JP7221529B2 - 処理方法 - Google Patents

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本発明は、処理方法に関する。特に、リンと重金属を含む被処理物に対する処理方法に関する。
汚泥灰は、一般に、有用性の高い資源としてのリンを多く含んでおり、リンを分離回収し、有効利用する試みがある(例えば、特許文献1参照)。
このように、汚泥灰は、一般に、有用性の高い資源としてのリンを多く含んでいるものの、その一方で、比較的高い含有率で重金属も含んでいる。リンとともに重金属を含んでいると、リンを有効利用するためには、あらかじめ重金属を除去する必要がある。
しかしながら、従来の方法では、リンの回収率が低く、また、リン回収後の固形分に残る重金属の含有率を十分に低くすることができなかった。リン回収後の固形分に含まれる重金属の含有量を低くするためには、多大なコストがかかるという問題があった。そのため、汚泥灰は、有用成分としてのリンを多く含むにもかかわらず、産業廃棄物として埋め立て処分されており、資源の有効活用や環境保護の観点から大きな問題となっていた。また、汚泥灰からリンを回収したとしても、リン除去後の固形分中における重金属の含有率、リンの含有率が高く、リン回収後に残る固形分の量も多く、有効利用が困難であるという問題があった。
特許第5647838号公報
本発明の目的は、リンおよび重金属を含む被処理物から、低コストで効率よくリンおよび重金属を分離するとともに、リンおよび重金属が除去された固形分を有効に利用することができる処理方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の処理方法は、リンおよび重金属を含む被処理物と、塩素の含有率が1質量%以上36質量%以下である塩酸とを混合し、前記被処理物中に含まれるリンおよび重金属を溶解させる第1の溶解工程と、
前記第1の溶解工程で得られた混合物から、リンおよび重金属が溶解した第1の液体と、固体成分としての残渣とを分離する第1の固液分離工程と、
前記残渣と、水酸化ナトリウムを含む液体とを混合して反応させるアルカリ混合工程と、
前記アルカリ混合工程で得られた反応混合物を固液分離する第2の固液分離工程と、
前記第1の液体を析出剤であるCa系物質と混合するとともにpHを上昇させ、リンおよび重金属を含む第1の固体を析出させ、当該第1の固体および液体成分L3を含む混合物を得る第1の析出工程と、
前記第1の固体を前記液体成分L3と分離する第3の固液分離工程と、
前記第1の固体中に含まれるリンをアルカリ性の液体で溶解させる第2の溶解工程と、
前記第2の溶解工程で得られた混合物から、リンが溶解した第2の液体と、重金属を含む固体成分とを分離する第4の固液分離工程と、
前記第2の液体を析出剤であるCa系物質と混合するとともにpHを低下させ、リンを含む第2の固体を析出させ、当該第2の固体および液体成分L6を含む混合物を得る第2の析出工程と、
前記第2の固体と前記液体成分L6とを分離する第5の固液分離工程とを有し、
前記アルカリ混合工程は、前記第1の固液分離工程で分離された固体成分としての前記残渣の質量に対する前記水酸化ナトリウムを含む液体の質量の比率が2以上200以下、処理温度が20℃以上90℃以下、処理時間が1分間以上20分間以下、前記アルカリ混合工程の終了時における前記反応混合物のpHが2以上12以下となる条件で行うものであり、
少なくとも前記アルカリ混合工程および前記第2の固液分離工程を含む一連の工程を2回以上3回以下、繰り返し行い、
前記第2の固液分離工程で分離された液相を前記第2の溶解工程に再利用し、
前記第3の固液分離工程で分離された前記液体成分L3を前記第1の析出工程に再利用し、
前記第5の固液分離工程で分離された前記液体成分L6を前記第2の析出工程に再利用することを特徴とする。
本発明の処理方法は、前記第2の固液分離工程の後に、分離された固形分を洗浄する洗浄工程をさらに有していることが好ましい。
本発明の処理方法は、前記第2の固液分離工程の後に、分離された固形分を乾燥する乾燥工程をさらに有していることが好ましい。
本発明によれば、リンおよび重金属を含む被処理物から、低コストで効率よくリンおよび重金属を分離するとともに、リンおよび重金属が除去された固形分を有効に利用することができる処理方法を提供することができる。
図1は、本発明の処理方法の好適な実施形態を示す工程図である。 図2は、第1の析出工程の終了時における液相のpHと、最終的なリンの回収率との関係を模式的に示す図である。 図3は、本発明の処理方法に用いる処理システムの好適な実施形態を示す模式図である。 図4は、アルカリ混合工程と固液分離工程の回数と溶出する塩化物イオン濃度の関係を示すグラフである。すなわち、実施例1~10で得られた処理物中での塩化物イオン濃度を示すグラフである。 図5は、アルカリ混合工程での処理温度による塩素の溶出量の変化を示すグラフである。 図6は、アルカリ混合工程での処理時間による塩素の溶出量の変化を示すグラフである。 図7は、アルカリ混合工程で用いる固体の質量に対する液体の質量の比率(固液比)による塩素の溶出量の変化を示すグラフである。 図8は、実験例A1で得られた第2の固体について、リンおよび主要金属元素の回収率(被処理物中に含まれていた量に対する第2の固体中に含まれている量の比率)を示すグラフである。 図9は、実験例A1で得られた第2の固体についての、水溶性試験、ク溶性試験の結果を示すグラフである。 図10は、被処理物(汚泥灰)について、酸処理またはアルカリ処理を施した場合のリンの溶出率と、酸・アルカリの濃度との関係の一例を示すグラフである。 図11は、第1の溶解工程での酸性の液体の温度、撹拌時間を変更した場合のリンの溶出率の変動を示すグラフである。 図12は、被処理物(汚泥灰)を所定のpHの液体で処理した場合の各金属の溶出率の一例を示すグラフである。 図13は、被処理物(汚泥灰)を所定のpHの液体で処理した場合の各金属の溶出率の一例を示すグラフである。 図14は、被処理物(汚泥灰)を、所定の酸性の液体で処理した場合の処理温度と各金属の溶出率との関係の一例を示すグラフである。
[処理方法]
図1は、本発明の処理方法の好適な実施形態を示す工程図である。
本発明の処理方法は、リンおよび重金属を含む被処理物と酸性の液体とを混合し、前記被処理物中に含まれるリンおよび重金属を溶解させる第1の溶解工程と、リンおよび重金属が溶解した第1の液体と、固体成分としての残渣とを分離する第1の固液分離工程と、前記残渣と、アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体とを混合して、残渣部分のハロゲンを清浄(反応)させるアルカリ混合工程と、前記アルカリ混合工程で得られた反応混合物を固液分離する第2の固液分離工程とを有する。
これにより、リンと重金属を含む被処理物から、低コストで効率よくリンと重金属を分離するとともに、リンと重金属が除去された固形分を有効に利用できる、すなわち、ハロゲンが好適に除去された状態の固形分を回収することができる処理方法を提供することにある。
特に、重金属の含有率が十分に低いだけでなく、ハロゲンの含有率も低く、例えば、セメント原料、レンガ、コンクリート、モルタル等の建設資材や、土壌改良材や埋め立て用材等に好適に用いることができる固体材料を提供することができる。特に、塩素の含有率を低くすることにより、例えば、セメント原料、レンガ等を製造工程で金属の腐食等の問題を生じにくくすることができる。また、フッ素や臭素の含有率も低くすることにより、例えば、環境への負荷を低下させることができる。なお、本発明において、「ハロゲン」とは、元素としてのハロゲン(ハロゲン元素)のことを指し、分子を構成するハロゲン原子に加え、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等)やハロゲン原子を含むオキソ酸イオン等のイオン状態のものも含む概念である。また、本発明において、「アルカリ系金属塩」とは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンを含む塩のことを指す。
また、リンと重金属が含まれている第2の固液分離工程で得られた液相は、吸着等の処理により、リンと重金属とを好適に分離する処理を行う。または、リンの含有量が高い液相(洗浄液)は第1の析出工程に送って処理してもよいし、洗浄液のリンと重金属の含有量が定まれた環境規制基準値より十分に低いときには下水処理水とともに放流してもよい。
このような優れた効果が得られるのは、所定の工程を所定の順番で行うこと、すなわち、被処理物と酸性の液体とを混合する第1の溶解工程の後に、アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体を用いたアルカリ混合工程を行うことにより得られるのであって、例えば、これらのうちの一方のみを行う場合、またはこれらの工程の順序を入れ替えた場合等には、上記のような優れた効果は得られない。
なお、本発明では、重金属とは、対応する単体金属が、25℃において、鉄の比重よりも大きい比重を有する金属元素のことをいう。
<第1の溶解工程>
第1の溶解工程では、リンおよび重金属を含む被処理物と、酸性の液体とを混合する。
これにより、被処理物中に含まれるリンおよび重金属を溶解させる。
なお、被処理物中において、リンは、通常、酸化物(P等)やリン酸、リン酸塩等の形態で含まれている。以下の説明では、これらの形態を含めて原子としてのリンを含む化合物(イオン性物質を含む)や当該化合物中に含まれるリン原子のことを、単にリンということがある。
また、被処理物中において、重金属は、金属酸化物(複酸化物を含む)や単体金属、合金、金属塩等の形態で含まれている。以下の説明では、これらの形態を含めて原子としての重金属を含む化合物(イオン性物質を含む)や当該化合物中に含まれる重金属原子のことを、単に重金属ということがある。
本工程で用いる被処理物は、リンおよび重金属を含んでいれば、いかなるものであってもよいが、リンおよび重金属に加え、Fe、Al、Mg等の不純物を含んでいるのが好ましい。
これにより、本工程において、被処理物中に含まれるリンおよび重金属とともに、Fe、Al、Mg等の不純物を溶解させることができる。これらの成分は、後の第1の析出工程において、不純物として機能し、リン酸塩(特に、例えば、リン酸水素カルシウム2水和物、リン酸カルシウム等のリン酸のカルシウム塩)の結晶の粗大化をより効果的に防止することができる。その結果、形成されるリン酸塩の結晶は、比較的不安定で、アルカリ性の液体で溶解しやすくなる。その結果、第2の溶解工程で、より高い選択性で、リン酸塩を溶解させることができる。
被処理物は、リンおよび重金属を含むものであればよく、例えば、汚泥を焼却処理して得られる汚泥灰、鉄鋼スラグ、キノコ排菌床の燃焼灰等の産業廃棄物等が挙げられるが、汚泥灰であるのが好ましい。
