以下に、本願の開示するロータリ圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示するロータリ圧縮機が限定されるものではない。
(ロータリ圧縮機の構成)
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。図2は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10内の下部に配置された圧縮部12と、圧縮機筐体10内の上部に配置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、圧縮機筐体10の外周面に固定された縦置き円筒状のアキュムレータ25と、を備えている。
アキュムレータ25は、縦置き円筒状のアキュムレータ容器26と、アキュムレータ容器26の上部に接続された低圧導入管27と、を備える。アキュムレータ容器26は、上吸入管105及びL字状の低圧連絡管31Tを介して上シリンダ121Tの上シリンダ室130T(図2参照)と接続され、下吸入管104及びL字状の低圧連絡管31Sを介して下シリンダ121Sの下シリンダ室130S(図2参照)と接続されている。低圧導入管27は、アキュムレータ容器26の上部を貫通して設けられており、冷凍サイクルにおける低圧側に接続される。また、アキュムレータ容器26内には、低圧導入管27と低圧連絡管31T、31Sとの間に、低圧導入管27から供給される冷媒から異物を捕らえるフィルタ29が設けられている。本実施例におけるアキュムレータ25の詳細については後述する。
モータ11は、外側に配置されたステータ111と、内側に配置されたロータ112と、を備えている。ステータ111は、圧縮機筐体10の内周面に焼嵌め状態で固定されており、ロータ112は、回転軸15に焼嵌め状態で固定されている。
回転軸15は、下偏心部152Sの下方の副軸部151が、下端板160Sに設けられた副軸受部161Sに回転自在に支持され、上偏心部152Tの上方の主軸部153が、上端板160Tに設けられた主軸受部161Tに回転自在に支持され、互いに180度の位相差をつけて設けられた上偏心部152T及び下偏心部152Sにそれぞれ上ピストン125T及び下ピストン125Sが支持されることによって、圧縮部12に対して回転自在に支持されると共に、回転によって上ピストン125T及び下ピストン125Sを、上シリンダ121Tの内周面137T、下シリンダ121Sの内周面137Sに沿ってそれぞれ公転運動させる。
圧縮機筐体10の内部には、圧縮部12において摺動する上ピストン125T及び下ピストン125S等の摺動部の潤滑性を確保し、上圧縮室133T(図2参照)及び下圧縮室133S(図2参照)をシールするために、潤滑油18が圧縮部12をほぼ浸漬する量だけ封入されている。圧縮機筐体10の下側には、ロータリ圧縮機1全体を支持する複数の弾性支持部材(図示せず)を係止する取付脚310(図1参照)が固定されている。
図1に示すように、圧縮機筐体10には、冷媒を吐出する吐出管107が上部に設けられており、冷媒を吸入する上吸入管105及び下吸入管104が側面部に設けられている。圧縮部12は、上吸入管105及び下吸入管104から吸入された冷媒を圧縮し、吐出管107から吐出する。図2に示すように、圧縮部12は、上から、内部に中空空間が形成された膨出部を有する上端板カバー170T、上端板160T、環状の上シリンダ121T、中間仕切板140、環状の下シリンダ121S、下端板160S及び平板状の下端板カバー170Sを積層して構成されている。圧縮部12全体は、上下から略同心円上に配置された複数の通しボルト174,175及び補助ボルト176によって固定されている。
図2に示すように、上シリンダ121Tには、円筒状の内周面137Tが形成されている。上シリンダの内周面137Tの内側には、上シリンダ121Tの内周面137の内径よりも小さい外径の上ピストン125Tが配置されており、内周面137Tと上ピストン125Tの外周面139Tとの間に、冷媒を吸入し圧縮して吐出する上圧縮室133Tが形成される。下シリンダ121Sには、円筒状の内周面137Sが形成されている。下シリンダ121Sの内周面137Sの内側には、下シリンダ121Sの内周面137Sの内径よりも小さい外径の下ピストン125Sが配置されており、内周面137Sと下ピストン125Sの外周面139Sとの間に、冷媒を吸入し圧縮して吐出する下圧縮室133Sが形成される。
