以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.センサーモジュールの構成例
図1に本実施形態のセンサーモジュール10の構成例を示す。センサーモジュール10は複数のセンサーデバイスにより構成される物理量検出モジュールであり、このセンサーモジュール10によりセンサーシステムやセンターユニットが実現される。
図1のセンサーモジュール10は、第1センサーデバイス20Xと、第2センサーデバイス20Yと、マイクロコントローラー80と、選択回路11と、を含む。なお、センサーモジュール10は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば図1ではセンサーデバイスの個数が2個の場合の例を示しているが、センサーデバイスの個数は3個以上であってもよい。例えば、nを2以上の整数として、本実施形態のセンサーモジュール10は第1センサーデバイス~第nセンサーデバイスを含むことができる。
第1センサーデバイス20Xは、第1センサー素子50Xと、第1センサー素子50Xからの信号が入力されて検出処理を行う第1検出回路60Xと、第1検出回路60Xからの第1検出データSD1を出力する第1インターフェース回路70Xを含む。第1センサーデバイス20Xは、第1センサー素子50Xと、第1検出回路60X及び第1インターフェース回路70Xを含む集積回路装置とが、パッケージに収容されたデバイスである。集積回路装置は半導体により実現されるICチップである。そして、第1センサーデバイス20Xは、例えばパッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS1、端子TCK1、端子TDI1及び端子TDO1を有する。
第2センサーデバイス20Yは、第2センサー素子50Yと、第2センサー素子50Yからの信号が入力されて検出処理を行う第2検出回路60Yと、第2検出回路60Yからの第2検出データSD2を出力する第2インターフェース回路70Yを含む。第2センサーデバイス20Yは、第2センサー素子50Yと、第2検出回路60Y及び第2インターフェース回路70Yを含む集積回路装置とが、パッケージに収容されたデバイスである。そして、第2センサーデバイス20Yは、例えばパッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS2、端子TCK2、端子TDI2及び端子TDO2を有する。
なお、センサーデバイスの個数を3個以上とし、第nセンサーデバイスを設ける場合には、第nセンサーデバイスは、第nセンサー素子と、第nセンサー素子からの信号が入力されて検出処理を行う第n検出回路と、第n検出回路からの第n検出データを出力する第nインターフェース回路を含むことができる。
第1センサー素子50X、第2センサー素子50Yは、物理量を検出するセンサー素子であり、物理量トランスデューサーとも言うことができる。物理量は、例えば角速度、加速度、角加速度、速度、距離、圧力、音圧又は磁気量等である。第1センサー素子50Xと第2センサー素子50Yは、互いに異なる物理量を検出する。角速度を例にとれば、第1センサー素子50Xは第1軸回りの角速度を検出し、第2センサー素子50Yは第2軸回りの角速度を検出する。加速度を例にとれば、第1センサー素子50Xは第1軸の方向での加速度を検出し、第2センサー素子50Yは第2軸の方向での加速度を検出する。或いは、第1センサー素子50Xが、物理量である角速度、加速度、角加速度、速度、距離、圧力、磁気量のうちの第1物理量を検出し、第2センサー素子50Yが、第1物理量と
は異なる第2物理量を検出してもよい。一例としては、第1センサー素子50Xが角速度を検出し、第2センサー素子50Yが加速度を検出する。
第1検出回路60X、第2検出回路60Yは、アナログ回路と、アナログ回路からのアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路を含むことができる。アナログ回路は、センサー素子からの信号を増幅する増幅回路や、同期検波回路などの検波回路や、ゲイン調整回路や、或いはオフセット調整回路などを含むことができる。A/D変換回路は、デジタルの検出データを第1インターフェース回路70Xに出力する。A/D変換回路のA/D変換方式としては、逐次比較型、デルタシグマ型、フラッシュ型、パイプライン型又は二重積分型等を採用できる。
第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Yは、例えばデジタルのインターフェース処理を行う回路であり、例えばシリアルデータの送信や受信を行う。本実施形態では、第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Yは、SPI(Serial Peripheral Interface)の通信規格のインターフェース処理を行う。ただし、これらのインターフェース回路は、I2C(Inter-Integrated Circuit)の通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格のインターフェース処理を行ってもよい。
マイクロコントローラー80は、第1センサーデバイス20Xからの第1検出データSD1及び第2センサーデバイス20Yからの第2検出データSD2が入力される。センサーモジュール10は、第1センサーデバイス20X及び第2センサーデバイス20Yとマイクロコントローラー80とを電気的に接続するデジタルインターフェースバスBSを含む。デジタルインターフェースバスBSは、第1インターフェース回路70X及び第2インターフェース回路70Yが行うインターフェース処理の通信規格に準拠したバスである。デジタルインターフェースバスBSは、データ信号線、クロック信号線等を含む。また、本実施形態では、デジタルインターフェースバスBSは、チップセレクト信号線を含む。マイクロコントローラー80は、デジタルインターフェースバスBSを介して、第1センサーデバイス20Xから第1検出データSD1が入力され、第2センサーデバイス20Yから第2検出データSD2が入力される。
なお、第1インターフェース回路70Xは、端子TCS1、端子TCK1、端子TDI1、端子TDO1を介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、第2インターフェース回路70Yは、端子TCS2、端子TCK2、端子TDI2、端子TDO2を介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、マイクロコントローラー80は、端子TCS、端子TCK、端子TDI、端子TDOを介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。ここで、電気的に接続とは電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。
マイクロコントローラー80は、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yに対してマスターとなるコントローラーである。マイクロコントローラー80は、集積回路装置であり、例えばMPU、CPUなどのプロセッサーにより実現できる。或いはマイクロコントローラー80を、ゲートアレイなどの自動配置配線によるASICにより実現してもよい。
本実施形態では、第1センサーデバイス20Xは、同期信号SYCの入力と、通信信号の入力または出力とに用いられる第1端子を含む。そして、第1インターフェース回路70Xは、第1端子に入力された同期信号SYCに基づいて、第1検出データSD1をマイクロコントローラー80に出力する。また、第2センサーデバイス20Yは、同期信号S
YCが入力される第2端子を含む。そして、第2インターフェース回路70Yは、第2端子に入力された同期信号SYCに基づいて、第2検出データSD2をマイクロコントローラー80に出力する。また、マイクロコントローラー80は、同期信号SYCの入力と、通信信号の出力または入力とに用いられる第3端子を含む。したがって、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yは、同期信号SYCの入力と通信信号の入出力とを第1端子、第2端子を用いて行うことができる。これにより、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yは同期信号SYCの入力と通信信号の入出力と共通の端子で行うことができるので、センサーデバイスの回路を簡略化することができる。
通信信号は、第1センサーデバイス20X及び第2センサーデバイス20Yとマイクロコントローラー80との間の通信に用いられる信号である。本実施形態では、チップセレクト信号XCS、クロック信号SCLK、データ入力信号SDI及びデータ出力信号SDOがそれぞれ通信信号に相当する。チップセレクト信号XCSは、マイクロコントローラー80の端子TCSから、第1センサーデバイス20Xの端子TCS1及び第2センサーデバイス20Yの端子TCS2へと出力される信号である。クロック信号SCLKは、マイクロコントローラー80の端子TCKから、第1センサーデバイス20Xの端子TCK1及び第2センサーデバイス20Yの端子TCK2へと出力される信号である。データ入力信号SDIは、マイクロコントローラー80の端子TDOから、第1センサーデバイス20Xの端子TDI1及び第2センサーデバイス20Yの端子TDI2へと出力される信号である。データ出力信号SDOは、第1センサーデバイス20Xの端子TDO1又は第2センサーデバイス20Yの端子TDO2から、マイクロコントローラー80の端子TDIへと出力される信号である。
本実施形態では、第1センサーデバイス20Xの第1端子は端子TDI1であり、第2センサーデバイス20Yの第2端子は端子TDI2であり、マイクロコントローラー80の第3端子は端子TDOである。ただし、第1端子、第2端子及び第3端子は、端子TCS1、端子TCS2及び端子TCSであってもよいし、端子TCK1、端子TCK2及び端子TCKであってもよいし、端子TDO1、端子TDO2及び端子TDOであってもよい。
選択回路11は、マイクロコントローラー80からの信号に基づいて、同期信号SYCを第1インターフェース回路70Xおよび第2インターフェース回路70Yに入力するか否かを選択する。本実施形態では、選択回路11は、バッファー12と、抵抗13と、プルアップ抵抗14と、プルダウン抵抗15と、を含む。
バッファー12は、入力端子と出力端子と制御端子とを有するスリーステートバッファーである。プルダウン抵抗15はバッファー12の入力端子に電気的に接続され、プルアップ抵抗14はバッファー12の制御端子に電気的に接続され、抵抗13はバッファー12の出力端子に電気的に接続されている。また、バッファー12の入力端子には外部同期信号EXSYCが入力され、バッファー12の制御端子にはマイクロコントローラー80の端子TCTから出力される制御信号CTが入力される。そして、制御信号CTがLレベル(ローレベル)のとき、バッファー12は、入力端子と出力端子とが導通するスルーモードで動作し、入力端子に入力された外部同期信号EXSYCを出力端子から出力する。そして、バッファー12を通過した外部同期信号EXSYCは、同期信号SYCとして、端子TDI1を介して第1インターフェース回路70Xに入力されるとともに、端子TDI2を介して第2インターフェース回路70Yに入力される。また、同期信号SYCは、端子TDOを介してマイクロコントローラー80に入力される。
一方、制御信号CTがHレベル(ハイレベル)のとき、バッファー12は、入力端子と出力端子とが非導通となり、Hi-Z(ハイインピーダンス)出力となる。バッファー1
2がHi-Z出力のとき、マイクロコントローラー80は、チップセレクト信号XCSをアクティブにして第1センサーデバイス20X及び第2センサーデバイス20Yとデータ通信を行うことができる。
なお、マイクロコントローラー80の端子TDOは、同期信号SYCが入力される端子であるとともにデータ入力信号SDIを出力する端子でもあるため、入力端子にも出力端子にもなり得る。そのため、マイクロコントローラー80は、第1センサーデバイス20X又は第2センサーデバイス20Yとデータ通信を行う前に端子TDOを出力端子に設定し、端子TCTからLレベルの制御信号CTを出力する前に端子TDOを入力端子に設定する。例えば、マイクロコントローラー80は、不図示のレジスターに0又は1を書き込むことにより、端子TDOを入力端子又は出力端子に設定することができる。
ここで、同期信号SYCは、外部同期信号EXSYC又は外部同期信号EXSYCに基づく信号である。上述の通り、図1では、同期信号SYCは外部同期信号EXSYCである。外部同期信号EXSYCに基づく信号とは、外部同期信号EXSYCを用いて生成された信号である。例えば、外部同期信号EXSYCに基づく信号は、後述の図3で説明するように、マイクロコントローラー80などの回路が、外部同期信号EXSYCをクロック信号でサンプリングすることなどにより生成される信号である。外部同期信号EXSYCは、後述の図7のホストデバイス210などの外部デバイスから、センサーモジュール10に入力される信号であり、同期タイミング毎にアクティブになる信号である。例えば外部同期信号EXSYCは一定期間毎にアクティブになる信号である。アクティブとは、正論理の場合にはHレベル(ハイレベル)であり、負論理の場合にはLレベル(ローレベル)である。