汚泥灰は、一般に、重金属とともに、貴重な資源であるリンを含んでおり、また、世界各地で大量に発生している。したがって、被処理物として汚泥灰を用いることにより、リンおよび重金属が除去された固形分を安定的かつ大量に供給することができ、例えば、セメント原料、レンガ、コンクリート、モルタル等の建設資材や、土壌改良材や埋め立て用材等のように、使用量が多く、かつ、安定的な需要がある用途に特に好適に適用することができる。また、産業廃棄物量の削減効果が特に大きく、貴重な資源であるリンも多量に回収できる。また、汚泥灰は、一般に、リンおよび重金属とともに、Fe、Al、Mg等の不純物をより適切な割合で含有している。したがって、上記のようなリン酸塩の結晶粒径の制御をより好適に行うことができ、重金属の分離効率、リンの回収効率をより向上させることができる。また、汚泥灰からリンを回収処理した処理物には、一般にハロゲン(特に、塩素)を比較的高い含有率で含んでおり、汚泥灰の処理中において比較的高い含有率でハロゲン(特に、塩素)が含まれることが多く、当該処理物を有効利用しようとする際の弊害になっていた。これに対し、本発明の処理方法では、被処理物として汚泥灰を用いた場合に、ハロゲン含有率が特に低く、各種用途に有効利用しやすい固形分を得ることができる。言い換えると、被処理物として汚泥灰を用いることにより、本発明による効果がより顕著に発揮される。
本工程で用いる酸性の液体は、特に限定されないが、pH(水素イオン指数)が-1.0以上1.5以下の強酸であるのが好ましい。
これにより、安全性を確保しつつ、酸性の液体の使用量を抑制し、本工程を効率よく行うことができる。また、本工程での処理後の組成物(被処理物と酸性の液体との混合物)の体積が大きくなりすぎることを効果的に防止することができる。また、その後の工程のし易さ、処理すべき廃液量の削減の観点からも好ましい。
本工程で用いる酸性の液体のpHは、上記のように、-1.0以上1.5以下であるのが好ましいが、特に、-0.8以上1.3以下であるのがより好ましく、0.5以上1.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
本工程で用いる酸性の液体としては、例えば、硫酸、硝酸、酢酸や、フッ化水素、フッ素酸またはその塩、亜フッ素酸またはその塩、次亜フッ素酸またはその塩、過フッ素酸またはその塩、臭化水素、臭素酸またはその塩、亜臭素酸またはその塩、次亜臭素酸またはその塩、過臭素酸またはその塩、ヨウ化水素、ヨウ素酸またはその塩、亜ヨウ素酸またはその塩、次亜ヨウ素酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩を含む液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を含む液体を用いてもよいが、本工程で用いる酸性の液体は、塩素を含む液体であるのが好ましい。
リンおよび重金属を含む被処理物の処理に塩素を含む酸性の液体を用いた場合、最終的に得られる固形分としての処理物中にも、比較的高い含有率で塩素が含まれやすいという問題があったが、本発明によれば、第1の溶解工程で用いる酸性の液体が塩素を含むものであっても、最終的に得られる固形分、すなわち、リンおよび重金属が除去された固形分中における塩素の含有率を十分に低いものとすることができる。言い換えると、前記酸性の液体が、塩素を含む液体であることにより、本発明による効果がより顕著に発揮される。また、塩素を含む酸性の化合物、塩素を含む酸性の液体は、一般に、安価で、入手、調製が容易であるとともに、フッ素系化合物等の他の酸性物質に比べて、安全性が高い。また、他の酸性物質に比べて、アルカリ混合工程等での除去が容易で、最終的に得られる固形分、すなわち、リンおよび重金属が除去された固形分中における塩素の含有率をより確実に低いものとすることができる。
塩素を含む酸性の液体としては、例えば、塩化水素、塩素酸およびその塩、亜塩素酸およびその塩、次亜塩素酸およびその塩、ならびに、過塩素酸およびその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む液体が挙げられるが、中でも、塩化水素を含むものであるのが好ましく、塩酸であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。また、このような酸性の液体を用いることにより、当該酸性の液体由来の塩素が最終的に得られる固形分中に残存することがより好適に防止される。特に、酸性の液体として塩酸を用いる場合、当該酸性の液体は、安価で入手が容易であり、多量の被処理物を安定的に処理する上で、より好ましい。
本工程で用いる酸性の液体が塩素を含むものである場合、当該酸性の液体中における塩素の含有率(ただし、塩素原子に換算した場合の含有率)は、特に限定されないが、1質量%以上37質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上36質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以上36質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
本工程の終了時における液相(リンおよび重金属が溶解した第1の液体)のpHは、特に限定されないが、-0.7以上6.8以下であるのが好ましいが、特に、-0.3以上6.5以下であるのがより好ましく、0.0以上6.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、リンおよび重金属をより効率よく溶出させることができ、本工程の終了時における固相中におけるリンおよび重金属の残存量をより確実に少なくすることができる。また、後に詳述する第1の析出工程より前にリンや重金属が不本意に析出することをより確実に防止することができる。
本工程の終了時における液相中へのリンの溶解率は、特に限定されないが、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、有用物質であるリンをより効率よく回収することができる。
また、本工程は、被処理物と酸性の液体との混合物を撹拌しつつ行うのが好ましい。
これにより、被処理物と酸性の液体とをより効率よく接触させることができ、より効率よく、リンおよび重金属を溶解させることができる。
被処理物と酸性の液体との混合物の撹拌には、各種撹拌装置、各種混合装置を用いることができる。
また、本工程は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
<第1の固液分離工程>
第1の固液分離工程では、リンおよび重金属が溶解した第1の液体と、固体成分としての残渣とを分離する。
これにより、重金属を実質的に含まない固体を得ることができる。また、このようにして得られる固体は、リンの含有率が十分に低く、被処理物中に含まれていたリンのほとんどは第1の液体中に含まれる。したがって、当該本工程で得られる固体は、セメント原料、レンガ、コンクリート、モルタル等の建設資材や、土壌改良材や埋め立て用材等の各種用途に好適に用いることができる固体材料の原料として好適であるとともに、有限な資源であるリンの回収、再利用の観点からも好ましい。
固液分離の方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられ、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
また、本工程では、必要に応じて、一旦分離された固相を水等により洗浄してもよい。
これにより、酸成分の含有率、固体中のリン、重金属、ハロゲンの含有率をより低くすることができる。
なお、固相の洗浄に用いた液体は、回収後、先の第1の固液分離工程により得られた液相と合わせて、後に詳述する第1の析出工程に用いてもよい。
固液分離された固相中におけるリンの含有率は、6質量%以下であるのが好ましく、3質量%以下であるのがより好ましく、1.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
固液分離された固相中における重金属の含有率(複数種の重金属元素を含む場合には、各重金属元素。以下、同様。)は、本発明の処理方法に供される被処理物中にもともと含有されていた量に対して、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以下であるのがさらに好ましい。
<アルカリ混合工程>
アルカリ混合工程は、前述した第1の固液分離工程で分離された固相に対して処理を行う工程である。
より具体的には、アルカリ混合工程では、前述した第1の固液分離工程で分離された固相と、アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体とを混合して反応させる。
これにより、前記固相中に含まれていたハロゲンを好適に反応(洗浄)させることができる。特に、前記固相の表面に吸着しているハロゲン(特に、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン)を好適に除去することができる。したがって、最終的に得られる固形分中に含まれるハロゲンの含有率を十分に低いものとすることができる。
本工程で用いる前記液体(アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体)は、特に限定されないが、pH(水素イオン指数)が14以下の強アルカリであるのが好ましい。
これにより、安全性を確保しつつ、前記液体の使用量を抑制し、本工程を効率よく行うことができる。また、本工程での処理後の組成物(廃液)の体積が大きくなりすぎることを効果的に防止することができる。また、その後の工程のし易さ、処理すべき廃液量の削減の観点からも好ましい。さらに、アルカリ性の液体の使用量を減らすため、第1の固液分離工程で分離された固相を水で洗浄した後に、アルカリ混合工程を実施してもよい。
本工程で用いる前記液体(アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体)のpHは、上記のように、14以下であるのが好ましいが、特に、6以上13以下であるのがより好ましく、7超13以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
本工程で用いるアルカリ性の液体、アルカリ系金属塩を含む液体としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等の各種金属の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩等の各種金属の炭酸塩、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等の各種アミンを含む液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を含む液体を用いることができる。
中でも、本工程で用いる前記液体(アルカリ性の液体、アルカリ系金属塩を含む液体)は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸マグネシウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含む水溶液であるのがより好ましい。
