JP2015229728A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂粒子の分散安定性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供する。
【解決手段】樹脂粒子、及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用の水性インクである。樹脂粒子が、密度が850kg/m3以上960kg/m3以下のα−オレフィン重合体に由来するユニット(X)と、α,β−エチレン性不飽和酸単量体に由来するユニット(A)と、α,β−エチレン性不飽和単量体に由来するユニット(B)とを有する共重合体により形成され、水溶性有機溶剤が、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を含む。
【選択図】なし
【解決手段】樹脂粒子、及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用の水性インクである。樹脂粒子が、密度が850kg/m3以上960kg/m3以下のα−オレフィン重合体に由来するユニット(X)と、α,β−エチレン性不飽和酸単量体に由来するユニット(A)と、α,β−エチレン性不飽和単量体に由来するユニット(B)とを有する共重合体により形成され、水溶性有機溶剤が、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を含む。
【選択図】なし
Description
本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録技術の進歩により、一般家庭においても比較的容易かつ安価に、銀塩写真やオフセット印刷で実現されているような高精細で高発色性を有する画像を記録することが可能になってきている。
色材として染料を含有する染料インクを用いると、粒状性がなく良好な画像を得ることができるが、耐光性、耐水性、及び耐ガス性などの堅牢性に劣るという課題がある。このため、近年では、色材として顔料を含有する顔料インクが用いられるようになってきている。このような顔料インクとしては、記録媒体への顔料の定着性や、画像の耐擦過性などの堅牢性をより向上させることを目的として、水溶性の樹脂により分散された顔料を含有するインクが広く使用されるようになっている。このような樹脂分散型の顔料インクで記録した画像は、指の爪などによる軽い擦れに対して記録層が削れにくく、耐擦過性がある程度向上している。しかし、指の爪などで画像を強く擦った際の十分な耐擦過性を有するものではなかった。
ところで、様々な工業製品に利用可能なプラスチックとしてポリオレフィン樹脂が知られている。ポリオレフィン樹脂は、比重が軽く、成形性、耐薬品性、及び耐水性などに優れる樹脂である。しかし、ポリオレフィン樹脂は極性が低いため、塗装や接着が困難な樹脂であることが知られている。そこで、酸などで変性して極性を付与した酸変性ポリオレフィン樹脂によってポリオレフィン樹脂の表面を処理することが知られている。また、このような酸変性ポリオレフィン樹脂をインクや塗料のバインダー、又は接着剤として用いることが知られている(特許文献1)。さらに、酸変性ポリオレフィンエマルジョンを添加したクリアインクが提案されている(特許文献2)。
また、画像の耐擦過性を高めるために、平均粒径の異なる2種類のワックスを用いたインクを記録媒体に付与することが提案されており、発色性が向上することも開示されている(特許文献3)。さらに、顔料とポリオレフィンワックスを含有するインクが提案されている(特許文献4)。
しかし、特許文献1で提案された酸変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂粒子は低密度であるため、この樹脂粒子を含有するインクを長期間にわたって保存すると樹脂粒子が浮上して濃度勾配が生じやすい。このため、長期間保存した後のインクを用いると、濃度の違いによって記録される画像の光沢性や発色性が変化してしまい、安定した画像を得ることが困難になることがわかった。
したがって、本発明の目的は、樹脂粒子の分散安定性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、樹脂粒子、及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、前記樹脂粒子が、密度が850kg/m3以上960kg/m3以下のα−オレフィン重合体に由来するユニット(X)と、α,β−エチレン性不飽和酸単量体に由来するユニット(A)と、前記α,β−エチレン性不飽和酸単量体以外のα,β−エチレン性不飽和単量体に由来するユニット(B)とを有する共重合体により形成され、前記水溶性有機溶剤が、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を含むことを特徴とする水性インクが提供される。
本発明によれば、樹脂粒子の分散安定性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。以下、インクジェット用の水性インクのことを「インク」と記載することがある。
インク中の樹脂粒子の分散安定性は、以下に示す理由によって低下するものと推測される。一般的な水性のインクジェット用のインク中の水の含有量は50.0質量%以上であり、蒸気圧の低い水溶性有機溶剤を保湿剤として含有している。このため、インクの水性媒体の比重は1.00を上回っている。一方、画像に良好な耐擦過性を付与しうる樹脂粒子は、形成される樹脂被膜の強度だけでなく、記録層表面に滑り性を付与する性能を併せ持つと考えられる。
記録層表面により良好な滑り性を付与する樹脂としては、表面エネルギーの低いα−オレフィン重合体が優れている。α−オレフィン重合体は、分子間の相互作用が小さく、密度が低い。また、水性媒体への分散性を付与するためにα−オレフィン重合体を変性して親水性基を導入すると、比重は1.00を下回る。そして、より高い滑り性を記録層表面に付与するには、より比重の低いα−オレフィン重合体を使用することが好ましい。その結果、より比重の低いα−オレフィン重合体を変性した変性α−オレフィン重合体の比重と、インク中の水性媒体の比重との差が大きくなるため、分散安定性は保持される一方、長期間保存すると樹脂粒子が浮上してしまうと考えられる。
