JP2020082044A - バイオマスの処理設備及び処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、バイオマスを消化槽でメタン発酵処理する際に、メタン発酵速度を上げ、処理設備の小型化とランニングコストの低減が可能な処理設備及び処理方法を提供することである。【解決手段】上記課題を解決するために、バイオマスをメタン発酵処理する消化槽を備えた処理設備において、バイオマスに対して多孔性物質とリン酸を投入する投入部を備えるという特徴を有する処理設備及びこの処理設備を用いた処理方法を提供する。これにより、本発明者が見出した多孔性物質とリン酸によるメタン発酵促進の効果に基づき、メタン発酵速度を上げることができ、処理設備の小型化とランニングコストの低減が可能となる。【選択図】図1

Description

本発明は、バイオマスのメタン発酵処理に係る処理設備及び処理方法に関するものである。
従来、バイオマスの処理においては、焼却処理等が行われていた。しかし、このような処理においては多量のエネルギーを消費することや処理過程で生じる物質が環境に与える影響等が問題視されている。したがって、省エネルギー化、環境問題に対応した処理技術が望まれている。
一方、バイオマスのメタン発酵処理は、廃棄物の減量とともに、発生するメタンをエネルギーとして利用できることから有用性の高い技術として注目されている。
例えば、特許文献1には、消化槽にバイオマスを供給し、メタン発酵処理を施すことを特徴とするバイオマスの処理方法が記載されている。
特開2006−167705号公報
バイオマスのメタン発酵処理は、廃棄物の減量や発生するメタンのエネルギー利用といった利点がある一方、特許文献1にも記載されるように、消化槽によるメタン発酵処理は一般的に処理時間が30日前後かかることが知られている。消化槽によるメタン発酵処理が遅いことから、処理量を多くするために処理設備の容積は大きくなる傾向にある。一方、バイオマスの処理は小規模処理場においても可能であることが望ましいが、施設整備に係るイニシャルコスト及び運用時のランニングコストの面から、小規模処理場では消化槽の導入が困難となっている。
本発明の課題は、バイオマスを消化槽でメタン発酵処理する際に、メタン発酵速度を上げ、処理設備の小型化とランニングコストの低減が可能な処理設備及び処理方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、メタン発酵処理において多孔性物質とリン酸を共存させることでメタン発酵速度が上がることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の処理設備及び処理方法である。
上記課題を解決するための本発明の処理設備は、バイオマスをメタン発酵処理する消化槽を備えた処理設備において、バイオマスに対して多孔性物質とリン酸を投入する投入部を備えるという特徴を有する。
本発明の処理設備は、バイオマスに対して多孔性物質とリン酸を投入し、メタン発酵処理を行うものである。これにより、本発明者が見出した多孔性物質とリン酸によるメタン発酵促進の効果に基づき、メタン発酵速度を上げることができる。
また、本発明の処理設備の一実施態様としては、多孔性物質の粒径は、1mm以下であるという特徴を有する。
この特徴によれば、多孔性物質は微生物の担体としてではなく、リン酸を吸着保持しメタン発酵処理を促進する添加剤としての機能を効果的に発揮することができ、より一層メタン発酵速度を上げることが可能となる。
また、本発明の処理設備の一実施態様としては、リン酸の濃度は、0.1mM以上であるという特徴を有する。
この特徴によれば、メタン発酵促進効果を発揮するためのリン酸濃度を維持することが可能となる。
また、本発明の処理設備の一実施態様としては、多孔性物質は、粉末活性炭であるという特徴を有する。
この特徴によれば、多孔性物質とリン酸の組み合わせによるメタン発酵促進効果のみならず、活性炭が有する微生物の電気共生反応促進効果も得られるため、メタン発酵処理をより促進して、メタン発酵速度を上げることができる。
上記課題を解決するための本発明の処理方法は、バイオマスを消化槽でメタン発酵処理する処理方法において、バイオマスに対して多孔性物質とリン酸を投入する投入手段を備えるという特徴を有する。
本発明の処理方法は、バイオマスに対して多孔性物質とリン酸を投入し、メタン発酵処理を行うものである。これにより、本発明者が見出した多孔性物質とリン酸によるメタン発酵促進の効果に基づき、メタン発酵速度を上げることができる。
本発明によると、バイオマスを消化槽でメタン発酵処理する際に、メタン発酵速度を上げ、処理設備の小型化とランニングコストの低減が可能な処理設備及び処理方法を提供することができる。
