JP7219673B2 - 湿式摩擦プレートおよび湿式多板クラッチ装置 - Google Patents

Description

本発明は、油中で使用される湿式摩擦プレートに関するもので、特には、原動機とこの原動機によって回転駆動される被動体との間に配置されて原動機の駆動力を被動体に伝達または遮断する湿式多板クラッチ装置に適した湿式摩擦プレートおよび湿式多板クラッチ装置に関する。

従来から、四輪自動車や二輪自動車などの車両においては、エンジンなどの原動機の回転駆動力を車輪などの被動体に伝達または遮断するために湿式多板クラッチ装置が搭載されている。一般に、湿式多板クラッチ装置は、潤滑油中にて互いに対向配置される２つのプレート、具体的には、平板環状の芯金の表面に摩擦材を設けた湿式摩擦プレートと摩擦材がないクラッチプレートとを互いに押し付け合うことにより回転駆動力の伝達または制動が行なわれている。

このような多板クラッチ装置においては、湿式多板クラッチ装置が搭載される車両の燃費向上を目的として所謂引き摺りトルクの低減が常に求められる。引き摺りトルクは、湿式摩擦プレートとクラッチプレートとが離隔状態において、湿式摩擦プレートとクラッチプレートとの回転数の差に起因してこれら２つのプレート間に存在する潤滑油の粘性抵抗によって湿式摩擦プレートとクラッチプレートとの間で伝達されるトルクであり、車両の燃費悪化の一因となるものである。

このため、例えば、下記特許文献１，２には、平板円環状のコアプレートに周方向に沿って貼り付けられた摩擦材にこの摩擦材の内縁部から径方向外側に延びる第１の油溝と外縁部から径方向内側に延びる第２の油溝を形成した湿式摩擦プレートとしての摩擦板がそれぞれ開示されている。

特開２００７－１３２３６２号公報 特開２０１６－２３７５４号公報

しかしながら、上記特許文献１，２にそれぞれ記載された摩擦板においては、第１の油溝が摩擦板とこの摩擦板に対向配置されるセパレータプレートとを引き離す作用を発揮させるために油溝の面積を大きく形成する必要がある。このため、上記した従来の摩擦板においては、油溝の面積とトレードオフの関係にある摩擦材の面積が減殺されて摩擦板を備える湿式多板クラッチ装置のトルクの伝達特性が低下するという問題がある。

本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、摩擦材の面積の減少を抑えながら引き摺りトルクの低減が可能な湿式摩擦プレートおよび湿式多板クラッチ装置を提供することにある。

上記目的を達成するため、本発明の特徴は、平板環状に形成した芯金の表面に周方向に沿って複数の摩擦材を隙間を介して配置したクラッチ摩擦板において、摩擦材は、０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下の溝幅に形成されて摩擦材の内周縁に開口して外周縁側に延びるとともに内周縁と外周縁との間に終端部を有する第１の微細溝と、０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下の溝幅に形成されて外周縁に開口して内周縁側に延びるとともに外周縁と内周縁との間に終端部を有する第２の微細溝とを有し、第１の微細溝および第２の微細溝は、同一の摩擦材上にて少なくとも１つずつの第１の微細溝と第２の微細溝とが互いに隣接する位置に形成されるとともに芯金の径方向における同じ位置で周方向に重なるラップ部を有し、複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、第１の微細溝および第２の微細溝のうちの少なくとも一方が摩擦材における芯金の径方向に延びる端部に開口して形成されていることにある。

このように構成した本発明の特徴によれば、湿式摩擦プレートは、摩擦材における内周縁から外周縁側に延びる第１の微細溝と摩擦材における外周縁から内周縁側に延びる第２の微細溝とが互いに隣接配置されるとともに各溝の溝幅がそれぞれ０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下に形成されることで摩擦材の面積の減少を抑えながら引き摺りトルクを低減することができる。

また、このように構成した本発明の特徴によれば、湿式摩擦プレートは、複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、第１の微細溝および／または第２の微細溝が摩擦材における芯金の径方向に延びる側縁に開口して形成されているため、これらの微細溝が湿式摩擦プレートの回転時に回転方向の後側に位置した場合には摩擦材上の潤滑油をいち早く摩擦材上から流出させて引き摺りトルクを効果的に低減することができる。また、湿式摩擦プレートは、第１の微細溝および／または第２の微細溝が湿式摩擦プレートの回転時に回転方向の前側に位置した場合にはこれらの前方に存在する潤滑油の流れを乱しながら摩擦材上に流れ込ませることができるため湿式摩擦プレートとクラッチプレートとの離隔を促すことができる。

また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートにおいて、ラップ部は、摩擦材における芯金の径方向の長さに対して少なくとも１／４以上の長さを有することにある。

このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートは、ラップ部が摩擦材における芯金の径方向の幅に対して少なくとも１／４以上の長さを有しているため、ラップ部を１／４未満の長さで形成する場合に比べて引き摺りトルクを効果的に低減することができる。