本発明者らは種々の樹脂粒子について検討したところ、特に、密度が850kg/m3以上960kg/m3以下のα−オレフィン重合体を用いて得た樹脂粒子を含有するインクにおいて、樹脂粒子の分散安定性が顕著に低下することがわかった。さらに検討したところ、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を用いることで、樹脂粒子の分散安定性が改善されることを見出した。
比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を用いることで、樹脂粒子の分散安定性が改善される理由について、本発明者らは以下のように推測している。α−オレフィン重合体は疎水性の高い樹脂であり、分子間力や親和力が弱く、比重が低い。親水性基を有する単量体をα−オレフィン重合体と共重合させたとしても、疎水性及び低比重は維持された状態で水への親和力が付与されると考えられる。一方、低比重水溶性有機溶剤も、分子間力や親和力が弱い部位を有する。また、低比重水溶性有機溶剤は水性媒体中で均一に存在するので、長期間保存した場合であっても浮上することはない。すなわち、分子間力や親和力が弱い部位同士の相互作用により、樹脂粒子の浮上が抑制されると考えられる。
<インク>
本発明のインクジェット用の水性インクは、樹脂粒子、及び水溶性有機溶剤を含有する。以下、本発明のインクジェット用の水性インクを構成する各成分について詳細に説明する。
本発明のインクジェット用の水性インクは、樹脂粒子、及び水溶性有機溶剤を含有する。以下、本発明のインクジェット用の水性インクを構成する各成分について詳細に説明する。
(樹脂粒子)
本発明のインクは、ポリオレフィン系の共重合体により形成された樹脂粒子を含有する。前記共重合体は、α−オレフィン重合体に由来するユニット(X)、α,β−エチレン性不飽和酸単量体に由来するユニット(A)、及び前記α,β−エチレン性不飽和酸単量体以外のα,β−エチレン性不飽和単量体に由来するユニット(B)を有する。
本発明のインクは、ポリオレフィン系の共重合体により形成された樹脂粒子を含有する。前記共重合体は、α−オレフィン重合体に由来するユニット(X)、α,β−エチレン性不飽和酸単量体に由来するユニット(A)、及び前記α,β−エチレン性不飽和酸単量体以外のα,β−エチレン性不飽和単量体に由来するユニット(B)を有する。
ユニット(X)を構成するα−オレフィン重合体は、エチレン単位、プロピレン単位などのα−オレフィン単位を主構成単位とする。このα−オレフィン重合体は、エチレンの単独重合体やプロピレンの単独重合体であってもよく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、及び4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの共重合体であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの共重合体の組み合わせなどを挙げることができる。
ユニット(X)を構成するα−オレフィン重合体の密度は、850kg/m3以上960kg/m3以下であり、好ましくは850kg/m3以上940kg/m3以下である。密度が上記範囲内のα−オレフィン重合体を用いることで、所望とする耐擦過性を有する画像を記録することができる。一方、密度が850kg/m3未満のα−オレフィン重合体のα−オレフィン重合体は一般的でないとともに、これを用いると、他のユニットが存在しても、樹脂粒子の分散安定性が不十分となる。また、密度が960kg/m3を超えるα−オレフィン重合体を用いると、記録層表面の滑り性が低下してしまい、所望とする耐擦過性を有する画像を記録することができない。
樹脂粒子を構成する共重合体中のユニット(X)の含有量は、樹脂粒子全質量を基準として、40.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。ユニット(X)の含有量が上記範囲内である共重合体で形成された樹脂粒子を用いることで、十分な耐擦過性を有する画像を記録することができる。
重合によりユニット(A)の構成成分となるα,β−エチレン性不飽和酸単量体は、酸基(アニオン性基)を有する単量体である。α,β−エチレン性不飽和酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などのカルボン酸基を有する単量体及びその誘導体;スチレンスルホン酸、スルホン酸−2−プロピルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン、ビニルスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体及びその誘導体;2−ホスホン酸エチル(メタ)アクリル酸エステル、ビニルホスホン酸などのリン酸基を有する単量体及びその誘導体を挙げることができる。α,β−エチレン性不飽和酸単量体は、塩、無水物であってもよい。α,β−エチレン性不飽和酸単量体の塩としては、上記の単量体のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及び有機アンモニウム塩などを挙げることができる。α,β−エチレン性不飽和酸単量体のなかでも、無水マレイン酸を用いることが好ましい。
重合によりユニット(B)の構成成分となるα,β−エチレン性不飽和単量体は、α,β−エチレン性不飽和酸単量体以外のもの、すなわち、酸基を有さないα,β−エチレン性不飽和単量体である。以下、「酸基を有さないα,β−エチレン性不飽和単量体」のことを、単に「α,β−エチレン性不飽和単量体」と記載することがある。α,β−エチレン性不飽和単量体の具体例としては、脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;芳香族基を有する単量体;(ポリ)アルキレンオキサイド基を有する単量体などを挙げることができる。
脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどを挙げることができる。芳香族基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、α−メチルスチレンなどを挙げることができる。(ポリ)アルキレンオキサイド基を有する単量体の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのα,β−エチレン性不飽和単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂粒子を形成する共重合体における、ユニット(B)の含有量は、ユニット(X)100質量部に対する比率で、0.03倍以上0.50倍以下であることが好ましく、0.045倍以上0.30倍以下であることがさらに好ましい。前記比率が0.03倍未満であると、樹脂粒子と記録媒体との吸着力が弱まってしまい、画像の耐擦過性が低下する傾向にある。一方、前記比率が0.50倍を超えると、樹脂粒子を構成する共重合体の疎水性部分に占めるユニット(X)の割合が低すぎてしまい、画像の耐擦過性が低下する傾向にある。
樹脂粒子を形成する共重合体は、本発明の効果を損なわない限り、α,β−エチレン性不飽和酸単量体やα,β−エチレン性不飽和単量体以外の「その他の単量体」に由来するユニットを有していてもよい。使用可能なその他の単量体としては、重合可能な二重結合を2つ以上有する架橋性不飽和単量体などを挙げることができる。
インク中の樹脂粒子の含有量A(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂粒子を構成する共重合体の重量平均分子量は、5,000以上100,000以下であることが好ましく、10,000以上80,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内である共重合体で形成された樹脂粒子は、水性媒体への十分な分散性を有する。
樹脂粒子を構成する共重合体の酸価は、50mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であることが好ましく、50mgKOH/g以上265mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。共重合体の酸価が50mgKOH/g未満であると、水性媒体に対する樹脂粒子の分散性が低下する傾向にある。一方、共重合体の酸価が280mgKOH/gを超えると、樹脂粒子の疎水性が下がりすぎてしまい、画像の耐擦過性が低下する傾向にある。
樹脂粒子の体積平均粒子径は、30nm以上300nm以下であることが好ましく、40nm以上250nm以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子の体積平均粒子径が30nm未満であると、記録媒体の内部に沈む樹脂粒子が増加するとともに、記録媒体の表面上に残存する樹脂粒子の割合が減少する。このため、写像性が低下する場合がある。一方、樹脂粒子の体積平均粒子径が300nmを超えると、記録ヘッドの吐出口やインク流路に樹脂粒子が付着しやすくなる。このため、インクジェット用のインクに要求される吐出安定性が低下する場合がある。
なお、樹脂粒子の体積平均粒子径は、例えば、インクから分取した樹脂粒子を純水に分散させて、含有量を0.02%程度とした液体を測定試料とし、動的光散乱方式の粒度分布測定装置を使用して測定することができる。動的光散乱方式の粒度分布測定装置としては、例えば、商品名「UPA−EX150」(日機装製)などを使用することができる。また、測定条件は、例えば、SetZero:30s、測定回数:3回、測定時間:180秒、屈折率:1.5などとすればよい。
(樹脂粒子の製造方法)
本発明のインクに含有させる樹脂粒子は、α,β−エチレン性不飽和酸単量体及びα,β−エチレン性不飽和単量体によってα−オレフィン重合体を変性させて得ることができる。α−オレフィン重合体の変性は、例えば、溶液法、溶融法、及び混練法などの公知の方法によって行うことが可能である。
本発明のインクに含有させる樹脂粒子は、α,β−エチレン性不飽和酸単量体及びα,β−エチレン性不飽和単量体によってα−オレフィン重合体を変性させて得ることができる。α−オレフィン重合体の変性は、例えば、溶液法、溶融法、及び混練法などの公知の方法によって行うことが可能である。
溶液法は、軟化点以上の温度に加熱して有機溶剤に溶解させたα−オレフィン重合体と、α,β−エチレン性不飽和酸単量体及びα,β−エチレン性不飽和単量体とを、有機過酸化物などのラジカル発生剤の存在下で反応させる方法である。溶融法は、軟化点以上に加熱して溶融させたα−オレフィン重合体と、α,β−エチレン性不飽和酸単量体及びα,β−エチレン性不飽和単量体とを混合し、有機過酸化物などのラジカル発生剤存在下で反応させる方法である。混練法は、α−オレフィン重合体、α,β−エチレン性不飽和酸単量体、α,β−エチレン性不飽和単量体、及び有機過酸化物などのラジカル発生剤の混合物を、混練機を使用してα−オレフィン重合体の軟化点以上の温度で混錬する方法である。混練機としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などを使用することができる。
α,β−エチレン性不飽和酸単量体、α,β−エチレン性不飽和単量体、及びラジカル発生剤の添加方法としては、一括添加、溶液に希釈して添加、分割添加、及び滴下による連続式の添加など適宜選択することができる。また、添加順序も適宜選択することができる。α−オレフィン重合体の変性反応は多段で行ってもよい。α−オレフィン重合体の変性反応を多段で行う際には、各反応器及び方法を適宜組み合わせて使用することができる。また、反応終了後に減圧工程を設け、残留したα,β−エチレン性不飽和酸単量体、α,β−エチレン性不飽和単量体、ラジカル発生剤及びその分解物、有機溶剤などを除去することもできる。
