JP7218150B2 - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録装置では様々な記録媒体への記録が可能である。そのような中、記録媒体の搬送精度を高めること、又は記録ヘッドと記録媒体の距離を一定に保ち、インクの吐出精度を高めることで、安定した記録物を得ることが検討されている。
普通紙のような、コート層を有しない記録媒体への記録に用いられるインクジェット記録装置においては、安定した記録を行うために、記録媒体にインクが付着した際に発生するしわや波打ちによる変形(コックリング)を抑える必要がある。これは、記録を行う際に記録媒体を支持するプラテンと記録媒体との間で浮きが生じると、この浮き部分が、記録ヘッドに接触して画質低下の原因となるからである。このような課題を解決する手段として、特許文献1及び2では、画像を記録する際に吸引部から吸引することにより、プラテンにおける記録媒体の支持面に記録媒体を吸着させながら搬送する機構が提案されている。特許文献2には、記録媒体を加熱する手段として、加熱されたプラテンを利用することも開示されている。
吸引部から吸引することにより記録媒体をプラテンに吸着させる機構を用いると、記録装置内に発生する記録に寄与しない微小なインク滴(インクミスト)を空気とともに吸引し、回収することが可能になるという利点を有する。その一方、吸引によって記録媒体をプラテンに吸着させる方式では、不要な位置からの吸引を行わないなどの気流対策を講じたとしても、気流を十分に抑制することは困難である。インクミストのサイズはごく小さいので、わずかな気流であっても、その流れは大きな影響を受け、インクミストが記録媒体の背面に回り込み付着することで、記録物が汚れてしまう。以下、このような記録媒体の背面における画質の低下を、「裏汚れ」と称する。
特許文献3では、記録媒体を吸着させて搬送する搬送ベルトに、記録媒体を吸着するための吸引に用いられる孔と、記録媒体を吸着するための吸引に用いられない孔とを設けることが提案されている。そして、記録媒体に対応しない位置の吸引孔からは吸引しないようにすることで、記録媒体の裏汚れを抑制しうるとされている。
特開2013-010198号公報 特開2017-071063号公報 特開2014-237258号公報
しかし、本発明者らの検討の結果、吸引部から吸引することによりプラテンの支持面に記録媒体を吸着させつつ記録を行う場合、従来のいずれの技術を利用しても、近年要求されるレベルの画像特性(裏汚れの抑制)を満足するには至っていないことがわかった。
一方、インクジェット記録方法では、記録媒体のサイズより若干大きめの領域に対してインクを付与することにより、記録媒体の全面にわたって画像を記録し、記録媒体の縁部に余白を生じさせない記録(ふちなし記録)が行われることがある。吸引によりプラテンに記録媒体を吸着させつつ記録を行う方法は、記録媒体をその端部付近まで正確に保持でき、記録ヘッドと記録媒体との距離を一定に保つことが可能であることから、ふちなし記録に対しても高品位な画像を得ることが可能になる。しかし、ふちなし記録では、記録媒体の端部付近までふちなし記録する際、インクミストが記録媒体の端部付近に多く発生するために、記録媒体の裏汚れがより顕著に表れる。なお、上述の特許文献1では、ふちなし記録を行う場合に、プラテンに設けられた複数の溝部から、記録媒体の端部に対応した位置の溝部を選択し、記録媒体からはみ出したインクをこの溝部で受けることで、裏汚れを抑制しうるとされている。
したがって、本発明の目的は、吸引により記録媒体を吸着支持するプラテンを備えたインクジェット記録装置を使用して記録を行う場合に、記録媒体の裏汚れを抑制することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記インクジェット記録方法に用いることが可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、吸引部から吸引することにより記録媒体を吸着支持するプラテンと、前記プラテンと対向して配置された記録ヘッドと、前記記録媒体を加熱するための加熱機構とを備えたインクジェット記録装置を使用して、ガーレー試験機法による透気抵抗度が100秒以下の記録媒体を前記加熱機構により加熱しながら、前記記録ヘッドからインクを吐出して、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、水のモル分率が90%以上である水性インクであり、前記水性インクが、前記記録媒体の加熱温度以下であるガラス転移温度を有する樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、吸引により記録媒体を吸着支持するプラテンを備えたインクジェット記録装置を使用して記録を行う場合に、記録媒体の裏汚れを抑制することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記インクジェット記録方法に用いることが可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
インクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す概略構成図である。 図1に示すプラテンを記録ヘッド側から見て模式的に示した平面図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
<インクジェット記録方法>
まず、本発明者らは、記録媒体を吸引部から吸引することによりプラテンに吸着支持させて記録を行うインクジェット記録装置を用いて、検討を行った。その結果、吸引部から吸引することにより、記録媒体の裏汚れが発生し、特にふちなし記録の場合は裏汚れが顕著に生ずることが判明した。
その原因は、次のように推測される。インクが記録ヘッドから吐出され、インク液滴が形成される際に発生する微小なインク滴(インクミスト)が、記録媒体に付着せず、空気の吸引による気流に乗って、記録媒体の裏側まで回り込み、記録媒体の裏面に付着することで裏汚れが発生したと考えられる。インクミストの記録媒体の裏面への回り込みは、記録媒体のより端部まで記録する場合の方が顕著に発生し、記録媒体の中央部のみを記録する場合ではそれほど裏汚れが生じにくいこともわかった。
本発明者らは、吸引により記録媒体を吸着支持するプラテンを備えたインクジェット記録装置を使用してふちなし記録を行う場合に、記録媒体の裏汚れが顕著に発生する問題を解決するための検討を行った。その結果、本発明者らは、ガーレー試験機法による透気抵抗度が100秒以下の記録媒体を加熱しながら、その記録媒体に、水のモル分率が90%以上である水性インクを用いて記録を行うことで、記録媒体の裏汚れを抑制できることを見出した。このメカニズムは次のように推測される。
インクジェット記録装置におけるプラテンに設けられた吸引部からの空気の吸引が行われると、ガーレー試験機法による透気抵抗度が100秒以下の記録媒体は、その表面から裏面にかけて空気が透過する。その記録媒体が加熱されている状態で、その記録媒体に、水のモル分率が90%以上である水性インクが記録ヘッドから吐出されて付与されると、記録媒体に付与されたインク中の水分の気化成分(主に水蒸気)が記録媒体の裏面へ抜けていくと考えられる。これにより、記録媒体の裏面へのインクミストの付着が抑制されると考えられる。
以上の検討により、本発明のインクジェット記録方法では、吸引部から吸引することにより記録媒体を吸着支持するプラテンと、プラテンと対向して配置された記録ヘッドと、記録媒体を加熱するための加熱機構とを備えたインクジェット記録装置を使用する。そして、ガーレー試験機法による透気抵抗度が100秒以下の記録媒体を加熱機構により加熱しながら、記録ヘッドからインクを吐出して、上記記録媒体に画像を記録する。この際に、インクとして、水のモル分率が90%以上である水性インクを使用する。これにより、ふちなし記録を行う場合でも、記録媒体の裏汚れを抑制することができる。
以下、本発明のインクジェット記録方法で好適に用いることができるインクジェット記録装置、及びインクなどについて説明する。
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、吸引部から吸引することにより記録媒体を吸着支持するプラテンと、プラテンと対向して配置された記録ヘッドと、記録媒体を加熱するための加熱機構を備える。プラテンは、吸引部が設けられた吸引領域を備える。記録ヘッドは、インクなどの液体を吐出する複数の吐出口を備える。また、インクジェット記録装置は、本発明のインクジェット記録方法に用いるインクを備えることができる。以下、図面を参照しつつ、本発明のインクジェット記録装置の詳細について説明する。
