JP2010185557A - 車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置 - Google Patents

車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置 Download PDF

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Abstract

【課題】摩擦係合要素において回転抵抗を低減することと作動油の排出性を向上することとを両立させる。
【解決手段】摩擦材(セグメント部材32b1)にはコアプレート32aとの接着面において外周面側と内周側とを貫通するように径方向に第1固着面溝80が成形されていると共に第1固着面溝80と間隙82aとを連通するように円周方向に第2固着面溝84が成形されているので、間隙82aを流れる作動油の一部は第2固着面溝84及び第1固着面溝80を通って外周側へ流される。これにより、作動油の排出性が一層向上させられる。また、円周方向にて間隙82aの壁面(セグメント部材32b1の側面)に当たる作動油の量が低減されて攪拌抵抗が低下させられたり、間隙82aから溢れた作動油がセグメント部材32b1表面へ流れる量が低減されて粘性抵抗が低下させられる。また、このことは燃費を向上させることにも繋がる。
【選択図】図7

Description

本発明は、作動油の作用により摩擦係合要素が押圧されることで係合させられる車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置に係り、特に、潤滑や冷却の為に摩擦係合要素へ供給される作動油の排出性を向上する技術に関するものである。
車両用自動変速機内に配設される摩擦係合要素が作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)の作用により油圧アクチュエータを介して押圧されることで係合させられる湿式摩擦係合装置が知られている。例えば、湿式摩擦係合装置の1つである湿式多板クラッチの摩擦係合要素は、複数枚の円板状のセパレートプレートと、その各セパレートプレートの間に介在させられる複数枚の円板状の摩擦プレートとで構成されている。また、この摩擦プレートは、例えばコアプレートと、セパレートプレートに対向する位置においてコアプレートに接着された摩擦材とで構成されている。このように構成された摩擦係合要素は、一般的に、潤滑や冷却の為に車両用自動変速機の軸心側(摩擦係合要素の内周側)から外周側に向かって遠心力により作動油が供給される。
ところで、湿式摩擦係合装置(摩擦係合要素)の空転時に発生するセパレートプレートと摩擦材との接触抵抗を低減する為に摩擦材の表面(セパレートプレートと接触する接触面)に油膜を形成させると、特に作動油量が多いときには作動油の排出性能が低下して粘性抵抗が増大する可能性がある。これに対して、油膜を形成しつつ作動油の排出性を向上させる為に、摩擦材表面に径方向(遠心方向、排出方向)に沿って溝を形成することが考えられる。また、特許文献1には、摩擦材の冷却性向上という観点ではあるが、コアプレートに放射状に貫通溝を設け、その溝に作動油を通す構成が記載されている。更に作動油の排出性を向上させる為に、例えば特許文献2に示されているように環状の摩擦材をセグメント形状として、各セグメント部材の間を作動油を排出する溝とすること(見方を換えれば、溝を深くすること)が考えられる。
特開2005−214309号公報 特開2007−263203号公報 特開2000−329212号公報
しかしながら、上述したように摩擦材をセグメント形状とすることで、作動油が円周方向にて溝の壁面(すなわちセグメント形状とされた摩擦材の円周方向における側面)に当たって攪拌抵抗を増大させたり、溝から溢れた作動油が摩擦材表面へ流れることによって粘性抵抗を増大させる可能性がある。この様に、湿式摩擦係合装置では、摩擦材におけるエネルギ損失の主要因となる接触抵抗、攪拌抵抗、粘性抵抗等の回転抵抗を低減することと、作動油の排出性を向上することとを両立させることは困難である。尚、上述したような課題は未公知であり、燃費向上の観点からも、回転抵抗を低減することと作動油の排出性を向上することとを両立させることが望まれる。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、摩擦係合要素において回転抵抗を低減することと作動油の排出性を向上することとを両立させることができる車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 複数枚の円板状のセパレートプレートと、コアプレート及びそのセパレートプレートに対向する位置においてそのコアプレートに固着された摩擦材を有して前記複数枚のセパレートプレートの間に介在させられている複数枚の円板状の摩擦プレートとで構成されている摩擦係合要素を備え、作動油の作用により油圧アクチュエータを介して前記摩擦係合要素が押圧されることで係合させられると共に、軸心側から外周側に向かって遠心力により作動油が前記摩擦係合要素へ供給される車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置であって、(b) 前記摩擦材は、前記コアプレートに固着させられる面において外周面側が少なくとも開口するように径方向に形成された第1固着面溝と、前記第1固着面溝とは円周方向に異なる位置において前記セパレートプレートに係合させられる面側が少なくとも開口するように径方向に形成された凹部溝と、前記コアプレートに固着させられる面において前記第1固着面溝と前記凹部溝とを連通するように円周方向に形成された第2固着面溝とを備えることにある。