本発明の第1の実施態様に係る処理設備の概略説明図である。 メタン発酵処理における多孔性物質とリン酸添加の効果に係る比較試験について、培養7日目の各リン酸濃度におけるメタン生成量を表すグラフである。 メタン発酵処理における多孔性物質とリン酸添加の効果に係る比較試験について、培養10日目の各リン酸濃度におけるメタン生成量を表すグラフである。 本発明の第2の実施態様に係る処理設備の概略説明図である。
本発明の処理設備は、バイオマスをメタン発酵処理する処理設備であって、メタン生成菌による嫌気性処理を行う消化槽を備えるものである。
処理対象のバイオマスとしては、生ごみ、食品廃棄物、草木、汚泥を含む有機性排水、家畜糞尿、余剰汚泥などが挙げられる。なお、バイオマスはこれに限定されるものではなく、嫌気性下でメタン発酵処理が可能な有機物質を含むものであれば、本発明の処理対象となる。
以下、本発明に係る好適な実施態様について、添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する処理設備については、本発明に係る処理設備を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様の処理方法は、以下の処理設備の構成及び作動の説明に置き換えるものとする。
[第1の実施態様]
図1には、本発明の第1の実施態様の処理設備の概略説明図が図示されている。
本発明に係る処理設備1aは、バイオマスをメタン発酵で処理するための処理設備であり、図1に示すように、バイオマスSの消化を行う消化槽2と、バイオマスSに多孔性物質とリン酸を投入する投入部3を備えるものである。また、図1に示すように、消化槽2の前段には濃縮槽4、消化槽2の後段には脱水設備5を備えるものとしてもよい。なお、消化槽2から発生するメタンガスを回収、利用するための脱硫装置及びガス貯留タンクを含むバイオガス利用設備を設けてもよい(不図示)。
濃縮槽4は、被処理水中の固体分を濃縮するための装置であれば特に制限されないが、例えば、固体分を沈降させて濃縮する沈降分離槽や、遠心力により固体分を分離する遠心分離装置等が挙げられる。濃縮槽4には、固体分の分離を促進するために、必要に応じて凝集剤等が添加される。
脱水設備5は、嫌気性処理された処理液中の固体分を分離するための設備である。例えば、遠心力により固体分を分離する遠心分離装置、ろ過により固体分を分離するろ過装置等が挙げられる。脱水設備5としては、固体分の含水率を低下する作用に優れるという観点から、ろ過装置が好ましい。更に、ろ過装置の前段に沈降分離槽や遠心分離装置等を設けることが好ましい。また、脱水設備5には、固体分の分離を促進するために、必要に応じて凝集剤等が添加される。脱水設備5により脱水された固体分は、焼却設備や乾燥設備、炭化設備等により処理される。
消化槽2は、バイオマスSを消化するための反応槽であり、消化槽2内部を撹拌するために撹拌部が設けられていることが好ましい。撹拌部の具体的な構成としては、例えば、回転軸に設置された撹拌羽根を備えるものが挙げられる。また、別の一例として、消化槽2内に、窒素ガス等の不活性ガスを供給して撹拌を行うガス撹拌であってもよい。
本発明の第1の実施態様の処理設備1aにおける消化槽2は、嫌気性下でバイオマスと微生物とが反応してメタン発酵を行う反応槽であり、嫌気性を維持するために密閉容器とすることが望ましい。
また、消化槽2の底部の形状は傾斜を有することが好ましい。これにより、固形物残渣の回収を容易とするとともに、消化槽底部における撹拌効率も向上する。
さらに、消化槽2に係るその他の構造については、特に限定されない。例えば、撹拌効率を上げるための内部構造等を備えるものとしてもよい。
投入部3は、バイオマスSに対して多孔性物質とリン酸を投入するためのものである。投入部3の具体的な構成としては、バイオマスSに対して多孔性物質とリン酸が投入できるものであれば特に限定されない。例えば、図1に示すように、貯留槽31、32を備え、投入量を制御するための構造(バルブ等)を有した配管33、34を介して消化槽2の上部から多孔性物質とリン酸を投入するものが挙げられる。なお、図1では、貯留槽31にリン酸を、貯留槽32に多孔性物質を貯留したものを示している。また、多孔性物質とリン酸の投入量の制御は、手動又は自動のいずれであってもよい。例えば、消化槽2にリン酸濃度を検出するための検出器を備え、検出器の結果に応じてリン酸の投入量を自動制御するものとしてもよい。