上シリンダ121Tは、円形状の外周部から、円筒状の内周面137Tの径方向に張り出した上側方突出部122Tを有する。上側方突出部122Tには、上シリンダ室130Tから放射状に外方へ延びる上ベーン溝128Tが設けられている。上ベーン溝128T内には、上ベーン127Tが摺動可能に配置されている。下シリンダ121Sは、円形状の外周部から、円筒状の内周面137Sの径方向に張り出した下側方突出部122Sを有する。下側方突出部122Sには、下シリンダ室130Sから放射状に外方へ延びる下ベーン溝128Sが設けられている。下ベーン溝128S内には、下ベーン127Sが摺動可能に配置されている。
上シリンダ121Tには、外側面から上ベーン溝128Tと重なる位置に、上シリンダ室130Tに貫通しない深さで上スプリング穴124Tが設けられている。上スプリング穴124Tには上スプリング126Tが配置されている。下シリンダ121Sには、外側面から下ベーン溝128Sと重なる位置に、下シリンダ室130Sに貫通しない深さで下スプリング穴124Sが設けられている。下スプリング穴124Sには下スプリング126Sが配置されている。
また、下シリンダ121Sには、下ベーン溝128Sの径方向外側と圧縮機筐体10内とを開口部で連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒を導入し、下ベーン127Sに冷媒の圧力により背圧をかける下圧力導入路129Sが形成されている。なお、圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒は、下スプリング穴124Sからも導入される。また、上シリンダ121Tには、上ベーン溝128Tの径方向外側と圧縮機筐体10内とを開口部で連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒を導入し、上ベーン127Tに冷媒の圧力により背圧をかける上圧力導入路129Tが形成されている。なお、圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒は、上スプリング穴124Tからも導入される。
上シリンダ121Tの上側方突出部122Tには、上吸入管105と嵌合する上吸入孔135Tが設けられている。下シリンダ121Sの下側方突出部122Sには、下吸入管104と嵌合する下吸入孔135Sが設けられている。
上シリンダ室130Tは、上下をそれぞれ上端板160T及び中間仕切板140で閉塞されている。下シリンダ室130Sは、上下をそれぞれ中間仕切板140及び下端板160Sで閉塞されている。
上シリンダ室130Tは、上ベーン127Tが上スプリング126Tに押圧されて上ピストン125Tの外周面139Tに当接することによって、上吸入孔135Tに連通する上吸入室131Tと、上端板160Tに設けられた上吐出孔190Tに連通する上圧縮室133Tと、に区画される(図3参照)。下シリンダ室130Sは、下ベーン127Sが下スプリング126Sに押圧されて下ピストン125Sの外周面139Sに当接することによって、下吸入孔135Sに連通する下吸入室131Sと、下端板160Sに設けられた下吐出孔190Sに連通する下圧縮室133Sと、に区画される(図3参照)。
図2に示すように、上端板160Tには、上端板160Tを貫通して上シリンダ121Tの上圧縮室133Tと連通する上吐出孔190Tが設けられ、上吐出孔190Tの出口側には、上吐出孔190Tの周囲に上弁座(図示せず)が形成されている。上端板160Tには、上吐出孔190Tの位置から上端板160Tの周方向に溝状に延びる上吐出弁収容凹部164Tが形成されている。
上吐出弁収容凹部164Tには、後端部が上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され前部が上吐出孔190Tを開閉するリード弁型の上吐出弁200T及び後端部が上吐出弁200Tに重ねられて上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され前部が湾曲して(反って)いて上吐出弁200Tの開度を規制する上吐出弁押さえ201T全体が収容されている。
下端板160Sには、下端板160Sを貫通して下シリンダ121Sの下圧縮室133Sと連通する下吐出孔190Sが設けられている。下端板160Sには、下吐出孔190Sの位置から下端板160Sの周方向に溝状に延びる下吐出弁収容凹部(図示せず)が形成されている。
