JP7217555B2 - 水不溶性炭水化物を離解する方法 - Google Patents
水不溶性炭水化物を離解する方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7217555B2 JP7217555B2 JP2021194488A JP2021194488A JP7217555B2 JP 7217555 B2 JP7217555 B2 JP 7217555B2 JP 2021194488 A JP2021194488 A JP 2021194488A JP 2021194488 A JP2021194488 A JP 2021194488A JP 7217555 B2 JP7217555 B2 JP 7217555B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- water
- insoluble
- present disclosure
- disaggregated
- complex
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Preparation Of Fruits And Vegetables (AREA)
- Bakery Products And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
- Jellies, Jams, And Syrups (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Noodles (AREA)
- Confectionery (AREA)
- Grain Derivatives (AREA)
- Edible Oils And Fats (AREA)
- General Preparation And Processing Of Foods (AREA)
- Meat, Egg Or Seafood Products (AREA)
- Seasonings (AREA)
- Beans For Foods Or Fodder (AREA)
- Non-Alcoholic Beverages (AREA)
Description
(項目1)
水溶性多糖と水不溶性炭水化物とを含む複合体。
(項目2)
前記水不溶性炭水化物が、水に溶解した前記水溶性多糖との共存下で離解されている、上記項目に記載の複合体。
(項目3)
前記水溶性多糖が、キシランまたはその誘導体、β-グルカンまたはその誘導体、マンナンまたはその誘導体、水溶性セルロース誘導体またはその塩、キトサンまたはその誘導体、アルギン酸またはその塩またはそれらの誘導体、カラギーナン、ジェランガム、ペクチンまたはその部分構造物またはそれらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目4)
前記β-グルカンまたはその誘導体が、(1-3),(1-4)β-グルカンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目5)
前記β-グルカンまたはその誘導体が、タマリンドシードガムを含む、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目6)
前記水不溶性炭水化物がバクテリアセルロースを含む、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目7)
前記水不溶性炭水化物が食品用ブレンダーまたは食品用ミキサーによって離解される、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目8)
水不溶性炭水化物の離解後に水不溶性炭水化物を混合した組成物と比較した場合に、前記複合体は、該組成物よりも大きい体積を有する、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目9)
前記水溶性多糖が(1-3),(1-4)β-グルカンであり、前記水不溶性炭水化物がセルロースである、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目10)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、結着させる対象の結着性向上剤。
(項目11)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、混合する対象の粘着性抑制剤。
(項目12)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、混合する飲食品の食感変化剤。
(項目13)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、混合する対象の増粘安定性変化剤。
(項目14)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、透水の抑制または制御剤。
(項目15)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、生分解性素材または生体適合性素材。
(項目16)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、紙、繊維、またはプラスチックの改質剤。
(項目17)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体を含む、飲食品の繊維質感向上剤。
(項目18)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体と水不溶性粒子とが結着した組成物に、上記項目のいずれか一項に記載の複合体または上記項目のいずれか一項に記載の抑制または制御剤が被覆された、水中での崩壊性が抑制された組成物。
(項目19)
前記水不溶性粒子が、澱粉、セルロース、またはβ-1,3-グルカンから選択される少なくとも一種類の材料を含む粒子を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体から得られる飲食品。
(項目21)
菓子、麺、クリーム、エマルジョン、3Dプリント食品、肉代替物、脂質代替物、食品結着剤、分散媒、とろみ付与剤、ペースト調製剤、色素吸着剤、吸水調整剤、及び寒天混合ゲルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の飲食品。
