JP6521646B2 - リグニンスルホン酸塩の製造方法 - Google Patents

リグニンスルホン酸塩の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リグニンスルホン酸塩の製造方法に関する。
将来的に石油資源が枯渇することが懸念されている。そのため、石油資源に代わる原料として、バイオマスを用いた研究がこれまでに数多くなされている。そうした潮流のなか、バイオマス利用の分野において、大規模かつ商業ベースで成功している例としては、木材を原料としている製紙産業が挙げられる。その中でも、木材構成成分の主成分であるセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの全利用に成功している例としては、亜硫酸蒸解を用いたサルファイトパルプの製造が挙げられる。木材の亜硫酸蒸解により得られる成分のうち、例えばパルプは、各種セルロース製品の原料に用いられており、ヘミセルロース(非セルロース系多糖類)は、発酵原料等に用いられている。また、上記亜硫酸蒸解により得られるリグニンスルホン酸塩は、バインダー性能、分散性能、およびキレート能等の様々な能力を発揮することより、多様な分野にて利用されている。
リグニンスルホン酸塩の高付加価値品としては例えば、高純度品はもちろんのこと、スルホン化度を低減させた部分脱(低)スルホン化リグニンスルホン酸塩が挙げられる。低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩は、高スルホン化度のリグニンスルホン酸塩と比較して特異な性能を発揮するため、染料分散剤をはじめとした各種用途に用いられている。また、部分脱スルホン化リグニンスルホン酸塩を原料とした、染料分散剤、および石炭・水スラリー用分散剤の開発もなされている(特許文献1〜2)。低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を得る方法としては、高スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を水酸化ナトリウムまたはアンモニアを使用するアルカリ性水溶液中で、酸素等の酸化剤の存在下で加熱する方法が知られている(非特許文献1)。
特許第3365492号公報 特開昭62−169895号公報
Hoyt CH,Goheen DW (1971) Polymeric products.In: Sarkanen KV,Ludwig CH (eds) Lignins:occurrence,formation,structure and reactions. Wiley,New York,pp844−845
上記の従来技術のように、亜硫酸パルプ排液などから得られる高スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を用い、アルカリ性下における酸化処理により低スルホン化度のリグニンスルホン酸を得る場合には、スルホン化度を低下させることができるようにアルカリ条件および/または酸化条件を調整する工程等の複雑な工程が必要である。また、アルカリ酸化処理の際にカルシウム塩等の不溶性無機塩が形成されることがあるため、こうした無機塩をアルカリ酸化処理の前後どちらか又は両方で原料から除去する工程が必要である。
上記の背景に鑑み、本発明では、低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を簡便に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を提供する。
〔1〕下記の工程(1)〜(4)を含むリグニンスルホン酸塩の製造方法。
工程(1):リグノセルロース原料を亜硫酸処理すること
工程(2):工程(1)で得られる中間組成物を洗浄および脱水すること
工程(3):工程(2)で得られる亜硫酸処理物をアルカリ処理すること
工程(4):工程(3)で得られるアルカリ処理抽出物を酸処理すること
〔2〕リグニンスルホン酸塩のスルホン化度が0.4/OCH3以下である〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕亜硫酸処理が、リグノセルロース原料にSOの濃度が1〜20g/100mLである溶液を接触させる処理である〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕亜硫酸処理をpH0.1〜10にて行う〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔5〕亜硫酸処理を70℃〜170℃にて行う〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔6〕アルカリ処理が、亜硫酸処理物にアルカリ性物質0.5〜20重量%(亜硫酸処理物の固形分に対して)を接触させる処理である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔7〕アルカリ処理を40℃〜150℃にて行う、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔8〕酸処理をpH4以下にて行う〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔9〕酸処理を30℃〜100℃にて行う〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明によれば、リグノセルロース原料から、低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を簡便に製造できる、リグニンスルホン酸塩の製造方法を提供することができる。