図1は本発明に適用可能なインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。図1に示すインクジェット記録装置100は、記録媒体10を反転させて記録媒体10の両面に記録を可能とするための両面記録機構を備える。図1中に示す符号において、1は給紙トレイ(給紙部)、2は記録部(記録手段)、3は排紙トレイ(排紙部)、4は記録媒体の反転手段としての反転機構、5は記録媒体の搬送方向を切り替えるための切り替え部である。また、6はプラテン、7は搬送経路(破線)、8は上流側の第1搬送ローラ対としての搬送ローラ対、9は下流側の排紙ローラ対、41は搬送ローラ対8の上流に配置した、第2搬送ローラ対としての中間ローラ対である。
給紙トレイ1上には記録媒体10が積載されており、ここから1枚ずつ搬送経路7へと記録媒体10が給送される。記録媒体10は、中間ローラ対41と同期がとれた搬送ローラ対8の正転動作によって、プラテン6に支持されながら矢印X1方向へと搬送され、記録部2によって第1の記録面(表面)の先端領域から画像が記録される。記録部2の記録ヘッドとしては、シリアルタイプ、及びラインタイプのいずれを利用してもよい。画像の記録は、記録ヘッドから吐出されたインクを、シート状の記録媒体10に直接付与して行う。記録媒体10は、カット紙、ロール紙のいずれであってもよいが、カット紙がより好ましい。その後、記録媒体10は上流側の搬送ローラ対8と下流側の排紙ローラ対9に挟持され、この状態で第1の記録面(表面)の通常領域に画像が記録される。最後に、記録媒体の後端が搬送ローラ対8から外れ、下流側の排紙ローラ対9のみで記録媒体が挟持された状態となり、この状態で第1の記録面(表面)の後端領域にまで画像が記録される。こうして記録媒体10の表面の記録が終了する。
下流側の排紙ローラ対9と上流側の搬送ローラ対8を逆転させて、記録媒体10を矢印X2方向へと逆送し、反転機構4へと送る。この際、記録媒体10の後端(逆送中は先端)が実線で示される切り替え部5にガイドされて反転機構4におけるループ状の反転経路4aに沿って矢印K(反時計)方向に搬送される。切り替え部5は回動中心5a回りに矢印L(時計)方向に付勢され実線の位置で停止しているが、反転経路4aに沿って矢印K方向に搬送されてきた記録媒体10の後端があたると、その記録媒体10の剛性による押し込み力で破線の位置に回動する。そして、記録媒体10は表裏及び前後を反転させた状態で再び記録部2へと供給される。すなわち、反転経路4aを通過した後の記録媒体10は、その裏面が記録部2に対向し、かつ、片面記録時には搬送方向前方に位置していた端部が反転経路4aを通過した後は搬送方向後方に位置することとなる。このようにして反転された記録媒体10は、記録部2によって裏面に記録される。それから、排紙トレイ3に排出される。
図2は、図1に示すプラテン6を記録ヘッド側から見て模式的に示した平面図である。プラテン6の下方にはファンが配備されており、ファンを駆動することにより、吸引部11を介して空気が吸引され、プラテン6上に記録媒体が密着し、プラテン6に記録媒体が吸着支持されて、画像の記録が行われる。
(記録媒体の加熱工程)
本発明のインクジェット記録方法では、使用するインクジェット記録装置における加熱機構により記録媒体を加熱しながら、その記録媒体に、記録ヘッドからインクを吐出して、画像を記録する。記録媒体を加熱しながら画像の記録を行うことには、記録媒体を予め加熱してある状態にしておくことも含まれ、記録媒体にインクが付与される際に、記録媒体を加熱する工程を有していればよい。記録媒体において、インクが付与される領域近傍よりも、記録媒体の搬送方向(副走査方向)の上流側及び下流側の部分のいずれかを加熱する工程を有していてもよい。その場合、インクが付与される部分の近傍と、搬送方向の上流側及び下流側の部分の加熱温度は、同じ温度としてもよいし、異なる温度としてもよい。加熱する温度は、記録媒体が変形しない範囲とすることが好ましい。したがって、このような条件を満たすのであれば、記録媒体の裏面から加熱しながら記録を行う場合も含まれる。
具体的には、熱で変形しにくいダイカスト製法で作製したアルミニウム合金製のプラテンの下部に、ニッケル合金製のヒーターを配置し、そのヒーターによりプラテンを加熱し、そのプラテンにより記録媒体を加熱しながら記録を行う方法などが挙げられる。また、搬送方向の上流側及び下流側の部分の加熱方法としては、上述のようなプラテンの下部からの加熱方法以外にも、シーズヒーターやハロゲンヒーターと熱反射板を用いて記録媒体の表面を加熱する方法などが挙げられる。記録ヘッドの近傍よりも搬送方向の上流側に記録媒体を加熱する工程を設けることで、記録媒体が記録ヘッドの近傍に送られてくる前に、記録媒体の表面を所望の温度に保持することも容易となる。このような方法によれば、記録ヘッドの近傍での加熱は、インクの水分や水溶性有機溶剤の気化熱によって奪われた熱を補充することにもなり、記録媒体の内部へ浸透した水分蒸発をより促すことになるため、好ましい。加熱された記録媒体の温度が高いほど、記録媒体に付与されたインク中の水分の気化成分(主に水蒸気)が生じやすく、記録媒体の裏面へ抜ける水蒸気が多くなるため、記録媒体の裏汚れをより有効に抑制することができる。但し、いずれの加熱工程においても、記録媒体が変形する温度以下の温度で加熱することが好ましい。具体的には、加熱された記録媒体の温度が、40℃以上120℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下であることがさらに好ましい。
(インク)
以下、本発明のインクジェット記録方法に用いるインクを構成する各成分やインクの物性などについて詳細に説明する。本発明で用いるインクは、いわゆる「硬化型インク」である必要はない。したがって、本発明で用いるインクは、外部エネルギーの付加により重合しうる重合性モノマーなどの化合物を含有しなくてもよい。
(水のモル分率)
本発明のインクジェット記録方法では、水のモル分率が90%以上である水性インクが使用される。まず、インクに含まれる水の蒸発とモル分率について説明する。ある温度及び湿度の環境にインクが置かれた場合、インクに含まれる水の蒸発はインク中の水がなくなるまで進行するわけではなく、湿度及び蒸発の終点との間には相関関係がある。
ある温度における飽和水蒸気圧をP(Pa)とすると、大気中の水の分圧は、水のモル分率W(%)(すなわち、相対湿度)により、P×W/100(Pa)で表される。一方、水分子の蒸発の頻度は、インク中の水のモル分率C(%)におよそ比例するので、水の蒸発量は水のモル分率に比例する。
ガーレー試験機法による透気抵抗度が100秒以下であるような、透気性の記録媒体にインクを付与した際、インク中の液体成分(水及び水溶性有機溶剤など)は、記録媒体の内部へ浸透し、さらに液体成分から発生する蒸気が裏面へ抜けていくと考えられる。インクの液体成分として、水に加えてさらに水溶性有機溶剤が用いられる場合、水溶性有機溶剤は、その蒸発による吐出口の目詰まりなどを抑制するために、蒸気圧が比較的低いものを用いることが好ましい。具体的には、25℃における蒸気圧が10Pa以下の水溶性有機溶剤が好ましい。水の25℃における蒸気圧が約3200Paであることを考えると、インク中の液体成分から発生する蒸発成分はほぼ水蒸気と考えてよい。
以上のことから、本発明者らは、記録媒体の裏汚れと、インクについて検討を行った。その結果、インクに含まれる水のモル分率に着目し、インクにおける水のモル分率を90%以上にすることで、上述したような裏汚れを低減できるという結論に至った。インクの水分蒸発の速度はモル分率で表すことができる。インクにおける水のモル分率は95%以上であることがより好ましい。インクにおける水のモル分率が90%未満であると、インク中の水分の蒸発量が少なく、インクミストの付着による裏汚れの抑制効果が得られない場合がある。インクにおける水のモル分率の上限は、理論上100%である。
