JP7220472B2 - リポソーム、抗癌剤及び癌治療用キット - Google Patents

リポソーム、抗癌剤及び癌治療用キット Download PDF

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Description

本発明は、リポソーム、抗癌剤及び癌治療用キットに関する。本願は、2017年3月6日に、日本に出願された特願2017-042228号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
膀胱癌は再発が多い癌として知られている。このため、筋層に浸潤していない筋層非浸潤性膀胱癌の治療法として、内視鏡手術で癌組織を切除した後に、再発を抑制するためにカルメット・ゲラン桿菌(BCG)を膀胱内に注入する治療法が標準的に行われている。膀胱内に投与されたBCGは、患者の癌細胞に侵入し、患者の免疫系を活性化して癌細胞を傷害させると考えられている。BCGは、膀胱癌以外の上皮内癌の治療にも用いられる場合がある。
BCGは、抗酸菌の一種であるマイコバクテリウム・ボビス由来の弱毒株であり、結核の予防ワクチン等としても使用されるものである。BCGを含む抗酸菌の免疫活性化成分として、細胞壁に存在するミコール酸が考えられている(例えば、非特許文献1を参照)。
ミコール酸は、抗酸菌に特徴的な細胞壁機能分子であり、炭素数60~90の長鎖脂肪酸である。ミコール酸は、結核菌をはじめ、抗酸菌細胞壁を構成する特徴的な大長鎖分子脂肪酸であり、その疎水性が細胞壁の安定性に寄与するとともに、抗酸性の保持に必須であると考えられている。
一方、ミコール酸及びその誘導体(遊離ミコール酸を含め、トレハロース、グルコース、グリセロール等の糖エステル等)は、結核菌の病原因子として動物に投与したときに、肺に結核性病変(肉芽腫)を形成することから、病原因子としても注目されてきた。最近、ミコール酸及びその誘導体はすべての抗酸菌に分布し、サブクラスや炭素鎖の違いにより病原性が異なることが明らかにされつつある。
ミコール酸には、極性の異なるα-ミコール酸、メトキシミコール酸、ケトミコール酸、ワックスエステルミコール酸、エポキシミコール酸、ジヒドロキシミコール酸等の多数のサブクラスが存在することが知られている。結核菌やBCG菌のミコール酸は、α-ミコール酸、メトキシミコール酸、ケトミコール酸の3種類のサブクラスからなる。
Korf J., et al., The Mycobacterium tuberculosis cell wall component mycolic acid elicits pathogen-associated host innate immune responses, Eur. J. Immunol., 35, 890-900, 2005.
BCGは強力な抗腫瘍性を示すことが認められているにもかかわらず、生菌であるため、生体に投与すると感染症を引き起こす場合がある。また、バイオハザードの問題から、管理、供給搬送、廃棄等が煩雑である。一方、抗酸菌の免疫活性化成分と考えられているミコール酸そのものを使用すれば、バイオハザードの問題は生じないものの、ミコール酸をそのまま生体に投与しても免疫系を活性化することが困難である。このため、ミコール酸を臨床応用した例は知られていない。そこで、本発明は、ミコール酸を臨床応用する技術を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
[1]ミコール酸及びステロール化合物を含有するリポソーム。
[2]カチオン性脂質を更に含有する、[1]に記載のリポソーム。
[3]前記ミコール酸がケトミコール酸を含む、[1]又は[2]に記載のリポソーム。
[4]ゼータ電位がプラスである、[1]~[3]のいずれかに記載のリポソーム。
[5]直径が200nm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のリポソーム。
[6]多分散指数が0.3以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のリポソーム。
[7][1]~[6]のいずれかに記載のリポソームを有効成分とする抗癌剤。
[8][7]に記載の抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤とを備える、癌治療用キット。
本発明によれば、ミコール酸を臨床応用する技術を提供することができる。
実験例1における、ミコール酸の薄層クロマトグラフィーの結果を示す写真である。 (a)~(c)は、それぞれ、実験例2における、α-ミコール酸、メトキシミコール酸、ケトミコール酸の質量分析の結果を示すマススペクトルである。 (a)~(d)は、それぞれ、実験例5において、対照リポソーム、α-ミコール酸含有リポソーム、メトキシミコール酸含有リポソーム、ケトミコール酸含有リポソームを接触させたT24細胞の蛍光顕微鏡写真である。 実験例5において、対照リポソームを接触させたT24細胞をフローサイトメトリーで解析した結果を示すグラフである。 (a)~(c)は、それぞれ、実験例6における、T24細胞、MBT-2細胞、MB49細胞の結果を示すグラフである。 実験例7の実験スケジュールを説明する図である。 実験例7において、マウスの腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。 実験例8において、マウスの腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。 実験例10におけるフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。 実験例11において、マウスの腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。 (a)及び(b)は、実験例12における、マウスの腫瘍組織の免疫染色の結果を示す代表的な写真である。(c)は、実験例12において、マウスの腫瘍組織に浸潤したCD4陽性T細胞をカウントした結果を示すグラフである。 (a)及び(b)は、実験例12における、マウスの腫瘍組織の免疫染色の結果を示す代表的な写真である。(c)は、実験例12において、マウスの腫瘍組織に浸潤したCD8陽性T細胞をカウントした結果を示すグラフである。 実験例13の実験スケジュールを説明する図である。 実験例13において、マウスの腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。 実験例15において、マウスの腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。 (a)~(d)は、実験例16において、骨髄由来樹状細胞の培地中に放出されたTNFの濃度を測定した結果を示すグラフである。 (a)~(c)は、実験例16において、骨髄由来マクロファージの培地中に放出されたTNFの濃度を測定した結果を示すグラフである。 実験例18において、マウスの腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。
[リポソーム]
1実施形態において、本発明は、ミコール酸及びステロール化合物を含有するリポソームを提供する。
実施例において後述するように、本実施形態のリポソームを生体に投与することにより、免疫系を活性化させ、癌細胞を傷害させることができる。したがって、本実施形態のリポソームは、抗癌剤、免疫活性化剤、アジュバント等として使用することができる。
ミコール酸は、抗酸菌の菌表層バリアーを形成する疎水性分子であり、一方、宿主生体側には強力な免疫活性化を誘導する成分と考えられているものの、そのまま生体に投与しても免疫系を活性化することが困難である。これは、ミコール酸が疎水性が強く、細胞親和性が低いためであると考えられる。
