JP2018024601A - リグノフェノールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 リグノフェノールを含有する混合物からリグノフェノールを分離する時間をより短縮することができる、リグノフェノールの製造方法を提供する。【解決手段】 本発明に係るリグノフェノールの製造方法は、リグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する、リグノフェノールの製造方法であって、前記リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および、酸を混合することにより第1混合物を得る第1混合工程と、前記第1混合物、および、リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒を混合することにより、リグノフェノールを凝集させて、リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得る第2混合工程と、前記第2混合物中の前記リグノフェノールの凝集物を担体に付着させることにより、前記第2混合物から前記リグノフェノールの凝集物を捕捉するリグノフェノール捕捉工程と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、リグノフェノールの製造方法に関する。
従来、リグニンおよびセルロースを含有するリグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する方法としては以下の方法が採用されている。
すなわち、まず、リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および酸を混合することにより、リグニンを酸触媒の下でフェノール誘導体と反応させてリグノフェノールを生成し、該リグノフェノールを含有する混合物を得る(混合工程)。
そして、前記混合物を静置することにより油層(フェノール誘導体、リグノフェノール等を含む層)と水層(水、酸、糖類等を含む層)とに分離する(静置分離工程)。
次に、前記油層からリグノフェノールを取り出す。
しかしながら、従来の方法では、前記静置分離工程において、前記混合物を油層と水層とに十分に分離させるのに長時間を要するという問題があった。
斯かる問題から、前記静置分離工程に要する時間を短縮するために、n−ヘキサンを用いる方法が提案されている。具体的には、前記混合物たる第1混合物、およびn−ヘキサンを混合することにより第2混合物を得て、該第2混合物を静置させることにより、油層(フェノール誘導体、リグノフェノール、n−ヘキサン等を含む層)と水層(水、酸、糖類等を含む層)とに分離する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2013−208108号公報
特許文献1に記載の方法によれば、n−ヘキサンにより前記第2混合物を前記油層と前記水層とに静置分離させ易くすることができる。その結果、前記静置分離工程に要する時間を短縮することができる。すなわち、特許文献1に記載の方法によれば、リグノフェノールの製造に要する時間を短縮することができる。
しかしながら、静置分離工程によって、リグノフェノールを含有する混合物からリグノフェノールを分離する以上、該混合物を油層と水層とに十分に分離させるための時間、すなわち、静置時間がかかることは避けられない。そのため、静置時間を回避して、より効率的にリグノフェノールを分離することができる分離工程が望まれている。すなわち、リグノフェノールを分離する時間をより短縮することにより、製造時間をさらに短縮することができるリグノフェノールの製造方法が望まれている。
このような事情に鑑み、本発明は、リグノフェノールを含有する混合物からリグノフェノールを分離する時間をより短縮することができる、リグノフェノールの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者が鋭意検討したところ、以下のことを見出し、本発明を想到するに至った。
すなわち、水と、リグノフェノールと、該リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒(例えば、n−ヘキサン)とを含有する混合物中においては、前記リグノフェノールは、粘着性を有する凝集物となる。そのため、該混合物を静置分離により水層と油層とに十分に分離させなくても、前記リグノフェノールの凝集物を担体に付着させて、該担体で前記リグノフェノールの凝集物を捕捉することにより、前記混合物に含まれる液分と、前記リグノフェノールの凝集物とを分離することができることを本発明者は見出した。
すなわち、本発明に係るリグノフェノールの製造方法は、リグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する、リグノフェノールの製造方法であって、
前記リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および、酸を混合することにより第1混合物を得る第1混合工程と、
前記第1混合物、および、前記リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒を混合することにより、前記リグノフェノールを凝集させて、前記リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得る第2混合工程と、