これにより、第1の固液分離工程で分離された固相中に含まれるハロゲン、特に、塩化物イオン(Cl)等のイオンの状態で固体に吸着しているハロゲンを、固相からより効率よく脱離、除去することができ、最終的に得られる固形分中におけるハロゲンの含有率をより低くすることができる。また、比較的短時間の処理、比較的温和な条件での処理で、第1の固液分離工程で分離された固相からハロゲンを効率よく脱離、除去することができる。
本工程における処理温度(すなわち、反応液の温度)は、特に限定されないが、0℃以上99℃以下であるのが好ましく、10℃以上95℃以下であるのがより好ましく、20℃以上90℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ハロゲンの除去率をより高めることができるとともに、省エネルギーの観点からも有利である。
本工程における処理時間(すなわち、反応時間)は、長くしてもよいが、1分間以上120分間以下であるのが好ましく、2分間以上60分間以下であるのがより好ましく、3分間以上20分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ハロゲンの除去率をより高めることができるとともに、処理時間の短縮の観点からも有利である。
本工程で用いる固体(第1の固液分離工程で分離された固相)の質量に対する液体の質量の比率(固液比)は、特に限定されないが、2以上200以下であるのが好ましく、10以上120以下であるのがより好ましく、20以上80以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ハロゲンの除去率をより高めることができるとともに、第2の固液分離工程で発生する液相の量が必要以上に多くなることを効果的に防止することができる。
本工程の終了時における前記反応混合物のpHは、特に限定されないが、2以上12以下であるのが好ましいが、特に、4以上8以下であるのがより好ましい。
これにより、第1の固液分離工程で分離された固相中に含まれるハロゲン、特に、塩化物イオン(Cl)等のイオンの状態で固体に吸着しているハロゲンを、固相からより効率よく脱離、除去することができ、最終的に得られる固形分中におけるハロゲンの含有率をより低くすることができる。また、例えば、後に詳述する第2の固液分離工程で分離される液相を排水する際の中和等の処理を省略または簡略化することができる。また、例えば、後述する洗浄工程を省略または簡略化することができる。
また、本工程は、前記残渣(すなわち、第1の固液分離工程で分離された固相)と前記液体(すなわち、アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体)との混合物を撹拌しつつ行うのが好ましい。
これにより、前記残渣と前記液体とをより効率よく接触させることができ、前記固相中に含まれていたハロゲンをより好適に溶出させることができ、最終的に得られる固形分中に含まれるハロゲンの含有率をより低いものとすることができる。
前記残渣と前記液体との混合物の撹拌には、各種撹拌装置、各種混合装置を用いることができる。
また、本工程は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
<第2の固液分離工程>
第2の固液分離工程では、前述したアルカリ混合工程で得られた反応混合物を固液分離する。
これにより、ハロゲンを多く含む液相と、ハロゲンの含有率が低下した固相とに分離し、ハロゲンの含有量が低下した固相を得ることができる。
固液分離の方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられ、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
図1に示す各工程は、それぞれ、少なくとも1回行えばよいが、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程を含む一連の工程を繰り返し行うのが好ましい。
これにより、第1の固液分離工程で分離された固相中に含まれるハロゲン、特に、塩化物イオン(Cl)等のイオンの状態で固体に吸着しているハロゲンを、固相からより効率よく脱離、除去することができ、最終的に得られる固形分中におけるハロゲンの含有率をより低くすることができる。また、1回のアルカリ混合工程で用いる前記液体の量を比較的少なくした場合であっても、上記のような効果が確実に得られ、アルカリ混合工程で用いる前記液体の総量の少なさと、最終的に得られる固形分中におけるハロゲンの含有率の低さと、本発明の処理方法に要する時間の短さとのバランスを特に優れたものとすることができる。
少なくともアルカリ混合工程および第2の固液分離工程を含む一連の工程を繰り返し行う場合、当該一連の工程の処理回数(繰り返し回数)は、特に限定されないが、2回以上5回以下であるのが好ましく、2回以上4回以下であるのがより好ましく、2回以上3回以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
前記一連の工程には、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程に加えて、さらに、他の工程を含んでいてもよい。当該他の工程としては、例えば、後に詳述する洗浄工程、乾燥工程等が挙げられる。
なお、第2の固液分離工程で得られた液相は、後に詳述する第1の溶解工程または第2の溶解工程等に用いてもよい。
<洗浄工程>
本実施形態では、第2の固液分離工程の後に、第2の固液分離工程で分離された固形分(固相)を洗浄する洗浄工程をさらに有している。
これにより、固形分中のハロゲンの含有率をより低くすることができる。また、固形分中の酸成分、アルカリ成分、塩成分、リンおよび重金属の含有率をさらに低くすることができる。
洗浄工程で行う洗浄としては、例えば、水洗や洗剤による洗浄、有機溶媒を用いた洗浄等が挙げられるが、水洗が好ましい。
なお、固形分の洗浄に用いた液体は、回収後、例えば、後に詳述する第1の溶解工程等に用いてもよい。
<乾燥工程>
本実施形態では、第2の固液分離工程の後、特に、洗浄工程の後に、第2の固液分離工程で分離された固形分(固相)を乾燥する乾燥工程をさらに有している。
これにより、固形分の取り扱いが容易となる。
乾燥工程は、例えば、第2の固液分離工程で分離された固形分(固相)を加熱する方法、第2の固液分離工程で分離された固形分(固相)を減圧環境下に置く方法、第2の固液分離工程で分離された固形分(固相)に乾燥ガスを吹き付ける方法、自然乾燥する方法や、これらのうちの2つ以上を組み合わせた方法により行うことができる。
乾燥工程においては、第2の固液分離工程で分離された固形分(固相)が粉末状、ペースト状等である場合、例えば、当該固形分を、撹拌した状態、噴霧した状態、流動させた状態として乾燥してもよい。
これにより、当該固形分の乾燥をより効率よく行うことができる。
乾燥工程を加熱により行う場合、加熱温度は、特に限定されないが、30℃以上300℃以下であるのが好ましく、60℃以上200℃以下であるのがより好ましく、80℃以上150℃以下であるのがさらに好ましい。
前述したアルカリ混合工程ないし乾燥工程の各工程は、第1の固液分離工程で分離された固相に対して処理を行う工程であるが、第1の固液分離工程で分離された液相(第1の液体)に対しては、所定の処理を施す工程を行ってもよい。
以下、本実施形態の処理方法において、第1の固液分離工程で分離された液相(第1の液体)に対して行う各工程について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、第1の固液分離工程で分離された液相である第1の液体を析出剤と混合するとともにpHを上昇させ、リンおよび重金属を含む第1の固体を析出させる第1の析出工程と、前記第1の固体を液体成分と分離する第3の固液分離工程と、前記第1の固体中に含まれるリンをアルカリ性の液体で溶解させる第2の溶解工程と、リンが溶解した第2の液体を、重金属を含む固体成分と分離する第4の固液分離工程とを有しており、さらに、第4の固液分離工程の後に、前記第2の液体を析出剤と混合するとともにpHを低下させ、リンを含む第2の固体を析出させる第2の析出工程と、リンを含む第2の固体(固相)と液体成分(液相)とを分離する第5の固液分離工程とを有している。
これにより、リンおよび重金属を含む被処理物から、低コストで効率よく重金属を分離することができる。特に、有用成分であるリンと重金属とを効率よく分離することができる。
また、重金属を除去した後に後処理を行うことにより、リンを、重金属の含有率が極めて低い状態で回収することができる。その結果、有用性の高い資源としてのリンを、被処理物中から好適に回収し、好適に再利用することができる。また、被処理物から、非常に高い回収率(例えば、80%以上)でリンを回収することができる。
特に、酸を用いた第1の溶解工程の後に、アルカリを用いた第1の析出工程を行うことにより、第1の析出工程で析出するリン酸塩(例えば、リン酸水素カルシウム2水和物、リン酸カルシウム等)の結晶粒径を好適に制御すること(より具体的には微結晶として析出させること)ができ、その後のアルカリを用いた第2の溶解工程で、リン酸塩を高い溶解率で溶解させることができ、リンを高い回収率で回収することができる。
<第1の析出工程>
第1の析出工程では、第1の固液分離工程で固体成分(固相)から分離された第1の液体を、析出剤と混合するとともにpHを上昇させ、リンおよび重金属を含む第1の固体を析出させる。特に、リンをリン酸塩(例えば、リン酸水素カルシウム2水和物、リン酸カルシウム等)として析出させる。
これにより、後の工程における、リンおよび重金属以外を含む物質の取り扱いが容易となる。また、リンおよび重金属以外を含む物質中におけるリンおよび重金属以外の成分の含有率を低下させることができ、重金属の分離における選択性や、リンの回収における不純物の混入量を低下させることができる。
また、このような条件でリン酸塩を析出させることにより、当該リン酸塩の核生成および成長を好適に制御することができ、当該リン酸塩を微結晶として析出させることができる。その結果、後の第2の溶解工程において、当該リン酸塩を溶解させやすくすることができ、リン(溶解状態)を重金属(固体状態)から好適に分離することができる。
また、被処理物が、リンおよび重金属とともに、Fe、Al、Mg等の不純物を含んでいると、本工程において、当該不純物がリン酸塩(特に、リン酸のカルシウム塩)の結晶の粗大化をより効果的に防止することができる。これにより、形成されるリン酸塩の結晶は、比較的不安定で、アルカリ性の液体で溶解しやすくなる。その結果、後の工程で、より高い選択性で、リン酸塩を溶解させることができる。
本工程では、析出剤と混合するとともにpHを上昇させることができれば、どのような物質、組成物を用いてもよいが、pHが10以上のアルカリ性液体を用いるのが好ましい。