ラジカル発生剤として用いる有機過酸化物は、その骨格中に炭素原子を有する過酸化物が好ましい。なかでも、水素引き抜き効果を有するラジカルを発生させることが可能な過酸化物が好ましい。有機過酸化物の具体例としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アルキルパーオキシカーボネートなどを挙げることができる。これらの有機過酸化物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶液法によりα−オレフィン重合体を変性させる際に用いる有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタンなどの飽和脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロへプタン、メチルシクロヘプタンなどの飽和脂環式炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのジアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチルなどのエチレン性の二重結合を含まないエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのエチレン性の二重結合を含まないケトン類;n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジオキサンなどのエチレン性の二重結合を含まないエーテル類などを挙げることができる。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
α−オレフィン重合体を変性させる際の反応温度については特に限定されない。但し、α,β−エチレン性不飽和酸単量体、α,β−エチレン性不飽和単量体、及び有機過酸化物などが均一に分散するように、α−オレフィン重合体が溶融又は有機溶剤に溶解する温度以上で変性させることが好ましい。具体的には、100℃以上で変性させることが好ましい。また、有機過酸化物によるα−オレフィン重合体の分子量の低下を抑制するため、あまり高温で変性させないことが好ましい。具体的には、200℃以下で変性させることが好ましい。
重合反応によって得られた共重合体を分散媒中に分散させれば、樹脂粒子を含む分散液を得ることができる。例えば、得られた共重合体を溶融させて塩基性化合物を加えた後、分散媒をさらに加えて乳化させることで樹脂粒子の分散液を得ることができる。得られた分散液には、安定性を調整するための安定剤を添加することができる。安定剤としては、ニトロソフェニルヒドロキシ化合物類、フォスファイト化合物類、ペンタエリスリトールエステル類などの化合物を挙げることができる。これらの安定剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
乳化方法としては、メカニカル法及び転相法などがある。メカニカル法は、高温下で溶融させた共重合体と、塩基性化合物、有機溶剤、及び水とを混合し、ホモジナイザーを通して水中油型エマルションを製造する方法である。転相法は、高温下で溶融させた共重合体と、塩基性化合物、有機溶剤、及び一部の水とを混合して油中水型エマルションを形成させた後、反転水を添加して水中油型エマルションに相転移させる方法である。また、高剪断型の回転式乳化分散機を用いて水中油型エマルションを形成させるメカニカル法を用いることもできる。
塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属;水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属;アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロピルアミン、プロパノールアミン、2−メチル−2−アミノプロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのアミン類を挙げることができる。これらの塩基性化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。塩基性化合物の使用量は特に限定されない。具体的には、樹脂粒子の分散液のpHが6〜11となる量が好ましく、pHが7〜9となる量がさらに好ましい。分散液のpHを6〜11とすると、樹脂粒子を構成する共重合体中のカルボン酸基などのアニオン性基が中和され、安定に分散させることができる。
分散媒としては、水、又は、水と有機溶剤の混合溶媒を用いることができる。混合溶媒中の有機溶剤の含有量は、ユニット(X)100.0質量部に対して、50.0質量部以下であることが好ましく、0.0質量部以上であることが好ましい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのセロソルブ類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコール類;グリセリンなどの多価アルコール類を挙げることができる。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機溶剤としては、25℃で水に5質量%以上可溶なアルコール類が好ましく、ブタノール類がさらに好ましい。
混合溶媒中の有機溶剤と水との混合比率は任意に選択することができる。但し、有機溶剤の使用量をできるだけ低減する観点からは、有機溶剤/水(質量比)=25/75〜0/100とすることが好ましい。
樹脂粒子の分散液中の樹脂(固形分)の含有量は特に限定されない。但し、取り扱い性を考慮すると、樹脂(固形分)の含有量(質量%)は、1.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上50.0質量%であることがさらに好ましい。
(水溶性有機溶剤)
本発明のインクは、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を含有する。本発明における「比重」は20℃における比重を意味する。水溶性有機溶剤の比重は、比重瓶などを利用して、JIS 8804に準拠した方法により測定することができる。
