JP7458660B2 - プロフィラグリンmRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3mRNA発現促進剤 - Google Patents

プロフィラグリンmRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3mRNA発現促進剤 Download PDF

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Description

FERM BP-21409 FERM BP-21411 FERM BP-21410
本発明は、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)抽出物のラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)による発酵物、これを含む美白剤及び抗老化剤、並びに皮膚化粧料及び飲食品に関する。
従来、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等の予防、治療又は改善には、ハイドロキノン等の化学合成品を有効成分とする美白剤を外用する処置が行われてきた。しかしながら、ハイドロキノン等の化学合成品は、皮膚刺激、アレルギー等の副作用のおそれがある。そこで、安全性の高い天然原料を有効成分とする美白剤の開発が望まれており、チロシナーゼ活性阻害作用を有するものとしては、例えば、ヤナギタデ抽出物(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
フィラグリンは、皮膚の構成成分であり、皮膚におけるバリア機能に関与し、アレルゲン、毒素、感染性生物の侵入を防ぐ機能を有していると考えられている。フィラグリンの遺伝子の変異等による機能の低下は、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患の発症リスクと関連し、さらに重篤な場合は尋常性魚鱗癬等の皮膚疾患につながることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factors;NMF)の主成分であるアミノ酸は、ケラトヒアリン顆粒に由来するフィラグリンが角質層内で分解されて産生される。このフィラグリンは、角質層直下の顆粒層に存在する表皮ケラチノサイトでプロフィラグリンとして発現する。その後、直ちにリン酸化し、ケラトヒアリン顆粒に蓄積され、脱リン酸、加水分解を経てフィラグリンへと分解され、角質層に移行して、ケラチンフィラメントの凝集効率を高め、角質細胞の内部構築に関与することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。近年、このフィラグリンが、皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、及び乾燥等の条件によってフィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ酸量が低下することが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
したがって、表皮ケラチノサイトにおいて、プロフィラグリンの発現を促進することにより、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患を予防・治療又は改善できると考えられる。また、プロフィラグリンの発現を促進し、それにより角質層内のアミノ酸量を増大させることで、角質層の水分環境を本質的に改善できることが期待される。従来、プロフィラグリンmRNA発現促進作用を有するものとして、ガイヨウ抽出物(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、線維芽細胞並びにこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては線維芽細胞の増殖は活発であり、線維芽細胞、細胞外マトリックス成分等の皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の産生量が減少するとともに、分解や変質を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が生じるため、肌は張りや艶を失い、肌荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下等には、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等のマトリックス成分の減少・変性等が関与している。したがって、ヒアルロン酸等の産生を促進することは、皮膚の老化を予防、治療又は改善する上で重要である。
前述した細胞外マトリックス成分のうち、ヒアルロン酸は、ムコ多糖の一種であり、細胞間の間隙に充填されることにより細胞を保持する機能を有し、さらに細胞間隙への水分の保持、組織への潤滑性や柔軟性の付与、機械的障害等の外力に対する抵抗等、数多くの機能を有している。ヒアルロン酸の産生を促進することができれば、皮膚の荒れ、しわ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下及び保湿機能の低下等といった皮膚の老化症状を予防、治療又は改善できると考えられる。また、表皮ヒアルロン酸の合成促進に関与するヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)の発現を促進することで、皮膚の老化を予防、治療又は改善することができるものと考えられる。
さらに、ヒアルロン酸は、皮膚組織の他にも、軟骨、関節液、臍帯、眼硝子体、その他の結合組織に存在する。このうち、関節液に含まれるヒアルロン酸は、関節軟骨の表面を覆い、ヒアルロン酸が有する潤滑機能、軟骨に対する被覆・保護機能等により、関節の円滑な作動に役立っている。一方、慢性関節リウマチ等の関節炎において、関節液におけるヒアルロン酸の濃度が低下していることが知られている。したがって、ヒアルロン酸の産生を促進することで、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、又は骨関節炎等の関節炎を予防又は治療することができると考えられる。さらに、創傷又は熱傷の治癒過程において、肉芽(組織)が形成するが、肉芽中にヒアルロン酸が著しく増加することが知られている。そのため、ヒアルロン酸の産生を促進することで、創傷又は熱傷の治癒を促進することができると考えられる。ヒアルロン酸産生促進作用を有するものとしては、クスノハガシワからの抽出物(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