インクにおける水のモル分率とは、インクに含まれる分子量300以下の水溶性化合物(水を含む)に占める水のモル分率を指す。インクが水とともに水以外の分子量300以下の水溶性化合物をn種(n≧0)含有する場合、その水のモル分率は、n種の水溶性化合物を水溶性化合物1、2、3、・・・、nとし、水の分子量を18としたとき、下記式(1)によって算出することができる。下記式(1)において、MW、MW、MW、・・・、MWは、それぞれ、インクに含有されている分子量300以下の水溶性化合物1、2、3、・・・、nの分子量を表す。また、Cはインク中の水の含有量(質量%)を表し、C、C、C、・・・、Cは、それぞれ、インク中の分子量300以下の水溶性化合物1、2、3、・・・、nの含有量(質量%)を表す。なお、インクが水以外に、分子量300以下の水溶化合物を含有しない場合、そのインクにおける水のモル分率は100%である。
Figure 0007218150000001
本発明における「水のモル分率」は、「分子量が300以下」である水溶性化合物(水を含む)を対象に算出した値とする。「分子量が300以下」の化合物を水のモル分率を算出する対象の化合物とするのは、水と比較して分子量が十分に大きい化合物は、インクジェット用の水性インク中の通常の含有量では、水のモル分率に実質的に影響を与えないためである。顔料、樹脂、界面活性剤などは水と比較して分子量がはるかに大きく、インクジェット用の水性インク中の通常の含有量ではモル数は極めて小さくなるために考慮する必要がない。さらに、インク中の水に溶解する化合物のうち、含有量が1.0質量%以上である化合物を考慮すれば、実質的に、本発明の効果を具現化するための条件としては十分である。上記の定義に合致する化合物には、実質的には、後述するような水溶性有機溶剤(固体の物質も含む)を挙げることができる。
[色材]
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクは、色材を含有することが好ましい。色材としては、染料及び顔料のいずれも用いることができる。染料としては、アニオン性基を有するものなどを挙げることができる。染料としては、フタロシアニン、アゾ、キサンテン、及びアントラピリドンなどの骨格を有する化合物を用いることができる。また、顔料としては、カーボンブラックなどの無機顔料、及びフタロシアニン、キナクリドン、アゾなどの有機顔料を挙げることができる。顔料としては、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散タイプの顔料、及び顔料の粒子表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散顔料)などを用いることができる。分散方法の異なる顔料を併用することもできる。本発明のインクジェット記録方法では、色材として顔料を用いることがより好ましい。
樹脂分散タイプの顔料としては、高分子分散剤を使用した樹脂分散型顔料、顔料の粒子の表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル型顔料、及び顔料の粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合した樹脂結合型顔料などがある。樹脂としては、(メタ)アクリル酸などのアニオン性基を有するユニットと、芳香環や脂肪族基を有するモノマーなどのアニオン性基を有しないユニットとを少なくとも有する、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
自己分散タイプの顔料としては、顔料の粒子表面にアニオン性基が直接又は他の原子団を介して結合したものを挙げることができる。アニオン性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基などを挙げることができる。アニオン性基のカウンターイオンとしては、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムなどのカチオンを挙げることができる。また、他の原子団は、顔料の粒子表面とイオン性基とのスペーサの機能を持つものであり、分子量が1,000以下であることが好ましい。他の原子団としては、炭素数1乃至6程度のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基などのアリーレン基;エステル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
インク中の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。なかでも、2.0質量%以上10.0質量%以下であることが特に好ましい。色材の含有量が2.0質量%以上であると、記録される画像の光学濃度を高めやすい。一方、色材の含有量が10.0質量%以下であると、良好な吐出安定性が得られやすい。
[樹脂]
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクは、さらに樹脂を含有することが好ましい。インクにさらに樹脂を含有させると、そのインクが記録媒体に付与された際、記録媒体の表層に樹脂を含むインク層が形成されることで、インク中の水分などの気化成分(水蒸気など)は記録媒体の表層で拡散するよりも裏面へより抜けやすくなると考えられる。そのため、さらなる裏汚れの抑制に効果を発現すると考えられる。
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリオレフィン樹脂などを挙げることができる。樹脂の溶解性を向上させるために、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;アンモニア;ジメチルアミン、モノエタノールアミン、及びトリエタノールアミンなどの有機アミンなどの塩基を中和剤として添加してもよい。
インクに樹脂を含有させる場合、インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。なかでも、1.5質量%以上6.0質量%以下であることが特に好ましい。
樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、水性媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子は、色材を内包する必要はない。本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と等モル量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒径を測定しうる粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒径を動的光散乱法により測定した場合に、粒径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
水溶性樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性樹脂の重量平均分子量は、3,000以上15,000以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。動的光散乱法により測定される樹脂粒子の体積平均粒径は、100nm以上500nm以下であることが好ましい。
インクには、樹脂として、樹脂粒子を含有させることが好ましい。インクに樹脂粒子を含有させることで、インクが記録媒体に付与された際に、インク中の水と樹脂との固液分離を早く生じさせることができる。これにより、インク中の水分が素早く記録媒体の内部へ浸透するので、効果的に記録媒体の裏面への蒸気抜けを促進させることができる。
樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と記すことがある)は、記録媒体の加熱温度以下であることが好ましい。インクには、Tgが記録媒体の加熱温度以下である樹脂粒子を含有させることがより好ましい。このような樹脂粒子をインクに含有させることにより、インク中の水分などが記録媒体の内部へ浸透した後、記録媒体の裏面へ蒸気として抜ける際に、記録媒体の表層付近に残る樹脂粒子は、樹脂粒子同士の融着によって層を形成することができる。これにより、記録媒体の表層への蒸気の拡散を防ぎ、蒸気が記録媒体の裏面へより抜けやすくなるため、記録媒体の裏汚れの抑制効果を高めることができると考えられる。なお、樹脂粒子同士の融着が記録媒体の表層で部分的に生じるだけであっても、蒸気の表層への拡散を抑制する作用は生ずるため、樹脂粒子のTgは記録媒体の加熱温度以下であればよい。