これにより、混合物のpHを好適に上昇させることができ、リンおよび重金属を含む第1の固体をより効率よく析出させることができる。また、後の第3の固液分離工程の完了前にリンや重金属が不本意に再溶解してしまうことをより確実に防止することができる。また、本工程において析出する析出物中に含まれるリン酸塩の結晶が粗大化することをより効果的に防止することができる。
析出剤は、リン酸塩等の析出を促進する機能を有していればよく、例えば、CaCl、Ca(OH)、CaCO等のCa系物質、Al塩等のAl系物質、Fe塩等のFe系物質、Mg塩等のMg系物質等を用いることができるが、Ca系物質を用いるのが好ましい。これにより、本工程で、リンをリン酸のカルシウム塩(例えば、リン酸水素カルシウム2水和物、リン酸カルシウム等)として析出させることができ、後の工程をより好適に行うことができる。
本工程では、pHが10以上のアルカリ性液体を用いるのが好ましいが、当該アルカリ性液体のpHは、11以上であるのがより好ましく、12以上14以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮されるとともに、当該アルカリ性液体を容易かつ安定的に入手することができる。
また、本工程で、アルカリ性カルシウム化合物(イオン性物質)を用いるのが好ましく、CaCl、Ca(OH)、CaCOおよび、Al、Mg、Fe成分を持つ塩化物よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのがより好ましく、CaCl、Ca(OH)およびCaCOよりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのがさらに好ましく、CaClを用いるのがもっとも好ましい。
これにより、これらのカルシウム化合物は、析出剤として好適に機能させることができ、リン酸のカルシウム塩の一部となるカルシウム成分を系内に効率よく供給しつつ、混合物のpHを好適に調整することができる。その結果、本工程で、第1の液体に混合される物質の使用量を抑制し、本工程を効率よく進行させることができる。また、本工程での混合物中における、カルシウム含有率とpHとのバランスを好適に調整することができ、リンおよび重金属の析出効率を向上させつつ、第1の液体中における不純物の含有率をより低くすることができる。また、後の第3の固液分離工程の完了前にリンや重金属が不本意に再溶解してしまうことをより確実に防止することができる。
本工程の終了時における液相のpHは、1.0以上12以下であるのが好ましく、1.5以上9.0以下であるのがより好ましく、2.0以上8.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、後の第3の固液分離工程の完了前にリンや重金属が不本意に再溶解してしまうことをより確実に防止することができる。
また、pHの上昇に用いる材料の使用量が必要以上に多くなることを防止しつつ、液相中に残存するリン、重金属の量をより少なくすることができる。
また、粒径が適度に小さく、不安定なリン酸塩の結晶を多く含む析出物を得ることができる。その結果、後の第2の溶解工程で、リン酸塩をより効率よく溶解させることができる。
これに対し、本工程の終了時における液相のpHが低すぎると、リンの析出率が低下して最終的なリンの回収率が低下する。
また、本工程の終了時における液相のpHが高すぎると、本工程で得られる析出物(第1の固体)中に含まれるリンのアルカリ性の液体への溶解度、溶解速度が低くなり、最終的なリンの回収率が低下する。
図2は、第1の析出工程の終了時における液相のpHと、最終的なリンの回収率との関係を模式的に示す図である。
本工程では、以下の条件を満足するように、カルシウムを加えるのが好ましい。すなわち、本工程の終了時における系内のリンの物質量をX[mol]、カルシウムの物質量をXCa[mol]としたとき、1.0≦XCa/X≦4.0の関係を満足するのが好ましく、1.3≦XCa/X≦3.0の関係を満足するのがより好ましく、1.5≦XCa/X≦2.5の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、第1の液体中に含まれていたリンをリン酸のカルシウム塩としてより好適に析出させること(ほぼ100%析出させること)ができ、溶解状態で液相中に残存するリンの割合を特に低くさせることができる。また、本工程において析出する析出物中に含まれるリン酸のカルシウム塩の結晶が粗大化することをより効果的に防止することができる。
<第3の固液分離工程>
第3の固液分離工程では、リンおよび重金属を含む第1の固体を、液体成分と分離する。
これにより、高濃度のリンおよび重金属を含む固体(第1の固体)と、重金属を実質的に含まない液相とに分離することができる。また、一般に、液相中に含まれるリンの含有量は十分に少ない。
このような液相(重金属を実質的に含まず、リンの含有量が十分に少ない液相)は、環境に対する負荷が小さく、排水しても問題がない。また、固液分離された液相は、例えば、第1の析出工程や後述する第2の析出工程等に再利用してもよい。これにより、カルシウムを比較的高い含有率で含む液体を再利用することができ、資源のさらなる有効利用の観点から好ましい。
固液分離の方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられ、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
また、本工程では、必要に応じて、一旦分離された固相を水等により洗浄してもよい。
固液分離された液相中におけるリンの含有率は、1000ppm以下であるのが好ましく、100ppm以下であるのがより好ましく、10ppm以下であるのがさらに好ましい。
固液分離された液相中における重金属の含有率は、4000ppm以下であるのが好ましく、500ppm以下であるのがより好ましく、0.1ppm以下であるのがさらに好ましい。
<第2の溶解工程>
第2の溶解工程では、第1の固体中に含まれるリンをアルカリ性の液体で溶解させる。
このようにアルカリ性の液体を用いることにより、第1の固体中に含まれる重金属の溶解を防止しつつ、リンを選択的に溶解させることができる。特に、前述したように、第1の析出工程では、所定の条件でリン酸塩を析出させているため、当該リン酸塩の核生成および成長が好適に制御され、当該リン酸塩がアルカリに溶解しやすい状態になっている。その一方で、重金属は、一般に、アルカリ性の液体には、溶解しにくい。その結果、肥料等に利用可能な有用物質としてのリンと、重金属とを好適に分離することができる。また、最終的な固体廃棄物(産業廃棄物)を少なくすることができる。
特に、汚泥灰のような被処理物から直接選択的にリンを溶解させようとする場合(重金属の溶解を防止しつつ、リンを選択的に溶解させようとする場合)に比べて、約3倍の高溶解率でリンを溶解させることができる。
また、前述した工程(特に、第1の固液分離工程)で、被処理物はすでに大幅に減量されているため、本工程では、小型の装置(例えば、従来の方法で用いていた処理装置の5分の1程度の体積の装置)を用いることができる。
本工程で用いるアルカリ性の液体のpHは、特に限定されないが、10以上であるのが好ましく、11以上14以下であるのがより好ましく、12以上14以下であるのがさらに好ましい。
これにより、重金属の再溶解を防止しつつ、リン(リン酸塩)をより効率よく溶解させることができる。また、後の第4の固液分離工程の完了前にリンが不本意に析出してしまうことをより確実に防止することができる。
アルカリ性の液体は、液体全体としてアルカリ性を呈するものであればよく、アルカリ性の液体中に含まれるアルカリ性物質としては、例えば、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Al(OH)等の金属水酸化物、CaCO、MgCO等の金属炭酸塩、アンモニア、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系物質等が挙げられる。
中でも、本工程で用いるアルカリ性の液体は、アルカリ性物質として、金属水酸化物を含んでいるのが好ましく、アルカリ金属の水酸化物を含んでいるのがより好ましく、NaOHを含んでいるのがさらに好ましい。
これにより、重金属の再溶解をより効果的に防止しつつ、第1の固体中に含まれるリンをより効率よく溶解させることができる。また、このようなアルカリ性物質は、安価でかつ入手が容易であり、コスト削減、安定的な処理等の観点からも好ましい。
本工程の終了時における液相のpHは、特に限定されないが、10以上であるのが好ましく、11以上14以下であるのがより好ましく、12以上14以下であるのがさらに好ましい。
これにより、重金属の再溶解をより効果的に防止しつつ、第1の固体中に含まれるリンをより効率よく溶解させることができ、pHの上昇に用いる材料の使用量が必要以上に多くなることを防止しつつ、液相中に残存するリンの量をより少なくすることができる。また、後の第4の固液分離工程の完了前にリンが不本意に析出してしまうことや重金属が不本意に溶解してしまうことをより確実に防止することができる。
<第4の固液分離工程>
第4の固液分離工程では、リンが溶解した第2の液体を、重金属を含む固体成分と分離する。
これにより、リンと重金属とを分離することができる。また、厳重な処理が求められる重金属を固体として取り扱うことができるため、重金属の取り扱いが容易となる。また、重金属を含む材料の体積を大幅に減少させることができるため、例えば、産業廃棄物として処理する場合であってもその処理が容易となる。また、分離された液相は、重金属を実質的に含んでいないため、産業廃棄物として処理する必要がない。
固液分離の方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられ、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
また、本工程では、必要に応じて、一旦分離された固相を水等により洗浄してもよい。
これにより、固体中のリンの含有率をより低くすることができる。
なお、固相の洗浄に用いた液体は、回収後、先の固液分離により得られた液相と合わせてもよい。
固液分離された固相中におけるリンの含有率は、30質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、2質量%以下であるのがさらに好ましい。
固液分離された液相中における重金属の含有率は、1000ppm以下であるのが好ましく、10ppm以下であるのがより好ましく、0.01ppm以下であるのがさらに好ましい。
<第2の析出工程>
本実施形態では、前述した第4の固液分離工程の後に、第2の液体を析出剤と混合するとともにpHを低下させ、リンを含む第2の固体を析出させる第2の析出工程をさらに有している。
これにより、リンを固体状物質であるリン酸塩(例えば、リン酸水素カルシウム2水和物、リン酸カルシウム等)として取り扱うことができ、保管や輸送等をより好適に行うことができる。特に、本工程では、重金属を実質的にほぼ含まない純度の高いリン酸塩を得ることができる。