前記第2混合物中のリグノフェノールの凝集物を担体に付着させることにより、前記第2混合物から前記リグノフェノールの凝集物を捕捉するリグノフェノール捕捉工程と、を備える。
斯かる構成によれば、前記リグノフェノールの凝集物を担体に付着させることにより、前記第2混合物に含まれる液分と、前記リグノフェノールの凝集物とを分離することができる。
これにより、前記第2混合物を静置により水層と油層とに十分に分離させる必要がなくなるため、前記第2混合物から前記リグノフェノールの凝集物を分離する時間を短縮することができる。その結果、リグノフェノールの製造に要する時間を短縮することができる。
また、リグノフェノールと酸との接触時間を短くすることができるため、リグノフェノールの加水分解を抑制することができる。その結果、分子量の大きなリグノフェノールを得ることができる。またリグノフェノールと酸との接触時間を調整して、所望の分子量のリグノフェノールを得ることもできる。
さらに、従来の方法では、前記第2混合物を静置分離で分離するため、静置分離に要する時間が長く、また、静置分離に要する時間にバラツキが生じる。そうすると、リグノフェノールと酸との接触時間にバラツキが生じ易くなり、その結果、バッチ間で分子量が大きく異なるリグノフェノールが得られ易い。しかしながら、上記構成によれば、リグノフェノールと酸との接触時間を短くすることができるため、バッチ間でのリグノフェノールの分子量のバラツキを抑制することができる。
また、上記リグノフェノールの製造方法においては、
前記リグノフェノール捕捉工程によって得られた液体を濾過する濾過工程を備えてもよい。
斯かる構成によれば、粘着性を有するリグノフェノールの凝集物の少なくとも一部を担体によって捕捉することができるので、濾過工程において、濾過面に堆積されるリグノフェノール量を低減させることができる。これにより、粘着性を有するリグノフェノールの凝集物によって、濾過面が閉塞される影響を緩和することができるため、濾過効率の低下を抑制することができる。
また、上記リグノフェノールの製造方法においては、
前記リグノフェノール捕捉工程と前記濾過工程とを一つの槽で行ってもよい。
斯かる構成によれば、前記リグノフェノール捕捉工程と前記濾過工程とを一度に行うことができる。
これにより、リグノフェノールの収率を向上させることができることに加えて、前記リグノフェノール捕捉工程と前記濾過工程とを効率良く行うことができる。
また、リグノフェノールの製造に要する設備点数を減らすことができる。
以上のように、本発明によれば、リグノフェノールを含有する混合物からリグノフェノールを分離する時間をより短縮することができる、リグノフェノールの製造方法が提供される。
本実施形態に係るリグノフェノールの製造装置の概略図、および本実施形態に係るリグノフェノールの製造方法のフロー図。 本実施形態に係るリグノフェノールの製造装置の概略図。 リグノフェノールの生成反応の例を示す図。 他の実施形態に係るリグノフェノールの製造装置の概略図、および他の実施形態に係るリグノフェノールの製造方法のフロー図。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るリグノフェノールの製造方法は、リグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する方法である。
より詳しくは、本実施形態に係るリグノフェノールの製造方法は、前記リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および、酸を混合することにより第1混合物を得る第1混合工程と、前記第1混合物、および、リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒を混合することにより、リグノフェノールを凝集させて、リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得る第2混合工程と、前記第2混合物中の前記リグノフェノールの凝集物を担体に付着させることにより、前記第2混合物から前記リグノフェノールの凝集物を捕捉するリグノフェノール捕捉工程と、を備える。
また、上記リグノフェノールの製造方法においては、前記リグノフェノール捕捉工程によって得られた液体を濾過する濾過工程を備えてもよい。
また、上記リグノフェノールの製造方法においては、前記リグノフェノール捕捉工程と前記濾過工程とを一つの槽で行ってもよい。
なお、本明細書において、捕捉としては、例えば、リグノフェノールの凝集物の流路を確保しながら、リグノフェノールの凝集物を捕捉する態様が挙げられる。
前記リグノセルロース系材料は、リグニンおよびセルロースを含有する。
前記リグノセルロース系材料としては、例えば、木質材料、草木材料が挙げられる。木質材料としては、例えば、針葉樹(マツ、スギ、ヒノキなど)、広葉樹(シイ、柿、サクラなど)、熱帯樹などが挙げられる。草木材料としては、ケナフ、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ワラ(稲わら、麦わらなど)、バガス、とうもろこしなどが挙げられる。リグノセルロース系材料は、粉状、チップ状(廃木材の端剤など)のような種々の状態で使用される。
前記リグニンは、フェニルプロパン単位(C6−C3単位)を基本骨格として有し、該フェニルプロパン単位が酵素によりランダムに酸化重合された高分子化合物である。前記リグニンは、植物細胞壁を構成する成分であり、該植物細胞壁においてセルロースやヘミセルロースに結合している。