本発明のリグニンスルホン酸塩の製造方法は、以下説明する工程(1)〜(4)を含む。これにより、低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を簡便に得ることができる。
工程(1)は、リグノセルロース原料を亜硫酸処理して中間組成物を得る工程である。
リグノセルロース原料は、構成体中にリグノセルロースを含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、非木材などのパルプ原料が挙げられる。木材としては、エゾマツ、アカマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹木材、シラカバ、ブナなどの広葉樹木材が例示される。非木材としては、竹、ケナフ、葦、稲などが例示される。リグノセルロース原料は、これらのうち1種のみであっても2種以上の組み合わせであってもよい。木材の樹齢、採取部位は問わない。従って、リグノセルロース原料は、互いに樹齢の異なる樹木から採取された木材、互いに樹木の異なる部位から採取された木材の組み合わせであってもよい。
亜硫酸処理は、亜硫酸および/または亜硫酸塩をリグノセルロース原料に接触させる処理である。
亜硫酸処理の条件は、特に限定されず、リグノセルロース原料に含まれるリグニンの側鎖のα炭素原子にスルホ基が導入され得る条件であればよい。亜硫酸処理は、亜硫酸蒸解法により行うことが好ましい。これにより、リグノセルロース原料中のリグニンをより定量的にスルホ化することができる。
亜硫酸処理は、亜硫酸蒸解法により行うことが好ましい。亜硫酸蒸解法は、亜硫酸および/または亜硫酸塩の溶液(例えば水溶液:蒸解液)中でリグノセルロース原料を高温下で反応させる方法であり、サルファイトパルプの製造方法として工業的に確立され使用されている。そのため、亜硫酸処理を亜硫酸蒸解法により行うことにより、経済性及び実施容易性を高めることができる。
亜硫酸塩の塩としては、亜硫酸蒸解を行う場合には例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、またはアンモニウム塩が挙げられる。
亜硫酸および/または亜硫酸塩の溶液における亜硫酸(SO2)濃度には特に限定はないが、反応薬液100mLに対するSO2の重量(g)の比率が、1g/100mL以上であることが好ましく、2g/100mL以上であることがより好ましい。上限は、20g/100mL以下であることが好ましく、15g/100mL以下であることがより好ましい。従って、SO2濃度は、1〜20g/100mLであることが好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には2〜15g/100mLであることがより好ましい。
亜硫酸処理の際のpHには特に限定はないが、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。pHの下限は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。したがって、亜硫酸処理の際のpHは、0.1〜10であることが好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には0.5〜5であることがより好ましい。
亜硫酸処理の際の温度には特に限定はないが、170℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。下限は、70℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。したがって、亜硫酸処理の温度条件は、70〜170℃であることが好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には100℃〜150℃であることがより好ましい。
亜硫酸処理の処理時間に特に限定はなく、亜硫酸処理の諸条件にもよるが、0.5〜24時間であることが好ましく、1.0〜12時間であることがより好ましい。
亜硫酸処理においてはカウンターカチオン(塩)を供給する化合物を添加することが好ましい。カウンターカチオンを供給する化合物を添加することにより、亜硫酸処理におけるpHを保つことができる。カウンターカチオンを供給する化合物としては、例えば、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、NH3、NH4OH、NaOH、NaHCO3、Na2CO3が挙げられる。カウンターカチオンは、マグネシウムイオンであることが好ましい。
