JP7220598B2 - 生体情報測定センサ、生体情報測定装置及び生体情報測定方法 - Google Patents
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Description
三電極法は、汗等の生体からの分泌物の分析目的でも使用されている(特許文献1)。
特許文献1では、濾紙や管を用いた汗の収集部を設け、収集した汗に三電極を浸漬して測定していた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、汗等の生体から分泌物をリアルタイムで正確に測定することが可能な生体情報測定センサ及び生体情報測定装置を提供する。
また、弾性のあるゲルを用いることにより、生体に密着しやすく、生体が予測不能な動きをした場合にも測定を継続しやすい。
また、前記ゲル層の電気伝導度が30mS/m以下であるため、測定対象成分が存在しない状態下における電流出力を、非常に低いレベルに抑えることができる。そのため、測定対象成分の濃度が低い場合であっても、高い精度で測定することができる。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態の生体情報測定センサ1は、図1に示すように、絶縁性基材10と絶縁性基材10上に設けられた作用極20、対極30、及び参照極40と、作用極20、対極30、及び参照極40の三電極の総てに接触して、これら三電極の絶縁性基材10と反対側に連続して設けられた単一のゲル層50とゲル層50の表面を保護する保護膜51で構成されている。
本実施形態における対極30と参照極40は、作用極20を両側から挟むように、絶縁性基材10上に設けられている。
絶縁性基材10は、生体に密着しやすいよう、可撓性の材質で構成されていることが好ましい。また、絶縁性基材10には、三電極を保持できる強度が求められる。
これらの条件を満たす基材としては、ポリイミドフィルム、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))等の高分子フィルム、紙、マイカ、セラミックス等が挙げられる。
汗を測定する場合、絶縁性基材10としては、高分子フィルムが好ましく、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
透水性の絶縁性基材10としては、紙、布等が好ましい。
絶縁性基材10の厚みが好ましい下限値以上であることにより、三電極を保持できる強度を得やすい。また、汗等の生体からの分泌物の蒸発を防げやすい。
絶縁性基材10の厚みが好ましい上限値以下であることにより、生体の動きに追従可能な、可撓性を確保しやすい。
粘着剤層を設ける場合、粘着剤としては、絶縁性を有するものを使用する。また、生体に対して、安全性が高い物が好ましい。
皮膚への刺激の少ない粘着剤を用いた両面テープとしては、例えば、スリーエム社製 SH1577(アクリル系粘着剤)が挙げられる。
本実施形態の作用極本体21は、直線部21aと直線部21aの第1の端部に一体的に形成された円形部21bを有している。
直線部21aの第2の端部には、作用極接続部22が同軸状に接続されている。作用極接続部22は、例えば、銀/塩化銀、銀、銅、白金、金等の抵抗値の低い金属等で構成されている。
例えば、酵素膜における酵素と測定対象成分との反応により過酸化水素が発生する場合、プルシアンブルーをメディエーターとして好適に使用できる。
すなわち、プルシアンブルーの還元体は、過酸化水素と反応して、プルシアンブルーの酸化体に変わる。この酸化体が、作用極本体21の導電性固体材料から電子を受容して還元体に戻るので、酵素と測定対象成分との反応に応じた電流を得ることができる。
酵素膜23がラクテートオキシダーゼを含む場合は、酵素膜23において乳酸をピルビン酸に変換する反応が生じ、その際に、副生成物として過酸化水素が発生する。
酵素膜23がグルコースオキシダーゼを含む場合は、酵素膜23においてグルコースをグルコノラクトンに変換する反応が生じ、その際に、副生成物として過酸化水素が発生する。