(項目22)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体と飲食品との混合物を含む、3Dフードプリンタ用飲食品。
(項目23)
上記項目のいずれか一項に記載の複合体とゲル化剤とを含む飲食品。
(項目B1)
結着させる対象の結着性を向上させるための、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目B2)
混合する対象の粘着性を抑制させるための、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。(項目B3)
混合する食品の食感を変化させるための、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目B4)
混合する対象の増粘安定性を変化させるための、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目B5)
透水を抑制または制御するための、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目B6)
生分解性素材または生体適合性素材として使用するための、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目B7)
紙、繊維、またはプラスチックの改質剤として使用するための、上記項目のいずれか一項に記載の複合体。
(項目A1)
水溶性多糖と水不溶性炭水化物とを含む複合体を製造する方法であって、
水に溶解した水溶性多糖との共存下で、水不溶性炭水化物を離解する工程
を含む、方法。
(項目A2)
前記複合体が、食品素材の結着性を向上させる、上記項目に記載の方法。
(項目A3)
前記水溶性多糖が、キシランまたはその誘導体、β-グルカンまたはその誘導体、マンナンまたはその誘導体、水溶性セルロース誘導体またはその塩、キトサンまたはその誘導体、アルギン酸またはその塩またはそれらの誘導体、カラギーナン、ジェランガム、ペクチンまたはその部分構造物またはそれらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A4)
前記β-グルカンまたはその誘導体が、(1-3),(1-4)β-グルカンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A5)
前記β-グルカンまたはその誘導体が、タマリンドシードガムを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A6)
前記水不溶性炭水化物がバクテリアセルロースを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A7)
前記水不溶性炭水化物が食品用ブレンダーまたは食品用ミキサーによって離解される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A8)
水不溶性炭水化物の離解後に水不溶性炭水化物を混合した組成物と比較した場合に、前記複合体は、該組成物よりも大きい体積を有する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A9)
前記離解時の前記水不溶性炭水化物の濃度が、前記水不溶性炭水化物、前記水、及び前記水溶性多糖を足した重量に対する比として、少なくとも約0.001である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A10)
3Dフードプリンタ用飲食品を製造する方法であって、
水に溶解した水溶性多糖との共存下で、水不溶性炭水化物を離解する工程と、
前記離解する工程によって得られる、前記水溶性多糖と前記水不溶性炭水化物とを含む複合体と、任意の飲食品の原料とを混合する工程と
を含む、方法。
(項目A11)
均質性の高いゲルを形成する方法であって、
水に溶解した水溶性多糖との共存下で、水不溶性炭水化物を離解する工程と、
前記離解する工程によって得られる、前記水溶性多糖と前記水不溶性炭水化物とを含む複合体と、ゲル化剤とを混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を溶媒中で分散させる工程と、
前記混合物に加熱及び/または冷却処理を行う工程と
を含む、方法。
(項目A12)
前記加熱及び/または冷却処理がレーザー加工を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
赤色系素材の例:パプリカ、唐辛子、紫玉ねぎ、紫芋、人参、トマト、ビーツ、苺、桜、西瓜、ブルーベリー
緑色系素材の例:ほうれん草、小松菜、春菊、キャベツ、ブロッコリー、ピーマン、ケール、大葉、抹茶、枝豆、パセリ、バジル
黄・茶色系素材の例:黄パプリカ、ターメリック、南瓜、檸檬、蜜柑、柚子、マンゴー、パイン、コリアンダー、クミン
本実施例では、各種セルロースの多糖存在下で離解物が生成するかどうかを確認した。以下に詳細を示す。
バクテリアセルロース(BC、国内産ナタデココ(業務用)、フジッコ株式会社)の脱糖方法。業務用ナタデココ3kgを20L容容器に入れ、水道水15Lを加え緩やかに攪拌した。24時間毎に水を計5回交換して脱糖を行った。脱糖物の固形分率(0.5%)を湿重量100gとり、40mLの0.7%多糖溶液を添加した後、家庭用(食品用)ミキサー(パワーブレンダーSPB-650J、コンエアージャパン合同会社)で速度(15,000rpm)、30秒×4回粉砕することで離解した。なお0.7%多糖溶液は、水をマグネチックスターラーで懸濁しつつ、所定量の多糖を少量ずつ添加することにより調製した。その際、キシログルカンは溶解が不十分のため、電子レンジで加熱することにより完全に溶解させた。その後、その離解物の一部(5g)を35mLのイオン交換水で8倍希釈物とした。その液は、0.5mmメッシュのスクリーンを通過させた。
その結果、多糖存在下で粉砕させた試料では脱糖BCのみを用いた場合と異なる特性を示した。また、8倍希釈物及びスクリーン通過操作後の濾液について、600nmの濁度を測定し、その比をとることでスクリーン透過率(%)を計算した(図1A)。
本実施例では、実施例1と同様に、別の多糖を行って同じ試験を行った。
(方法および材料)