前記フェノール誘導体は、フェノール構造を分子中に有する化合物である。前記フェノール誘導体としては、フェノール、p(パラ)−クレゾール、m(メタ)−クレゾール、o(オルト)−クレゾール、アニソール、2,4−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、n(ノルマル)−プロピルフェノール、i(イソ)−プロピルフェノール、tert(ターシャリー)−ブチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ビスフェノール、バニリン、シリンゴール、クアイアゴール、フェルラ酸、およびクマル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。前記フェノール誘導体としては、クレゾールが好ましく、特に、p−クレゾールが好ましい。
前記酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。前記無機酸としては、硫酸、リン酸、塩酸などが挙げられる。前記有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などが挙げられる。
前記リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒は、添加によってリグノフェノールの溶解度を低下させる溶媒であり、通常、疎水性を有する。
前記溶媒としては、例えば、エーテル、エステル、炭化水素などが挙げられる。エーテルとしては、非対称エーテル、対称エーテルなどが挙げられ、より具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルなどが挙げられる。エステルとしては、酢酸エチルなどが挙げられる。炭化水素としては、環状炭化水素、直鎖状炭化水素が挙げられ、より具体的には、ヘキサン(n−ヘキサンなど)、トルエン、ペンタン(n−ペンタンなど)、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリン、ベンゼンなどが挙げられる。
前記溶媒としては、炭化水素が好ましく、n−ヘキサンがより好ましい。
前記担体としては、リグノフェノールの凝集物を付着させることができ、それにより、リグノフェノールの凝集物を捕捉することができるものであれば、どのようなものでも用いることができる。
前記担体としては、例えば、粒状の担体、繊維状の担体、板状の担体などを用いることができる。
前記粒状の担体としては、中実の担体および中空の担体を用いることができる。前記粒状の担体は、例えば、前記捕捉工程を行う槽の底部に、敷き詰めて配される。粒状の担体は、粒子径が1mm〜25mmであることが好ましい。
粒状の担体の粒子径が1mm〜25mmの場合、目開き1mmの篩と目開き25mmの篩とを用いて粒子径を調整することが好ましい。
前記中実の担体としては、プラスチック焼結体樹脂成形体、アルミナボール、シリカゲル、造粒炭、ゼオライトなどを用いることができる。中実の担体としては、前記槽の底部に敷き詰めて配されたときに、リグノフェノールの凝集物の流路を確保できる大きさのものを用いることができる。
中実の担体を用いる場合、該担体の外表面にリグノフェノールの凝集物が付着されることにより、リグノフェノールの凝集物が捕捉される。
中実の担体は、該担体とリグノフェノールの凝集物との接触時間を長くして、リグノフェノールの凝集物の捕捉量を増す観点から、所定の高さを有するように配されることが好ましい。例えば、積層して配されることが好ましい。
前記中空の担体としては、ラシヒリングなどを用いることができる。中空の担体は、該担体と接触する前のリグノフェノールの凝集物の流通方向(すなわち、重力方向)に対して、中空部が略平行となるように配されることが好ましい。中空の担体としては、中空部がリグノフェノールの凝集物の流路を確保できる大きさのものを用いることができる。中空の担体は、軸方向に直交する断面における中空部の最長径が4mm〜26mmであることが好ましい。
中空の担体を用いる場合、該担体の内表面(中空部側の表面)および外表面に、リグノフェノールの凝集物が付着されることにより、リグノフェノールの凝集物が捕捉される。
中空の担体は、該担体の内表面および外表面とリグノフェノールの凝集物との接触時間を長くして、リグノフェノールの凝集物の捕捉量を増す観点から、中空部が8mm〜26mmの長さを有するように延在していることが好ましい。
前記繊維状の担体としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、活性炭素繊維などを用いることができる。繊維状の担体は、バラバラの状態で用いられてもよいし、膜状に敷き詰めて用いられてもよい。
繊維状の担体を用いる場合、該担体の外表面にリグノフェノールの凝集物が付着されることにより、リグノフェノールの凝集物が捕捉される。
膜状に敷き詰められて用いられる場合には、リグノフェノールの凝集物の流路を確保できるように、メッシュ状に配されることが好ましい。メッシュ間隔は、0.1mm〜1.0mmであることが好ましい。
また、メッシュ状に配される場合には、担体とリグノフェノールの凝集物との接触時間を長くして、リグノフェノールの凝集物の捕捉量を増す観点から、担体を積層して配することが好ましい。このような担体としては、例えば、デミスタ(登録商標)が挙げられる。
