本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な車両検知器用着雪防止装置とその設計方法を採用することにより、従来にない車両検知器用着雪防止装置とその設計方法が得られ、その車両検知器用着雪防止装置とその設計方法について記述する。
なお、以下では、主として車両検知器が投光素子を備えた投光側車両検知器である場合を例として説明するが、本発明による車両検知器は受光素子を備えた受光側車両検知器であってもよい。
以下、本発明の実施例を、添付図面を参照して説明する。図1~図13は本発明の実施例1を示し、着雪防止装置1を設ける車両検知器2,2Aは、ETCゲート(図示せず)に設置され、平断面が矩形状である縦長の箱体3を有する。この箱体3は、それぞれ板状部材からなる前面部4と後面部5と左側面部6Lと右側面部6Rとを有する中空形状をなし、下部に一体に設けた板状のベース部7が、基礎たる基礎コンクリート8に固定されている。
前記箱体3の前面部4には、縦長の開口部11が形成され、この開口部11は前面部4の左右幅の7~22%程度の左右幅を有する。また、前記箱体3内には、前記開口部11に対面するようにして複数の投光素子14,14・・・が縦方向に並設されている。そして、投光側車両検知器2の投光素子14からの検知用の光は、受光側車両検知器2Aに向けて照射され、縦長の開口部11を通過して受光側車両検知器2Aに到達する。
また、受光側車両検知器2Aは、投光側車両検知器2とほぼ同じ形状であるが、投光素子14に替えて受光素子14Aが配置され、検知用の光は該受光素子14Aによって受光され、車両の通過によって遮断される。尚、車両検知器2,2Aの投光素子14及び受光素子14Aは、前記開口部11の上部領域及び下部領域又は開口部11の上下の前面部4の部分には設けられていない。
前記開口部11には、前記投光素子14の発した検知用の光が透過可能な透光性を有する保護板15が配置され、この保護板15を加熱する面状のヒータ(図示せず)が設けられている。
前記車両検知器2,2Aの箱体3は、一例として、左右幅が220mm、前後幅が205mmで、開口部11は前面部4の左右方向中央に位置し、開口部11の左右幅は30mmである。また、前記開口部11の高さは1800mmである。
図1及び図5に示すように、前記着雪防止装置1は、いずれも平板状をなす左右の中央カバー23,23と、左右の中央カバー23,23と間隔を置いて配置される左右の外側カバー24,24とを備え、これらカバー23,23,24,24は箱体3の前後方向に沿って配置されている。それらカバー23,23,24,24は開口部11に対して直交し、また、カバー23,23,24,24同士は平行で、箱体3の左右方向中央に対して左右対称に設けられている。前記左右の中央カバー23,23は、前記開口部11の左右方向中央から等間隔の位置にあり、それら左右の中央カバー23,23の内面23N,23Nの間隔である内面間隔CKは40mmで、前記前面部4の後面から先端までの突出高さCHは150mmである。
また、前記外側カバー24,24の内面間隔SKは224mmで前記箱体3の左右幅より僅かに広く、前記前面部4の前面位置から先端までの突出高さSHは、150mmであって、前記突出高さCHと等しい。尚、224mmは、箱体3の左右幅である220mmに後述する左右の側面覆い部26,26の厚さ2mm,2mmを加えた値である。尚、左右の中央カバー23,23の突出高さCHは等しく、左右の外側カバー24,24の突出高さSHは等しい。
具体的に、図5などに示すように、前記着雪防止装置1は、左右の分割カバー体20L,20Rを備え、これら左右の分割カバー体20L,20Rは、前記中央カバー23と外側カバー24を有する。また、左右の分割カバー体20L,20Rは、別体からなり、前記中央カバー23を有する左右の中央側部材21,21と、外側カバー24を有する左右の外側部材22,22とを組み立ててなる。尚、左右の分割カバー体20L,20Rは後述する切欠き部を除いて左右対称をなす。