以上のように、本実施形態のセンサーモジュール10では、第1センサーデバイス20Xは、第1端子である端子TDI1に入力された同期信号SYCに基づいて第1検出データSD1をマイクロコントローラー80に出力し、第2センサーデバイス20Yは、第2端子である端子TDI2に入力された同期信号SYCに基づいて第2検出データSD2をマイクロコントローラー80に出力する。したがって、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yは、入力された同期信号SYCを用いて、適切なタイミングでの検出データを取得し、マイクロコントローラー80に出力できるようになる。これにより、センサーモジュール10を用いて計測される情報の高精度化等を図れるようになる。
例えば、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Y等からの検出データに基づいて、計測対象物の姿勢情報、移動距離情報又は慣性情報等の情報を適正に計測するためには、各検出データの同期がとれているか、或いは各検出データを取得した時間が明確になっていることが望まれる。
この点、本実施形態の第1の比較例の手法として、各センサーデバイスが、検出データの出力期間の直前に取得された検出データを、マイクロコントローラー80に出力する手法が考えられる。例えば第1センサーデバイス20Xが第1出力期間で第1検出データSD1を出力し、第2センサーデバイス20Yが第1出力期間の次の第2出力期間で第2検出データSD2を出力するとする。この場合に第1の比較例の手法では、第1センサーデバイス20Xは、第1出力期間の直前の第1タイミングにおいて第1検出回路60Xから取得された第1検出データSD1をマイクロコントローラー80に出力する。第2センサーデバイス20Yは、第2出力期間の直前の第2タイミングにおいて第2検出回路60Yから取得された第2検出データSD2をマイクロコントローラー80に出力する。
しかしながら、上述の第1タイミングと第2タイミングは時間的にずれたタイミングであるため、第1検出データSD1の取得タイミングと第2検出データSD2の取得タイミ
ングが時間的にずれてしまい、検出データの取得タイミングが同期しなくなってしまう。第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yが、各々、X軸角速度センサーデバイス、Y軸角速度センサーデバイスである場合を例にとると、X軸角速度データの取得タイミングと、Y軸角速度データの取得タイミングが時間的にずれてしまう。したがって、これらのX軸角速度データとY軸角速度データにより、移動体などの計測対象物の姿勢情報を計測する場合に、正確な姿勢情報を計測できなくなってしまう。
この点、本実施形態によれば、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yは、共通の同期信号SYCを用いて第1検出回路60X、第2検出回路60Yから取得された第1検出データSD1、第2検出データSD2を、マイクロコントローラー80に出力できる。即ち、第1検出データSD1と第2検出データSD2の取得タイミングを同期化できる。角速度センサーデバイスを例にとれば、共通の同期タイミングで取得されたX軸角速度データとY軸角速度データをマイクロコントローラー80に出力できる。したがって、これらのX軸角速度データとY軸角速度データにより、計測対象物の姿勢情報を計測する場合に、より正確で高精度に姿勢情報を計測することが可能になる。
また、本実施形態の第2の比較例の手法として、マイクロコントローラー80が複数のセンサーデバイスを共通宛先とするコマンドを発行した場合に、そのコマンド発行により特定される共通の取り込みタイミングで、各検出回路からの検出データを取得し、マイクロコントローラー80に出力する手法も考えられる。例えば、各センサーデバイスは、コマンドの解釈の結果、複数のセンサーデバイスを共通宛先とするコマンドであると判断したタイミングで、各検出回路からの検出データを取得し、マイクロコントローラー80に出力する。
しかしながら、マイクロコントローラー80のコマンドの発行は、一定期間毎に行われるものではなく、発行タイミングに時間的なゆらぎがある。このため検出データの取得タイミングにもゆらぎが生じ、このゆらぎが原因となって、センサーモジュール10を用いて取得される計測対象物の姿勢情報等の情報が、不正確で不適切なものになってしまう。マイクロコントローラー80は、センサーデバイスへのコマンド発行処理のみならず、他の様々な処理を行っている。このため優先度が高い割り込み要求があった場合には、その割り込み処理が優先されて実行され、センサーデバイスへのコマンド発行処理がウェイトされてしまう。したがって、他の割り込み要求が原因となって、センサーデバイスへのコマンド発行のタイミングにも時間的なゆらぎが生じ、検出データの取得タイミングにも時間的なゆらぎが生じてしまう。
この点、本実施形態によれば、各センサーデバイスは、マイクロコントローラー80で行われている処理には依存せずに、同期信号SYCを用いて検出回路から検出データを取得できる。例えば、マイクロコントローラー80が、割り込みの優先度が高い処理を行っていても、それとは無関係に、同期信号SYCの同期タイミングで検出データを取得できる。したがって、上記のような検出データの取得タイミングに時間的なゆらぎが発生する問題を抑制できるようになる。
例えば、本実施形態では、第1インターフェース回路70Xは、同期信号SYCの同期タイミングで第1検出回路60Xから取り込まれた第1検出データSD1をマイクロコントローラー80に出力する。第2インターフェース回路70Yは、同期信号SYCの同期タイミングで第2検出回路60Yから取り込まれた第2検出データSD2をマイクロコントローラー80に出力する。
このようにすれば、第1インターフェース回路70Xは、同期タイミングで取り込まれた第1検出データSD1をレジスター等に保持しておくことができる。そして、第1イン
ターフェース回路70Xは、マイクロコントローラー80が検出データの読み出しコマンドを発行した場合に、保持された第1検出データSD1をマイクロコントローラー80に出力できる。したがって、第1インターフェース回路70Xは、マイクロコントローラー80のコマンド発行タイミングには依存しない同期信号SYCの同期タイミングにおいて、第1検出回路60Xから第1検出データSD1を取得して、コマンドが発行された際にマイクロコントローラー80に出力できる。同様に、第2インターフェース回路70Yは、同期タイミングで取り込まれた第2検出データSD2をレジスター等に保持しておくことができる。そして、第2インターフェース回路70Yは、マイクロコントローラー80が検出データの読み出しコマンドを発行した場合に、保持された第2検出データSD2をマイクロコントローラー80に出力できるようになる。したがって、第2インターフェース回路70Yは、コマンド発行タイミングには依存しない同期タイミングにおいて、第2検出回路60Yから第2検出データSD2を取得して、コマンドが発行された際にマイクロコントローラー80に出力できるようになる。したがって、第2の比較例の手法において問題となっていた検出データの取得タイミングの時間的なゆらぎの問題を抑制できる。
図2はマイクロコントローラー80の構成例を示す図である。マイクロコントローラー80は、デジタルインターフェース回路82、処理回路90、信号処理回路92、割り込みコントローラー94、ホストインターフェース回路96を含む。デジタルインターフェース回路82は、センサーデバイスとのインターフェース処理を行う回路である。即ち、第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Yとの間でマスターとしてのインターフェース処理を行う。デジタルインターフェース回路82は、端子TCS、端子TCK、端子TDO、端子TDIを介してデジタルインターフェースバスBSに接続される。本実施形態では、デジタルインターフェース回路82は、第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Yと同様に、SPIの通信規格のインターフェース処理を行う。ただし、デジタルインターフェース回路82は、I2Cの通信規格、又はSPIの通信規格やI2Cの通信規格を発展させたり一部を改良又は改変した通信規格のインターフェース処理を行ってもよい。
処理回路90は、マイクロコントローラー80のコアCPUに対応する回路であり、各種の演算処理や制御処理を実行する。処理回路90は、各種のレジスターを有するレジスター部91を含む。信号処理回路92は、フィルター処理や補正処理などのデジタル信号処理を行う回路であり、DSPなどにより実現できる。具体的には、J、Kを2以上の整数として、信号処理回路92は、検出データに対して最新のJ個の検出データの移動平均を計算した後、1/Kのレートにダウンサンプリングする処理を行う。また、信号処理回路92は、フィルター処理後の検出データに対する温度補正等の補正処理を行う。そして、処理回路90は、補正処理後の検出データを、レジスター部91に格納する処理を行う。さらに、処理回路90は、検出データの準備完了信号である信号DRDYを生成して、端子TRを介して、後述の図7のホストデバイス210に信号DRDYを出力する。この信号DRDYは、信号処理回路92でのデジタル信号処理が完了したことを知らせる信号である。
レジスター部91は、外部よりアクセス可能な複数のレジスターを有する。例えば、ホストデバイス210は、ホストインターフェース回路96を介してレジスター部91のデータレジスターにアクセスして、検出データを読み出すことができる。なお、処理回路90は、検出データのデータレジスターの更新回数のカウント処理を行う。そして、処理回路90は、カウントされた更新回数を、レジスター部91の更新回数レジスターに書き込む。これにより、ホストデバイス210は、マイクロコントローラー80から読み出した検出データが、何番目のデータであるのかを特定できる。
また、処理回路90は、レジスター部91の制御レジスターの所定のビットに0又は1
を書き込むことにより、端子TCTからLレベル又はHレベルの制御信号CTを出力する。なお、図1のように端子TCTにはプルアップ抵抗14が電気的に接続されているため、処理回路90は、端子TCTをHi-Zにすることにより、制御信号CTがHレベルとなるようにしてもよい。
また、処理回路90は、レジスター部91に含まれる制御レジスターの所定のビットに0又は1を書き込むことにより、端子TDOを入力端子又は出力端子に設定する。具体的には、処理回路90は、第1センサーデバイス20X又は第2センサーデバイス20Yとデータ通信を行う前に端子TDOを入力端子に設定し、端子TCTからLレベルの制御信号CTを出力する前に端子TDOが入力端子となるように設定する。
割り込みコントローラー94は各種の割り込み要求を受け付ける。そして、割り込みコントローラー94は、優先順位と割り込みレベルに従って、処理回路90に対して、割り込み要求、割り込みレベル、ベクター番号を知らせる信号を出力する。割り込みコントローラー94には、割り込み要求信号の1つとして端子TDOを介して外部同期信号EXSYCが入力される。処理回路90は、外部同期信号EXSYCによる割り込み要求が受け付けられると、対応する割り込み処理を実行する。なお、割り込み要求としては、ホストインターフェース回路96のSPIやUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)による割り込み要求、各種タイマーによる割り込み要求、I2Cによる割り込み要求などがある。
ホストインターフェース回路96は、1又は複数の端子THを介してホストデバイス210とのデジタルのインターフェース処理を行う回路である。例えば、ホストインターフェース回路96は、SPIやUARTなどのシリアルデータ通信を、ホストインターフェース処理として行う。
図3にマイクロコントローラー80の他の構成例を示す。図3では、マイクロコントローラー80に同期信号出力回路88が更に設けられている。同期信号出力回路88は、端子TEを介して外部同期信号EXSYCが入力されて、外部同期信号EXSYCに基づき生成された内部同期信号INSYCを出力する。具体的には、同期信号出力回路88は、外部同期信号EXSYCを、マイクロコントローラー80の内部のクロック信号に基づきサンプリングして、外部同期信号EXSYCを再同期化した信号を、内部同期信号INSYCとして出力する。内部同期信号INSYCは、端子TSQを介してバッファー12の入力端子に出力される。この内部同期信号INSYCは、制御信号CTがLレベルのときにバッファー12の出力端子から同期信号SYCとして出力される。そして、同期信号SYCは、端子TDI1を介して第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yに入力される。
即ち、図1、図2の場合には、外部同期信号EXSYCそのものが、同期信号SYCとして第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yに入力されている。これに対して、図3では、外部同期信号EXSYCに基づく再同期化信号である内部同期信号INSYCが、同期信号SYCとして第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yに入力されている。外部同期信号EXSYCがノイズ成分を多く含んでいる場合には、このように外部同期信号EXSYCを内部のクロック信号でサンプリングして、同期信号SYCとして第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yに供給することが望ましい。
図4はセンサーモジュール10の動作を説明する信号波形図である。図4に示すように外部同期信号EXSYCが同期タイミング毎にアクティブになる。即ち、所定の時間間隔毎にアクティブになる。そして、外部同期信号EXSYCは、同期信号SYCとして第1
センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yの端子TDI1、端子TDI2に入力される。すると外部同期信号EXSYCである同期信号SYCがアクティブ(Hレベル)になる同期タイミングt1において、図4のE2に示すように第1検出回路60Xの第1検出データSSD1、第2検出回路60Yの第2検出データSSD2が取り込まれる。具体的には、第1検出データSSD1、第2検出データSSD2は、後述の図5のレジスター67に取り込まれる。なお、図4では第n検出回路の第nの検出データSSDnについても示されている。
本実施形態では第1センサーデバイス20Xと第2センサーデバイス20Yは、別個のクロック信号に基づいて動作している。例えば各センサーデバイスが内蔵する発振回路からのクロック信号や、各センサーデバイスが有する水晶振動子などの振動子を用いて生成されたクロック信号に基づいて、各センサーデバイスが動作する。このため、図4のE2に示すように、各センサーデバイスの検出回路からは、お互いに非同期で検出データが出力される。本実施形態では、これらの検出データは、同じ同期タイミングの同期信号SYCでラッチして取り込まれる。そして、E3に示すように、取り込まれた検出データは、第1検出データSD1、第2検出データSD2として、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Yからマイクロコントローラー80に出力される。なお、実際には後述するようにマイクロコントローラー80が読み出しコマンドを発行し、この読み出しコマンドに基づいて、第1検出データSD1、第2検出データSD2が出力される。
一方、本実施形態では、外部同期信号EXSYCは端子TDOを介してマイクロコントローラー80にも入力されている。そして、図4のE1で外部同期信号EXSYCがアクティブになると、割り込みコントローラー94がこれを受け付け、E4に示すように信号SYCINTによる割り込み処理が開始する。そして、E3で出力された検出データが、E5に示すように、検出データSDATとしてデジタルインターフェース回路82を介してマイクロコントローラー80に取り込まれる。次に、E6に示すように信号処理回路92によるデジタル信号処理が開始する。例えば移動平均などのフィルター処理が実行され、その後に温度補正などの補正処理が実行され、E7に示すように補正処理後の検出データSDATCが生成される。するとデジタル信号処理が完了し、データの準備完了を知らせる信号DRDYが、端子TRを介してホストデバイス210に出力される。そしてホストデバイス210がホストインターフェース回路96を介してレジスター部91にアクセスすることで、E9に示すように検出データSDATQがホストデバイス210に出力される。
同様に、次の同期タイミングt2で、E11に示すように外部同期信号EXSYCがアクティブになると、E12に示すように各センサーデバイスの検出回路からの検出データが取り込まれ、E13に示すように各センサーデバイスから各検出データが出力される。そして、E14、E15、E16、E17に示すように、マイクロコントローラー80では割り込み処理やデジタル信号処理が行われ、E18、E19に示すように信号DRDYが出力されて、検出データSDATQが出力される。また、次の同期タイミングt3で、E21に示すように外部同期信号EXSYCがアクティブになると、E22、E23に示すように各センサーデバイスでの検出データの取り込みと出力が行われ、E24に示すようにマイクロコントローラー80での各処理が行われる。図4のE25、E26、E27、E28においても同様の処理が行われる。
以上のように、本実施形態では、E2、E12、E22、E26に示すように、複数のセンサーデバイスの各センサーデバイスが、外部同期信号EXSYCによる同一の同期タイミングで、検出回路からの検出データを取り込む。したがって、複数のセンサーデバイスからの検出データが、同じ同期タイミングで取得された検出データであることが保証される。3軸の角速度センサーデバイスを例にとれば、X軸角速度データ、Y軸角速度デー
タ、Z軸角速度データが、同じ同期タイミングで取得された検出データであることが保証される。したがって、ホストデバイス210が、X軸角速度データ、Y軸角速度データ、Z軸角速度データにより、計測対象物の姿勢情報等を求める場合に、より適切で正確な姿勢情報等を計測できるようになる。
図5はセンサーデバイス20の構成例である。センサーデバイス20(20X、20Y)は、センサー素子50(50X、50Y)、検出回路60(60X、60Y)、処理回路66、インターフェース回路70(70X、70Y)を含む。検出回路60は、センサー素子50からの信号を増幅する増幅回路63を有するアナログ回路62と、アナログ回路62からのアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路64と、を含む。処理回路66はレジスター67を含む。インターフェース回路70は、パラレル/シリアル変換回路72、シリアル/パラレル変換回路74、インターフェース回路の制御処理を行う制御回路76を含み、チップセレクト信号XCS及びクロック信号SCLKに基づいてインターフェース処理を行う。なお、マイクロコントローラー80のデジタルインターフェース回路82、ホストインターフェース回路96の構成もインターフェース回路70と同様の構成になる。
A/D変換回路64は、周波数f1のクロック信号ADCKに基づき、アナログ回路62からのアナログの検出信号をサンプリングして、A/D変換を行う。そして、周波数f1に対応する出力サンプリングレートで、検出データADQを出力する。するとレジスター67は、チップセレクト信号XCSが非アクティブのときに、周波数f2の同期信号SYCに基づいて、A/D変換回路64からの検出データADQを取り込む。具体的には、図4のE2、E12、E22、E26に示すように、レジスター67は同期信号SYCの同期タイミングで検出データADQをラッチして保持する。A/D変換回路64のA/D変換の分解能がkビットである場合に、検出データADQは例えばkビットのパラレルデータである。そして、レジスター67に保持された検出データADQは、インターフェース回路70のパラレル/シリアル変換回路72によりシリアルデータに変換されて、データ出力信号SDOとしてマイクロコントローラー80に出力される。なお、マイクロコントローラー80からのデータ入力信号SDIのシリアルデータは、シリアル/パラレル変換回路74によりパラレルデータに変換される。
ここで、同期信号SYCの周波数f2は、例えば1KHz以下であり、一例としては100Hz程度であるため、A/D変換回路64のクロック信号ADCKの周波数f1に比べて十分に低い。したがって、周波数f1の出力サンプリングレートでA/D変換回路64から時系列に次々に出力される検出データの中から、同期信号SYCに基づく適正な同期タイミングでの検出データを、レジスター67にラッチして保持しておくことができる。これにより、他の割り込み処理が原因となって、マイクロコントローラー80のコマンド発行のタイミングに時間的なゆらぎが発生したとしても、適切な同期タイミングでレジスター67にラッチされた検出データを、コマンド発行時にデータ出力信号SDOとして出力できるようになる。
図6はマイクロコントローラー80の動作を説明するフローチャートである。まず、マイクロコントローラー80は、端子TDOを同期信号SYCの入力端子に設定し(ステップS11)、バッファー12をスルーモードに設定する(ステップS12)。
次に、マイクロコントローラー80は割り込み要求が発生したか否かを判断する(ステップS13)。具体的には、マイクロコントローラー80は、割り込みコントローラー94に割り込み要求信号が入力されたか否かを判断する。
割り込み要求が発生した場合(ステップS13のY)、マイクロコントローラー80は
、その割り込み要因を判断する(ステップS14)。そして、マイクロコントローラー80は、優先順位が高い他の割り込み要求がある場合には(ステップS15のY)、当該他の割り込み要求の処理を行う(ステップS16)。
一方、優先順位が高い他の割り込み要求がない場合(ステップS15のN)、割り込み要求が外部同期信号EXSYCによる割り込み要求でなければ(ステップS17のN)、マイクロコントローラー80は、当該割り込み要求の処理を行い(ステップS18)、再びステップS11以降の処理を行う。
また、優先順位が高い他の割り込み要求がない場合(ステップS15のN)、割り込み要求が外部同期信号EXSYCによる割り込み要求であれば(ステップS17のY)、マイクロコントローラー80は、外部同期信号EXSYCによる割り込み処理として、ステップS19からステップS25までの処理を行う。
具体的には、まず、マイクロコントローラー80は、バッファー12をHi-Z出力に設定し(ステップS19)、端子TDOをデータ入力信号SDIの出力端子に設定する(ステップS20)。
次に、マイクロコントローラー80は、センサーデバイス20の検出データの読み出しコマンドの発行処理を行う(ステップS19)
なお、外部同期信号EXSYCによる割り込み要求よりも優先順位が高い割り込み要求としては、例えばホストインターフェース回路96のSPIやUARTによる割り込み要求がある。例えばホストデバイス210がレジスター部91にアクセスするための割り込み要求である。このような優先順位が高い割り込み要求がある場合には、マイクロコントローラー80は、外部同期信号EXSYCによる割り込み処理の実行をウェイトする。そして、優先順位が高い割り込み要求の処理が終了した後に、外部同期信号EXSYCによる割り込み処理を実行する。このようなウェイト時間が原因で、検出データの読み出しコマンドの発行のタイミングに時間的なゆらぎが発生する。
マイクロコントローラー80は、読み出しコマンドの発行後、センサーデバイス20からの検出データの読み出し処理を行う(ステップS21)。これにより、図4のE3に示すように、センサーデバイス20からの検出データが読み出される。読み出される検出データは、E2に示すように同期信号SYCの同期タイミングにおいて検出回路60からレジスター67に取り込まれたデータである。したがって、ステップS15の読み出しコマンドの発行タイミングに時間的なゆらぎが発生しても、センサーデバイス20からの検出データの取得タイミングには、時間的なゆらぎが発生しない。
次に、マイクロコントローラー80は、センサーデバイス20から読み出された検出データに対するデジタル信号処理を実行する(ステップS23)。具体的には、マイクロコントローラー80は、フィルター処理や温度補正処理を実行する。そして、マイクロコントローラー80は、デジタル信号処理が終了したか否かを判断し(ステップS24)、終了した場合には(ステップS24のY)、デジタル信号処理後の検出データの準備完了を知らせる信号DRDYを、ホストデバイス210に出力し(ステップS25)、再びステップS11以降の処理を行う。
以上のように、本実施形態では、図2、図3に示すようにマイクロコントローラー80は、外部同期信号EXSYCが入力される端子TDOを含む。したがって、外部同期信号EXSYCを、センサーデバイス20のみならずマイクロコントローラー80にも入力できる。これにより、マイクロコントローラー80は、外部同期信号EXSYCをトリガーとして、センサーデバイス20へのコマンドの発行処理を実行したり、センサーデバイス
20からの検出データの読み出し処理を実行できるようになる。
また、本実施形態ではマイクロコントローラー80は、割り込みコントローラー94を含み、割り込みコントローラー94に対して外部同期信号EXSYCが入力される。したがって、マイクロコントローラー80は、外部同期信号EXSYCを割り込み要因として外部同期信号EXSYCに対応する割り込み処理を実行できる。即ち、マイクロコントローラー80は、外部同期信号EXSYCを割り込み要求信号としてセンサーデバイス20へのコマンドの発行処理を実行したり、センサーデバイス20からの検出データの読み出し処理を実行できるようになる。
また、マイクロコントローラー80は、処理回路90を含み、処理回路90は外部同期信号EXSYCを割り込み要因として、第1センサーデバイス20Xからの第1検出データSD1、及び、第2センサーデバイス20Yからの第2検出データSD2を取得するコマンドの発行処理を行う。即ち、処理回路90は、第1検出データSD1、第2検出データSD2を読み出すコマンドの発行処理を実行する。このようにすれば、処理回路90は、優先順位が高い他の割り込み要求がないかを判断し、このような割り込み要求がない場合に外部同期信号EXSYCによる割り込み処理であるコマンド発行処理を実行できるようになる。一方、優先順位が高い他の割り込み要求がある場合には、処理回路90は、その割り込み要求の処理を実行した後に、第1検出データSD1、第2検出データSD2を読み出すコマンドの発行処理を実行できる。そして、処理回路90がこのように優先順位が高い割り込み要求の処理を行うことで、コマンドの発行タイミングに時間的なゆらぎが生じても、検出データについては同期タイミングで取り込まれているため、当該時間的なゆらぎに起因する問題は生じないようになる。