このようにすれば、前記摩擦材には前記第1固着面溝とは円周方向に異なる位置において前記セパレートプレートに係合させられる面側が少なくとも開口するように径方向に凹部溝が形成されているので、作動油が凹部溝を通って外周側へ流されて作動油の排出性が向上させられる。また、前記摩擦材には前記コアプレートに固着させられる面において外周面側が少なくとも開口するように径方向に第1固着面溝が形成されていると共に前記第1固着面溝と前記凹部溝とを連通するように円周方向に第2固着面溝が形成されているので、凹部溝を流れる作動油の一部は第2固着面溝及び第1固着面溝を通って外周側へ流される。これにより、作動油の排出性が一層向上させられる。また、円周方向にて凹部溝の壁面に当たる作動油の量が低減されて攪拌抵抗が低下させられたり、凹部溝から溢れた作動油が摩擦材表面(セパレートプレートに係合させられる面)へ流れる量が低減されて粘性抵抗が低下させられる。従って、摩擦係合要素において回転抵抗を低減することと作動油の排出性を向上することとを両立させることができる車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置が提供される。また、このことは燃費を向上させることにも繋がる。また、上記別の観点では、前記第1固着面溝及び第2固着面溝は摩擦材表面でなくコアプレートとの固着面側に形成されているので、摩擦材表面の面積を変更(減少)することなく作動油の排出性を向上させられる。更に、摩擦材表面の面積が減少させられないので、係合作動時の単位面積当たりの面圧が上昇して摩擦材自体の耐久性が低下してしまうということが抑制される。
ここで、好適には、前記摩擦材は、複数のセグメント部材が円周方向に配置されたセグメント式の摩擦材であり、前記第1固着面溝及び前記第2固着面溝は、前記セグメント部材に形成された溝であり、前記凹部溝は、相互に隣接する前記セグメント部材間に形成された間隙である。このようにすれば、摩擦材表面の面積を変更(減少)することなく凹部溝が可及的に深くされるので、作動油の排出性が一層向上させられる。
また、前記目的を達成するための別の発明の要旨とするところは、(a) 複数枚の円板状のセパレートプレート、及びコアプレートと前記セパレートプレートに対向する位置においてそのコアプレートに固着された摩擦材とを有して前記複数枚のセパレートプレートの間に介在させられている複数枚の円板状の摩擦プレートで構成されている摩擦係合要素を備え、作動油の作用により油圧アクチュエータを介して前記摩擦係合要素が押圧されることで係合させられると共に、軸心側から外周側に向かって遠心力により作動油が前記摩擦係合要素へ供給される車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置であって、(b) 前記摩擦材は、複数のセグメント部材が円周方向に配置されると共に、相互に隣接するそのセグメント部材間に間隙が形成されたセグメント式の摩擦材であり、(c) 前記コアプレートは、前記摩擦材が固着させられる位置において外周面側が少なくとも開口するように径方向に形成された第1固着面溝と、前記摩擦材が固着させられる位置において前記第1固着面溝と前記間隙とを連通するように円周方向に形成された第2固着面溝とを備えることにある。このようにすれば、前記摩擦材には円周方向に配置された相互に隣接するセグメント部材間に間隙が形成されるので、作動油が間隙を通って外周側へ流されて摩擦材表面の面積を変更(減少)することなく作動油の排出性が一層向上させられる。また、前記コアプレートには前記摩擦材が固着させられる位置において外周面側が少なくとも開口するように径方向に第1固着面溝が形成されていると共に前記第1固着面溝と前記間隙とを連通するように円周方向に第2固着面溝が形成されているので、間隙を流れる作動油の一部は第2固着面溝及び第1固着面溝を通って外周側へ流される。これにより、作動油の排出性が一層向上させられる。また、円周方向にて間隙の壁面(すなわちセグメント形状とされた摩擦材の円周方向における側面)に当たる作動油の量が低減されて攪拌抵抗が低下させられたり、間隙から溢れた作動油が摩擦材表面(セパレートプレートに係合させられる面)へ流れる量が低減されて粘性抵抗が低下させられる。従って、摩擦係合要素において回転抵抗を低減することと作動油の排出性を向上することとを両立させることができる車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置が提供される。また、このことは燃費を向上させることにも繋がる。また、上記別の観点では、前記第1固着面溝及び第2固着面溝は摩擦材でなくコアプレートに形成されているので、摩擦材表面の面積を変更(減少)することなく作動油の排出性を向上させられると共に、摩擦材自体の耐久性低下が抑制される。更に、摩擦材表面の面積が減少させられないので、係合作動時の単位面積当たりの面圧が上昇して摩擦材自体の耐久性が低下してしまうということが抑制される。
また、好適には、前記第1固着面溝及び前記第2固着面溝の少なくとも一方の溝は、前記セグメント部材毎に対応する複数の溝が形成されている。このようにすれば、例えば1本の溝と複数の溝とで作動油の流通容量を同じだけ確保する場合、複数の溝では1本の溝に比べて係合時の応力集中を分散することができる。従って、摩擦材自体の耐久性低下が一層抑制される。
また、好適には、前記第1固着面溝は、前記外周面側への方向が前記摩擦プレートの回転方向に対向するように形成されている。このようにすれば、摩擦プレートの回転方向が決まっている場合、摩擦プレートの回転方向と作動油が流れる方向との相対関係から、作動油が第1固着面溝を抜けやすくなる(すなわち流れやすくなる)ので、作動油の排出性が一層向上させられる。
また、好適には、前記第1固着面溝は、前記外周面側と内周面側とを貫通するように形成されている。このようにすれば、作動油が直接的に第1固着面溝を通って外周側へ流されるので、作動油の排出性が一層向上させられる。また、この第1固着面溝が前記外周面側への方向が前記摩擦プレートの回転方向に対向するように形成されていると、摩擦プレートの回転方向が決まっている場合、摩擦プレートの回転方向と作動油が流れる方向との相対関係から、作動油がこの第1固着面溝へ入りやすく且つ第1固着面溝を抜けやすくなるので、作動油の排出性が一層向上させられる。また、第1固着面溝を通る外周側への作動油の流れによって、第2固着面溝を経由して第1固着面溝に流れ込む作動油に対する吸い込み効果が生じるので、作動油の排出性が一層向上させられる。