左右の前記中央側部材21,21は、左右の中央カバー23,23と、前記前面部4の前面に当接して配置する左右の前面覆い部25,25と、前記左右の側面部6L,6Rの前側内面に当接して配置する左右の側面覆い部26,26とを一体に有し、それぞれ厚さ2mm程度のステンレス製の板材からなる。また、中央カバー23と前面覆い部25の間には90度の屈曲部27が設けられると共に、前面覆い部25と側面覆い部26との間には90度の屈曲部28が設けられている。このように前記中央側部材21は、板材を屈曲部27,28において屈曲形成してなる。そして、前記前面覆い部25に対して、中央カバー23は屈曲部27において前側に屈曲され、外側カバー24は屈曲部28において後側に屈曲されている。尚、本実施例におけるステンレス製とはステンレス合金製も含む。
そして、左右の分割カバー体20L,20Rの側面覆い部26,26を、前記左右の側面部6L,6Rに当接した状態で、左右の分割カバー体20L,20Rの中央カバー23,23の内面23N,23N間に前記内面間隔CKが形成される。また、前面覆い部25の内面から中央カバー23の先端までの長さが中央カバー23の前記突出高さCHである。尚、前記前面覆い部25,25は、前記前面部4に当接して分割カバー体20L,20Rを箱体3に位置決めする当接部であり、前記側面覆い部26,26は、前記側面部6L,6Rに当接して分割カバー体20L,20Rを箱体3に位置決めする当接部である。
前記左右の外側部材22,22は、前後方向に配置するステンレス製の平板からなり、その前側により前記外側カバー24,24を構成している。そして、前記左右の外側部材22,22の後側を前記側面覆い部26,26の外面に重ね合わせると共に、前記外側カバー24,24を構成する外側部材22,22の前側を前方に突出した状態で、外側部材22,22の後側を点付け溶着による点付け溶接部22Yなどにより側面覆い部26,26の外面に固定している。また、前記外側部材22において、前記前面覆い部25の内面から外側部材22の先端までの長さが外側カバー24の前記突出高さSHである。
前記左右の側面覆い部26,26とそれぞれに重ね合わせて固定した左右の外側部材22,22の後側により、左右の分割カバー体20L,20Rの側面覆い部29,29を構成している。即ち、側面覆い部29,29は、前記左右の側面覆い部26,26と左右の外側部材22,22の重ね合わせ部分であって、前記屈曲部28の位置より後の部分である。尚、図1及び図5に示すように、側面覆い部26の後端縁は外側部材22の後端縁22Fより僅かに前方に位置して、側面覆い部26の外面と外側部材22の後端縁22Fとの間に段差部30が形成されており、この段差部30において、中央側部材21の外面と外側部材22の後端縁22Fとが前記点付け溶接部22Yにより溶着されている。また、外側部材22の内面と前記屈曲部27側の外面が点付け溶接部22Yにより溶着されている。
前記左右の分割カバー体20L,20Rは、図1などに示すように、固定部材31により前記箱体3に着脱可能に取り付けられる。その固定部材31としては、可撓性を有する紐状部材32と、この紐状部材32の端部に設けた硬質材料からなる緊締具33とを備えたものが例示され、前記固定部材31により、箱体3と分割カバー体20L,20Rを締め付けて固定することができる。尚、この例では、紐状部材32は、断面が縦長の帯状をなす。また、図1などでは、理解を容易にするため、紐状部材32及び緊締具33と箱体3の間に隙間を設けているが、固定状態では紐状部材32及び緊締具33は、箱体3の外面に密着する。
図6及び図7に示すように、前記緊締具33は、その基端側の固定軸33Jにベルトなどの前記紐状部材32の固定側端部32Aが掛け回されて固定されており、先端側の巻付軸34には紐状部材32の自由端部32Bを掛け回して引いたり戻したりできる。また、緊締具33の中央側に回転中心軸35を設けると共に、この回転中心軸35を中心にストッパー36が回動可能に設けられ、このストッパー36は、スプリングなどの付勢手段37によって、その先端側が常時巻付軸側の方向(係止方向)に回動するように付勢されている。
前記ストッパー36の先端側の端面は、鋸歯状等に加工された係止部たる鋸歯状面38となっており、該ストッパー36が係止方向に回動している際に該鋸歯状面38は巻付軸34に当接状態になり(図6)、巻付軸34に自由端部32Bが掛け回されている際には、自由端部32B側は、該鋸歯状面38と巻付軸34との間に挟持され(図7)、緊締具33に固定される。
自由端部32Bの巻付軸34への掛け回しに際しては、ストッパー36の上端部(基端部)36Jを付勢手段37の付勢に抗して押してストッパー36の先端側の鋸歯状面38側を反係止方向に回動させることにより、ストッパー36の先端部と巻付軸34との間に自由端部32Bの挿入間隙が形成される。この挿入間隙に自由端部32Bを挿入し、ストッパー36の上端部36Jを押したまま、あるいは、そこから手を離した状態で自由端部32Bを強く引き、紐状部材32を緊張させる。