本発明のインクは、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を含有する。本発明における「比重」は20℃における比重を意味する。水溶性有機溶剤の比重は、比重瓶などを利用して、JIS 8804に準拠した方法により測定することができる。
インク中の比重が0.98以下の水溶性有機溶剤の含有量B(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。また、インク全質量を基準とした、樹脂粒子の含有量A(質量%)が、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤の含有量B(質量%)に対する質量比率(A/B)で、0.5倍以上であることが好ましい。また、前記質量比率(A/B)は、10.0倍以下であることが好ましく、8.0倍以下であることがさらに好ましい。
比重が0.98以下の水溶性有機溶剤の具体例としては、ヘキシレングリコール(比重0.92)、メチルアルコール(比重0.79)、エチルアルコール(比重0.79)、n−プロピルアルコール(比重0.80)、イソプロピルアルコール(比重0.78)、n−ブチルアルコール(比重0.81)、sec−ブチルアルコール(比重0.8069)、tert−ブチルアルコール(比重0.79)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(15℃比重0.91)、エチレングリコールモノエチルエーテル(比重0.93)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート(比重0.97)、エチレングリコールモノブチルエーテル(比重0.90)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(比重0.89)、エチレングリコールモノメチルエーテル(比重0.97)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(比重0.925)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(比重0.91)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(比重0.95)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(比重0.98)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(比重0.95)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(比重0.93)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(比重0.91)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(25℃比重0.95)、1,2−ヘキサンジオール(25℃比重0.95)、1,2−オクタンジオール(比重0.91)、1,2−ペンタンジオール(比重0.97)などを挙げることができる。これらの比重が0.98以下の水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の比重が0.98以下の水溶性有機溶剤のなかでも、グリコールエーテル及び1,2−アルカンジオールの少なくとも一方が好ましい。グリコールエーテルとしては、(ポリ)アルキレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。また、1,2−アルカンジオールとしては、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。
上記の比重が0.98以下の水溶性有機溶剤のなかでも、ある特定の水溶性有機溶剤を用いた場合に、樹脂粒子の分散安定性が特に良好となる理由について、本発明者らは以下のように推測している。グリコールエーテルや1,2−アルカンジオールは、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤のなかでも、親水性部位と疎水性部位が分かれた構造を有する。このため、これらの比重が0.98以下の水溶性有機溶剤は樹脂粒子と強く相互作用し、樹脂粒子の分散安定性がより向上すると考えられる。また、(ポリ)アルキレングリコールモノブチルエーテル及び1,2−ヘキサンジオールは、いずれも疎水部がブチレン基の構造を有する。このため、樹脂粒子を構成する共重合体中のユニット(X)とより効果的に相互作用し、樹脂粒子の分散安定性がより向上すると考えられる。
(その他の添加剤)
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中の常温で固体の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、必要に応じて、水溶性樹脂、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中の常温で固体の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、必要に応じて、水溶性樹脂、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
水溶性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂などを挙げることができる。これら水溶性樹脂は、インクに対して上記した樹脂粒子と同量程度か、それ以下の含有量で添加することが好ましい。
(色材)