これに対し、実施例において後述するように、本実施形態のリポソームは、細胞親和性が高く、ミコール酸を効率的に宿主細胞質内に送達することができる。その結果、ミコール酸を癌細胞に送達し、癌細胞に対する免疫を活性化し、癌細胞を傷害することができる。
(リポソーム)
リポソームとは、両親媒性物質により構成される人工的な小胞の1種である。両親媒性物質としては、リン脂質、糖脂質、界面活性剤等が挙げられる。
リン脂質としては、炭素数3~30の飽和又は不飽和脂肪酸を構成成分に有する、ホスファチジルコリン類(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)等)、ホスファチジルグリセロール類(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール等)、ホスファチジルエタノールアミン類(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン類(例えば、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジラウロイルホスファチジルセリン等)、ホスファチジン酸類、ホスファチジルイノシトール類、カルジオリピン類、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。中でも、DOPCは安価であり、生体に対する毒性が低いため好適である。
糖脂質としては、例えば、スルホキノボシルジグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド等のグリセロ糖脂質;ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質等が挙げられる。また、界面活性剤としては、Span80、Tween80、Tween20等が挙げられる。両親媒性物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
リポソームは、超音波処理法、逆相蒸発法、凍結融解法、脂質溶解法、噴霧乾燥法等の従来公知の任意の方法により製造することができる。
(ミコール酸)
本実施形態のリポソームにおいて、ミコール酸としては、免疫系を活性化できるものであれば特に制限なく用いることができる。一般的に、ミコール酸は化学合成することが困難である。このため、抗酸菌から精製して用いることが好適である。
結核菌やBCG菌のミコール酸には、α-ミコール酸、メトキシミコール酸、ケトミコール酸の3種類のサブクラスが存在する。また、非結核性抗酸菌ミコール酸にはα-ミコール酸、ケトミコール酸、ワックスエステルミコール酸が含まれ、いずれもトレハロースエステルの形で強力な免疫増強活性を示すことが知られている。実施例において後述するように、中でも、ケトミコール酸は、インビボにおいて癌を傷害する活性が高い傾向にあるため好適である。ミコール酸は、遊離ミコール酸の形態であってもよく、例えばトレハロースモノエステル、トレハロースジエステル、グルコースモノエステル、グリセロールモノエステル等のミコール酸の糖エステルの形態であってもよい。本実施形態のリポソームにおいて、ミコール酸としては、これらのいずれか1種を用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
ミコール酸の含有量は、リポソームを基準とした乾燥重量で5~20質量%であることが好ましく、10~15質量%であることがより好ましい。
(ステロール化合物)
本実施形態のリポソームは、ステロール化合物を含有する。発明者らは、ミコール酸含有リポソームにステロール化合物を含有させることにより、リポソームの粒径を小さく揃え、安定性を高めることができることを明らかにした。
ステロール化合物としては、コレステロール、3β-[N-(ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール、N-(トリメチルアンモニオエチル)カルバモイルコレステロール等が挙げられる。中でも、コレステロールを好適に用いることができる。
ステロール化合物の含有量は、リポソームを基準とした乾燥重量で5~20質量%であることが好ましく、10~15質量%であることがより好ましい。
(ゼータ電位)
本実施形態のリポソームは、ゼータ電位がプラスであることが好ましい。ゼータ電位がプラスであることにより、細胞親和性が向上し、細胞内にミコール酸を送達することが容易になる。リポソームのゼータ電位は1~20mVであることが好ましく、5~20mVであることがより好ましい。リポソームのゼータ電位は、例えば、電気泳動光散乱測定法等により測定することができる。
リポソームのゼータ電位をプラスにする方法として、リポソームを構成する両親媒性物質にカチオン性を有するものを添加することが挙げられる。例えば、リポソームの材料として、カチオン性脂質を添加してもよい。
カチオン性脂質としては、コレステロール骨格を有するもの、グルタミン酸骨格を有するもの、4級アンモニウム塩、デンドロン脂質等が挙げられる。
コレステロール骨格を有するカチオン性脂質としては、例えば、[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)等が挙げられる。
グルタミン酸骨格を有するカチオン性脂質としては、例えば、塩化N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)-ジドデシル-D-グルタミン酸(TMAG)等が挙げられる。
4級アンモニウム塩としては、例えば、N-(1-(2,3-ジオレイロキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロマイド(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)、2,3-ジオレイロキシ-N-[2(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオレオイル-D-グルタメート-N-2(スペルミンカルボキシアミド)エチル(DOGS)、1,2-ジミリストイロキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DMRIE)等が挙げられる。
デンドロン脂質としては、例えば、デンドロン脂質(型式「D1」、「D2」、「D3」、「D12」、「D22」、「D32」、いずれもヒュギエイアバイオサイエンス社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。中でも、デンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社製)が好ましい。
カチオン性脂質の含有量は、リポソームを基準とした乾燥重量で1~10質量%であることが好ましく、2~5質量%であることがより好ましい。
(直径)
本実施形態のリポソームは、カチオン性であることが好ましく、直径が200nm以下であることが好ましい。リポソームの直径は、例えば動的光散乱法により測定することができる。リポソームの直径が200nm以下であること、フィルター滅菌により簡便に滅菌することが可能である。このため、生体に投与しやすい。
(多分散指数)
本実施形態のリポソームは、多分散指数(polydispersity index)が0.3以下であることが好ましい。多分散指数が小さいことはリポソームの粒径が揃っていることを意味する。リポソームの粒径が揃っていると、フィルター滅菌した場合等にロスを最小限に抑制することができる。
[抗癌剤]