この緊張状態においては、紐状部材32の張力により紐状部材32に引き戻し力が加わるが、この際ストッパー36は引っ張られて係止方向に回動しようとする結果、前記鋸歯状面38が紐状部材32に喰い込むため、紐状部材32の引き戻しが阻止され、紐状部材32の緊張状態が保持される。
前記紐状部材32を挿通するために、前記左右の中央カバー23,23には挿通孔41,41が穿設されている。この例では、図2~図4に示すように、前記中央カバー23の上端側及び下端側で、該中央カバー23の基端側に前記挿通孔41,41が穿設されている。尚、挿通孔41は前記帯状の紐状部材32に対応して縦長に形成されている。また、挿通孔41,41の高さ位置は、前記投光素子14及び受光素子14Aが設けられていない高さ位置であって、前記投光素子14及び受光素子14Aが紐状部材32の影響を受けることが無い位置である。
また、前記外側カバー24,24の基端側には、前記挿通孔41,41に対応して、挿通孔41A,41Aが穿設されている。この場合、挿通孔41Aは前記挿通孔41の高さ位置及び前後位置に対応し、この例では高さ位置及び前後位置が同一である。
また、図2及び図3に示すように、左右の分割カバー体20L,20Rの側面覆い部29,29の後縁には、後側が開口した複数の切欠き部43,43,43が設けられており、これら切欠き部43,43,43は前記箱体3の側面部6L,6Rに突出した突出部材44に対応して設けられている。また、左右の分割カバー体20L,20Rの側面覆い部29,29の後縁側には、中央の切欠き部43の上下に前記挿通孔42,42が穿設されている。尚、図4に示すように、前記突出部材44の少なくとも一部は、前記切欠き部43内に収納される。また、挿通孔41,41A,42は、紐状部材が係止する係止部である。
左右で対をなす挿通孔41,41Aは同一高さ位置に設けられ、また、左右で対をなす挿通孔42,42は同一高さ位置に設けられている。尚、前記突出部材44としては、前記前面部4が箱体3に対して開閉可能である場合、前面部4と側面部6L,6Rとの間に設けた開閉用のヒンジ部や前面部4を閉塞状態に保持するロック部材などが例示される。
前記左右の分割カバー体20L,20Rの上部には、蓋体46が着脱可能に設けられている。この蓋体46は、ステンレス製の板材からなり、左右両端縁を下側に折り曲げた左右の折曲げ縁部47,47を有する。そして、これら左右の折曲げ縁部47,47を前記左右の外側カバー24,24の外面に外嵌するようにして、蓋体46が中央カバー23,23及び外側カバー24,24の上部を塞いで着脱可能に取り付けられる。尚、蓋体46を着脱可能にする手段は適宜選定可能である。
次に、着雪防止装置1の車両検知器2,2Aへの取付方法について説明する。箱体3の上端側と下端側において、図5に示すように、箱体3の左右一方の外側から、紐状部材32の自由端部32Bを、挿通孔41A,41,41,41Aの順に通し、通した自由端部32Bと緊締具33とを箱体3の前面部4以外の後面部5又は側面部6L,6Rの外面で連結する。この場合、挿通孔41A,41,41,41Aに挿通する作業は、箱体3に分割カバー体20L,20Rを配置する前と後のいずれに行ってもよい。尚、図5に示したように、紐状部材32は挿通孔41Aにおいて略90度に折り曲げられ、この折曲げ部32Lの位置より後側の部分の紐状部材32は、箱体3の外面に沿って配置され、箱体3の後側の緊締具33に自由端部32Bが連結される。この場合、図5の一点鎖線に示すように紐状部材32は箱体3に一重で巻かれる。
また、図5に示すように、高さ方向中央においては、自由端部32Bを一方の分割カバー体20L,20Rの内面側又は外面側からその挿通孔42に挿通し、挿通して外面側又は内面側に引き出した自由端部32Bを後側に折り返して、挿通孔42において紐状部材32の折り返し部32Vを形成し、箱体3の後側に沿って他方の挿通孔42まで引き回した後、その自由端部32Bを他方の分割カバー体20L,20Rの内面側からその挿通孔42に挿通し、挿通して外面側に引き出した自由端部32Bを後側に折り返して、挿通孔42において紐状部材32の折り返し部32Vを形成し、箱体3の後側の緊締具33に自
