JP7226703B2 - 繊維製品 - Google Patents

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本発明は、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する肌着等の繊維製品に関し、特に、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れ(ほつれまたはホツレと記載する場合がある)が発生しにくい繊維製品に関する。
一般に、衣類は生地を裁断・縫製して製造される。また、衣類における首まわり、脇まわり、袖口、裾まわり等の開口部は、生地の裁断端縁を折り返して縫着したり、テープ等の別布で包み込んで縫着したりして端縁周囲のほつれ止めの後処理が施されるのが普通である。さらに、生地の継ぎ合わせ部は、縫製加工で継ぎ合わされるのが普通である。
ところが、生地の裁断端縁や開口部の裁断端縁のほつれ止めの後処理作業は、かなりの縫製手間がかかったり、下着のヘムラインが凸条等になって外衣に現れたり、着用感を損なったりなどの問題となっており、これらの点について改善が要望されていた。
特に、婦人用衣類の多様化、ファッション化の傾向は、益々進行し、中でも、適度の伸縮性があって身体に気持ちよくフィットする、薄地で編目の美しい、かつ下着のヘムラインが外衣を通して外観に現れない、ファッショナブルなファンデーション衣類に対する要求が大きい。加えて、編地の縁の始末をしないで切りっぱなしのまま形成し、お洒落な着衣として楽しみたいという傾向がある。
このような傾向に対して、編方向に対する裁断方向に関係なく、裁断したままで縁始末不要な伸縮性編地が特許第5631528号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1に開示された伸縮性編地は、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用する伸縮性編地であって、弾性繊維と非弾性繊維とからなり、弾性繊維をドラフト率1.5~4倍に延伸し、非弾性繊維をエアー交絡させたエアー交絡複合糸のみを用いてなる伸縮性編地であり、編組織が両面編組織であり、弾性繊維がポリウレタン弾性繊維であり、非弾性繊維が熱可塑性合成繊維または再生繊維であることを特徴とする。
特許第5631528号公報
しかしながら、この特許文献1に開示されたエアー交絡複合糸のみを用いて編成されている伸縮性編地では、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくいとはいえない可能性があった。特に、このような伸縮性編地をアンダーシャツ等の肌着として着用と洗濯とを繰り返した場合の耐洗濯性能を十分に保証できていない可能性があった。
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する肌着等の繊維製品に関し、特に、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい繊維製品を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係る繊維製品は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る繊維製品は、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品であって、前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とを含んで編成され、下記の式で表される前記非弾性繊維と前記弾性繊維との合成カバーファクター(合成CF)が0.540以上であることを特徴する。
合成CF=1/L×SQR[(1/S)+1/[(5905.4/D)×Df]]
L:非弾性繊維のループ長[cm]
S:非弾性繊維の繊度[英国式綿番手]
D:弾性繊維の繊度[dtex]
Df:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度
好ましくは、前記非弾性繊維がセルロース系繊維であるように構成することができる。
本発明によれば、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する肌着等の繊維製品に関し、特に、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい繊維製品を提供することができる。
本発明の実施の形態における実施例、比較例、評価等を示す図である。 耐洗濯解れ試験の試験生地サンプルを説明するための図である。 耐洗濯解れ試験における試験方法(JIS L-1930 C4N法)を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態として、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品の一例であるアンダーシャツ(たとえば図2(A)に示すアンダーシャツ100)が挙げられる。なお、本発明に係る繊維製品は、このようなアンダーシャツのような肌着に限定されるものではなく、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品であれば構わない。
