JP7220457B2 - ヒアルロン酸産生促進剤、関節機能改善剤、及び経口用組成物 - Google Patents
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しかしながら、前記疾患の治療は長期にわたり、しかも医師の処方を必要とするという問題がある。また、ヒアルロン酸を外から与えても根本的機能改善にはならず、充分な効果が期待できないという問題もある。
しかしながら、ヒアルロン酸は、皮膚からはほとんど吸収されないという問題がある。
このようなヒト細胞のヒアルロン酸の産生を促進する薬剤としては、インシュリン様成長因子-1、上皮成長因子(非特許文献2参照)、インターロイキン-1(非特許文献3参照)等のサイトカイン、或いはフォルボールエステル(非特許文献4参照)などが知られている。
しかしながら、いずれも医薬品や飲食品等として簡便にかつ安心して使用することができるものではないという問題がある。
しかしながら、クコの果実の抽出物は、ヒト真皮線維芽細胞又はヒト表皮角化細胞に対して、有意なヒアルロン酸産生促進作用を示さなかったとの報告がなされており(特許文献1参照)、ヒアルロン酸産生促進作用、関節機能改善作用などについては報告されておらず、前記素材としては期待されていないものであった。
<1> クコ抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤である。
<2> 前記<1>に記載のヒアルロン酸産生促進剤を含有することを特徴とする関節機能改善剤である。
<3> ヒアルロン酸の産生促進及び関節機能の改善の少なくともいずれのために用いられる経口用組成物であって、前記<1>に記載のヒアルロン酸産生促進剤及び前記<2>に記載の関節機能改善剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする経口用組成物である。
本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、クコ抽出物を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
クコ(枸杞)は、ナス科クコ属の落葉低木である。前記クコは、日本及び朝鮮、中国、台湾などに分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。クコは古来よりその果実、根皮、及び葉が食用、生薬、或いは漢方薬として服用されており、前記生薬としては、クコの果実からなる枸杞子(クコシ)、クコの根皮からなる地骨皮(ジコッピ)、クコの葉からなる枸杞葉(クコヨウ)などが挙げられる。このように、クコは、安全性の高い植物である。
前記クコの前記抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、幹部、樹皮部、花部、果実部、根部などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記クコの抽出部位としては、葉部が好ましい。
また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記ヒアルロン酸産生促進剤の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記細胞としては、ヒアルロン酸産生能を有する細胞であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、滑膜細胞、真皮線維芽細胞、表皮角化細胞、正常ヒト中皮細胞、関節軟骨細胞などが挙げられる。これらの中でも、滑膜細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有することが好ましい。
前記ヒアルロン酸産生促進作用を確認する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、後述する実施例に記載の試験方法などが挙げられる。
前記ヒアルロン酸産生促進剤は、優れたヒアルロン酸産生作用を有し、安全性が高いため、産生されたヒアルロン酸が関節に補充されることにより、関節のスムーズな動きの維持又は改善、並びに、関節における軟骨の摩耗等による関節の変形、関節痛、病的関節液、運動障害などの予防又は改善、更に変形性関節症の予防又は改善に好適に用いることができる。したがって、前記ヒアルロン酸産生促進剤は、後述する本発明の関節機能改善剤にも好適に用いることができる。
また、前記ヒアルロン酸産生促進剤は、優れたヒアルロン酸産生作用を有し、安全性が高いため、皮膚の乾燥、肌荒れ、ハリ、弾力性の減少、シミ、シワなどの予防又は改善にも好適に用いることができる。
また、前記ヒアルロン酸産生促進剤は、優れたヒアルロン酸産生作用を有し、安全性が高いため、ヒアルロン酸の産生促進用の経口用組成物としても好適に用いることができる。
更に、前記ヒアルロン酸産生促進剤は、ヒアルロン酸産生促進作用の作用機構に関する研究のための試薬としても好適に用いることができる。
前記関節機能改善剤は、上述した本発明のヒアルロン酸産生促進剤を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
前記ヒアルロン酸産生促進剤は、上述した本発明のヒアルロン酸産生促進剤である。
前記関節機能改善剤における前記ヒアルロン酸産生促進剤の含有量としては、特に制限はなく、前記クコ抽出物の生理活性等によって適宜調整することができる。前記関節機能改善剤は、前記ヒアルロン酸産生促進剤のみからなるものであってもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記関節機能改善剤の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記関節機能改善剤は、前記ヒアルロン酸産生促進剤を含有するため、関節における潤滑機能、関節における軟骨の摩耗等による関節の変形、関節痛、病的関節液、運動障害などの改善に好適に用いることができる。
また、前記関節機能改善剤は、安全性が高いため、関節機能の改善用の経口用組成物としても好適に用いることができる。
本発明の経口用組成物は、上述した本発明のヒアルロン酸産生促進剤及び上述した本発明の関節機能改善剤の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記経口用組成物における前記ヒアルロン酸産生促進剤及び前記関節機能改善剤の少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができる。
前記経口用組成物における前記その他の成分としては、特に制限はなく、通常の経口用組成物の製造に用いられる補助的原料又は添加物又はその他の成分の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記経口用組成物は、日常的に経口摂取することが可能であり、有効成分であるクコ抽出物の働きによって、ヒアルロン酸産生促進作用や関節機能改善作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができるので、ヒアルロン酸の産生促進及び関節機能の改善の少なくともいずれかの用途に好適に用いることができる。
乾燥した野菜用クコ(Lycium chinense)葉20gに、溶媒として前記乾燥クコ葉の10倍量(w/v)の水を加え、80℃で2時間還流抽出を行った。次いで、減圧濾過を行った後、前記溶媒を除去し、野菜用クコ葉熱水抽出物とした。収率は、27.8%であった。