由端部32Bを連結する。このように、左右方向両側の挿通孔42,42に、紐状部材32の折り返し部32V,32Vを挿通して係止し、両側の折り返し部32V,32Vの間において、図5の鎖線に示すように紐状部材32を二重に重ね合わせ、固定側端部32Aと自由端部32Bとを緊締具33により連結する。
一方、取り外す際は、ストッパー36の上端部36J(基端部)を付勢手段37の付勢に抗して押し、ストッパー36の先端側の鋸歯状面38側を上方(反係止方向)に回動させることにより、鋸歯状面38による挟持が緩み、紐状部材32が撓むように緩めることができる。この場合、緩めるだけで、自由端部32Bを緊締具33から外す必要はない。
そして、少なくとも分割カバー体20L,20Rの一方を箱体3から外した状態で、開口部11の着雪や汚れを除去することができる。この後、外した分割カバー体20L,20Rを箱体3にセットし、自由端部32Bを引っ張って緊張することにより、再度、箱体3に分割カバー体20L,20Rを簡便に固定することができる。また、不要な夏季などには箱体3から分割カバー体20L,20Rを取り外すこともできる。
次に、図9~図13を用いて、車両検知器2,2Aに設けた着雪防止装置1に係る二次元の数値流体解析を説明する。
まず、数値流体解析に用いたモデルについて説明する。尚、前記着雪防止装置1及び前記車両検知器2と対応する部分には同一符号を付して説明すると、図9はタイプ0~タイプ7を示す。尚、タイプ0は車両検知器の箱体3のみであって、箱体3の前後幅が252mm、左右幅が314mmであり、図9においては他のタイプも箱体3の形状は同一である。
タイプ1は、中央カバー23,23を設けたもので、内面間隔CKが30mm、突出高さCHが50mmである。
タイプ2は、中央カバー23,23を設けたもので、内面間隔CKが30mm、突出高さCHが100mmである。
タイプ3は、中央カバー23,23と外側カバー24,24を設けたもので、内面間隔CKが30mm、突出高さCHが50mm、内面間隔SKが314mm、突出高さSHが200mmである。
このようにタイプ3は、左右一対の中央カバー23,23を挟んで前方に突設された左右一対の外側カバー24,24を備え、また、外側カバー24,24の突出高さSHが中央カバー23,23の突出高さCH以上である。
タイプ4は、中央カバー23,23と外側カバー24,24を設けたもので、内面間隔CKが30mm、突出高さCHが100mm、内面間隔SKが314mm、突出高さSHが200mmである。
このようにタイプ4は、左右一対の中央カバー23,23を挟んで前方に突設された左右一対の外側カバー24,24を備え、また、外側カバー24,24の突出高さSHが中央カバー23,23の突出高さCH以上であり、また、中央カバー23,23の突出高さCHが左右の中央カバー23,23の内面間隔CKの2倍以上であり、また、突出高さCHが100mm以上であるから、請求項1に対応する。
タイプ5は、中央カバー23,23と外側カバーたる斜め外側カバー24S,24Sを設けたもので、内面間隔CKが30mm、突出高さCHが50mmである。また、左右の斜め外側カバー24S,24Sは、箱体3の前面の両側角部から先端側に向かって間隔が狭まるように斜めに配置され、開口部11に対して交差方向に配置され、長さLが166mm、斜め外側カバー24S,24Sの先端の左右間隔Kが50mmである。このように前記左右間隔Kは左右の中央カバー23,23の外面間隔よりも広い。尚、斜め外側カバー24Sと前面部4の挟角は37度である。また、前記斜め外側カバー24S,24Sは、前記中央カバー23,23と間隔を置いて配置されると共に、前記中央カバー23,23を挟んで前方に突設されている。
また、斜め外側カバー24Sの突出高さSHは、略100mm(166mm×SIN37)であって、斜め外側カバー24Sの先端と前面部4の最短間隔である。このようにタイプ5は、左右一対の中央カバー23,23を挟んで前方に突設された左右一対の斜め外側カバー24S,24Sを備え、また、斜め外側カバー24S,24Sの突出高さSHが中央カバー23,23の突出高さCH以上である。
タイプ6は、中央カバー23,23と外側カバー24,24を設けたもので、内面間隔CKが30mm、突出高さCHが200mm、内面間隔SKが314mm、突出高さSHが200mmである。