樹脂のTgは、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することができる。Tgの具体的な測定方法は、例えば、以下に示す通りに行うことができる。まず、樹脂を60℃で乾固させて得た乾固物2mgをアルミニウム容器に封管する。そして、この乾固物について、示差走査熱量測定装置(DSC、商品名「Q1000」、TA instruments製)を使用すれば、樹脂のTgを測定することができる。Tgを測定する際の温度プログラムは、例えば、以下に示す(1)及び(2)の手順とすればよい。
(1)200℃まで10℃/分で加熱した後、200℃から-50℃まで5℃/分で降温させる。
(2)次いで、-50℃から200℃まで10℃/分で昇温させながら熱分析する。
樹脂粒子のなかでも、密度が960kg/m以下、より好ましくは940kg/m以下であるオレフィン重合体に由来するユニットを含むポリオレフィン系樹脂粒子がさらに好ましい。インクは記録ヘッドのインク流路に充填され、吐出口から吐出されて記録されるが、より良好な吐出安定性を得るために、インクを加温して記録を行うことが好ましい。その際、上記のポリオレフィン系樹脂粒子を用いると、さらに裏汚れが抑制されることがわかった。種々の検討を行った結果、本発明者らはこの効果を熱の保持機能に起因するものと考えている。つまり、加温されたインクが記録ヘッドから吐出され、記録媒体へ付着するまでに、インク液滴の温度は低下していくと考えられる。しかし、インクに含有させる樹脂粒子が、上記特定の密度のオレフィン重合体に由来するユニットを含むポリオレフィン系樹脂粒子であると、その樹脂の熱容量が大きいことから、インク液滴の温度低下が抑制されると考えられる。その結果、インク液滴が、加熱された記録媒体へ付着して内部へ浸透する際に、インクに含まれる水分の蒸発が速やかに進行し、記録媒体の裏汚れの抑制効果が高くなると考えられる。樹脂粒子の密度は、気体置換法による乾式自動密度計を用いて測定することができる。
上述のオレフィン重合体に由来するユニットを含むポリオレフィン系樹脂粒子は、上述のオレフィン重合体に由来するユニットに加えて、他の単量体に由来するユニットを含んでいてもよい。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンなどを挙げることができる。これらのなかでもプロピレンが好ましい。他の単量体としては、例えば、α,β-エチレン性不飽和酸単量体、及びそれ以外のα,β-エチレン性不飽和単量体などを挙げることができる。α,β-エチレン性不飽和酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸、並びにそれらの塩及び無水物などを挙げることができる。また、α,β-エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの直鎖、分岐鎖、環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、及びα-メチルスチレンなどの芳香族基を有する単量体類を挙げることができる。
[水性媒体]
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクは、水性媒体として水を含有する。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、40.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インクには、水性媒体として、さらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、インクジェット記録方法に適用されるインクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。水溶性有機溶剤の具体例としては、炭素数1乃至4のアルキルアルコール類、アミド類、ケトン又はケトアルコール類、エーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリコール類、アルキレン基の炭素数が2乃至6のアルキレングリコール類、アルキルエーテルアセテート類、多価アルコールのアルキルエーテル類、含窒素化合物類などを挙げることができる。通常「水溶性有機溶剤」とは液体を意味するが、本発明においては、25℃(常温)で固体であるものも、水に溶解してインクを構成する液媒体となるため、便宜上、水溶性有機溶剤に含めることとする。インクに汎用であり、25℃で固体である水溶性有機溶剤の具体例としては、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エチレン尿素、尿素、数平均分子量1,000のポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上30.0質量%以下であることがさらに好ましい。インクに含有させる水溶性有機溶剤は、その含有量と分子量の点から、それ以外の成分(色材、樹脂、添加剤)と比較して、水のモル分率に与える影響が大きい。このような特性を利用すれば、水のモル分率を所望の値とすることが容易に達成される。
[界面活性剤]
インクには、界面活性剤を含有させることができる。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤の具体例としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体などの炭化水素系の界面活性剤;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などのフッ素系の界面活性剤;ポリエーテル変性シロキサン化合物などのシリコーン系界面活性剤などを挙げることができる。なかでも、炭化水素系の界面活性剤を用いることが好ましい。
[その他の成分]
インクには、上記成分の他に、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、及び還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
[インクの物性]
インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。インクの25℃における表面張力は、15mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。インクの25℃におけるpHは、5以上9以下であることが好ましい。
(記録媒体)
本発明のインクジェット記録方法では、透気抵抗度が100秒以下の記録媒体を用いる。この記録媒体の透気抵抗度は3秒以上100秒以下であることが好ましい。このような記録媒体は、空気をある程度透過するものであり、普通紙などのコート層を有しない記録媒体や、コート層を有する記録媒体のなかでもコート層が薄いものなどを挙げることができる。透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に規定されるガーレー試験機法にしたがって測定することができる。ガーレー試験機法による透気抵抗度(ガーレー秒数とも称される)をt(秒)、透気度をP(μm/(Pa・s))としたとき、透気度は、P=135.3/tで表される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸ブチル/アクリル酸共重合体(組成(質量)比62/13/25)を酸価と等モル量となる水酸化ナトリウムを用いてイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が20.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この水溶性樹脂の重量平均分子量は10,000であり、酸価は195mgKOH/gである。顔料(カーボンブラック)25.0部、樹脂分散剤の水溶液62.5部、水12.5部の混合物を、サンドグラインダーに入れ、1時間分散処理を行った。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、適量のイオン交換水を加えて、顔料分散液1を得た。顔料分散液1には、水中に水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料分散液1中の顔料の含有量は20.0%であり、水溶性樹脂の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液2)