1実施形態において、本発明は、上述したリポソームを有効成分とする抗癌剤を提供する。実施例において後述するように、本実施形態の抗癌剤を生体に投与することにより、免疫系を活性化させ、癌細胞を傷害させることができる。したがって、本実施形態の抗癌剤は、免疫活性化剤、アジュバント等といいかえることもできる。
本実施形態の抗癌剤は、従来のBCG生菌と異なり、感染症を引き起こす心配がなく、管理、供給搬送、廃棄等も簡便である。
本実施形態の抗癌剤が治療対象とする癌としては、薬剤を局所投与することが容易な癌が挙げられ、具体的には、膀胱癌、乳癌、メラノーマ等が挙げられる。本実施形態の抗癌剤を膀胱内に投与、あるいは局所注射等により局所投与することにより、本実施形態の抗癌剤が癌細胞に取り込まれる。その結果、本実施形態の抗癌剤を取り込んだ癌細胞が、免疫系により傷害される。これにより、癌を効果的に治療することができる。
[癌治療用キット]
1実施形態において、本発明は、上述した抗癌剤と、免疫チェックポイント阻害剤とを備える、癌治療用キットを提供する。
上述した抗癌剤を免疫チェックポイント阻害剤と併用して患者に投与することにより、患者の免疫系を活性化し、癌の治療効果を更に向上させることができる。免疫チェックポイント阻害剤としては、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体等が挙げられるがこれらに限定されない。抗PD-1抗体としては、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ等が挙げられる。抗CTLA-4抗体としては、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ等が挙げられる。
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、癌の治療のためのリポソームであって、ミコール酸及びステロール化合物を含有するリポソームを提供する。ここで、リポソームはカチオン性であることが好ましい。ミコール酸、ステロール化合物としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
1実施形態において、本発明は、抗癌剤を製造するためのリポソームの使用であって、ミコール酸及びステロール化合物を含有するリポソームの使用を提供する。ここで、リポソームはカチオン性であることが好ましい。ミコール酸、ステロール化合物としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
1実施形態において、本発明は、ミコール酸及びステロール化合物を含有するリポソームの有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、癌の治療方法を提供する。ここで、リポソームはカチオン性であることが好ましい。本実施形態の治療方法が治療対象とする癌は上述したものと同様である。また、ミコール酸、ステロール化合物としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
1実施形態において、本発明は、ミコール酸及びステロール化合物を含有するリポソームの有効量、及び、免疫チェックポイント阻害剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、癌の治療方法を提供する。ここで、リポソームはカチオン性であることが好ましい。本実施形態の治療方法が治療対象とする癌は上述したものと同様である。また、ミコール酸、ステロール化合物としては、上述したものと同様のものを用いることができる。また、免疫チェックポイント阻害剤としては上述したものと同様のものを用いることができる。
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
(BCGからのミコール酸の精製)
《BCGの培養》
マイコバクテリウム・ボビス BCG Tokyo 172株を、ソートン培地を用いて37℃で9日間表面培養した。続いて、培地を121℃で15分間オートクレーブ滅菌した後遠心分離し、BCG加熱死菌を回収した。
《粗ミコール酸の抽出》
続いて、BCG加熱死菌20gに5N水酸化ナトリウム水溶液100mLを加え、121℃で20分間オートクレーブした。続いて、冷却後5N塩酸を加え、pHを2に調整した。続いてヘキサンを加え、ヘキサン層を回収して純水で洗浄後、乾固することにより、総脂肪酸を得た。続いて、総脂肪酸を1mLクロロホルムに溶解し、メタノール50mLを加え、粗ミコール酸の沈殿物を形成して回収した。
《ミコール酸の精製》
続いて、粗ミコール酸100mgに、ヘキサン・メタノール(ヘキサン:メタノール=20:1,v/v)10mL、10%トリメチルシリルジアゾメタン250μLを加え、室温に30分静置し、ミコール酸をメチルエステル化した。得られたメチルエステルミコール酸を、シリカゲルコートガラス薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート(20×20cm)、ヘキサン・酢酸エチル溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=20:1,v/v)で4回展開し、ヨウ素で呈色させた。
続いて、α-ミコール酸、メトキシミコール酸、ケトミコール酸の3つのメチルエステル分画を回収した。続いて、回収した各ミコール酸メチルエステルに、トルエン3mL、5N水酸化ナトリウム水溶液5mL、エタノール2mLをそれぞれ加え、121℃で20分間オートクレーブした。続いて、冷却後5N塩酸で酸性化し、ヘキサンを加え、ヘキサン層の精製ミコール酸をそれぞれ回収した。
図1は、4回展開したミコール酸メチルエステルの薄層クロマトグラフィーの結果を示す写真である。図1中、レーン1はヒトの結核菌であるマイコバクテリウム・ツベルクローシスから精製したミコール酸メチルエステルの結果である。また、レーン2はBCGから精製したミコール酸メチルエステルの結果である。また、レーン3はBCGから精製したα(Alpha)-ミコール酸メチルエステルの結果である。また、レーン4はBCGから精製したメトキシ(Methoxy)-ミコール酸メチルエステルの結果である。また、レーン5はBCGから精製したケト(Keto)-ミコール酸メチルエステルの結果である。
[実験例2]
(質量分析によるミコール酸のサブクラスの確認)
実験例1で精製した各サブクラスのミコール酸メチルエステルの分子量を、MALDI-TOF質量分析装置(型式「Voyager DE-STR」、アプライドバイオシステムズ社)により解析した。
各サンプルをクロロホルム・メタノール(クロロホルム:メタノール=2:1,v/v)に1mg/mLの濃度で溶解し、0.75mLの液滴としてサンプルプレートにアプライした。マトリックスとして、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2.5-DHB)を使用した。ポジティブリフレクションモードでTOFイオントラッピングを行い、加速電圧は20kVに設定した。
図2(a)~(c)は、それぞれ、α-ミコール酸、メトキシミコール酸、ケトミコール酸の解析結果を示すマススペクトルである。下記表1に、各サブクラスのミコール酸のMALDI-TOF質量分析の結果をまとめた。
薄層クロマトグラフィーと質量分析の結果から、精製した各サブクラスのミコール酸が、炭素数78中心のα-ミコール酸、炭素数85中心のメトキシミコール酸、炭素数84及び86中心のケトミコール酸であることが確認された。
Figure 0007220472000001
[実験例3]
(ミコール酸含有リポソームの作製1)