このようにタイプ6は、左右一対の中央カバー23,23を挟んで前方に突設された左右一対の外側カバー24,24を備え、また、外側カバー24,24の突出高さSHが中央カバー23,23の突出高さCH以上であり、また、中央カバー23,23の突出高さCHが左右の中央カバー23,23の内面間隔CKの2倍以上であり、また、突出高さCHが100mm以上であるから、請求項1に対応する。
タイプ7は、タイプ6の外側カバー24の先端に、左右方向中央側に突出する前縁部48を設けたものであり、この前縁部48は前面部4と平行であって、左右幅は50mmである。
このようにタイプ7は、左右一対の中央カバー23,23を挟んで前方に突設された左右一対の外側カバー24,24を備え、また、外側カバー24,24の突出高さSHが中央カバー23,23の突出高さCH以上であり、また、中央カバー23,23の突出高さCHが左右の中央カバー23,23の内面間隔CKの2倍以上であり、また、突出高さCHが100mm以上であるから、請求項1に対応する。
尚、タイプ7は、中央側に突出する前縁部48を備えることにより、前縁部48の内端と中央カバー23の外面との間隔が、外側カバー24の内面と中央カバー23の外面との間隔より狭くなる。具体的には、中央カバー23の厚さが2mmの場合、前縁部48の内端と中央カバー23の外面との間隔は92mmとなり、92mmは内面間隔CKの2倍以上である。
一方、タイプ7は外側カバー24の先端に前縁部48を設けることにより、外側カバー24の先端の剛性が向上するから、前縁部48を左右方向外側に突出するようにしてもよく、このように前縁部48を左右方向外側に突出したタイプも請求項1に対応する。
また、タイプ3~7においては、各実施例に示すように、中央カバー23と外側カバー24を箱体3に着脱可能に設けることができる。
尚、数値流体解析による着雪防止装置1の設計において、当初は、中央カバー23のみを設けたタイプ1,2のように、中央カバー23の突出高さCHを変えることにより着雪防止効果の違いを検討し、突出高さCHが大きいタイプ2の方がタイプ1より着雪防止効果が高いことが判った。
しかし、車両検知器2,2Aの前方は車両が走行する場所であり、突出できる寸法に制限を受けると共に、突出高さCHが大になると、中央カバー23への風の影響が大となるため、現実上、突出高さCHの寸法に制限があることが判った。また、投光素子14の発する検知用の光への影響からも突出高さCHの寸法が制限される。
そこで、前方及び斜め前方からの風によって中央カバー23,23の間に侵入する雪の量を減らすために、外側カバー24を設けることを発案し、外側カバー24,24を取り付けたタイプ3~タイプ7を評価するために数値流体解析を用いた。
図10は数値流体解析によって得られた風速分布を示し、図11~図12は、その風速分布に基づいて雪粒子の移動経路を計算し、粒子が開口部11に到達する数をカウントし、正規化したものを示している。
図10及び図11は、開口部11に直交する風向きであって、角度θが0度で風向きが箱体3の前後方向と同一の場合、図12は風向きが前記前後方向と30度の角度θをなす場合である。尚、図示しないが、風向きが前記前後方向と15度の角度θをなす場合、風向きが前記前後方向と45度の角度θをなす場合の解析も行った。
雪粒子の挙動のモデリングには、分散相モデル(Discrete Phase model; DPM)と呼ばれる手法を用い、その結果を図10~図12に示す。
前記分散相モデルでは、空気(流体相)は連続体として扱われ、連続方程式とナビエ-ストークス方程式によって支配される(これはいずれの方法でも同様)。一方、雪粒子は、連続相を通る個別の粒子(離散相)として扱われる。雪粒子は、連続体(流体相)に沿って移動するので、ある場所で発生させた粒子がどのような経路で移動するかを追跡することで、任意の箇所に到達する粒子の数を得ることができ、開口部11に到達した粒子をヒット粒子(hit particle)と表現する。
また、本実施例と各タイプ1~タイプ7とでは、中央カバー23の内面間隔CKが異なるため、本実施例と各タイプ1~タイプ7毎に、中央カバー23の内面間隔CKに対する中央カバー23の突出高さCHの寸法比を、突出高さCH/内面間隔CKにより求めた。即ち、突出高さCHが大きいほどヒット粒子の到達度は低くなり、内面間隔CKが大きいほどヒット粒子の到達度は高くなるから、突出高さCHを内面間隔CKにより除した寸法比が到達度の基準になると考えた。即ち、寸法比=突出高さCH/内面間隔CKと定義した。
