JP7220098B2 - スポンジチタンの製造方法 - Google Patents
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Description
金属製還元反応容器内に四塩化チタンを供給し、前記金属製還元反応容器内で四塩化チタンを還元する還元工程を含み、スポンジチタンを製造する方法であって、前記還元工程で、金属製還元反応容器の内部空間からサンプルガスを採取し、前記サンプルガスに対し、(1)前記サンプルガスと水との接触により得られる水溶液の分析、及び、(2)前記サンプルガスに含まれる粉体の成分分析のうちの一以上を行うというものである。
そして、前記(1)水溶液の分析で該水溶液のpHが4以下である場合、及び/又は、前記(2)粉体の成分分析で粉体中にTiClx(x≦4)が検出された場合、(A)金属製還元反応容器内への四塩化チタンの供給速度の低下、及び、(B)金属製還元反応容器内への金属マグネシウムの供給のうちの一以上の措置を講ずることが好ましい。
また、前記(2)粉体の成分分析で粉体中にTiClx(x≦4)が検出されない場合、金属製還元反応容器内への四塩化チタンの供給速度を維持し、金属製還元反応容器内へ金属マグネシウムを供給しないこととすることができる。
上記の前記液体へ溶出する成分はTiClx(x≦4)を含むことが好ましい。
この発明の一の実施形態に係るスポンジチタンの製造方法は、金属製還元反応容器内に四塩化チタンを供給し、金属製還元反応容器内で四塩化チタンを還元する還元工程を含むものである。
還元工程で用いる四塩化チタン(TiCl4)は、たとえば、精留塔にて精製された後の液体状の四塩化チタン(「精製四塩化チタン」ともいう。)とすることができる。この精製四塩化チタンは、たとえば、チタン鉱石等の原料鉱石を還元して生成される粗四塩化チタンを、精留塔で精製して得られるものである。具体的には、原料鉱石をコークスによって高温で還元し、原料鉱石中の酸化チタンを塩素と反応させて、粗四塩化チタンとする。粗四塩化チタンは、揮発性の他の塩化物等を不純物として含むものであるので、精留塔内で連続蒸留により精製する。それにより、かかる不純物のほとんどが低減された高純度の精製四塩化チタンが得られる。
但し、後述の還元工程で使用可能なものであれば、四塩化チタンは上記の精製四塩化チタンには限らない。
還元工程で四塩化チタンの還元に用いる金属製還元反応容器は、これまでに同様の還元で用いられている公知のものとすることができる。
たとえば、図1に模式的に示す金属製還元反応容器1は、内部に溶融金属マグネシウム等の還元材を貯留させる容器本体2と、容器本体2の上方側開口部に取り付けられる蓋部材3と、上方側から浴面Sbに向けて四塩化チタンを供給できるように、蓋部材3に設けられた原料供給管4と、四塩化チタンの還元反応により生成される塩化マグネシウム等を排出する副生物排出管5とを備える。
金属製還元反応容器1は通常、図示は省略するが、その周囲に加熱機構や冷却機構等が設けられており、それにより内部が適切な温度に調整される。容器本体2は、ステンレス鋼もしくはステンレス鋼と低炭素鋼とを貼り合わせたクラッド鋼等からなるものとすることが一般的である。
還元工程では、金属製還元反応容器1内に、原料供給管4から上記の四塩化チタンを供給し、ここで四塩化チタンを還元することにより、スポンジチタン塊TSが得られる。
還元工程の一例について説明すると、はじめに、内部を所定の高温に維持した金属製還元反応容器1内に、液体状の溶融金属マグネシウムを貯留させる。そして、この溶融金属マグネシウムより上方側から、その浴面Sb上に、四塩化チタンを滴下すること等により供給する。
TiCl4(気、液)+Mg(液)→Ti(固)+MgCl2(液) (a)
TiCl4(気)+Mg(気)→Ti(固)+MgCl2(液) (b)
具体的には、金属製還元反応容器1内への四塩化チタンの供給速度を反応中の浴面Sbが存在する位置での反応容器断面積で除した値を、序盤から中盤にかけて2.2~6.7kg/(min・m2)の範囲内とすることが好ましい。より具体的には、反応序盤では3.7~6.7kg/(min・m2)とすることが好ましく、さらに4.1~5.6kg/(min・m2)とすることが好ましく、反応中盤では2.2~4.5kg/(min・m2)とすることが好ましく、さらに2.6~4.1kg/(min・m2)とすることが好ましい。
ここで反応序盤とは、四塩化チタンの累計供給量(質量基準)において、総供給予定量の60~70%までにおける任意のタイミングを指し、反応中盤とは、前記序盤の後、本発明の手法によって反応形態の変化が検出されるまでのタイミングを指す。