投入部3における多孔性物質とリン酸の投入順序は特に限定されない。例えば、リン酸を先にバイオマスSに対して投入し、その後多孔性物質を投入するものとしてもよく、その逆の順序であってもよい。また、配管33、34から略同時に投入するものであってもよい。さらに、配管33、34の途中に混合槽又は混合流路を設け、多孔性物質とリン酸を混合させた状態でバイオマスSに対して投入するものであってもよい。なお、本発明の処理設備及び処理方法においては、リン酸が多孔性物質に吸着した状態でメタン発酵処理に供することがメタン発酵処理の促進に好影響を与えていると考えられるため、投入部3における投入順序としてはリン酸と多孔性物質を略同時に投入することが好ましい。さらに、多孔性物質とリン酸を混合させた状態で投入することがより好ましい。
多孔性物質は、ミクロポーラスを有し、リン酸吸着能があるものを用いる。例えば、活性炭、ゼオライト、シリカなどが挙げられる。また、多孔性物質としては活性炭を用いることが特に好ましい。これにより、微生物間の電気共生を誘発して共生反応が促進され、メタン発酵速度を上げる効果がより一層発揮される。
本実施態様における多孔性物質は、微生物の担体としてではなく、リン酸を吸着保持し、バイオマスのメタン発酵を促進する添加剤として機能するものである。したがって、多孔性物質の粒径は、1mm以下とすることが好ましく、200μm以下とすることがより好ましい。なお、多孔性物質の粒径は、JIS規格(K1474)に基づき測定されたものである。
一般的に、多孔性物質の粒径が小さくなるほど、孔径も小さくなる。また、リン酸の方が微生物よりも小さく、微生物のような凝集体も形成しないため、小さい孔径に対してはリン酸の方が入り込みやすく、吸着保持されやすくなる。これにより、本実施態様における多孔性物質には微生物よりもリン酸の方が吸着保持されやすくなり、バイオマスのメタン発酵速度を上げる効果がより一層発揮される。また、多孔性物質として活性炭を用いる場合、活性炭の粒径が小さくなるほど活性炭によって媒介される微生物間距離が短くなるため、微生物の電気共生反応を促進するという効果も得られる。
本実施態様におけるリン酸は、純粋なリン酸を用いるものとしてもよいが、入手や取り扱いの容易性を考慮して、リン酸塩を水に溶解した水溶液を用いることが好ましい。リン酸塩としては、例えば、リン酸や、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩などが挙げられる。また、pHの変動が小さいという観点から、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩のアルカリ金属塩を用いることが好ましく、アルカリ金属塩としては、例えば、リン酸一水素二ナトリウムやリン酸二水素ナトリウムなどのナトリウム塩、リン酸一水素二カリウムやリン酸二水素カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。リン酸塩は、1種又は2種以上用いるものとしてもよく、特に、リン酸一水素塩とリン酸二水素塩を併用することが好ましい。リン酸一水素塩とリン酸二水素塩を併用することにより、pHの緩衝作用が発揮され、メタン発酵過程におけるpHの変動を抑制し、安定したメタン発酵処理を行うことが可能となる。
本実施態様におけるリン酸は、メタン発酵促進効果を奏する程度に投入されるものであればよく、例えば、消化槽2内でのリン酸濃度が少なくとも0.1mM以上となるように投入することが好ましい。また、バイオマスのメタン発酵速度を効果的に上げるという観点から、消化槽2内でのリン酸濃度が1mM以上となるように投入することがより好ましい。
一方、後述する図2及び図3に示すように、リン酸の濃度が高くなるに従いメタン発酵促進効果も高くなる。したがって、消化槽2内でのリン酸濃度の上限については、所望するメタン発酵速度と投入するリン酸に係るコスト面のバランス、あるいはメタン発酵処理後の工程などを考慮して適宜選択することが可能である。
次に、多孔性物質とリン酸の添加によるメタン発酵促進について検証を行った結果について説明する。なお、この検証は、多孔性物質とリン酸を組み合わせて用いたものと、リン酸のみを用いたものを比較試験したものであり、その他の条件について本発明の範囲を制限するものではない。
実施例として、微生物(メタン生成菌)を含む培地に対して多孔性物質及びリン酸を添加して調整し、メタン発酵処理対象として酢酸を添加して、メタン発酵試験を行い、メタン生成量を測定した。一方、比較例として、培地に対してリン酸のみを添加したものについてメタン発酵試験を行い、メタン生成量を測定した。
メタン発酵試験においては、多孔性物質として粉末活性炭(粒径約40〜150μm)を用い、リン酸としてはリン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素カリウムを含む水溶液を用いた。また、多孔性物質の添加量は実施例、比較例ともに全てのメタン発酵試験で一定とした。
なお、実施例及び比較例は、多孔性物質の添加の有無以外については同じ条件で実施した。
さらに、添加するリン酸濃度を変化させた実施例及び比較例についても、メタン発酵試験を行い、メタン生成量を測定した。
