全光線透過率、ヘイズ値のすべてにおいて、上述した範囲内のものであることがより好ましい。すなわち、低屈折率であり、かつ、透明性にも優れる重合体であることが好ましい。このような重合体は、光学用途において、特に好適に使用することができる点で好ましいものである。
本開示の重合体は、融点が100℃以上であることが好ましい。すなわち、融点が存在するような結晶性の樹脂であり、かつ、その融点が100℃以上であることが好ましい。融点が100℃以上であることで、耐熱性に優れた樹脂とすることができる点で好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計を用い、ASTM D4591に準拠して測定することができる。具体的には、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、昇温速度10℃/分にて共重合体の熱測定を行い、得られる吸熱曲線のピークにあたる温度を融点とすることができる。
本開示の重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の任意の一般的な重合方法によって行うことができる。これらの重合において使用する溶媒、乳化剤、開始剤なども特に限定されず、一般的な公知のものを使用することができる。
(重合方法)
本開示の重合体は、上記構成単位(A)~(C)の由来となる単量体を共重合することで得ることができる。
構成単位(A)は、
で表される単量体に基づくものである。上記一般式(10)で表される化合物は公知化合物であり、例えば、特許文献1に記載した方法によって製造することができる。
上記一般式(10)で表される化合物は、純度が99.5質量%以上であるものを使用して重合を行うことが好ましい。純度が99.8質量%以上がより好ましく、純度が99.9質量%以上がさらに好ましい。純度が99.9質量%以上である一般式(10)で表される化合物は、その製造方法を特に限定されるものではなく、例えば、分取ガスクロマトグラフィ、多段階式の精留によって行う方法等を挙げることができる。
不純物を多く含有する一般式(10)で表される単量体を使用すると、共重合成分が共重合体に取り込まれにくくなり、これによって所望の樹脂が得られなくなるという問題もある。具体的には、例えば、ヘキサフロロプロピレンとの共重合を行う場合、非特許文献1においては、ほとんどヘキサフロロプロピレン単位は重合体中に取り込まれないとされている。しかし、本発明者らが行った実験によると、純度が高い単量体を原料として使用すると、ヘキサフロロプロピレンと一般式(10)で表される単量体の共重合体を得ることができる。
このように、純度が高い単量体を使用することで、純度が低い単量体を使用した場合と比較して共重合の傾向が相違することが明らかとなった。これによって、非特許文献1とは相違する新たな組成の重合体を得ることができる。
本開示の重合体は、重合開始剤剤の存在下に、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン及び構造単位(C)を、各単量単位が上述した含有量の範囲内となるように、共重合することにより製造することが出来る。
共重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等であってよいが、工業的に実施が容易である点で、乳化重合または懸濁重合、溶液重合が好ましく、溶液重合及び懸濁重合がより好ましい。
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できるが、油溶性ラジカル重合開始剤が好ましい。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、 ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類; t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類; ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類; ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;などが代表的なものとしてあげられる。
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、[(RfCOO)-]2(Rfは、パーフルオロアルキル基、ω-ハイドロパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基)で表されるジアシルパーオキサイドが挙げられる。
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、たとえば、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロプロピオニル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイドなどの有機過酸化物、t-ブチルパーマレート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱を除熱出来る範囲である。
上記の共重合においては、界面活性剤、親水性化合物、連鎖移動剤、および、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、たとえば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用でき、パーフルオロヘキサン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸アンモニウムなどの炭素数4~20の直鎖または分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)。添加量(対重合水)は、好ましくは10ppm~20質量%であり、より好ましくは10~5000ppmであり、さらに好ましくは50~5000ppmである。 また、界面活性剤として反応性乳化剤を使用することができる。反応性乳化剤は、不飽和結合と親水基とをそれぞれ1つ以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4、CH2=CFCF2CF(CF3)OCF2CF2COONH4、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF(CF3)COONH4があげられる。添加量(対重合水)は、好ましくは10~5000ppmである。より好ましくは、50~5000ppmである。
親水性化合物としては、公知の不飽和親水性化合物及び公知の不飽和親水性化合物を重合することによって得られた親水性ポリマーが使用できる。添加量(対重合水)は、好ましくは10~5000ppmである。より好ましくは、50~5000ppmである。
連鎖移動剤としては、たとえば、エタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル、モノヨードメタン、1-ヨードエタン、1-ヨード-n-プロパン、1-ヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1-ヨード-パーフルオロブタン、1-ヨード-パーフルオロペンタン、1-ヨード-パーフルオロヘキサン、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。連鎖移動剤の添加量は、用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01~20質量%の範囲で使用される。
溶媒としては、水や、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