また、好適には、前記第1固着面溝は、前記内周面側から前記外周面側へ向かう程前記作動油の流路が細くなるノズル形状となる溝が形成されている。このようにすれば、作動油の流路が細くなるノズル形状(絞り)によって、直接的に第1固着面溝を通って外周側へ流される作動油(すなわち直接的に第1固着面溝に流れ込む作動油)に対する第1固着面溝への引き込み効果が生じるので、作動油の排出性が一層向上させられる。つまり、第1固着面溝を通って外周側へ流される作動油の流速が上がるので、作動油の排出性が一層向上させられる。
また、好適には、前記第2固着面溝は、前記摩擦プレートの回転方向に対向する側のみが開口するように形成されている。このようにすれば、摩擦プレートの回転方向が決まっている場合、摩擦プレートの回転方向と作動油が流れる方向との相対関係から、摩擦プレートの回転方向に対向する側に形成された第2固着面溝の開口から流れ込む作動油の一部が第1固着面溝を横切って反対側へ抜けてしまうことなく第1固着面溝を通って外周側へ流されるので、作動油の排出性が一層向上させられる。また、第2固着面溝の開口から流れ込む作動油の一部が第1固着面溝を横切って再び間隙(凹部溝)へ流れ込むことが避けられるので、回転抵抗の増大が回避される。
また、好適には、前記車両用自動変速機は、複数組の遊星歯車装置の回転要素が前記湿式摩擦係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段(変速段)が択一的に達成される例えば前進4段、前進5段、前進6段、更にはそれ以上の変速段を有する等の種々の遊星歯車式多段変速機により構成される。この遊星歯車式多段変速機における湿式摩擦係合装置としては、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ等の油圧式摩擦係合装置が広く用いられる。この油圧式摩擦係合装置を係合させるための作動油を供給するオイルポンプは、例えば走行用の駆動力源により駆動されて作動油を吐出するものでも良いが、駆動力源とは別に配設された専用の電動モータなどで駆動されるものでも良い。
また、好適には、上記油圧式摩擦係合装置を含む油圧制御回路は、例えばリニアソレノイドバルブの出力油圧を直接油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)にそれぞれ供給することが応答性の点で望ましいが、そのリニアソレノイドバルブの出力油圧をパイロット油圧として用いることによりシフトコントロールバルブを制御して、そのコントロールバルブから油圧アクチュエータに作動油を供給するように構成することもできる。
また、好適には、上記リニアソレノイドバルブは、例えば複数の油圧式摩擦係合装置の各々に対応して1つずつ設けられるが、同時に係合したり係合、解放制御したりすることがない複数の油圧式摩擦係合装置が存在する場合には、それ等に共通のリニアソレノイドバルブを設けることもできるなど、種々の態様が可能である。また、必ずしも全ての油圧式摩擦係合装置の油圧制御をリニアソレノイドバルブで行う必要はなく、一部乃至全ての油圧制御をON−OFFソレノイドバルブのデューティ制御など、リニアソレノイドバルブ以外の調圧手段で行っても良い。
また、好適には、前記駆動力源としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジンが広く用いられる。さらに、補助的な走行用動力源として、電動機等がこのエンジンに加えて用いられても良い。或いは、走行用駆動力源として電動機のみが用いられても良い。
尚、この明細書で「油圧を供給する」という場合は、「油圧を作用させ」或いは「その油圧に制御された作動油を供給する」ことを意味する。
本発明が適用された湿式摩擦係合装置を含む車両用自動変速機10の一部を示す要部断面図である。 図1の車両用自動変速機内に配置された湿式摩擦係合装置が備える摩擦係合要素の部分拡大図である。 軸心方向から見た摩擦プレートの一例を示す正面図である。 図3の摩擦プレートの部分拡大斜視図である。 摩擦材の別の実施例を示す摩擦プレートの部分拡大斜視図である。 第1固着面溝の別の実施例を示す摩擦材の部分拡大正面図である。 セグメント形状の摩擦材の別の実施例を示す摩擦プレートの部分拡大斜視図である。 第1固着面溝及び第2固着面溝の別の実施例を示す摩擦材の部分拡大正面図である。 第1固着面溝及び第2固着面溝の別の実施例を示すセグメント部材の部分拡大正面図である。 摩擦プレートの別の実施例を示す部分拡大斜視図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された湿式摩擦係合装置を含む車両用自動変速機10の一部を示す要部断面図である。また、図2は、図1の車両用自動変速機10内に配置された湿式摩擦係合装置が備える摩擦係合要素の部分拡大図である。尚、車両用自動変速機10は軸心Cに対して略対称であるため下側半分が省略されている。図1に示されるように、自動変速機10は、トランスミッションケース12(以下、ケース12と表す)内にベアリングを介してケース12に対して相対回転可能に支持され軸心Cを中心に回転駆動する入力軸14、その入力軸14に複数のブッシュを介して相対回転可能に支持されているシングルピニオン型の第1遊星歯車装置16及びダブルピニオン型の第2遊星歯車装置18が配置されている。尚、第1遊星歯車装置16及び第2遊星歯車装置18は、互いのキャリヤCAが共通の部材で構成されると共に、互いのリングギヤRが共通の部材で構成されており、且つ第1遊星歯車装置16のピニオンギヤが第2遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ式の遊星歯車列とされている。
また、入力軸14と第1遊星歯車装置16との間には、入力軸14の回転を第1遊星歯車装置16のサンギヤS1に選択的に伝達する第1クラッチC1、及び入力軸14の回転を共用化された第1遊星歯車装置16及び第2遊星歯車装置18のリングギヤRに選択的に伝達する第2クラッチC2が配置されている。また、第1遊星歯車装置16及び第2遊星歯車装置18の径方向外側には、第1遊星歯車装置16及び第2遊星歯車装置18のリングギヤRの回転を選択的に回転停止させるブレーキBが配置され、そのブレーキBに並列に一方向の回転を阻止するワンウェイクラッチ54が配置されている。第1クラッチC1、第2クラッチC2、及びブレーキBは、何れも本発明が適用され得る湿式摩擦係合装置である。