亜硫酸処理において亜硫酸および/または亜硫酸塩の溶液を用いる場合、溶液には必要に応じて、SO2のほかに、カウンターカチオン、蒸解浸透剤(例えば、アントラキノンスルホン酸塩、アントラキノン、テトラヒドロアントラキノン等の環状ケトン化合物)を含ませてもよい。
亜硫酸処理を行う際に用いる設備に限定はなく、例えば、一般に知られている溶解パルプの製造設備等を用いることができる。
亜硫酸および/または亜硫酸塩の溶液からの中間組成物の分離は、常法に従って行えばよい。分離方法としては例えば、亜硫酸蒸解後の亜硫酸蒸解排液の分離方法が挙げられる。
工程(2)では、中間組成物を洗浄および脱水して亜硫酸処理物を得る。これにより、中間処理物に含まれる、亜硫酸処理により除去しきれない成分(例えば、樹脂、有機酸、および無機分)を除去することができる。
洗浄は、亜硫酸蒸解法により得られる未晒亜硫酸パルプの洗浄と同様にして行えばよい。洗浄は、一段階の洗浄でも多段階の洗浄でもよい。多段階洗浄することにより、洗浄を十分に行うことができる。
洗浄の際には通常、洗浄機を用いる。洗浄の際に使用する洗浄機に特に限定はないが、例えば、置換洗浄型洗浄機、希釈脱水洗浄型洗浄機が挙げられる。
脱水は、通常の条件で行うことができ、例えば、亜硫酸蒸解法において得られる洗浄後の未晒亜硫酸パルプの脱水と同様にして行えばよい。
脱水の際には通常、脱水機を用いる。脱水の際に使用する脱水機に特に限定はないが、例えば、ドラム型絞り脱水機、ロータリープレス、および連続圧搾脱水機が挙げられる。
洗浄を多段階行う場合には、脱水もその都度行ってもよいし、一部の回のみ行ってもよい。
工程(3)では、工程(2)で得られる亜硫酸処理物をアルカリ処理し、アルカリ処理抽出物を得る。
アルカリ処理においては、亜硫酸処理物をアルカリ性下におけばよい。アルカリ性とは、通常はpH8以上であり、好ましくはpH9以上である。上限は通常pH14である。
アルカリ処理においては、通常、アルカリ性物質を亜硫酸処理物に接触させる。アルカリ性物質は、特に限定されないが、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、およびアンモニア、およびこれらのうち2以上の組み合わせが挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。
亜硫酸処理物にアルカリ性物質を接触させる方法としては、亜硫酸処理物の分散液、溶液(例えば、水分散液、水溶液)を調製し該溶液中にアルカリ性物質を添加する方法、亜硫酸処理物にアルカリ性物質の溶液または分散液(例えば、水分散液、水溶液)を添加する方法が例示される。
アルカリ処理の際の温度に特に限定はないが、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。上限は、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることがさらに好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ性物質の量は、亜硫酸処理物の固形分重量に対する重量の割合で、或いは、亜硫酸処理物を水性溶媒(例えば、水)に分散し溶液または分散液を調製する場合には分散液の重量に対する重量の割合で、0.5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以上15重量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理の時間は特に限定されないが、0.1時間以上であることが好ましく、0.5時間以上であることが好ましい。上限は、10時間以下であることが好ましく、6時間以下であることがより好ましい。
アルカリ処理に先立ち、必要に応じて、亜硫酸処理物の溶解、分散処理、濃度の調整(水等の水性溶媒の溶液又は分散液の調製)を行ってもよい。分散処理は、ディスクリファイナーの通過、ミキサー、ディスパーザーへの添加、ニーダー処理などによることができる。濃度の調整は、例えば水等の水性溶媒を用いて行うことができる。調整後の濃度は、水性溶媒(重量)中の亜硫酸処理物の固形分(重量)濃度が5.0重量%以上であることが好ましい。上限は、20.0重量%以下であることが好ましく、15.0重量%以下であることがより好ましい。
工程(4)では、アルカリ処理抽出物を酸処理する。これにより、リグニンスルホン酸塩、またはこれを含む組成物を沈殿物等として得ることができる。
酸処理においては、アルカリ処理抽出物を酸性下におけばよい。酸性とは、通常はpH6以下であり、好ましくはpH4以下である。下限は通常pH1以上である。
酸処理においては、通常、酸性物質をアルカリ処理抽出物に接触させる。酸性物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸および酢酸などの有機酸、およびこれらのうち2以上の酸の組み合わせが挙げられ、硫酸が好ましい。なお、工程(3)において添加したアルカリ性物質を、酸処理の前に反応系から分離してもよいし、pHさえ酸性に調整されればそのまま含んでいてもよい。
