JP7219068B2 - メタン発酵処理設備及び処理方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、以下の処理設備及び処理方法である。なお、本発明における処理方法には、処理設備の運転方法に係る技術も含まれるものである。
本発明の処理設備は、メタン発酵の状態を検出し、検出結果に応じて反応槽内のメタン発酵を阻害する要因を除去する対策を実施するものであり、その対策として反応槽内の内容物の一部を引き抜くとともに、反応槽に流入する流入物に多孔性物質を添加するものである。これにより、メタン発酵を促進することができる。
この特徴によれば、引き抜かれた内容物に多孔性物質を添加して、メタン発酵の阻害物質を除去する能力を付与させた状態とし、反応物に流入する流入物とすることで、メタン発酵を阻害する要因の除去効果を向上させることが可能となる。また、内容物に含まれるメタン生成菌を循環させることができるため、微生物を有効に活用することができる。
この特徴によれば、沈降分離した処理対象物以外の内容物を引き抜くことで、メタン発酵の阻害物質を含む内容物を効果的に引き抜くことができ、メタン発酵を阻害する要因の除去効果を向上させることが可能となる。
この特徴によれば、メタン発酵の状態をメタン発酵の阻害物質(アンモニア)又はメタン発酵による生成物(消化ガス)の濃度により判断することが可能となる。これにより、メタン発酵性能の低下に係る判断を適正に行うことが可能となる。
本発明の処理設備は、メタン発酵の状態を検出し、検出結果に応じて反応槽内のメタン発酵を阻害する要因を除去する対策を実施するものであり、その対策として反応槽に流入する流入物に多孔性物質を添加するものである。これにより、メタン発酵を促進することができる。
この特徴によれば、多孔性物質は微生物の担体としてではなく、アンモニア等のメタン発酵の阻害物質を吸着保持しメタン発酵処理を促進する添加剤としての機能を効果的に発揮することができ、より一層メタン発酵速度を上げることが可能となる。
この特徴によれば、多孔性物質によるメタン発酵の阻害物質を除去する効果のみならず、活性炭が有する微生物の電気共生反応促進効果も得られるため、メタン発酵処理をより促進して、メタン発酵速度を上げることができる。
本発明の処理方法は、メタン発酵の状態を検出し、検出結果に応じて反応槽内のメタン発酵を阻害する要因を除去する対策を実施するものであり、その対策として反応槽内の内容物の一部を引き抜くとともに、反応槽に流入する流入物に多孔性物質を添加するものである。これにより、メタン発酵を促進することができる。
本発明の処理方法は、メタン発酵処理設備の運転停止時におけるメタン発酵の状態に応じて反応槽内のメタン発酵を阻害する要因を除去する対策を実施するものであり、その対策として反応槽でのメタン発酵処理を停止する前後1日以内に反応槽に多孔性物質を添加するものである。これにより、微生物が飢餓状態に陥る前に多孔性物質を添加して微生物の活性低下を抑止することで、メタン発酵を阻害する要因を除去し、メタン発酵速度を上げることができる。
本発明の処理設備の運転立ち上げ方法は、処理設備の運転立ち上げ時におけるメタン発酵の状態に応じて反応槽内のメタン発酵を阻害する要因を除去する対策を実施するものであり、その対策として処理設備の運転立ち上げ時に反応槽に多孔性物質を添加するものである。これにより、多孔性物質を添加して反応槽内のメタン発酵の阻害物質を除去するとともに、微生物の活性を高めることで、メタン発酵を阻害する要因を除去し、メタン発酵を促進することができる。
なお、実施態様に記載する処理設備については、本発明に係る処理設備を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様の処理方法は、以下の処理設備を用いた処理方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
本実施態様における通常運転時とは、処理設備が稼働状態にあり、メタン発酵処理が連続して実施されていることを指すものである。処理設備の不具合による異常運転を除き、メタン発酵処理が実施されていればよく、メタン発酵効率の程度については特に限定されない。
図1には、本発明の第1の実施態様の処理設備の概略説明図が図示されている。