入力軸14は、ケース12にベアリングを介して相対回転可能に支持されており、軸心Cに対して垂直に伸びる鍔部14aが設けられている。この入力軸14には、図示しないエンジンの回転がエンジンに直結されたクランク軸及び流体伝動装置であるトルクコンバータを介して伝達されている。入力軸14の鍔部14aの外周縁には、その外周縁に一体に溶接接合されると共に、ケース12に対して相対回転可能に支持されている円環状の基部材20が設けられている。この基部材20の第1遊星歯車装置16に接近する側の外周面には、第1クラッチC1の構成部材である第1摩擦係合要素22及び第2クラッチC2の構成部材である第2摩擦係合要素24を支持するクラッチドラム26が一体に溶接接合されており入力軸14と一体回転させられる。
クラッチドラム26は、軸心方向の一方に開口する有底円筒状部材であり、内周面が基部材20の外周面に溶接接合されている略円環板状(円板状)の底板部26aと、その底板部26aの外周面に連結され第1遊星歯車装置16方向に軸心と平行に伸びる円筒状の筒部26bとで構成されている。クラッチドラム26の筒部26bの内周面には長手状に伸びるスプライン歯が設けられている。そして、筒部26bの底板部26a側には、第1クラッチC1を構成する第1摩擦係合要素22のセパレートプレート28の外周縁が複数枚スプライン嵌合されており、筒部26bの開口側には、第2クラッチC2を構成する第2摩擦係合要素24のセパレートプレート28の外周縁が複数枚スプライン嵌合されている。
第1摩擦係合要素22は、外周縁が筒部26bの内周面にスプライン嵌合されている複数枚の略円環板状(円板状)のセパレートプレート28と、その複数枚のセパレートプレート28の間に介在させられて内周縁がクラッチハブ30の外周面にスプライン嵌合されている複数枚の略円環板状(円板状)の摩擦プレート32とで構成されている。クラッチハブ30は、第1遊星歯車装置16のサンギヤS1に連結されてその回転を伝達するものである。また、第2摩擦係合要素24は、外周縁が筒部26bの内周面にスプライン嵌合されている複数枚の略円環板状(円板状)のセパレートプレート28と、その複数枚のセパレートプレート28の間に介在させられて内周縁がリングギヤRの外周面にスプライン嵌合されている複数枚の略円環板状(円板状)の摩擦プレート32とで構成されている。摩擦プレート32は、略円環板状(円板状)のコアプレート32aとセパレートプレート28に対向する位置においてコアプレート32aに固着された摩擦材32bとで構成されている。摩擦材32bは、例えば紙に熱硬化性の樹脂を含浸させた特殊な紙で出来ており、金属製のコアプレート32aの両面に接着されることで固着されている。
クラッチドラム26とクラッチハブ30の間には、クラッチドラム26側から第1摩擦係合要素22を押圧するするための第1ピストン34及びバネ受板36が配置されている。第1ピストン34は、その内周面がシールを介して入力軸14に対して軸心方向に摺動可能に嵌め付けられ、外周縁には第1摩擦係合要素22の方向に伸びる押圧部34aが設けられている。バネ受板36は、入力軸14に嵌め着けられているスナップリング38に当接することによって軸心方向の一方の移動が阻止させられていると共に、第1ピストン34とバネ受板36との間に介在させられ第1ピストン34をクラッチドラム26の底板部26aに当接するように付勢するリターンスプリング40によってバネ受板36の他方の軸心方向への移動が阻止させられている。
また、クラッチドラム26を包むように第2ピストン42が配置されている。第2ピストン42は軸心の一方に開口する有底円筒状部材であり、基部材20の外周面にシールを介して摺動可能に嵌め付けられ、軸心Cに対して略垂直に伸びる略円環板状(円板状)の底板部42aと、その底板部42aの外周縁から軸心Cと平行に第2摩擦係合要素24方向に伸びる円筒状のシリンダ部材42bと、それら底板部42a及びシリンダ部材42bとを固定するスナップリング44とで構成されている。シリンダ部材42bの内周側は、長手状の突起物が等角度間隔に複数個設けられており、それら突起物はクラッチドラム26の筒部26bの外周面に設けられている凹溝に軸心方向に摺動可能に嵌め入れられ、第2ピストン42はクラッチドラム26と一体的に回転させられる構造となっている。
第2ピストン42の底板部42aのクラッチドラム26側の背面側は、バネ受板46が基部材20の外周面に嵌め付けられており、基部材20の外周面に固定されているスナップリング48にバネ受板46の内周部が当接する事によってバネ受板46の軸心方向の一方の移動が阻止されている。また、第2ピストン42とバネ受板46との間には第2ピストン42をバネ受板46から隔離する方向に付勢するリターンスプリング50が介在させられており、そのリターンスプリング50によってバネ受板46の他方の軸心方向への移動が阻止されている。
前述のリングギヤRの径方向外側にはブレーキBの構成部材である第3摩擦係合要素52及びワンウェイクラッチ54が並列に配置されている。第3摩擦係合要素52は、外周部がケース12の内側に設けられているスプライン部12aにスプライン嵌合されている複数枚の略円環板状(円板状)のセパレートプレート28と、その複数枚のセパレートプレート28の間に介在させられて内周部がリングギヤRの外周面にスプライン嵌合されている複数枚の略円環板状(円板状)の摩擦プレート32とで構成されている。また、ワンウェイクラッチ54は、ケース12のスプライン部12aに軸心方向に移動可能且つ相対回転不能に嵌合され比較的軸心方向に厚みを有する環状鋼製のアウターレース56と、そのアウターレース56とワンウェイクラッチのインナーレースを兼ねたリングギヤRの外周面との間に配置された鋼製のスプラグ58と、そのスプラグ58の軸心方向の両側に配置されスプラグ58のズレを防止するケージ60とで構成されている。