[繊維製品の特徴]
この繊維製品は、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有し、この編地は非弾性繊維と弾性繊維とを含んで編成されている。この繊維製品は、たとえば、切りっぱなし仕様であるアンダーシャツ等の衣類として好適に採用され、ほつれ止め機能があるヨコ編地よりなり、ほつれ止め機能があるヨコ編地が、熱融着弾性糸(弾性繊維であって一例としてポリウレタン)とそれ以外の糸(非弾性繊維であって一例としてセルロース系繊維)で編みたてられてヒートセット加工により熱融着弾性糸を溶融してほつれ止め機能が付与された編地である。なお、編地の編成時においては、熱融着弾性糸とそれ以外の糸とが任意のドラフト率でプレーティング編み(添え糸編み)により編みたてられている。
そして、特徴的であるのは、下記の式で表される非弾性繊維と弾性繊維との合成カバーファクター(合成CF)が0.540以上である。ここで、この合成カバーファクター(合成CF)は以下に示すように定義される。
合成CF=1/L×SQR[(1/S)+1/[(5905.4/D)×Df]]
L:非弾性繊維のループ長[cm]
S:非弾性繊維の繊度[英国式綿番手]
D:弾性繊維の繊度[dtex]
Df:ドラフト率=編地編成時(プレーティング編による編成時)の弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度
通常のCF(カバーファクター)は、編地において1ループが占める全面積に対して編糸が表面を覆っている面積の比率として定義されるものであって、一般的には、ループ長(cm)をL、恒重式番手(綿番手)をSとすると、1/L×SQR(1/S)によって表されるものである。上述したように、本発明に係る繊維製品においては、非弾性繊維と弾性繊維とが任意のドラフト率Df(ドラフト率Df=弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度)でプレーティング編みされて編地が編成されている。このため、1/L×SQR(1/S)として表される一般的なカバーファクターではなく、非弾性繊維の(糸の)太さ(ここでは恒重式番手(綿番手)S)に加えて、弾性繊維の(糸の)太さ(ここでは恒長式番手(デシテックス番手[dtex])D)および編地編成時の非弾性繊維の給糸速度に対する弾性繊維の給糸速度の比率(弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度)であるドラフト率Dfを考慮した上述した式で表される合成カバーファクター(合成CF)を本願出願人は見い出して、さらに、この合成カバーファクター(合成CF)がある特定の範囲内(0.540以上)にある場合に耐洗濯性が特に好ましい(着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい)ことを見い出したのである。
なお、この合成カバーファクター(合成CF)の特定の範囲内における下限は上述したように0.540となるが、このような特定の範囲内における上限は特に限定されるものではないものの大きすぎるとあまりにも密すぎて実用的ではないために、実用上たとえばアンダーシャツ等の肌着の場合には0.590程度であることが好ましい。
[繊維製品の製造]
図1に示す弾性繊維(弾性糸)および非弾性繊維(非弾性糸)を用いて、ベアフライス編み(1×1ゴム編み)またはベア天竺編み(平編み)で実施例1~3および比較例1~3を製造した。さらに詳しくは、実施例1であれば、18ゲージの丸編機を使用して、綿紡績糸80番手とポリウレタン糸78dtexをプレーティング編みによりドラフト率1.8の条件でフライス編組織とし編成した。このように編成された編地をセット機にセットしてプリセット工程として170℃×50秒で熱処理して、再度セット機にセットしてファイナルセット工程として120℃×5秒で熱処理して、合成カバーファクター(合成CF)が0.551であるベアフライス編地を得た。他の実施例および比較例については、弾性繊維(弾性糸)の組成、非弾性繊維(非弾性糸)の組成、編組織およびドラフト率Dfがそれぞれ図1に示すように異なり、その他の製造条件は実施例1と同じである。
[繊維製品の評価:耐洗濯ホツレ試験]
耐洗濯ホツレ試験の試験生地サンプルとして、図2(A)に示すアンダーシャツ100において洗濯を繰り返すことによりホツレ、ダレ(だらりと伸びてよれている状態)等が特に問題となる領域110(襟ぐり部分)を模擬した図2(B)に示す短辺10cm×長辺30cmであって長辺方向を編目のコース方向と一定角度(およそ45度)なす試験生地サンプルを準備する。