下吐出弁収容凹部には、後端部が下吐出弁収容凹部内に下リベット202Sにより固定され前部が下吐出孔190Sを開閉するリード弁型の下吐出弁200S及び後端部が下吐出弁200Sに重ねられて下吐出弁収容凹部内に下リベット202Sにより固定され前部が湾曲して(反って)いて下吐出弁200Sの開度を規制する下吐出弁押さえ201S全体が収容されている。
互いに密着固定された上端板160Tと、膨出部を有する上端板カバー170Tとの間には、上端板カバー室180Tが形成される。互いに密着固定された下端板160Sと平板状の下端板カバー170Sとの間には、下端板カバー室180S(図1参照)が形成される。下端板160S、下シリンダ121S、中間仕切板140、上端板160T及び上シリンダ121Tを貫通し下端板カバー室180Sと上端板カバー室180Tとを連通する冷媒通路孔136が設けられている。
以下に、回転軸15の回転による冷媒の流れを説明する。上シリンダ室130T内において、回転軸15の回転によって、回転軸15の上偏心部152Tに嵌合された上ピストン125Tが、上シリンダ121Tの内周面137T(上シリンダ室130Tの外周面)に沿って公転することにより、上吸入室131Tが容積を拡大しながら上吸入管105から冷媒を吸入し、上圧縮室133Tが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が上吐出弁200Tの外側の上端板カバー室180Tの圧力よりも高くなると、上吐出弁200Tが開いて上圧縮室133Tから上端板カバー室180Tへ冷媒が吐出される。上端板カバー室180Tに吐出された冷媒は、上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出孔172T(図1参照)から圧縮機筐体10内に吐出される。
また、下シリンダ室130S内において、回転軸15の回転によって、回転軸15の下偏心部152Sに嵌合された下ピストン125Sが、下シリンダ121Sの内周面137S(下シリンダ室130Sの外周面)に沿って公転することにより、下吸入室131Sが容積を拡大しながら下吸入管104から冷媒を吸入し、下圧縮室133Sが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が下吐出弁200Sの外側の下端板カバー室180Sの圧力よりも高くなると、下吐出弁200Sが開いて下圧縮室133Sから下端板カバー室180Sへ冷媒が吐出される。下端板カバー室180Sに吐出された冷媒は、冷媒通路孔136及び上端板カバー室180Tを通って上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出孔172Tから圧縮機筐体10内に吐出される。
圧縮機筐体10内に吐出された冷媒は、ステータ111外周に設けられた上下を連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間115(図1参照)を通ってモータ11の上方に導かれ、圧縮機筐体10の上部に配置された吐出部としての吐出管107から吐出される。
(ロータリ圧縮機の特徴的な構成)
次に、実施例のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。実施例の特徴には、アキュムレータ25の低圧連絡管31T、31Sが有する後述の先細部32が含まれる。
以下、単にシリンダ121と称する場合には上シリンダ121T及び下シリンダ121Sの両方を指し、単にピストン125と称する場合には上ピストン125T及び下ピストン125Sの両方を指す。同様に、単に吸入室131と称する場合には、上吸入室131T及び下吸入室131Sの両方を指し、単に圧縮室133と称する場合には、上圧縮室133T及び下圧縮室133Sの両方を指す。また、単に吸入孔135と称する場合には、上吸入孔135T及び下吸入孔135Sの両方を指し、単にベーン127と称する場合には上ベーン127T及び下ベーン127Sの両方を指す。
まず、2つの上シリンダ121T及び下シリンダ121Sにおける各吸入工程での互いの冷媒ガスの流れの影響によって、ロータリ圧縮機1全体の循環流量が低下することを説明する。