また、本実施形態では、マイクロコントローラー80は、第1センサーデバイス20Xからの第1検出データSD1及び第2センサーデバイス20Yからの第2検出データSD2に対してデジタル信号処理を行う信号処理回路92を含む。そして、信号処理回路92は、外部同期信号EXSYCの同期タイミング毎にデジタル信号処理を行う。信号処理回路92は、例えばフィルター処理や補正処理などのデジタル信号処理を実行する。例えば図4のE1に示すように外部同期信号EXSYCがアクティブになると、E6に示すように信号処理回路92がデジタル信号処理を実行する。次に、E11に示すように外部同期信号EXSYCがアクティブになると、E16に示すように信号処理回路92がデジタル信号処理を実行する。即ち、E1、E11に示す外部同期信号EXSYCの同期タイミング毎に、信号処理回路92がデジタル信号処理を実行する。このようにすれば、E1の同期タイミングにおいて、検出回路60から取得された検出データに対して、E1の同期タイミングに対応するE6のタイミングにおいて、信号処理回路92がデジタル信号処理を実行できる。同様に、E11の同期タイミングにおいて、検出回路60から取得された検出データに対して、E11の同期タイミングに対応するE16のタイミングにおいて、信号処理回路92がデジタル信号処理を実行できる。したがって、信号処理回路92は、適切な同期タイミングで取得された検出データに対して、その同期タイミングに対応するタイミングでデジタル信号処理を実行できるようになる。
また、マイクロコントローラー80は、デジタル信号処理が完了したときに、デジタル信号処理の完了を知らせる信号DRDYを外部に出力する。例えば、図4のE1の同期タイミングにおいて、E6に示すようにデジタル信号処理が実行され、当該デジタル信号処理が完了して、E7に示すようにデジタル信号処理後の検出データSDATCが生成されると、E8に示すように信号DRDYが外部に出力される。同様に、E11の同期タイミングにおいて、E16に示すようにデジタル信号処理が実行され、当該デジタル信号処理が完了して、E17に示すようにデジタル信号処理後の検出データSDATCが生成されると、E18に示すように信号DRDYが外部に出力される。このようにすれば、マイク
ロコントローラー80は、E1、E11の同期タイミングで規定される各同期期間において、デジタル信号処理を実行し、当該デジタル信号処理が完了した場合に、信号DRDYを用いて外部のホストデバイス210に知らせることが可能になる。
また、本実施形態では、マイクロコントローラー80は、ホストインターフェース回路96を含み、デジタル信号処理後の第1検出データ及び第2検出データを、ホストインターフェース回路96を介して外部に出力する。例えば、E1の同期タイミングによる同期期間において、E7に示すようにデジタル信号処理後の検出データSDATCが生成されると、E9に示すように、当該検出データが検出データSDATQとしてホストインターフェース回路96を介してホストデバイス210に出力される。また、E11の同期タイミングによる同期期間において、E17に示すようにデジタル信号処理後の検出データSDATCが生成されると、E19に示すように、当該検出データが検出データSDATQとしてホストインターフェース回路96を介してホストデバイス210に出力される。この検出データSDATQは、第1センサーデバイス20Xの第1検出データSD1、第2センサーデバイス20Yの第2検出データSD2に対してデジタル信号処理を行うことで生成された検出データである。このようにすれば、マイクロコントローラー80は、各同期期間においてデジタル信号処理が完了して、デジタル信号処理後の検出データの取得が可能になると、当該検出データを、ホストインターフェース回路96を介してホストデバイス210に出力できるようになる。
また、本実施形態では、第1センサーデバイス20Xにおいて、マイクロコントローラー80とのデータ通信に用いられる端子TDI1は、同期信号SYCが入力される端子として兼用される。同様に、第2センサーデバイス20Yにおいて、マイクロコントローラー80とのデータ通信に用いられる端子TDI2は、同期信号SYCが入力される端子として兼用される。また、マイクロコントローラー80において、第1センサーデバイス20X及び第2センサーデバイス20Yとのデータ通信に用いられる端子TDOは、同期信号SYCが入力される端子として兼用される。したがって、本実施形態によれば、第1センサーデバイス20X、第2センサーデバイス20Y、マイクロコントローラー80の端子の数を減らすことができ、センサーモジュール10の小型化に有利である。
図7に、センサーデバイス20が角速度センサーデバイス、加速度センサーデバイスである場合のセンサーモジュール10の具体的な構成例を示す。図7のセンサーモジュール10は、X軸角速度センサーデバイス30Xと、Y軸角速度センサーデバイス30Yと、Z軸角速度センサーデバイス30Zと、加速度センサーデバイス40と、マイクロコントローラー80と、選択回路11と、第1デジタルインターフェースバスBS1と、第2デジタルインターフェースバスBS2を含む。図7の構成のセンサーモジュール10により6軸の慣性計測装置(IMU)を実現できる。この慣性計測装置を用いることで、移動体としての自動車やロボットなどの運動体についての姿勢や、慣性運動量である挙動を、検出可能になる。
X軸角速度センサーデバイス30Xは、X軸回りの角速度を検出し、デジタルのX軸角速度データを出力する。X軸角速度データはX軸回りの角速度を表すデジタルデータである。X軸角速度センサーデバイス30Xは、X軸回りの角速度を検出するセンサー素子を有している。センサー素子は、例えば水晶振動子などの圧電型の振動子により構成されるジャイロセンサー素子である。但し、センサー素子は、これには限定されず、シリコン基板などから形成された静電容量検出方式のSi-MEMSのジャイロセンサー素子などであってもよい。例えば、センサー素子は、複数のSi-MEMSのジャイロセンサー素子がマルチ接続されたものであってもよい。また、X軸角速度センサーデバイス30Xは、センサー素子からの検出信号を増幅する増幅回路や、検出信号に対する同期検波を行う同期検波回路などを有するアナログ回路を含む。また、X軸角速度センサーデバイス30X
は、アナログ回路からのアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路を含む。このA/D変換回路の出力データ、或いは当該出力データに対して温度補正、オフセット補正又は感度補正等の補正処理を行ったデータが、X軸角速度データになる。
Y軸角速度センサーデバイス30Yは、Y軸回りの角速度を検出し、デジタルのY軸角速度データを出力する。Y軸角速度データはY軸回りの角速度を表すデジタルデータである。Y軸角速度センサーデバイス30Yは、Y軸回りの角速度を検出するセンサー素子を有している。センサー素子としては上述のように種々のタイプのものを用いることができる。また、Y軸角速度センサーデバイス30Yは、センサー素子からの検出信号を増幅する増幅回路と、同期検波回路などを有するアナログ回路と、アナログ回路からのアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路と、を含む。このA/D変換回路の出力データ、或いは当該出力データに対して補正処理を行ったデータが、Y軸角速度データになる。
Z軸角速度センサーデバイス30Zは、Z軸回りの角速度を検出し、デジタルのZ軸角速度データを出力する。Z軸角速度データはZ軸回りの角速度を表すデジタルデータである。Z軸角速度センサーデバイス30Zは、Z軸回りの角速度を検出するセンサー素子を有している。センサー素子としては上述のように種々のタイプのものを用いることができる。また、Z軸角速度センサーデバイス30Zは、センサー素子からの検出信号を増幅する増幅回路と、同期検波回路などを有するアナログ回路と、アナログ回路からのアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路と、を含む。このA/D変換回路の出力データ、或いは当該出力データに対して補正処理を行ったデータが、Z軸角速度データになる。
加速度センサーデバイス40は、X軸方向での加速度、Y軸方向での加速度及びZ軸方向での加速度を検出してデジタルのX軸加速度データ、Y軸加速度データ及びZ軸加速度データを出力する。X軸加速度データはX軸方向での加速度を表すデジタルデータである。同様に、Y軸加速度データ、Z軸加速度データは、各々、Y軸方向、Z軸方向での加速度を表すデジタルデータである。加速度センサーデバイス40は、例えば1つのデバイスで、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出可能な静電容量方式のSi-MEMSのセンサーデバイスである。但し、本実施形態はこれには限定されず、加速度センサーデバイス40は、周波数変化型の水晶加速度センサー、ピエゾ抵抗型加速度センサー、或いは熱検知型加速度センサーであってもよい。
加速度センサーデバイス40は、X軸加速度検出用のセンサー素子、Y軸加速度検出用のセンサー素子及びZ軸加速度検出用のセンサー素子を含む。なお、各軸の加速度検出用のセンサー素子として複数のセンサー素子を設けてもよい。また、加速度センサーデバイス40は、これらの各軸の加速度検出用のセンサー素子からの検出信号を増幅する増幅回路等を有するアナログ回路と、アナログ回路からのアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路と、を含む。A/D変換回路は、例えば、X軸加速度のアナログ信号と、Y軸加速度のアナログ信号と、Z軸加速度のアナログ信号とを時分割にデジタルデータにA/D変換する。このA/D変換回路の出力データ、或いは当該出力データに対して温度補正等の補正処理を行ったデータが、X軸加速度データ、Y軸加速度データ、Z軸加速度データになる。
なお、ここでのX軸、Y軸、Z軸は、センサーモジュール10の検出軸としてのX軸、Y軸、Z軸である。Z軸は、例えばセンサーモジュール10が装着される計測対象物の装着面に直交する方向の軸である。装着面は、センサーモジュール10が搭載される搭載面(実装面)と言うこともできる。また、後述する図15のセンサーモジュール10の厚さ方向をZ軸の方向と言うこともできる。X軸とY軸は互いに直交し、且つ、Z軸に直交す
る軸である。X軸、Y軸の方向は任意であるが、図15では、センサーモジュール10の平面視における四角形状の第1辺に沿った軸をX軸とし、四角形状の第1の辺に直交する第2辺に沿った軸をY軸とすることができる。
マイクロコントローラー80は、第1デジタルインターフェース回路83と、第2デジタルインターフェース回路84と、を含む。第1デジタルインターフェース回路83、第2デジタルインターフェース回路84は、デジタルのインターフェース処理を行う回路であり、例えばシリアルデータの送信や受信を行う。具体的には、第1デジタルインターフェース回路83、第2デジタルインターフェース回路84は、SPIの通信規格のインターフェース処理を行う。ただし、第1デジタルインターフェース回路83、第2デジタルインターフェース回路84は、I2Cの通信規格のインターフェース処理、或いはSPI又はI2Cの通信規格を発展させたり一部を改良又は改変した通信規格のインターフェース処理を行ってもよい。
第1デジタルインターフェースバスBS1は、X軸角速度センサーデバイス30X、Y軸角速度センサーデバイス30Y及びZ軸角速度センサーデバイス30Zと、マイクロコントローラー80の第1デジタルインターフェース回路83とを、電気的に接続するバスである。そして、マイクロコントローラー80には、この第1デジタルインターフェースバスBS1を介して、X軸角速度センサーデバイス30XからのX軸角速度データ、Y軸角速度センサーデバイス30YからのY軸角速度データ及びZ軸角速度センサーデバイス30ZからのZ軸角速度データが、入力される。
第2デジタルインターフェースバスBS2は、加速度センサーデバイス40と、マイクロコントローラー80の第2デジタルインターフェース回路84とを、電気的に接続するバスである。そして、マイクロコントローラー80には、この第2デジタルインターフェースバスBS2を介して、加速度センサーデバイス40からのX軸加速度データ、Y軸加速度データ及びZ軸加速度データが入力される。
第1デジタルインターフェースバスBS1は、第1デジタルインターフェース回路83が行うインターフェース処理の通信規格に準拠したバスである。第2デジタルインターフェースバスBS2は、第2デジタルインターフェース回路84が行うインターフェース処理の通信規格に準拠したバスである。第1デジタルインターフェースバスBS1、第2デジタルインターフェースバスBS2は、データ信号線、クロック信号線を含む。またチップセレクト信号を含んでもよい。第1デジタルインターフェースバスBS1、第2デジタルインターフェースバスBS2は、図15に示すセンサーモジュール10の回路基板100に配線される。
また、マイクロコントローラー80は、ホストデバイス210と接続される第3デジタルインターフェース回路であるホストインターフェース回路96を含む。ホストインターフェース回路96は、デジタルのインターフェース処理を行う回路であり、例えばシリアルデータの送信や受信を行う。ホストインターフェース回路96は例えばSPIやUARTなどにより実現できる。
そして、図7の構成においても、外部同期信号EXSYCが同期信号SYCとして、X軸角速度センサーデバイス30X、Y軸角速度センサーデバイス30Y、Z軸角速度センサーデバイス30Z、及び加速度センサーデバイス40に入力されている。即ち、これらの各センサーデバイスには図1で説明したようなマイクロコントローラー80とのデータ通信用の端子が設けられており、この端子を介して、外部同期信号EXSYCが同期信号SYCとして入力される。このように、図7では、第1デジタルインターフェースバスBS1、第2デジタルインターフェースバスBS2の各々に含まれるデータ通信用の信号線
が、同期信号SYCの信号線として兼用されている。