溶液重合では、フッ素系溶媒、懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CH3CClF2、CH3CCl2F、CF3CF2CCl2H、CF2ClCF2CFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CF2ClCFClCF2CF3、CF3CFClCFClCF3等のクロロフルオロアルカン類;CF3CFHCFHCF2CF2CF3、CF2HCF2CF2CF2CF2H、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2H等のハイドロフルオロアルカン類;CH3OC2F5、CH3OC3F7CF3CF2CH2OCHF2、CF3CHFCF2OCH3、CHF2CF2OCH2F、(CF3)2CHCF2OCH3、CF3CF2CH2OCH2CHF2、CF3CHFCF2OCH2CF3等のハイドロフルオロエーテル類;パーフルオロシクロブタン、CF3CF2CF2CF3、CF3CF2CF2CF2CF3、CF3CF2CF2CF2CF2CF3等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類、ハイドロフルオロエー
テル類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性および経済性の面から、水性媒体に対して10~100質量%が好ましい。
重合温度、重合圧力は、用いる溶媒の種類、量および蒸気圧や重合開始剤の種類によって異なるが、-15~150℃、0~9.8MPa、1~24時間であってよい。特に、溶液重合において重合開始剤としてフッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が-15~70℃であることが好ましく、10~65℃であることがより好ましい。乳化重合および懸濁重合においてフッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が10~95℃であることが好ましい。重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が10~95℃であることが好ましい。
重合後の処理も任意の一般的な方法によって行うことができ、必要に応じて、得られた重合体を汎用溶媒に溶解して、樹脂溶液とすることができる。
本開示の含フッ素樹脂は、フィルム、シート、チューブ、ホース、シール材、電線被覆材、光ファイバーケーブル又は溶融紡糸された繊維等の成形品材料として使用することができる。このような成形品も本開示の一つである。また、コーティング材料として使用することもできる。
このような成形品とする場合において、成形用材料を樹脂成形体に成形する方法は特に限定されず、一般的な成形方法、例えばモールド成形、押出成形、射出成形、ラム押出し、プレス成形、真空成形、トランスファ成形、ブロー成形、ナノインプリント、溶融紡糸等を用いることができる。また、本開示の成形用材料は、溶媒に溶解または分散、具体的には溶解させることにより、キャスト成形等のコーティング方法を用いた成形に用いることができる。成形用材料を樹脂成形体に成形する方法は、押出成形、モールド成形(特に、金型に入れてホットプレスによるモールド成形)、あるいは、射出成形、ラム押出し成形が好ましい。
このようにして得られた樹脂成型体の具体的な用途として、光学材料、建材、半導体関連材料、ディスプレイ関連材料、自動車材料、船舶材料、航空機材料、発電関連材料、積層体、コート剤、生活レジャー用品等の分野において好適に使用することができる。
上記光学材料としては、例えば、光学部品、眼鏡レンズ、光学レンズ、光学セル、DVD用ディスク、フォトダイオード、反射防止材料、マイクロレンズアレイ等が挙げられる。
上記建材としては、例えば、例えばショーウインドウ、ショーケースや、膜構造建築物(運動施設、園芸施設、アトリウム等)の膜材、屋根材、天井材、外壁材、内壁材、被覆材等があげられる。また、膜構造建築物の膜材だけではなく、例えば、屋外使用板材として、防音壁、防風フェンス、越波柵、車庫天蓋、ショッピングモール、歩行路壁、ガラス飛散防止フィルム、耐熱・耐水シート、テント倉庫のテント材、日よけ用膜材、明かり取り用の部分屋根材、ガラスに替わる窓材、ガラス代替等の開口部材、炎仕切り用膜材、カーテン、外壁補強、防水膜、防煙膜、不燃透明仕切り、道路補強、インテリア(照明、壁面、ブランド等)、エクステリア(テント、看板等)、規模温室、膜材(屋根材、天井材、外壁材、内壁材等)を挙げることができる。
上記電子材料としては、プリント配線基板、セラミック配線基板などの配線基板、電子材料(プリント基板、配線基板、絶縁膜、離型膜等)、フィルムコンデンサー、電子・電気部品、家電外装、精密機械部品等を挙げることができる。
上記半導体関連材料としては、半導体素子の保護膜(たとえば、層間絶縁膜、バッファーコート膜、パッシベーション膜、α線遮蔽膜、素子封止材、高密度実装基板用層間絶縁膜、高周波素子用防湿膜(たとえば、RF回路素子、GaAs素子、InP素子等の防湿膜。)、ペリクル膜、フォトリソグラフィー、バイオチップ等を挙げることができる。
上記ディスプレイ関連材料としては、ディスプレイ、タッチパネル、各種ディスプレイ(たとえば、PDP、LCD、FED、有機EL、プロジェクションTV。)等の表面保護膜、エレクトロウェッティング用の表面、画像形成物品等を挙げることができる。上記自動車材料としては、幌、制振材、ボディ等を挙げることができる。
上記発電関連材料としては、太陽電池、固体高分子形燃料電池用の電解質材料の中間体、静電誘導型変換素子(例えば、振動型発電機、アクチュエータ、センサ等)、発電装置、マイクロフォン等の静電誘導型変換素子に用いられるエレクトレット、太陽電池モジュールの表面材料、太陽熱発電用のミラー保護材、ソーラー温水器の表面材等、光起電力技術等を挙げることができる。上記積層体としては、ポリイミド等の熱可塑性樹脂と積層したフィルムを挙げることができる。
コート剤としては、撥水コート、離型剤、低反射コート、防汚コート、非粘着コート、防水・防湿コート、絶縁膜、耐薬品コート、エッチング保護膜、低屈折率膜、撥インクコート、ガスバリア膜、パターン化された機能膜、ディスプレイ用カラーフィルターの表面保護膜、太陽電池カバーガラス用防汚・反射防止膜、潮解性結晶やリン酸系ガラスの防湿・反射防止コート、位相シフトマスク、フォトマスクの表面保護・防汚コート、液浸リソグラフィ用フォトレジストの撥液コート、コンタクトリソマスクの離型コート、ナノインプリントモールドの離型コート、半導体素子や集積回路のパッシベーション膜、回路基板やLED等発光素子の銀電極のガスバリア膜、液晶表示素子の液晶配向膜、磁気記録媒体の潤滑コート、ゲート絶縁膜、エレクトロウェッティング原理を用いたデバイス、エレクトレット膜、MEMSプロセスの耐薬品コーティング、医療器具の防汚コート、マイクロフルイディクス技術を利用したデバイスの耐薬・防汚・耐バイオ・撥液コート、光学フィルター多層膜コートの低屈折材料、親水撥水パターニングの撥水性材料、パターン化された光学素子等を挙げることができる。
上記生活レジャー用品としては、釣りざお、ラケット、ゴルフクラブ、映写幕等を挙げることができる。
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
(一般式(10)で表される単量体)
以下の各実施例において使用する際の1,2-ジフルオロエチレンE体は、純度99.9質量%以上のものであった。なお、純度は、GC/MSによって不純物のピークが現れないことを確認し、99.9質量%とした。なお、特許文献1の実施例に従って製造を行い、分取ガスクロマトグラフィによって分離を行うことで、高純度の単量体を得た。