大麦由来の(1-3),(1-4)β-グルカンは実施例1の方法で水に分散後、電子レンジによる加熱により溶解させた。キトサンは水の代わりに塩酸水溶液(pH2.0)を用い、実施例1の方法で溶解させた。アルギン酸は実施例1の方法で水に分散、溶解させてから用いた。
その結果、多糖存在下で粉砕させた試料では脱糖BCのみを用いた場合と異なる特性を示した。セルロースと多糖との間でネットワークが形成されることで、水保持能力が向上し、透水性が低下したものと考えられ、ゲル様の性質を観察することができた。
本実施例では、本開示の離解物の応用例を示す。
(材料および方法)
実施例2のβ-グルカン添加・離解物の一部を分注して遠心分離(18,900g、3分、室温)後に、上澄を除去したゾル状画分を回収し、ムラサキイモ色素(酸性エタノール抽出物)及びニンジン色素(エタノール抽出物)を数滴滴下し、鳥挽肉状の試料を得た(図2左)。これを、キャノーラ油を敷いた調理用鉄板上に移し、醤油を数滴滴下して1分程度加熱調理した。
得られた試料(図2右)は、脂身肉様の舌ざわりで、舌で押すと脂身肉様に分散した。
本実施例では、本開示の離解物の応用例を示す。
(材料および方法)
大豆粉(みたけ食品工業(株))5gにイオン交換水6mL(対照試料)または実施例2のβ-グルカン添加・離解物6.0mLを加えて薬さじで練り混ぜ、それぞれに対して、予め微結晶セルロース(旭化成(株)、セオラスFD-101)2gとイオン交換水4mLとを薬さじで練り混ぜたものと混合した。その際には、対照試料では薬さじや壁面に混練物が付着したのに対して、β-グルカン添加・離解物を含む試料では付着(粘着)が少なかった。
得られた試料(図4)の噛み応えを調べたところ、対照試料では噛んだ際に粉状に崩壊したが、β-グルカン添加・離解物を加えた試料では、噛んだ際の弾力があり粉状の崩壊が抑制された。
本実施例では、本開示の離解物を利用した薄膜の生成例を示す。
(材料および方法)
実施例2のβ-グルカン添加・離解物及びキトサン添加・離解物を用いて、実施例1の方法に従い調製した8倍希釈物を、それぞれ0.5mmメッシュのナイロン製の網の上部から流し込み、非通過画分を保持した。これを60℃で乾燥させることで、それぞれの薄膜を得た。
結果を図5に示す。各図の左側の半円は膜製造に用いたナイロンスクリーン、右側はこの上から剥離した膜である。(1-3),(1-4)β-グルカンを用いて製造した乾燥薄膜上に水滴を載せた場合、水滴は膜上に残存したが、キトサンを用いて製造した乾燥薄膜上に載せた場合、水滴は直ちに膜に吸収された。なお、同濃度の(1-3),(1-4)β-グルカン水溶液をナイロン網上に配置してみたが、網上には殆ど保持されずに網から落下したことから、この成膜性は、複合体による特徴と考えられる。このことから、本開示の方法によるバクテリアセルロースと(1-3),(1-4)β-グルカンとで製造した複合体の膜は吸水性が著しく低いことがわかる。
本実施例では、本開示の離解物を利用した麺の生成例を示す。
(材料および方法)
実施例2のキトサン添加・離解物の一部を、10mL容のプラスチックシリンジ内に充填し、マグネチックスターラーで攪拌した状態の0.01M水酸化ナトリウム水溶液(100mL)へ毎分5mLの速度で押し出し滴下した。その結果、離解物は、液中で麺状にゲル化した。また、3gのアルギン酸ナトリウム添加・離解物に対して米澱粉(モチールB、上越スターチ(株))を混合して、マグネチックスターラーで攪拌した状態の200mM塩化カルシウム水溶液中(100mL)へ毎分5mLの速度で押し出し滴下した。
その結果、図6に示すように、離解物と澱粉の混合物は、液中で白色麺状にゲル化した。
本実施例では、本開示の離解物の失活酵素の影響を観察した。
(材料および方法)
実施例2のβ-グルカン添加・離解物の0.75mLをチューブにとり、イオン交換水で二倍に希釈して上下反転してゾルを分散させたものを2本用意した。その後、リケナーゼ(Magazyme社、E-LiCHN、Lot60101a)0.005mLを、0.1mLのイオン交換水
に溶かし、Vortexミキサーで攪拌したものを2つ用意し、1つは100℃のヒートブロック中で10分間保温して失活させた。それぞれのリケナーゼ溶液を0.075mLとり、β-グルカン添加・離解物の分散液が入ったチューブに添加した。これを60℃で反応させた。
その結果、失活酵素を入れた方では変化が見られなかったが、失活操作を行わなかったリケナーゼを入れた区では、3分後には白濁度合いの低下及び流動性向上を確認できた。
本実施例では、本開示の離解物を利用した醤油タレの生成例を示す。
(材料および方法)
実施例1のキシログルカン添加・離解物の1mLをチューブにとり、遠心分離(18,900g、3分、室温)後に、上澄を除去したゾル状画分を回収した。これに0.6mLの醤油を添加して混合することで、とろみをもつ醤油タレを調製した。
結果を図7に示す。
本実施例では、本開示の離解物を利用した、3Dフードプリンタなどに利用可能なひも状・渦状物の生成例を示す。
(材料および方法)
実施例2のBCのアルギン酸ナトリウム添加・離解物9mL(懸濁物A)及び実施例1のBCのキシログルカン添加・離解物9mLに0.225mLの4M CaCl2を加えたもの(懸濁物B)をそれぞれ、10mLシリンジに充填し、定速送液装置(PicoPlus、Harvard Apparatus社)にセットし、押し出した後に両者が混合する様に三方流路で合流
させて外部に押し出せるよう設計し、同時に0.5mL/minで押し出した。混合から射出まで8mm。図8に使用したシリンジ設置様式の模式図(左)及び設置後の写真(右)を示す。
結果を図9~10に示す。
その結果、懸濁物Aと懸濁物Bの混合が流路内で起こり、図8(右)の写真に示す射出物を受けるためのシャーレ内のSQ水中にヒモ状のゲルが確認された(図9)。
本実施例では、本開示の離解物を利用したグミ状物の生成例を示す。
(材料および方法)
実施例2のBCのβ-グルカン添加・離解物6mLに対して、米澱粉(ファインスノウ、上越スターチ)を4g添加して混練した後、10mL容シリンジ内に充填した。次に内容物をシリンジから3mL/minで射出し、直径15cmの皿の側面に成形物を作った。その後、成形物と接触しないように皿の中央部に1mLのSQ水を落としてから、食品包装用ラップフィルム(サランラップ、旭化成ホームプロダクツ(株))で上部全体を覆い、電子レンジ(EM-A20(W)三洋電機(株))で500Wで2分間蒸し加熱した。
結果を図11~13に示す。