図8にセンサーモジュール10の他の構成例を示す。図8のセンサーモジュール10は、図7の加速度センサーデバイス40である第1加速度センサーデバイス40Aに加えて、第2加速度センサーデバイス40Bが設けられている。そして、第1加速度センサーデバイス40A、第2加速度センサーデバイス40Bは、第2デジタルインターフェースバスBS2を介して、マイクロコントローラー80の第2デジタルインターフェース回路84に電気的に接続されている。そして、これらの第1加速度センサーデバイス40A、第2加速度センサーデバイス40Bに対しても、外部同期信号EXSYCが同期信号SYCとして入力されている。
図8のように複数の加速度センサーデバイスを設ける構成によれば、これらの複数の加速度センサーデバイスからの加速度データの統計値である平均値等を、マイクロコントローラー80が演算することで、加速度データの高精度化を実現できる。例えば、マイクロコントローラー80は、第1加速度センサーデバイス40AからのX軸加速度データと第2加速度センサーデバイス40BからのX軸加速度データの平均値を求め、求めた平均値を最終的なX軸加速度データとしてホストデバイス210等に出力する。また、マイクロコントローラー80は、第1加速度センサーデバイス40AからのY軸加速度データと第2加速度センサーデバイス40BからのY軸加速度データの平均値を求め、求めた平均値を最終的なY軸加速度データとして出力する。また、マイクロコントローラー80は、第1加速度センサーデバイス40AからのZ軸加速度データと第2加速度センサーデバイス40BからのZ軸加速度データの平均値を求め、求めた平均値を最終的なZ軸加速度データとして出力する。
そして、本実施形態では、このように複数の加速度センサーデバイスを設けた場合に、複数の加速度センサーデバイスに対して、共通の同期信号SYCを入力している。例えば、上述した第1の比較例の手法では、加速度データの平均値の算出に使用する複数の加速度データの取り込みタイミングが、異なったタイミングになってしまうため、マイクロコントローラー80が適正な平均値を求めることができないという問題がある。この点、本実施形態によれば、マイクロコントローラー80は、同じ座標軸についての加速度データを複数の加速度センサーデバイスを用いて検出して、その平均値を求める場合に、同期信号SYCによる同じ同期タイミングで取り込まれた複数の加速度データを用いて、平均値を求めることができるため、適正な平均値を求めることができる。
なお、本実施形態では、X軸、Y軸、Z軸の各角速度センサーデバイスとして、複数の角速度センサーデバイスを設けてもよい。具体的には、センサーモジュール10は、第2のX軸角速度センサーデバイス、第2のY軸角速度センサーデバイス及び第2のZ軸角速度センサーデバイスのうちの少なくとも1つセンサーデバイスを含むことができる。この場合には、この少なくとも1つのセンサーデバイスは、第1デジタルインターフェースバスBS1を介して、マイクロコントローラー80の第1デジタルインターフェース回路83に電気的に接続される。そして、この少なくとも1つのセンサーデバイスに対しても、外部同期信号EXSYCが同期信号SYCとして入力される。
例えば、上記の少なく1つのセンサーデバイスとして、第2のZ軸角速度センサーデバイスが設けられたとする。この場合には、マイクロコントローラー80は、Z軸角速度センサーデバイス30ZからのZ軸角速度データと、第2のZ軸角速度センサーデバイスからのZ軸角速度データの平均値を求め、求めた平均値を最終的なZ軸角速度データとしてホストデバイス210に出力する。このようにすれば、Z軸角速度データの高精度化を図れる。X軸角速度データ、Y軸角速度データについても、対応する複数の角速度デバイスを設けて、平均値を求めることで、高精度化を図れる。そして、このように同じ座標軸に
ついての角速度データを複数の角速度センサーデバイスを用いて検出し、その平均値を求める場合に、同期信号SYCによる同じ同期タイミングで取り込まれた角速度データに基づいて平均値を求めることができるため、適正な平均値を求めることが可能になる。
なお、自動車等の移動体においては、Z軸回りの回転運動に対応するヨーイングの回転運動の検出が重要となる。したがって、ヨー角速度やヨー角の検出に必要なZ軸角速度の高精度化を図る必要があり、この意味では第2のZ軸角速度センサーデバイスを設けて、複数の角速度センサーデバイスからのZ軸角速度データの平均値を求めることが望ましい。
図9は第1デジタルインターフェースバスBS1での信号波形例を示す図である。第1デジタルインターフェースバスBS1は、チップセレクト信号XCS、クロック信号SCLK、データ入力信号SDI、データ出力信号SDOの信号線を含む。まず、負論理のチップセレクト信号XCSがLレベルになる。これにより、チップセレクト信号XCSの信号線が共通接続されているX軸角速度センサーデバイス30X、Y軸角速度センサーデバイス30Y及びZ軸角速度センサーデバイス30Zの全てがチップセレクトされる。データ入力信号SDIの最初の1ビットのR/Wはリード/ライトを指示するビットである。R/W=1の場合にはリードが指示され、R/W=0の場合にはライトが指示される。R/Wの次の2ビットのA[1:0]はアドレスを指定するものである。共通アドレスを指定する場合にはA[1:0]=00となる。X軸角速度センサーデバイス30X、Y軸角速度センサーデバイス30Y、Z軸角速度センサーデバイス30Zの個別アドレスを指定する場合には、各々、A[1:0]=01、10、11となる。A[1:0]の次の4ビットのC[4:0]は、コマンド内容及びレジスターアドレスを指示するものである。
図9では、F1に示すようにR/W=1となっており、リードが指示されており、マイクロコントローラー80がリードコマンドを発行している。また、F2に示すようにA[1:0]=00となっており、共通アドレスが指定されている。また、F3によってコマンド内容やレジスターアドレスが指示されている。これにより、期間T1では、X軸角速度センサーデバイス30XがX軸角速度データを出力し、次の期間T2では、Y軸角速度センサーデバイス30YがY軸角速度データを出力し、次の期間T3では、Z軸角速度センサーデバイス30ZがZ軸角速度データを出力する。これらのX軸角速度データ、Y軸角速度データ、Z軸角速度データは、同期信号SYCによる共通の同期タイミングにおいて各角速度センサーデバイスの検出回路から取り込まれた角速度データである。このように、図9の第1デジタルインターフェースバスBS1では、X軸角速度センサーデバイス30X、Y軸角速度センサーデバイス30Y、Z軸角速度センサーデバイス30Zからの角速度データの連続読み出しが可能になっている。これは、それぞれの角速度センサーデバイスが、自身の送信順番と、角速度センサーデバイスの接続個数と、送信データのビット数を記憶することで実現される。
図10は第2デジタルインターフェースバスBS2での信号波形例を示す図である。第2デジタルインターフェースバスBS2も、チップセレクト信号XCS、クロック信号SCLK、データ入力信号SDI、データ出力信号SDOの信号線を含む。図10ではチップセレクト信号XCSがLレベルになって、加速度センサーデバイス40がチップセレクトされる。その後、F4に示すように加速度センサーデバイス40のアドレスを指定するアドレス設定が、マイクロコントローラー80によりデータ入力信号SDIを用いて行われる。そして、加速度センサーデバイス40は、期間T1においてX軸加速度データを出力し、次の期間T2においてY軸加速度データを出力し、次の期間T3においてZ軸加速度データを出力する。これらのX軸加速度データ、Y軸加速度データ、Z軸加速度データは、同期信号SYCによる共通の同期タイミングにおいて加速度センサーデバイス40の検出回路から取り込まれた加速度データである。このように、第2デジタルインターフェ
ースバスBS2では、F4に示すアドレス設定で指定された1つの加速度センサーデバイス40が、X軸加速度データ、Y軸加速度データ、Z軸加速度データを順次に出力する。
図11は第1デジタルインターフェースバスBS1における連続読み出しの継続を説明する信号波形例である。図11では、期間T3でZ軸角速度センサーデバイス30ZがZ軸角速度データを出力した後、次の期間T4において、X軸角速度センサーデバイス30XがX軸角速度データを出力する。そして、次の期間T5では、Y軸角速度センサーデバイス30YがY軸角速度データを出力し、次の期間T6では、Z軸角速度センサーデバイス30ZがZ軸角速度データを出力する。
図12は、図8に示すように第1加速度センサーデバイス40A及び第2加速度センサーデバイス40Bが接続された時の第2デジタルインターフェースバスBS2の信号波形例を示す図である。第2デジタルインターフェースバスBS2では、第1デジタルインターフェースバスBS1のような連続読み出しを行うことができない。このためF5のアドレス設定で、マイクロコントローラー80が第1加速度センサーデバイス40Aのアドレスを指定する。これにより、第1加速度センサーデバイス40Aが、期間TA1においてX軸加速度データを出力し、次の期間TA2においてY軸加速度データを出力し、次の期間TA3においてZ軸加速度データを出力する。次に、F6のアドレス設定で、マイクロコントローラー80が第2加速度センサーデバイス40Bのアドレスを指定する。これにより、第2加速度センサーデバイス40Bが、期間TB1においてX軸加速度データを出力し、次の期間TB2においてY軸加速度データを出力し、次の期間TB3においてZ軸加速度データを出力する。
この場合に、本実施形態では、期間TA1で第1加速度センサーデバイス40Aが出力するX軸加速度データと、期間TB1で第2加速度センサーデバイス40Bが出力するX軸加速度データは、共通の同期タイミングにおいて各加速度センサーデバイスの検出回路から取り込まれた加速度データである。期間TA2でのY軸加速度データと期間TB2でのY軸加速度データも、共通の同期タイミングで取り込まれた加速度データであり、期間TA3でのZ軸加速度データと期間TB3でのZ軸加速度データも、共通の同期タイミングで取り込まれた加速度データである。この共通の同期タイミングでの加速度データの取り込みは、図8に示すように第1加速度センサーデバイス40A、第2加速度センサーデバイス40Bに対して共通の同期信号SYCを入力することで実現される。このようにすることで、マイクロコントローラー80が期間TA1のX軸加速度データと期間TB1のX軸加速度データの平均値を求める場合に、当該平均値の精度の向上を図れる。同様に、マイクロコントローラー80が期間TA2のY軸加速度データと期間TB2のY軸加速度データの平均値や、期間TA3のZ軸加速度データと期間TB3のZ軸加速度データの平均値を求める場合に、当該平均値の精度の向上を図れる。
また、本実施形態では、第1デジタルインターフェースバスBS1と第2デジタルインターフェースバスBS2は、例えばコマンド体系が異なっており、検出データの通信方式も異なっている。例えば、角速度センサーデバイスと加速度センサーデバイスとでは、動作設定パラメーターや補正処理用パラメーターが異なるため、コマンドの種類やコマンドのパラメーターが異なったものとなる。このため、第1デジタルインターフェースバスBS1と第2デジタルインターフェースバスBS2とでは、コマンド体系が異なっている。
また、図9に示すように、角速度センサーデバイスでは、各軸用の角速度センサーデバイスが各軸の角速度データを出力する。即ち、X軸角速度センサーデバイス30XがX軸角速度データを出力し、Y軸角速度センサーデバイス30YがY軸角速度データを出力し、Z軸角速度センサーデバイス30ZがZ軸角速度データを出力する。これに対して、加速度センサーデバイスでは、1つの加速度センサーデバイスが、複数の軸の加速度データ
を出力する。即ち、1つの加速度センサーデバイス40が、X軸加速度データ、Y軸加速度データ、Z軸加速度データを出力する。このように、第1デジタルインターフェースバスBS1と第2デジタルインターフェースバスBS2とでは、通信方式が異なっている。
また、角速度センサーデバイスでは、複数の角速度センサーデバイスからの角速度データの連続読み出しが可能である。これに対して、加速度センサーデバイスでは、複数の加速度センサーデバイスからの加速度データの連続読み出しができないようになっている。即ち、図12に示すように、マイクロコントローラー80は、まず第1加速度センサーデバイス40Aのアドレスを指定して、X軸、Y軸、Z軸の加速度データを読み出し、次に第2加速度センサーデバイス40Bのアドレスを指定して、X軸、Y軸、Z軸の加速度データを読み出す。この点においても、第1デジタルインターフェースバスBS1と第2デジタルインターフェースバスBS2とでは、通信方式が異なっている。なお、加速度センサーデバイスにおいても、マイクロコントローラー80が複数の加速度センサーデバイスからの連続読み出しを可能にする変形実施も可能である。
なお、上記のセンサーモジュール10では、複数のセンサーデバイスとマイクロコントローラー80とが別体であり、各センサーデバイスのデータ通信用の端子とマイクロコントローラー80のデータ通信用の端子とが電気的に接続されているが、センサーモジュール10はこのような構成に限られない。
図13にセンサーモジュール10の他の構成例を示す。図13のセンサーモジュール10は、第1センサー素子50Xと、第2センサー素子50Yと、集積回路装置16と、を含む。第1センサー素子50X、第2センサー素子50Yは、物理量を検出するセンサー素子であり、その機能は上述した通りであり、説明を省略する。なお、図13ではセンサー素子の個数が2個の場合の例を示しているが、センサー素子の個数は3個以上であってもよい。例えば、nを2以上の整数として、図13のセンサーモジュール10は第1センサー素子~第nセンサー素子を含むことができる。