このように構成された第1クラッチC1、第2クラッチC2、及びブレーキBにおいて、各湿式摩擦係合装置に対応して入力軸14に設けられた各作動油油路から各油室内に作動油が供給されると、各摩擦係合要素が押圧されることで複数枚のセパレートプレート28及び摩擦プレート32は係合させられる。例えば、第1クラッチC1において、油路62を通って油室64内に作動油が供給されると、作動油の油圧によって第1ピストン34が第1摩擦係合要素22方向に移動し、押圧部34aが第1摩擦係合要素22を押圧する。そして、第1摩擦係合要素22の軸心方向への移動を阻止するスナップリング66がクラッチドラム26の筒部26bに固定されているため、複数枚のセパレートプレート28及び摩擦プレート32は係合させられる。すなわち、第1クラッチC1(第1摩擦係合要素22)が係合させられる。尚、油室64や第1ピストン34が作動油の作用により作動させられる第1クラッチC1の油圧アクチュエータとして機能する。
ここで、各摩擦係合要素においては、セパレートプレート28及び摩擦プレート32の摩擦面から摩擦熱が発生する。そこで、車両用自動変速機10の作動油は、上述したように第1ピストン34や第2ピストン42などの油圧アクチュエータの駆動に用いられる他に、自動変速機10内に設けられている各摩擦係合要素や噛合歯車などの潤滑や冷却に用いられる。例えば、各摩擦係合要素には、潤滑・冷却用の作動油が軸心C側(例えば入力軸14に形成されている油路68、70等)から外周側(径方向外側)に向かって遠心力により供給(飛散)される。これにより、例えば摩擦係合要素の空転時に発生するセパレートプレート28と摩擦材32bとの接触抵抗を低減する為に摩擦材32bの表面(セパレートプレート28に係合させられる係合面、以下、摩擦材32b表面と表す)に油膜が形成される。また、この作動油は、例えば各摩擦係合要素などの潤滑要素を通過したあと、最終的にはケース12を伝わって図示しないオイルパンに戻される。
ところで、摩擦係合要素に対して供給される作動油量が特に多いときには、作動油の排出性能が低下してセパレートプレート28と摩擦材32bとの係合面における粘性抵抗が増大する可能性がある。これに対して、油膜を形成しつつ作動油の排出性を向上させる為に、摩擦材32bの表面に径方向(遠心方向、排出方向)に沿って溝を成形することが良く知られている。このような溝は本数を増加させたり溝幅を広げる程、作動油の排出性を向上させるが、その反面、セパレートプレート28との係合面積が小さくなり単位面積当たりの面圧が上昇して摩擦材32b自体の耐久性が低下してしまう可能性がある。そこで、本実施例では、摩擦材32b自体の耐久性低下を抑制しつつ、作動油の排出性を向上させる為に、摩擦材32bにおけるコアプレート32aとの接着面側(以下、摩擦材32b接着面と表す)に上述したような溝を成形する。以下に、その溝を具体的に例示する。
図3は、軸心C方向から見た摩擦プレート32の正面図であり、破線は摩擦材32b接着面に成形された第1固着面溝80を示している。また、図4は、図3の摩擦プレート32の部分拡大斜視図である。図3、4において、摩擦材32bは、摩擦材32b接着面において外周面側と内周面側とを貫通するように径方向に成形された第1固着面溝80と、第1固着面溝80とは円周方向に異なる位置において摩擦材32b表面側が開口するように径方向に成形された凹部溝82とを備えている。このように、凹部溝82に加え、摩擦材32b接着面に第1固着面溝80を成形することで、作動油の排出性を向上させられる。更に、この第1固着面溝80を備えてもセパレートプレート28との係合面積は減少しない為、摩擦材32b自体の耐久性低下を抑制することができる。
また、作動油の排出性を一層向上させる為に、図5の摩擦プレート32の部分拡大斜視図に示すように、摩擦材32bを複数のセグメント部材32b1が円周方向に配置されたセグメント式の摩擦材としても良い。図5において、第1固着面溝80は、セグメント部材32b1に成形された溝である。また、凹部溝82は、相互に隣接するセグメント部材32b1間に形成された間隙82aである。見方を換えれば、間隙82aは凹部溝82を可及的に深くしたものであり、各セグメント部材32b1の間を作動油を排出する溝としたものである。これによって、セパレートプレート28との係合面積を減少することなく凹部溝82が可及的に深くされるので、作動油の排出性が一層向上させられる。
また、作動油の排出性を一層向上させる為に、図6の摩擦材32b(セグメント部材32b1)の部分拡大正面図に示すように、第1固着面溝80の形状を変更しても良い。例えば、入力軸14回転時の摩擦プレート32の回転方向Dwが一方向に決まっている場合には、図6(a)に示すように、第1固着面溝80は、外周面側への方向が摩擦プレート32の回転方向Dwに対向するように成形されても良い。つまり、第1固着面溝80は、径方向と略平行ではなく、回転方向Dwに対向するように所定角度分傾いた斜め溝80aであっても良い。これによって、作動油がこの斜め溝80aへ入りやすく且つ斜め溝80aを抜けやすくなる(すなわち流れやすくなる)ので、作動油の排出性が一層向上させられる。また、図6(b)に示すように、第1固着面溝80は、内周面側から外周面側へ向かう程作動油の流路が細くなるノズル形状となるノズル溝80bが成形されても良い。これによって、ノズル溝80bへの引き込み効果が生じるので、作動油の排出性が一層向上させられる。つまり、ノズル溝80bを通って外周側へ流される作動油の流速が上がるので、作動油の排出性が一層向上させられる。
ところで、作動油が円周方向にて凹部溝82の壁面に当たって攪拌抵抗が生じたり、凹部溝82を流れる作動油がその凹部溝82から溢れて摩擦材32b表面へ流れることによって粘性抵抗を増大させる可能性がある。特に、上述したように摩擦材32bをセグメント形状として溝深さを深くすると、壁面(すなわちセグメント部材32b1の円周方向における側面)に当たる作動油量が増大して攪拌抵抗を増大させたり、間隙82aから溢れる作動油が増大して粘性抵抗を一層増大させる可能性がある。そこで、このような攪拌抵抗や粘性抵抗を抑制する為に、第1固着面溝80に加え、更に摩擦材32b接着面に円周方向に沿って溝を成形する。以下に、その溝を具体的に例示する。