本発明のインクは、色材を含有しない、いわゆるクリアインクであってもよいし、色材を含有するインクであってもよい。色材としては、従来公知の顔料を用いることができる。顔料としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドンなどの有機顔料などを用いることができる。また、調色などの目的のために、顔料に加えてさらに染料などを併用してもよい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明のインクは、色材を含有しない、いわゆるクリアインクであってもよいし、色材を含有するインクであってもよい。色材としては、従来公知の顔料を用いることができる。顔料としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドンなどの有機顔料などを用いることができる。また、調色などの目的のために、顔料に加えてさらに染料などを併用してもよい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、インク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものなどを挙げることができる。また、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量のインクの全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部を備えたインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジであってもよい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、インク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものなどを挙げることができる。また、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量のインクの全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部を備えたインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジであってもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式などを挙げることができる。本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式などを挙げることができる。本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<α−オレフィン重合体の合成>
(ポリプロピレンPP1〜6)
特開平11−100406号公報の「実施例1」に記載の流動床反応器を用いた気相重合により、重合時の圧力を18kg/cm2Gとして、ポリプロピレンPP1を合成した。乾式自動密度計(商品名「アキュピック1330−03」、マイクロメリティックス製)を使用して気体置換法により測定したポリプロピレンPP1の密度は、970kg/m3であった。また、重合時の圧力を表1に示すようにしたこと以外は、上記のポリプロピレンPP1の場合と同様にしてポリプロピレンPP2〜6を得た。得られたポリプロピレンPP2〜PP6の密度を表1に示す。
(ポリプロピレンPP1〜6)
特開平11−100406号公報の「実施例1」に記載の流動床反応器を用いた気相重合により、重合時の圧力を18kg/cm2Gとして、ポリプロピレンPP1を合成した。乾式自動密度計(商品名「アキュピック1330−03」、マイクロメリティックス製)を使用して気体置換法により測定したポリプロピレンPP1の密度は、970kg/m3であった。また、重合時の圧力を表1に示すようにしたこと以外は、上記のポリプロピレンPP1の場合と同様にしてポリプロピレンPP2〜6を得た。得られたポリプロピレンPP2〜PP6の密度を表1に示す。
<変性ポリオレフィンの合成>
(変性ポリオレフィンPO1〜PO15)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた500mLセパラブルフラスコに、表2に示す種類のポリプロピレン100.0部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート100.0部を入れた。窒素雰囲気下、180℃に保持した油浴中で溶融させ、系内の温度が170℃になるように撹拌しながら油浴の温度を調整した。撹拌しながら、表2に示す使用量のアクリル酸、及びアクリル酸ベンジル、及びジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名「パーブチルD」、日本油脂製)0.4部を添加した。系内を170℃に保持して30分間反応させた後、再び同量のアクリル酸、アクリル酸ベンジル、及びジ−t−ブチルパーオキサイドを添加した。同様にして、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、及びジ−t−ブチルパーオキサイドを30分毎に合計5回添加した。
(変性ポリオレフィンPO1〜PO15)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた500mLセパラブルフラスコに、表2に示す種類のポリプロピレン100.0部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート100.0部を入れた。窒素雰囲気下、180℃に保持した油浴中で溶融させ、系内の温度が170℃になるように撹拌しながら油浴の温度を調整した。撹拌しながら、表2に示す使用量のアクリル酸、及びアクリル酸ベンジル、及びジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名「パーブチルD」、日本油脂製)0.4部を添加した。系内を170℃に保持して30分間反応させた後、再び同量のアクリル酸、アクリル酸ベンジル、及びジ−t−ブチルパーオキサイドを添加した。同様にして、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、及びジ−t−ブチルパーオキサイドを30分毎に合計5回添加した。