実験例1で精製した、α-ミコール酸、メトキシミコール酸、ケトミコール酸を用いて、表2に示す組成で製造例1~7のリポソームをそれぞれ作製した。表2中、DOPCはジオレオイルホスファチジルコリンを表す。また、カチオン性脂質として、下記化学式(1)で表されるデンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を使用した。
Figure 0007220472000002
Figure 0007220472000003
具体的には、まず、表2に示す組成で、ミコール酸、DOPC、コレステロール及びカチオン性脂質を、クロロホルム・メタノール(2:1、v/v)混合溶媒中で混合して60℃で加熱し、溶解した。続いて、減圧下で溶媒を完全に除去した。続いて、窒素気流下で乾固させ、脂質を薄層化させた。続いて、リン酸バッファー(PBS)1mLを加えて超音波破砕装置(型式「Biorupter」、コスモバイオ社)で破砕した。続いて、得られた懸濁液を14,000rpmで30分間遠心し、ペレットを回収した。続いて、回収したペレットを500μLのPBSに溶解した。
続いて、液体窒素を用いて凍結融解を10回繰り返した。続いて、得られた液体を、60℃に加熱したヒートブロック上で、エクストルーダー装置(型式「Mini Extruder」、アバンティポーラリピッド社)を用いて、21回ポリカーボネート膜(ポアサイズ200nm)を通過させ、均一なリポソームを得た。作製したリポソームは使用するまで4℃で保存した。
[実験例4]
(ミコール酸含有リポソームの解析)
実験例3で作製した各リポソームについて、分子特性評価装置(型式「ZEN3600」、マルバーン社)を用いて、直径、多分散指数、ゼータ電位をそれぞれ測定した。
表3に測定結果を示す。表3中、「α」はα-ミコール酸を表し、「メトキシ」はメトキシミコール酸を表し、「ケト」はケトミコール酸を表す。また、「作製後の時間」は、リポソームの作製後何日目に測定したかを表す。
Figure 0007220472000004
その結果、製造例1~3のリポソームの結果から明らかなように、ミコール酸含有リポソームがコレステロールを含まない場合、製造から2日後よりも製造から7日後の方が、直径が増大することが明らかとなった。
これに対し、製造例4~6のリポソームの結果から明らかなように、ミコール酸含有リポソームがコレステロールを含む場合、直径が安定しており、製造から7日後の測定においても直径200nm以下を維持できることが明らかとなった。
また、製造例4~6のリポソームの結果から明らかなように、ミコール酸、コレステロール及びカチオン性脂質を含有するリポソームは、直径200nm以下で、ゼータ電位がプラスであり、多分散指数が0.3以下となることが明らかとなった。多分散指数が小さいことは、リポソームの粒径が揃っていることを意味する。
また、発明者らは、ミコール酸、コレステロール及びカチオン性脂質の組成を変えることにより、ミコール酸含有リポソームのゼータ電位、直径を調整し、目的に応じたリポソームを作製できることも明らかにした。
[実験例5]
(ミコール酸含有リポソームの細胞への取り込みの検討1)
コレステロールとして、蛍光色素であるNBDで標識されたコレステロール(アバンティポーラリピッド社)を使用した以外は実験例3と同様にして、下記表4の組成で製造例8~11のリポソームを作製した。以下、製造例8のリポソームを「α-ミコール酸含有リポソーム」といい、製造例9のリポソームを「メトキシミコール酸含有リポソーム」といい、製造例10のリポソームを「ケトミコール酸含有リポソーム」といい、製造例11のリポソームを「対照リポソーム」という場合がある。
Figure 0007220472000005
続いて、各リポソームを、ヒト膀胱癌細胞株T24の培地に50μg/mLの終濃度で添加して37℃で2時間静置し、共焦点顕微鏡で観察することにより、リポソームが細胞に取り込まれたか否かを検討した。NBDの蛍光はリポソームの局在を示す。また、細胞の核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で蛍光染色した。
図3(a)~(d)は、各リポソームを接触させたT24細胞の蛍光顕微鏡写真である。図3(a)は対照リポソームの結果を示し、図3(b)はα-ミコール酸含有リポソームの結果を示し、図3(c)はメトキシミコール酸含有リポソームの結果を示し、図3(d)はケトミコール酸含有リポソームの結果を示す。その結果、いずれのリポソームもT24細胞の細胞質に取り込まれたことが明らかとなった。
また、図4は、対照リポソームを接触させたT24細胞(リポソームあり)をフローサイトメトリーで解析した結果を示すグラフである。比較のために、リポソームを接触させなかったT24細胞(リポソームなし)を同様に解析した。その結果、対照リポソームの蛍光を示す細胞のピークが観察され、対照リポソームがT24細胞に取り込まれたことが確認された。
[実験例6]
(ミコール酸含有リポソームの細胞傷害活性の検討)
実験例5と同様にして作製した、α-ミコール酸含有リポソーム、メトキシミコール酸含有リポソーム、ケトミコール酸含有リポソーム及び対照リポソームを、50μg/mLの終濃度でヒト膀胱癌細胞株T24、マウス膀胱癌細胞株MBT-2及びマウス膀胱癌細胞株MB49の培地にそれぞれ添加し、細胞傷害活性を検討した。
具体的には、血清不含培地に、PBS、対照リポソーム又は各ミコール酸含有リポソームをそれぞれ添加し、24時間後及び48時間後に生細胞数をそれぞれ測定した。生細胞数の測定は、水溶性テトラゾリウム塩であるWST-8を使用したキット(同仁化学)を使用して行った。
図5(a)~(c)は生細胞数の測定結果を示すグラフである。図5(a)はT24細胞の結果を示し、図5(b)はMBT-2細胞の結果を示し、図5(c)はMB49細胞の結果を示す。図5(a)~(c)中、「PBS」はPBSを添加した結果を示し、「対照」は対照リポソームを添加した結果を示し、「α」はα-ミコール酸含有リポソームを添加した結果を示し、「メトキシ」はメトキシミコール酸含有リポソームを添加した結果を示し、「ケト」はケトミコール酸含有リポソームを添加した結果を示す。
その結果、いずれのリポソームもインビトロでは細胞傷害活性をほとんど有しないことが明らかとなった。
[実験例7]
(マウス皮下腫瘍モデルによるミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果の検討1)
マウス皮下腫瘍モデルを用いてミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果を検討した。図6は、実験スケジュールを説明する図である。まず、実験初日(0日目)に、実験例5と同様にして作製した、α-ミコール酸含有リポソーム、メトキシミコール酸含有リポソーム若しくはケトミコール酸含有リポソーム0.44mg、対照リポソーム0.5mg、又はPBS0.1mLを、それぞれ500,000個のマウス膀胱癌細胞株MB49と混合し、C57BL/6Jマウスの背側の皮下に投与した(n=5又は6)。続いて、腫瘍体積を継時的に測定した。また、実験開始後3日目、5日目及び7日目に、各試薬のみ(実験例5と同様にして作製した、α-ミコール酸含有リポソーム、メトキシミコール酸含有リポソーム、ケトミコール酸含有リポソーム、対照リポソーム又はPBS)をそれぞれ追加で同じ部位に皮下投与した。
図7は、腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。図7中、「PBS」はPBS投与群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「α」はα-ミコール酸含有リポソーム投与群の結果を示し、「メトキシ」はメトキシミコール酸含有リポソーム投与群の結果を示し、「ケト」はケトミコール酸含有リポソーム投与群の結果を示す。