また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートにおいて、第１の微細溝および第２の微細溝は、第１の微細溝の終端部と同終端部に隣接する第２の微細溝の芯金の周方向における間隔に対するラップ部の長さの比が１．５以上かつ４以下であることにある。

このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートは、第１の微細溝の終端部と同終端部に隣接する第２の微細溝の芯金の周方向における間隔に対するラップ部の長さの比が１．５以上かつ４以下となるように第１の微細溝と第２の微細溝とが形成されているため、本発明者らの実験によれば、前記比が１．５未満または４を超える場合に比べて引き摺りトルクを効果的に低減することができる。この効果は、第１の微細溝から溢れ出た潤滑油を第２の微細溝がラップ部を介して速やかに回収するためと考えられる。なお、第１の微細溝の終端部と同終端部に隣接する第２の微細溝の芯金の周方向における間隔は、第１の微細溝の終端部と同終端部に隣接する第２の微細溝とを芯金の周方向に直線または同心円の円弧で結んだ長さである。

削除

また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートにおいて、複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、同一の摩擦材上にて第１の微細溝が第２の微細溝よりも多く形成されていることにある。

このように構成した本発明の他の特徴によれば、複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、同一の摩擦材上にて第１の微細溝が第２の微細溝よりも多く形成されているため、湿式摩擦プレートの回転時に摩擦材の内周縁側の潤滑油を効果的に第１の微細溝内に導いて湿式摩擦プレートとクラッチプレートとの離隔を促すことができる。

また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートにおいて、同一の摩擦材上にて第２の微細溝が第１の微細溝の両側にそれぞれ形成されていることにある。

このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートは、複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、同一の摩擦材上にて第２の微細溝が第１の微細溝の両側にそれぞれ形成されているため、湿式摩擦プレートの２つの回転方向のどちらに回転している場合においても摩擦材上に導かれた潤滑油を効率的に径方向外側に流出させて引き摺りトルクを効果的に低減することができる。

また、本発明は、湿式摩擦プレートの発明として実施できるばかりでなく、この湿式摩擦プレートを用いた湿式多板クラッチ装置の発明としても実施できるものである。

具体的には、原動軸の回転駆動力を従動軸に伝達および遮断する湿式多板クラッチ装置において、請求項１ないし請求項５のうちのいずれか１つに記載した湿式摩擦プレートと、湿式摩擦プレートに対して相対的に押し付けられまたは離隔されて回転駆動力を伝達または遮断する平板環状のクラッチプレートとを備えるようにするとよい。これによれば、湿式多板クラッチ装置は、上記湿式摩擦プレートと同様の作用効果を期待することができる。

本発明の一実施形態に係る湿式摩擦プレートを備えた湿式多板クラッチ装置の全体構成を示す断面図である。 図１に示す湿式多板クラッチ装置内に組み込まれる本発明の一実施形態に係る湿式摩擦プレートの外観の概略を示す平面図である。 図２に示す湿式摩擦プレートの部分拡大図である。 図２に示す湿式摩擦プレートの図３とは異なる部分の部分拡大図である。 図２に示す湿式摩擦プレートが図示時計回りに回転駆動した場合における摩擦材上の潤滑油の流れを説明するための湿式摩擦プレートの部分拡大図である。 本発明に係る湿式摩擦プレートにおける第１の微細溝と第２の微細溝のラップ量と引き摺りトルクとの関係を明らかにするために、種々のラップ量ごとの引き摺りトルクを比較して示したグラフである。 図６に示す湿式摩擦プレート１の外観の概略を示す部分拡大平面図である。 図６に示す湿式摩擦プレート２の外観の概略を示す部分拡大平面図である。 図６に示す湿式摩擦プレート３の外観の概略を示す部分拡大平面図である。 図６に示す湿式摩擦プレート５の外観の概略を示す部分拡大平面図である。 本発明の変形例に係る湿式摩擦プレートの外観の概略を示す平面図である。

以下、本発明に係る湿式摩擦プレートおよび湿式多板クラッチ装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図１は、本発明に係る湿式摩擦プレート１１０を備えた湿式多板クラッチ装置１００の全体構成の概略を示す断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この湿式多板クラッチ装置１００は、四輪自動車における原動機であるエンジン（図示せず）の駆動力を被動体である車輪（図示せず）に伝達または遮断するための機械装置であり、同エンジンと車輪との間に配置される変速機（トランスミッション）（図示せず）内に設けられるものである。

（湿式多板クラッチ装置１００の構成）
湿式多板クラッチ装置１００は、原動機としてのエンジンに対して図示しないフライホイールを介して接続されるエンジン出力軸１０１上に設けられている。エンジン出力軸１０１は、エンジンの作動によって回転駆動する鋼製の軸体であり、湿式多板クラッチ装置１００内にてエンジンの回転駆動力を入力する入力軸として機能する。このエンジン出力軸１０１は、中空の筒状に形成されており、後述する作動油室１０８に対して作動油を供給または回収するための作動油通路１０１ａが形成されている。また、エンジン出力軸１０１の外周部には、ハウジング１０２が設けられている。なお、図１においては、エンジン出力軸１０１を二点鎖線で示している。