また、表皮を構成する基底層、有棘層、顆粒層、及び角質層のうち、特に、顆粒層においては、細胞膜が肥厚して肥厚細胞膜を形成するとともに、トランスグルタミナーゼ-1の作用により、蛋白分子間がグルタミル-リジン架橋され、強靭なケラチン蛋白線維が形成される。さらに、その一部にセラミド等が共有結合し、疎水的な構造をとることで、細胞間脂質のラメラ構造の土台を供給し、角質バリア機能の基礎が形成される。
セラミドは、表皮細胞の角化の過程においてセリンとパルミトイル-CoAとを基に、セラミド合成の律速酵素として知られるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)をはじめとする酵素の働きにより生成される。セラミドは、皮膚最外層を覆う角質細胞間脂質の主成分として特異的に存在し、皮膚本来が持つ生体と外界とのバリア膜としての機能維持に重要な役割を果たしている。
角質層の構造は、レンガとモルタルとに例えられ、15層ほどに積み重なった角質細胞を細胞間脂質が繋ぎ止める形で強固なバリア膜を形成している。角質細胞は、アミノ酸を主成分とする天然保湿因子を細胞内に含有することによって水分を保持し、一方、角質細胞間脂質は、約50%のセラミドを主成分とし、コレステロール、脂肪酸等の両親媒性脂質から構成されており、疎水性部分と親水性部分とが交互に繰り返される層板構造、いわゆるラメラ構造を特徴としている。
様々な内的・外的要因による皮膚のバリア機能の低下は、経表皮水分蒸散量を増加させ、皮膚のかさつき、落屑、掻痒感等を惹き起こし、いわゆる乾燥肌に陥る。また、皮膚のバリア機能の低下は、皮膚の炎症を増大させ、外界からの様々な刺激に対する防御機能が低下するという悪循環に陥る。最近の研究において、加齢により、又はバリア障害として知られるアトピー性皮膚炎患者において、角質セラミド成分(いわゆる細胞間脂質)の減少や組成変化が報告されており(例えば、非特許文献4参照)、皮膚のバリア機能の維持、改善にセラミドが重要であることが広く知られるようになっている。皮膚のバリア機能を改善する方法として、セラミドを外部から補う方法(例えば、非特許文献5参照)や皮膚内部においてセラミド産生能を高める方法(例えば、非特許文献6参照)等が知られている。
しかしながら、より優れた美白作用又は抗老化作用を有し、かつ安全性が高く、美白剤、抗老化剤、皮膚化粧料又は飲食品の有効成分として用いることができる物質に対する要望は依然として強く、その速やかな開発が求められているのが現状である。
特開2004-083488号公報 特開2012-219047号公報 特開2003-146837号公報
"Nat Genet.",2006年,Vol.38,No.4,p.441-446 「フレグランスジャーナル臨時増刊」,2000年,Vol.17,p.14-19 "Arch. Dermatol. Res.",1996年,Vol.288,p.442-446 J. Dermatol.,1993年,Vol.20,No.1,p.1-6 「フレグランスジャーナル」,2004年,Vol.32,No.11,p.23-32 Br. J. Dermatol.,2000年,Vol.143,Issue 3,p.524-531
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた美白作用及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い新規組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた美白作用を有し、安全性の高い美白剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた抗老化作用を有し、安全性の高い抗老化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた美白作用及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い皮膚化粧料を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた美白作用及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い飲食品を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)抽出物のラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)による発酵物が、優れた美白作用及び抗老化作用を有することを知見し、本発明を完成したものである。
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> カンゾウ抽出物の微生物による発酵物であって、
前記カンゾウが、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)であり、
前記微生物が、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)であることを特徴とするカンゾウ抽出発酵物である。
<2> 前記<1>に記載のカンゾウ抽出発酵物を含有することを特徴とする美白剤である。
<3> チロシナーゼ活性阻害作用を有する前記<2>に記載の美白剤である。
<4> 前記<1>に記載のカンゾウ抽出発酵物を含有することを特徴とする抗老化剤である。
<5> プロフィラグリンmRNA発現促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用及びヒアルロン酸合成酵素3mRNA発現促進作用からなる群から選択される少なくとも1種を有する前記<4>に記載の抗老化剤である。
<6> 前記<1>に記載のカンゾウ抽出発酵物、前記<2>から<3>のいずれかに記載の美白剤及び前記<4>から<5>のいずれかに記載の抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする皮膚化粧料である。
<7> 前記<1>に記載のカンゾウ抽出発酵物、前記<2>から<3>のいずれかに記載の美白剤及び前記<4>から<5>のいずれかに記載の抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする飲食品である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた美白作用及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い新規組成物を提供することができる。
本発明の美白剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた美白作用を有し、安全性の高い美白剤を提供することができる。
本発明の抗老化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた抗老化作用を有し、安全性の高い抗老化剤を提供することができる。