その結果、実験開始後14日目において、PBS投与群とケトミコール酸含有リポソーム投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.0067)。また、PBS投与群とメトキシミコール酸含有リポソーム投与群との間でも腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.012)。また、対照リポソーム投与群とケトミコール酸含有リポソーム投与群との間でも腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.0044)。
また、実験開始後21日目において、PBS投与群とケトミコール酸含有リポソーム投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.014)。また、PBS投与群とメトキシミコール酸含有リポソーム投与群との間でも腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.037)。
また、実験開始後28日目において、PBS投与群とケトミコール酸含有リポソーム投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.014)。
この結果から、実験例6に示すように、ミコール酸含有リポソームは直接細胞傷害活性を有しないが、免疫系が関与する条件下では細胞傷害活性(抗腫瘍活性)を示すことが明らかとなった。また、ケトミコール酸が最も高い細胞傷害活性を示すことが明らかとなった。
[実験例8]
(マウス皮下腫瘍モデルによるミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果の検討2)
C57BL/6Jマウスの代わりにBeigeマウスを用いた以外は実験例7と同様にして、マウス皮下腫瘍モデルを用いてミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果(抗腫瘍活性)を検討した。BeigeマウスはChediak-Higashi症候群のモデル動物として知られており、NK細胞が欠損している。
図8は、腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。図8中、「PBS」はPBS投与群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「α」はα-ミコール酸含有リポソーム投与群の結果を示し、「メトキシ」はメトキシミコール酸含有リポソーム投与群の結果を示し、「ケト」はケトミコール酸含有リポソーム投与群の結果を示す。
その結果、実験開始後24日目において、PBS投与群とメトキシミコール酸含有リポソーム投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.018)。また、PBS投与群とα-ミコール酸含有リポソーム投与群との間でも腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.045)。また、PBS投与群とケトミコール酸含有リポソーム投与群との間でも腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.045)。
この結果から、ミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果発現へのNK細胞の関与は少ないものと考えられた。
[実験例9]
(ミコール酸含有リポソームの作製2)
カチオン性脂質として、下記化学式(2)で表されるデンドロン脂質(型式「D12」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いた以外は実験例3と同様にして、表5に示す組成で製造例12のリポソーム(以下、「D12リポソーム」という場合がある。)を作製した。表5中、DOPCはジオレオイルホスファチジルコリンを表す。
Figure 0007220472000006
Figure 0007220472000007
続いて、分子特性評価装置(型式「ZEN3600」、マルバーン社)を用いて、D12リポソームの直径、多分散指数、ゼータ電位をそれぞれ測定した。表6に測定結果を示す。測定は、リポソームの作製後11日目に行った。その結果、D12リポソームの直径、多分散指数、ゼータ電位は、それぞれ、カチオン性脂質として、上記化学式(1)で表されるデンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いた製造例6のリポソーム(以下、「D22リポソーム」という場合がある。)の各値と同程度であることが明らかとなった。
Figure 0007220472000008
[実験例10]
(ミコール酸含有リポソームの細胞への取り込みの検討2)
コレステロールとして、蛍光色素であるNBDで標識されたコレステロール(アバンティポーラリピッド社)を使用した以外は実験例9と同様にして、下記表7の組成で製造例13のリポソームを作製した。表7中、DOPCはジオレオイルホスファチジルコリンを表す。
また、比較のために、実験例5の製造例10と同様にして調製したリポソーム(以下、「D22リポソーム」という場合がある。)を使用した。表7には、製造例10のリポソームの組成も示す。
Figure 0007220472000009
続いて、各リポソームを、マウス膀胱癌細胞株MB49の培地に50μg/mLの終濃度で添加して37℃で2時間静置し、フローサイトメトリーで解析した。図9は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。比較のために、リポソームを接触させなかったMB49細胞を同様に解析した。図9中、「なし」はリポソームを接触させなかったMB49細胞の結果であり、「D12」はD12リポソームの結果であり、「D22」はD22リポソームの結果である。その結果、D22、D12リポソーム共、蛍光色素の発色の程度は等しく、D12リポソームは、D22リポソームと同程度にMB49細胞に取り込まれたことが確認された。
[実験例11]
(マウス皮下腫瘍モデルによるミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果の検討3)
ミコール酸含有リポソームに含有させるカチオン性脂質として、上記化学式(1)で表されるデンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いた場合、及び上記化学式(2)で表されるデンドロン脂質(型式「D12」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いた場合の抗腫瘍効果を検討した。
具体的には、実験例9と同様にして調製した製造例12のリポソーム(以下、「D12リポソーム」という場合がある。)、実験例3の製造例6と同様にして調製したリポソーム(以下、「D22リポソーム」という場合がある。)、実験例3の製造例7と同様にして調製したリポソーム(以下、「対照リポソーム」という場合がある。)、及びリン酸バッファー(PBS)を、実験例7と同様のマウス皮下腫瘍モデルに投与し、抗腫瘍効果を検討した。下記表8に、各リポソームの組成を示す。表8中、DOPCはジオレオイルホスファチジルコリンを表す。
Figure 0007220472000010