本工程では、析出剤と混合するとともにpHを下降させることができれば、どのような物質、組成物を用いてもよいが、pHが-1.0以上2以下の酸性液体を用いるのが好ましい。
これにより、混合物のpHを好適に低下させることができ、リンを含む第2の固体をより効率よく析出させることができる。また、後の第5の固液分離工程の完了前にリンが不本意に再溶解してしまうことをより確実に防止することができる。
本工程では、pHが-1.0以上2以下の酸性液体を用いるのが好ましいが、当該酸性液体のpHは、-0.5以上1.3以下であるのがより好ましく、0以上1.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮されるとともに、当該酸性液体を容易かつ安定的に入手することができる。
また、本工程では、析出剤として、リン酸塩等の析出を促進する機能を有するものを用いればよく、例えば、CaCl、Ca(OH)、CaCO等のCa系物質、Al塩等のAl系物質、Fe塩等のFe系物質、Mg塩等のMg系物質等を用いることができる。これにより、アルカリ溶液での溶解性能を調節可能になり、さらに、リン酸塩を、肥料等に有用なリン酸金属塩やリン酸カルシウム塩として得ることができる。
特に、本工程では、CaCl、Ca(OH)およびCaCOよりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのがより好ましく、CaClを用いるのがより好ましい。
これにより、リン酸のカルシウム塩の一部となるカルシウム成分を系内に効率よく供給しつつ、混合物のpHを好適に調整することができる。その結果、本工程で、第2の液体に混合される物質の使用量を抑制し、本工程を効率よく進行させることができる。また、本工程での混合物中における、カルシウム含有率とpHとのバランスを好適に調整することができ、リンの析出効率を向上させつつ、第2の固体中における不純物の含有率をより低くすることができる。また、後の第5の固液分離工程の完了前にリンが不本意に再溶解してしまうことをより確実に防止することができる。
本工程の終了時における液相のpHは、2.0以上12.0以下であるのが好ましく、2.5以上10.0以下であるのがより好ましく、3.0以上8.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、後の第5の固液分離工程の完了前にリンが不本意に再溶解してしまうことをより確実に防止することができる。また、pHの上昇に用いる材料の使用量が必要以上に多くなることを防止しつつ、液相中に残存するリンの量をより少なくすることができる。
本工程では、以下の条件を満足するように、カルシウムを加えるのが好ましい。すなわち、本工程の終了時における系内のリンの物質量をX[mol]、カルシウムの物質量をXCa[mol]としたとき、1.0≦XCa/X≦4.0の関係を満足するのが好ましく、1.3≦XCa/X≦3.0の関係を満足するのがより好ましく、1.5≦XCa/X≦2.5の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、第2の液体中に含まれていたリンをリン酸のカルシウム塩としてより好適に析出させることができ、溶解状態で液相中に残存するリンの割合を特に低くさせることができる。
<第5の固液分離工程>
本実施形態では、前述した第2の析出工程の後に、リンを含む第2の固体(固相)と液体成分(液相)とを分離する第5の固液分離工程を有している。
これにより、リンを含む材料を固体として扱うことができ、その取扱いが容易となる。なお、分離された液相は、重金属を実質的に含んでいないため、産業廃棄液として処理する必要がない。また、分離された液相は、リンの含有率が十分に低いため、当該液相を廃棄しても、有用資源の有効利用の観点から不利ではない。また、分離された第2の固体は、リン酸塩を高純度で含み、重金属の含有率が極めて低いため、肥料等に好適に用いることができる。特に、後処理等を行わなくても、また、後処理を行う場合であっても、簡易な処理で、肥料等に好適に用いることができる。また、固液分離された液相は、例えば、第1の溶解工程や第2の溶解工程等に再利用してもよい。
固液分離の方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられ、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
また、本工程では、必要に応じて、一旦分離された固相を水等により洗浄してもよい。
これにより、固体中のイオンの状態で含まれるハロゲンの含有率をより低くすることができる。
なお、固相の洗浄に用いた液体は、回収後、先の固液分離により得られた液相と合わせてもよい。
固液分離された固相(第2の固体)中における重金属の含有率は、1000ppm以下であるのが好ましく、500ppm以下であるのがより好ましく、10ppm以下であるのがさらに好ましい。
[処理システム]
次に、本発明の処理方法に用いる処理システムについて説明する。
図3は、本発明の処理方法に用いる処理システムの好適な実施形態を示す模式図である。
本実施形態の処理システム100は、前述した各工程を行う部位を備えている。
すなわち、本実施形態の処理システム100は、第1の溶解工程を行う第1の溶解処理部と、第1の固液分離工程を行う第1の固液分離処理部と、アルカリ混合工程を行うアルカリ混合処理部と、第2の固液分離工程を行う第2の固液分離処理部とを備えており、さらに、第2の固液分離処理部で分離された固形分を洗浄する洗浄工程を行う洗浄処理部と、第2の固液分離処理部で分離された固形分、特に、洗浄処理部で洗浄された固形分を乾燥する乾燥工程を行う第1の乾燥処理部とを備えている。より具体的には、本実施形態の処理システム100は、第1の溶解処理部としての第1の溶解槽11と、第1の沈殿槽12と、第1の固液分離処理部としての第1の遠心分離機13と、アルカリ混合処理部としてのアルカリ混合槽14と、第2の固液分離処理部としての第2の沈殿槽15とを備えており、さらに、洗浄処理部としての洗浄槽16と、第1の乾燥処理部としての第1の乾燥機17とを備えている。
また、本実施形態の処理システム100は、第1の析出工程を行う第1の析出処理部と、第3の固液分離工程を行う第3の固液分離処理部と、第2の溶解工程を行う第2の溶解処理部と、第4の固液分離工程を行う第4の固液分離処理部とを備えており、さらに第2の析出工程を行う第2の析出処理部と、第5の固液分離工程を行う第5の固液分離処理部とを備えている。より具体的には、本実施形態の処理システム100は、第1の析出処理部としての第1の析出槽21と、第3の固液分離処理部としての第3の遠心分離機22と、第2の溶解処理部としての第2の溶解槽24と、第4の固液分離処理部としての第4の沈殿槽25と、第4の固液分離処理部としての第4の遠心分離機26と、さらに、第2の析出処理部としての第2の析出槽27と、第5の固液分離処理部としての第5の遠心分離機28とを備えている。
さらには、本実施形態の処理システム100は、遠心分離機(第3の固液分離処理部)22で分離された固相に対して乾燥処理を施す第2の乾燥処理部としての第2の乾燥機23や、遠心分離機(第5の固液分離処理部)28で分離された固相に対して乾燥処理を施す第3の乾燥処理部としての第3の乾燥機29等を備えている。
このような処理システム100によれば、前述した本発明の処理方法を好適に実行することができる。
<第1の溶解槽(第1の溶解処理部)>
第1の溶解槽(第1の溶解処理部)11では、図示しない被処理物供給部から供給されたリンおよび重金属を含む被処理物と、図示しない酸性液体供給部から供給された酸性の液体とを混合し、被処理物中に含まれるリンおよび重金属を溶解させる第1の溶解工程を行う。
<第1の沈殿槽>
第1の溶解槽(第1の溶解処理部)11で処理された被処理物である組成物C1は、第1の沈殿槽12に搬送され、ここで静置されることにより、上澄液としてのリンおよび重金属が溶解した第1の液体(液相)L1と、沈殿物である固体成分としての残渣(固相)S1とに、相分離する。そして、上澄液としての第1の液体L1は、第1の析出槽(第1の析出処理部)21に搬送され、沈殿物である残渣(固相)S1は、第1の遠心分離機13に搬送される。言い換えると、第1の沈殿槽12において、第1の固液分離工程を行う。
<第1の遠心分離機(第1の固液分離処理部)>
第1の沈殿槽12で第1の液体(液相)L1から分離した残渣(固相)S1は、第1の遠心分離機(第1の固液分離処理部)13に搬送される。第1の遠心分離機(第1の固液分離処理部)13に搬送された残渣(固相)S1は、主に固形分で構成されたものであるが、第1の液体L2の一部も含んでいる。そこで、残渣S1を第1の遠心分離機13で処理することにより、残渣S1中に含まれていた第1の液体L2を分離する。
<アルカリ混合槽(アルカリ混合処理部)>
第1の遠心分離機13によって残渣S1から第1の液体L2を分離することにより得られた固形分としての残渣S2は、アルカリ混合槽(アルカリ混合処理部)14に搬送される。そして、アルカリ混合槽(アルカリ混合処理部)14において、残渣S2と、アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体とを混合して反応させるアルカリ混合工程を行う。
<第2の沈殿槽(第2の固液分離処理部)>
アルカリ混合槽14でのアルカリ混合工程により得られた反応混合物である組成物C2は、第2の沈殿槽(第2の固液分離処理部)15に搬送され、ここで静置されることにより、上澄液と、沈殿物である固体成分S3とに、相分離する。そして、上澄液と相分離した固体成分S3は、洗浄槽(洗浄処理部)16に搬送される。言い換えると、第2の沈殿槽15において、第2の固液分離工程を行う。
<洗浄槽(洗浄処理部)>
第2の沈殿槽15で上澄液と固液分離された固体成分S3は、洗浄槽(洗浄処理部)16に搬送され、洗浄工程が行われる。
<第1の乾燥機(第1の乾燥処理部)>
洗浄槽(洗浄処理部)16で洗浄された固体成分S3は、第1の乾燥機(第1の乾燥処理部)17に搬送され、乾燥工程が行われる。
これにより、目的とする固形分S4、すなわち、リンおよび重金属が除去されハロゲン含有率も低い固形分S4が得られる。
<固形分回収部>
上記のようにして得られた固形分S4は、固形分回収部30に搬送され、回収される。
<第1の析出槽(第1の析出処理部)>
第1の沈殿槽12で固相S1から分離した第1の液体(液相)L1は、第1の遠心分離機(第1の固液分離処理部)13で分離された第1の液体L2とともに、第1の析出槽(第1の析出処理部)21に搬送される。
第1の析出槽21では、第1の液体L1、L2を析出剤と混合するとともにpHを上昇させ、リンおよび重金属を含む第1の固体S5を析出させる第1の析出工程を行う。
<第3の遠心分離機(第3の固液分離処理部)>
第1の析出槽21で得られた組成物C3、すなわち、第1の固体S5と液体成分L3とを含む組成物C3は、第3の遠心分離機(第3の固液分離処理部)22に搬送される。第3の遠心分離機(第3の固液分離処理部)22で、組成物C3を処理することにより、組成物C3中に含まれていた第1の固体S5と液体成分L3とを分離する。