図3は、実施例のロータリ圧縮機1において、シリンダ121内におけるピストン125の回転と吸入工程及び圧縮工程を説明するための横断面図である。図3では、一例として、上シリンダ121Tの上吸入室131Tの容積が拡大することに伴って冷媒が吸入及び圧縮される様子を示している。また、図3では、上ピストン125Tの回転角が0度、90度、180度、270度、360度(0度)に順番に、90度ごとに変化する状態を示している。すなわち、図3では、回転軸15の回転角に伴う上シリンダ121T内の上吸入室131T及び上圧縮室133Tの大きさの変化を示している。
図3に示すように、ピストン125がベーン127をシリンダ121内部に最も押し込んだ状態のときの、回転軸15の回転角を0[°]としている。回転角が0[°]のときは、吸入室131が圧縮室133へと移行する直前であり、圧縮室133が縮小して容積がゼロとなった位置である。回転角が90[°]のときは、回転角0°における吸入室131が吸入孔135と遮断されてそのまま圧縮室133となって冷媒の圧縮を開始すると共に、吸入孔135と連通される新たな吸入室131が形成されて、吸入室131へ冷媒の吸入を開始する。回転角が180[°]、270[°]のときは、吸入室131が更に拡大して冷媒の吸入が進行する。回転角が270[°]から、更に90[°]だけ回転したとき、回転角が0[°]の状態に戻り、吸入室131の容積が、回転軸15の1回転中において最大となる。
図4は、実施例のロータリ圧縮機1における回転軸15の回転角と吸入室131の容積変化率との関係を示すグラフである。図4において、縦軸が吸入室131の容積変化率[mm3/deg]を示し、回転軸15の回転角[°]を示している。また、図4において、上シリンダ121Tの上吸入室131Tの容積変化率を実線で示しており、下シリンダ121Sの下吸入室131Sの容積変化率を破線で示している。図4では、2シリンダ型のロータリ圧縮機1の一例として、回転軸15の1回転中における各シリンダ121の吸入室131の最大容積が10[cc]の場合について、回転軸15の回転角が1[°]当たりの各シリンダ121の吸入室131の容積変化率を示している。すなわち、容積変化率が大きい場合には、容積変化率が小さい場合と比べて、吸入室131の容積が急激に変化することになる。
図4に示すように、回転軸15の回転に伴って吸入室131の容積が拡大する際において、回転軸15の回転角に対する吸入室131の容積変化率が、回転軸15の1回転中に大きく変動する。回転軸15の回転角が180[°]のときに容積変化率が最も大きくなり、回転角が0[°]近傍で容積変化率がゼロになる。また、図4に示すように、下シリンダ121Sの下吸入室131Sの容積変化率は、上述した上シリンダ121Tの上吸入室131Tの容積変化率と、回転軸15の1回転中で180[°]ずれた状態で変化することになる。
次に、上述した回転軸15の1回転中における吸入室131の容積の変化が、アキュムレータ容器26の内部と、低圧連絡管31T、31Sにおける冷媒の流れに及ぼす影響について説明する。
回転軸15の1回転における平均的な挙動を考えると、アキュムレータ容器26の内部には、低圧導入管31T、31Sを通って冷凍サイクルから冷媒が供給され、さらにアキュムレータ容器26の内部からそれぞれに連通する低圧連絡管31T、31S及び下吸入管104、上吸入管105を通って2つの吸入室131に冷媒が供給される。しかしながら、回転軸15の回転角が、図3に示す0[°]の場合には、上シリンダ121Tの上吸入室131Tの容積変化がゼロであるので、吸引力がなく、下シリンダ121Sの下吸入室131Sは容積変化が回転軸15の1回転中の最大であるので、吸引力が回転軸15の1回転中で最大となる。このような上吸入室131Tの吸引力と下吸入室131Sの吸引力との関係の影響によって、図3に示す回転軸15の回転角が0[°]のとき、アキュムレータ容器26の内部の冷媒は、下シリンダ121Sの下吸入室131Sと連通する低圧連絡管31Sから吸入される。
下シリンダ121Sの下吸入室131Sと連通する低圧連絡管31Sから吸入される冷媒を補充するために、アキュムレータ容器26の内部には、低圧導入管27から、フィルタ29を通して冷媒が吸引されると共に、図3に示す回転軸15の回転角が0[°]のときに上シリンダ121Tの上吸入室131Tの吸引力が無いので、上シリンダ121Tの上吸入室131Tと連通する低圧連絡管31Tを通して、上シリンダ121Tの上吸入室131Tからも冷媒が吸引されてしまう。