図6は、実験スケジュールを説明する図である。まず、実験初日(0日目)に、D12リポソーム0.44mg、D22リポソーム0.44mg、対照リポソーム0.5mg、又はPBS0.1mLを、それぞれ500,000個のマウス膀胱癌細胞株MB49と混合し、C57BL/6Jマウスの背側の皮下に投与した(n=5又は6)。続いて、腫瘍体積を継時的に測定した。また、実験開始後3日目、5日目及び7日目に、各試薬のみ(D12リポソーム、D22リポソーム、対照リポソーム又はPBS)をそれぞれ追加で同じ部位に皮下投与した。
図10は、腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。図10中、「PBS」はPBS投与群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「D22」はD22リポソーム投与群の結果を示し、「D12」はD12リポソーム投与群の結果を示す。
その結果、カチオン性脂質としてデンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いたD22リポソームのほうが、カチオン性脂質としてデンドロン脂質(型式「D12」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いたD12リポソームよりも抗腫瘍効果が高いことが明らかとなった。
[実験例12]
(腫瘍組織の組織学的検討)
実験例11のマウス皮下腫瘍モデルにおいて、実験開始後10日目のD22リポソーム投与群のマウス及び対照リポソーム投与群のマウスを用いて、腫瘍組織へのTリンパ球の浸潤を検討した。
まず、各マウスから摘出した腫瘍組織を固定してパラフィン包埋し、厚さ4μmの切片を作製した。続いて、抗CD4抗体及び抗CD8抗体を用いた免疫染色を行い、腫瘍組織へのTリンパ球の浸潤を検討した(n=3)。
続いて、免疫染色した組織を顕微鏡観察し、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞の浸潤が多い領域を撮影した。続いて、撮影した顕微鏡写真に基づいて、腫瘍組織に浸潤したCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞をカウントした。T細胞のカウントは一人の観察者が同一の領域について3回ずつ行い、その平均値を統計学的に解析した。
図11(a)は、対照リポソーム投与群のマウスの腫瘍組織を抗CD4抗体で免疫染色した結果を示す代表的な写真である。また、図11(b)は、D22リポソーム投与群のマウスの腫瘍組織を抗CD4抗体で免疫染色した結果を示す代表的な写真である。また、図11(c)は、各群のマウスの腫瘍組織におけるCD4陽性T細胞をカウントした結果を示すグラフである。図11(c)中、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「D22」はD22リポソーム投与群の結果を示す。
また、図12(a)は、対照リポソーム投与群のマウスの腫瘍組織を抗CD8抗体で免疫染色した結果を示す代表的な写真である。また、図12(b)は、D22リポソーム投与群のマウスの腫瘍組織を抗CD8抗体で免疫染色した結果を示す代表的な写真である。また、図12(c)は、各群のマウスの腫瘍組織におけるCD8陽性T細胞をカウントした結果を示すグラフである。図12(c)中、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「D22」はD22リポソーム投与群の結果を示す。
独立t検定により解析した結果、図11(c)に示すように、対照リポソーム投与群及びD22リポソーム投与群において、腫瘍組織に浸潤したCD4陽性T細胞数には有意差が認められなかった。これに対し、図12(c)に示すように、対照リポソーム投与群及びD22リポソーム投与群において、腫瘍組織に浸潤したCD8陽性T細胞数には有意差が認められた。
この結果から、D22リポソーム投与群のマウスでは、対照リポソーム投与群のマウスと比較して、腫瘍組織に浸潤するCD8陽性T細胞が有意に多いことが明らかとなった。また、この結果は、D22リポソームの投与により、CD8陽性T細胞が腫瘍組織に浸潤し、CD8陽性Tリンパ球依存的に抗腫瘍効果が発揮されることを示す。
[実験例13]
(マウス皮下腫瘍モデルによるミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果の検討4)
実験例7、8、11のマウス皮下腫瘍抑制効果モデルでは、腫瘍細胞の接種と同時にミコール酸含有リポソームの投与を開始していた。そこで、腫瘍が形成された後にミコール酸含有リポソームの投与を開始した場合に腫瘍抑制効果が認められるか否かについて検討した。
図13は、実験スケジュールを説明する図である。まず、実験初日(0日目)に、500,000個のマウス膀胱癌細胞株MB49を、C57BL/6Jマウスの背側の皮下に投与した(n=5又は6)。続いて、実験開始後7日目以降、1~2日おきに合計9回、ミコール酸含有リポソームを同じ部位に皮下投与し、腫瘍体積を継時的に測定した。
ミコール酸含有リポソームとして、1匹1回の投与あたり、実験例5と同様にして作製したケトミコール酸含有リポソームを0.44mg投与した群を用意した。1匹1回の投与あたりのミコール酸の投与量は40μgであった。また、比較のために、1匹1回の投与あたり、実験例5と同様にして作製した対照リポソームを0.5mg又はPBSを0.1mL投与した群も用意した。
図14は、腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。図14中、「PBS」はPBS投与群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「ケト」はケトミコール酸含有リポソーム投与群の結果を示す。
その結果、実験開始後17日目において、PBS投与群とケトミコール酸含有リポソーム投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.048)。また、対照リポソーム投与群とケトミコール酸含有リポソーム投与群との間でも腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.015)。
この結果、腫瘍が形成された後にミコール酸含有リポソームの投与を実施した場合においても抗腫瘍効果が認められることが明らかとなった。
[実験例14]
(ミコール酸含有リポソームの作製3)
ミコール酸として、トレハロースジミコール酸(TDM、ミコール酸のトレハロースジエステル)を用いたミコール酸含有リポソーム(以下、「TDMリポソーム」という場合がある。)を作製した。
まず、BCG(マイコバクテリウム・ボビス BCG Tokyo 172株)、マイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)、及びロドコッカス・テラエ(Rhodococcus terrae)の各菌を培養し、各菌体からそれぞれトレハロースジミコール酸を精製した。以下、各菌由来のトレハロースジミコール酸を、それぞれ、「BCG-TDM」、「M.phlei-TDM」、「R.terrae-TDM」という場合がある。
続いて、実験例3と同様にして、表9に示す組成で、製造例14のリポソーム(以下、「BCG-TDMリポソーム」という場合がある。)、製造例15のリポソーム(以下、「M.phlei-TDMリポソーム」という場合がある。)及び製造例16のリポソーム(以下、「R.terrae-TDMリポソーム」という場合がある。)を作製した。表9中、DOPCはジオレオイルホスファチジルコリンを表す。カチオン性脂質としては、上記化学式(1)で表されるデンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社製)を用いた。
Figure 0007220472000011
