JP7219916B2 - リグノフェノールの製造方法 - Google Patents
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Description
まず、リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および酸を混合することにより、リグニンを酸触媒の下でフェノール誘導体と反応させてリグノフェノールを生成し、該リグノフェノールを含有する酸混合物を得る。
次に、前記リグノフェノールに対して貧溶媒となる有機溶媒に、前記酸混合物を加えることにより、前記リグノフェノールの凝集物を含む有機溶媒混合物を得る。
そして、前記有機溶媒混合物から前記リグノフェノールを取り出す(精製工程)。
まず、前記有機溶媒混合物をろ過することにより前記リグノフェノールの凝集物を含む固形分と、液体(水、酸等を含む液体)とに分離する。
次に、前記固形分と有機溶媒(アルコール等)とを混合することにより、リグノフェノールを有機溶媒に溶解させて、リグノフェノールを含有するリグノフェノール溶液を得る。
そして、前記リグノフェノール溶液を濾過することにより、前記リグノフェノール溶液から固形分(残渣物)を取り除く。
次に、前記固形分を取り除いたリグノフェノール溶液と、水とを混合することにより混合液を調製し、該混合液中においてリグノフェノールを析出させる(析出工程)。
また、前記析出工程では、前記水に塩化ナトリウムを含ませることで、塩化ナトリウムによる塩析効果により、リグノフェノールを析出させやすくしている。
前記リグノセルロース系材料から得られたリグノフェノールが有機溶媒に溶解されたリグノフェノール溶液を調製する溶液調製工程と、
前記リグノフェノール溶液と、粒子状のリグノフェノールを含む水とを混合して混合液を調製することにより、該混合液中に前記リグノフェノールを析出させる析出工程と、
を有する。
前記リグノセルロース系材料から得られたリグノフェノールが有機溶媒に溶解されたリグノフェノール溶液を調製する溶液調製工程と、
前記リグノフェノール溶液と水とを混合して、混合水を得、該混合水と、粒子状のリグノフェノールとを混合して混合液を調製することにより、該混合液中に前記リグノフェノールを析出させる析出工程と、
を有する。
精製工程は、濾過工程で濾取されたリグノフェノールの凝集物(以下、「粗LP」ともいう。)に水を加えることにより、前記リグノフェノールの凝集物を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程で純度が向上されたリグノフェノール(以下、「洗浄済LP」ともいう。)を有機溶媒に溶解させてリグノフェノール溶液を調製する溶液調製工程と、前記リグノフェノール溶液と、粒子状のリグノフェノールを含む水とを混合して混合液を調製することにより、該混合液中に前記リグノフェノールを析出させる析出工程と、を備える。
本実施形態のリグノフェノールの製造方法では、前記析出工程で得られる精製されたリグノフェノール(以下「精製LP」ともいう。)が製品とされる。
また、本明細書において、洗浄とは、リグノフェノールの凝集物に含まれる不純物を洗浄液中に移動させ、該洗浄液に移動させた不純物がリグノフェノールの凝集物に再度移動しないように除去することを意味する。
また、本明細書において、捕捉としては、例えば、リグノフェノールの凝集物の流路を確保しながら、リグノフェノールの凝集物を捕捉する態様が挙げられる。
前記リグノセルロース系材料としては、例えば、木質材料、草木材料が挙げられる。木質材料としては、例えば、針葉樹(マツ、スギ、ヒノキなど)、広葉樹(シイ、柿、サクラなど)、熱帯樹などが挙げられる。草木材料としては、ケナフ、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ワラ(稲わら、麦わらなど)、バガス、とうもろこしなどが挙げられる。リグノセルロース系材料は、粉状、チップ状(廃木材の端剤など)のような種々の状態で使用される。
前記溶媒としては、例えば、エーテル、エステル、炭化水素などが挙げられる。エーテルとしては、非対称エーテル、対称エーテルなどが挙げられ、より具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルなどが挙げられる。エステルとしては、酢酸エチルなどが挙げられる。炭化水素としては、環状炭化水素、直鎖状炭化水素が挙げられ、より具体的には、ヘキサン(n-ヘキサンなど)、トルエン、ペンタン(n-ペンタンなど)、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリン、ベンゼンなどが挙げられる。