本発明の皮膚化粧料によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた美白作用及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い皮膚化粧料を提供することができる。
本発明の飲食品によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた美白作用及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い飲食品を提供することができる。
(カンゾウ抽出発酵物)
本発明のカンゾウ抽出発酵物は、カンゾウからの抽出物の、微生物による発酵物である。
<カンゾウ抽出物>
カンゾウ(甘草)は、マメ科グリチルリーザ(Glycyrrhiza)属に属する多年生草本であり、古代より薬用又は甘味料の原料として利用されている。
本発明におけるカンゾウは、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)である。
前記カンゾウ抽出物は、抽出原料として使用する抽出部位から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記カンゾウの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根部、根茎部又はこれらの部位の混合物などが挙げられる。これらの中でも、根部、葉部、根茎部が好ましい。
前記カンゾウの抽出部位の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各部位を乾燥させた後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
前記カンゾウ抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法により容易に得ることができる。前記カンゾウ抽出物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出液の希釈液、濃縮液、抽出液の乾燥物、粗精製物、精製物などが挙げられる。
前記カンゾウの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料である前記カンゾウの前記抽出部位を投入し、必要に応じて適宜撹拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除くことにより抽出液を得る方法などが挙げられる。
また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
前記カンゾウの抽出における条件(抽出時間及び抽出温度)、抽出溶媒及びその使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記抽出溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられる。
前記親水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコールなどが挙げられる。
前記混合溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低級アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~90質量部、低級脂肪族ケトンを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~40質量部、多価アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~90質量部添加することが好ましい。
前記カンゾウの抽出溶媒は、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
得られた前記カンゾウ抽出物は、前記カンゾウ抽出物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物などを得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製などの処理を施してもよい。
以上のようにして調製されたカンゾウ抽出物は、後述の微生物による発酵に付される。
<発酵>
前記発酵の方法としては、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)を用いる限り、特に制限はなく、公知の発酵方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。
-ラクトバチルス・プランタラム-
前記ラクトバチルス・プランタラムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ここで、ラクトバチルス・プランタラムは、乳酸菌の一種であるが、主として野菜漬物、キムチ、味噌などの植物性の発酵食品から分離されることから植物性乳酸菌に包含され、ヨーグルト等の発酵乳や乳酸菌飲料の製造に用いられる動物性乳酸菌とは異なるものである。前記ラクトバチルス・プランタラムは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、2種以上のラクトバチルス・プランタラムにより同時に発酵を行ってもよいし、別々に発酵を行ってもよい。
前記ラクトバチルス・プランタラムの中でも、ラクトバチルス・プランタラム 22A-1(FERM P-21409)、ラクトバチルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)、及びラクトバチルス・プランタラム 22B-2(FERM P-21410)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ラクトバチルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)を用いることが特に好ましい。前記ラクトバチルス・プランタラム 22A-1(FERM P-21409)、ラクトバチルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)、及びラクトバチルス・プランタラム 22B-2(FERM P-21410)の3株は、本出願人により漬物から単離・同定された株であり、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託申請し、平成19年10月22日に受託されている。
-発酵処理-
前記発酵処理は、例えば、濃縮乾固したカンゾウ抽出物を水に溶解し、またはカンゾウ抽出液を濃縮乾固せずにそのまま用い、前記ラクトバチルス・プランタラムを接種することにより行うことができる。