顔料分散液1で使用した顔料をカーボンブラックからC.I.ピグメントブルー15:3に変更した以外は顔料分散液1と同様な操作を行い、顔料分散液2を作製した。顔料分散液2には、水中に水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は20.0%であり、水溶性樹脂の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液3)
顔料分散液1で使用した顔料をカーボンブラックからC.I.ピグメントレッド122に変更した以外は顔料分散液1と同様な操作を行い、顔料分散液3を作製した。顔料分散液3には、水中に水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は20.0%であり、水溶性樹脂の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液4)
顔料分散液1で使用した顔料をカーボンブラックからC.I.ピグメントイエロー74に変更した以外は顔料分散液1と同様な操作を行い、顔料分散液4を作製した。顔料分散液4には、水中に水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は20.0%、水溶性樹脂の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液5)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4-アミノ-1,2-ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れることで溶液を常に10℃以下に保った状態にし、これに5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌後、比表面積が220m/g、DBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6.0gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌し、得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、粒子を充分に水洗した。これを110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散カーボンブラックを調製した。さらに、得られた自己分散カーボンブラックに水を加えて顔料の含有量が20.0%となるように分散させ、分散液を調製した。その後、イオン交換法を用いてナトリウムイオンをカリウムイオンに置換することによって、カーボンブラックの粒子表面に-C-(COOK)基が結合した自己分散顔料を含む顔料分散液5を得た。
(顔料分散液6)
500.0gのイオン交換水、及び15.0gのカーボンブラックを混合し、15,000rpmで30分間撹拌して、顔料を予備湿潤させた。ここに4,485gのイオン交換水を加え、高圧ホモジナイザーで分散させて、分散液を得た。得られた分散液を高圧容器に移し、圧力3.0MPaで加圧した後、オゾン濃度が100ppmであるオゾン水を導入することによって顔料のオゾン酸化処理を行い、分散液を得た。水酸化カリウムを用いて分散液のpHを10.0に調整した後、顔料固形分の濃度を調整して、顔料分散液6を得た。顔料分散液6には、カーボンブラックの粒子表面に-COOK基が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は20.0%であった。
(顔料分散液7)
顔料7.0g、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩14.0mmol、硝酸40.0mmol、及び純水200.0mLを混合した。顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3を用いた。そして、シルヴァーソン混合機を用いて、室温にて6,000rpmで混合した。30分後、この混合物に少量の水に溶解させた40.0mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。亜硝酸ナトリウムを添加することによって混合物の温度は60℃に達した。この状態で1時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて混合物のpHを10に調整した。30分後、純水20.0mLを加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションした。イオン交換水を用いて顔料の含有量を調整して、顔料分散液7を得た。顔料分散液7には、カウンターイオンがナトリウムである((4-ベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は20.0%であった。
(顔料分散液8)
顔料7.0g、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩14.0mmol、硝酸40.0mmol、及び純水200.0mLを混合した。顔料としては、C.I.ピグメントレッド122を用いた。そして、シルヴァーソン混合機を用いて、室温にて6,000rpmで混合した。30分後、この混合物に少量の水に溶解させた40.0mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。亜硝酸ナトリウムを添加することによって混合物の温度は60℃に達した。この状態で1時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて混合物のpHを10に調整した。30分後、純水20.0mLを加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションした。イオン交換水を用いて顔料の含有量を調整して、顔料分散液8を得た。顔料分散液8には、カウンターイオンがナトリウムである((4-ベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は20.0%であった。
(顔料分散液9)
顔料7.0g、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩7.0mmol、硝酸20.0mmol、及び純水200.0mLを混合した。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー74を用いた。そして、シルヴァーソン混合機を用いて、室温にて6,000rpmで混合した。30分後、この混合物に少量の水に溶解させた20.0mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。亜硝酸ナトリウムを添加することによって混合物の温度は60℃に達した。この状態で1時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて混合物のpHを10に調整した。30分後、純水20.0mLを加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションした。イオン交換水を用いて顔料の含有量を調整して、顔料分散液9を得た。顔料分散液9には、カウンターイオンがナトリウムである((4-ベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸基が顔料の粒子表面に結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は20.0%であった。
<樹脂の体積平均粒径の測定>