前記板状の担体としては、パンチングシート、パンチングプレートなどを用いることができる。パンチングシート、パンチングプレートとしては、板体の厚さ方向に貫通する穿孔部であって、前記リグノフェノールの流路を確保できる大きさの穿孔部を有するものを用いることができる。該穿孔部は、最長径が0.05mm〜1.0mmであることが好ましい。パンチングシート、パンチングプレートは、該担体に接触する前のリグノフェノールの凝集物の流通方向(すなわち、重力方向)に対して、板面が略直交するように、積層して配されることが好ましく、穿孔部が積層方向において互いに重ならないように積層して配されることがより好ましい。
パンチングシート、パンチングプレートを用いる場合、板面にリグノフェノールの凝集物が付着されることにより、リグノフェノールの凝集物が捕捉される。
前記穿孔部の最長径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。具体的には、板体の厚さ方向と直交する任意の断面を走査型電子顕微鏡で撮像し、撮像した画像中における穿孔部の最長径を測定する。
また、前記板状の担体としては、板状の多孔質焼結体などを用いることができる。板状の多孔質焼結体は、原料粉末の表面付近のみを焼結(融着)させ、原料粉末間に存在している空隙を残したまま成形されるため、三次元網状に連通する気孔を有している。リグノフェノールの凝集物が該気孔内を流れることによって、リグノフェノールの凝集物が捕捉される。該気孔は、最長径が0.1mm〜0.2mmであることが好ましい。
板状の多孔質焼結体の気孔の最長径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。具体的には、板状の多孔質焼結体の厚さ方向と直交する任意の断面を走査型電子顕微鏡で撮像し、撮像した画像中における気孔の最長径を測定する。
また、板状の多孔質焼結体は、該焼結体とリグノフェノールの凝集物との接触時間を長くして、リグノフェノールの凝集物の捕捉量を増す観点から、1mm〜20mmの厚さを有することが好ましい。
上記担体を構成する材料は特に限定されないが、酸、アルカリ、有機溶剤に対する耐性を考慮した場合、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アルミナ、活性炭、シリカゲルを用いることが好ましい。PPを材料とする担体としては、プラスチック焼結体樹脂成形体が挙げられ、PTFEを材料とする担体としては、プラスチック焼結体樹脂成形体、ラシヒリング、パンチングシート、PTFE繊維などが挙げられ、アルミナを材料とする担体としては、アルミナボールなどが挙げられ、活性炭を材料とする担体としては、造粒炭、活性炭素繊維が挙げられる。
これらの中でも、アルカリに対する耐性を考慮した場合、PP、PTFE、アルミナを材料とすることが好ましく、アルカリおよび酸に対する耐性を考慮した場合、PTFE、アルミナを材料とすることが好ましく、アルカリ、酸および有機溶剤に対する耐性を考慮した場合、PTFEを材料とすることが好ましい。
本実施形態に係るリグノフェノールの製造方法は、本実施形態に係るリグノフェノールの製造装置を用いて、リグノセルロース系材料から、リグノフェノールを製造する方法である。
本実施形態に係るリグノフェノールの製造装置は、リグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する装置である。
本実施形態に係るリグノフェノールの製造装置は、リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および酸を混合することにより第1混合物を得て、該第1混合物、およびリグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒を混合することにより、リグノフェノールを凝集させて、リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得る混合部と、該2混合物からリグノフェノールを取り出す、精製部とを備える。
また、精製部は、第2混合物中のリグノフェノールの凝集物を担体に付着させることにより、第2混合物からリグノフェノールの凝集物を捕捉し、捕捉された凝集物からリグノフェノールを取り出す。
さらに、精製部は、第2混合物を濾過することにより、担体に捕捉され得なかったリグノフェノールの凝集物を濾取し、濾取された凝集物からリグノフェノールを取り出す。
なお、濾過とは、リグノフェノールの凝集物を通さない濾材を用いて、リグノフェノールを分離することを意味する。
以下では、捕捉および濾過の両方を含む概念として、固液分離という用語を使用する場合がある。
より具体的には、図1、2に示すように、本実施形態に係るリグノフェノールの製造装置1は、リグノセルロース系材料Aにフェノール誘導体Cを収着させる前処理部2と、フェノール誘導体Cが収着されたリグノセルロース系材料A、および酸水溶液Dを混合することにより第1混合物を得て、該第1混合物、および前記リグノフェノールに対して貧溶媒となる有機溶媒Eを混合することにより、前記リグノフェノールを凝集させて、前記リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得る混合部3と、前記第2混合物から前記リグノフェノールを得る、精製部4とを備える。
前記第1混合工程では、前処理部2および混合部3を用いる。
前処理部2は、槽21と、槽21内の収容物を撹拌する撹拌部22と、槽21内を加熱する加熱部23とを備える。前処理部2は、槽21内の収容物を濾過できるように、槽21の底部21aの少なくとも一部が濾材で形成されている。そのため、前処理部2は、濾過部(第1濾過部)としても機能する。槽21は、下方に向けて先細りとなるようにテーパ状に形成されている。前処理部2としては、例えば、神鋼環境ソリューション社製の「濾過機能付きPVミキサー」などが挙げられる。