上記の結果、成形物は、外側は固くてパリッとかみ砕ける状態となり、内側まで固くなっているものが多かったが、直径5mm程の粒状に成形したものは、内側がグミのような弾力をもっていた。
本実施例では、本開示の離解物を利用したハンバーグの製造例を示す。
(材料および方法)
肉代替食品(大豆と玄米のベジミンチ、(株)マイセンファインフード)4gを乳鉢で5分間潰して円柱状の部分を2mm径以下の粒状にした後、SQ水6mLまたは実施例2のBCのβ-グルカン添加・離解物6mLを加えてスパーテルで混練した。SQ水を加えた試料では結着せずにそぼろ状のままであったが、BCのβ-グルカン添加・離解物を加えた試料では結着して成形できた。
結果を図14~15に示す。その結果、加熱の間、粒の分離は観察されず、結着した状態を維持していた。また、噛んだ際にそぼろ状にならずに噛み応えが残った。
本実施例では、本開示の離解物を利用した菓子の製造例を示す。
(材料および方法)
野菜粉末(ムラサキイモ、カボチャ、ホウレンソウ、ホウレンソウ/米澱粉(ファインスノウ)=3:1)を各2gずつ測りとり、実施例2のBCのβ-グルカン添加・離解物3mLと混合し練り混ぜてペースト状にした(粉末の順に(1)~(4))。その後、(1)と(2)は、直径8mm高さ3mmの円筒状に、(3)と(4)は長径16~20mm短径8~12mm高さ2mmの葉状に成形して、直径15cmの皿の側面に成形物を、4個ずつ間隔をあけて配置した。その後、成形物と接触しないように皿の中央部に1mLのSQ水を落としてから、食品包装用ラップフィルム(サランラップ、旭化成ホームプロダクツ(株))で上部全体を覆い、電子レンジ(EM-A20(W)三洋電機(株))で500 Wで2分間蒸し加熱した。
結果を図16~17に示しつつ説明する。
上記の結果、(1)は中央部が1.5倍に膨らみ、外はパリッとして中は硬めの干し芋かチューインガムのような弾力があった。(2)は中央が二倍に膨らみ、外はカリカリ・サクサクした菓子状で、中はやや干し柿様の弾力があった。(3)は高さ方向に膨らまず縦横方向に収縮し、暗い深緑となった。焦げ様の噛み応えであった。(4)は縦横方向の収縮は観察されず、縦方向に1.5-2倍膨らんだ。黒色に近い色となり、薄焼き煎餅様のカリカリした食感となった。
本実施例では、本開示の離解物を利用した各種糖の効果を示す。
(材料および方法)
BC(ナタデココプレーン、森永乳業株式会社)の脱糖操作は、実施例1と同様の方法で行った。できあがった脱糖物の固形分率は0.68%となった。これを湿重量100gとり、40mLの0.7%多糖溶液(実施例1の方法で水に分散させて溶解。κ-カラギーナンは分散後、電子レンジによる加熱操作により溶解)を添加した後、家庭用ミキサー(パワーブレンダーSPB-650J、コンエアージャパン合同会社)で速度(15,000rpm)、30秒×4回粉砕することで離解した。その後、その離解物の一部(5g)を35mLのイオン交換水で8倍希釈物とした。その液は、0.5mmメッシュのスクリーンを通過させた。
その結果、多糖存在下で粉砕させた試料では脱糖BCのみを用いた場合と異なる特性を示した。
本実施例では、本開示の離解物を利用した肉代替物の生成を示す。
(材料および方法)
実施例13のBCから得たβ-グルカン添加・離解物を用いて、実施例11の肉代替食品の調製を行い、同様の操作が可能であることを確認した。
結果を図18に示す。
本実施例では、本開示の離解物を利用したホイップクリーム様食品の生成を示す。
実施例2のBCのβ-グルカン添加・離解物(100mL)を遠心分離(25,000g、10分、4℃)で沈殿部として回収し、エリスリトールを添加(最終濃度6%(w/V))したものを32gとり、ボウル上に移した。そのボウルに、ホイップかるい口どけ(雪印メグミルク、植物性脂肪30%)40mLを加えて、泡立て器で2分攪拌して泡状にした(図19左)。この一部を取り出し、星形のホイップクリーム押出口から押し出して黒色の板上に配置した(図19右)。
半量を低カロリーの食物繊維由来の複合体に置換しても、クリーム状構造を形成することができ、無カロリーの甘味料による甘味付けも行うことができた。このように、本離解物を適用することで、カロリー制限したお菓子の調理、製造の可能性が広がるものと期待される。
本実施例では、本開示の離解物のダマ状の粉砕物の浮遊に関する状況を分析した。
(材料および方法)
実施例13の方法にならい、脱糖後のBC湿重量100gに0.7%(w/v)多糖溶液(多糖:β-グルカン、オオムギ由来)40mLを添加してミキサーで短時間(5秒~30秒)粉砕した。
粉砕時間を長くすることにより、ダマ状の粉砕物の浮遊量が減ることが確認された。このように、粉砕条件を変えることで、粉砕物中の繊維質の形状を制御することが可能であることが分かり、繊維質感を残したい条件等への柔軟な対応が可能となる。
本実施例では、本開示の離解物を用いた麺様食品の製造例を示す。
(材料および方法)
実施例2の方法で調製したBCのβ-グルカン添加・離解物6mLに対して、米澱粉(ファインスノウ、上越スターチ)を6g添加して混練した後、30分間、乾燥しないようにラップで覆い、その後、3Dフードプリンタなどに用いる10mL容シリンジ内に充填した。次に内容物をシリンジから3mL/minで射出し、沸騰水(煮立っている状態、IH鍋ケトル「コトル」TOM-17、(株)シービージャパン)1Lが入った鍋に加えた。1分後、ザルで回収し、冷水で洗浄した。
結果を図21~22に示す。
本処理の結果、10cm程度の半透明の麺が得られ、噛み切る際のシコシコ感をもつ弾力、口中を滑らす際のツルツル感を有していた。口中に入れたままでは崩壊しないが、容易に噛み切ることができた。
本実施例では、本開示の離解物を用いたタピオカ様食品の製造例を示す。
(材料および方法)
実施例2の方法で調製したBCのβ-グルカン添加・離解物3mLに対して、ジャガイモ粉末を3g添加して混練した後、30分間、乾燥しないようにラップで覆い、その後、直径8mm程度の団子状に成形した。これを、同様の方法で新たに用意した沸騰水1Lに加えて、2分間処理した後、箸で拾い上げて皿上に回収した。
得られた団子状の食品は、茹でる前よりも少し大きくなり、表面の剥離や球状構造の崩壊は観察されず、タピオカ様のモチモチした弾力を有しており、口中に入れたままでは崩壊しないが、容易に噛み切ることができた。
本実施例では、本開示の離解物を用いたボールミルによる離解物の製造例を示す。