ハウジング１０２は、クラッチプレート１０３を保持してエンジン出力軸１０１と一体的に回転駆動する金属製の部品であり、主として、ボス部１０２ａ、フランジ部１０２ｂおよび保持部１０２ｃをそれぞれ備えて構成されている。ボス部１０２ａは、エンジン出力軸１０１に一体的に連結される部分であり、エンジン出力軸１０１の軸線方向に延びてエンジン出力軸１０１の外周面上に嵌合する円筒形に形成されている。このボス部１０２ａの外周部上には、クラッチピストン１０５が収容自在に嵌合しているとともにスプリング受け１０６が固定的に設けられている。また、ボス部１０２ａには、フランジ部１０２ｂとピストンとの間の部分に図示しない作動油が流通する作動油流通孔１０２ｄが形成されている。

フランジ部１０２ｂは、ボス部１０２ａに対して保持部１０２ｃを支持する部分であり、ボス部１０２ａの一方（図示右側）の端部の外周面上に径方向外側に延びる平板円環状に形成されている。保持部１０２ｃは、複数（本実施形態においては３枚）のクラッチプレート１０３およびエンドプレート１０４を保持する部分であり、エンジン出力軸１０１の軸線方向に延びる円筒状に形成されている。この保持部１０２ｃの内周部には、クラッチプレート１０３およびエンドプレート１０４の各外周部をスプライン嵌合させるための内歯状のスプラインが形成されている。これにより、保持部１０２ｃは、クラッチプレート１０３およびエンドプレート１０４をハウジング１０２の軸線方向に沿って変位可能、かつ同ハウジング１０２と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持する。

クラッチプレート１０３は、クラッチピストン１０５によって後述する湿式摩擦プレート１１０に押し付けられる平板環状の部品であり、ＳＰＣＣ（冷間圧延鋼板）材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。この場合、クラッチプレート１０３の外周部には、前記ハウジング１０２の保持部１０２ｃの内歯状のスプラインに嵌合する外歯状のスプラインが形成されている。このクラッチプレート１０３は、ハウジング１０２の保持部１０２ｃ内で湿式摩擦プレート１１０と交互に配置されている。

エンドプレート１０４は、クラッチピストン１０５によって押されるクラッチプレート１０３および湿式摩擦プレート１１０をそれぞれ受け止めるための部品であり、ＳＰＣＣ（冷間圧延鋼板）材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。この場合、エンドプレート１０４の外周部には、前記ハウジング１０２の保持部１０２ｃの内歯状のスプラインに嵌合する外歯状のスプラインが形成されている。このエンドプレート１０４は、ハウジング１０２の保持部１０２ｃの開口部側の端部に固定的に設けられたストッパリング１０４ａによって開口部側への移動が規制されている。

クラッチピストン１０５は、クラッチプレート１０３を押圧することでクラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０とを互いに強い力で密着させた圧接状態にするための金属製の部品であり、主として、摺動ボス部１０５ａ、フランジ部１０５ｂおよび押圧部１０５ｃをそれぞれ備えて構成されている。摺動ボス部１０５ａは、ハウジング１０２のボス部１０２ａの外周面上を軸線方向に沿って往復変位する円筒状の部分である。

フランジ部１０５ｂは、クラッチスプリング１０７の押圧力を受けるとともにハウジング１０２のフランジ部１０２ｂとの間に作動油室１０８を形成するための部分である。このフランジ部１０５ｂは、摺動ボス部１０５ａの一方（図示右側）の端部の外周面上に径方向外側にフランジ部１０２ｂと平行に延びる平板円環状に形成されている。

押圧部１０５ｃは、ハウジング１０２の保持部１０２ｃに保持されたクラッチプレート１０３を押圧する部分であり、フランジ部１０５ｂの径方向外側の先端部にクラッチプレート１０３側に突出する円環状に形成されている。

スプリング受け１０６は、クラッチスプリング１０７の一方（図示左側）の端部を受けるための部品であり、平板円環状の金属板の外周部分を図示左側に段付き状に屈曲させてクラッチスプリング１０７における前記一方の端部の内周部が嵌合するように構成した円環状に形成されている。このスプリング受け１０６は、ハウジング１０２のボス部１０２ａの一方（図示左側）の端部に固定的に設けられたストッパリング１０６ａによって前記一方側への移動が規制されている。

クラッチスプリング１０７は、クラッチピストン１０５をハウジング１０２のフランジ部１０２ｂ側に常に押圧するための部品であり、金属製のコイルスプリングによって構成されている。このクラッチスプリング１０７は、一方（図示左側）の端部が前記スプリング受け１０６を押圧するとともに他方（図示右側）の端部がクラッチピストン１０５のフランジ部１０５ｂを押圧している。