前記ラクトバチルス・プランタラムを用いた発酵処理は、例えば、カンゾウ抽出物水溶液と上記ラクトバチルス・プランタラムとを発酵槽に入れ、25℃~35℃、好ましくは28℃~32℃の温度範囲で、12時間~72時間、好ましくは18時間~48時間処理することにより、行うことができる。また、発酵処理の開始時において、反応液のpHが5.0~7.0に、好ましくは5.5~6.5に調整されていると、発酵処理が好適に進行する。かかる発酵処理は、発酵液を冷却、加熱殺菌、ろ過などの所望の手段に付し、発酵菌を不活性化させることで終了させる。
このようにして得られた発酵液は、そのまま発酵物として用いてもよく、または適宜希釈し若しくは濃縮して、発酵物として用いてもよい。さらには、濃縮物をさらに乾燥してもよく、粗精製、精製などを行ってもよい。
なお、前述した抽出処理や発酵処理の前に、抽出原料や抽出物(発酵原料)に対し、抽出効率や発酵効率を高めるための処理を行ってもよい。このような処理としては、例えば、グルカナーゼ、セルラーゼ等を用いた酵素処理が好ましく例示される。例えば、抽出処理により得られた抽出物に酵素処理を行うと、その後の発酵処理の効率が高まるため、特に好ましい。
このようにして得られるカンゾウ抽出発酵物は、優れた美白作用及び抗老化作用を示すため、後述する美白剤、抗老化剤の有効成分として、又は皮膚化粧料及び飲食品の配合成分として好適に用いることができる。
前記カンゾウ抽出発酵物は、そのままでも後述する美白剤、抗老化剤の有効成分として、又は皮膚化粧料及び飲食品の配合成分として使用することができるが、利用しやすい点で、前記濃縮液、前記乾燥物が好ましい。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
(美白剤及び抗老化剤)
本発明の美白剤及び抗老化剤は、上述した本発明のカンゾウ抽出発酵物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記美白剤は、チロシナーゼ活性阻害作用を有する。
前記抗老化剤は、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用及びヒアルロン酸合成酵素3mRNA発現促進作用からなる群から選択される少なくとも1種を有する。
前記カンゾウ抽出発酵物が含有する、チロシナーゼ活性阻害作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用及びヒアルロン酸合成酵素3mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを発揮する物質の詳細については不明であるが、前記カンゾウ抽出発酵物がこのような優れた作用を有し、美白剤及び抗老化剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
<カンゾウ抽出発酵物>
前記カンゾウ抽出発酵物は、上述した本発明のカンゾウ抽出発酵物である。
前記カンゾウ抽出発酵物の美白剤及び抗老化剤における含有量としては、特に制限はなく、前記抽出物の生理活性等によって適宜調整することができる。前記美白剤及び抗老化剤は、前記カンゾウ抽出発酵物のみからなるものであってもよい。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記美白剤及び抗老化剤の利用形態に応じて適宜選択することができる。例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<用途>
本発明の美白剤及び抗老化剤の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品などが挙げられる。
本発明の美白剤及び抗老化剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
また、本発明の美白剤及び抗老化剤は、美白作用や抗老化作用の作用機構に関する研究のための試薬としても用いることができる。
(皮膚化粧料)
前記皮膚化粧料は、本発明のカンゾウ抽出発酵物、美白剤及び抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記カンゾウ抽出発酵物、美白剤及び抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種の皮膚化粧料における含有量としては、特に制限はなく、前記カンゾウ抽出発酵物の生理活性等によって適宜調整することができるが、前記カンゾウ抽出発酵物に換算して、0.0001質量%~20質量%が好ましく、0.0001質量%~10質量%がより好ましい。前記皮膚化粧料は、前記カンゾウ抽出発酵物、美白剤及び抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種のみからなるものであってもよい。
前記皮膚化粧料におけるその他の成分としては、特に制限はなく、通常の皮膚化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の皮膚化粧料は、日常的に使用することが可能であり、有効成分であるカンゾウ抽出発酵物の働きによって、美白作用や抗老化作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができるので、美白用途及び抗老化用途の少なくともいずれかの用途などに好適に用いることができる。
前記皮膚化粧料の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーションなどが挙げられる。
本発明の皮膚化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
(飲食品)
前記飲食品は、本発明のカンゾウ抽出発酵物、美白剤及び抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではない。したがって、前記飲食品は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する飲食品を幅広く含むものを意味する。
前記飲食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
前記カンゾウ抽出発酵物、美白剤及び抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種の飲食品における含有量としては、特に制限はなく、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、例えば、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの前記カンゾウ抽出発酵物摂取量が約1mg~1,000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状またはカプセル状の飲食品の場合、前記カンゾウ抽出発酵物、美白剤及び抗老化剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1質量~100質量%であり、好ましくは5質量~100質量%である。