アルカリ処理抽出物に酸性物質を接触させる方法としては、アルカリ処理抽出物に酸性物質の溶液または分散液(例えば、水分散液、水溶液)を添加する方法が例示される。
酸処理の際の温度に特に限定はないが、常温よりも高めの温度が好ましい。これにより、リグニンスルホン酸および/またはその塩を含む粒子の凝集を促進することができる。具体的には、30℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また酸処理は、100℃以下で行うことが好ましく、95℃以下で行うことがより好ましい。温度を調製するために加熱または加温を行ってもよい。従って、酸処理の温度は、30〜100℃が好ましく、60〜95℃がより好ましい。
酸処理における酸性物質の量は、アルカリ処理抽出物の固形分重量に対する重量の割合で、或いは、アルカリ処理抽出物を水性溶媒(例えば、水)に分散し溶液または分散液を調製する場合には分散液の重量に対する重量の割合で、1重量%以上70重量%以下であることが好ましく、5重量%以上60重量%以下であることがより好ましい。
酸処理の時間は特に限定されないが、上限は3時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましい。
酸処理により、リグニンスルホン酸塩、もしくはこれを含む組成物が得られ、通常は組成物が得られる。リグニンスルホン酸塩、もしくはこれを含む組成物を回収する方法は、特に限定されないが、これらは通常沈殿物として得られることから、沈殿物を分離する方法が例示される。斯かる方法としては、圧搾、ろ過、沈降、遠心分離が例示される。分離の際に用いる装置は特に限定されないが、ベルトフィルター、デカンター、セパレーターが例示される。
回収物が組成物である場合、該組成物が含むリグニンスルホン酸塩の成分としては例えば、糖組成物および無機分が例示される。通常はリグニンスルホン酸塩、糖組成物および無機分が主成分である。
糖組成物は、糖を含む組成物である。糖組成物を構成する糖は、1種類であってもよいし2種類以上であってもよい。
糖は、構成する炭素数に制限はなく、単糖、少糖、多糖のいずれでもよい。単糖としては以下が例示される:アルドトリオース、ケトトリオースなどの三炭糖;エリトロース、トレオース、エリトルロースなどの四炭糖;キシロース、リボース、アラビノース、リキソース、リブロース、キシルロースなどの五炭糖;マンノース、アロース、アルトロース、グルコース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、フコース、フルクトース、ラムノースなどの六炭糖、セドヘプツロースなどの七炭糖など。少糖としては以下が例示される:スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースなどの二糖、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオースなどの三糖、アカルボース、スタキオースなどの四糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などのオリゴ糖。多糖としては、グリコーゲン、でんぷん(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、ヘミセルロース、デキストリン、グルカンが例示される。糖類、中でも多糖類は、パルプ等のリグノセルロース原料である植物成分に含有される多糖類、およびそれらが蒸解または漂白処理の際に分解および/または変性して生成する。
糖組成物は、通常、多糖、還元性糖、および/または糖変性物を含む。還元性糖は、還元性を示す糖であればよい。還元性糖は通常、塩基性溶液中でアルデヒド基またはケトン基を生じる。還元性糖としては、すべての単糖、マルトース、ラクトース、アラビノース、スクロースの転化糖などの二糖、および多糖などが例示される。糖変性物としては例えば、糖が酸化、スルホン化などの化学変性を受けてなる変性物、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、または/およびスルホ基などの置換基で置換されている糖誘導体が挙げられる。
還元性糖とは、還元性を示す糖であり、塩基性溶液中でアルデヒド基またはケトン基を生じる糖を意味する。還元性糖としては、すべての単糖、マルトース、ラクトース、アラビノース、スクロースの転化糖などの二糖、および多糖などが例示される。還元性糖は、通常、セルロース、ヘミセルロース、およびそれらの分解物を含む。セルロースおよびヘミセルロースの分解物としては、例えば、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、マンノース、フルクトースなどの単糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖が挙げられる。