酵素膜23には、酵素以外の成分が含まれていてもよい。例えば、酵素の活性を維持し、所定の期間無剥離しない等の安定性を保持するために、キトサン等の高分子やウシ血清アルブミン(BSA)等を含有させてもよい。
対極本体31は、導電性固体材料、例えば、カーボン、白金、金等で構成されている。本実施形態の対極本体31は、直線部31aと直線部31aの第1の端部に一体的に形成された円弧部31bを有している。円弧部31bは、作用極本体21の円形部21bを囲むように、円形部21bからほぼ等距離を保って円弧状に形成されている。また、直線部31aの第2の端部には、対極接続部32が同軸状に接続されている。対極接続部32は、例えば、銀/塩化銀、銀、銅、白金、金等の抵抗値の低い金属等で構成されている。
これらの部材の厚みが好ましい下限値以上であることにより、生体情報測定センサ1の出力を安定化することができる。また、これらの部材の厚みが好ましい上限値以下であることにより、生体情報測定センサ1の可撓性を確保しやすく、生体情報測定センサ1が生体の動きに追従しやすくなる。
これらの部材の幅が好ましい下限値以上であることにより、生体情報測定センサ1の出力を安定化しやすい。また、これらの部材の幅が好ましい上限値以下であることにより、生体情報測定センサ1全体を小さく形成することができる。
酵素膜23を形成する酵素の量が好ましい下限値以上であれば、充分な感度が得られる。酵素膜23を形成する酵素の量が好ましい上限値以下であれば、コストを低減できる。
各々の離間距離が好ましい下限値以上であることにより、高い生産効率で生体情報測定センサ1を作製できる。好ましい上限値以下であることにより、生体情報測定センサ1全体の大きさが過大とならない。
なお、本実施形態における直線部21a、直線部31a、及び直線部40aは互いにほぼ平行に、かつ等間隔に形成されている。
ゲル層50を構成するゲルの分散媒としては、水、リン酸緩衝液等のpH緩衝液、生理食塩水が挙げられる。これらは、生体に対する安全性が高いため好ましい。
寒天は、テングサ(天草)、オゴノリなどの紅藻類の粘液質を凍結・乾燥したものである。
コラーゲンは、主に脊椎動物の真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質のひとつであり、多細胞動物の細胞外基質(細胞外マトリクス)の主成分である。
ゼラチンは、高温で変性させたコラーゲンである。
pH緩衝液が、リン酸緩衝液である場合、pH緩衝液由来の成分は、リン酸イオン及びナトリウムイオン、又はリン酸イオン及びカリウムイオンである。
なお、ゲル層50の電気伝導度は、25℃における値であり、一定の電圧を印加した際の電流値から求めることができる。
また、前記ゲル層の電気伝導度が好ましい上限値以下であれば、測定対象成分が存在しない場合の電流値を非常に低く抑えられるので、測定対象成分の濃度を精度良く測定できる。
ゲル層50の電気伝導度は、ゲル層50の緩衝液由来の成分の濃度が高いほど高い値となる。
ただし、ゲル層50のゲル化材料の固形分濃度が高過ぎると、もはやゲルとは言えない固体となり、電気伝導性が失われる。
アガロースをゲル化剤とし、水を分散媒としてゲル層50を構成する場合、ゲル層50全体に対するアガロースの固形分濃度は2~6W/V%であることが好ましく、4W/V%であることが好ましい。
アガロースの固形分濃度が好ましい下限値以上であれば、生体に密着した場合にも形状を保ちやすく、三電極に対する接触を維持しやすい。アガロースの固形分濃度が好ましい上限値以下であれば、三電極間の電気的導通を維持しやすい。
pH緩衝液由来の成分の固形分濃度が好ましい下限値以上であれば、三電極間の電気的導通を維持しやすい。三電極間の電気的導通を維持しやすい。上限値以下であれば、ゲル層50によって生じる電流を低く抑えることができ、測定対象成分の濃度を精度よく測定できる。
ゲル層50の厚みが好ましい下限値以上であることにより、三電極間の電気的導通を維持しやすい。また、好ましい上限値以下であることにより、生体情報測定センサ1の全体を薄く形成することができる。