すなわち、回転軸15の回転角が0[°]となり、図3に示すように、上シリンダ121Tの上吸入室131Tが上吸入孔135Tと遮断されて独立した上圧縮室133Tとなる直前に、一旦、上シリンダ121Tの上吸入室131T内に吸入された冷媒が、上シリンダ121Tと連通する上吸入管105及び低圧連絡管31Tを逆流して、下シリンダ121Sの下吸入室131S内に吸入される。一方、図3に示す回転軸15の回転角が180[°]のときは、上述した上シリンダ121Tにおける逆流とは反対に、下シリンダ121Sの下吸入室131S内の冷媒が、下シリンダ121Sと連通する下吸入管104及び低圧連絡管31Sを逆流して、アキュムレータ容器26の内部から低圧連絡管31Tを経て、上シリンダ121Tの上吸入室131T内に吸入される。
以上のように、上吸入管105、下吸入管104及び低圧連絡管31T、31Sにおける逆流現象は、シリンダ121の吸入室131が吸入孔135から遮断されることで圧縮室133に移行する直前に大きくなる。このため、吸入室131から圧縮室133へ移行する直前に、吸入室131内の冷媒密度の低下を招くことになるので、ロータリ圧縮機1全体の循環流量が低下する要因となっている。本実施例では、アキュムレータ25の各低圧連絡管31T、31Sを通って冷媒が逆流することを抑えるために、後述する先細部32が、低圧連絡管31T、31S内に設けられている。
(アキュムレータの低圧連絡管)
図5は、実施例のロータリ圧縮機1が備えるアキュムレータ25を示す縦断面図である。図5に示すように、アキュムレータ25は、2つの連絡管としての低圧連絡管31T、31Sを有する。低圧連絡管31T、31Sは、断面円形状をなす円管に形成されている。低圧連絡管31Tの内径と、低圧連絡管31Sの内径は互いに等しい。アキュムレータ25のアキュムレータ容器26は、一組の上容器26aと下容器26bとが組み合わせて構成されており、上容器26aと下容器26bとの接続部分に、低圧連絡管31T、31Sを支持する支持板26cが設けられている。
低圧連絡管31Tは、一端である上端がアキュムレータ容器26の内部における上部に開口しており、他端である下端がアキュムレータ容器26の内部から外部まで延びて上吸入管105及に接続されている。同様に、低圧連絡管31Sは、一端である上端がアキュムレータ容器26の内部における上部に開口しており、他端である下端がアキュムレータ容器26の内部から外部まで延びて下吸入管104に接続されている。例えば、低圧連絡管31T及び低圧連絡管31Sは、アキュムレータ容器26の下部で、2つの上連絡管と下連絡管とが接続されて構成されてもよい。また、低圧連絡管31Tの下端及び低圧連絡管31Sの下端は、アキュムレータ容器26の下部を貫通してもよい。
そして、アキュムレータ容器26の内部における、2つの低圧連絡管31T、31Sの各々の内側には、上端側から下端側に向かって内径が徐々に小さくなる円筒状の先細部32が設けられている。低圧連絡管31T、31Sの内側に先細部32が設けられることで、冷媒が低圧連絡管31T、31Sを通ってアキュムレータ容器26内に流れ込むように逆流したときに、先細部32の先端を通る冷媒の流動抵抗が大きくなるので、冷媒が低圧連絡管31T、31Sを逆流することが抑えられる。
低圧連絡管31Tは、上端から先細部32まで連続して形成された直管状の第1連絡管31aと、アキュムレータ容器26の下部に接続されると共に上吸入管105に接続されたL字状の第2連絡管31bと、を有する。同様に、低圧連絡管31Sは、上端から先細部32まで連続して形成された直管状の第1連絡管31aと、アキュムレータ容器26の下部に接続されると共に下吸入管104に接続されたL字状の第2連絡管31bと、を有する。第1連絡管31aの下端部に設けられた先細部32は、第2連絡管31bの上端部の内部に挿入されることで、第1連絡管31aと第2連絡管31bとが連結されている。
また、2つの低圧連絡管31T、31Sは、各々の低圧連絡管31T、31Sの内部とアキュムレータ容器26の内部とを連通する複数の液戻し孔34を有する。アキュムレータ25では、各低圧連絡管31T、31Sの複数の液戻し孔34を通って、液冷媒が少量ずつ低圧連絡管31T、31Sに吸入されることにより、アキュムレータ容器26内の液冷媒が低圧連絡管31T、31Sの上端の開口の位置を超えて増加し、多量の液冷媒が低圧連絡管31T、31Sに急激に流れ込むことを防いでいる。