本発明に係る処理設備1aは、処理対象物をメタン発酵で処理するための処理設備であり、図1に示すように、処理対象物Sのメタン発酵を行う反応槽2と、反応槽2中のメタン発酵の状態を検出する検出部3とを備える。また、本発明に係る処理設備1aは、メタン発酵を阻害する要因を軽減する対策として、検出部3で検出したメタン発酵の状態に応じて反応槽2内の内容物S1の一部を引き抜く引き抜き部4と、反応槽2に流入する流入物S2に多孔性物質Pを添加する添加部5を備えるものである。また、図1に示すように、反応槽2の前段には濃縮槽6、反応槽2の後段には脱水設備7を備えるものとしてもよい。なお、反応槽2から発生するメタンガスを回収、利用するための脱硫装置及びガス貯留タンクを含むバイオガス利用設備を設けてもよい(不図示)。なお、図1における一点破線の矢印は制御可能となるように接続されていることを示している。
なお、以下の説明において、本発明の第1の実施態様の処理設備1aにおける反応槽2として消化槽の構造を例示しているが、これに限定されるものではない。
また、反応槽2の底部の形状は傾斜を有することが好ましい。これにより、固形物残渣の回収を容易とするとともに、反応槽2底部における撹拌効率も向上する。
さらに、反応槽2に係るその他の構造については、特に限定されない。例えば、撹拌効率を上げるための内部構造等を備えるものとしてもよい。
メタン発酵の状態は、メタン発酵を阻害する阻害物質であるアンモニア量、あるいは生成する消化ガス(メタンガス)量によって推定することができる。例えば、アンモニア量が所定値より増加した場合、メタン発酵性能が低下していると判断する。また、メタンガス量が所定値より減少した場合、メタン発酵性能が低下していると判断する。
検出部3の具体的な構成としては、アンモニア濃度を検出するアンモニア検出器又はメタンガス濃度を検出するメタンガス検出器が挙げられる。なお、検出器はガス検出器であってもよく、処理水W中など水に溶解したものを検出する検出器であってもよい。特に、検出部3としては、アンモニア検出器を用いることが好ましい。これにより、メタン発酵を阻害する要因であるアンモニア濃度を直接モニタリングすることで、適切なタイミングでアンモニアに対する対策を行うことが可能となる。
なお、本実施態様においてはメタン発酵の状態を検出する手段として、アンモニア濃度又はメタンガス濃度を検出するものについて示しているが、これに限定されない。メタン発酵の状態を検出する手段として、メタン発酵を阻害する他の阻害物質の量を検出するものであってもよい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の揮発性有機酸濃度を検出するものが挙げられる。
このように、各種阻害物質濃度あるいは生成したメタンガス濃度に基づきメタン発酵の状態を検知することで、メタン発酵を阻害する要因に対する対策を適切なタイミングで行うことが可能となる。
引き抜き部4は、検出器3の検出結果に応じて引き抜き操作が制御されるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、図1に示すように、流量調節機能付きの配管41を反応槽2の側壁に設ける構造が挙げられる。また、他の態様としては、引き抜きのための配管を反応槽2内に導入した構造としてもよい。また、引き抜き効率を考慮して、配管を介して反応槽2内の内容物S1を吸引するためのポンプ等を備えるものであってもよい(不図示)。
内容物S1には、メタン生成菌が含まれているため、返送路Lにより反応槽2に返送して用いることが好ましい。特に、後述する添加部5を介して多孔性物質Pが添加された内容物S1を反応槽2に返送することが好ましい。これにより、メタン発酵の阻害物質を除去する能力を有した状態の内容物S1を反応槽2に返送することができ、引き抜き部4による引き抜きと併せて、メタン発酵を阻害する要因を除去する対策を行うことが可能となる。
また、多孔性物質Pを含む内容物S1、あるいは内容物S1に代わって処理水Wを反応槽2に供給することで、反応槽2内の処理対象物Sの洗浄効果及び反応槽2内のメタン発酵の阻害物質濃度の希釈効果を奏し、メタン発酵を阻害する要因を除去する対策をより一層効果的に行うことができる。
添加部5の具体的な構造については特に限定されない。例えば、図1に示すように、多孔性物質Pの貯留槽51を備え、貯留槽51から配管52を介して添加するものが挙げられる。
また、多孔性物質Pとしては活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は、微生物間の電気共生を誘発して共生反応を促進することが知られており、これによりメタン発酵処理効率を上げる効果がより一層発揮される。