幅1mm~2mm、長さ30mm程度に裁断した濾紙(Filter paper 1, Whatman社)、ビートパルプ粉末またはレモン乾燥粉末250mgを水10mL、もしくは1%キシログルカン溶液10mLと混合した。1%キシログルカン溶液は実施例1と同様の方法で調製した。ボールミル(MM301,ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社)を用い、50mL容ステンレス粉砕ジャー、及びステンレス製25m径粉砕ボールを用いて破砕を行った(振盪速度15回/秒、2分)。
その結果、濾紙、ビートパルプ粉末由来、及びレモン乾燥粉末由来の全ての試料について、高粘性の粉砕物が得られた。濾紙の粉砕物を目視で確認した結果、水を用いて粉砕した場合と比較して、キシログルカン溶液で粉砕したものの方が細かく分散していた。
本実施例では、本開示の離解物を用いた卵焼きの製造例を示す。
(材料および方法)
実施例2の方法でBCから得た(1-3),(1-4)β-グルカン添加・離解物を用いて、これを遠心分離し(32,300xg,10分、4℃)沈澱部を回収することで、3倍に濃縮した白色クリーム状の離解物を得た。卵液(鶏卵中の黄身と白身を無加水で溶いたもの。)22.5mLに対して、5mLの水(対照区)または5gの前記クリーム状離解物(試験区)を加えて、泡立て器で2分間攪拌した。
その結果、対照区では流動性が高く小さい気泡を多く巻き込んだ卵液となったのに対して、試験区では粘性が高く気泡が少ない卵液となった。両者から卵焼きを作った結果、対照区ではふわふわして軽く噛みきれる卵焼きとなったのに対して、試験区では身が詰まり弾力をもった卵焼きとなった。
本実施例では、本開示の離解物を用いた極細固麺状食品の製造例を示す。
(材料および方法)
実施例2の方法でBCから得た(1-3),(1-4)β-グルカン添加・離解物を3mL取り、スパーテルを用いて1.5gのジャガイモ粉末と混練した後、10mL容プラスチックシリンジに充填した。このシリンジの先端にアダプタ(バイオラッド社Low Pressure Fittings Kit 731-8223の出口をステンレス管で内径1mmに狭めたもの。)をセットした後、定速送液装置(PicoPlus、Harvard Apparatus社)にセットし、0.5mL/minで押し出した。出てきたペーストは、1.5cm下のプラスチックトレイで受け、手動でトレイを左右・前後に振りながら切れないように配置した(図24)。
結果を図24に示す。
ペーストは小さく捻れたり切断されたりすることなく、見かけ上ほぼ一定の径で、ほぼ直線的に配置された。このペーストを室温で風乾することで、簡単には崩壊しない極細固麺状の構造物を得た。
本実施例では、本開示の離解物を用いた麺状食品の別の製造例を示す。
(材料および方法)
実施例2の方法でBCから得た(1-3),(1-4)β-グルカン添加・離解物を25mL取り、100℃に加温したものを、米粉(日本晴、湿式気流粉砕物)30gの入ったボウル内に半量ずつ添加し、良く混練した。さらに100℃の湯5mLを加えて混ぜたものを、米澱粉を敷いた調理板上に置いて、棒で厚さ6mmの平たい生地とした。これを包丁で幅6mmの短麺状に切った後、沸騰水中に投入し、麺が浮かんだ時点で加熱を停止し、直ちにザルに出して流水で冷却した。
結果を図25に示す。
茹で工程による麺の崩壊や切断は起こらず、表面が滑り強い噛み応えのある麺となった。
本実施例では、本開示の離解物の沈殿状態の観察結果を示す。
(材料および方法)
試験管内の大豆粉(みたけ食品工業(株))をイオン交換水で懸濁させた5%(w/w)懸濁物4mLに対して、イオン交換水または実施例2の方法でBCから得た(1-3),(1-4)β-グルカン添加・離解物を1mL加えて再度攪拌・懸濁した後、室温で静置した。
結果を図26に示す。5時間後に、イオン交換水を追加添加した試料では、大豆粉の沈澱が観察されたのに対して、離解物を加えた試料では、沈澱が観察されなかった。
本実施例では、本開示の離解物の吸着状態の観察結果を示す。
(材料および方法)
試験官内の0.25%クルクミン(和光純薬工業(株))分散液2mL(橙色)に対して、イオン交換水または実施例2の方法でBCから得た(1-3),(1-4)β-グルカン添加・離解物を0.5mL加えて攪拌した。5分室温で静置した後、再度攪拌した直後に液を1.5mL、プラスチックチューブ(2mL容)に移し、室温で15秒間遠心分離(定速:CAPSULE HF-120、(株)トミー精工)した。
その結果、水を添加した試料では、分散させたクルクミンが試験管の壁面に薄く付着していたのに対して、離解物を添加した試料では、遠心分離によって下方に固まった離解物中に吸着していることが確認された(図27)。
本実施例では、本開示の離解物のゲル状態の観察結果を示す。
(材料および方法)
水1mLまたは実施例2の方法でBCから得た(1-3),(1-4)β-グルカン添加・離解物1mLを試験管に取り70℃に加温した後、90℃に加温した2%寒天水溶液を1mL添加し、直ちに攪拌混合して室温で1時間静置し空冷した。
その結果、水-寒天試料では透明のゲルが、そして離解物―寒天試料では半透明のゲルが生成した。前者は脆く口中で砕けたが、後者は口中で噛み応えが残り良質な食感となった。
実施例2の方法でBCから得た(1-3),(1-4)β-グルカン添加・離解物を50%(v/v)含み、寒天を1%含む液を6mL、または、上記離解物を含まない1%寒天6mLをプラスチックチューブに入れて、それぞれ100℃に加熱して寒天を溶解させた後、80℃に冷まし、それぞれのチューブに1.2gの大豆粉末を添加し懸濁した。これを4℃に維持した平面状のヒートブロック上に0.5mL滴下したところ、Cでは1.7cmに拡がって固まったのに対して、Sでは1.0cmの幅で固まった。また、両チューブを80℃で30分静置すると、離解物を含まないチューブでは大豆粉の沈澱が観察されたが、離解物を含むチューブでは懸濁状態を保った。
本実施例においては、不溶性多糖としてキチンを用いて、水溶性多糖の存在下で粉砕した例を示す。セルロースや植物細胞壁のみならず、甲殻類の殻由来の多糖でも本開示の複合体を製造することができることを確認した。
本実施例においては、本開示の方法を用いて、グルカンのみから構成される高密度な固形物が製造できることを確認した。この素材は、外に膜を張って水分の吸い方を制御することにより、中の澱粉の糊化特性を制御できる機能性素材ともなり得る。
本実施例においては、本開示の方法により、草本繊維質資源からシートを製造できることを確認した。稲わらをアルカリ処理した繊維質に対して、(1-3),(1-4)β-グルカンを加えて粉砕処理を行った後、これを実施例5の方法にならい膜素材として成形した。