前記第1混合工程では、リグノセルロース系材料AとアセトンBとを前処理部2で混合することにより、アセトンBによってリグノセルロース系材料Aを脱脂処理する(脱脂工程a1)。アセトンBは、リグノセルロース系材料Aの1kgに対して、2kg〜10kg加えられることが好ましい。次に、リグノセルロース系材料AとアセトンBとの混合物を濾過することにより、固形状のリグノセルロース系材料Aと液状のアセトンBとを分離し、アセトンBを回収する(第1濾過工程a2)。
これにより、リグノセルロース系材料Aに含まれる脂をアセトンBによってリグノセルロース系材料Aから取り除くことができる。
また、前記第1混合工程では、第1濾過工程a2後に、加熱部23で槽21内を加熱することにより、リグノセルロース系材料Aに付着しているアセトンBを揮発させて、リグノセルロース系材料から余分なアセトンBを取り除くことができる。
また、前記第1混合工程では、余分なアセトンBが取り除かれたリグノセルロース系材料Aとフェノール誘導体Cとを前処理部2で混合することにより、リグノセルロース系材料Aにフェノール誘導体Cを収着させる(収着工程a3)。フェノール誘導体Cは、リグノセルロース系材料Aの1kgに対して、3kg〜10kg加えられることが好ましい。そして、リグノセルロース系材料Aとフェノール誘導体Cとの混合物を濾過することにより、固形状のリグノセルロース系材料Aと余分な液状のフェノール誘導体Cとを分離し、フェノール誘導体Cを回収する(第2濾過工程a4)。
また、前記第1混合工程では、第2濾過工程a4の後に、加熱部23で槽21内を加熱することにより、リグノセルロース系材料Aに付着しているフェノール誘導体Cを揮発させて、リグノセルロース系材料Aから余分なフェノール誘導体Cを取り除くことができる。
余分なフェノール誘導体Cが取り除かれたリグノセルロース系材料Aは、混合部3に移送されてさらなる処理が施される。
混合部3は、槽31と、槽31内の収容物を撹拌する撹拌部32とを備える。槽31内には酸水溶液Dが加えられるため、槽31および撹拌部32は、耐酸性に優れるという点から、グラスライニング処理されていることが好ましい。
さらに、前記第1混合工程では、フェノール誘導体Cが収着されたリグノセルロース系材料Aと、酸水溶液Dとを混合部3で混合することにより、リグノフェノールを生成し、リグノフェノールを含有する第1混合物を得る(生成工程a5)。酸水溶液Dは、リグノセルロース系材料Aの1kgに対して、3kg〜10kg加えられることが好ましい。
生成工程a5では、リグノセルロース系材料Aに含有されるセルロースが酸触媒の下で加水分解されて、糖類が生成される。また、リグノセルロース系材料Aに含有されるリグニンが、酸触媒の下で加水分解されて低分子化する。さらに、リグニンが、酸触媒の下でフェノール誘導体と反応してリグノフェノールが生成される。図3に、酸として硫酸を用い、フェノール誘導体Cとしてp−クレゾールを用いて、リグノフェノールを生成する反応の例を示す。また、生成されたリグノフェノールは、酸触媒の下で加水分解されて低分子化する。以上により、リグノフェノールを含有する第1混合物が得られる。
酸水溶液Dは、酸を、通常65〜98質量%、好ましくは72〜98質量%含有する。
また、前記第1混合工程では、リグノフェノールを含有する第1混合物と、水Eとを混合部3で混合することにより、前記第1混合物を希釈し該第1混合物における酸の濃度を低下させて、加水分解反応を抑制させる(希釈工程a6)。水Eは、前記第1混合物の希釈後において、酸濃度が60質量%以下となる量を加えることが好ましい。
前記第2混合工程では、水Eで希釈された第1混合物と、リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒Fとを混合部3で混合することにより、第1混合物において液分に溶解していたリグノフェノールが析出し、該リグノフェノールが凝集して、粘着性を有するリグノフェノールの凝集物が得られる。溶媒Fは、リグノセルロース系材料Aの1kgに対して、3kg〜10kg加えられることが好ましい。
これにより、リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物が得られる(第2混合工程b)。
前記精製工程では、精製部4を用いて、第2混合物たる油水混合物からリグノフェノールを取り出す。より具体的には、第2混合物を固液分離することにより、リグノフェノールの凝集物を取り出して、該リグノフェノールの凝集物から、リグノフェノールを取り出す。
精製部4は、第2混合物を固液分離することにより、リグノフェノールの凝集物を取り出して、該凝集物およびアルコールGを混合することにより、リグノフェノールをアルコールGに溶解させて、リグノフェノールおよびアルコールGを含有するLP(リグノフェノール)アルコール液を得る固液分離部4aと、LPアルコール液にアルカリ剤Hを混合することによりpHを調整するpH調整部4bと、LPアルコール液からアルコールGを除去することによりリグノフェノールを濃縮させる濃縮部4cと、濃縮されたLPアルコール液に塩化ナトリウム水溶液Iを混合することによりリグノフェノールを晶出させる晶析部4dと、晶出されたリグノフェノールを含有するLPアルコール液を濾過することにより、固形状のリグノフェノールを得る第2濾過部4eと、第2濾過部4eで得られた固形状のリグノフェノールを乾燥させる乾燥部4fとを備えている。