作動油室１０８は、クラッチピストン１０５をクラッチプレート１０３側に変位させるための油圧を発生させるための部分であり、互いに対向するフランジ部１０２ｂとフランジ部１０５ｂとの間に形成された円環状の空洞部である。この作動油室１０８には、運転者の運転操作に応じて作動する図示しない作動油給排機構によってエンジン出力軸１０１の作動油通路１０１ａ内に貯留されている作動油が前記作動油流通孔１０２ｄを介して流入または流出する。

湿式摩擦プレート１１０は、図２および図３にそれぞれ示すように、前記クラッチプレート１０３に押し付けられる平板環状の部品であり、主として、平板環状の芯金１１１上に摩擦材１１２および油溝１１５をそれぞれ備えて構成されている。芯金１１１は、湿式摩擦プレート１１０の基部となる部品であり、ＳＰＣＣ（冷間圧延鋼板）材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。この芯金１１１の内周部には、後述するプレートハブ１１６の外周部にスプライン嵌合する内歯状のスプライン１１１ａが形成されている。また、芯金１１１の２つの板面には、複数の小片状の摩擦材１１２が油溝１１５を介して放射状に設けられている。

各摩擦材１１２は、前記クラッチプレート１０３に対する摩擦力を向上させる部品であり、紙材を芯金１１１の周方向に沿って湾曲して延びる小片状に形成して構成されている。より具体的には、各摩擦材１１２は、芯金１１１の内周部に形成されたスプライン１１１ａに対向して同スプライン１１１ａの形成方向に沿って円弧状に延びる内周縁１１２ａと芯金１１１の外周縁に沿って平行に円弧状に延びる外周縁１１２ｂとこれらの内周縁１１２ａおよび外周縁１１２ｂの各両端部に直線状に延びる側縁１１２ｃ，１１２ｄの４つの辺を有して構成されている。

これらの各摩擦材１１２は、芯金１１１の周方向に沿って油溝１１５を介して並べられて図示しない接着剤によって貼り付けられている。本実施形態においては、湿式摩擦プレート１１０は、芯金１１１の２つの板面にそれぞれ２０個の摩擦材１１２が固着されている。

これらの各摩擦材１１２は、各摩擦材１１２ごとに第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４をそれぞれ備えている。第１の微細溝１１３は、各摩擦材１１２の内周縁１１２ａに開口する開口部１１３ａを有するとともに芯金１１１の径方向外側に直線状に延びて内周縁１１２ａと外周縁１１２ｂとの間に終端部１１３ｂを有する凹状の溝である。この第１の微細溝１１３は、０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下の溝幅に形成されている。本実施形態においては、第１の微細溝１１３は、溝幅Ｍ_１が０．６ｍｍに形成されるとともに深さが０．２ｍｍに形成されている。なお、本実施形態においては、各摩擦材１１２の厚さは、０．４ｍｍに形成されているが、この厚さは湿式多板クラッチ装置１００の仕様に応じて適宜決定されるものである。

第２の微細溝１１４は、各摩擦材１１２の外周縁１１２ｂに開口する開口部１１４ａを有するとともに芯金１１１の径方向内側に直線状に延びて内周縁１１２ａと外周縁１１２ｂとの間に終端部１１４ｂを有する凹状の溝である。この第２の微細溝１１４は、０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下の溝幅に形成されている。本実施形態においては、第２の微細溝１１４は、溝幅Ｍ_２が０．６ｍｍに形成されるとともに深さが０．２ｍｍに形成されている。

この第２の微細溝１１４は、各摩擦材１１２ごとに第１の微細溝１１３に隣接した位置に形成されて第１の微細溝１１３に対向している。すなわち、第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とは、互いに芯金１１１の径方向における同じ位置で周方向に互いに重なるラップ部１１３ｃ，１１４ｃをそれぞれ有している。この場合、ラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬは、摩擦材１１２における芯金１１１の径方向の長さＷに対して１／３の長さに形成されている。

また、第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とは、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐに対するラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬの比（Ｌ／Ｐ）が２．３７に設定されている。ここで、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐは、本実施形態においては、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４とを芯金１１１の周方向に直線で結んだ長さであるが両者間を同心円の円弧で結んだ長さであってもよい。

これらの第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、１つの摩擦材１１２に対して少なくとも１つずつ形成されている。本実施形態においては、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、１つの摩擦材１１２に対して２～３つずつ形成されている。この場合、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、１つの摩擦材１１２上において周方向に沿って交互に形成されている。

また、この場合、芯金１１１に設けられた複数の摩擦材１１２のうちの一部の摩擦材１１２は、図４に示すように、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４が摩擦材１１２の端部１１１ｃまたは端部１１１ｄにそれぞれ開口した状態で形成されている。これらの第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、金型の押圧によるプレス成形またはレーザ照射による除去加工によって摩擦材１１２上にそれぞれ形成される。

なお、摩擦材１１２は、湿式摩擦プレート１１０とクラッチプレート１０３との摩擦力を向上させることができる素材で構成されていれば、紙材以外の素材、例えば、コルク材、ゴム材またはガラス材などを用いることもできる。