ゲル層50の幅が好ましい下限値以上であることにより、三電極間の電気的導通を維持しやすい。また、好ましい上限値以下であることにより、生体情報測定センサ1の全体を小さく形成することができる。
保護膜51を設けることにより、ゲル層50を、生体その他との接触から守ることができる。また、ゲル層50の乾燥を防ぎ、ゲル層50の安定した電気伝導度を保つことができる。
保護膜51の厚みが1mm以下であっても、ゲル層50を充分に保護できる。また、保護膜51の厚みが1mm以下であることにより、生体情報測定センサ1の全体を薄く形成することができる。
本実施形態の生体情報測定装置は、図1に示すように、生体情報測定センサ1とポテンショスタット60と生体情報測定センサ1とポテンショスタット60とを接続する作用極リード線62、対極リード線63。参照極リード線64で構成されている。
作用極リード線62は、作用極20とポテンショスタット60とを接続するリード線である。対極リード線63は、対極30とポテンショスタット60とを接続するリード線である。参照極リード線64は、参照極40とポテンショスタット60とを接続するリード線である。
ポテンショスタット60は、作用極20に、参照極40に対して一定の電位を与えると共に、作用極20と対極30との間の電流を測定するようになっている。
本実施形態の生体情報測定方法は、図1の生体情報測定装置を用いる生体情報の測定方法である。すなわち、生体情報測定センサ1を、絶縁性基材10を外側として生体の皮膚表面に密着させる。その状態で、ポテンショスタット60から生体情報測定センサ1の作用極20に参照極40に対して所定の定電位を与える。そして、その際の生体情報測定センサ1から得られる電流(作用極20と対極30の間を流れる電流)をポテンショスタット60によって検出する。検出した電流は、皮膚から分泌される汗中の測定対象成分と相関するので、検出した電流から、当該測定対象成分の濃度を求めることができる。
例えば、酵素膜23がラクテートオキシダーゼであれば、皮膚から分泌された汗中の乳酸濃度を測定することができる。
そのため、汗が充分に存在しない間も、ポテンショスタット60から生体情報測定センサ1に供給される電位は安定している。その結果、汗が三電極を覆い得る程度に充分な量となった際は、速やかに、測定対象成分の濃度に応じた電流を得ることができる。
汗中の乳酸濃度が1mM程度であっても1μA以上の電流が得られるので、1mM程度の乳酸を充分に測定することができる。
なお、汗中の乳酸濃度は10mM程度であると、血中の乳酸濃度に比べて高いと報告されている。
上記実施形態の生体情報測定センサは、絶縁性基材を備える構成としたが、絶縁性基材は必須ではない。絶縁性基材がない場合は、ドレッシングテープ等を用いて、三電極をゲル層と共に、皮膚等に密着させればよい。
また、作用極は、酵素膜を有するものには限定されない。例えば、酸素透過膜を導電性固体材料の表面に付着させたものであってもよい。
また、作用極リード線は、作用極接続部を介さず、直接カーボン等の作用極本体に接続してもよい。同様に、対極リード線は、対極接続部を介さず、直接カーボン等の対極本体に接続してもよい。
また、ゲル層は単一の層には限られない。例えば、作用極20と対極30の双方に接触する第1のゲル層と作用極20と参照極40双方に接触する第2のゲル層を備える構成としてもよい。
また、生体情報測定センサを製造後すぐに使用する場合等は、保護膜51を省略してもよい。
また、本発明の生体情報測定装置は、皮膚から分泌される汗中の成分の測定に限られず、例えば、尿等の排泄物や、舌等の粘膜からの分泌物等の測定に用いることもできる。
以下の手順により、図1の生体情報測定センサ1を製造した。
まず、ポリイミドシート(東レ・デュポン(株)製カプトン(登録商標)、厚さ50μm)上に、スクリーンプリンタを用いてsilver/silver chloride (Ag/AgCl) ink (4001, Engineered Conductive Materials, LLC, Delaware, OH)をスクリーン印刷し、作用極接続部22、対極接続部32、参照極40を形成した。また、Prussian blue (PB) conductive carbon ink (C2070424P2, Gwent Group, Pontypool, UK)を、スクリーン印刷し、作用極本体21、対極本体31を形成した。