実施例1 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水600g、メチルセルロース0.3gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、450gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)、33gの1,2-ジフルオロエチレン、60gのテトラフルオロエチレン(TFE)導入した後、オートクレーブを29℃に加温した。次に、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネートを50質量%含むメタノール溶液3.0gをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.2MPaGであった。オートクレーブ内の温度を35℃に3.5時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を4.0g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で46.0/47.5/6.5の割合で含んでいた。融点は190.7℃であった。
実施例2 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水600gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、450gのHFP、5gの1,2-ジフルオロエチレン、28gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、ジ-(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドを8質量%含むパーフルオロヘキサン溶液(DHP-H)を6.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.9MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に2時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を3.2g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で25.6/62.5/11.8の割合で含んでいた。融点は180.0℃であった。
実施例3 100mlのステンレス製オートクレーブに、40gのジクロロペンタフルオロプロパン、0.91gのDHP-Hを仕込み、これをドライアイスにて冷却し、窒素置換した後、2.0gのTFE、23.9gのHFP、1.2gの1,2-ジフルオロエチレンを仕込み、振とう機を用いて25℃で14.2時間振とうした後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで1.42gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で73.7/17.7/8.6の割合で含んでいた。融点は166.5℃であった。
実施例4 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、120gの1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE-347pc-f)、30.5gのTFE、155.8gのHFP、2.9gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを40℃に加温した。次に、0.4gのジイソプロピルパーオキシジカーボネートを42.5質量%含む2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(IPP)をオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は1.114MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が1.050MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで5.67gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で21.5/73.3/5.2の割合で含んでいた。融点は243.4℃であった。
実施例5 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、120gのHFE-347pc-f、27.0gのTFE、150.0gのHFP、5.1gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを40℃に加温した。次に、0.5gのIPPをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は1.155MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が1.082MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで3.71gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で30.4/65.1/4.6の割合で含んでいた。融点は227.9℃であった。
実施例6 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、200gのHFE-347pc-f、17.1gのTFE、262.0gのHFP、3.7gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを55℃に加温した。次に、0.52gのIPPをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は1.221MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が1.204MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで2.13gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で32.1/55.2/12.7の割合で含んでいた。融点は162.3℃であった。
実施例7 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、200gのHFE-347pc-f、30.5gのTFE、269.2gのHFP、3.0gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを55℃に加温した。次に、0.6gのIPPをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は1.365MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が1.340MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで2.95gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で20.5/71.9/7.6の割合で含んでいた。融点は225.2℃であった。