このときの主反応は、下記式(c)及び(d)と推測され、二塩化チタン等の、四塩化チタンよりも低級の塩化チタンが生成されると考えられる。
TiCl4(気)+Ti(固)→2TiCl2(液、MgCl2に溶解) (c)
TiCl2(液)+Mg(液)→Ti(固)+MgCl2(液) (d)
但し、この発明は、このような反応形態に限定されるものではない。
なおここで、サンプルガスGsに接触させる水としては、水道水、工業用水、蒸留水、精製水、イオン交換水、純水、超純水等を挙げることができるが、水道水もしくは工業用水で十分である。事前に使用する水のpHを確認しておけば水溶液の酸性化を容易に把握できる。なお、サンプルガスGsを水に接触させた後に濾過を行い、その濾液のpHを測定してよい。
還元工程の終盤では、先に述べたように、金属製還元反応容器1の内部空間Siで浮遊する塩化マグネシウムの液滴に、低級塩化チタンが溶解している可能性がある。当該液滴等とともに採取されるサンプルガスGsに含まれる粉体中に、低級塩化チタンが存在する場合、金属製還元反応容器1で上記の式(c)及び(d)の反応が起こっていると考えることができる。なお、低級塩化チタンとは、四塩化チタンよりも低級の塩化チタンを意味し、TiClX(X≦3)で表されるものである。低級塩化チタンとしては、たとえば、二塩化チタン、三塩化チタン等を挙げることができる。
また、還元工程の終盤では、浴面Sb付近の金属マグネシウムの減少により、内部空間Si中の金属マグネシウムの蒸気もほぼ存在しなくなる。これにより、気体の四塩化チタンが、内部空間Siで金属マグネシウムと反応せずに、サンプルガスGsに含まれることになる。なお、還元工程の序盤及び中盤では、内部空間Si中には金属マグネシウムの蒸気が十分に存在し、気体の四塩化チタンは、内部空間Siで当該金属マグネシウムと反応するので、サンプルガスGsにほぼ含まれない。
したがって、(2)粉体の成分分析では、サンプルガスGs中の粉体に、低級塩化チタン及び四塩化チタンを含むTiClx(x≦4)が検出されるか否かを確認すれば、還元工程の終盤かどうかを判断することができる。
粉体に接触させる液体としては、金属チタンが溶出せず且つTiClx(x≦4)が溶出するTiClx(x≦4)溶出液とすることが好ましい。金属製還元反応容器1の内部空間Siでは、金属チタンの微粉が還元工程の序盤から終盤のいずれでも存在しうると推測される一方、TiClx(x≦4)は還元工程の終盤でのみ存在しうると推測される。よって、金属チタンが溶出すると、塩化チタンの存在の有無について確認することが困難になるおそれがある。TiClx(x≦4)溶出液は、たとえば、水、又は、希硝酸、希塩酸、希硫酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも一種の水溶液とすることができる。塩化チタンと金属チタンは個別に入手可能であるため、使用する酸の種類と濃度を適宜調整して「金属チタンが溶出せず且つTiClx(x≦4)が溶出するTiClx(x≦4)溶出液」を作製可能である。液体へ溶出する成分の分析には、公知の分析手法を用いることができるが、たとえば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)等を挙げることができる。
但し、粉体の成分分析ないし塩化チタンの存在確認が可能であれば、(2)粉体の成分分析は、上述したような分析手法に限定されない。
この措置として、(A)金属製還元反応容器1内への四塩化チタンの供給速度の低下、及び、(B)金属製還元反応容器1内への金属マグネシウムの供給のうちの少なくとも一つを行うことができる。
金属製還元反応容器1の内部空間Siから採取したサンプルガスGsは、図2に例示するようなガスサンプリング装置7に送ることができる。
図示のガスサンプリング装置7は、先述のガス採取管6が接続されるタンク状等の液体接触部8と、液体接触部8の上方側から水を噴出させるノズル部9と、ノズル部9から噴出されて液体接触部8に溜まった液体を、ノズル部9に循環させる液体循環パイプ10と、残りのガスを排出させるガス排出管11とを有するものである。
図1に示すような金属製還元反応容器内で、溶融金属マグネシウムを貯留させ、そこに四塩化チタンを滴下して供給する還元工程を行い、スポンジチタン塊を得た。四塩化チタンの総滴下量32000kgを100%とすると、質量基準にて滴下開始~30%滴下までは四塩化チタンを平均4.2kg/(min・m2)の速度で供給した。次いで、30~68%では供給速度を一段低下させ、四塩化チタンを平均3.9kg/(min・m2)で供給した。その後、68~80%では平均3.1kg/(min・m2)、80~86%では平均2.4kg/(min・m2)、86~93%では平均1.9kg/(min・m2)、93~96%では平均1.7kg/(min・m2)、96~100%では平均1.3kg/(min・m2)の供給速度で四塩化チタンを滴下し、最終的に32000kgの四塩化チタンを滴下した。