乾燥した野菜用クコ(Lycium chinense)葉20gに、溶媒として前記乾燥クコ葉の10倍量(w/v)の50容量%エタノールを加え、80℃で2時間還流抽出を行った。次いで、減圧濾過を行った後、前記溶媒を除去し、野菜用クコ葉50容量%エタノール抽出物とした。収率は、29.4%であった。
乾燥した野菜用クコ(Lycium chinense)葉20gに、溶媒として前記乾燥クコ葉の10倍量(w/v)の80容量%エタノールを加え、80℃で2時間還流抽出を行った。次いで、減圧濾過を行った後、前記溶媒を除去し、野菜用クコ葉80容量%エタノール抽出物とした。収率は、19.8%であった。
前記製造例1において、野菜用クコ(Lycium chinense)葉を、長葉クコ(Lycium barbarum)葉に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で長葉クコ(Lycium barbarum)葉熱水抽出物を製造した。収率は、27.1%であった。
前記製造例3において、野菜用クコ(Lycium chinense)葉を、長葉クコ(Lycium barbarum)葉に変更したこと以外は、製造例3と同様の方法で長葉クコ(Lycium barbarum)葉80容量%エタノール抽出物を製造した。収率は、19.2%であった。
(実施例1:野菜用クコ(Lycium chinense)葉熱水抽出物)
ヒト慢性関節リウマチ患者由来の滑膜細胞(HFLS-RA、CELL APPLICATIONS,INC製)を、10%Growth Supplements含有ヒト滑膜細胞増殖培地(Synoviocyte Basal Medium、CELL APPLICATIONS,INC.製)を用いて7日間培養した。なお、培養装置としては、CO2インキュベーター(三洋電機株式会社製)を用い、培養条件としては、CO2濃度5%、インキュベーション温度37℃とした。その後、Trypsin/EDTA溶液(CELL APPLICATIONS,INC.製)を用いて3分間トリプシン処理を行い、前記滑膜細胞(HFLS-RA)を回収した。次いで、回収した細胞を1.25×105細胞/mLの濃度になるように1%Growth Supplements含有ヒト滑膜細胞増殖培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、24時間前培養した。
具体的には、前記培養上清をAssay Buffer(0.5M NaCl、0.02%(v/v)Tween-20、1%(w/v)BSA/PBS)にて11倍希釈後、HABPプレート(Corning inc.製)にアプライした。室温で2時間放置後、Washing Buffer(1.5M NaCl、0.05%(v/v)Tween-20、dH2O)にて洗浄後、HABP-B(株式会社ホクドー製、Biotinylated Hyaluronan Binding Protein)を100μL添加し、1時間反応させた。その後、Strept Abidin-HRP(Merck & Co., Inc.製)で発色した後、415nmにおける吸光度を測定した。ヒアルロン酸量は、各ウェルから得られた培養上清について測定された吸光度を、ヒアルロン酸の標準品を用いた検量線から換算した。
前記ヒアルロン酸量から、下記式(1)によりヒアルロン酸産生促進率を算出し、ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。結果を下記表1に示す。
ヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B × 100 ・・・式(1)
ただし、前記式(1)中、「A」は、前記被験試料を添加した場合のヒアルロン酸量を示し、「B」は、前記被験試料を添加しなかった場合(前記陰性コントロール)のヒアルロン酸量を示す。
実施例1において、被験試料として使用した製造例1の野菜用クコ(Lycium chinense)葉熱水抽出物を、製造例2の野菜用クコ(Lycium chinense)葉50容量%エタノール抽出物に変更し、培地中の前記被験試料の最終濃度を、6.25μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、又400μg/mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。結果を表1に示す。
実施例2において、被験試料として使用した製造例2の野菜用クコ(Lycium chinense)葉50容量%エタノール抽出物を、製造例3の野菜用クコ(Lycium chinense)葉80容量%エタノール抽出物に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、被験試料として使用した製造例1の野菜用クコ(Lycium chinense)葉熱水抽出物を、製造例4の長葉クコ(Lycium barbarum)葉熱水抽出物に変更し、培地中の前記被験試料の最終濃度を、6.25μg/mL又400μg/mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、被験試料として使用した製造例1の野菜用クコ(Lycium chinense)葉熱水抽出物を、製造例5の長葉クコ(Lycium barbarum )葉80容量%エタノール抽出物に変更し、培地中の前記被験試料の最終濃度を、6.25μg/mL、25μg/mL、100μg/mL、又400μg/mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。結果を表1に示す。
<1> クコ抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤である。
<2> 滑膜細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する前記<1>に記載のヒアルロン酸産生促進剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のヒアルロン酸産生促進剤を含有することを特徴とする関節機能改善剤である。
<4> ヒアルロン酸の産生促進及び関節機能の改善の少なくともいずれのために用いられる経口用組成物であって、前記<1>から<2>のいずれかに記載のヒアルロン酸産生促進剤及び前記<3>に記載の関節機能改善剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする経口用組成物である。
Claims (4)
- クコの葉部の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤。
- 滑膜細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する請求項1に記載のヒアルロン酸産生促進剤。
- 請求項1から2のいずれかに記載のヒアルロン酸産生促進剤を含有することを特徴とする関節機能改善剤。
- ヒアルロン酸の産生促進及び関節機能の改善の少なくともいずれのために用いられる経口用組成物であって、
請求項1から2のいずれかに記載のヒアルロン酸産生促進剤及び請求項3に記載の関節機能改善剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする経口用組成物。
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