樹脂が水溶性であるか水分散性(樹脂粒子)であるかの判断、及び樹脂粒子である場合の体積平均粒径の測定は、以下に示す方法にしたがって行った。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10.0%)を用意した。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製した。そして、試料溶液中の樹脂の粒径を動的光散乱法により測定した場合に、粒径が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断した。この際の測定条件は、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒とした。粒度分布測定装置としては、動的光散乱方式の粒度分布測定装置(商品名「UPA-EX150」、日機装製)を使用した。
<樹脂粒子の水分散液の調製>
(樹脂粒子1、7、及び8の準備)
(合成例1~3)
特開平11-100406号公報の実施例1に記載の流動床反応器を用いた気相重合法を参考にして、α-オレフィン重合体を得た。具体的には、上記公報の実施例1に記載の反応条件における重合圧力の全圧Pを25kg/cmGから10.0kg/cmGに変更し、エチレンをプロピレンに変更した。それらの変更以外は、上記公報の実施例1に記載の内容に基づき、密度が900kg/mのα-オレフィン重合体であるPP1を得た。ポリプロピレンの重合工程における重合圧力を表1に示す通りに制御することにより、α-オレフィン重合体であるPP2及びPP3を合成した。密度については、乾式自動密度計(商品名「アキュピック1330-03」、マイクロメリティックス製)による気体置換法により求めた。各種ポリプロピレンの重合圧力、密度を表1に示す。
Figure 0007218150000002
(合成例4)
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた500mLセパラブルフラスコに、ポリオレフィンとして合成例1で得られたPP1を100.0部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート100.0部を入れた。窒素雰囲気下、180℃に保たれた油浴中で溶融させ、撹拌を行いながら系内が170℃になるように油浴の温度を調整した。系内が溶融した後、撹拌を行い均一な状態としながら、アクリル酸ベンジル6.0部、アクリル酸8.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド(商品名「パーブチルD」、日本油脂製)0.4部を添加した。系内を170℃に保ったまま、30分間反応を継続した後、アクリル酸8.0部、アクリル酸ベンジル6.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.4部を添加した。同様にしてアクリル酸とアクリル酸ベンジルとジ-t-ブチルパーオキサイドの添加を30分毎に合計5回行った。
添加終了後、系内を170℃に保ったままGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)のモニタリングを行い、重量平均分子量が1万となったところで反応を停止した。系内の温度を50℃に下げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧した。この減圧を行いながら、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、未反応のアクリル酸、アクリル酸ベンジル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、及びジ-t-ブチルパーオキサイドが分解した低分子の化合物の除去を1時間行った。減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、アクリル酸とアクリル酸ベンジルで変性した変性ポリオレフィンPO1を得た。変性ポリオレフィンPO1のポリオレフィン100.0部を基準とした、アクリル酸に由来するユニットの含有量は40.0部であり、アクリル酸ベンジルに由来するユニットの含有量は30.0部であった。また、変性ポリオレフィンPO1のGPCによる重量平均分子量は15万であった。
(合成例5)
合成例4においてポリオレフィンとして使用したPP1を、合成例2で得られたPP2に変更したこと以外は、合成例4と同様の手法により、変性ポリオレフィンPO2を得た。変性ポリオレフィンPO2のポリオレフィン100.0部を基準とした、アクリル酸に由来するユニットの含有量は40.0部であり、アクリル酸ベンジルに由来するユニットの含有量は30.0部であった。また、変性ポリオレフィンPO2のGPCによる重量平均分子量は15万であった。
(合成例6)
合成例4においてポリオレフィンとして使用したPP1を、合成例3で得られたPP3に変更したこと以外は、合成例4と同様の手法により、変性ポリオレフィンPO3を得た。変性ポリオレフィンPO3のポリオレフィン100.0部を基準とした、アクリル酸に由来するユニットの含有量は40.0部であり、アクリル酸ベンジルに由来するユニットの含有量は30.0部であった。また、変性ポリオレフィンPO3のGPCによる重量平均分子量は15万であった。
(樹脂粒子1、7、及び8の水分散液)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた1000mLセパラブルフラスコに、得られた変性ポリオレフィン(PO1~PO3)100.0gを加え、130℃に保たれた油浴中で溶融した。溶融後、油浴を130℃に保ったまま、8mol/Lの水酸化カリウム水溶液を、酸基の中和率(モル基準)が80%になるように添加した後、強く撹拌しながら、80℃のイオン交換水300gを少量ずつ加えた。粘度は上昇したが、そのままイオン交換水を加え続けると粘度は低下した。イオン交換水を加えた後、冷却を行い、内温が30℃になったところで、内容物を100メッシュのナイロンろ布にてろ過し、固形分が20.0%である、樹脂粒子1、7、及び8の各水分散液を得た。このようにして得られた樹脂粒子1、7、及び8の主特性は、Tgが50℃、体積平均粒径が100nmであった。
(樹脂粒子2の水分散液)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部の水を添加した後、反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で80℃に昇温させた。水100.0部、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.0部、スチレン50.0部、アクリル酸ブチル13.0部、メタクリル酸メチル34.0部、アクリル酸3.0部を混合し、モノマーの乳化物を調製した。上記のフラスコに、モノマーの乳化物と5.0%の過硫酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて滴下した。そして、エージングを2時間行った後、適量のイオン交換水で固形分を調整し、樹脂粒子2の含有量が20.0%である水分散液を得た。このようにして得られた樹脂粒子2の主特性は、Tgが70℃、体積平均粒径が100nmであった。
(樹脂粒子3の水分散液)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部の水を添加した後、反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で80℃に昇温させた。水100.0部、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.0部、スチレン54.0部、アクリル酸ブチル9.0部、メタクリル酸メチル34.0部、アクリル酸3.0部を混合し、モノマーの乳化物を調製した。上記のフラスコに、モノマーの乳化物と5.0%の過硫酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて滴下した。そして、エージングを2時間行った後、適量のイオン交換水で固形分を調整し、樹脂粒子3の含有量が20.0%である水分散液を得た。このようにして得られた樹脂粒子3の主特性は、Tgが80℃、体積平均粒径が100nmであった。
(樹脂粒子4の水分散液)