図7は、セグメント形状の摩擦材32bの別の実施例を示す摩擦プレート32の部分拡大斜視図である。図7において、摩擦材32b(セグメント部材32b1)は、摩擦材32b接着面において第1固着面溝80と凹部溝82(間隙82a)とを連通するように円周方向に沿って成形された第2固着面溝84を更に備えている。これにより、凹部溝82(間隙82a)を流れる作動油の一部は第2固着面溝84及び第1固着面溝80を通って外周側へ流されるので、作動油の排出性が一層向上させられる。また、円周方向にて凹部溝82(間隙82a)の壁面に当たる作動油の量が低減されて攪拌抵抗が低下させられる。また、凹部溝82(間隙82a)から溢れた作動油が摩擦材32b(セグメント部材32b1)表面へ流れる量が低減されて粘性抵抗が低下させられる。
尚、図8の摩擦材32b(セグメント部材32b1)の部分拡大正面図に示すように、第1固着面溝80や第2固着面溝84は各々両端側が開口されてその両端側の面の間を貫通する溝でなくても良い。例えば、入力軸14回転時の摩擦プレート32の回転方向Dwが一方向に決まっている場合には、図8(a)に示すように、第2固着面溝84は、摩擦プレート32の回転方向Dwに対向する側のみが開口するように成形されても良い。つまり、作動油が第2固着面溝84へ進入する為の入り口側のみ開口しておれば良い。これによって、摩擦プレート32の回転方向Dwに対向する側に形成された第2固着面溝84の開口から流れ込んだ作動油の一部が第1固着面溝80を横切って反対側へ抜けてしまうことなく第1固着面溝80を通って外周側へ流されるので、作動油の排出性が一層向上させられる。また、第2固着面溝84の開口から流れ込んだ作動油の一部が第1固着面溝80を横切って再び凹部溝82(間隙82a)へ流れ込むことが避けられるので、回転抵抗の増大が回避される。また、図8(b)に示すように、第1固着面溝80は、外周面側が少なくとも開口するように成形されても良い。このようにしても、凹部溝82(間隙82a)を流れる作動油の一部を第2固着面溝84及び第1固着面溝80を通って外周側へ流すという一応の作用は得られる。尚、この場合には、作動油を凹部溝82(間隙82a)を介さずに直接的に第1固着面溝80を通して外周側へ流すという作用は得られない。従って、第1固着面溝80を通る外周側への作動油の流れによって、第2固着面溝84を経由して第1固着面溝80に流れ込む作動油に対する吸い込み効果は得られない。
上述のように、本実施例によれば、摩擦材32bには第1固着面溝80とは円周方向に異なる位置において摩擦材32b表面側が開口するように径方向に凹部溝82が成形されているので、作動油が凹部溝82を通って外周側へ流されて作動油の排出性が向上させられる。また、摩擦材32bには摩擦材32b接着面において外周面側が少なくとも開口するように径方向に第1固着面溝80が成形されていると共に第1固着面溝80と凹部溝82とを連通するように円周方向に第2固着面溝84が成形されているので、凹部溝82を流れる作動油の一部は第2固着面溝84及び第1固着面溝80を通って外周側へ流される。これにより、作動油の排出性が一層向上させられる。また、円周方向にて凹部溝82の壁面に当たる作動油の量が低減されて攪拌抵抗が低下させられたり、凹部溝82から溢れた作動油が摩擦材32b表面へ流れる量が低減されて粘性抵抗が低下させられる。従って、摩擦係合要素において回転抵抗を低減することと作動油の排出性を向上することとを両立させることができる。また、このことは燃費を向上させることにも繋がる。また、上記別の観点では、第1固着面溝80及び第2固着面溝84は摩擦材32b表面でなく摩擦材32b接着面側に成形されているので、摩擦材32b表面の係合面積を減少することなく作動油の排出性を向上させられる。更に、摩擦材32b表面の係合面積が減少させられないので、係合作動時の単位面積当たりの面圧が上昇して摩擦材32b自体の耐久性が低下してしまうということが抑制される。
また、本実施例によれば、摩擦材32bは複数のセグメント部材32b1が円周方向に配置されたセグメント式の摩擦材であり、第1固着面溝80及び第2固着面溝84はセグメント部材32b1に成形された溝であり、凹部溝82は相互に隣接するセグメント部材32b1間に形成された間隙82aであるので、摩擦材32b(セグメント部材32b1)表面の面積を減少することなく凹部溝82が可及的に深くされて作動油の排出性が一層向上させられる。
また、本実施例によれば、第1固着面溝80は、外周面側への方向が摩擦プレート32の回転方向Dwに対向するように成形されている斜め溝80aであるので、摩擦プレート32の回転方向Dwが決まっている場合、摩擦プレート32の回転方向Dwと作動油が流れる方向との相対関係から、作動油が第1固着面溝80を抜けやすくなって作動油の排出性が一層向上させられる。
また、本実施例によれば、第1固着面溝80は、外周面側と内周面側とを貫通するように成形されているので、作動油が直接的に第1固着面溝80を通って外周側へ流されて作動油の排出性が一層向上させられる。また、この第1固着面溝80が外周面側への方向が摩擦プレート32の回転方向Dwに対向するように成形されている斜め溝80aであると、摩擦プレート32の回転方向Dwが決まっている場合、摩擦プレート32の回転方向Dwと作動油が流れる方向との相対関係から、作動油がこの第1固着面溝80へ入りやすく且つ第1固着面溝80を抜けやすくなるので、作動油の排出性が一層向上させられる。また、第1固着面溝80を直接的に通る外周側への作動油の流れによって、第2固着面溝84を経由して第1固着面溝80に流れ込む作動油に対する吸い込み効果が生じるので、作動油の排出性が一層向上させられる。
また、本実施例によれば、第1固着面溝80は、内周面側から外周面側へ向かう程作動油の流路が細くなるノズル形状となるノズル溝80bが成形されているので、作動油の流路が細くなるノズル形状(絞り)によって、直接的に第1固着面溝80を通って外周側へ流される作動油(すなわち直接的に第1固着面溝80に流れ込む作動油)に対する第1固着面溝80への引き込み効果が生じて、作動油の排出性が一層向上させられる。つまり、第1固着面溝80を通って外周側へ流される作動油の流速が上がるので、作動油の排出性が一層向上させられる。