各低圧連絡管31T、31Sの先細部32は、複数の液戻し孔34のうち、最も下方に位置する液戻し孔34よりも下方に設けられている。これにより、液戻し孔34の機能が低下することを抑えると共に、低圧連絡管31T、31Sを第1連絡管31aと第2連絡管31bとに分割して、第1連絡管31a及び第2連絡管31bをそれぞれ容易に形成することが可能になり、先細部32を有する低圧連絡管31T、31Sの加工性が高められる。なお、図示しないが、先細部32の先端(下端)は、アキュムレータ容器26の下部の外側まで延ばされてもよい。
図6Aは、実施例におけるアキュムレータ25の要部を説明するための縦断面図である。図6Bは、実施例におけるアキュムレータ25の要部を説明するための縦断面図である。
図6Aに示すように、2つの低圧連絡管31T、31Sは、先細部32の先端における先細部32の内面の流路断面積をS1[mm2]、先細部32の先端の位置における低圧連絡管31T、31Sの内面の流路断面積をS2[mm2]として、
S2×0.4≦S1≦S2×0.7 ・・・・(式1)
を満たす。ここで、先細部32の先端とは、先細部32の内径が最も小さい下端を指している。
S2×0.4>S1の場合には、先細部32の先端の流路断面積S1が小さくなり過ぎるので、アキュムレータ容器26内からシリンダ121の吸入室131に向かう通常の冷媒の流れにおいて流動抵抗が大きくなり、シリンダ121に吸入された冷媒密度が低下し、ロータリ圧縮機1全体の循環流量の低下を招くので好ましくない。一方、S1>S2×0.7の場合、先細部32の先端の流路断面積S1が大きくなり過ぎるので、シリンダ121の吸入室131からアキュムレータ容器26内に逆流する流れを抑制する効果が小さくなるので好ましくない。したがって、先細部32の先端の流路断面積S1の大きさには、適正範囲があり、低圧連絡管31の直管部分の流路断面積S2に対して先細部32の先端の流路断面積S1が式1を満たすときに適正化されるので、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を効果的に高めることが可能となる。
また、先細部32は、図6Bに示すように、先細部32の先端における内径をD1[mm]、先細部32における冷媒の流れ方向(管軸方向)の長さをL[mm]として、
D1≦L ・・・(式2)
を満たす。
D1>Lの場合、低圧連絡管31T、31Sにおける通常の冷媒の流れの方向において先細部32の縮径率が大きくなり過ぎるので、アキュムレータ容器26内からシリンダ121の吸入室131に向かう通常の流れにおいて、冷媒の流動抵抗が大きくなり、シリンダ121に吸入される冷媒密度が低下し、ロータリ圧縮機1全体の循環流量の低下を招くので好ましくない。したがって、先細部32の形状(縮径率)が式2を満たすことにより、アキュムレータ容器26内からシリンダ121に向かって低圧連絡管31T、31Sを流れる冷媒の流動抵抗を低減し、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を効果的に高めることが可能となる。
なお、本実施例における低圧連絡管31T、31Sの先細部32は、式1、2の両方を満たしているが、式1、2の一方のみを満たすことによって、冷媒が低圧連絡管31T、31Sを逆流することが抑えられるので、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を向上する効果が得られる。
(実施例と比較例との比較)
先細部32を有する実施例の低圧連絡管31(以下、単に低圧連絡管31と称する場合には低圧連絡管31T、31Sの両方を指す。)と、直管であるストレート形状をなす比較例の低圧連絡管とを比較した結果を説明する。なお、ここでは、ロータリ圧縮機1を備える冷凍サイクル装置における暖房運転時を一例として説明する。図7~9において、実施例を実線で示し、比較例を破線で示す。
図7は、実施例のロータリ圧縮機1におけるエネルギ消費効率(COP)について説明するためのグラフである。図7において、縦軸が1次COPを示し、横軸がロータリ圧縮機1の回転数[rps]を示している。図7に示すように、実施例における1次COPは、比較例よりも向上する。
図8は、実施例のロータリ圧縮機1における入力エネルギについて説明するためのグラフである。図8において、縦軸が入力エネルギ[W/(cc・rev)]を示し、横軸がロータリ圧縮機1の回転数[rps]を示している。図8に示すように、実施例において、暖房運転のために入力される入力エネルギ[W/(cc・rev)]は、比較例よりも小さくなる。