このように準備された耐洗濯ホツレ試験前の試験生地サンプルを、家庭用のパルセーター型全自動洗濯機を用いて図3に示すJIS L1930 CN4法に準拠した手順に従って弱アルカリ洗剤(水1Lあたり0.7g)で洗濯して、洗濯後の試験生地サンプルを吊り干し乾燥する。このような洗濯乾燥操作を繰り返し10回行い耐洗濯ホツレ試験後の試験生地サンプル(実施例1~3の試験生地サンプルおよび比較例1~3の試験生地サンプル)を得る。
そして、耐洗濯ホツレ試験後の試験生地サンプルにおける長辺側のほつれの程度を、試験生地サンプルにおける長辺側5cmにおける1mm以上の毛羽の飛び出し個数を目視にて計数して下記の基準で評価した。
○:1mm以上の毛羽の飛び出し個数が5cmあたり20個未満
△:1mm以上の毛羽の飛び出し個数が5cmあたり20個以上60個未満
×:1mm以上の毛羽の飛び出し個数が5cmあたり60個以上
図1に示すように、合成カバーファクター(合成CF)がある特定の範囲内である0.540以上の実施例1~3は試験生地サンプルにおける長辺側のほつれの程度が○で示されており、合成カバーファクター(合成CF)が0.540未満の比較例1~3は試験生地サンプルにおける長辺側のほつれの程度が△または×で示されており、合成カバーファクター(合成CF)がある特定の範囲内である0.540以上において耐洗濯性が特に好ましい(着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい)ことがわかる。
さらに、耐洗濯ホツレ試験の評価としては、上述した耐洗濯ホツレ試験後の試験生地サンプルにおける長辺側5cmにおける1mm以上の毛羽の飛び出し個数に替えて、耐洗濯ホツレ試験後の試験生地サンプルにおける長辺側の編目についての一定ループ数あたりのループを形成しなくなった数であっても構わない。たとえば、耐洗濯ホツレ試験後の試験生地サンプルにおける長辺側における一定ループ(50ループ、100ループ、200ループ等であってYとする)あたりのループを形成しなくなった数(X)を目視にて計数して、ホツレ率R=X/Y×100(%)を算出する。合成カバーファクター(合成CF)が0.540以上の実施例1~3はこのホツレ率Rが30%以下であって、合成カバーファクター(合成CF)が0.540未満の比較例1~3はこのホツレ率Rが85%より大きい。このように、このようなホツレ率Rによっても合成カバーファクター(合成CF)
がある特定の範囲内である0.540以上において耐洗濯性が特に好ましい(着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい)ことがわかる。このように、本発明に係る繊維製品は、そのホツレ率Rが好ましくは85%以下、さらに好ましくは30%以下であるという技術的範囲に含まれる繊維製品であるといえる。
以上のようにして、本実施の形態に係る繊維製品によると、合成カバーファクター(合成CF)という新たな指標を導入することにより、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する肌着等の繊維製品に関し、特に、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい繊維製品を提供することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する肌着等の繊維製品に好適であり、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい点で特に好適である。
100 アンダーシャツ
110 洗濯を繰り返すことによりホツレ等が特に問題となる領域

Claims (2)

  1. 裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品であって、
    前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とを含んで編成され、
    下記の式で表される前記非弾性繊維と前記弾性繊維との合成カバーファクター(合成CF)が0.540以上であって、
    ドラフト率が1.8以下、かつ、前記非弾性繊維の繊度が前記弾性繊維の繊度より小さいことを特徴する繊維製品。
    合成CF=1/L×SQR[(1/S)+1/[(5905.4/D)×Df]]
    L:非弾性繊維のループ長[cm]
    S:非弾性繊維の繊度[英国式綿番手]
    D:弾性繊維の繊度[dtex]
    Df:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度
  2. 前記非弾性繊維がセルロース系繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維製品。
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