固液分離部4aは、槽4a1と、槽4a1内の収容物を撹拌する撹拌部4a2とを備える。また、固液分離部4aは、前記第2混合物中のリグノフェノールの凝集物を捕捉する捕捉手段4a3と、リグノフェノールの凝集物を捕捉手段4a3によって捕捉したときに得られた液体を濾過することにより、捕捉手段4a3で捕捉され得なかったリグノフェノールの凝集物を得る濾過手段4a4とを備える。
本実施形態では、図2に示すように、アルミナボールが、槽4a1の底部4a1aに敷き詰めるように配されることによって、捕捉手段4a3とされている。アルミナボールとしては、リグノフェノールの凝集物の流路を確保できる大きさのものが配されている。
また、本実施形態では、図2に示すように、槽4a1の底部4a1aと捕捉手段4a3との間に濾材が配されることによって、濾過手段4a4とされている。
濾過手段4a4としては、槽4a1の底部4a1aの少なくとも一部が、槽4a1内の収容物を濾過できるように濾材で形成されたものを用いてもよい。槽4a1の底部4a1aの少なくとも一部が濾材で形成されたものとしては、例えば、神鋼環境ソリューション社製の「フィルタードライヤー」などを用いることができる。
前記精製工程では、固液分離部4aの捕捉手段4a3によって、第2混合物中のリグノフェノールの凝集物を捕捉し、捕捉手段4a3で捕捉され得なかったリグノフェノールの凝集物を濾過手段4a4で濾取することによって、リグノフェノールの凝集物を取り出す(固液分離工程c1)。固液分離工程c1で分離された液体には、酸および溶媒が含有されている。固液分離工程c1によって分離された液体は、静置分離などにより、酸水溶液Dと溶媒Fとに分離して回収することができる。
固液分離工程c1の濾過手段4a4として使用される濾材の材質としては、耐食性に優れるという観点から、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、テフロン(登録商標))、ニッケルとモリブデンとを含有する合金(例えば、ハステロイ(登録商標))が好ましく、ポリプロピレン、ニッケルとモリブデンとを含有する合金が特に好ましい。
該濾材の孔径は、リグノフェノールの凝集物を通さず、かつ濾過時間を短縮するという観点から、10〜30μmであることが好ましく、20μmであることが特に好ましい。
そして、前記精製工程では、リグノフェノールの凝集物およびアルコールGを固液分離部4aで混合することにより、リグノフェノールをアルコールGに溶解させて、リグノフェノールおよびアルコールGを含有するLPアルコール液を得る(溶解工程c2)。アルコールGとしては、メタノール、エタノールなどを用いることができる。アルコールGは、リグノセルロース系材料Aの1kgに対して、1kg〜10kg加えることが好ましい。
次に、LPアルコール液を濾過することにより、LPアルコール液から固形物(残渣物)を取り除く(第3濾過工程c3)。
pH調整部4bは、槽4b1と、槽4b1内の収容物を撹拌する撹拌部4b2とを備える。槽4b1は、耐酸性に優れるという観点から、グラスライニング処理されていることが好ましい。
また、前記精製工程では、固形分を取り除いたLPアルコール液と、アルカリ剤HとをpH調整部4bで混合することによりpHを調整する(pH調整工程c4)。
固形分を取り除いたLPアルコール液には、生成工程a5で用いた酸が十分に除去されずに残っており、通常、pHが0以上2未満となっている。
pH調整工程c4では、この酸を中和させてpHを2以上4以下とすることが好ましい。
アルカリ剤Hとしては、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
濃縮部4cは、槽4c1と、槽4c1内の収容物を撹拌する撹拌部4c2と、槽4c1内を加熱する加熱部4c3とを備える。
前記精製工程では、pHを調整したLPアルコール液を槽4c1内において撹拌しながら加熱部4c3で加熱する(濃縮工程c5)。これにより、LPアルコール液中のアルコールを濃縮部4cで蒸発させることができる。その結果、LPアルコール液のリグノフェノール濃度を高めることができ、処理すべきLPアルコール液の量を低減することができる。また、リグノフェノールを結晶化させることができる。
晶析部4dは、槽4d1と、槽4d1内の収容物を撹拌する撹拌部4d2とを備える。
前記精製工程では、濃縮工程c5でリグノフェノールが濃縮されたLPアルコール液に塩化ナトリウム水溶液Iを晶析部4dで混合することによりリグノフェノールを晶出させる(晶析工程c6)。
リグノフェノールは、フェノール骨格に含まれるOH基によってプロトン性が高くなっているため、水溶性が高い。しかし、リグノフェノールは、塩化ナトリウムの共存下においては、水溶液が低くなる。すなわち、塩化ナトリウムによって塩析効果が生じる。これにより、LPアルコール液に塩化ナトリウム水溶液Iを混合すると、リグノフェノールが晶出される。
塩化ナトリウム水溶液Iは、塩化ナトリウム濃度が0.1〜5質量%であることが好ましい。
塩化ナトリウム水溶液Iは、LPアルコール液1Lに対して、4kg〜10kg加えることが好ましい。
また、前記精製工程では、晶出されたリグノフェノールを含有するLPアルコール液を第2濾過部4eで濾過することにより、固形状のリグノフェノールを得る(第4濾過工程c7)。第4濾過工程c7で得られた濾液は、アルコールGとして回収することができる。
さらに、前記精製工程では、第2濾過部4eで得られたリグノフェノールを乾燥部4fで乾燥させることにより、精製されたリグノフェノールJを得る(乾燥工程c8)。
本実施形態に係るリグノフェノールの製造方法で得られるリグノフェノールJ、すなわち、精製されたリグノフェノールJは、例えば、プラスチック用の難燃剤、合板接着剤、含浸材などの用途で用いることができる。