(2)粉体の成分分析では、回収した粉体2gを、3質量%の希硝酸水溶液100mlに混合して溶解させ、濾過後、濾液を純水で250mlに希釈し、ICP-OESによりTiイオン濃度を測定した。Tiイオン濃度が0.1g/L以上になった場合は、TiClx(x≦4)が検出されたと判定する。(1)水溶液の分析(pH測定)では、水溶液のpHをpH試験紙で測定した。
これらの結果より、四塩化チタン滴下量96%以降では、金属マグネシウムによる四塩化チタンの還元反応の低下により、TiClx(x≦4)が含まれることが解かった。したがって、四塩化チタン滴下量96%では、四塩化チタンの供給速度を上昇させることは困難であるが、四塩化チタン滴下量93%以前では、四塩化チタンの供給速度を上昇させ得ることが示唆された。
試験例1の結果を受けて、四塩化チタン滴下量80~86%での四塩化チタン滴下速度を平均3.1kg/(min・m2)に、また86~93%での四塩化チタン滴下速度を平均2.4kg/(min・m2)に向上させたこと以外は、試験例1と同様の手順で反応を行った。すなわち、四塩化チタン滴下量93%以降での四塩化チタン滴下速度は変更していない。
その結果、特に不具合が生じることなく、試験例1と同等の量のスポンジチタン塊を、試験例1よりも短時間で製造することができた。また、採取したサンプルガスの分析結果も試験例1と同様の結果となった。
四塩化チタン滴下量96%時点まで試験例1と同様の条件で還元反応を行い、四塩化チタン滴下量96%時点で、上述した(1)水溶液の分析(pH測定)結果がpH4以下かつ(2)粉体の成分分析の結果が0.1g/L以上であることを確認した後、溶融金属マグネシウムを供給した。その後、四塩化チタンの供給速度を上昇させ四塩化チタン滴下量96~100%の区間での滴下速度を平均2.4kg/(min・m2)とした。
その結果、試験例1と同等の量のスポンジチタン塊を試験例1よりも短時間で製造することができた。
2 容器本体
3 蓋部材
4 原料供給管
5 副生物排出管
6 ガス採取管(圧抜き配管)
6a 粉体捕集部
7 ガスサンプリング装置
8 液体接触部
9 ノズル部
10 液体循環パイプ
11 ガス排出管
12 ガス供給管
Sb 浴面
Si 内部空間
TS スポンジチタン塊
Gs サンプルガス
Gi 不活性ガス
Claims (7)
- 金属製還元反応容器内に四塩化チタンを供給し、前記金属製還元反応容器内で四塩化チタンを還元する還元工程を含み、スポンジチタンを製造する方法であって、
前記還元工程で、金属製還元反応容器の内部空間からサンプルガスを採取し、前記サンプルガスに対し、
(1)前記サンプルガスと水との接触により得られる水溶液の分析、及び、
(2)前記サンプルガスに含まれる粉体の成分分析
のうちの一以上を行う、スポンジチタンの製造方法。 - 前記(1)水溶液の分析で、該水溶液のpHを測定する、請求項1に記載のスポンジチタンの製造方法。
- 前記(1)水溶液の分析で該水溶液のpHが4以下である場合、及び/又は、前記(2)粉体の成分分析で粉体中にTiClx(x≦4)が検出された場合、
(A)金属製還元反応容器内への四塩化チタンの供給速度の低下、及び、
(B)金属製還元反応容器内への金属マグネシウムの供給
のうちの一以上の措置を講ずる、請求項2に記載のスポンジチタンの製造方法。 - 前記(1)水溶液の分析で該水溶液のpHが4より大きい場合、金属製還元反応容器内への四塩化チタンの供給速度を維持し、金属製還元反応容器内へ金属マグネシウムを供給しない、請求項2に記載のスポンジチタンの製造方法。
- 前記(2)粉体の成分分析で粉体中にTiClx(x≦4)が検出されない場合、金属製還元反応容器内への四塩化チタンの供給速度を維持し、金属製還元反応容器内へ金属マグネシウムを供給しない、請求項1に記載のスポンジチタンの製造方法。
- 前記(2)粉体の成分分析で、前記サンプルガス中の粉体を乾式で捕集し、前記粉体を液体と接触させ、前記粉体から当該液体へ溶出する成分を分析する、請求項1~5のいずれかに記載のスポンジチタンの製造方法。
- 前記液体へ溶出する成分がTiClx(x≦4)を含む、請求項6に記載のスポンジチタンの製造方法。
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