前記飲食品におけるその他の成分としては、特に制限はなく、通常の飲食品の製造に用いられる補助的原料又は添加物又はその他の成分の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の飲食品は、日常的に経口摂取することが可能であり、有効成分であるカンゾウ抽出発酵物の働きによって、美白作用や抗老化作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができるので、美白用途及び抗老化用途の少なくともいずれかの用途などに好適に用いることができる。
本発明の飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
以下、本発明の製造例及び試験例を説明するが、本発明は、これらの製造例及び試験例に何ら限定されるものではない。
(比較製造例1)
-グリチルリーザ・グラブラ(G. glabra)の水抽出物の製造-
抽出原料として、グリチルリーザ・グラブラ(G. glabra)の根の粉砕物30gを水1,000mLに投入した後、滅菌処理を行い、グリチルリーザ・グラブラ(G. glabra)抽出液(以下、「G. glabra発酵無液」と称することがある。)を得た(1,000g)。
(製造例1)
-グリチルリーザ・グラブラ(G. glabra)抽出発酵物の製造-
比較製造例1で得られたG. glabra発酵無液(1,000g)にラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)22A-3株(受託番号:FERM P-21411)を植菌し、30℃で24時間発酵させた。得られた発酵液を濾過し、濾液を濃縮乾固することにより、グリチルリーザ・グラブラ(G. glabra)抽出発酵物(以下、「G. glabra発酵液」と称することがある。)を得た(11g)。
(比較製造例2)
-グリチルリーザ・ウラレンシス(G. uralensis)の水抽出物の製造-
比較製造例1において、グリチルリーザ・グラブラ(G. glabra)の根の粉砕物をグリチルリーザ・ウラレンシス(G. uralensis)の根の粉砕物に代えた以外は同様にして、グリチルリーザ・ウラレンシス(G. uralensis)抽出液(以下、「G. uralensis発酵無液」と称することがある。)を得た。
(比較製造例3)
-グリチルリーザ・ウラレンシス(G. uralensis)抽出発酵物の製造-
製造例1において、G. glabra発酵無液を比較製造例2で得られたG. uralensis発酵無液に代えた以外は同様にして、グリチルリーザ・ウラレンシス(G. uralensis)抽出発酵物(以下、「G. uralensis発酵液」と称することがある。)を得た。
(試験例1:チロシナーゼ活性阻害作用試験)
製造例1及び比較製造例1~3で得られた抽出物又は抽出発酵物を被験試料として用い、下記の試験方法により、チロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
48ウェルプレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mLチロシン溶液0.06mL、25%DMSO溶液に溶解した被験試料(試料濃度は下記表1-1及び1-2を参照)0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、800units/mLチロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応させた。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。
また、ブランクとして、酵素溶液を添加しない場合についても同様の操作及び吸光度の測定を行った。さらに、コントロールとして、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた測定結果から、下記式1によりチロシナーゼ活性阻害率(%)を算出した。結果を表1-1及び1-2に示す。
<式1>
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1-(A-B)/(C-D)}×100
式1中のA~Dは、それぞれ以下を表す。
A:被験試料添加・酵素添加での波長475nmにおける吸光度
B:被験試料添加・酵素無添加での波長475nmにおける吸光度
C:試料無添加・酵素添加での波長475nmにおける吸光度
D:試料無添加・酵素無添加での波長475nmにおける吸光度
表1-1及び1-2の結果から、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)抽出物をラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)により発酵させることで、優れたチロシナーゼ活性阻害作用を有するカンゾウ抽出発酵物が得られることが確認された。
(試験例2:プロフィラグリンmRNA発現促進作用試験)
製造例1及び比較製造例1~3で得られた抽出物又は抽出発酵物を被験試料として用い、下記の試験方法により、プロフィラグリンmRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、KGMを用いて35mmシャーレに2mLずつ播き(40×10細胞/シャーレ)、37℃、5%COの条件下で一晩培養した。
培養後、正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM、上記KGM培地に増殖因子(hEGF、BPE、インスリン)を添加していないもの)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMに溶解した被験試料(試料濃度は下記表2を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%COの条件下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、プロフィラグリン及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(登録商標)(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) Prime Script(商標) RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製、code No. RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。プロフィラグリンmRNAの発現量は、「被験試料添加」及び「被験試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDH mRNAの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式2によりプロフィラグリンmRNA発現促進率(%)を算出した。結果を表2に示す。
<式2>
プロフィラグリンmRNA発現促進率(%)=A/B×100