第3の遠心分離機(第3の固液分離処理部)22で分離された液体成分L3は、例えば、第1の析出槽21に供給されて、好適に再利用することができる。
<第2の乾燥機(第2の乾燥処理部)>
第3の遠心分離機(第3の固液分離処理部)22で分離された第1の固体S5は、第2の乾燥機(第2の乾燥処理部)23に搬送され、乾燥工程が行われる。
<第2の溶解槽(第2の溶解処理部)>
乾燥機23で乾燥処理が施された第1の固体S5は、第2の溶解槽(第2の溶解処理部)24に搬送される。
そして、第2の溶解槽(第2の溶解処理部)24で、第1の固体S5とアルカリ性の液体とを混合することにより、当該第1の固体S5中に含まれるリンを溶解させて第2の液体L4を含む組成物C4を得る第2の溶解工程を行う。
<第4の沈殿槽(第4の固液分離処理部)>
第2の溶解槽(第2の溶解処理部)24での第2の溶解処理により得られた組成物C4は、第4の沈殿槽(第4の固液分離処理部)25に搬送され、ここで静置されることにより、上澄液である第2の液体L4と、沈殿物である固体成分S6とに、相分離する。そして、上澄液としての第2の液体L4は、第2の析出槽(第2の析出処理部)27に搬送され、沈殿物である固体成分S6は、第4の遠心分離機26に搬送される。言い換えると、第4の沈殿槽25において、第4の固液分離工程を行う。
<第4の遠心分離機(第4の固液分離処理部)>
第4の沈殿槽(第4の固液分離処理部)25で第2の液体(液相)L4から分離した固体成分S6は、第4の遠心分離機(第4の固液分離処理部)26に搬送される。第4の遠心分離機(第4の固液分離処理部)26に搬送された固体成分S6は、主に固形分で構成されたものであるが、第2の液体L5の一部も含んでいる。そこで、固体成分S6を第4の遠心分離機26で処理することにより、固体成分S6中に含まれていた第2の液体L5を分離する。
<重金属回収部>
第4の遠心分離機(第4の固液分離処理部)26で第2の液体L5から分離した固体成分S7は、重金属回収部40に搬送され、回収される。固体成分S7は、他の部位で得られる組成物に比べて、重金属の含有率が高いものであるが、重金属以外の成分を含んでいてもよい。
なお、図示の構成では、第4の遠心分離機26で第2の液体L5が除去された固体成分S7を、そのまま、重金属回収部40に搬送しているが、処理システム100は、第4の遠心分離機(第4の固液分離処理部)26で分離した固体成分S7に対して、pH調整や乾燥等の処理を施す部位を有しており、当該処理が施された固体成分S7が重金属回収部40に搬送されるように構成されていてもよい。
<第2の析出槽(第2の析出処理部)>
第4の沈殿槽25で固体成分S6から分離した第2の液体(液相)L4は、第4の遠心分離機(第4の固液分離処理部)26で分離された第2の液体L5とともに、第2の析出槽(第2の析出処理部)27に搬送される。
第2の析出槽27では、第2の液体L4、L5を析出剤と混合するとともにpHを低下させ、リンを含む第2の固体S8を析出させる第2の析出工程を行う。
<第5の遠心分離機(第5の固液分離処理部)>
第2の析出槽27で得られた組成物C5、すなわち、第2の固体S8と液体成分L6とを含む組成物C5は、第5の遠心分離機(第5の固液分離処理部)28に搬送される。第5の遠心分離機(第5の固液分離処理部)28で、組成物C5を処理することにより、組成物C5中に含まれていた第2の固体S8と液体成分L6とを分離する。
第5の遠心分離機(第5の固液分離処理部)28で分離された液体成分L6は、例えば、第2の析出槽27に供給されて、好適に再利用することができる。
<第3の乾燥機(第3の乾燥処理部)>
第5の遠心分離機(第5の固液分離処理部)28で分離された第2の固体S8は、第3の乾燥機(第3の乾燥処理部)29に搬送され、乾燥工程が行われる。
<リン回収部>
上記のようにして得られたリンを高い含有率で含む第2の固体S8は、リン回収部50に搬送され、回収される。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の処理方法は、前述した工程以外の工程(例えば、前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)を有していてもよい。
また、本発明の処理方法は、第1の溶解工程と、第1の固液分離工程と、アルカリ混合工程と、第2の固液分離工程とを有していればよく、これら以外の工程は有していなくてもよい。
また、前述した工程の順番を入れ替えて行ってもよい。例えば、洗浄工程と乾燥工程との順番を入れ替えて行ってもよい。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に温度条件を示していない処理、測定については、25℃で行った。
《1》汚泥灰からのリンおよび重金属の分離におけるアルカリ混合工程および第2の固液分離工程を含む一連の工程の繰り返し回数による影響の考察
(実施例1)
まず、汚泥灰を用意し、これに110℃で2時間の乾燥処理を施し、含水率を0%にした。この汚泥灰は、リン、重金属に加え、Fe、Al、Mgを含んでいた。
次に、300mLの三角フラスコに2Mの塩酸200mLを入れ、80℃で加熱した後、汚泥灰10gをこの三角フラスコ内に添加し、マグネットスターラーを用いて40分間撹拌した。これにより、汚泥中の酸化リンをリン酸イオンとして溶出させた(第1の溶解工程)。本工程で用いた1Mの塩酸は、塩素の含有率が3.5質量%のものである。
60分間撹拌を行った後、ろ紙を濾過器にセットし、固液分離した(第1の固液分離工程)。
次に、第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)5gを、200mLの純水に入れ、アルカリ性の液体である1Mの水酸化カルシウム水溶液を添加してpH10に調節し、マグネットスターラーを用いて30分間撹拌・混合して反応させた(アルカリ混合工程)。
その後、ろ紙を濾過器にセットし、固液分離した(第2の固液分離工程)。
次に、第2の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して、上記と同様の条件でアルカリ混合工程および第2の固液分離工程を行った。すなわち、第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程を5回繰り返し行った。
次に、得られた固体成分(固相)に対して、最後の第2の固液分離工程に用いた、ろ紙がセットされた濾過器を用いて、純水200mLを用いた洗浄処理を行った(洗浄工程)。
その後、洗浄工程に供された固体成分(固相)に対して、乾燥器を用いて、100℃で120分間の加熱処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た(乾燥工程)。
(実施例2)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を4回にした以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例3)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を3回にした以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例4)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を2回にした以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例5)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を1回にした以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例6)
アルカリ混合工程において、アルカリ性の液体として、1Mの水酸化カルシウム水溶液の代わりに、1Mの水酸化カルシウム水溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例7)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を4回にした以外は、前記実施例6と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例8)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を3回にした以外は、前記実施例6と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例9)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を2回にした以外は、前記実施例6と同様の処理を行い、処理物を得た。
(実施例10)
第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)に対して行う、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程からなる一連の工程の回数を1回にした以外は、前記実施例6と同様の処理を行い、処理物を得た。
(比較例1)
まず、前記実施例1で用いたのと同じ汚泥灰を用意し、これに110℃で2時間の乾燥処理を施し、含水率を0%にした。
次に、ろ紙がセットされた濾過器を用いて、汚泥灰10gに対して、純水200mLを用いた洗浄処理を行った。
その後、洗浄処理が施された固体成分に対して、乾燥器を用いて、100℃で120分間の加熱処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(比較例2)
まず、前記実施例1で用いたのと同じ汚泥灰を用意し、これに110℃で2時間の乾燥処理を施し、含水率を0%にした。
次に、汚泥灰10gを、200mLの水に入れ、アルカリ性の液体である1Mの水酸化カルシウム水溶液を添加してpH10に調整し、マグネットスターラーを用いて40分間撹拌・混合して反応させた。
その後、ろ紙を濾過器にセットし、固液分離した。
次に、得られた固体成分(固相)に対して、ろ紙がセットされた濾過器を用いて、純水200mLを用いた洗浄処理を行った。
その後、洗浄処理が施された固体成分に対して、乾燥器を用いて、100℃で120分間の加熱処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(比較例3)
前記実施例1と同様にして第1の溶解工程および第1の固液分離工程を行うことにより得られた固体成分(固相)に対して、ろ紙がセットされた濾過器を用いて、純水200mLを用いた洗浄処理を行った。
その後、洗浄工程に供された固体成分(固相)に対して、乾燥器を用いて、100℃で120分間の加熱処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
すなわち、本比較例は、アルカリ混合工程および第2の固液分離工程を行わなかった以外は、前記実施例1と同様である。