特開2013-209433号公報に記載のポリエステル樹脂Aの合成方法を参考にして、樹脂粒子4を合成した。具体的には、使用する成分を、テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=49.7/49.7/0.6/64.0/36.0(モル比)に変更した。この成分量に合わせて触媒の使用量を変更したこと以外は、上記公報のポリエステル樹脂Aの合成方法に準じて反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂を適量のメチルエチルケトン(溶媒)に溶解させた後、酸価と等モル量となる水酸化カリウムを含む水溶液を加えて撹拌することで、乳化させた。その後、減圧下で溶媒を除去し、ポリエステル樹脂である樹脂粒子4の含有量が20.0%である水分散液を得た。このようにして得られた樹脂粒子4の主特性は、Tgが50℃、体積平均粒径が100nmであった。
(樹脂粒子5の水分散液)
以下の手順にしたがって、樹脂粒子5を合成した。フラスコにネオペンチルグリコール22.0部、1,4-ブタンジオール15.0部、1,2-ブタンジオール9.0部、アジピン酸54.0部、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.003部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3~4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、数平均分子量1,000のポリエステルポリオールを調製した。
続いて撹拌機、還流冷却装置、温度計及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、上記ポリエステルポリオール60.0部、イソホロンジイソシアネート36.0部、ジメチロールプロピオン酸4.0部、及びメチルエチルケトン60.1部を入れた。これらの存在下で5時間反応させた。その後、フラスコに50.0%水酸化カリウム水溶液を加えることで、合成された樹脂が有するカルボン酸基の少なくとも一部を中和し、さらに水を加え十分に撹拌することにより、ウレタン樹脂粒子を含む液体を得た。次いで、その液体を減圧下で加熱することにより溶媒を除去し、樹脂粒子5の含有量が20.0%である水分散液を得た。このようにして得られた樹脂粒子5の主特性は、Tgが50℃、体積平均粒径が100nmであった。
(樹脂粒子6の水分散液)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部の水を添加した後、反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で80℃に昇温させた。水100.0部、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.0部、スチレン40.0部、アクリル酸ブチル23.0部、メタクリル酸メチル34.0部、アクリル酸3.0部を混合し、モノマーの乳化物を調製した。上記のフラスコに、モノマーの乳化物と5.0%の過硫酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて滴下した。そして、エージングを2時間行った後、適量のイオン交換水で固形分を調整し、樹脂粒子6の含有量が20.0%である水分散液を得た。このようにして得られた樹脂粒子6の主特性は、Tgが50℃、体積平均粒径が100nmであった。
(水溶性樹脂1)
特開2013-209433号公報に記載のポリエステル樹脂Aの合成方法を参考にして、水溶性樹脂1を合成した。具体的には、使用する成分を、テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50.0/50.0/22.0/60.0/30.0(モル比)に変更した。この成分量に合わせて触媒の使用量を変更したこと以外は、上記公報のポリエステル樹脂Aの合成方法に準じて反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂を適量のメチルエチルケトン(溶媒)に溶解させた後、酸価と等モル量となる水酸化カリウムを含む水溶液を加えて撹拌することで、樹脂を溶解させた。得られたポリエステル樹脂を適量のMEKに溶解させ、撹拌しながらポリエステル酸価と等モル量のKOHを含む水溶液を加え乳化を確認した。その後、減圧下で溶媒を除去し、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である、ポリエステル樹脂である水溶性樹脂1の水溶液を得た。得られた水溶性樹脂1のポリスチレン換算の重量平均分子量は10,000、酸価は170mgKOH/g、Tgは70℃であった。
(水溶性樹脂2)
温度計、撹拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコを用いて、合成を行った。具体的には、メチルエチルケトン(溶媒)を400g、数平均分子量1,000のポリプロピレングリコールを267g、イソホロンジイソシアネートを356g、ジブチル錫ジラウレートを0.007gフラスコ内に仕込んだ。その後、窒素ガス雰囲気下、100℃で1時間反応させた。その後、65℃以下に冷却し、ジメチロールプロピオン酸172g、ネオペンチルグリコール5g、及びメチルエチルケトン(溶媒)400gを添加し、FT-IRによりイソシアネート基の消失が確認されるまで80℃で反応させた。その後、フラスコに50.0%水酸化カリウム水溶液を加えることで、合成された樹脂が有するカルボン酸基の少なくとも一部を中和し、さらに水を加え十分に撹拌した。このようにして、酸価90mgKOH/g、ポリスチレン換算で重量平均分子量10,000、Tg70℃のウレタン樹脂である水溶性樹脂2を含む液体を得た。次いで、その液体を減圧下で加熱することにより溶媒を除去し、適量のイオン交換水を加えて、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である、水溶性樹脂2の水溶液を得た。
(水溶性樹脂3)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部のエチレングリコールモノブチルエーテルを添加した後、反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で110℃に昇温させた。このフラスコに、スチレン62.0部、アクリル酸ブチル13.0部、アクリル酸25.0部の混合物と、t-ブチルパーオキサイド(重合開始剤)1.3部のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。その後、エージングを2時間行い、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して、固形の樹脂を得た。このようにして得られた水溶性樹脂を、その酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加えて80℃で中和して、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である、水溶性樹脂3の水溶液を得た。水溶性樹脂3の酸価は195mgKOH/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量は10,000、Tgは70℃であった。
<インクの調製>
表2-1~2-3の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるメンブレンフィルター(商品名「HDCIIフィルター」、ポール製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。表2-1~2-3中、「アセチレノールE100」(商品名)は、界面活性剤であり、川研ファインケミカル製のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物である。表2-1~2-3の下段に示す「水のモル分率(%)」は、上記式(1)に基づいて、グリセリン、トリエチレングリコール、2-ピロリドン、及びエチレングリコールの分子量をそれぞれ、92、150、85、及び62として算出した値である。
Figure 0007218150000003
Figure 0007218150000004
Figure 0007218150000005
<画像の記録>