前記溶媒としては、炭化水素が好ましく、n-ヘキサンがより好ましい。
前記担体としては、例えば、粒状の担体、繊維状の担体、板状の担体などを用いることができる。
本実施形態に係るリグノフェノールの製造装置は、リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および酸を混合することにより第1混合物を得て、該第1混合物、およびリグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒を混合することにより、リグノフェノールを凝集させて、リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得る混合部と、該2混合物からリグノフェノールを取り出す、精製部とを備える。
また、精製部は、第2混合物を濾過することにより、リグノフェノールの凝集物を濾取し、濾取されたリグノフェノールの凝集物を洗浄液によって洗浄し、洗浄されたリグノフェノールの凝集物からリグノフェノールを取り出す精製部である。
なお、精製部は、前記濾取する前に、第2混合物中のリグノフェノールの凝集物を担体に付着させることにより、第2混合物からリグノフェノールの凝集物を捕捉する精製部であってもよい。この場合、濾取されたリグノフェノールの凝集物と、担体に捕捉されたリグノフェノールの凝集物とを洗浄液で洗浄し、洗浄されたリグノフェノールの凝集物からリグノフェノールを取り出す。
本実施形態の洗浄液としては、水が用いられる。
以下では、捕捉および濾過の両方を含む概念として、固液分離という用語を使用する場合がある。
以下では、精製部4で行われる各工程を総称して前記精製工程という。
これにより、リグノセルロース系材料Aに含まれる脂をアセトンBによってリグノセルロース系材料Aから取り除くことができる。
また、前記第1混合工程では、第1濾過工程a2後に、加熱部23で槽21内を加熱することにより、リグノセルロース系材料Aに付着しているアセトンBを揮発させて、リグノセルロース系材料Aから余分なアセトンBを取り除くことができる。
また、前記第1混合工程では、第2濾過工程a4の後に、加熱部23で槽21内を加熱することにより、リグノセルロース系材料Aに付着しているフェノール誘導体Cを揮発させて、リグノセルロース系材料Aから余分なフェノール誘導体Cを取り除くことができる。
余分なフェノール誘導体Cが取り除かれたリグノセルロース系材料Aは、混合部3に移送されてさらなる処理が施される。
生成工程a5では、リグノセルロース系材料Aに含有されるセルロースが酸触媒の下で加水分解されて、糖類が生成される。また、リグノセルロース系材料Aに含有されるリグニンが、酸触媒の下で加水分解されて低分子化する。さらに、リグニンが、酸触媒の下でフェノール誘導体と反応してリグノフェノールが生成される。図3に、酸として硫酸を用い、フェノール誘導体Cとしてp-クレゾールを用いて、リグノフェノールを生成する反応の例を示す。また、生成されたリグノフェノールは、酸触媒の下で加水分解されて低分子化する。以上により、リグノフェノールを含有する第1混合物が得られる。
これにより、リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物が得られる(第2混合工程b)。
濾過手段4a4としては、槽4a1の底部4a1aの少なくとも一部が、槽4a1内の収容物を濾過できるように濾材で形成されたものを用いてもよい。槽4a1の底部4a1aの少なくとも一部が濾材で形成されたものとしては、例えば、神鋼環境ソリューション社製の「フィルタードライヤー」などを用いることができる。
また、本実施形態では、図2に示すように、槽4a1の頂部4a1bに、洗浄手段4a5としてのシャワーノズルが配されている。シャワーノズルは、噴射面が濾過面と向かい合うように配されることが好ましい。シャワーノズルには、図示しないポンプで加圧された洗浄液が供給され、この洗浄液がシャワーノズルから噴射されることによって、洗浄が行われる。
また、この場合、図2に示すように、アルミナボールが、槽4a1の底部4a1aに敷き詰めるように配されることによって、捕捉手段4a3とされている。アルミナボールとしては、比較的小さな粗LPの流路を確保できる大きさのものが配されている。