図9は、実施例のロータリ圧縮機1における暖房能力について説明するためのグラフである。図9において、縦軸が暖房能力[kW]を示し、横軸がロータリ圧縮機1の回転数[rps]を示している。図9に示すように、実施例における暖房能力[kW]は、比較例よりも高い。
図10は、実施例のロータリ圧縮機1における暖房期間効率について説明するためのグラフである。図10に示すように、暖房期間効率について、比較例のストレート形状の連絡管を有する比較例を100%とした場合、先細部32を有する先細形状の低圧連絡管31を有する実施例は、100.6%に向上する。なお、図7~図10には、暖房運転時における比較結果を示したが、冷房運転時も同様の効果が得られる。
(実施例の効果)
上述したように実施例のロータリ圧縮機1におけるアキュムレータ25は、アキュムレータ容器26の内部における、2つの低圧連絡管31T、31Sの各々の内側に、上端側から下端側に向かって内径が徐々に小さくなる筒状の先細部32が設けられている。このため、先細部32によって、シリンダ121の吸入室131からアキュムレータ容器26内に向かって低圧連絡管31を冷媒が逆流することを抑えることができる。その結果、2つのシリンダ121における各吸入工程での互いの冷媒ガスの流れの干渉によって発生する損失を低減し、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を向上することができる。
また、実施例のロータリ圧縮機1におけるアキュムレータ25の2つの低圧連絡管31T、31Sは、先細部32の先端における先細部32の内面の流路断面積をS1、先細部32の先端の位置における低圧連絡管31の内面の流路断面積をS2として、S2×0.4≦S1≦S2×0.7・・・(式1)を満たす。これにより、アキュムレータ容器26内からシリンダ121に向かう通常の冷媒の流れにおける流動抵抗と、シリンダ121からアキュムレータ容器26内に向かう冷媒の逆流における流動抵抗とのトレードオフを考慮して、先細部32の先端の流路断面積S1が適正な大きさに形成されるので、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を効果的に高めることができる。
また、実施例におけるアキュムレータ25の低圧連絡管31の先細部32は、先細部32の先端における内径をD1、先細部32における冷媒の流れ方向の長さをLとして、D1≦L・・・(式2)を満たす。これにより、アキュムレータ容器26内からシリンダ121に向かって低圧連絡管31T、31Sを流れる冷媒の流動抵抗を低減し、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を効果的に高めることができる。
また、実施例のロータリ圧縮機1におけるアキュムレータ25の2つの低圧連絡管31T、31Sの各々は、低圧連絡管31の内部とアキュムレータ容器26の内部とを連通する液戻し孔34を有しており、先細部32が、液戻し孔34よりも下方に設けられている。これにより、液戻し孔34の機能が低下することを抑えると共に、先細部32を有する低圧連絡管31T、31Sを、先細部32を境目として分割して容易に形成することが可能になり、先細部32を有する低圧連絡管31T、31Sの加工性を高めることができる。
また、実施例のロータリ圧縮機1におけるアキュムレータ25の2つの低圧連絡管31T、31Sの各々は、一端から先細部32まで連続して形成された第1連絡管31aと、アキュムレータ容器26の下部に接続されると共に上吸入管105及び下吸入管104の各々に接続された第2連絡管31bと、を有しており、先細部32が第2連絡管31b内に挿入されて第1連絡管31aと第2連絡管31bとが連結されている。これにより、低圧連絡管31T、31Sを第1連絡管31aと第2連絡管31bとに分割して、第1連絡管31a及び第2連絡管31bをそれぞれ容易に形成することが可能になり、低圧連絡管31T、31Sの内側に先細部32を容易に形成することができる。
以下、他の実施例について図面を参照して説明する。他の実施例において、上述した実施例と同一の構成部材には、実施例と同一の符号を付して説明を省略する。他の実施例は、アキュムレータ25の低圧連絡管31が、複数の先細部を有する点が実施例と異なる。
(他の実施例)
図11は、他の実施例におけるアキュムレータ25を示す縦断面図である。図12Aは、他の実施例におけるアキュムレータ25の要部を説明するための縦断面図である。図12Bは、他の実施例におけるアキュムレータ25の要部を説明するための縦断面図である。