なお、前記第2混合物中において、リグノフェノールが凝集されて凝集物となる理由は以下の通りである。
フェノール類は水酸基を有し、この水酸基がプロトン供与体として働き、水中で解離反応を起こすことができる。また、フェノール類が解離すると、フェノキシドイオンが共鳴によって安定化する。このことから、フェノール類は、ある程度の親水性を有する。
したがって、リグノフェノールのうちのフェノール類の構造部分(図3参照)は、ある程度の親水性を有する。
また、リグノフェノールのうち、フェノール類の構造部分以外の水酸基の部分も、ある程度の親水性を有する。
一方で、リグノフェノールには、溶媒に対して親和性を有する構造部分(ベンゼン環等炭化水素で構成されている部分等)が存在する。
すなわち、リグノフェノールには、ある程度の親水性がある構造部分と、溶媒に対して親和性がある構造部分とが存在する。
このことから、リグノフェノールおよび水に、リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒を混合すると、水とリグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒とが反発し、反発している水とリグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒との間で、水とリグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒とによってリグノフェノール分子が配向し、その結果、リグノフェノールが、水と、前記リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒との間で凝集する。
また、本発明者は、リグノフェノールの凝集物が粘着性を有する理由について、リグノフェノールの凝集物に含まれる不純物(例えば、リグノセルロース系材料の解緩反応(リグニンとセルロースとを解きほぐす反応)の際に生じる糖分など)によって及ぼされる影響によるものと考えている。
なお、本発明に係るリグノフェノールの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るリグノフェノールの製造方法によって生じる作用効果は、上記した作用効果に限定されるものではない。本発明に係るリグノフェノールの製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
上記実施形態では、前記第1混合工程において、前処理部2で、アセトンBを用いてリグノセルロース系材料Aの脱脂処理(図1の脱脂工程a1)を行い、脱脂処理されたリグノセルロース系材料Aにフェノール誘導体Cを収着させる工程(図1の収着工程a3)を行う態様について説明したが、リグノセルロース系材料Aを脱脂および収着する態様はこれに限られない。アセトンBを用いてリグノセルロース系材料Aの脱脂処理を行わずに、フェノール誘導体Cを用いて、リグノセルロース系材料Aの脱脂処理を行ってもよい。
より具体的には、図4に示すように、フェノール誘導体Cを用いて、脱脂工程a1’でリグノフェノール系材料Aの脱脂および収着の両方を行い(すなわち、図1の脱脂工程a1および収着工程a3を行い)、第2濾過工程a2’(図1における第2濾過工程a4)で、リグノセルロース系材料Aとフェノール誘導体Cとの混合物を濾過することにより、フェノール誘導体Cが付着されたリグノセルロース系材料Aを得てもよい。
このようにすれば、アセトンBの使用を省略できるので、リグノフェノールの製造工程において、使用する材料の種類を減らすことができる。また、アセトンBで脱脂された固形状のリグノセルロース系材料Aと、液状のアセトンBとを分離する濾過工程(図1における第1濾過工程a2)を省略できるので、製造時間を短縮することもできる。
なお、図4において、工程a3’は生成工程(図1における生成工程a5)であり、工程a4’は希釈工程(図1における希釈工程a6)である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]
木粉をアセトンで脱脂した後、アセトンで脱脂した木粉にクレゾールを添加して(木粉1g当たりクレゾール6g)、木粉にクレゾールを十分に収着させた。
そして、クレゾールを収着させた木粉30gに、硫酸水溶液(硫酸:72質量%)120gを添加し激しく1時間撹拌することにより第1混合物を得た。
次に、該第1混合物と水180gとを撹拌槽内で15分間撹拌させることにより、硫酸による加水分解反応を停止させた。
次に、加水分解反応を停止させた第1混合物にヘキサン120gを添加し激しく約1時間撹拌することにより、リグノフェノールを凝集させて、該リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得た。
次に、該第2混合物をスクリュー型液供給機で濾過機(スクレーパを有する濾過機)に移送した。該濾過機の底面には、担体たるφ5mmのアルミナボールを敷き詰め、このφ5mmのアルミナボールの上に、同じく担体たるφ10mmのアルミナボールを敷き詰めた。該濾過機において、担体によって前記第2混合物からリグノフェノールの凝集体を捕捉し、前記第2混合物の液分を濾過することにより、前記担体によって捕捉され得なかったリグノフェノールの凝集物を濾取した。上記捕捉および濾過に要した時間は、1時間であった。
次に、捕捉および濾過によって得られたリグノフェノールの凝集体に、メタノール55gを混合させることにより、該凝集体に含まれるリグノフェノールをメタノールに溶解させて、リグノフェノールおよびメタノールを含有するLPメタノール液を得た。