式2中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
表2の結果から、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)抽出物をラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)により発酵させることで、優れたプロフィラグリンmRNA発現促進作用を有するカンゾウ抽出発酵物が得られることが確認された。
(試験例3:セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用試験)
製造例1及び比較製造例1~3で得られた抽出物又は抽出発酵物を被験試料として用い、下記の試験方法により、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、KGMを用いて35mmシャーレに2mLずつ播き(40×10細胞/シャーレ)、37℃、5%COの条件下で一晩培養した。
培養後、正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM、上記KGM培地に増殖因子(hEGF、BPE、インスリン)を添加していないもの)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMに溶解した被験試料(試料濃度は下記表3を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%COの条件下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、SPT及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(登録商標)(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) Prime Script(商標) RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製、code No. RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。SPT mRNAの発現量は、「被験試料添加」及び「被験試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDH mRNAの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式3によりSPT mRNA発現促進率(%)を算出した。結果を表3に示す。
<式3>
SPT mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式3中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
表3の結果から、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)抽出物をラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)により発酵させることで、優れたセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用を有するカンゾウ抽出発酵物が得られることが確認された。
(試験例4:ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用試験)
製造例1及び比較製造例1で得られた抽出物又は抽出発酵物を被験試料として用い、下記の試験方法により、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、KGMを用いて35mmシャーレに2mLずつ播き(40×10細胞/シャーレ)、37℃、5%COの条件下で一晩培養した。
培養後、正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM、上記KGM培地に増殖因子(hEGF、BPE、インスリン)を添加していないもの)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMに溶解した被験試料(試料濃度は下記表4を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%COの条件下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、HAS3及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(登録商標)(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) Prime Script(商標) RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製、code No. RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。HAS3 mRNAの発現量は、「被験試料添加」及び「被験試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDH mRNAの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式4によりHAS3 mRNA発現促進率(%)を算出した。結果を表4に示す。
<式4>
HAS3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式4中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
表4の結果から、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)抽出物をラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)により発酵させることで、優れたヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用を有するカンゾウ抽出発酵物が得られることが確認された。
(配合例1)
下記組成の乳液を常法により製造した。
G. glabra抽出発酵物(製造例1) 0.01g
・ ホホバオイル 4.00g
・ 1,3-ブチレングリコール 3.00g
・ アルブチン 3.00g
・ ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
・ オリーブオイル 2.00g
・ スクワラン 2.00g
・ セタノール 2.00g
・ モノステアリン酸グリセリル 2.00g
・ オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
・ パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
・ グリチルリチン酸ステアリル 0.10g
・ 黄杞エキス 0.10g
・ グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
・ イチョウ葉エキス 0.10g
・ コンキオリン 0.10g
・ オウバクエキス 0.10g
・ カミツレエキス 0.10g
・ 香料 0.05g
・ 精製水 残部(全量を100gとする)
(配合例2)
下記組成のクリームを常法により製造した。
G. glabra抽出発酵物(製造例1) 0.05g
・ クジンエキス 0.1g
・ オウゴンエキス 0.1g
・ 流動パラフィン 5.0g
・ サラシミツロウ 4.0g
・ スクワラン 10.0g
・ セタノール 3.0g
・ ラノリン 2.0g
・ ステアリン酸 1.0g
・ オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
・ モノステアリン酸グリセリル 3.0g
・ 油溶性甘草エキス 0.1g
・ 1,3-ブチレングリコール 6.0g
・ パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
・ 香料 0.1g
・ 精製水 残部(全量を100gとする)
(配合例3)
下記組成の美容液を常法により製造した。
G. glabra抽出発酵物(製造例1) 0.01g
・ カミツレエキス 0.1g
・ ニンジンエキス 0.1g
・ キサンタンガム 0.3g
・ ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
・ カルボキシビニルポリマー 0.1g
・ 1,3-ブチレングリコール 4.0g
・ グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
・ グリセリン 2.0g
・ 水酸化カリウム 0.25g
・ 香料 0.01g
・ 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
・ エタノール 2.0g
・ 精製水 残部(全量を100gとする)
(配合例4)
下記組成の錠剤を常法により製造した。
G. glabra抽出発酵物(製造例1) 5.0mg
・ ドロマイト(カルシウム20%、マグネシウム10%含有) 83.4mg
・ カゼインホスホペプチド 16.7mg
・ ビタミンC 33.4mg
・ マルチトール 136.8mg
・ コラーゲン 12.7mg
・ ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg
(配合例5)
下記組成の経口液状製剤を常法により製造した。
G. glabra抽出発酵物(製造例1) 0.3質量%
・ ソルビット 12.0質量%
・ 安息香酸ナトリウム 0.1質量%
・ 香料 1.0質量%
・ 硫酸カルシウム 0.5質量%
・ 精製水 残部(100質量%)
FERM P-21409
FERM P-21411
FERM P-21410

Claims (3)

  1. 皮膚老化の改善又は治療用途(ただし、抗酸化作用に基づく抗皮膚老化用途を除く)に用いられるプロフィラグリンmRNA発現促進剤であって、
    カンゾウ抽出発酵物を含有し、
    前記カンゾウ抽出発酵物が、カンゾウ抽出物の微生物による発酵物であって、
    前記カンゾウが、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)であり、
    前記カンゾウ抽出物が、水抽出物であり、
    前記微生物が、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)であり、
    前記ラクトバチルス・プランタラムが、ラクトバチルス・プランタラム 22A-1(FERM P-21409)、ラクトバチルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)、及びラクトバチルス・プランタラム 22B-2(FERM P-21410)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするプロフィラグリンmRNA発現促進剤。
  2. 皮膚老化の改善又は治療用途(ただし、抗酸化作用に基づく抗皮膚老化用途を除く)に用いられるセリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進剤であって、
    カンゾウ抽出発酵物を含有し、
    前記カンゾウ抽出発酵物が、カンゾウ抽出物の微生物による発酵物であって、
    前記カンゾウが、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)であり、
    前記カンゾウ抽出物が、水抽出物であり、
    前記微生物が、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)であり、
    前記ラクトバチルス・プランタラムが、ラクトバチルス・プランタラム 22A-1(FERM P-21409)、ラクトバチルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)、及びラクトバチルス・プランタラム 22B-2(FERM P-21410)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするセリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進剤。
  3. 皮膚老化の改善又は治療用途(ただし、抗酸化作用に基づく抗皮膚老化用途を除く)に用いられるヒアルロン酸合成酵素3mRNA発現促進剤であって、
    カンゾウ抽出発酵物を含有し、
    前記カンゾウ抽出発酵物が、カンゾウ抽出物の微生物による発酵物であって、
    前記カンゾウが、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)であり、
    前記カンゾウ抽出物が、水抽出物であり、
    前記微生物が、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)であり、
    前記ラクトバチルス・プランタラムが、ラクトバチルス・プランタラム 22A-1(FERM P-21409)、ラクトバチルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)、及びラクトバチルス・プランタラム 22B-2(FERM P-21410)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするヒアルロン酸合成酵素3mRNA発現促進剤。
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