また、この場合、図2に示すように、槽4a1の底部4a1aと捕捉手段4a3との間にアルミナボールの隙間よりも目の細かな濾材が配されることによって、濾過手段4a4とされている。
この場合、前記精製工程では、固液分離部4aの捕捉手段4a3によって、第2混合物中の粗LPを捕捉し、捕捉手段4a3で捕捉され得なかった粗LPを濾過手段4a4で濾取することによって、リグノフェノールの凝集物を取り出す(固液分離工程c1)。
該濾材の孔径は、リグノフェノールの凝集物を通さず、かつ濾過時間を短縮するという観点から、10~30μmであることが好ましく、20μmであることが特に好ましい。
より具体的には、洗浄液Gとして水を用いて粗LPを洗浄し、洗浄済LPを得る。
洗浄液Gとして用いる水の量は、リグノセルロース系材料Aの1kgに対して、1.0kg~10kgであることが好ましい。
水を用いて粗LPを洗浄することにより、精製されたリグノフェノールにおける残留酸濃度を低減させることができる。
なお、リグノフェノールがアルコールに溶解するのは、リグノフェノールが水酸基を有することにより、リグノフェノールがアルコールにある程度の親和性を有するからである。
本実施形態では、前記溶解工程c3で用いる有機溶媒としてアルコールを用いたが、前記溶解工程c3で用いる有機溶媒としては、アルコール以外に、例えば、アルキルケトン類(例えば、アセトン等)等が挙げられる。
次に、LPアルコール液を濾過することにより、LPアルコール液から固形物(残渣物)を取り除く(第3濾過工程c4)。
析出工程c7の前にpH調整工程c5を実施することにより、析出工程c7でのリグノフェノールの収率を向上させることができる。
pH調整工程c5によってリグノフェノールの収率が向上するのは、リグノフェノールが酸によって分解されるのを抑制できるからである。また、後述する析出工程c7の混合液のpHを高めることができ、その結果、リグノフェノールが有する水酸基が前記混合液内で解離し難くなり、リグノフェノールが析出しやすくなる。
粗LPの外表面に付着している酸については、洗浄工程c2によって除去され得るものの洗浄工程c2後の洗浄済LPの内部には酸が残留しているため、LPアルコール液のpHは、通常、1以上2未満となっている。
pH調整工程c5では、この酸を中和させてpHを2以上4以下とすることが好ましい。
アルカリ剤Iとしては、アンモニア水溶液を用いることが好ましい。
前記アンモニア水溶液のアンモニア濃度は、好ましくは1.0~28質量%、より好ましくは10~25質量%である。
LPアルコール液と、アンモニア水溶液とは、撹拌混合で混合することが好ましい。
ここで、本実施形態においては、洗浄工程c2でリグノフェノールの凝集物を洗浄液Gで洗浄するので、リグノフェノールの凝集物に残留する酸の量を少なくすることができる。そのため、pH調整工程c5で使用するアルカリ剤Iの量を少なくすることができる。
LPアルコール液へのアルカリ剤Iの添加は、要すれば、濃縮工程の後でもよい。
LPアルコール液へのアルカリ剤Iの添加を濃縮工程の前に実施する場合、アルカリ剤Iと酸との反応熱を濃縮のための熱エネルギーに活用できるという利点を有する。
リグノフェノールは、疎水性を有する構造部分(ベンゼン環等炭化水素で構成されている部分等)を有するので、水は、リグノフェノール(溶質)に対して貧溶媒となる。よって、LPアルコール液と、水とを混合することにより、リグノフェノールの溶解度を低下させ、混合液中においてリグノフェノールを過飽和にして、混合液中にリグノフェノールを析出させることができる。
そして、前記混合液中に粒子状のリグノフェノールが含まれていることで、粒子状のリグノフェノールを核にして、析出したリグノフェノールを凝集させることができ、その結果、粒径が大きいリグノフェノールを得ることができる。リグノフェノールは、粒径が大きいことにより、溶媒と分離させやすくなる。その結果、純度の高いリグノフェノールを効率良く得ることができる。
特に、後述の第4濾過工程c8において、リグノフェノールの粒径が大きいことにより、固液分離により、純度の高いリグノフェノールを効率良く得ることができる。
LPアルコール液に含まれる不純物たる酸は、リグノフェノールよりも比重が高い。
よって、粒子状のリグノフェノールを含む水を収容する槽に、LPアルコール液を流下させると、リグノフェノールは槽の上方で析出し凝集する一方で、酸は槽の下方に移動する。そして、リグノフェノールの周りに酸が存在する可能性がより一層低くなり、その結果、析出したリグノフェノールに酸がより一層取り込まれ難くなる。