油溝１１５は、湿式摩擦プレート１１０において径方向に潤滑油を流通させる部分であり、周方向に互いに隣接配置された２つの摩擦材１１２間に径方向に延びる溝状の隙間として形成されている。すなわち、油溝１１５は、芯金１１１上に放射状に形成されている。これらの各油溝１１５は、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４の各溝幅Ｍ_１，Ｍ_２よりも十分に広い溝幅、具体的には、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４の各溝幅Ｍ_１，Ｍ_２の２倍以上かつ１０倍以下に形成されている。本実施形態においては、各油溝１１５の溝幅は、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４の各溝幅Ｍ_１，Ｍ_２の３倍に形成されている。

このように構成された湿式摩擦プレート１１０は、ハウジング１０２の保持部１０２ｃに保持された複数のクラッチプレート１０３の間およびこのクラッチプレート１０３とエンドプレート１０４との間にそれぞれ配置されてプレートハブ１１６に保持されている。本実施形態においては、３つの湿式摩擦プレート１１０がプレートハブ１１６に保持されている。

プレートハブ１１６は、複数（本実施形態においては３枚）の湿式摩擦プレート１１０を保持する部分であり、エンジン出力軸１０１の軸線方向に延びる円筒状に形成されている。このプレートハブ１１６は、一方（図示右側）の外周部に湿式摩擦プレート１１０の内周部をスプライン嵌合させるための外歯状のスプラインが形成されている。これにより、プレートハブ１１６は、湿式摩擦プレート１１０をプレートハブ１１６の軸線方向に沿って変位可能、かつ同プレートハブ１１６と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持する。一方、プレートハブ１１６の他方（図示左側）の外周部には、プレートハブ１１６の回転駆動力を被動体である車輪側に伝達するための外歯車が形成されている。

また、このプレートハブ１１６の内部には、所定量の潤滑油（図示しない）が充填されている。この潤滑油は、クラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０との間に供給されてこれらのクラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０との間で生じる摩擦熱の吸収や摩擦材１１２の摩耗を防止する。

（湿式多板クラッチ装置１００の作動）
次に、上記のように構成した湿式多板クラッチ装置１００の作動について説明する。この湿式多板クラッチ装置１００は、車両におけるエンジンと変速機との間に配置されるものであり、車両の運転者による運転操作に応じてエンジンの駆動力の変速機への伝達および遮断を行なう。

すなわち、湿式多板クラッチ装置１００は、車両の運転者（図示せず）による走行開始の操作によって作動油室１０８内に作動油が供給されることでクラッチピストン１０５がクラッチプレート１０３を押圧してクラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０とを圧接させる。これにより、湿式多板クラッチ装置１００は、エンジンによって回転駆動するハウジング１０２の回転駆動力を被動体側に連結されたプレートハブ１１６に伝達する。

一方、湿式多板クラッチ装置１００は、車両の運転者（図示せず）による走行停止の操作によって作動油室１０８内の作動油がエンジン出力軸１０１内に回収されることでクラッチピストン１０５によるクラッチプレート１０３の押圧状態が解消されてクラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０とが離隔する。これにより、湿式多板クラッチ装置１００は、エンジンによって回転駆動するハウジング１０２と被動体側に連結されたプレートハブ１１６との間の回転駆動力の伝達状態が解消される。

このクラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０とが離隔した状態においては、クラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０との直接的な摩擦接触が解消される一方で、クラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０との間に存在する潤滑油によって両者は間接的に接続された状態となる。より具体的には、主として、湿式摩擦プレート１１０における摩擦材１１２に接する潤滑油が粘性抵抗によって同摩擦材１１２に引き摺られるため、この引き摺られた潤滑油に接したクラッチプレート１０３が潤滑油の粘性抵抗によって引き摺られて回転速度が低下する。

この場合、摩擦材１１２における第１の微細溝１１３には、図５に示すように、湿式摩擦プレート１１０の内側部分に存在する潤滑油の一部が開口部１１３ａから流れ込んで終端部１１３ｂ付近から摩擦材１１２上に流出する（図５における破線矢印参照）。また、摩擦材１１２上には、湿式摩擦プレート１１０の回転方向（図５における破線矢印参照）の前方側に位置する内周縁１１２ａおよび側縁１１２ｃ（または側縁１１２ｄ）のほかに、この回転方向の前方側に位置する油溝１１５内を流通する潤滑油の一部が摩擦材１１２上に乗り上げて流入する（図５における破線矢印参照）。

この場合、複数の摩擦材１１２のうちの第１の微細溝１１３または第２の微細溝１１４が側縁１１２ｃに開口した摩擦材１１２においては、側縁１１２ｃが段状に形成されているため、側縁１１２ｃが湿式摩擦プレート１１０の回転時に回転方向の前側に位置した場合に油溝１１５内の潤滑油の流れを乱しながら摩擦材１１２上に流れ込ませる。また、これらの場合、摩擦材１１２上に流入した潤滑油には、気泡も含まれている。