前記寸法比は、本実施例では、150/40から略3.75,タイプ1,3,5では、50/30から略1.66,タイプ2,4では、100/30から略3.33,タイプ6,7では、200/30から略6.66となり、これらを下記の表1に示す。尚、中央カバー23及び外側カバー24のないものがタイプ0である。
二次元の数値流体解析を用いて得られた図13のグラフ図により、以下の比較結果が得られた。タイプ2は外側カバー24がなく且つ寸法比がタイプ1の2倍であり、このタイプ2をタイプ1と比較すると、角度θが0度では違いが少ないのに対して、角度θが15度ではタイプ2の到達度が大幅に下がることが分かる(以下、比較結果1と言う)。
外側カバー24の有無に係り、タイプ1とタイプ3の比較と、タイプ2とタイプ4の比較とにより、外側カバー24を設けることにより到達度が大幅に下がることが分かる(以下、比較結果2という)。
タイプ6は、突出高さCH,SHがタイプ1~タイプ7の中で最大であり、突出高さCH,SHが等しく、このタイプ6では、角度θが15度以上では到達度が0という解析結果が得られた。このようにタイプ6は、タイプ1~タイプ7で最大の着雪防止効果が得られ、突出高さSHが突出高さCHを超える場合もそれ以上の効果が得られると予想される。即ち、突出高さSHが突出高さCH以上とすることにより、好ましい着雪防止効果が得られる。そして、外側カバー24を設けたタイプ3~7においては、正面側からの風により、箱体3の前面で左右両側の中央カバー23と外側カバー24との間の空間の圧力が上昇し、また、渦が発生する場合があり、前記圧力上昇により中央カバー23,23の間へ入る風が抑制される。このためは外側カバー24の先端位置より中央カバー23の先端が突出していないことが好ましく、外側カバー24の突出高さSHを中央カバー23の突出高さCH以下とすることにより、着雪防止効果が向上することが判った(以下、比較結果3という)。尚、この場合も外側カバー24の突出高さSHが同じ場合、中央カバー23の突出高さCHが高い方が着雪防止効果に優れる。
斜め外側カバー24Sを設けたタイプ5は、突出高さCHが等しく外側カバー24のないタイプ1に比べて到達度が低く、斜めであっても外側カバー24を設けた効果が得られた(比較結果4)。
また、突出高さCHの等しいタイプ3とタイプ5の比較により、角度θが約18度以下では、タイプ3の到達度が低く、これは正面側からの風により、箱体3の前面で左右両側の中央カバー23と外側カバー24との間の空間の圧力が上昇し、また、渦が発生する場合があり、前記圧力上昇により中央カバー23,23の間へ入る風が抑制されたためである(比較結果5)。また、この比較結果5のように、図11(角度θ=0)などにおいて、タイプ3はタイプ1に比べて、箱体3の前面における粒子軌道が粗であり、箱体3の前面に風が流れ込み難くなっている。
一方、角度θが約18度を超えると、タイプ5がタイプ3より到達度が低くなるが、これは、図12(θ=30度)などに示すように、タイプ5では斜め外側カバー24Sが中央カバー23,23の前方に位置し、風を遮るためと考えられる。
図13のグラフ図にタイプ4,7として示すように、タイプ7はタイプ4と略同等の結果が得られ、上記寸法の前縁部48を設けることによる顕著な効果の違いは認められなかった。
本実施例の着雪防止装置1によれば、中央カバー23,23に外側カバー24,24を組み合わせることにより、側面側からの風だけでなく、正面側からの風による開口部11への雪の到達を抑制し、効果的に開口部11への着雪を防止することができる。
これを数値流体解析の結果により説明すると、本実施例の着雪防止装置1の寸法比は3.75であって、突出高さCHが100mmのタイプ2の寸法比(3.33)より大きく、タイプ2に比べて着雪防止効果に優れ、中央カバー23,23に外側カバー24,24を備えたタイプ6よりは突出高さCH,SHが低いため到達度が大きくなると思われるが、上記比較結果2及び3のように外側カバー24,24を設けることにより、着雪防止効果に優れたものとなる。
尚、本実施例の着雪防止装置1は、前記寸法比によれば、外側カバーがなく、突出高さCHが150mmの中央カバー23,23のみでも、従来例より着雪防止効果が高いものとなる。