また、本実施例によれば、第2固着面溝84は、摩擦プレート32の回転方向Dwに対向する側のみが開口するように成形されているので、摩擦プレート32の回転方向Dwが決まっている場合、摩擦プレート32の回転方向Dwと作動油が流れる方向との相対関係から、その第2固着面溝84の開口から流れ込む作動油の一部が第1固着面溝80を横切って反対側へ抜けてしまうことなく第1固着面溝80を通って外周側へ流されて作動油の排出性が一層向上させられる。また、その第2固着面溝84の開口から流れ込む作動油の一部が第1固着面溝80を横切って再び凹部溝82(間隙82a)へ流れ込むことが避けられるので、回転抵抗の増大が回避される。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例では、セグメント部材32b1には、各1本の第1固着面溝80及び第2固着面溝84が成形されていた。ここで、1本の太い溝と、その太い溝と同じ作動油の合計流通容量(溝の流通断面積)となる複数の細い溝とを比較した場合、1本の太い溝の方が係合時に応力集中を引き起こし易い為に摩擦材32b(セグメント部材32b1)自体の耐久性が低下しやすいと考えられる。そこで、本実施例では、応力集中を分散させて耐久性を一層向上させる為に、第1固着面溝80及び第2固着面溝84の少なくとも一方の溝は、セグメント部材32b1毎に対応する1本の太い溝よりも細い複数の溝で成形されても良い。図9は、第1固着面溝80及び第2固着面溝84の別の実施例を示すセグメント部材32b1の部分拡大正面図である。図9において、セグメント部材32b1には、例えば第1固着面溝80に対応する3本の細溝80c、及び第2固着面溝84に対応する2本の細溝84aが成形されている。この3本の細溝80cの流通断面積の合計は1本の第1固着面溝80の流通断面積と同じとし、また2本の細溝84aの流通断面積の合計は1本の第2固着面溝84の流通断面積と同じとするのが望ましい。尚、第1固着面溝80のみ複数の細溝としても良いし、また第2固着面溝84のみ複数の細溝としても良い。
上述のように、本実施例によれば、第1固着面溝80及び第2固着面溝84の少なくとも一方に対応する溝は、セグメント部材32b1毎に対応する複数の細溝(80c、84a)が成形されているので、例えば1本の溝と複数の溝とで作動油の流通容量を同じだけ確保する場合、複数の溝では1本の溝に比べて係合時の応力集中を分散することができて、摩擦材32b(セグメント部材32b1)自体の耐久性低下が一層抑制される。
前述の実施例では、摩擦材32b(セグメント部材32b1)に第1固着面溝80及び第2固着面溝84が成形された。しかしながら、摩擦材32bは紙で出来ている為、たとえ各溝の構成として複数の細溝を採用したとしても、摩擦材32bに溝が成形される以上、摩擦材32b(セグメント部材32b1)自体の耐久性低下が懸念される。そこで、本実施例では、摩擦材32b(セグメント部材32b1)自体の耐久性低下を一層抑制する為に、セグメント部材32b1に第1固着面溝80及び第2固着面溝84を成形するのではなく、コアプレート32aに第1固着面溝及び第2固着面溝を形成する。図10は、摩擦プレート32の別の実施例を示す部分拡大斜視図である。図10において、摩擦材32bは、複数のセグメント部材32b1が円周方向に配置されると共に、相互に隣接するセグメント部材32b1間に間隙82aが形成されたセグメント式の摩擦材である。コアプレート32aは、セグメント部材32b1が接着させられる位置において外周面側と内周面側とを貫通するように径方向に沿って形成された第1固着面溝86と、セグメント部材32b1が接着させられる位置において第1固着面溝86と間隙82aとを連通するように円周方向に沿って形成された第2固着面溝88とを備えている。
上述のように、本実施例によれば、摩擦材32bには円周方向に配置された相互に隣接するセグメント部材32b1間に間隙82aが形成されるので、作動油が間隙82aを通って外周側へ流されて摩擦材32b(セグメント部材32b1)表面の面積を減少することなく作動油の排出性が一層向上させられる。また、コアプレート32aにはセグメント部材32b1が接着させられる位置において第1固着面溝86が形成されていると共に第1固着面溝86と間隙82aとを連通するように第2固着面溝88が形成されているので、間隙82aを流れる作動油の一部は第2固着面溝88及び第1固着面溝86を通って外周側へ流される。これにより、作動油の排出性が一層向上させられる。また、円周方向にて間隙82aの壁面(すなわちセグメント部材32b1の円周方向における側面)に当たる作動油の量が低減されて攪拌抵抗が低下させられたり、間隙82aから溢れた作動油が摩擦材32b(セグメント部材32b1)表面へ流れる量が低減されて粘性抵抗が低下させられる。従って、摩擦係合要素において回転抵抗を低減することと作動油の排出性を向上することとを両立させることができる。また、このことは燃費を向上させることにも繋がる。また、上記別の観点では、第1固着面溝86及び第2固着面溝88は摩擦材32b(セグメント部材32b1)でなくコアプレート32aに形成されているので、摩擦材32b(セグメント部材32b1)表面の面積を減少することなく作動油の排出性を向上させられると共に、摩擦材32b(セグメント部材32b1)自体の耐久性低下が一層抑制される。更に、摩擦材32b(セグメント部材32b1)表面の面積が減少させられないので、例えば係合作動時の単位面積当たりの面圧が上昇して摩擦材32b(セグメント部材32b1)自体の耐久性が低下してしまうということが抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例における第1固着面溝86や第2固着面溝88は、第1固着面溝80や第2固着面溝84と同様に、各々両端側が開口されてその両端側の面の間を貫通する溝でなくても良い。例えば、入力軸14回転時の摩擦プレート32の回転方向Dwが一方向に決まっている場合には、第2固着面溝88は、摩擦プレート32の回転方向Dwに対向する側のみが開口するように形成されても良い。また、第1固着面溝80は、外周面側が少なくとも開口するように形成されても良い。