前記各実施例および各比較例で得られた処理物について、最適な測定が可能な濃度に純水で調節した後、ICP質量分析(ICP-MS)、イオンクロマトグラフィーによる測定から、被処理物中に含まれる塩素の含有率を求めた。
また、前記各実施例および各比較例で得られた処理物について、モリブデン青吸光光度法による測定からリンの含有率を求め、ICP分光分析(ICP-AES)・ICP質量分析(ICP-MS)・元素分析機器による測定から重金属の含有率を求めた。
その結果、前記各実施例では、いずれも、処理物中における塩化物イオン(Cl)の溶出濃度が60ppm以下で塩素の含有率が十分に低いものであるとともに、リンの含有率も1%以下であった。As以外の各重金属(Mn、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb)の溶出濃度が2ppb以下であり、Asの溶出濃度が10ppb以下であり、いずれも、十分に低い溶出濃度であった。このことから、前記各実施例で得られた固形分は、金属の腐食等の問題を生じにくく、例えば、セメント原料、レンガ、コンクリート、モルタル等の建設資材や、土壌改良材や埋め立て用材等の各種の用途に好適に用いることができるものであることが示唆される結果となった。前記実施例1~10で得られた処理物中での塩化物イオン濃度についての結果を図4に示す。これに対し、各比較例では満足のいく結果が得られなかった。すなわち、比較例1、2では、各重金属(Mn、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、As)およびリンの含有率が、いずれも、汚泥灰に含まれてあった初期含有率の50%以上と高かった。また、比較例3では、塩化物イオン(Cl)の溶液への溶出濃度がアルカリ処理時の溶液への溶出濃度より高かった。
また、アルカリ混合工程で残渣と混合する液体として、1Mの水酸化マグネシウム水溶液、1Mの炭酸カルシウム水溶液、1Mの炭酸ナトリウム水溶液、1Mの炭酸マグネシウム水溶液を用いた以外は、前記と同様の処理を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、最後のアルカリ混合工程終了時点における反応混合物のpHが2~12の範囲内で調整するように、アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体の使用量を変更した以外は、前記と同様の処理を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
《2》アルカリ混合工程での処理温度による影響の考察
(実施例11)
アルカリ混合工程において、第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)5gを、100mLの純水に入れ、アルカリ性の液体である1Mの水酸化カルシウム水溶液を0.2mL添加した後、温度を30℃にして、マグネットスターラーを用いて30分間撹拌・混合して反応させた以外は、前記実施例5と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例12)
アルカリ混合工程での処理温度を、30℃から60℃に変更した以外は、前記実施例11と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例13)
アルカリ混合工程での処理温度を、30℃から90℃に変更した以外は、前記実施例11と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
前記実施例11~13について、第2の固液分離工程で得られた液相中に含まれる塩素量を求めることにより、アルカリ混合工程で溶出した塩素量を評価した。第2の固液分離工程で得られた液相中に含まれる塩素量は、0.5質量%のKCrO水溶液および0.05MのAgNO水溶液を用いた沈殿滴定(モール法)により求めた。その結果を、図5に示す。図5から、アルカリ混合工程での処理温度が高いほど効率よく塩素が溶出していることが分かる。
《3》アルカリ混合工程での処理時間による影響の考察
(実施例14)
アルカリ混合工程において、第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)5gを、100mLの純水に入れ、アルカリ性の液体である1Mの水酸化カルシウム水溶液を0.15mL添加した後、マグネットスターラーを用いて10分間撹拌・混合して反応させた以外は、前記実施例5と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例15)
アルカリ混合工程での処理時間(撹拌・混合時間)を、10分間から20分間に変更した以外は、前記実施例14と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例16)
アルカリ混合工程での処理時間(撹拌・混合時間)を、10分間から40分間に変更した以外は、前記実施例14と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例17)
アルカリ混合工程での処理時間(撹拌・混合時間)を、10分間から60分間に変更した以外は、前記実施例14と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例18)
アルカリ混合工程での処理時間(撹拌・混合時間)を、10分間から120分間に変更した以外は、前記実施例14と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
前記実施例14~18について、第2の固液分離工程で得られた液相中に含まれる塩素量を求めることにより、アルカリ混合工程で溶出した塩素量を、汚泥灰1gあたりに換算して評価した。第2の固液分離工程で得られた液相中に含まれる塩素量は、0.5質量%のKCrO水溶液および0.05MのAgNO水溶液を用いた沈殿滴定(モール法)により求めた。その結果を、図6に示す。図6から、アルカリ混合工程での処理時間が10分間程度で、塩素の溶出量が十分に高くなっており、それより処理時間を長くしても、塩素の溶出量がほとんど変化しないことが確認された。
《4》アルカリ混合工程で用いる液体量による影響の考察
(実施例19)
アルカリ混合工程において、第1の固液分離工程で固液分離した固体成分(固相)5gを、100mLの純水に入れ、アルカリ性の液体である1Mの水酸化カルシウム水溶液を0.15mL添加した後、マグネットスターラーを用いて30分間撹拌・混合して反応させた以外は、前記実施例5と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例20)
アルカリ混合工程での純水の使用量を、100mLから200mLに変更した以外は、前記実施例19と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例21)
アルカリ混合工程での純水の使用量を、100mLから400mLに変更した以外は、前記実施例19と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
(実施例22)
アルカリ混合工程での純水の使用量を、100mLから600mLに変更した以外は、前記実施例19と同様の処理を行い、粉末状の固形分(処理物)を得た。
前記実施例19~22について、第2の固液分離工程で得られた液相中に含まれる塩素量を求めることにより、アルカリ混合工程で溶出した塩素量を評価した。第2の固液分離工程で得られた液相中に含まれる塩素量は、0.5質量%のKCrO水溶液および0.05MのAgNO水溶液を用いた沈殿滴定(モール法)により求めた。その結果を、図7に示す。図7から、アルカリ混合工程で用いる固体の質量に対する液体の質量の比率(固液比)が大きくなるほど塩素の溶出量が多くなる傾向が認められるが、固液比を80程度以上にしても塩素の溶出量がほとんど変化しないことが確認された。
《5》重金属、リンの分離
(実験例A1)
前記実施例1の第1の固液分離工程で得られた濾液(液相)である第1の液体について、以下のような処理を行い、第1の液体中に含まれる重金属とリンとの分離を行った。
まず、500mLメスフラスコを用いて、第1の液体をメスアップし、サンプル液をした。
サンプル液を希釈し、モリブデン青吸光度法にてリン濃度を測定し、測定結果から、リンの溶出率を算出した。溶出液の分析には、UV分光分析器を用いた。
また、ICP-AES、ICP-MSを用いてサンプル液中の金属・重金属の濃度を求め、金属・重金属について、固相に含まれる量と液相に含まれる量とを算出した。
次に、第1の液体を用いて調製したサンプル液に対し、溶出したリンの物質量とカルシウムの物質量との比が1:2となるように塩化カルシウムを添加し、1MのNaOH溶液を添加しながら、pHメーターを用いてpHを測定し、撹拌を行いながらリンおよび重金属を析出させた(第1の析出工程)。このとき、リンは、主にリン酸塩として析出した。
pHを4に調整した後、さらに30分撹拌し、その後、ろ紙を濾過機にセットし、真空ポンプを用いて固液分離を行った(第3の固液分離工程)。
500mLメスフラスコを用いて、固液分離した濾液(液相)をメスアップした。
メスアップした濾液を特定の割合で希釈し、モリブデン青吸光度法によりリン濃度を測定し、測定結果から、リンの析出率を算出した。リン濃度の測定には、UV分光分析器を用いた。
また、ICP-AES、ICP-MSを用いて濾液中の金属・重金属の濃度を求め、金属・重金属について、固相に含まれる量と液相に含まれる量とを算出した。
また、第3の固液分離工程で得られた固相については、105℃で2時間乾燥した後に、粉末にし、XRDによる分析も行った。
第3の固液分離工程で得られた固相を、乾燥した後、200mLの1.0MのNaOH水溶液が入っている三角フラスコに投入し、60℃で20分間撹拌した。これにより、リンを再溶出させた(第2の溶解工程)。
リンが溶解した第2の液体(液相)をろ紙で固液分離し、重金属を含む固体成分(固相)と分離した(第4の固液分離工程)。
次に、固液分離した第2の液体に対し、第2の液体中のリンの物質量と、添加するカルシウムの物質量との比が1:2となるように塩化カルシウムを添加し、1Mの塩酸を添加しながら、pHメーターを用いてpHを測定し、撹拌を行いながら、リン酸のカルシウム塩を析出させた(第2の析出工程)。本工程は、液温が20℃以上80℃以下となるようにして行った。
pHを2.0~12の間で調整しながら、さらに60分間撹拌した後、固液分離を行い、主としてリン酸のカルシウム塩で構成された固体を得た(第5の固液分離工程)。
(実験例A2~A5)
第1の析出工程の終了時におけるpHを表1に示すように変更した以外は、前記実験例A1と同様にして、被処理物からの重金属、リンの分離を行った。
(実験例B1)
本実験例では、第1の溶解工程および第1の固液分離工程のみを行った以外は、前記実験例A1と同様にして、被処理物からの重金属、リンの分離を行った。
(実験例B2)
本実験例では、被処理物に対し、1MのNaOH溶液を添加し、pHを10~14に調整した後、さらに30分撹拌し、その後、ろ紙を濾過機にセットし、真空ポンプを用いて固液分離を行った。