既報(YamagishiK. et al., The RURAL(reciprocal upgrading for recycling of ash and lignocellulosics)process: a simple conversion of agricultural resources tostrategic primary products for the rural bioeconomy, Bioresource Technology Reports,2020)に従い、稲わら(品種:コシヒカリ)を鶏糞燃焼灰(25%w/w)と混合し、14日間湿式貯蔵を行った後、稲わらの乾燥重量に対して62.5倍量の水により洗浄を行った。本処理後の稲わら(乾燥重量0.5g相当)を、(1-3),(1-4)β-グルカン0.52%(w/v)水溶液19.5mLと混合し、ステンレスミル(レッチェ社、50ml容、ステンレスボール(φ2cm)含む)の中に入れ、ボールミル(レッチェ社、MM-301)を用いて破砕処理を行った。破砕条件は15往復/秒、室温で4分間とした。その後、得られた懸濁物を1.5mLとり、実施例5の方法に従い、0.5mmメッシュのナイロン製の網の上部から流し込み、非通過画分を保持した。これを60℃で乾燥させることで、わら半紙状の稲わら由来の膜を得た(図29)。
タマリンドシードガム粉末4gをイオン交換水400mLに懸濁し、85℃に加温しつつ攪拌することで懸濁液を調製した。これを120℃で15分間オートクレーブ処理した後、メスシリンダーを用いて400mLにメスアップすることで1%(w/v)タマリンドシードガム水溶液とした。これを0.7%に希釈し、その40gをナタデココ脱糖物100gと混合後、140mLのミキサー粉砕系で粉砕し、本開示の複合体(本明細書において「NP」(ナタピューレ)と称することがある)140gを得た。
ナタデココ脱糖物20g(固形物濃度0.7%)に対して、27mLのイオン交換水または水溶性多糖溶液(固形物濃度0.35%)を添加し、小型ミキサー(FML-17、トステム)を用いて室温で120秒粉砕した。これにより得られた懸濁物を、それぞれ、NPw(水溶性多糖を加えずに水だけでナタデココ脱糖物を離解したもの)、NPxg(水溶性多糖としてタマリンドシードガムを用いたもの)、NPcmc(水溶性多糖としてカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩を用いたもの)、及びNPbx(水溶性多糖としてバーチウッドキシランを用いたもの)とした。それぞれの懸濁物を水で4.7倍に希釈したものを試料A、これを孔径300μmのメッシュを通過させた試料Bとして回収し、それぞれの試料の600nmの吸光度を濁度として測定し、試料A、Bの値を各々分母、分子として300μmメッシュの通過率(%)とした。結果を表5に示す。
実施例31に記載した方法にならい、ナタデココ脱糖物20g(固形物濃度0.7%)と高濃度のタマリンドシードガム溶液(1.2% w/w)27gを小型ミキサーで混和し、NP(NPtg)を調製した。NPtg(4g)に対し、表6に示す各種溶質を懸濁または溶解した試料1gを50mL容プラスチックチューブ内で十分混和した後、チューブを直立した状態で3時間室温下に静置した。その後、各チューブを速やかに倒して寝かせ、20秒後に液面先端の程度距離を測定した。対照区である水添加区(液面流動距離 3.0cm)に対し、各溶液添区における液面流動距離を相対値として計算した(各溶液添区における液面流動距離(cm)/水添加区における液面流動距離(3.0cm))×100(%))。
実施例32において調製したNPtg(5g)に対して、米粉(日本晴、湿式気流粉砕物)を500mg添加して分散させた後、95℃で15分処理した。これを取り出すとクリーム状の食品が生成された(図30)。加熱後の糊化物を強く長時間攪拌しなくても、均質性をもつクリーム状に加工できることから、このクリーム状食品は、菓子などの食品加工時に無脂質・低脂質素材として役に立つことに加えて、自動操作等による簡単な工程によって咀嚼・飲み込みの能力が劣る者に対する食品の提供を可能とするための素材となる。
米粉(コシヒカリ、湿式気流粉砕)3.0gを用いて、水または種々の本開示の複合体(複合体由来の固形物濃度0.14%)2mLとアルミ缶内で混合後、パドルとともにRapid Visco Analyzer(RVA, RVA4、Newport Scientific, Australia)にセットして、標準測定条件で粘度を測定し、粘度変化を解析した。測定条件は、初期温度50℃、スタートから10秒間960rpmで分散し、その後160rpmにして50℃で1分間保持した後、12℃/分で95℃まで昇温し、2分30秒95℃で保持し、その後12℃/分で50℃まで降温、2分間50℃で保持するプログラム粘度測定を行い、それぞれの試料につき最高粘度、最終粘度のパラメーターを得た。その結果、最高粘度(cP)は、水、NPbg(水溶性多糖として(1-3),(1-4)-β-グルカンを用いたもの)、NPxg(水溶性多糖としてタマリンドシードガムを用いたもの)、NPcmc(水溶性多糖としてカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩を用いたもの)、NPal(水溶性多糖としてをアルギン酸ナトリウム用いたもの)、NPch(水溶性多糖としてキトサンを用いたもの)、NPgg(水溶性多糖としてグアーガムを用いたもの)、及びNPbx(水溶性多糖としてバーチウッドキシランを用いたもの)に対して、それぞれ、4980、5911、5732、5380、5437、5987、5556、及び5635となった。また、測定終了時点の最終粘度(cP)も、4204、4609、4359、4432、4893、4307、4262、及び4297となった。このように、本開示の複合体は、米粉の糊化時及び糊化後の粘度を高める作用をもつことがわかった。
実施例34と同様の方法で、小麦粉(薄力小麦粉、日清製粉株式会社)3.0gを用いて、水または種々の本開示の複合体(複合体由来の固形物濃度0.145%)25mLとアルミ缶内で混合後、パドルとともにRVAにセットして、粘度変化を解析した。その結果、最高粘度は、水、NPbg、NPxg、NPcmc、NPal、NPch、NPgg、及びNPbxに対して、それぞれ、1566、2348、2179、1994、1946、2134、2025、及び2072となった。また、測定終了時点の最終粘度(cP)も、2187、3160、3076、2867、2770、2843、2763、及び2811となった。このように、本開示の複合体は、小麦粉の糊化時及び糊化後の粘度を高める作用をもつことがわかった。