すなわち、純度の高いリグノフェノールをより一層効率良く得ることができるという利点がある。
さらに、前記精製工程では、第2濾過部4eで得られたリグノフェノールを乾燥部4fで乾燥させることにより、粉末状のリグノフェノールK(精製されたリグノフェノールK)を得る(乾燥工程c9)。
すなわち、前記析出工程c7では、粒子状のリグノフェノールを含む水として、析出工程c7で得られた混合液の一部を用いてよく、第4濾過工程c8で得られた固形状のリグノフェノールの一部と水との混合水を用いてもよく、乾燥工程c9で得られた粉末状のリグノフェノールの一部と水との混合水を用いてもよい。
前記粒子状のリグノフェノールとしては、粉末状のリグノフェノールや、液体に浮遊した状態の粒子状のリグノフェノール等を用いることができる。
液体に浮遊した状態の粒子状のリグノフェノールを用いることにより、粒子状のリグノフェノールを前記液体に分散させた状態で、粒子状のリグノフェノールと、前記混合水とを混合できるので、粒子状のリグノフェノールを前記混合水に分散させやすくなり、その結果、溶解しているリグノフェノールを析出させやすくなる。
前記粒子状のリグノフェノールを分散させる液体としては、水などが挙げられる。
また、粉末状のリグノフェノールを用いることにより、混合液の水の量を抑制でき、その結果、溶解しているリグノフェノールが析出しやすくなるとともに、粉末状のリグノフェノールを混合水と混合させる前に有機溶媒を十分に希釈でき、粉末状のリグノフェノールが有機溶媒によって溶解するのを抑制することができる。
4a:固液分離部、4a1:槽、4a1a:底部、4a2:撹拌部、4b:pH調整部、4b1:槽、4b2:撹拌部、4c:濃縮部、4c1:槽、4c2:撹拌部、4c3:加熱部、4d:析出部、4d1:槽、4d2:撹拌部、4e:第2濾過部、4f:乾燥部、
21:槽、21a:底部、22:撹拌部、23:加熱部、31:槽、32:撹拌部、
A:リグノセルロース系材料、B:アセトン、C:フェノール誘導体、D:酸水溶液、E:水、F:溶媒、G:洗浄液、H:アルコール、I:アルカリ剤、J:水、K:リグノフェノール、
a1:脱脂工程、a2:第1濾過工程、a3:収着工程、a4:第2濾過工程、a5:生成工程、a6:希釈工程、b:第2混合工程、c1:固液分離工程、c2:洗浄工程、c3:溶解工程、c4:第3濾過工程、c5:pH調整工程、c6:濃縮工程、c7:析出工程、c8:第4濾過工程、c9:乾燥工程
Claims (5)
- リグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する、リグノフェノールの製造方法であって、
前記リグノセルロース系材料から得られたリグノフェノールが有機溶媒に溶解されたリグノフェノール溶液を調製する溶液調製工程と、
前記リグノフェノール溶液と、粒子状のリグノフェノールを含む水とを混合して混合液を調製することにより、該混合液中に前記リグノフェノールを析出させる析出工程と、
を有する、リグノフェノールの製造方法。 - 前記析出工程では、前記粒子状のリグノフェノールを含む水に、前記リグノフェノール溶液を加えることで前記混合液を調製する、請求項1に記載のリグノフェノールの製造方法。
- 前記析出工程では、前記粒子状のリグノフェノールを含む水を収容する槽に、前記リグノフェノール溶液を流下させることで前記混合液を調製する、請求項2に記載のリグノフェノールの製造方法。
- リグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する、リグノフェノールの製造方法であって、
前記リグノセルロース系材料から得られたリグノフェノールが有機溶媒に溶解されたリグノフェノール溶液を調製する溶液調製工程と、
前記リグノフェノール溶液と水とを混合して、溶解している前記リグノフェノールを含有する混合水を得、溶解している前記リグノフェノールを含有する前記混合水と、粒子状のリグノフェノールとを混合して混合液を調製することにより、溶解している前記リグノフェノールを前記混合液中に析出させる析出工程と、を有する、リグノフェノールの製造方法。 - 前記粒子状のリグノフェノールとして、前記析出工程で析出されたリグノフェノールを用いる、請求項1~4の何れか1項に記載のリグノフェノールの製造方法。
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