集積回路装置16は、検出回路61と、インターフェース回路71と、マイクロコントローラー80と、選択回路11と、を含む。集積回路装置16は半導体により実現されるICチップである。なお、集積回路装置16は図13の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、選択回路11は集積回路装置16とは別に設けられていてもよい。
検出回路61は、第1センサー素子50Xおよび第2センサー素子50Yからの信号が入力されて検出処理を行う。検出回路61は、第1センサー素子50Xからの信号が入力されて検出処理を行う第1検出回路60Xと、第2センサー素子50Yからの信号が入力されて検出処理を行う第2検出回路60Yと、を含んでもよい。第1検出回路60X、第2検出回路60Yの構成は、例えば上述した通りであり、その説明を省略する。
インターフェース回路71は、検出回路61からの検出データを出力する。インターフェース回路71は、第1検出回路60Xからの検出データを出力する第1インターフェース回路70Xと、第2検出回路60Yからの検出データを出力する第2インターフェース回路70Yと、を含んでもよい。第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Yの構成は、例えば上述した通りであり、その説明を省略する。
なお、センサー素子の個数を3個以上とし、第nセンサー素子を設ける場合には、検出回路1は、第nセンサー素子からの信号が入力されて検出処理を行う第n検出回路を含み、インターフェース回路71は、第n検出回路からの第n検出データを出力する第nインターフェース回路を含むことができる。
センサーモジュール10は、インターフェース回路71とマイクロコントローラー80とを電気的に接続するデジタルインターフェースバスBSを含む。例えば、インターフェース回路71が第1インターフェース回路70Xと第2インターフェース回路70Yとを含む場合、デジタルインターフェースバスBSは、第1インターフェース回路70X及び第2インターフェース回路70Yとマイクロコントローラー80とを電気的に接続するデジタルインターフェースバスであってもよい。デジタルインターフェースバスBSの構成は、例えば上述した通りであり、その説明を省略する。
マイクロコントローラー80は、インターフェース回路71を介して、検出回路61からの検出データが入力される。マイクロコントローラー80は、例えば、処理回路90、信号処理回路92、割り込みコントローラー94、ホストインターフェース回路96を含む。
信号処理回路92は、上述した通り、検出データに対するフィルター処理や補正処理などのデジタル信号処理を行う。また、割り込みコントローラー94は、上述した通り、各種の割り込み要求を受け付け、優先順位と割り込みレベルに従って、処理回路90に対して、各種の信号を出力する。また、ホストインターフェース回路96は、上述した通り、ホストデバイス210とのデジタルのインターフェース処理を行う回路であり、ホストデバイス210は、ホストインターフェース回路96を介してレジスター部91のデータレジスターにアクセスして、検出データを読み出すことができる。
処理回路90は、デジタルインターフェースバスBSに接続され、インターフェース回路70(第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Y)との間で、マスターとしてのインターフェース処理を行う。また、処理回路90は、各種のレジスターを有するレジスター部91を含み、上述した通り、各種の演算処理や制御処理を実行する。具体的には、処理回路90は、上述した通り、割り込み要求に対応する割り込み処理、信号処理回路92によるフィルター処理後の検出データに対する温度補正処理、信号DRDYを生成してホストデバイス210に出力する処理等を行う。
また、マイクロコントローラー80は、外部同期信号EXSYC又は外部同期信号EXSYCに基づく信号である同期信号SYCのインターフェース回路71への入力および、通信信号のインターフェース回路71への入力または出力の何れかを選択する。具体的には、例えば、マイクロコントローラー80の処理回路90は、レジスター部91の制御レジスターの値に応じて、同期信号SYCのインターフェース回路71への入力および、通信信号のインターフェース回路71への入力または出力の何れかを選択するための制御信号CTを選択回路11に出力する。なお、通信信号は、インターフェース回路71とマイクロコントローラー80との間の通信に用いられる信号であり、例えば、前述のチップセレクト信号XCS、クロック信号SCLK、データ入力信号SDI及びデータ出力信号SDOがそれぞれ通信信号に相当する。
選択回路11は、上述した通り、例えば、バッファー12と、抵抗13と、プルアップ抵抗14と、プルダウン抵抗15と、を含む。バッファー12、抵抗13、プルアップ抵抗14及びプルダウン抵抗15の接続関係は図1で説明した通りである。そして、選択回路11は、制御信号CTに基づいて、バッファー12に入力される外部同期信号EXSYCを同期信号SYCとしてデジタルインターフェースバスBSに含まれる所定の信号線に出力するか否かを選択する。
具体的には、制御信号CTがLレベルのとき、バッファー12は、入力端子と出力端子とが導通するスルーモードで動作し、入力端子に入力された外部同期信号EXSYCを出
力端子から出力する。そして、バッファー12を通過した外部同期信号EXSYCは、同期信号SYCとして、デジタルインターフェースバスBSを介して、インターフェース回路71(第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Y)に入力される。また、同期信号SYCは、デジタルインターフェースバスBSを介してマイクロコントローラー80に入力される。
一方、制御信号CTがHレベルのとき、バッファー12は、入力端子と出力端子とが非導通となり、Hi-Z出力となる。バッファー12がHi-Z出力のとき、マイクロコントローラー80は、例えば、チップセレクト信号XCSをアクティブにしてインターフェース回路71(第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Y)とデータ通信を行うことができる。
なお、デジタルインターフェースバスBSの所定の信号線は、マイクロコントローラー80に同期信号SYCが入力される信号線であるとともに、例えば、マイクロコントローラー80がデータ入力信号SDIを出力する信号線でもあるため、マイクロコントローラー80に対する入力信号線にも出力信号線にもなり得る。そのため、マイクロコントローラー80の処理回路90は、インターフェース回路71とデータ通信を行う前に当該所定の信号線を出力信号線に設定し、Lレベルの制御信号CTを出力する前に当該所定の信号線を入力信号線に設定する。例えば、処理回路90は、レジスター部91の制御レジスターの所定のビットに0又は1を書き込むことにより、当該所定の信号線を入力信号線又は出力信号線に設定することができる。
なお、同期信号SYCは、図13では外部同期信号EXSYCであるが、外部同期信号EXSYCに基づく信号であってもよく、例えば、前述の図3で説明したように、同期信号出力回路88が、外部同期信号EXSYCをクロック信号でサンプリングすることなどにより生成される信号であってもよい。
図13のセンサーモジュール10では、インターフェース回路71(第1インターフェース回路70X)は、同期信号SYCに基づいて第1検出データをマイクロコントローラー80に出力し、インターフェース回路71(第2インターフェース回路70Y)は、同期信号SYCに基づいて第2検出データをマイクロコントローラー80に出力する。したがって、インターフェース回路71(第1インターフェース回路70X、第2インターフェース回路70Y)は、入力された同期信号SYCを用いて、検出回路61(第1検出回路60X、第2検出回路60Y)から適切なタイミングでの検出データを取得し、マイクロコントローラー80に出力できるようになる。これにより、図13のセンサーモジュール10においても、図1のセンサーモジュール10と同様、センサーモジュール10を用いて計測される情報の高精度化等を図れるようになる。
また、図13のセンサーモジュール10では、デジタルインターフェースバスBSの所定の信号線は、同期信号SYCが伝播する信号線として兼用されるので、センサーモジュール10の小型化に有利である。
2.計測システム
図14に本実施形態の計測システム200の構成例を示す。計測システム200はセンサーモジュール10と、センサーモジュール10に電気的に接続されているホストデバイス210を含む。また、GPS受信部220、GPS受信用のアンテナ222、発振器230を含むことができる。図14では、センサーモジュール10は6軸の慣性計測装置(IMU)として用いられている。ホストデバイス210はMPU等の各種のプロセッサーにより実現できる。なお、ホストデバイス210をASICの集積回路装置により実現してもよい。ホストデバイス210は、デジタル信号処理を実行するDSP212(デジタ
ルシグナルプロセッサー)と、クロック信号を生成するクロック信号生成回路213と、を含む。
GPS受信部220は、アンテナ222を介してGPS衛星からの信号を受信する。即ち、位置情報が重畳された衛星信号をGPS搬送波として受信する。GPS受信部220は、GPS受信機であり、GPSの受信回路を含む集積回路装置により実現できる。ホストデバイス210は、GPS受信部220が受信した信号に基づいて、移動体等の計測対象物の位置、速度、方位を表すGPS測位データを検出する。計測対象物の位置は緯度、経度又は高度などである。このGPS測位データには、受信状態や受信時刻等を示すステータスデータも含まれている。また、ホストデバイス210は、センサーモジュール10からの加速度データ及び角速度データを受け、これらのデータに対して慣性航法演算処理を行い、慣性航法測位データを求める。慣性航法測位データは、計測対象物の加速度データ及び姿勢データを含む。そして、ホストデバイス210は、求められた慣性航法測位データとGPS測位データに基づいて、計測対象物の位置等を算出する。計測対象物が自動車等の移動体である場合には、ホストデバイス210は、移動体が地面のどの位置を走行しているかを算出する。なお、このような計測対象物の位置や姿勢の演算処理は、DSP212を用いたカルマンフィルター処理により実現できる。
発振器230は、水晶振動子などの振動子を用いて発振クロック信号を生成する。発振器230は、例えば温度補償型発振器(TCXO)である。或いは、発振器230として恒温槽を備える恒温槽型発振器(OCXO)などを用いてもよい。クロック信号生成回路213は、発振器230からの発振クロック信号に基づき、ホストデバイス210で用いられる各種のクロック信号を生成する。この場合に、クロック信号生成回路213は、GPS等の衛星測位システムから取得された信号である時刻基準信号に基づいて、クロック信号を生成する。例えば、クロック信号生成回路213は、クロック信号の1つとして外部同期信号EXSYCを生成する。
ホストデバイス210は、GPS受信部220が受信した衛星信号に含まれる時刻情報に基づいて、正確な絶対時刻情報を取得できる。時刻情報は年、月、日、時、分、秒等の情報である。そして、GPS受信部220は、時刻基準信号として1秒ごとにパルスが発生するPPS信号を出力する。クロック信号生成回路213は、発振器230からの発振クロック信号により動作するPLL回路により構成され、PLL回路には、PPS信号がクロック同期用の基準信号として入力される。そして、PLL回路は、時刻基準信号であるPPS信号に同期したクロック信号を生成する。ホストデバイス210は、このようにして時刻基準信号に同期した外部同期信号EXSYCをセンサーモジュール10に出力する。
以上のように、本実施形態では、外部同期信号EXSYCは、時刻基準信号に基づき生成された信号になっている。これにより、センサーモジュール10は、時刻基準信号に基づき生成された外部同期信号EXSYCを用いて、センサーデバイスでの検出データを取得できるようになる。即ち、センサーモジュール10は、時刻基準信号に基づき生成された外部同期信号EXSYCを用いることで、正確な時刻に同期したタイミングで、センサーデバイスの検出回路からの検出データを取得できるようになる。したがって、センサーモジュール10は、正確な時刻に同期した適切なタイミングで取得された検出データを、ホストデバイス210に出力することができ、センサーモジュール10を用いて計測される情報の高精度化を図れる。
例えば、ホストデバイス210は、GPS受信部220が受信した衛星信号を用いることで、正確な絶対時刻情報を取得できる。したがって、ホストデバイス210は、外部同期信号EXSYCの各同期タイミングの絶対時刻についても特定できる。そして、センサ
ーモジュール10からは、外部同期信号EXSYCの同期タイミングで取得された検出データが出力される。また、センサーデバイスでの検出データの取得タイミングから、当該検出データがホストデバイス210に入力されるタイミングまでの遅延時間は、デジタル処理による遅延時間であるため、ホストデバイス210は、その遅延時間の長さであるクロック数を特定できる。したがって、ホストデバイス210は、センサーモジュール10から入力された加速度データや角速度データなどの検出データが、どの時刻で取得された検出データなのかを特定できる。そして、前述したようにホストデバイス210は、衛星信号に基づき求められたGPS測位データと、センサーモジュール10からの検出データに基づき求められた慣性航法測位データとに基づいて、計測対象物の位置等を算出している。したがって、ホストデバイス210は、加速度データや角速度データなどの検出データの取得タイミングの絶対時刻を特定できることで、計測対象物の位置等を正確に算出できるようになる。