このように本実施例では、請求項1に対応して、ETCゲートに設置される車両検知器2,2Aに設けられる車両検知器用着雪防止装置1であって、車両に検知用の光を水平方向に照射する投光素子14と投光素子14が照射した検知用の光を受光する受光素子14Aのいずれか一方を収容すると共に検知用の光を通過させる縦長で水平方向前向きの開口部11を備えた箱体3に設けられ、箱体3の前面たる前面部4から前方に向かって水平方向に突出すると共に開口部11を挟んで長手方向が垂直方向に配置された左右一対の中央カバー23,23と、左右一対の中央カバー23,23と間隔を置いて長手方向が垂直方向に配置され、左右一対の中央カバー23,23を挟んで前方に向かって水平方向に突設された左右一対の外側カバー24,24と、左右一対の中央カバー23,23と左右一対の外側カバー24,24との間に設けられ、前部開口を有する左右の空間とを備え、左右一対の中央カバー23,23と左右一対の外側カバー24,24同士は平行であり、中央カバー23の突出高さCHが左右の中央カバー23,23の内面間隔SKの2倍以上であり、中央カバー23の突出高さCHが100mm以上であり、外側カバー24の突出高さSHが中央カバー23の突出高さCH以上であるから、前側から風を受けると、中央カバー23と外側カバー24の間の空間の圧力が上昇し、新たな空気の侵入が防止されるため、中央カバー23,23の間への雪の侵入を効果的に抑制できる。
このように本実施例では、請求項2に対応して、左右一対の中央カバー23,23と左右一対の外側カバー24,24の上部開口を塞ぐ蓋体46を備えるから、上部開口から外側カバー24,24の間及び中央カバー23,23の間への雪の侵入を防止し、また、箱体3の上部において、外側カバー24と中央カバー23との間に発生する渦の流れが前記上部開口から逃げることを防止して中央カバー23,23間への気流の侵入を抑制することができる。
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、中央カバー23が箱体3に着脱可能に設けられているから、中央カバー23を取り外して開口部11の着雪を取り除くことができる。
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、中央カバー23と外側カバー24を備えた左右の分割カバー体20L,20Rを備え、これら左右の分割カバー体20L,20Rが箱体3に着脱可能に設けられているから、分割カバー体20L,20Rを取り外して着雪を取り除くことができ、しかも、分割したものであるから、一方の分割カバー体20L,20Rを取り外すだけで着雪を取り除くことができ、組立及び取外も容易となる。
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、中央カバー23と外側カバー24の設計評価は、数値流体解析により行われるから、設計において、現地で実験することなく、または、現地での実験を少なくして、着雪防止効果の高い着雪防止装置1を設計することができる。
以下、実施例上の効果として、請求項1において、中央カバー23の突出高さCHが左右の中央カバー23,23の内面間隔CKの2.5倍以上であるから、中央カバー23,23の間への雪の侵入を効果的に抑制できる。尚、2.5倍は、中央カバー23については、CK=40mm,CH=100mmの場合の寸法比に相当し、タイプ1(寸法比:1.66)とタイプ2(寸法比:3.33)の平均値である。
また、中央カバー23の突出高さCHが左右の中央カバー23,23の内面間隔CKの10/3倍以上、この例では3.75であるから、開口部11の直交方向に対して15~30度傾いた風による雪の付着の抑制効果に優れる。尚、寸法比が10/3は、前記タイプ2に相当する。
また、中央カバー23,23の内面間隔CKが36~44mm(36mm以上、44mm以下)、この例では40mmであり、中央カバー23の突出高さCHが左右の中央カバー23,23の内面間隔CKの10/3倍以上、この例では133(40×10/3)mm以上である150mmであるから、外側カバー24の突出高さSHが中央カバー23の突出高さSH以上で、この例では両突出高さCH,SHが等しいから、中央カバー23,23の間への雪の侵入を効果的に抑制できると共に、角度θが15~30度の風による雪の付着の防止効果に優れたものとなる。また、突出高さCH,SHを、内面間隔CKの150/40倍以上である150mm以上とすることがより好ましい。