作用極20と対極30との離間距離、作用極20と参照極40との離間距離は、各々1.5mmとした。
得られたアガロースゾルを、作用極本体21、対極本体31、参照極40の直線部40aを横断するように塗布し、冷却してゲル層50を形成した。ゲル層50の厚さは約1000μm、幅は3mmとした。
ゲル層50の25℃における電気伝導度は15mS/mであった。
次に、作用極本体21の円形部21bに、ラクテートオキシダーゼ(東洋紡)・キトサン・BSAを混合した水溶液を、ラクテートオキシダーゼ(東洋紡)量として12.8ユニットを滴下乾燥して酵素膜23を形成し、最後に、ポリイミドシートを、図1に示す形状(幅1cm、長さ3cm)に切り出し、絶縁性基材10とし、本実施例の生体情報測定センサ1を得た。
得られた生体情報測定センサ1を被験者の上腕に貼着した。これを、ポテンショスタット60(Solartron Analytical社製1287A)に接続し、作用極20に-100mVの定電位をかけた状態で、作用極20と対極30との間の電流測定を開始した。
生体情報測定センサ1は、被験者から剥離することはなく、安定して測定を継続できた。また、測定開始後、汗の量が充分でない間も、ポテンショスタットによる電位は安定していた。
10 絶縁性基材
20 作用極
21 作用極本体
22 作用極接続部
23 酵素膜
30 対極
31 対極本体
32 対極接続部
40 参照極
50 ゲル層
51 保護膜
60 ポテンショスタット
Claims (8)
- 絶縁性基材と、
前記絶縁性基材上に設けられ、測定対象成分との間で電子の授受を行う作用極と、
前記絶縁性基材上に設けられ、前記作用極との間に電流を流すための対極と、
前記絶縁性基材上に設けられ、前記作用極の電位の基準となる参照極と、
前記作用極、前記対極、及び前記参照極の総てに接触して、これら3つの電極間の電気的導通を維持するゲル層と、を備え、
前記作用極、前記対極及び前記参照極は、それぞれ、少なくとも、直線部を有し、
前記ゲル層は、前記作用極、前記対極及び前記参照極の前記直線部と直角に交叉するように、前記作用極、前記対極及び前記参照極における前記絶縁性基材と反対側に積層されていることを特徴とする生体情報測定センサ。 - 前記ゲル層の25℃における電気伝導度が3~30mS/mである、請求項1に記載の生体情報測定センサ。
- 前記ゲル層が、アガロース、寒天、コラーゲン、及びゼラチンからなる群から選択されるゲル化材料のゲルで構成されている、請求項1又は2に記載の生体情報測定センサ。
- 前記ゲル層の表面に絶縁性の保護膜が設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の生体情報測定センサ。
- 前記作用極が導電性固体材料と、前記導電性固体材料の表面に付着させた酵素膜を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の生体情報測定センサ。
- 前記酵素膜が、ラクテートオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼを含む膜である、請求項5に記載の生体情報測定センサ。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載の生体情報測定センサと、前記生体情報測定センサが接続されるポテンショスタットとを備えることを特徴とする、生体情報測定装置。
- 請求項7に記載の生体情報測定装置における前記生体情報測定センサを、生体の皮膚表面に密着させ、前記ポテンショスタットから前記生体情報測定センサに定電位を与えた際の前記生体情報測定センサから得られる電流を前記ポテンショスタットによって検出することにより、前記皮膚から分泌される汗中の成分を測定することを特徴とする生体情報測定方法。
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