上記で得られた各インクを用いて各評価に用いる画像を記録した。画像の記録には、インクジェット記録装置(商品名「imagePROGRAF iPF9400S」、キヤノン製)を用いた。この装置は、図1及び図2を用いて説明した、吸引部から吸引することにより記録媒体を吸着支持するプラテンと、プラテンと対向して配置された記録ヘッドを備える。上記プラテンとして、熱で変形しにくいダイカスト製法で作製したアルミニウム合金製のプラテンを用い、そのプラテンの下部に、ニッケル合金製のヒーターを配置したインクジェット記録装置を用いた。この装置に、各例で使用するインクを充填したインクカートリッジを装着し、表3に示す記録媒体(A3サイズを使用)に、記録パス数を10パスとして、記録デューティが100%のベタ画像を記録媒体の全面にふちなし記録で記録した。この際、上記ヒーターにより上記プラテンを加熱し、加熱されたプラテンにより記録媒体を加熱するとともに、35℃に加温したインクを吐出することで記録を行った。記録パスは、記録ヘッドが主走査方向(記録媒体の搬送方向に交差する方向)に1回主走査した後に、記録媒体が搬送方向に送られる送り長さに関係し、その送り長さは、記録ヘッドの吐出口列方向の長さをパス数で割った値となる。そのため、通常、記録媒体の単位領域を記録ヘッドがパス数の回数だけ往復する間に、所望の画像を記録媒体に記録することとなる。
表3に示す記録媒体の詳細は以下の通りである。
・「ファインアートペーパー・フォトラグ」(コート紙、透気抵抗度35秒、キヤノン製)
・「CLC5000用最厚口用紙(250g)」(普通紙、透気抵抗度93秒、キヤノン製)
・「PB PAPER」(普通紙、透気抵抗度16秒、キヤノン製)
・「Classic White」(普通紙、透気抵抗度187秒、Steinbeis製)
本実施例では、解像度が1200dpi×1200dpiであり、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴あたり4pLの体積のインクを4滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。
<評価>
記録ヘッド近傍の記録媒体の表面温度を測定し、温度変動を抑えるためPID制御によって記録媒体の温度(表面温度)を保つようにした。このときの記録ヘッドの温度と記録媒体の温度をモニタリングして、各々の温度が表3に示した値になった時点で画像を記録した。得られたそれぞれの記録物についてインクミストによる裏汚れをルーペと目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって評価を行った。本発明では、以下に示す評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。
AA:ルーペで観察しても裏汚れがなかった。
A:ルーペで認識できる裏汚れがあったが、目視では認識できなかった。
B:目視で認識できる数ドット程度の大きさの裏汚れがあった。
C:目視で認識できる帯状の裏汚れがあった。
参考例1として、インク1を用いて、同様のインクジェット記録装置にて、吸引部を封止することで、吸引工程を省いて記録を行い、同様の評価を行った。また、参考例2として、インク1を用いて、同様のインクジェット記録装置にて、記録媒体の加熱を行わずに記録を行い、同様の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007218150000006

Claims (19)

  1. 吸引部から吸引することにより記録媒体を吸着支持するプラテンと、前記プラテンと対向して配置された記録ヘッドと、前記記録媒体を加熱するための加熱機構とを備えたインクジェット記録装置を使用して、ガーレー試験機法による透気抵抗度が100秒以下の記録媒体を前記加熱機構により加熱しながら、前記記録ヘッドからインクを吐出して、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、水のモル分率が90%以上である水性インクであり、
    前記水性インクが、前記記録媒体の加熱温度以下であるガラス転移温度を有する樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記記録媒体の前記透気抵抗度が、3秒以上100秒以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記記録媒体の前記透気抵抗度が、16秒以上100秒以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記樹脂粒子が、密度が940kg/m以下であるオレフィン重合体に由来するユニットを含むポリオレフィン系樹脂粒子である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量が、150,000以上2,000,000以下である請求項4に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記水性インク中の前記樹脂粒子を含む樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下である請求項乃至のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記水性インクが、色材として染料又は顔料を含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記水性インク中の前記色材の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下である請求項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記水性インク中の水の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、40.0質量%以上95.0質量%以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記加熱機構によって加熱された前記記録媒体の表面温度が、40℃以上120℃以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記記録媒体が、前記水性インクを前記記録媒体に付与する面の裏面から加熱される請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記プラテンを前記加熱機構として用いて、前記記録媒体を加熱する請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記記録ヘッドから吐出される前記水性インクが、加温されている請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記記録媒体が、カット紙又はロール紙である請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  15. 前記記録媒体が、カット紙である請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  16. 前記記録媒体が、コート層を有しない記録媒体である請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  17. 前記記録媒体が、コート層を有する記録媒体である請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  18. 前記記録ヘッドが、シリアルタイプ又はラインタイプの記録ヘッドである請求項1乃至17のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  19. 吸引部から吸引することにより記録媒体を吸着支持するプラテンと、前記プラテンと対向して配置された記録ヘッドと、前記記録媒体を加熱するための加熱機構とを備え、ガーレー試験機法による透気抵抗度が100秒以下の記録媒体を前記加熱機構により加熱しながら、前記記録ヘッドからインクを吐出して、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
    前記インクが、水のモル分率が90%以上である水性インクであり、
    前記水性インクが、前記記録媒体の加熱温度以下であるガラス転移温度を有する樹脂粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録装置。
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