実施例8 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、200gのHFE-347pc-f、20.0gのTFE、245.0gのHFP、15.0gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを40℃に加温した。次に、0.7gのIPPをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は1.069MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が1.054MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで2.85gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で41.9/51.2/6.9の割合で含んでいた。融点は189.7℃であった。
実施例9 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、200gのHFE-347pc-f、15.1gのTFE、284.7gのHFP、1.2gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを55℃に加温した。次に、0.7gのIPPをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は1.191MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が1.176MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで1.57gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFPをモル%比で21.1/63.7/15.2の割合で含んでいた。融点は189.7℃であった。
実施例10 100mlのステンレス製オートクレーブに、40gのHFE-347pc-f、0.47gのDHP-Hを仕込み、これをドライアイスにて冷却し、窒素置換した後、5.0gのTFE、10.0gのパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、1.1gの1,2-ジフルオロエチレンを仕込み、振とう機を用いて25℃で6時間振とうした後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで1.32gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で38.6/51.1/10.4の割合で含んでいた。融点は156.5℃であった。
実施例11 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、130gのPMVE、4gの1,2-ジフルオロエチレン、46gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを3.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.52MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に1.5時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を4.3g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で17.9/67.5/14.6の割合で含んでいた。融点は172.2℃であった。
実施例12 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-fを500g、130gのPMVE、3gの1,2-ジフルオロエチレン、37gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを3.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.47MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に1.3時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を2.2g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で13.8/69.0/17.2の割合で含んでいた。融点は176.9℃であった。
実施例13 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、60gのPMVE、9gの1,2-ジフルオロエチレン、34gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを3.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.40MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に1時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を2.5g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で38.3/53.0/8.7の割合で含んでいた。融点は185.3℃であった。
実施例14 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、200gのPMVE、3gの1,2-ジフルオロエチレン、28gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを3.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.40MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に2.1時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を2.9g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で23.1/51.0/25.9の割合で含んでいた。融点は1
01.7℃であった。
実施例15 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、80gのPMVE、15gの1,2-ジフルオロエチレン、27gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを3.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.40MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に0.6時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を1.2g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で41.1/47.5/11.4の割合で含んでいた。融点は157.7℃であった。
実施例16 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、110gのPMVE、5gの1,2-ジフルオロエチレン、35gTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを3.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.40MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に0.8時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を2.1g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で13.0/64.9/22.1の割合で含んでいた。融点は157.5℃であった。