また、本実施形態では、時刻基準信号は、例えば衛星測位システムから取得された信号である。例えば、時刻基準信号は、衛星測位システムから取得されたPPS信号などである。このようにすれば、計測システム200は、衛星測位システムを有効活用して時刻基準信号を取得し、取得された時刻基準信号に基づき生成された外部同期信号EXSYCを用いて、センサーデバイスでの検出データを取得することが可能になる。
なお、以上では、衛星測位システムがGPS(Global Positioning System)である場合を例にとり説明したが、計測システム200は、衛星測位システムとして、他の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。例えば、計測システム200は、EGNOS(European Geostationary Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)などの衛星測位システムのうちの1又は2以上を利用してもよい。また、計測システム200は、衛星測位システムの少なくとも1つにWAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary Satellite Navigation
Overlay Service)などの静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Satellite Based Augmentation System)を利用してもよい。また、時刻基準信号は、衛星測位システムから取得された信号には限定されない。例えば、計測システム200は、原子発振器などの高精度な発振器を用いて時刻基準信号を生成したり、ネットワークを用いて絶対時刻を取得することで時刻基準信号を生成してもよい。
3.センサーモジュールの具体例
図15はセンサーモジュール10の具体例を示す分解斜視図である。図15のセンサーモジュール10は、回路基板100、インナーケース120、環状の緩衝材130、アウターケース140を含み、これによりセンサーユニットが構成されている。センサーモジュール10は、アウターケース140の内部に、環状の緩衝材130を介在させて、回路基板100を搭載した構成となっている。回路基板100には角速度センサーデバイス、加速度センサーデバイスなどのセンサーデバイスが搭載されている。
センサーモジュール10は、平面形状が四角形状の直方体であり、四角形の対角方向に位置する2箇所の頂点近傍に、固定部としてのネジ穴142、144が形成されている。これらのネジ穴142、144に2本のネジを通して、自動車などの計測対象物の装着面に対して、センサーモジュール10を固定した状態で使用する。センサーモジュール10の上面視における表面には、開口部122が形成されている。開口部122の内部には、プラグ型のコネクター110が配置される。コネクター110は、複数のピンが並んで配置されている。このコネクター110には、ソケット型のコネクターが接続されて、センサーモジュール10への電源供給や、センサーモジュール10が検出した検出データの出
力などの電気信号の送受信が行われる。アウターケース140は、例えばアルミニウムを箱状に削り出した台座である。アウターケース140の外形は、前述したセンサーモジュール10の全体形状と同様に、平面形状が四角形状の直方体である。但しアウターケース140の外形の平面形状は、例えば6角形や8角形などの多角形であってもよいし、その多角形の頂点部分の角部が面取りされていたり、各辺が曲線状であったり、外形が円形状であってもよい。
なお、図15において、インナーケース120の底面側には凹部121が設けられている。そして、回路基板100の厚み方向からみた平面視(Z軸の負方向での平面視)において、凹部121と重なる領域に、角速度センサーデバイスや加速度センサーデバイスを含むセンサーデバイス群が配置されている。そして、回路基板100と凹部121により形成される空間に充填部材が充填されて固化される。これにより、回路基板100及びセンサーデバイス群の一部分又は全部が充填部材に覆われるようになり、共振周波数を外部からのノイズ振動の帯域から外すようにシフトさせることなどが可能になる。
4.角速度センサーデバイス
図16に角速度センサーデバイス30の詳細な構成例を示す。角速度センサーデバイス30は、振動子56、駆動回路58、検出回路60、処理回路66、インターフェース回路70を含む。駆動回路58は、振動子56からのフィードバック信号DGが入力されて信号増幅を行う増幅回路や、自動ゲイン制御を行うAGC回路や、駆動信号DSを振動子56に出力する出力回路などを含むことができる。例えば、AGC回路は、振動子56からのフィードバック信号DGの振幅が一定になるように、ゲインを可変に自動調整する。出力回路は、例えば矩形波の駆動信号DSを振動子56に出力する。検出回路60は増幅回路、同期検波回路、A/D変換回路等を含むことができる。増幅回路は、振動子56からの検出信号S1、S2が入力されて、差動信号である検出信号S1、S2の電荷-電圧変換や信号増幅を行う。同期検波回路は、駆動回路58からの同期信号を用いて、所望波を抽出するための同期検波を行う。A/D変換回路は、同期検波後のアナログの検出信号をデジタルの検出データに変換して、処理回路66に出力する。処理回路66は、検出データに対するゼロ点補正、感度調整、フィルター処理、温度補正等の各種の処理を行い、処理後の検出データをインターフェース回路70に出力する。
図16では、振動子56としてダブルT型構造の振動子を用いている。なお、振動子56として音叉型又はH型等の振動子を用いてもよい。振動子56は、駆動アーム38A、38B、38C、38Dと、検出アーム39A、39Bと、基部31と、連結アーム32A、32Bを有する。矩形状の基部31に対して+y軸方向、-y軸方向に検出アーム39A、39Bが延出している。また、基部31に対して+x軸方向、-x軸方向に連結アーム32A、32Bが延出している。そして、連結アーム32Aに対して、その先端部から+y軸方向、-y軸方向に駆動アーム38A、38Bが延出しており、連結アーム32Bに対して、その先端部から+y軸方向、-y軸方向に駆動アーム38C、38Dが延出している。駆動アーム38A、38B、38C、38D、検出アーム39A、39Bの先端側には周波数調整用の錘部が設けられている。z軸を振動子56の厚さ方向とすると、振動子56は、z軸回りでの角速度を検出する。
駆動アーム38A、38Bの上面及び下面には、駆動電極33が形成され、駆動アーム38A、38Bの右側面及び左側面には、駆動電極34が形成される。駆動アーム38C、38Dの上面及び下面には、駆動電極34が形成され、駆動アーム38C、38Dの右側面及び左側面には駆動電極33が形成される。そして、駆動回路58からの駆動信号DSは駆動電極33に供給され、駆動電極34からのフィードバック信号DGが駆動回路58に入力される。検出アーム39Aの上面及び下面には、検出電極35が形成され、検出アーム39Aの右側面及び左側面には、接地電極37が形成される。検出アーム39Bの
上面及び下面には、検出電極36が形成され、検出アーム39Bの右側面及び左側面には、接地電極37が形成される。そして、検出電極35、36からの検出信号S1、S2は検出回路60に入力される。
次に、角速度センサーデバイス30の動作を説明する。駆動回路58により駆動電極33に対して駆動信号DSが印加されると、駆動アーム38A、38B、38C、38Dは、逆圧電効果により図16の矢印C1に示すような屈曲振動を行う。例えば、実線の矢印で示す振動姿態と点線の矢印で示す振動姿態を所定の周波数で繰り返す。即ち、駆動アーム38A、38Cの先端が互いに接近と離間を繰り返し、駆動アーム38B、38Dの先端も互いに接近と離間を繰り返す屈曲振動を行う。このとき、駆動アーム38A及び38Bと駆動アーム38C及び38Dとが、基部31の重心位置を通るx軸に対して線対称の振動を行っているので、基部31、連結アーム32A、32B、検出アーム39A、39Bはほとんど振動しない。
この状態で、振動子56に対してz軸を回転軸とした角速度が加わると、コリオリ力により駆動アーム38A、38B、38C、38Dは矢印C2に示すように振動する。即ち、矢印C1の方向とz軸の方向とに直交する矢印C2の方向のコリオリ力が、駆動アーム38A、38B、38C、38Dに作用することで、矢印C2の方向の振動成分が発生する。この矢印C2の振動が連結アーム32A、32Bを介して基部31に伝わり、これにより検出アーム39A、39Bが矢印C3の方向で屈曲振動を行う。この検出アーム39A、39Bの屈曲振動による圧電効果で発生した電荷信号が、検出信号S1、S2として検出回路60に入力されて、z軸回りでの角速度が検出されるようになる。
5.電子機器
図17は本実施形態の電子機器300の構成例を示すブロック図である。電子機器300は、上記実施形態のセンサーモジュール10と、センサーモジュール10の出力信号に基づいて処理を行う処理部320と、を含む。また、電子機器300は、通信部310、操作部330、表示部340、記憶部350、アンテナ312を含むことができる。
通信部310は、例えば無線回路であり、アンテナ312を介して外部からデータを受信したり、外部にデータを送信する処理を行う。処理部320は、電子機器300の制御処理や、通信部310を介して送受信されるデータの種々のデジタル処理などを行う。また、処理部320は、センサーモジュール10の出力信号に基づいて処理を行う。具体的には、処理部320は、センサーモジュール10の検出データ等の出力信号(出力データ)に対して補正処理やフィルター処理などの信号処理を行ったり、或いは当該出力信号に基づいて、電子機器300についての各種の制御処理を行う。この処理部320の機能は、例えばMPU、CPUなどのプロセッサーにより実現できる。操作部330はユーザーが入力操作を行うためのものであり、操作ボタンやタッチパネルディスプレイをなどにより実現できる。表示部340は各種の情報を表示するものであり、液晶や有機ELなどのディスプレイにより実現できる。記憶部350はデータを記憶するものであり、その機能はRAMやROMなどの半導体メモリーなどにより実現できる。
なお、本実施形態の電子機器300は、例えばデジタルスチールカメラ又はビデオカメラ等の映像関連機器、車載機器、頭部装着型表示装置や時計関連機器などのウェアラブル機器、インクジェット式吐出装置、ロボット、パーソナルコンピューター、携帯情報端末、印刷装置、或いは投影装置等に適用できる。車載機器はカーナビゲーション装置や自動運転用の機器等である。時計関連機器は時計やスマートウォッチなどである。インクジェット式吐出装置としてはインクジェットプリンターなどがある。携帯情報端末は、スマートフォン、携帯電話機、携帯型ゲーム装置、ノートPC又はタブレット端末などである。また本実施形態の電子機器300は、電子手帳、電子辞書、電卓、ワードプロセッサー、
ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、測定機器、移動体端末基地局用機器、計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等にも適用できる。医療機器は、電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡などである。計器類は車両、航空機、船舶などの計器類である。
図18は、携帯型電子機器である腕時計型の活動計400を示す平面図であり、図19は活動計400の構成例を示すブロック図である。活動計400は、バンド401によってユーザーの手首等の部位に装着される。アクティブトラッカーである活動計400は、デジタル表示の表示部402を備えると共に、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などによる無線通信が可能である。
図18、図19に示すように、活動計400は、センサーモジュール10が収容されたケース403と、ケース403に収容され、センサーモジュール10からの出力信号に基づいて処理を行う処理部410と、ケース403に収容されている表示部402と、ケース403の開口部を塞いでいる透光性カバー404と、を含む。また、透光性カバー404の外側にはベゼル405が設けられ、ケース403の側面には複数の操作ボタン406、407が設けられている。センサーモジュール10には、3軸の加速度を検出する加速度センサー414と、3軸の角速度を検出する角速度センサー415とが、センサーデバイスとして設けられている。なお、センサーモジュール10に、地磁気センサー412、圧力センサー413、脈拍センサー416又は温度センサー417などをセンサーデバイスとして設けてもよい。
表示部402には、種々の検出モードに応じて、GPSセンサー411や地磁気センサー412を用いて求められた位置情報や移動量、加速度センサー414や角速度センサー415を用いて求められた運動量などの運動情報、脈拍センサー416を用いて求められた脈拍数などの生体情報、現在時刻などの時刻情報が表示される。また、温度センサー417を用いて求められた環境温度を表示することもできる。通信部422は、ユーザー端末などの情報端末との通信を行う。プロセッサーである処理部410はMPU、DSP、ASICなどにより実現される。処理部410は、記憶部420に記憶されるプログラムと、操作ボタン406、407などの操作部418により入力された情報とに基づき、各種の処理を実行する。処理部410が行う処理としては、GPSセンサー411、地磁気センサー412、圧力センサー413、加速度センサー414、角速度センサー415、脈拍センサー416、温度センサー417、計時部419の出力信号に基づく処理がある。また、処理部410は、表示部402に画像を表示させる表示処理、音出力部421に音を出力させる音出力処理、通信部422を介して情報端末と通信を行う通信処理、バッテリー423からの電力を各部へ供給する電力制御処理なども行うことができる。