前記各実験例の方法での処理条件を表1にまとめて示す。なお、前記各実験例では、第3の固液分離工程で分離された液相中におけるリンの含有率は、いずれも、1質量%以下であり、第3の固液分離工程で分離された液相中における重金属の含有率は、いずれも、1質量%以下であり、第4の固液分離工程で分離された固相中におけるリンの含有率は、いずれも、5質量%以下であり、第4の固液分離工程で分離された固相中における重金属の含有率は、いずれも、初期含有率の90%以上であった。第5の固液分離工程で分離された固相中における重金属の含有率は、いずれも、初期含有率の0.1%以下であった。リンの含有率は、初期含有率の60%以上であった(最高は85%)。
Figure 0007221529000001
《6》評価
前記各実験例について、被処理物中に含まれていたリンの総量に対する抽出されたリンの比率(実験例A1~A5については、第5の固液分離工程で分離された固体(固相)として回収されたリンの比率、実験例B1、B2については、被処理物から液相に移行したリンの比率)から求めた。
また、上記のようにしてリンの抽出量を求めた対象物(実験例A1~A5については、第5の固液分離工程で分離された固体(固相)、実験例B1、B2については、固液分離された液相)に含まれる全固形分に対する重金属の含有率を求めた。
なお、リンの溶出量、析出量は、モリブデン青吸光光度法によりリン酸濃度を定量し、その結果から算出した。また、溶出、析出時の金属・重金属の挙動は、ICP分光分析(ICP-AES)・ICP質量分析(ICP-MS)・元素分析機器により算出した。また、析出物の同定は、X線回折(XRD)法とICP-MS法を用いて行った。
これらの結果を表2にまとめて示す。
Figure 0007221529000002
実験例A1~A5では、被処理物から重金属およびリンを、好適に分離することができた。
また、上記のようにしてリンの抽出量を求めた対象物(実験例A1~A5については、第5の固液分離工程で分離された固体(固相)、実験例B1、B2については、固液分離された液相)に含まれる全固形分に対する重金属の含有率を求めたところ、実験例A1~A5では、被処理物から高い比率でリンが移行した第2の固体中における重金属の含有率は、非常に低かった。したがって、分離された第2の固体は、肥料等に好適に利用することができるものであった。
実験例A1で得られた第2の固体について、リンおよび主要金属元素の回収率(被処理物中に含まれていた量に対する第2の固体中に含まれている量の比率)を図8に示す。なお、第2の固体中におけるヒ素(As)回収率は、他の重金属に比べると高いが、第2の固体中におけるヒ素の含有率は46.4mg/kgであり、肥料の基準値である1400mg/kgを大幅に下回っており、安全性に問題はないと考えられる。
また、実験例A1~A5で得られた第2の固体について、肥料としての適性を評価する目的で、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)により定められている肥料分析法を参考に、水溶性試験およびク溶性試験を行った。
水溶性試験では、試料(第2の固体):0.15gに対し溶媒(水)量を12mLとし、常温で30分間撹拌した後、固液分離し、溶解したリン濃度をモリブデン青吸光光度法で測定し、リン溶出率を算出した。
ク溶性試験では、試料(第2の固体):0.10gに対しクエン酸水溶液8mLを添加し、30℃で60分間撹拌しながら溶出を行った。ここで、用いたクエン酸溶液は、100gのクエン酸一水和物を水100mLに溶かし、その溶液を5倍希釈したものである。
その結果、実験例A1~A5で得られた第2の固体は、いずれも、水での溶出量が少ない一方で、クエン酸溶出量が多かった。
代表的に、実験例A1で得られた第2の固体についての、水溶性試験、ク溶性試験の結果を図9に示す。
また、第1の溶解工程で用いる酸性の液体を、pHが-1.0以上1.5以下の範囲で変更した以外は、実験例A1~A5と同様の方法を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、第1の析出工程の終了時おける液相のpHが2.0以上10以下となるようにアルカリ性液体の使用量を変更した以外は、実験例A1~A5と同様の方法を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、第1の析出工程の終了時における系内のリンの物質量をX[mol]、カルシウムの物質量をXCa[mol]としたとき、XCa/Xの値が1.3以上3.0以下となるように析出剤の使用量を変更した以外は、実験例A1~A5と同様の方法を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、第2の析出工程の終了時における液相のpHが2.0以上12.0以下となるように酸性液体の使用量を変更した以外は、実験例A1~A5と同様の方法を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、第2の析出工程で用いる酸性液体を、pHが-1.0以上2以下の範囲で変更した以外は、実験例A1~A5と同様の方法を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、第2の析出工程の終了時における系内のリンの物質量をX[mol]、カルシウムの物質量をXCa[mol]としたとき、XCa/Xの値が1.3以上3.0以下となるように析出剤の使用量を変更した以外は、実験例A1~A5と同様の方法を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、第1の析出工程、第2の析出工程で、CaClの代わりに、Ca(OH)およびCaCOを用いた以外は、実験例A1~A5と同様の方法を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
また、被処理物(汚泥灰)について、酸処理またはアルカリ処理を施した場合のリンの溶出率と、酸・アルカリの濃度との関係の一例を図10に示す。
また、第1の溶解工程での酸性の液体の温度、撹拌時間を変更した場合のリンの溶出率の変動を図11に示す。
また、被処理物(汚泥灰)を所定のpHの液体で処理した場合の各金属の溶出率の一例を図12、図13に示す。
また、被処理物(汚泥灰)を、所定の酸性の液体で処理した場合の処理温度と各金属の溶出率との関係の一例を図14に示す。
本発明の処理方法は、リンおよび重金属を含む被処理物と酸性の液体とを混合し、前記被処理物中に含まれるリンおよび重金属を溶解させる第1の溶解工程と、リンおよび重金属が溶解した第1の液体と、固体成分としての残渣とを分離する第1の固液分離工程と、前記残渣と、アルカリ性の液体またはアルカリ系金属塩を含む液体とを混合して反応させるアルカリ混合工程と、前記アルカリ混合工程で得られた反応混合物を固液分離する第2の固液分離工程とを有する。そのため、リンおよび重金属を含む被処理物から、低コストで効率よくリンおよび重金属を分離するとともに、リンおよび重金属が除去された固形分を有効利用に供することが可能な処理方法を提供することができる。したがって、本発明の処理方法は、産業上の利用可能性を有する。
100…処理システム
11…第1の溶解槽(第1の溶解処理部)
12…第1の沈殿槽
13…第1の遠心分離機(第1の固液分離処理部)
14…アルカリ混合槽(アルカリ混合処理部)
15…第2の沈殿槽(第2の固液分離処理部)
16…洗浄槽(洗浄処理部)
17…第1の乾燥機(第1の乾燥処理部)
30…固形分回収部
21…第1の析出槽(第1の析出処理部)
22…第3の遠心分離機(第3の固液分離処理部)
23…第2の乾燥機(第2の乾燥処理部)
24…第2の溶解槽(第2の溶解処理部)
25…第4の沈殿槽(第4の固液分離処理部)
26…第4の遠心分離機(第4の固液分離処理部)
27…第2の析出槽(第2の析出処理部)
28…第5の遠心分離機(第5の固液分離処理部)
29…第3の乾燥機(第3の乾燥処理部)
40…重金属回収部
50…リン回収部
C1…組成物
C2…組成物
C3…組成物
C4…組成物
C5…組成物
L1…第1の液体(液相)
L2…第1の液体
L3…液体成分
L4…第2の液体(液相)
L5…第2の液体
L6…液体成分
S1…残渣(固相)
S2…残渣
S3…固体成分
S4…固形分
S5…第1の固体
S6…固体成分
S7…固体成分
S8…第2の固体

Claims (3)

  1. リンおよび重金属を含む被処理物と、塩素の含有率が1質量%以上36質量%以下である塩酸とを混合し、前記被処理物中に含まれるリンおよび重金属を溶解させる第1の溶解工程と、
    前記第1の溶解工程で得られた混合物から、リンおよび重金属が溶解した第1の液体と、固体成分としての残渣とを分離する第1の固液分離工程と、
    前記残渣と、水酸化ナトリウムを含む液体とを混合して反応させるアルカリ混合工程と、
    前記アルカリ混合工程で得られた反応混合物を固液分離する第2の固液分離工程と、
    前記第1の液体を析出剤であるCa系物質と混合するとともにpHを上昇させ、リンおよび重金属を含む第1の固体を析出させ、当該第1の固体および液体成分L3を含む混合物を得る第1の析出工程と、
    前記第1の固体を前記液体成分L3と分離する第3の固液分離工程と、
    前記第1の固体中に含まれるリンをアルカリ性の液体で溶解させる第2の溶解工程と、
    前記第2の溶解工程で得られた混合物から、リンが溶解した第2の液体と、重金属を含む固体成分とを分離する第4の固液分離工程と、
    前記第2の液体を析出剤であるCa系物質と混合するとともにpHを低下させ、リンを含む第2の固体を析出させ、当該第2の固体および液体成分L6を含む混合物を得る第2の析出工程と、
    前記第2の固体と前記液体成分L6とを分離する第5の固液分離工程とを有し、
    前記アルカリ混合工程は、前記第1の固液分離工程で分離された固体成分としての前記残渣の質量に対する前記水酸化ナトリウムを含む液体の質量の比率が2以上200以下、処理温度が20℃以上90℃以下、処理時間が1分間以上20分間以下、前記アルカリ混合工程の終了時における前記反応混合物のpHが2以上12以下となる条件で行うものであり、
    少なくとも前記アルカリ混合工程および前記第2の固液分離工程を含む一連の工程を2回以上3回以下、繰り返し行い、
    前記第2の固液分離工程で分離された液相を前記第2の溶解工程に再利用し、
    前記第3の固液分離工程で分離された前記液体成分L3を前記第1の析出工程に再利用し、
    前記第5の固液分離工程で分離された前記液体成分L6を前記第2の析出工程に再利用することを特徴とする処理方法。
  2. 前記第2の固液分離工程の後に、分離された固形分を洗浄する洗浄工程をさらに有している請求項に記載の処理方法。
  3. 前記第2の固液分離工程の後に、分離された固形分を乾燥する乾燥工程をさらに有している請求項1または2に記載の処理方法。
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