続いて、分子特性評価装置(型式「ZEN3600」、マルバーン社)を用いて、各TDMポソームの直径、多分散指数、ゼータ電位をそれぞれ測定した。その結果、TDMリポソームの直径、多分散指数、ゼータ電位は、それぞれ、実験例3で作製した製造例6のリポソームの各値と同程度であることが明らかとなった。
[実験例15]
(マウス皮下腫瘍モデルによるミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果の検討5)
実験例13と同様のマウス皮下腫瘍モデルを用いて、実験例14で作製した各TDMリポソームの抗腫瘍効果を検討した。
TDMリポソームとしては、実験例14で作製した、BCG-TDMリポソーム、M.phlei-TDMリポソーム、R.terrae-TDMリポソームを、1匹1回の投与あたり0.44mg使用した。また、比較のために、1匹1回の投与あたり、実験例5と同様にして作製した対照リポソームを0.5mg又はPBSを0.1mL投与した群も用意した。
図15は、腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。図15中、「PBS」はPBS投与群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「BCG」はBCG-TDMリポソーム投与群の結果を示し、「phlei」はM.phlei-TDMリポソーム投与群の結果を示し、「terra」はR.terrae-TDMリポソーム投与群の結果を示す。
その結果、実験開始後14日目において、PBS投与群とBCG-TDMリポソーム投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.04)。一方、PBS投与群とR.terrae-TDMリポソーム投与群との間、PBS投与群とM.phlei-TDMリポソーム投与群との間には腫瘍抑制傾向は認められるものの有意差が認められなかった。
また、実験開始後18日目において、PBS投与群とBCG-TDMリポソーム投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.02)。また、対照リポソーム投与群とBCG-TDMリポソーム投与群との間においても腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.02)。
以上の結果、TDMリポソームも抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。また、ミコール酸として、BCG由来のトレハロースジミコール酸(TDM)を用いたリポソーム、マイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)由来のTDMを用いたリポソーム、ロドコッカス・テラエ(Rhodococcus terrae)由来のTDMを用いたリポソームの中では、BCG由来のTDMを用いたリポソームが最も抗腫瘍効果が高いことが明らかとなった。
[実験例16]
(TDMリポソームによるMincle依存的なサイトカイン産生の検討)
Macrophage-inducible C-type lectin(Mincle)は、C型レクチン受容体の1種である。Mincleのリガンドとしては、損傷自己、真菌、結核菌由来のトレハロースジミコール酸(TDM)等が知られている。
TDMが結合したMincleは、FcRγ鎖と会合し、Immunoreceptor tyrosine-based activation motif(ITAM)を介して活性化シグナル伝達を行い、炎症性サイトカインの産生を誘導することが知られている。
本実験例では、野生型マウス又はMincle-/-マウスから骨髄由来樹状細胞(BDMC)及び骨髄由来マクロファージ(BMM)を調製し、それぞれTDMリポソームで活性化して炎症性サイトカインの産生が誘導されるか否かを検討した。炎症性サイトカインとしては、Tumor Necrosis Factor(TNF)の産生を検討した。
《骨髄由来樹状細胞(BDMC)の検討1》
野生型マウス又はMincle-/-マウスから調製した骨髄由来樹状細胞(BDMC)を、それぞれ、96ウェルプレートに、1×10個/ウェルの細胞密度で播種した。続いて、各細胞の培地に、実験例14で作製したBCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームをそれぞれ100μg/mLの終濃度となるように添加し、48時間培養した。また、比較のために、実験例5と同様にして作製した対照リポソームを100μg/mLの終濃度となるように添加した群、及び何も添加しなかった群も用意した。続いて、ELISA法により培地中に放出されたTNFの濃度を測定した。
図16(a)は培地中に放出されたTNFの濃度を測定した結果を示すグラフである。図16(a)中、「BCG」はBCG-TDMリポソーム添加群の結果を示し、「M.phlei」はM.phlei-TDMリポソーム添加群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム添加群の結果を示し、「なし」は何も添加しなかった群の結果を示し、「WT」は野生型マウスの骨髄由来樹状細胞の結果を示し、「Mincle-/-」はMincle-/-マウスの骨髄由来樹状細胞の結果を示す。
その結果、野生型マウス由来の骨髄由来樹状細胞においては、BCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームの培地中への添加により、TNFの産生が誘導されたことが明らかとなった。
一方、Mincle-/-マウス由来の骨髄由来樹状細胞においては、BCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームを培地中に添加しても、TNFの産生誘導が認められなかった。
この結果は、TDMリポソームの添加によるサイトカイン産生誘導がMincle依存的であることを示す。
《骨髄由来樹状細胞(BDMC)の検討2》
実験例14で作製したBCG-TDMリポソーム及びM.phlei-TDMリポソームを、96ウェルプレートに、それぞれ0.3μg/ウェルとなるように添加してウェル表面をコートした。また、比較のために、実験例5と同様にして作製した対照リポソームを0.3μg/ウェルとなるようにコートした群、何もコートしなかった群、市販のTDM(ナカライテスク社)を1μg/ウェルでコートした群、リポポリサッカライド(LPS)を10ng/mLの終濃度で培地に添加した群も用意した。
続いて、各ウェルに、野生型マウス又はMincle-/-マウスから調製した骨髄由来樹状細胞(BDMC)を、それぞれ1×10個/ウェルの細胞密度で播種し、48時間培養した。続いて、ELISA法により培地中に放出されたTNFの濃度を測定した。
図16(b)~(d)は培地中に放出されたTNFの濃度を測定した結果を示すグラフである。図16(b)中、「BCG」はBCG-TDMリポソームコート群の結果を示し、「M.phlei」はM.phlei-TDMリポソームコート群の結果を示し、「対照」は対照リポソームコート群の結果を示し、「なし」は何もコートしなかった群の結果を示す。また、図16(c)は、市販のTDMをコートした群の結果を示す。また、図16(d)は、LPSを添加した群の結果を示す。また、図16(b)~(d)中、「WT」は野生型マウスの骨髄由来樹状細胞の結果を示し、「Mincle-/-」はMincle-/-マウスの骨髄由来樹状細胞の結果を示す。
その結果、野生型マウス由来の骨髄由来樹状細胞においては、BCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームでウェルをコートすることにより、TNFの産生が誘導されたことが明らかとなった。一方、Mincle-/-マウス由来の骨髄由来樹状細胞においては、BCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームでウェルをコートしても、TNFの産生誘導が認められなかった。