糖変性物とは、糖が酸化、スルホン化などの化学変性を受けてなる変性物を意味する。糖変性物は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、または/およびスルホ基などの官能基が糖の骨格中に導入された糖誘導体であってもよいし、糖誘導体2つ(2種)以上が結合した化合物などが例示される。
糖変性物の含有量は、以下の式1にて求めることができる。
糖変性物の重量(重量%)=
100(%)−還元性糖の重量(重量%)−糖以外の成分(例えば、リグニンスルホン酸、無機物など)の重量(重量%)・・・(式1)
酸処理により得られる組成物の組成は、工程(1)〜(4)の処理条件等により異なり一義的に定めることは難しいが、通常、混合物(沈殿物)の全固形分を100重量%とした際に、還元性糖1〜5重量%、リグニンスルホン酸およびその塩30〜70重量%、糖変性物25〜50重量%、無機塩5〜25重量%である。
なお、工程(2)で得られる亜硫酸処理物は、パルプ、リグニンスルホン酸塩、無機塩、糖組成物を含む。よって、アルカリ性のパルプ洗浄排水には、通常、木材に含まれる成分に由来する成分を含む。工程(3)で得られるアルカリ処理抽出物は、アルカリ処理抽出物の全固形分を100重量%とした際に、通常、還元性糖1〜5重量%、リグニンスルホン酸およびその塩10〜20重量%、糖変性物55〜70重量%、無機塩15〜25重量%程度である。
リグニンスルホン酸塩(リグニンスルホン酸)は、リグニンまたはその分解物の少なくとも一部がスルホ基(スルホン基)で置換されている化合物を意味する。リグニンスルホン酸のスルホ基は、電離していない状態であってもよいし、スルホ基の水素が金属イオン等のイオンに置換されていてもよい。リグニンスルホン酸塩のスルホン化度は、スルホ基の導入率であり、以下の式2にて求めることができる。
スルホン化度(/OCH3)=
リグニンスルホン酸およびその塩中のスルホン基中のS(モル)÷リグニンスルホン酸およびその塩中のメトキシル基(モル)・・・(式2)
リグニンは通常、アルカリ性水溶液に溶解するが中性〜酸性の水溶液にはほとんど溶解しない。しかしながら、リグニンにスルホン基がある程度導入されると、中性〜酸性の水溶液に対しても水溶性を示し始める。この際のスルホン化度は、通常0.3/OCH3程度またはそれ以上である。
リグニンスルホン酸塩が低スルホン化度である場合、そのスルホン化度は、通常の蒸解排液から得られるリグニンスルホン酸およびその塩のスルホン化度よりも低いことが好ましく、0.4/OCH3以下であることがより好ましい。下限は特に限定されないが、0.1/OCH3であることが好ましい。酸処理により通常、さまざまなスルホン化度、構造等のリグニンスルホン酸および/またはその塩が得られるが、これらの大部分が0.1〜0.3/OCH3のスルホン化度を有するものであることが好ましい。なお、通常の蒸解排液から得られるリグニンスルホン酸およびその塩のスルホン化度は、約0.4〜0.9/OCH3である。
酸処理における回収物がリグニンスルホン酸および/またはその塩を含む組成物である場合、組成物からリグニンスルホン酸および/またはその塩を抽出精製してもよいし、組成物をそのまま利用してもよい。組成物からリグニンスルホン酸および/またはその塩を抽出精製する方法としては、限外ろ過膜(UF膜)を使用した分子量分画、または長鎖アルキルを有するアミン類を含む高分子ポリカチオンを用いたリグニンスルホン酸の沈殿法が例示される。
本発明により、低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩が得られる理由は、以下のとおり推測される。通常のパルプ製造等で行われる亜硫酸処理の主目的は、本来は疎水性であるリグニンをスルホン化することにより、リグニンを水溶性高分子(リグニンスルホン酸等)に変換して除去することである。亜硫酸処理後のパルプ中には、原料のリグニンに由来する低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩が存在していると考えられる。低スルホン化度のリグニンスルホン酸およびその塩は、水溶性に寄与するスルホ基の量が少ないため、通常は酸性である亜硫酸処理反応液には溶解しにくい。しかしながら、アルカリ処理を行うと処理液中でフェノール性水酸基が解離するため、このフェノール性水酸基がリグニンスルホン酸塩の水溶性の向上に寄与する。そのため、低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を抽出することが可能となると推測される。
従来、リグニンスルホン酸塩の原料としては、亜硫酸蒸解後の蒸解排液(亜硫酸処理反応液)が用いられており、亜硫酸蒸解後のパルプ精製工程で発生するアルカリ処理後のパルプ洗浄排水(アルカリ処理抽出物)からのリグニンスルホン酸の回収は、ほとんど行われていない。本発明によれば、従来利用価値が低いとされていた、パルプ洗浄排水などのアルカリ処理抽出物から、簡便な方法で低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を得ることができる。