また、前述の実施例における第1固着面溝86や第2固着面溝88は、第1固着面溝80や第2固着面溝84と同様に、セグメント部材32b1毎に対応する1本の太い溝よりも細い複数の溝で形成されても良い。
また、前述の実施例では、摩擦材32b(セグメント部材32b1)に第1固着面溝80及び第2固着面溝84が成形されるか、又はコアプレート32aに第1固着面溝86及び第2固着面溝88が形成されるものであったが、摩擦材32b(セグメント部材32b1)に第1固着面溝80が成形され且つコアプレート32aに第2固着面溝88が形成されたり、摩擦材32b(セグメント部材32b1)に第2固着面溝84が成形され且つコアプレート32aに第1固着面溝86が形成されるなど、種々の態様が可能である。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用自動変速機
22:第1摩擦係合要素
24:第2摩擦係合要素
28:セパレートプレート
32:摩擦プレート
32a:コアプレート
32b:摩擦材
32b1:セグメント部材
34:第1ピストン(油圧アクチュエータ)
42:第2ピストン(油圧アクチュエータ)
52:第3摩擦係合要素
64:油室(油圧アクチュエータ)
80:第1固着面溝
80a:斜め溝(第1固着面溝)
80b:ノズル溝(ノズル形状となる溝、第1固着面溝)
80c:細溝(複数の溝)
82:凹部溝
82a:間隙
84:第2固着面溝
84a:細溝(複数の溝)
86:第1固着面溝
88:第2固着面溝
B:ブレーキ(湿式摩擦係合装置)
C1:第1クラッチ(湿式摩擦係合装置)
C2:第2クラッチ(湿式摩擦係合装置)

Claims (8)

  1. 複数枚の円板状のセパレートプレートと、コアプレート及び該セパレートプレートに対向する位置において該コアプレートに固着された摩擦材を有して前記複数枚のセパレートプレートの間に介在させられている複数枚の円板状の摩擦プレートとで構成されている摩擦係合要素を備え、作動油の作用により油圧アクチュエータを介して前記摩擦係合要素が押圧されることで係合させられると共に、軸心側から外周側に向かって遠心力により作動油が前記摩擦係合要素へ供給される車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置であって、
    前記摩擦材は、前記コアプレートに固着させられる面において外周面側が少なくとも開口するように径方向に形成された第1固着面溝と、前記第1固着面溝とは円周方向に異なる位置において前記セパレートプレートに係合させられる面側が少なくとも開口するように径方向に形成された凹部溝と、前記コアプレートに固着させられる面において前記第1固着面溝と前記凹部溝とを連通するように円周方向に形成された第2固着面溝とを備えることを特徴とする車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
  2. 前記摩擦材は、複数のセグメント部材が円周方向に配置されたセグメント式の摩擦材であり、
    前記第1固着面溝及び前記第2固着面溝は、前記セグメント部材に形成された溝であり、
    前記凹部溝は、相互に隣接する前記セグメント部材間に形成された間隙であることを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
  3. 複数枚の円板状のセパレートプレート、及びコアプレートと前記セパレートプレートに対向する位置において該コアプレートに固着された摩擦材とを有して前記複数枚のセパレートプレートの間に介在させられている複数枚の円板状の摩擦プレートで構成されている摩擦係合要素を備え、作動油の作用により油圧アクチュエータを介して前記摩擦係合要素が押圧されることで係合させられると共に、軸心側から外周側に向かって遠心力により作動油が前記摩擦係合要素へ供給される車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置であって、
    前記摩擦材は、複数のセグメント部材が円周方向に配置されると共に、相互に隣接する該セグメント部材間に間隙が形成されたセグメント式の摩擦材であり、
    前記コアプレートは、前記摩擦材が固着させられる位置において外周面側が少なくとも開口するように径方向に形成された第1固着面溝と、前記摩擦材が固着させられる位置において前記第1固着面溝と前記間隙とを連通するように円周方向に形成された第2固着面溝とを備えることを特徴とする車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
  4. 前記第1固着面溝及び前記第2固着面溝の少なくとも一方の溝は、前記セグメント部材毎に対応する複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項2又は3の何れか1項に記載の車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
  5. 前記第1固着面溝は、前記外周面側への方向が前記摩擦プレートの回転方向に対向するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
  6. 前記第1固着面溝は、前記外周面側と内周面側とを貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
  7. 前記第1固着面溝は、前記内周面側から前記外周面側へ向かう程前記作動油の流路が細くなるノズル形状となる溝が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
  8. 前記第2固着面溝は、前記摩擦プレートの回転方向に対向する側のみが開口するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用自動変速機の湿式摩擦係合装置。
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