そして、摩擦材１１２上に流入したこれらの潤滑油は、摩擦材１１２上を湿式摩擦プレート１１０の回転方向の後方かつ径方向外側に向かって流れるとともに、その一部が第２の微細溝１１４内に流入して第２の微細溝１１４の終端部１１４ｂを介して摩擦材１１２上から排出される。これにより、湿式摩擦プレート１１０は、クラッチプレート１０３と湿式摩擦プレート１１０との離隔が促進されて潤滑油を介した間接的な摩擦接触状態が緩和されることで伝達されるトルク、すなわち、引き摺りトルクが減少すると考えられる。

また、摩擦材１１２上に流入した潤滑油のうちの第２の微細溝１１４を介して摩擦材１１２上から排出される潤滑油以外の他の潤滑油は、摩擦材１１２の周縁部から摩擦材１１２の外に流出する。この場合、複数の摩擦材１１２のうちの第１の微細溝１１３または第２の微細溝１１４が側縁１１２ｄに開口した摩擦材１１２においては、側縁１１２ｄが段状に形成されているため、側縁１１２ｄが湿式摩擦プレート１１０の回転時に回転方向の後側に位置した場合に摩擦材１１２上の潤滑油をいち早く摩擦材１１２上から流出させることができる。これによっても、湿式摩擦プレート１１０は、引き摺りトルクを減少させることができる。

ここで、本発明者らによる実験結果について説明しておく。図６は、第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とのラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬごとの引き摺りトルクの大きさをそれぞれ示したグラフである。なお、図６において、縦軸のトルク値の値自体は、本発明の優位性の立証には不要であるため省略している。

本発明者らは、第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とのラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬが異なる５つの湿式摩擦プレート１～５をそれぞれ用意した。この場合湿式摩擦プレート１～５における摩擦材１１２の総面積は湿式摩擦プレート１～５間で略同一である。湿式摩擦プレート１は、図７に示すように、第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とがラップ部１１３ｃ，１１４ｃを有さず互いにラップしない構成の湿式摩擦プレートである。

湿式摩擦プレート２は、図８に示すように、ラップ部１１３ｃ，１１４ｃが摩擦材１１２における芯金１１１の径方向の長さＷに対して１／６の長さに形成されている。また、湿式摩擦プレート２は、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐに対するラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬの比（Ｌ／Ｐ）が１．４６に設定されている。

湿式摩擦プレート３は、図９に示すように、ラップ部１１３ｃ，１１４ｃが摩擦材１１２における芯金１１１の径方向の長さＷに対して１／４の長さに形成されている。また、湿式摩擦プレート３は、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐに対するラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬの比（Ｌ／Ｐ）が１．９９に設定されている。

湿式摩擦プレート４は、図２ないし図５にそれぞれ示すように、ラップ部１１３ｃ，１１４ｃが摩擦材１１２における芯金１１１の径方向の長さＷに対して１／３の長さに形成されている。また、湿式摩擦プレート４は、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐに対するラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬの比（Ｌ／Ｐ）が２．３７に設定されている。すなわち、湿式摩擦プレート４は、本実施形態に係る湿式摩擦プレート１１０と同じ構成である。

また、湿式摩擦プレート５は、図１０に示すように、ラップ部１１３ｃ，１１４ｃが摩擦材１１２における芯金１１１の径方向の長さＷに対して１／２の長さに形成されている。また、湿式摩擦プレート５は、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐに対するラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬの比（Ｌ／Ｐ）が３．０５に設定されている。

図６に示す実験結果によれば、本発明に係る湿式摩擦プレート２～５は、車両の走行時において最も多用される１５００ｒｐｍ～２０００ｒｐｍの回転数の範囲において引き摺りトルクを効果的に低減できる。特に、本発明に係る湿式摩擦プレート３～５においては、引き摺りトルクの低減効果が著しい。具体的には、湿式摩擦プレート３は、１５００ｒｐｍにおいて湿式摩擦プレート１に対して引き摺りトルクを約５０％低減することができる。また、湿式摩擦プレート４は、１５００ｒｐｍにおいて湿式摩擦プレート１に対して引き摺りトルクを約６８％低減することができる。湿式摩擦プレート５は、１５００ｒｐｍにおいて湿式摩擦プレート１に対して引き摺りトルクを約５７％低減することができる。すなわち、本発明に係る湿式摩擦プレート２～５は、湿式摩擦プレート１に対して引き摺りトルクの低減効果が認められるとともに、特に本発明に係る湿式摩擦プレート３～５については本発明に係る湿式摩擦プレート２と比較しても更に引き摺りトルクの低減効果が認められる。

上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、湿式多板クラッチ装置１００は、摩擦材１１２における内周縁１１２ａから外周縁１１２ｂ側に延びる第１の微細溝１１３と摩擦材１１２における外周縁１１２ｂから内周縁１１２ａ側に延びる第２の微細溝１１４とが互いに隣接配置されるとともに各溝の溝幅Ｍ_１，Ｍ_２がそれぞれ０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下に形成されることで摩擦材１１２の面積の減少を抑えながら引き摺りトルクを低減することができる。

さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態における湿式摩擦プレート１１０と同様の構成部分には湿式摩擦プレート１１０に付した符号に対応する符号を付して、その説明は省略する。

例えば、上記実施形態においては、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４の各溝幅Ｍ_１，Ｍ_２を０．６ｍｍに形成した。しかし、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４の各溝幅Ｍ_１，Ｍ_２は、０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下に形成されていればよい。また、この場合、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、互いに同じ溝幅に形成してもよいし、互いに異なる溝幅に形成することもできる。

また、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４の各深さを０．２ｍｍに形成した。しかし、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４の各深さを０．２ｍｍよりも浅くまたは深く形成することもできる。また、この場合、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、互いに同じ深さに形成してもよいし、互いに異なる深さに形成することもできる。また、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、各溝の底部に摩擦材１１２を残して形成してもよいが、各溝の底部に摩擦材１１２を残さず芯金１１１が露出するように切り欠いて形成することもできる。

また、上記実施形態においては、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、芯金１１１の径方向にそれぞれ放射状に形成した。しかし、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、芯金１１１の径方向の内側から外側に向かって延びて形成されていればよい。したがって、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、互いに平行に形成することもできる。

また、上記実施形態においては、湿式摩擦プレート１１０は、ラップ部１１３ｃ，１１４ｃが摩擦材１１２における芯金１１１の径方向の長さＷに対して１／３の長さに形成されている。しかし、湿式摩擦プレート１１０は、ラップ部１１３ｃ，１１４ｃが摩擦材１１２における芯金１１１の径方向の長さＷに対して少なくとも１／６の長さに形成されていればよく、より好ましくは長さＷに対して少なくとも１／４の長さに形成されていればよい。

また、上記実施形態においては、第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とは、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐに対するラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さＬの比（Ｌ／Ｐ）が２．３７に設定されている。しかし、本発明者らによる上記実験結果を踏まえれば、第１の微細溝１１３の終端部１１３ｂと同終端部１１３ｂに隣接する第２の微細溝１１４の芯金１１１の周方向における間隔Ｐに対するラップ部１１３ｃ，１１４ｃの長さの比が１．５以上かつ４以下となるように第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とを形成することで引き摺りトルクを効果的に低減することができる。なお、第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４は、前記比が１．５未満または４を超えて形成することを否定するものでない。

また、上記実施形態においては、摩擦材１１２は、一部の摩擦材１１２において第１の微細溝１１３または第２の微細溝１１４が側縁１１２ｃまたは側縁１１２ｄにそれぞれ開口するように形成した。しかし、摩擦材１１２は、すべての摩擦材１１２において、第１の微細溝１１３または第２の微細溝１１４が側縁１１２ｃまたは側縁１１２ｄにそれぞれ開口するように形成することができる。また、摩擦材１１２は、すべての摩擦材１１２において第１の微細溝１１３および第２の微細溝１１４が側縁１１２ｃおよび側縁１１２ｄに開口しないように形成することもできる。

また、上記実施形態においては、摩擦材１１２は、一部の摩擦材１１２において第１の微細溝１１３の数を第２の微細溝１１４の数よりもが多く形成した。これにより、湿式摩擦プレート１１０は、湿式摩擦プレート１１０の回転時に摩擦材１１２の内周縁１１２ａ側の潤滑油を効果的に第１の微細溝１１３内に導いて湿式摩擦プレート１１０とクラッチプレート１０３との離隔を促すことができる。しかし、摩擦材１１２は、第１の微細溝１１３を第２の微細溝１１４と同数で形成してもよいし、第１の微細溝１１３の数を第２の微細溝１１４の数よりも少なく形成することもできる。

また、上記実施形態においては、摩擦材１１２は、同一の摩擦材１１２上にて第２の微細溝１１４が第１の微細溝１１３に対して芯金１１１の径方向の両側にそれぞれ形成されている。これにより、湿式摩擦プレート１１０は、湿式摩擦プレート１１０の２つの回転方向（図示時計回りおよび反時計周り）のどちらに回転している場合においても摩擦材１１２上に導かれた潤滑油を効率的に径方向外側に流出させて引き摺りトルクを効果的に低減することができる。しかし、摩擦材１１２は、すべての摩擦材１１２のうちの一部の摩擦材１１２にのみにおいて同一の摩擦材１１２上にて第２の微細溝１１４が第１の微細溝１１３に対して芯金１１１の径方向の両側にそれぞれ形成されていてもよい。また、摩擦材１１２は、同一の摩擦材１１２上おいて第１の微細溝１１３と第２の微細溝１１４とをそれぞれ一つずつ設けて構成することもできる。

また、上記実施形態においては、油溝１１５は、芯金１１１の径方向内側から外側に亘って一定の溝幅に形成した。しかし、油溝１１５は、例えば、図１１に示すように、芯金１１１の径方向外側部分において溝幅が広がるように形成することもできる。また、油溝１１５は、芯金１１１の径方向内側部分において溝幅が広がるように形成することもできる。