図2は、培養7日目の各リン酸濃度におけるメタン生成量を表すグラフである。また、図3は、培養10日目の各リン酸濃度におけるメタン生成量を表すグラフである。
棒グラフの内訳としては、多孔性物質とリン酸を組み合わせた実施例を黒色、リン酸のみを用いた比較例を白色で示している。また、横軸は、添加したリン酸濃度を示しており、縦軸は、メタン生成量を示している。
図2及び図3の結果から、実施例のようにメタン発酵において多孔性物質とリン酸を共存させることで、メタン発酵が促進されることがわかる。また、リン酸濃度が高いほど、メタン発酵促進効果が高まることがわかる。一方、比較例のようにメタン発酵においてリン酸のみを添加してもメタン発酵は促進されず、リン酸濃度を高くすることで逆にメタン発酵を抑制するということがわかる。なお、実施例、比較例ともに試験開始時と試験終了時におけるpHは中性付近(pH6.7〜7.4)でほとんど変動しなかったことから、メタン発酵促進にはリン酸によるpH緩衝能よりも、多孔性物質とリン酸の組み合わせが影響を与えるものと考えられる。
以上のように、本実施態様における処理設備及び処理方法においては、多孔性物質とリン酸を共存させた状態でバイオマスのメタン発酵処理を行うことにより、メタン発酵速度を上げることができる。これにより、メタン発酵処理設備の小型化及びランニングコストの低減が可能となる。また、廃棄物の減量や発生するメタンのエネルギー利用等といったメタン発酵処理の利点を十分に生かしたバイオマス処理が可能となる。
なお、上述した実施態様は処理設備及び処理方法の一例を示すものである。本発明に係る処理設備及び処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る処理設備及び処理方法を変形してもよい。
例えば、本発明の処理設備における投入部3は、第1の実施態様に示したものと別の態様としてもよい。以下、投入部3に係る別の態様を示す。なお、以下に示す実施態様において、第1の実施態様の処理設備1aの構造と同じものについては説明を省略している。
[第2の実施態様]
図4は、本発明の第2の実施態様の処理設備1bの構造を示す概略説明図である。
この処理設備1bは、消化槽2の前段に投入部3を設けるものである。投入部3の具体的な構造は特に限定されない。
例えば、図4(A)に示したように、消化槽2の前段にある濃縮槽4に対し、第1の実施態様に示した貯留槽31、32及び配管33、34を備えた投入部3を設けるものであってもよい。多孔性物質とリン酸の投入量に関しては、消化槽2内のバイオマスの種類や量によってあらかじめ算出した結果に基づき決定するものとしてもよく、消化槽2又は濃縮槽4内に設けた各種検出器の結果に基づき決定するものとしてもよい。
また、図4(B)に示すように、濃縮槽4と消化槽2の間に設けられる輸送管に投入部3を設けるものとしてもよい。
このように、消化槽2に投入される前のバイオマスSに多孔性物質とリン酸を投入することで、バイオマスSに対する多孔性物質及びリン酸の混合状態を高めた状態で消化槽2での処理が可能となる。
また、本発明の処理設備及び処理方法においては、多孔性物質とリン酸によるメタン発酵促進効果を阻害しない範囲において、多孔性物質とリン酸以外にも添加物を加えるものとしてもよい。
本発明の処理設備は、嫌気性下でのバイオマスのメタン発酵処理に利用される。例えば、下水処理などの水処理プロセスで発生した汚泥処理に好適に用いられる。また、地域で発生する生ごみ、食品廃棄物、草木等の地域バイオマスの処理に好適に用いられる。
1a,1b,1c 処理設備、2 消化槽、3 投入部、31,32 貯留槽、33,34 配管、4 濃縮槽、5 脱水設備、S バイオマス

Claims (5)

  1. バイオマスをメタン発酵処理する消化槽を備えた処理設備において、
    前記バイオマスに対して多孔性物質とリン酸を投入する投入部を備えることを特徴とする、処理設備。
  2. 前記多孔性物質の粒径は、1mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の処理設備。
  3. 前記リン酸の濃度は、0.1mM以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の処理設備。
  4. 前記多孔性物質は、粉末活性炭であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の処理設備。
  5. バイオマスを消化槽でメタン発酵処理する処理方法において、
    前記バイオマスに対して多孔性物質とリン酸を投入する投入手段を備えることを特徴とする、処理方法。


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