薄力粉3.1g(乾燥重量相当)を水、又は水に対し2.5%~20%相当(w/w)の比率でNPw、NPxgを混合した溶液21.9gと混合し、十分に攪拌してスラリー状にした後、直径15mmのガラス試験管にその10gを添加した。18時間4℃下で静置後、水面から沈降した薄力粉の界面までの距離(h)を測定した。本開示の複合体を含まない試料(水)における沈降距離を(hw)とし、各試料における沈降率を(h/hw)×100(%)とした。また、米粉(品種:日本晴)を用いても同様の試験を行った。対照試験として、食品の分散剤として一般的に用いられる多糖類(キサンタンガム)について、薄力粉を用いて同様の試験を行った結果、NPxg混合率12.5%(固形物濃度0.09%、沈降率11.4%)とほぼ同程度の値(13.9%)の値を示す濃度は0.6%(w/w)であった。これにより、NPがキサンタンガムより低濃度で分散性を付与することがわかる。また、NPxg混合率15%(固形物濃度0.10%)時の米粉沈降率(11.8%)と同程度の値(19.3%)を示すキサンタンガム濃度は0.5%であった。これにより、NPがキサンタンガムより低濃度で分散性を付与することがわかる。NPxgスラリー及びキサンタンガムスラリーの物性を比較するため、NPxg混合率12.5%の薄力粉、NPxg混合率15%の米粉スラリー、及びキサンタンガム0.6%(w/w)を含む薄力粉、キサンタンガム0.5%(w/w)を含む米粉スラリー(薄力粉および米粉の濃度は同一(12.5%(w/w))を用意し、各々10mLを10mL容のディスポシリンジに詰めた後にシリンジ出口を下にして立てて、その5mLがシリンジから自然落下するのに必要な時間を測定した。結果を図31~34に示した。
薄力粉20g(乾燥重量相当)を水75g及びNPxg 25gと混和してスラリーを調製し、その一部(各20g)をターメリック粉末(市販品)またはパセリ粉末(市販品をボールミルで微粉末化した試料)0.4gと混和して着色ペーストを調製した。着色ペースト、及び無着色のペーストを10mL用ディスポシリンジに充填し、金属板上に吐出した。さらに、各ペーストを加熱したテフロンプレート上に吐出し、水分がほぼ蒸発したと思われた時点で、得られたシート状成形物をプレートから剥離した。結果を図35及び36に示した。
市販キャベツ粉末、ジャガイモ粉末、大豆粉末、及びレモン粉末を所定量の水と混和し、ペースト試料を調製した。含水率(乾物量(DM)/全重量)は各々22.5%、25%、37%及び17.5%に設定した。また、上記試料に対して、加水量の20%をNPwまたはNPxgに置き換えたペースト100gを調製した。直径6cm、高さ1cmのプラスチックシャーレに30gを詰めた分析試料を各のペーストにつき3枚調製し、レオメーター(サン科学、CR-500DX)を用いてテクスチャープロファイルを測定した。主要な測定パラメーターとして、直径10mm,高さ20mmの樹脂製円柱状プランジャーを使用して1mm/sにて表面から5mmの深さまでペーストを等速圧縮し、その後,直ちに同じ速度で逆向きにプランジャーを引き上げる工程を採用し、圧縮時の最大応力(N)を硬さの指標とした。測定は3回繰り返し,平均値及び標準偏差を求めた。結果を図37に示した。
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に2021年5月25日に出願された特願2021-87567に対して優先権主張をするものであり、その内容はその全体があたかも本願の内容を構成するのと同様に参考として援用される。
Claims (9)
- 水中での崩壊性が抑制された組成物であって、該組成物は、第一の複合体と水不溶性粒子とが結着した組成物に、第二の複合体または抑制または制御剤が被覆されたものであり、
該第一の複合体は、水溶性多糖と水不溶性炭水化物とを含む複合体であって、該水不溶性炭水化物が、水に溶解した該水溶性多糖との共存下で離解されており、水不溶性炭水化物の離解後に水不溶性炭水化物と水溶性多糖とを混合した組成物と比較した場合に、該複合体の離解性が高いことを特徴とし、
該第二の複合体は、水溶性多糖と水不溶性炭水化物とを含む複合体であって、該水不溶性炭水化物が、水に溶解した該水溶性多糖との共存下で離解されており、水不溶性炭水化物の離解後に水不溶性炭水化物と水溶性多糖とを混合した組成物と比較した場合に、該複合体の離解性が高く、該水溶性多糖が(1-3),(1-4)β-グルカンであり、該水不溶性炭水化物がセルロースであることを特徴とし、
該抑制または制御剤は、第三の複合体を含む透水の抑制または制御剤であり、
該第三の複合体は、水溶性多糖と水不溶性炭水化物とを含む複合体であって、該水不溶性炭水化物が、水に溶解した該水溶性多糖との共存下で離解されており、水不溶性炭水化物の離解後に水不溶性炭水化物と水溶性多糖とを混合した組成物と比較した場合に、該複合体の離解性が高いことを特徴とする、組成物。 - 前記水不溶性粒子が、澱粉、セルロース、またはβ-1,3-グルカンから選択される少なくとも一種類の材料を含む粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記第一および/または第三の複合体における前記水溶性多糖が、キシランまたはその誘導体、β-グルカンまたはその誘導体、マンナンまたはその誘導体、水溶性セルロース誘導体またはその塩、キトサンまたはその誘導体、アルギン酸またはその塩またはそれらの誘導体、カラギーナン、ジェランガム、ペクチンまたはその部分構造物またはそれらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記β-グルカンまたはその誘導体が、(1-3),(1-4)β-グルカンを含む、請求項3に記載の組成物。
- 前記β-グルカンまたはその誘導体が、タマリンドシードガムを含む、請求項3に記載の組成物。
- 前記水不溶性炭水化物がバクテリアセルロースを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記水不溶性炭水化物が食品用ブレンダーまたは食品用ミキサーによって離解される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