一般的に、多孔性物質Pの粒径が小さくなるほど、孔径も小さくなる。また、メタン発酵の阻害物質であるアンモニア等の方が微生物よりも小さく、微生物のような凝集体も形成しないため、小さい孔径に対しては入り込みやすく、吸着保持されやすくなる。これにより、本実施態様における多孔性物質Pには微生物よりもメタン発酵の阻害物質の方が吸着保持されやすくなり、処理対象物のメタン発酵速度を上げる効果がより一層発揮される。また、多孔性物質Pとして活性炭を用いる場合、粒径が1mm以下の粉末活性炭を用いることが好ましい。活性炭の粒径が小さくなるほど活性炭によって媒介される微生物間距離が短くなるため、微生物の電気共生反応をより一層促進するという効果も得られる。
また、この処理設備1aを用いたメタン発酵処理を行うことにより、メタン発酵の状態に応じてメタン発酵を阻害する要因を軽減する対策を行い、メタン発酵を促進する処理方法を実施することができる。
図2は、本発明の第2の実施態様の処理設備1bの構造を示す概略説明図である。
この処理設備1bは、第1の実施態様の処理設備1aにおける添加部5が検出部3の検出結果によって制御可能となるように接続している。このとき、引き抜き部4については設けてもよく、設けなくてもよい。なお、引き抜き部4を設ける場合、図2に示すように検出部3は引き抜き部4及び添加部5と制御可能に接続するものとしてもよく、検出部3と添加部5のみを制御可能に接続するものとしてもよい。また、本実施態様における検出部3としてはアンモニア検出器を例示しているが、メタン発酵の阻害物質の濃度又はメタンガス濃度を検出するものであればよく、これに限定されない。なお、図2に示す処理設備1bにおいて、第1の実施態様の処理設備1aの構造と同じものについては説明を省略している。
例えば、検出部3において検出するアンモニア濃度として1000mg/Lを基準値とし、この基準値を超えた場合、メタン発酵性能が低下していると判断し、流入物S2に対して添加部5から多孔性物質Pを添加することとしてもよい。
ここで、実施例1は、添加部5のみを備えたものに相当し、実施例2は、引き抜き部4及び添加部5を備えたものに相当する。
グラフの内訳としては、実施例1を白い丸、実施例2を黒い四角、比較例を黒い三角で示している。また、横軸は、培養時間を日数で示しており、縦軸は、メタン生成量を示している。
本実施態様における運転停止時とは、稼働状態にあった処理設備を停止することを指すものである。例えば、処理終了による通常運転時からの停止や、メンテナンス等、あらかじめ停止することが定められた期間における停止が挙げられる。また、処理設備の不具合等による異常運転に起因する停止も含まれる。
図4は、本発明の第3の実施態様の処理設備1cの構造を示す概略説明図である。
この処理設備1cは、反応槽2に多孔性物質Pを添加する添加部8を備え、反応槽2でのメタン発酵処理を停止する前後1日以内に多孔性物質Pを添加するものである。
運転停止時後、処理対象物Sの供給が停止することで、反応槽2内における微生物(メタン生成菌)が飢餓状態となり、微生物の活性が低下していく。したがって、メタン発酵を阻害する要因を軽減する対策として、微生物が完全に飢餓状態に陥る前、すなわち反応槽2でのメタン発酵処理を停止する前後1日以内に多孔性物質Pを添加することで、微生物の活性を安定保持するものである。
また、本実施態様の処理設備1cにおいては、第1の実施態様における検出部3及び引き抜き部4については設けてもよく、設けなくてもよい。なお、図4に示す処理設備1cにおいて、第1の実施態様の処理設備1aの構造と同じものについては説明を省略している。
また、本実施態様の添加部8は、多孔性物質Pの添加を制御する制御部83を有するものとしてもよい。例えば、制御部83は、カレンダー等、日時に基づく制御を行うものとし、定期メンテナンス等、あらかじめ処理設備1cが停止する日時に関する情報を事前に入力し、その情報に基づき反応槽2に多孔性物質Pを添加するものとしてもよい。また、図4に示すように、制御部83は、第1の実施態様における検出部3と制御可能に接続され、検出部3において検出された結果により、反応槽2においてメタン発酵処理が停止していると判断した場合、反応槽2に多孔性物質Pを添加するものとしてもよい。
本実施態様における運転立ち上げ時とは、新設した処理設備の反応槽内に新たに処理対象物を供給して設定負荷に達し、通常運転を行うまでの運転期間や、運転停止後の処理設備の運転を再開し、通常運転を行うまでの運転期間を指すものである。
図5は、本発明の第4の実施態様の処理設備1dの構造を示す概略説明図である。