次に、該LPメタノール液を吸引濾過することにより、LPメタノール液から固形分(木粉の未反応物)を取り除き、未反応物を除去したLPメタノール液を得た。
次に、LPメタノール液(pH1)に粉末状の水酸化マグネシウムを混合することにより、LPメタノール液のpHを3.0に調整した。
次に、pH調整したLPメタノール液を吸引濾過することにより、LPメタノール液から硫酸塩および過剰な水酸化マグネシウムを除去した、
その後、硫酸塩および過剰な水酸化マグネシウムを除去したLPメタノール液100質量部と、食塩水(食塩濃度5.0質量%)500質量部とを混合し、リグノフェノールを晶出させた。
そして、リグノフェノールが晶出されたLPメタノール液を5C濾紙で吸引濾過することにより、固形状のリグノフェノールを得た。
次に、濾紙上のリグノフェノールを50℃で一晩加熱することにより乾燥させ、精製されたリグノフェノールを得た。
また、木粉中のリグニン質量に対する、得られたリグノフェノールの質量の比率(以下、リグノフェノール収率ともいう)は、122%であった。木粉中のリグニン質量は、クラーソン(Klason)法によって求めた。
[比較例1]
実施例1と同様にして第2混合物を得た。
次に、該第2混合物を槽内で静置分離させた。この静置分離により、前記第2混合物がヘキサン層、リグノフェノール層(リグノフェノールの凝集物の層)、および硫酸層の3層に分離した。この静置分離には、一昼夜かかった。
次に、槽内からヘキサン層および硫酸層を取り除いた。
次に、槽内に残ったリグノフェノール層にメタノールを混合させることにより、リグノフェノールをメタノールに溶解させて、リグノフェノールおよびメタノールを含有するLPメタノール液を得た。
次に、実施例1と同様にLPメタノール液を処理することにより、精製されたリグノフェノールを得た。
リグノフェノール収率は119%であった。
[比較例2]
加水分解を停止させるために前記第1混合物に加える水の量を96gとした以外は、実施例1と同様にして第2混合物を得た。
次に、実施例1と同様に、該第2混合物を濾過機に移送した。該濾過機内には担体を配さなかった。該濾過機において、前記第2混合物を濾過することにより、固形状のリグノフェノールを濾取した。濾過に要した時間は、3時間であった。
次に、実施例1と同様に、固形状のリグノフェノールにメタノールを混合させることにより、固形状のリグノフェノールをメタノールに溶解させて、リグノフェノールおよびメタノールを含有するLPメタノール液を得た。
リグノフェノール収率は116%であった。
[参考例1]
クレゾールの代わりにフェノールを用い、また、ヘキサンの代わりにトルエンを用いた以外は、実施例1と同様にして、精製されたリグノフェノールを得た。
捕捉および濾過に要した時間は、実施例1と同様に約1時間であった。
以上の結果から、実施例1に係る方法では、比較例1および2に係る方法に比べて、リグノフェノールを含有する混合物から、リグノフェノールの凝集物を短時間で分離できることが分かった。すなわち、実施例1に係る方法では、比較例1および2に係る方法に比べて、短時間でリグノフェノールを得ることができることが分かった。
また、実施例1に係る方法は、比較例1および2に係る方法と比べて、高収率でリグノフェノールを得ることができることが分かった。
1:製造装置、2:前処理部、3:混合部、4:精製部、
4a:固液分離部、4a1:槽、4a1a:底部、4a2:撹拌部、4b:pH調整部、4b1:槽、4b2:撹拌部、4c:濃縮部、4c1:槽、4c2:撹拌部、4c3:加熱部、4d:晶析部、4d1:槽、4d2:撹拌部、4e:第2濾過部、4f:乾燥部、
21:槽、21a:底部、22:撹拌部、23:加熱部、31:槽、32:撹拌部、
A:リグノセルロース系材料、B:アセトン、C:フェノール誘導体、D:酸水溶液、E:水、F:溶媒、G:アルコール、H:アルカリ剤、I:塩化ナトリウム水溶液、J:リグノフェノール、
a1:脱脂工程、a2:第1濾過工程、a3:収着工程、a4:第2濾過工程、a5:生成工程、a6:希釈工程、b:第2混合工程、c1:固液分離工程、c2:溶解工程、c3:第3濾過工程、c4:pH調整工程、c5:濃縮工程、c6:晶析工程、c7:第4濾過工程、c8:乾燥工程
a1’:脱脂工程、a2’:第2濾過工程、a3’:生成工程、a4’:希釈工程

Claims (3)

  1. リグノセルロース系材料からリグノフェノールを製造する、リグノフェノールの製造方法であって、
    前記リグノセルロース系材料、フェノール誘導体、および、酸を混合することにより第1混合物を得る第1混合工程と、
    前記第1混合物、および、リグノフェノールに対して貧溶媒となる溶媒を混合することにより、リグノフェノールを凝集させて、リグノフェノールの凝集物を含む第2混合物を得る第2混合工程と、
    前記第2混合物中の前記リグノフェノールの凝集物を担体に付着させることにより、前記第2混合物から前記リグノフェノールの凝集物を捕捉するリグノフェノール捕捉工程と、を備える、
    リグノフェノールの製造方法。
  2. 前記リグノフェノール捕捉工程によって得られた液体を濾過する濾過工程を備える、
    請求項1に記載のリグノフェノールの製造方法。
  3. 前記リグノフェノール捕捉工程と前記濾過工程とを一つの槽で行う、
    請求項2に記載のリグノフェノールの製造方法。
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