実施例17 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、104gのPMVE、6gの1,2-ジフルオロエチレン、35gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを6.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.42MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/TFE/PMVE=25.5/59.5/15.0mоl%の混合ガスを流し、重合開始時から90分毎にDHP-Hを6g、3時間30分後からは90分毎にDHP-Hを3g投入し、オートクレーブ内の温度を28℃に16.5時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を45g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で25.7/59.7/14.6の割合で含んでいた。融点は157.7℃であった。
実施例18 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、94gのPMVE、13gの1,2-ジフルオロエチレン、33gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを6.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.43MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/TFE/PMVE=44.0/44.0/12.0mоl%の混合ガスを流し、重合開始時から90分毎にDHP-Hを6g、9時間後からは60分毎にDHP-Hを3g投入し、オートクレーブ内の温度を28℃に14.5時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を42g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で44.4/43.6/12.0の割合で含んでいた。融点は137.9℃であった。
実施例19 内容積4.1Lのガラスライニングされたステンレス製オートクレーブに、脱イオン水1280gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、1000gのHFE-347pc-f、340gのPMVE、18gの1,2-ジフルオロエチレン、101gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを3.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.50MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に1時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を5.7g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で26.8/55.0/18.2の割合で含んでいた。融点は141.1℃であった。
実施例20 100mlのステンレス製オートクレーブに、40gのジクロロペンタフルオロプロパン、0.43gのDHP-Hを仕込み、これをドライアイスにて冷却し、窒素置換した後、6.0gのTFE、0.5gの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、5.5gの1,2-ジフルオロエチレンを仕込み、振とう機を用いて25℃で1.3時間振とうした後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで0.41gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFO-1234yfをモル%比で44.1/40.0/15.9の割合で含んでいた。融点は109.7℃であった。
実施例21 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、200gのHFE-347pc-f、45.0gのTFE、2.5gのHFO-1234yf、13.2gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、2.0gのDHP-Hをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は0.871MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が0.856MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで1.90gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFO-1234yfをモル%比で32.7/58.5/8.8の割合で含んでいた。融点は189.7℃であった。
実施例22 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、200gのHFE-347pc-f、21.0gのTFE、2.6gのHFO-1234yf、33.5gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、2.0gのDHP-Hをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は0.711MPaGであった。オートクレーブ内の圧力が0.696MPaGまで降下した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで1.82gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとHFO-1234yfをモル%比で58.9/32.6/8.5の割合で含んでいた。融点は127.8℃であった。
比較例1 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、150gのHFE-347pc-f、4.0gのTFE、23.0gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、2.0gのDHP-Hをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は0.5MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/TFE=85/15mоl%の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を28℃に5.2時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで12.2gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEをモル%比で85.5/14.5の割合で含んでいた。融点は210.0℃であった。