この処理設備1dは、反応槽2に多孔性物質Pを添加する添加部8を備え、反応槽2でのメタン発酵処理に係る運転立ち上げ時に多孔性物質Pを添加するものである。
運転立ち上げ時は、新規処理設備の供用開始であっても、運転停止した処理設備の運転再開であっても、反応槽2内の微生物の活性が低下した状態から処理設備を稼働させることになるため、処理対象物Sのメタン発酵処理効率を通常運転時と同程度まで回復させるには時間がかかる。したがって、メタン発酵を阻害する要因を軽減する対策として、反応槽2内に多孔性物質Pを添加することで、反応槽2内に存在するメタン発酵の阻害物質を除去するとともに、微生物の活性を高めた状態とするものである。
また、本実施態様の処理設備1dにおいては、第1の実施態様における検出部3及び引き抜き部4については設けてもよく、設けなくてもよい。なお、図5に示す処理設備1dにおいて、第3の実施態様の処理設備1cの構造と同じものについては説明を省略している。
グラフの内訳としては、実施例3を白い丸、比較例を黒い三角で示している。また、横軸は、培養時間を日数で示しており、縦軸は、メタン生成量を示している。
Claims (10)
- 処理対象物をメタン発酵処理する反応槽を備えた処理設備において、
前記反応槽内のメタン発酵を阻害する阻害物質を検出する検出部と、
前記検出部で検出したメタン発酵を阻害する阻害物質の量に応じて前記反応槽内にある内容物の一部を引き抜く引き抜き部と、
前記反応槽に流入する流入物に多孔性物質を添加する添加部と、を備え、
前記添加部は、前記引き抜き部で引き抜かれた内容物に多孔性物質を添加することを特徴とする、処理設備。 - 処理対象物をメタン発酵処理する反応槽を備えた処理設備において、
前記反応槽内のアンモニア濃度またはアンモニア量を検出するアンモニア検出部と、
前記アンモニア検出部で検出したアンモニア濃度またはアンモニア量に応じて前記反応槽内にある内容物の一部を引き抜く引き抜き部と、
前記反応槽に流入する流入物に多孔性物質を添加する添加部と、を備えることを特徴とする、処理設備。 - 前記添加部は、前記引き抜き部で引き抜かれた内容物に多孔性物質を添加することを特徴とする、請求項2に記載の処理設備。
- 前記引き抜き部は、前記処理対象物を沈降分離した後の上清液を引き抜くものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理設備。
- 処理対象物をメタン発酵処理する反応槽を備えた処理設備において、
前記反応槽で行われるメタン発酵の状態を検出する検出部と、
前記検出部で検出したメタン発酵の状態に応じて前記反応槽内にある内容物の一部を引き抜く引き抜き部と、
前記反応槽に流入する流入物に多孔性物質を添加する添加部と、を備え、
前記引き抜き部は、前記処理対象物を沈降分離した後の上清液を引き抜くものであることを特徴とする、処理設備。 - 前記添加部は、前記引き抜き部で引き抜かれた内容物に多孔性物質を添加することを特徴とする、請求項5に記載の処理設備。
- 前記検出部は、アンモニア濃度又は消化ガス発生量を検出する検出器を備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載の処理設備。
- 前記多孔性物質の粒径は、1mm以下であること、及び/又は、粉末活性炭であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の処理設備。
- 処理対象物を反応槽でメタン発酵処理する処理方法において、
前記反応槽で行われるメタン発酵の状態を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出したメタン発酵の状態に応じて前記反応槽内にある内容物の一部を引き抜く引き抜き工程と、
前記反応槽に流入する流入物に多孔性物質を添加する添加工程と、を備え、
前記添加工程は、前記反応槽でのメタン発酵処理を停止する前後1日以内に、前記反応槽に多孔性物質を添加することを特徴とする、処理方法。 - 処理対象物を反応槽でメタン発酵処理する処理設備の運転立ち上げ方法において、
前記処理設備の運転立ち上げ時に、
前記反応槽で行われるメタン発酵の状態を検出する工程と、
検出されたメタン発酵の状態に応じて前記反応槽内にある内容物の一部を引き抜き、前記反応槽に多孔性物質を添加する工程を備えることを特徴とする、処理設備の運転立ち上げ方法。
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