本発明により得られるリグニンスルホン酸塩、またはこれを含む組成物の用途には、特に限定はない。例えば、鉛蓄電池添加剤、染料分散剤、肥料を含む各種造粒剤、コンクリート用混和剤など幅広い製品の原料として利用することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中において、特に断りの無い限り%は重量%を、また、部は重量部を示す。
<実施例1>
木材(ラジアータパイン)を亜硫酸蒸解法に基づき亜硫酸処理し中間組成物を得た。亜硫酸処理においては、SO2濃度4g/100mLの亜硫酸マグネシウムの溶液を用いて、温度140℃、pH2、処理時間3時間とした。次に、中間組成物を洗浄および脱水し、パルプ(亜硫酸処理物)を得た。洗浄は1段階とした。続いて、パルプをアルカリ処理しアルカリ処理抽出物を得た。アルカリ処理においては、NaOH5重量%(対パルプ固形分)を接触させ100℃にて2時間アルカリ処理して、アルカリ処理抽出物を得た。その後、アルカリ処理抽出物を酸処理した。酸処理においては、まず、アルカリ処理抽出物を固形分45%となるように濃縮および/または加水して調整した水溶液800gを60℃に加温し、pH4となるまで硫酸70重量%水溶液を添加した。続いて90℃で25分間保持した後に、生じた沈殿物をろ過により集め、実施例1の低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を含む混合物を得た。
<実施例2>
実施例1にて得られたアルカリ処理抽出物に、酸処理を行った。酸処理においては、まず、アルカリ処理抽出物を固形分43%となるように濃縮および/または加水して調製した水溶液800gを60℃に加温し、pH3となるまで硫酸70重量%水溶液を添加した。90℃で5分間保持した後に、生じた沈殿物をろ過により集め、実施例2の処理物を得た。
<比較例1>
実施例1にて得られた中間処理物の残渣をろ別することにより、比較例1の処理物(亜硫酸処理物)を得た。
<比較例2>
実施例1にて得られたアルカリ処理抽出物の残渣をろ別することにより、比較例2の処理物(アルカリ処理抽出物)を得た。
アルカリ処理抽出物、実施例1〜2、および比較例1の処理物における糖組成物とリグニンスルホン酸塩の各含有量、ならびにリグニンスルホン酸塩のスルホン化度を、表1に示す。
Figure 0006521646
表1から以下のことが分かる。アルカリ処理及び酸処理を行なわなかった比較例1の処理物に含まれるリグニンスルホン酸塩のスルホン化度は高いのと比較して、実施例1及び2の処理物は、スルホン化度が低いリグニンスルホン酸塩が含まれていることがわかる。また、比較例2のサンプルにおけるリグニンスルホン酸塩の含有率が低いのと比較して、実施例1及び2の処理物は、リグニンスルホン酸塩を豊富に含むことがわかる。これらの結果は、本発明によれば従来法よりも簡便に低スルホン化度のリグニンスルホン酸塩を効率よく製造することができることを示している。また、これらの結果は、パルプ製造等において副生するが利用用途がほとんどないとされていたアルカリ処理抽出物に本発明が新たな利用価値を提供することを示している。

Claims (8)

  1. 下記の工程(1)〜(4)を含むリグニンスルホン酸塩の製造方法。
    工程(1):リグノセルロース原料を亜硫酸処理すること
    工程(2):工程(1)で得られる中間組成物を洗浄および脱水すること
    工程(3):工程(2)で得られる亜硫酸処理物にアルカリ性物質0.5〜20重量%(亜硫酸処理物の固形分に対して)を接触させフェノール性水酸基を解離させるアルカリ処理を行うこと
    工程(4):工程(3)で得られるアルカリ処理抽出物を酸処理すること
  2. リグニンスルホン酸塩のスルホン化度が0.4/OCH3以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 亜硫酸処理が、リグノセルロース原料にSOの濃度が1〜20g/100mLである溶液を接触させる処理である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 亜硫酸処理をpH0.1〜10にて行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 亜硫酸処理を70℃〜170℃にて行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. アルカリ処理を40℃〜150℃にて行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 酸処理をpH4以下にて行う請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 酸処理を30℃〜100℃にて行う請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
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