以上のような構成の本実施形態の活動計400によれば、前述したセンサーモジュール10の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。また、活動計400は、GPSセンサー411を含み、ユーザーの移動距離や移動軌跡を計測することができるため、利便性の高い活動計400が得られる。なお、活動計400は、ランニングウォッチ、ランナーズウォッチ、アウトドアウォッチ、或いはGPSを搭載したGPSウォッチなどに広く適用できる。
6.移動体
本実施形態の移動体は、上記実施形態のセンサーモジュール10と、センサーモジュール10の出力信号に基づく処理により求められた移動体の姿勢の情報に基づいて、移動体の姿勢の制御を行う制御装置と、を含む。
図20にセンサーモジュール10が用いられる移動体500の一例を示す。図21は移動体500の構成例を示すブロック図である。図20に示すように、移動体500は、車体502や車輪504を有している。また、移動体500には測位装置510が装着されており、車両制御などを行う制御装置570が内部に設けられている。また、図21に示すように、移動体500は、エンジンやモーター等の駆動機構580と、ディスクブレーキやドラムブレーキ等の制動機構582と、ハンドルやステアリングギアボックス等で実現される操舵機構584と、を有する。このように、移動体500は、駆動機構580や制動機構582や操舵機構584を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。例えば、移動体500は農業機械(農機)などの四輪自動車である。
測位装置510は、移動体500に装着されて、移動体500の測位を行う装置である。測位装置510は、センサーモジュール10と、GPS受信部520と、GPS受信用のアンテナ522と、ホストデバイス530を含む。ホストデバイス530は、位置情報取得部532と、位置合成部534と、演算処理部536と、処理部538と、を含む。IMUであるセンサーモジュール10は、3軸の加速度センサーと3軸の角速度センサーを有している。演算処理部536は、加速度センサー、角速度センサーからの加速度データ、角速度データを受け、これらデータに対して慣性航法演算処理を行い、慣性航法測位データを出力する。慣性航法測位データは移動体500の加速度や姿勢を表すデータである。
GPS受信部520は、アンテナ522を介してGPS衛星からの信号を受信する。位置情報取得部532は、GPS受信部520が受信した信号に基づいて、測位装置510が装着された移動体500の位置、速度、方位を表すGPS測位データを出力する。位置合成部534は、演算処理部536から出力された慣性航法測位データと、位置情報取得部532から出力されたGPS測位データとに基づいて、移動体500が地面のどの位置を走行しているかを算出する。例えば、GPS測位データに含まれている移動体500の位置が同じであっても、図20に示すように地面の傾斜(θ)などの影響によって移動体500の姿勢が異なっていれば、地面の異なる位置を移動体500が走行していることになる。そのため、GPS測位データだけでは移動体500の正確な位置を算出できない。そこで、位置合成部534は、慣性航法測位データのうちの特に移動体500の姿勢に関するデータを用いて、移動体500が地面のどの位置を走行しているのかを算出する。位置合成部534から出力された位置データは、処理部538によって所定の処理が行われ、測位結果として、表示部550に表示される。また、位置データは通信部560によって外部装置に送信されるようになっていてもよい。
制御装置570は、移動体500の駆動機構580、制動機構582、操舵機構584の制御を行う。制御装置570は、車両制御用のコントローラーであり、例えば複数のコントロールユニットにより実現できる。制御装置570は、車両制御を行うコントロールユニットである車両制御部572と、自動運転制御を行うコントロールユニットである自動運転制御部574と、半導体メモリーなどにより実現される記憶部576と、を有する。監視装置578は、移動体500の周辺の障害物等の物体を監視する装置であり、周辺監視カメラ、ミリ波レーダー又はソナーなどにより実現される。
そして、本実施形態の移動体500は、図21に示すように、センサーモジュール10と、制御装置570と、を含む。制御装置570は、センサーモジュール10の出力信号に基づく処理により求められた移動体500の姿勢の情報に基づいて、移動体500の姿勢の制御を行う。例えば、ホストデバイス530は、センサーモジュール10からの検出データを含む出力信号に基づいて、上述したような各種の処理を行って、移動体500の位置や姿勢の情報を求める。例えば、ホストデバイス530は、移動体500の位置の情報を、上述したようにGPS測位データと慣性航法測位データとに基づき求めることがで
きる。また、ホストデバイス530は、移動体500の姿勢の情報を、例えば慣性航法測位データに含まれる角速度データなどに基づいて求めることができる。移動体500の姿勢の情報は、例えばローリング、ピッチング、ヨーイングの回転運動についての情報であり、ロール角、ピッチ角、ヨー角などにより表すことができる。そして、制御装置570は、例えばホストデバイス530の処理により求められた移動体500の姿勢の情報に基づいて、移動体500の姿勢の制御を行う。この制御は例えば車両制御部572により行われる。この姿勢の制御は、例えば制御装置570が操舵機構584を制御することで実現できる。或いは、スリップ制御などの移動体500の姿勢を安定化させる制御においては、制御装置570が駆動機構580を制御したり、制動機構582を制御してもよい。本実施形態によれば、センサーモジュール10の出力信号により求められる姿勢の情報を、高精度に求めることができるため、移動体500の適切な姿勢制御を実現できる。
また、本実施形態では、制御装置570は、センサーモジュール10の出力信号に基づく処理により求められた移動体500の位置及び姿勢の情報に基づいて、移動体500の加速、制動及び操舵の少なくとも1つを制御する。例えば、制御装置570は、移動体500の位置及び姿勢の情報に基づいて、駆動機構580、制動機構582及び操舵機構584の少なくとも1つを制御する。これにより、例えば自動運転制御部574による移動体500の自動運転制御を実現できる。この自動運転制御では、移動体500の位置及び姿勢の情報に加えて、監視装置578による周囲の物体の監視結果や、記憶部576に記憶される地図情報や走行ルート情報などが用いられる。そして、制御装置570は、移動体500の自動運転の実施又は不実施を、センサーモジュール10の出力信号の監視結果に基づいて切り替える。例えば、ホストデバイス530が、センサーモジュール10からの検出データなどの出力信号を監視する。そして、例えば監視結果に基づいて、センサーモジュール10の検出精度の低下やセンシング異常が検出された場合に、制御装置570は、自動運転の実施から、自動運転の不実施に切り替える。例えば、自動運転では、移動体500の加速、制動及び操舵の少なくとも1つが自動で制御される。一方、自動運転の不実施では、このような加速、制動、操舵の自動制御が実施されない。このようにすることで、自動運転を行う移動体500の走行について、より信頼性の高い支援が可能になる。なお、センサーモジュール10の出力信号の監視結果に基づいて、自動運転の自動化レベルを切り替えてもよい。
図22にセンサーモジュール10が用いられる他の移動体600の一例を示す。図23は移動体600の構成例を示すブロック図である。上記実施形態のセンサーモジュール10は、建設機械(建機)の姿勢制御などにおいて効果的に用いることができ、図22及び図23は、移動体600として建設機械(建機)の一例である油圧ショベルを例示している。
図22に示すように、移動体600は、車体を下部走行体612と、下部走行体612上に旋回可能に搭載された上部旋回体611とで構成され、上部旋回体611の前部側に上下方向に回動可能な複数の部材で構成された作業機構620が設けられている。上部旋回体611には不図示の運転席が設けられ、運転席には、作業機構620を構成する各部材を操作する不図示の操作装置が設けられている。そして、上部旋回体611には、上部旋回体611の傾斜角を検出する傾斜センサーとして機能するセンサーモジュール10dが配置されている。
作業機構620は、複数の部材として、上部旋回体611の前部側に俯仰動可能に取付けられたブーム613と、ブーム613の先端側に俯仰動可能に取付けられたアーム614と、アーム614の先端側に回動可能に取付けられたバケットリンク616と、アーム614およびバケットリンク616の先端側に回動可能に取付けられたバケット615と、ブーム613を駆動するブームシリンダー617と、アーム614を駆動するアームシ
リンダー618と、バケット615をバケットリンク616を介して駆動するバケットシリンダー619とを備えている。
ブーム613の基端側は、上部旋回体611に上下方向に回動可能に支持され、ブームシリンダー617の伸縮によってブーム613が上部旋回体611に対して相対的に回転駆動される。そして、ブーム613には、ブーム613の動きの状態を検出する慣性センサーとして機能するセンサーモジュール10cが配置されている。
ブーム613の先端側には、アーム614の一端側が回転可能に支持され、アームシリンダー618の伸縮によってアーム614がブーム613に対して相対的に回転駆動される。アーム614には、アーム614の動きの状態を検出する慣性センサーとして機能するセンサーモジュール10bが配置されている。
アーム614の先端側には、バケットリンク616とバケット615とが回動可能に支持されていて、バケットシリンダー619の伸縮に応じてバケットリンク616がアーム614に対して相対的に回転駆動され、それに連動してバケット615がアーム614に対して相対的に回転駆動される。そして、バケットリンク616には、バケットリンク616の動きの状態を検出する慣性センサーとして機能するセンサーモジュール10aが配置されている。
ここで、センサーモジュール10a,10b,10c,10dとして、前述の実施形態において説明したセンサーモジュール10を用いることができる。センサーモジュール10a,10b,10c,10dは、作業機構620の各部材や上部旋回体611に作用する角速度、および加速度の少なくともいずれかを検出することができる。また、センサーモジュール10a,10b,10cは、図23に示すように、直列的に接続され、検出信号を制御装置631に送信することができる。このように、センサーモジュール10a,10b,10cを直列接続することにより、可動領域内における検出信号を送信するための配線数を減らし、コンパクトな配線構造を得ることができる。コンパクトな配線構造により、配線の敷設方法の選択が容易となり、配線の劣化や損傷などの発生を低減させることが可能となる。
更に、移動体600には、図22に示すように、上部旋回体611の傾斜角や作業機構620を構成するブーム613、アーム614、バケット615の位置姿勢を演算する制御装置631が設けられている。制御装置631は、センサーモジュール10a,10b,10c,10dの出力信号に基づく処理により求められた移動体600の姿勢の情報に基づいて、移動体600の姿勢の制御を行う。具体的には、制御装置631は、各センサーモジュール10a,10b,10c,10dからの各種検出信号を入力し、各種検出信号に基づいてブーム613、アーム614、バケット615の位置姿勢(姿勢角)や上部旋回体611の傾斜状態を演算する。演算されたブーム613、アーム614、バケット615の姿勢角を含む位置姿勢信号や上部旋回体611の姿勢角を含む傾斜信号、例えばバケット615の位置姿勢信号は、運転席のモニター装置(図示せず)の表示、または作業機構620や上部旋回体611の動作を制御するためのフィードバック情報に用いられる。
なお、上記実施形態のセンサーモジュール10が用いられる建設機械(建機)としては、上記に例示した油圧ショベル(ユンボ、バックホー、パワーショベル)の他にも、例えば、ラフテレーンクレーン(クレーン車)、ブルドーザー、掘削機・積み込み機、ホイールローダー、高所作業車(リフト車)などがある。
本実施形態によれば、センサーモジュール10(10a,10b,10c,10d)の
出力信号により求められる姿勢の情報を、高精度に求めることができるため、移動体600の適切な姿勢制御を実現できる。また、移動体600によれば、コンパクトなセンサーモジュール10を装着しているため、例えば、バケットリンク616などの極めて限られた狭い領域内であっても、センサーモジュール10の設置箇所毎に、複数のセンサーモジュールを直列接続(マルチ接続)してコンパクトに配置したり、各箇所に設置されているセンサーモジュール10同士をケーブルで直列的に接続するケーブルの引き回しをコンパクトにしたりすることが可能な建設機械を提供することができる。
なお、本実施形態では、センサーモジュール10が用いられる移動体として、農業機械(農機)等の四輪自動車や建設機械(建機)を例にとり説明したが、これら以外にも、オートバイ、自転車、電車、飛行機、二足歩行ロボット、又は、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、ドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)などがある。
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。