系内の温度を170℃に保持した状態でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によりモニタリングし、反応物の重量平均分子量が表2に示す値となったところで反応を停止した。系内の温度を50℃に下げ、アスピレーターでフラスコ内を1時間減圧して、溶媒、未反応の単量体、ジ−t−ブチルパーオキサイド、及びジ−t−ブチルパーオキサイドの分解物を除去した。減圧終了後、反応物を取り出して冷却し、アクリル酸とアクリル酸ベンジルで変性した変性ポリオレフィンを得た。
表2には、変性ポリオレフィン中のアクリル酸及びアクリル酸ベンジルのそれぞれに由来するユニットの、ポリプロピレンに由来するユニット100.0質量部に対する割合(部)の値を示す。また、GPCにより測定した変性ポリオレフィンの重量平均分子量も示す。なお、AAはアクリル酸、BzAはアクリル酸ベンジルを意味する。
<樹脂粒子の製造>
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた1000mLセパラブルフラスコに変性ポリオレフィン(PO1〜PO15)100.0gをそれぞれ入れ、130℃に保持した油浴中で溶融させた。油浴の温度を130℃に保持した状態で、8mol/Lの水酸化カリウム水溶液を、酸価に対して中和当量として0.8当量となるように添加した後、強く撹拌しながら80℃のイオン交換水300.0gを少量ずつ加えた。系内の粘度は上昇したが、そのままイオン交換水を加え続けると粘度は低下した。冷却して内温が30℃になった後、内容物を100メッシュのナイロン濾布でろ過し、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である樹脂粒子P1〜P15の水分散液を得た。得られた樹脂粒子P1〜P15の特性を表3に示す。
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた1000mLセパラブルフラスコに変性ポリオレフィン(PO1〜PO15)100.0gをそれぞれ入れ、130℃に保持した油浴中で溶融させた。油浴の温度を130℃に保持した状態で、8mol/Lの水酸化カリウム水溶液を、酸価に対して中和当量として0.8当量となるように添加した後、強く撹拌しながら80℃のイオン交換水300.0gを少量ずつ加えた。系内の粘度は上昇したが、そのままイオン交換水を加え続けると粘度は低下した。冷却して内温が30℃になった後、内容物を100メッシュのナイロン濾布でろ過し、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である樹脂粒子P1〜P15の水分散液を得た。得られた樹脂粒子P1〜P15の特性を表3に示す。
<顔料分散液の調製>
顔料20.0部、樹脂水溶液(固形分の含有量:20.0%)50.0部、及び水60.0部を、0.3mm径のジルコニアビーズの充填率を80%としたビーズミルに入れ、回転数1,800rpmで5時間分散させた。ビーズミルとしては、商品名「LMZ2」(アシザワファインテック製)を用いた。顔料としては、カーボンブラック(商品名「MA−100」、三菱化学製)を用いた。また、樹脂水溶液としては、酸価210mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン−アクリル酸共重合体を10%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た水溶液を用いた。回転数5,000rpmで30分間遠心分離して凝集成分を除去した後、イオン交換水で希釈して、顔料の含有量が15.0%である顔料分散液を得た。
顔料20.0部、樹脂水溶液(固形分の含有量:20.0%)50.0部、及び水60.0部を、0.3mm径のジルコニアビーズの充填率を80%としたビーズミルに入れ、回転数1,800rpmで5時間分散させた。ビーズミルとしては、商品名「LMZ2」(アシザワファインテック製)を用いた。顔料としては、カーボンブラック(商品名「MA−100」、三菱化学製)を用いた。また、樹脂水溶液としては、酸価210mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン−アクリル酸共重合体を10%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た水溶液を用いた。回転数5,000rpmで30分間遠心分離して凝集成分を除去した後、イオン交換水で希釈して、顔料の含有量が15.0%である顔料分散液を得た。
<インクの調製>
(実施例1〜29、比較例1〜5)
表4−1〜4−4の上段に示す各成分(単位:部)を混合した後、ポアサイズが1.2μmであるメンブレンフィルター(商品名「HDCIIフィルター」、ポール製)にて加圧ろ過してインク(実施例1〜29、比較例1〜5)を調製した。なお、「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。表4−1〜4−4の下段には、インク中の、樹脂粒子の含有量A(%)、比重0.98以下の水溶性有機溶剤(「低比重溶剤」と表記)の含有量B(%)、A/Bの値(倍)を示した。
(実施例1〜29、比較例1〜5)
表4−1〜4−4の上段に示す各成分(単位:部)を混合した後、ポアサイズが1.2μmであるメンブレンフィルター(商品名「HDCIIフィルター」、ポール製)にて加圧ろ過してインク(実施例1〜29、比較例1〜5)を調製した。なお、「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。表4−1〜4−4の下段には、インク中の、樹脂粒子の含有量A(%)、比重0.98以下の水溶性有機溶剤(「低比重溶剤」と表記)の含有量B(%)、A/Bの値(倍)を示した。
<評価>
調製したインクを用いて、以下に示す各項目について評価した。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。結果を表5に示す。