比較例2 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、150gのHFE-347pc-f、15.2gのTFE、10.0gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、2.0gのDHP-Hをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は0.5MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/TFE=68/32mоl%の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を28℃に4時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで10.8gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEをモル%比で67.8/32.2の割合で含んでいた。融点は217.2℃であった。
比較例3 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、150gのHFE-347pc-f、15.0gのTFE、9.4gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、1.5gのDHP-Hをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は0.5MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/TFE=54/46mоl%の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を28℃に2.8時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで10.7gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEをモル%比で53.9/46.1の割合で含んでいた。融点は232.8℃であった。
比較例4 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、150gのHFE-347pc-f、20.0gのTFE、6.8gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、1.5gのDHP-Hをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は0.5MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/TFE=42/58mоl%の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を28℃に1.8時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで13.1gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEをモル%比で42.4/57.6の割合で含んでいた。融点は246.5℃であった。
比較例5 500mlのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、150gのHFE-347pc-f、26.0gのTFE、2.1gの1,2-ジフルオロエチレンを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、1.0gのDHP-Hをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の重合圧力は0.6MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/TFE=18/82mоl%の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を28℃に45分間維持した後、放圧して大気圧に戻し、生成物を乾燥することで11.3gのフッ素樹脂を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEをモル%比で19.0/81.0の割合で含んでいた。融点は288.8℃であった。
比較例6 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水1330g、メチルセルロース
0.67gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、1,2-ジフルオロエチレン250g、メタノール1ml及びジノルマルプロピルパーオキシカーボネートを50質量%含むメタノール溶液2gをオートクレーブ内に投入し、1.5時間かけて45℃まで昇温した後、45℃で3時間維持した後、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネートを50質量%含むメタノール溶液を更に4g導入した。その後、45℃を4時間維持した。この間の最高到達圧力は2.7MPaGであった。その後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を198g得た。融点は196.3℃であった。
比較例7 内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水500gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、500gのHFE-347pc-f、323gのPMVE、3gの1,2-ジフルオロエチレン、21gのTFEを導入した後、オートクレーブを28℃に加温した。次に、DHP-Hを6.0gオートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.40MPaGであった。オートクレーブ内の温度を28℃に6時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を2.5g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとTFEとPMVEをモル%比で22.2/39.5/38.3の割合で含んでいた。融点は確認できなかった。
得られた各重合体について、以下の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
(重合体の組成比)
共重合体組成は、溶液NMR法、もしくは溶融NMR法により測定した。
<溶液NMR法>
測定装置:バリアン社製 VNMRS400
共鳴周波数:376.04(Sfrq)
パルス幅:30°
<溶融NMR法>
測定装置:ブルカージャパン社製 AVANCE300
共鳴周波数:282.40[MHz]
パルス幅:45°
(融点)示差走査熱量計を用い、ASTM D4591に準拠して測定することができる。具体的には、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、昇温速度10℃/分にて共重合体の熱測定を行い、得られる吸熱曲線のピークにあたる温度を融点とした。
(全光線透過率及びヘイズ)共重合体の粉体を共重合体の融点よりも20~40℃高い温度で圧縮成形し、厚み0.5mmのシート状の成形品を得た。上記方法で得た厚さ0.5mmのプレスシートについて、全光線透過率測定は、JIS K7361-1、ヘイズの測定はK7136にそれぞれ従って測定した。測定器は、HAZE Meter NDH7000SP(日本電色工業株式会社製)を用いた。
(屈折率)共重合体の粉体を共重合体の融点よりも20~40℃高い温度で圧縮成形し、厚み0.5mmのシート状の成形品を得た。上記方法で得た厚さ0.5mmのプレスシートの屈折率は、ナトリウムD線を光源として25℃において、アッベ屈折率計(アタゴ光学機器製作所製)を用いて測定した。
上記表1の結果から、本開示の重合体は低屈折率、透明性、耐熱性という効果を兼ね備えた優れた物性を有するものであることが明らかである。