この結果は、TDMリポソームによる骨髄由来樹状細胞のサイトカイン産生誘導がMincle依存的であることを更に支持するものである。
《骨髄由来マクロファージ(BMM)の検討》
野生型マウス又はMincle-/-マウスから調製した骨髄由来マクロファージ(BMM)を、それぞれ、96ウェルプレートに、1×10個/ウェルの細胞密度で播種した。続いて、各細胞の培地に、実験例14で作製したBCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームをそれぞれ100μg/mLの終濃度となるように添加し、48時間培養した。また、比較のために、実験例5と同様にして作製した対照リポソームを100μg/mLの終濃度となるように添加した群、何も添加しなかった群、市販のTDM(ナカライテスク社)を1μg/ウェルでコートした群、リポポリサッカライド(LPS)を10ng/mLの終濃度で培地に添加した群も用意した。続いて、ELISA法により培地中に放出されたTNFの濃度を測定した。
図17(a)~(c)は培地中に放出されたTNFの濃度を測定した結果を示すグラフである。図17(a)中、「BCG」はBCG-TDMリポソーム添加群の結果を示し、「M.phlei」はM.phlei-TDMリポソーム添加群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム添加群の結果を示し、「なし」は何も添加しなかった群の結果を示す。また、図17(b)は、市販のTDMをコートした群の結果を示す。また、図17(c)は、LPSを添加した群の結果を示す。また、図17(a)~(c)中、「WT」は野生型マウスの骨髄由来マクロファージの結果を示し、「Mincle-/-」はMincle-/-マウスの骨髄由来マクロファージの結果を示す。
その結果、野生型マウス由来の骨髄由来マクロファージにおいては、BCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームの培地中への添加により、TNFの産生が誘導されたことが明らかとなった。一方、Mincle-/-マウス由来の骨髄由来マクロファージにおいては、BCG-TDMリポソーム又はM.phlei-TDMリポソームを培地中に添加しても、TNFの産生誘導が認められなかった。
この結果は、TDMリポソームの添加による骨髄由来マクロファージのサイトカイン産生誘導がMincle依存的であることを示す。
[実験例17]
(TDMリポソームの大量調製)
表10に示す組成で製造例17のTDMリポソームを工業的に大量調製した。TDMとしては、実験例14で精製したBCG-TDMを使用した。具体的には、BCG-TDM 15.0mg、コレステロール15.0mg、カチオン性脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)5.0mgを秤量し、ガラスバイアルへ投入した。
続いて、DOPC-クロロホルム溶液(25mg/mL)5.4mLを添加し、常温で充分に撹拌して脂質成分を溶解させた。続いて、減圧乾燥により、クロロホルムを除去した。続いて、tert-ブチルアルコールを3.0mL添加し、常温で撹拌して脂質成分を溶解させた。続いて、PBS 14mLを添加し、58℃のウォーターバスで加温・撹拌した。続いて、脂質成分の溶解を確認した後、室温まで冷却した。続いて、0.2μmと0.1μmのシリンジフィルターを通過させ、透析液をPBSとして透析を行い、tert-ブチルアルコールを除去し、製造例17のTDMリポソームを得た。
Figure 0007220472000012
続いて、分子特性評価装置(型式「ZETA SIZER Nano-ZS」、マルバーン社)を用いて、製造例17のTDMリポソームの直径、多分散指数、ゼータ電位をそれぞれ測定した。表11に測定結果を示す。その結果、製造例17のTDMリポソームの直径、多分散指数、ゼータ電位は、それぞれ、実験例3で作製した製造例6のリポソームの各値と同程度であることが明らかとなった。
Figure 0007220472000013
[実験例18]
(マウス皮下腫瘍モデルによるミコール酸含有リポソームの抗腫瘍効果の検討6)
実験例7と同様のマウス皮下腫瘍モデルを用いて、実験例17で作製した製造例17のTDMリポソームの抗腫瘍効果を検討した。
製造例17のTDMリポソームは、1匹1回の投与あたり0.44mg使用した。また、比較のために、1匹1回の投与あたり、実験例14の製造例14と同様にして作製したBCG-TDMリポソーム(以下、「TDM-D22」という場合がある。)を0.44mg、下記表12に示す組成で、実験例14と同様にして作製した製造例18のBCG-TDMリポソーム(以下、「TDM-D12」という場合がある。)を0.44mg、実験例5と同様にして作製した対照リポソームを0.5mg又はPBSを0.1mL投与した群も用意した。下記表12に、各リポソームの組成を示す。下記表12中、「D22」はデンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社製)を表し、「D12」はデンドロン脂質(型式「D12」、ヒュギエイアバイオサイエンス社製)を表す。
Figure 0007220472000014
図18は、腫瘍体積を経時的に測定した結果を示すグラフである。図18中、「PBS」はPBS投与群の結果を示し、「対照」は対照リポソーム投与群の結果を示し、「TDM-D22」は上述したTDM-D22投与群の結果を示し、「TDM-D12」は上述したTDM-D12投与群の結果を示し、「製造例17」は製造例17のTDMリポソーム投与群の結果を示す。
その結果、実験開始後25日目において、PBS投与群とTDM-D22投与群との間で腫瘍体積に有意差が認められた(p=0.02)。また、PBS投与群、対照リポソーム投与群と比較して、製造例17のTDMリポソーム投与群において、腫瘍体積の減少傾向が認められた。
以上の結果、製造例17のTDMリポソームが抗腫瘍効果を示すことが確認された。また、TDMリポソームにおいても、カチオン性脂質としてデンドロン脂質(型式「D22」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いたほうが、カチオン性脂質としてデンドロン脂質(型式「D12」、ヒュギエイアバイオサイエンス社)を用いた場合よりも抗腫瘍効果が高いことが明らかとなった。
本発明によれば、ミコール酸を臨床応用する技術を提供することができる。

Claims (6)

  1. α-ミコール酸、メトキシミコール酸及びケトミコール酸からなる群から選択される少なくとも1種のミコール酸、コレステロール及び下記化学式(1)で表されるデンドロン脂質を含有するリポソーム。
    Figure 0007220472000015
  2. ゼータ電位がプラスである、請求項に記載のリポソーム。
  3. 直径が200nm以下である、請求項1又は2に記載のリポソーム。
  4. 多分散指数が0.3以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のリポソーム。
  5. 請求項1~のいずれか一項に記載のリポソームを有効成分とする抗癌剤。
  6. 請求項に記載の抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤とを備える、癌治療用キット。
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