また、上記実施形態においては、本発明に係る湿式摩擦プレートを４輪自動車の湿式多板クラッチ装置１００に用いられる湿式摩擦プレート１１０に適用した例について説明した。しかし、本発明に係る湿式摩擦プレートは、油中で使用される湿式摩擦プレートであればよい。したがって、本発明に係る湿式摩擦プレートは、例えば、２輪または３輪の自動車の湿式多板クラッチ装置に用いてもよい。また、本発明に係る湿式摩擦プレートは、湿式多板クラッチ装置１００ほかに、原動機による回転運動を制動するブレーキ装置に用いられる摩擦プレートにも適用できるものである。

Ｗ…摩擦材の径方向の長さ、Ｐ…第１の微細溝に対する第２の微細溝の芯金の周方向における間隔、Ｍ_１…第１の微細溝の溝幅、Ｍ_２…第２の微細溝の溝幅、Ｌ…第１の微細溝と第２の微細溝とのラップ量、
１００…湿式多板クラッチ装置、１０１…エンジン出力軸、１０１ａ…作動油通路、１０２…ハウジング、１０２ａ…ボス部、１０２ｂ…フランジ部、１０２ｃ…保持部、１０２ｄ…作動油流通孔、１０３…クラッチプレート、１０４…エンドプレート、１０４ａ…ストッパリング、１０５…クラッチピストン、１０５ａ…摺動ボス部、１０５ｂ…フランジ部、１０５ｃ…押圧部、１０６…スプリング受け、１０６ａ…ストッパリング、１０７…クラッチスプリング、１０８…作動油室、
１１０…湿式摩擦プレート、１１１…芯金、１１１ａ…スプライン、１１２…摩擦材、１１２ａ…内周縁、１１２ｂ…外周縁、１１２ｃ，１１２ｄ…側縁、１１３…第１の微細溝、１１３ａ…開口部、１１３ｂ…終端部、１１３ｃ…ラップ部、１１４…第２の微細溝、１１４ａ…開口部、１１４ｂ…終端部、１１４ｃ…ラップ部、１１５…油溝、１１６…プレートハブ。

Claims (6)

1. 平板環状に形成した芯金の表面に周方向に沿って複数の摩擦材を隙間を介して配置したクラッチ摩擦板において、
   前記摩擦材は、
   ０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下の溝幅に形成されて前記摩擦材の内周縁に開口して外周縁側に延びるとともに前記内周縁と前記外周縁との間に終端部を有する第１の微細溝と、
   ０．１ｍｍ以上かつ０．８ｍｍ以下の溝幅に形成されて前記外周縁に開口して前記内周縁側に延びるとともに前記外周縁と前記内周縁との間に終端部を有する第２の微細溝とを有し、
   前記第１の微細溝および前記第２の微細溝は、
   同一の前記摩擦材上にて少なくとも１つずつの前記第１の微細溝と前記第２の微細溝とが互いに隣接する位置に形成されるとともに前記芯金の径方向における同じ位置で周方向に重なるラップ部を有し、
   前記複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、
   前記第１の微細溝および前記第２の微細溝のうちの少なくとも一方が前記摩擦材における前記芯金の径方向に延びる端部に開口して形成されていることを特徴とする湿式摩擦プレート。
2. 請求項１に記載した湿式摩擦プレートにおいて、
   前記ラップ部は、
   前記摩擦材における前記芯金の径方向の長さに対して少なくとも１／４以上の長さを有することを特徴とする湿式摩擦プレート。
3. 請求項１または請求項２に記載した湿式摩擦プレートにおいて、
   前記第１の微細溝および前記第２の微細溝は、
   前記第１の微細溝の終端部と同終端部に隣接する前記第２の微細溝の前記芯金の周方向における間隔に対する前記ラップ部の長さの比が１．５以上かつ４以下であることを特徴とする湿式摩擦プレート。
4. 請求項１ないし請求項３のうちのいずれか１つに記載した湿式摩擦プレートにおいて、
   前記複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、
   同一の前記摩擦材上にて前記第１の微細溝が前記第２の微細溝よりも多く形成されていることを特徴とする湿式摩擦プレート。
5. 請求項１ないし請求項４のうちのいずれか１つに記載した湿式摩擦プレートにおいて、
   前記複数の摩擦材のうちの少なくとも１つは、
   同一の前記摩擦材上にて前記第２の微細溝が前記第１の微細溝の両側にそれぞれ形成されていることを特徴とする湿式摩擦プレート。
6. 原動軸の回転駆動力を従動軸に伝達および遮断する湿式多板クラッチ装置において、
   請求項１ないし請求項５のうちのいずれか１つに記載した湿式摩擦プレートと、
   前記湿式摩擦プレートに対して相対的に押し付けられまたは離隔されて前記回転駆動力を伝達または遮断する平板環状のクラッチプレートとを備えることを特徴とする湿式多板クラッチ装置。
   

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