調製したインクを用いて、以下に示す各項目について評価した。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。結果を表5に示す。
(耐擦過性)
各インクをそれぞれ充填したインクカートリッジを、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro9500」、キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴当たりの質量が3.5ナノグラムであるインク滴を8滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。このインクジェット記録装置により、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL−101」、キヤノン製)に、記録デューティが100%である5cm×5cmのベタ画像を含むパターンを記録して記録物を得た。得られた記録物を常温で24時間保存した後、記録物の表面(ベタ画像の表面)を爪の裏で軽く擦った。そして、記録物の表面を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐擦過性を評価した。
A:記録物にキズがつかなかった。
B:記録物にキズがついたが、軽微であった。
C:記録物にキズがついた。
各インクをそれぞれ充填したインクカートリッジを、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro9500」、キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴当たりの質量が3.5ナノグラムであるインク滴を8滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。このインクジェット記録装置により、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL−101」、キヤノン製)に、記録デューティが100%である5cm×5cmのベタ画像を含むパターンを記録して記録物を得た。得られた記録物を常温で24時間保存した後、記録物の表面(ベタ画像の表面)を爪の裏で軽く擦った。そして、記録物の表面を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐擦過性を評価した。
A:記録物にキズがつかなかった。
B:記録物にキズがついたが、軽微であった。
C:記録物にキズがついた。
(樹脂粒子の分散安定性)
各インクを密封容器に入れ、静置した状態で、温度60℃で2カ月保存した。上部から抜き取ったインク中の固形分(樹脂粒子、樹脂、顔料)の含有量を測定し、以下の式から変化率を算出した。そして、以下に示す評価基準にしたがって樹脂粒子の分散安定性を評価基準した。なお、インク中の固形分の含有量は、インクに塩酸を添加し、pH2以下にして水分散成分を凝集及び析出させた後、ろ過及び乾燥することで測定することができる。
変化率(%)=(P/Q−1)×100
P:上部から抜き取ったインク中の固形分の量
Q:調製時(保存前)のインク中の固形分の量
各インクを密封容器に入れ、静置した状態で、温度60℃で2カ月保存した。上部から抜き取ったインク中の固形分(樹脂粒子、樹脂、顔料)の含有量を測定し、以下の式から変化率を算出した。そして、以下に示す評価基準にしたがって樹脂粒子の分散安定性を評価基準した。なお、インク中の固形分の含有量は、インクに塩酸を添加し、pH2以下にして水分散成分を凝集及び析出させた後、ろ過及び乾燥することで測定することができる。
変化率(%)=(P/Q−1)×100
P:上部から抜き取ったインク中の固形分の量
Q:調製時(保存前)のインク中の固形分の量
AA:変化率が20%以下であった。
A:変化率が20%を超えて30%以下であった。
B:変化率が30%を超えて40%以下であった。
C:変化率が40%を超えた。
A:変化率が20%を超えて30%以下であった。
B:変化率が30%を超えて40%以下であった。
C:変化率が40%を超えた。
Claims (7)
- 樹脂粒子、及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、
前記樹脂粒子が、密度が850kg/m3以上960kg/m3以下のα−オレフィン重合体に由来するユニット(X)と、α,β−エチレン性不飽和酸単量体に由来するユニット(A)と、前記α,β−エチレン性不飽和酸単量体以外のα,β−エチレン性不飽和単量体に由来するユニット(B)とを有する共重合体により形成され、
前記水溶性有機溶剤が、比重が0.98以下の水溶性有機溶剤を含むことを特徴とする水性インク。 - 前記比重が0.98以下の水溶性有機溶剤が、グリコールエーテル及び1,2−アルカンジオールの少なくとも一方である請求項1に記載の水性インク。
- インク全質量を基準とした、前記樹脂粒子の含有量A(質量%)が、0.5質量%以上であり、前記樹脂粒子の含有量A(質量%)が、前記比重が0.98以下の水溶性有機溶剤の含有量B(質量%)に対する質量比率(A/B)で、0.5倍以上である請求項1又は2に記載の水性インク。
- 前記比重が0.98以下の水溶性有機溶剤が、(ポリ)アルキレングリコールモノブチルエーテル及び1,2−ヘキサンジオールの少なくとも一方である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
- さらに色材を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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JP2019084822A (ja) * | 2017-11-01 | 2019-06-06 | キヤノン株式会社 | インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 |
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