他の実施例におけるアキュムレータ25の各低圧連絡管31T、31Sは、上述した実施例における先細部32である第1先細部32に加えて、上端側に設けられた第2先細部33を有する。すなわち、2つの低圧連絡管31T、31Sの各々には、上端とアキュムレータ容器26の下部との間に、複数の先細部としての第1先細部32及び第2先細部33が設けられている。
低圧連絡管31Tは、上端から第1先細部32まで連続して形成された直管状の第1連絡管31aと、アキュムレータ容器26の下部に接続されると共に上吸入管105に接続されたL字状の第2連絡管31bと、上端から第2先細部33まで連続して形成された直管状の第3連絡管31cと、を有する。同様に、低圧連絡管31Sは、上端から第1先細部32まで連続して形成された直管状の第1連絡管31aと、アキュムレータ容器26の下部に接続されると共に下吸入管104に接続されたL字状の第2連絡管31bと、上端から第2先細部33まで連続して形成された直管状の第3連絡管31cと、を有する。
第1連絡管31aの下端部に設けられた第1先細部32は、第2連絡管31bの上端部の内部に挿入されることで、第1連絡管31aと第2連絡管31bとが連結されている。第3連絡管31cの下端部に設けられた第2先細部33は、第1連絡管31aの上端部の内部に挿入されることで、第3連絡管31cと第1連絡管31aとが連結されている。
各低圧連絡管31T、31Sにおける第1先細部32は、上述した式1、2をそれぞれ満たしている。第2先細部33についても、第1先細部32と同様に、式1、2をそれぞれ満たしている。
すなわち、図12Aに示すように、2つの低圧連絡管31T、31Sは、第2先細部33の先端における第2先細部33の内面の流路断面積をS1[mm2]、第2先細部33の先端の位置における低圧連絡管31T、31Sの内面の流路断面積をS2[mm2]として、
S2×0.4≦S1≦S2×0.7 ・・・・(式1)
を満たす。
第1先細部32と同様に、低圧連絡管31の直管部分の流路断面積S2に対して第2先細部33の先端の流路断面積S1が式1を満たすときに適正化されるので、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を効果的に高めることが可能となる。
また同様に、第2先細部33は、図12Bに示すように、第2先細部33の先端における内径をD1[mm]、第2先細部33における冷媒の流れ方向(管軸方向)の長さをL[mm]として、
D1≦L ・・・(式2)
を満たす。
第1先細部32と同様に、第2先細部33の形状(縮径率)が式2を満たすことにより、アキュムレータ容器26内からシリンダ121に向かって低圧連絡管31T、31Sを流れる冷媒の流動抵抗を低減し、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を効果的に高めることが可能となる。
アキュムレータ容器26の内部における第2先細部33の位置が限定されるものではなく、必要に応じて、各低圧連絡管31T、31Sの上端と下端との間の中央に配置されてもよい。また、低圧連絡管31T、31Sが有する先細部の個数が限定されるものではなく、第3先細部が設けられてもよく、個々の先細部における流動抵抗が大きくなるのを抑えながら、複数の先細部による総合的な流動抵抗が大きくされてもよい。また、この場合、各先細部の縮径率を小さく抑えられるので、各先細部の加工性が高められる。
他の実施例においても、低圧連絡管31が、第1先細部32及び第2先細部33を備えることにより、アキュムレータ25の低圧連絡管31を冷媒が逆流することを抑えることができる。その結果、2つのシリンダ121における各吸入工程での互いの冷媒ガスの流れの干渉によって発生する損失を低減し、ロータリ圧縮機1全体の循環流量を向上することができる。
また、低圧連絡管31が複数の先細部を有することで、個々の先細部の縮径率が大きくなるのを避けながら、複数の先細部によって、冷媒が逆流したときの所望の流動抵抗を確保し、冷媒の逆流を適正に抑えることが可能になる。さらに、他の実施例によれば、第1先細部32のみを有する構造と同等の効果が得られるように第1先細部32と第2先細部33を有することによって、1つの先細部の縮径率を小さくすることが可能になり、個々の先細部の加工性を高めることができる。なお、複数の先細部は、必要に応じて、縮径率を異ならせてもよい。