また、別体である左右の分割カバー体20L,20Rは、中央カバー23を有する左右の中央側部材21,21と、外側カバー24を有する左右の外側部材22,22とを組み立ててなるから、外側部材22を用いずに外側カバー24のみを設ける場合に比べて、中央側部材21と外側カバー24との箱体3への取付及び中央カバー23と外側カバー24の平行度の角度管理が容易となる。さらに、前記左右の外側部材22,22の後側を側面覆い部26,26の外面に重ね合わせ、段差部30において、中央側部材21と外側部材22とを前記点付け溶接部22Yにより溶着すると共に、外側部材22の内面と屈曲部27の外面を点付け溶接部22Yにより溶着したから、中央カバー23及び外側カバー24の箱体3への位置合わせ及びその組立作業が容易となる。
前記中央側部材21は、中央カバー23に直交する前面覆い部25と、中央カバー23と平行な側面覆い部26とを有するから、左右の分割カバー体20L,20Rが別体でありながら、前面覆い部25を前面部4に当接することにより、中央カバー23の箱体3に対する突出高さを正しく決めることができると共に、側面覆い部26,26を側面部6L,6Rに当接することにより、左右の中央カバー23,23の左右の位置決めと内面間隔CKを正しく行うことができる。
前記左右の分割カバー体20L,20Rは、紐状部材32を締め付けて固定する複数の固定部材31により、前記箱体3に着脱可能に取り付けられるから、着脱を容易に行うことができる。また、紐状部材32を緩めれば、それら左右の分割カバー体20L,20Rの取外も容易となる。さらに、前記紐状部材32を挿通するために、左右の中央カバー23,23には挿通孔41,41が穿設され、外側カバー24,24の基端側には、挿通孔41,41に対応して、挿通孔41A,41Aが穿設され、紐状部材32をそれら挿通孔41A,41,41,41Aに挿通すると共に、側面覆い部26,26の外面に沿って配置し、その紐状部材32を緊締具33により締め付けるから、箱体3に対して中央カバー23及び外側カバー24を位置決め状態で固定することができる。また、挿通孔41,41Aは前後位置が同一か、中央カバー23の挿通孔41が外側カバー24の挿通孔41Aより前側に位置するから、紐状部材32により中央カバー23側の前面覆い部25を前面部4に押し当てて取り付けることができる。また、上端側と下端側に紐状部材32を配置することにより、上端側の紐状部材32と下端側の紐状部材32の間には、左右の中央カバー23,23の間に他の部材がなく、検知用の光を遮るものがない。
前記外側カバー24を箱体3の前面部4の左右の縁から突設したから、中央カバー23と外側カバー24の間隔を広く取ることができ、中央カバー23と外側カバー24との間の空間の圧力が上昇したり、渦が発生したり、これらが同時に発生したりする範囲を広くでき、中央カバー23,23の間への空気の侵入を抑制できる。また、中央カバー23及び外側カバー24の厚さは5mm以下、好ましくは3mm以下の中実な板材からなるから、構造が簡易となる。
前記外側カバー24,24の上部開口を塞ぐ蓋体46を備え、また、前記外側カバー24,24の下部開口は、下部閉塞部材あるベース部7に近接又はベース部7により塞がれているから、下部側において、蓋体46と同様な効果が得られる。
前記外側カバー24の内面と中央カバー23の外面との間隔が、内面間隔CKの2倍以上であり、この例では、90/40=2.25倍であるから、箱体3の前面において圧力が上昇する空間の左右幅を確保することができる。尚、外側カバー24の内面間隔224mmから内面間隔40mmと中央カバー23,23の厚さ2×2=4mmを引いた値の2分の1が90mmである。また、この幅90mmは左右で等しい。
また、タイプ5では、左右の斜め外側カバー24S,24Sは、開口部11に対して斜めに設けられると共に、先端側に向かって相互の間隔が狭まるように左右対称に形成され、それら斜め外側カバー24S,24Sの先端が中央カバー23,23の前側に位置すると共に、間隔Kが内面間隔CKより広く、中央カバー23,23が同一で、斜め外側カバー24S,24Sの無いタイプ1に比べて着雪防止効果に優れたものとなる。
さらに、タイプ5においては、斜め外側カバー24Sと前面部4の挟角は37度であるが、前記挟角を37度~45度程度にしてもよい。尚、タイプ5において、前記挟角は、45度を超えて90度以下としてもよく、前記挟角を90度にすれば、タイプ3と同一になる。