- 水不溶性炭水化物の離解後に水不溶性炭水化物と水溶性多糖とを混合した組成物と比較した場合に、前記第一、第二、および/または第三の複合体は、該組成物よりも大きい体積を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記第一および/または第三の複合体における前記水溶性多糖が(1-3),(1-4)β-グルカンであり、前記水不溶性炭水化物がセルロースである、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022186622A JP2023027106A (ja) | 2021-05-25 | 2022-11-22 | 水不溶性炭水化物を離解する方法 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021087567 | 2021-05-25 | ||
JP2021087567 | 2021-05-25 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022186622A Division JP2023027106A (ja) | 2021-05-25 | 2022-11-22 | 水不溶性炭水化物を離解する方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022181158A JP2022181158A (ja) | 2022-12-07 |
JP7217555B2 true JP7217555B2 (ja) | 2023-02-03 |
Family
ID=84327788
Family Applications (2)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021194488A Active JP7217555B2 (ja) | 2021-05-25 | 2021-11-30 | 水不溶性炭水化物を離解する方法 |
JP2022186622A Pending JP2023027106A (ja) | 2021-05-25 | 2022-11-22 | 水不溶性炭水化物を離解する方法 |
Family Applications After (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022186622A Pending JP2023027106A (ja) | 2021-05-25 | 2022-11-22 | 水不溶性炭水化物を離解する方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (2) | JP7217555B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7418642B1 (ja) | 2023-07-13 | 2024-01-19 | Mp五協フード&ケミカル株式会社 | 三次元造形食品用インク |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001327254A (ja) | 2000-05-22 | 2001-11-27 | Meiji Seika Kaisha Ltd | 果肉様食感を有する菓子・食品素材及びその製造方法並びにその使用方法 |
JP2008092914A (ja) | 2006-10-16 | 2008-04-24 | Asahi Kasei Chemicals Corp | 3成分からなる増粘ゲル化剤 |
JP2008118943A (ja) | 2006-11-14 | 2008-05-29 | Kumamoto Seifun Kk | βグルカンを高濃度に含有する麦顆粒 |
JP2008278811A (ja) | 2007-05-11 | 2008-11-20 | National Agriculture & Food Research Organization | 咀嚼・口内滞留特性が向上した食品の製造法 |
JP2011527900A (ja) | 2008-07-15 | 2011-11-10 | シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド | カルボキシメチルセルロース成分を欠くバクテリアセルロース含有製剤 |
WO2017006330A1 (en) | 2015-07-09 | 2017-01-12 | Yissum Research Development Company Of The Hebrew University Of Jerusalem Ltd | 3-dimensional printing of food |
JP2018065920A (ja) | 2016-10-19 | 2018-04-26 | 中越パルプ工業株式会社 | セルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバーの製造方法 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4481076A (en) * | 1983-03-28 | 1984-11-06 | International Telephone And Telegraph Corporation | Redispersible microfibrillated cellulose |
-
2021
- 2021-11-30 JP JP2021194488A patent/JP7217555B2/ja active Active
-
2022
- 2022-11-22 JP JP2022186622A patent/JP2023027106A/ja active Pending
Patent Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001327254A (ja) | 2000-05-22 | 2001-11-27 | Meiji Seika Kaisha Ltd | 果肉様食感を有する菓子・食品素材及びその製造方法並びにその使用方法 |
JP2008092914A (ja) | 2006-10-16 | 2008-04-24 | Asahi Kasei Chemicals Corp | 3成分からなる増粘ゲル化剤 |
JP2008118943A (ja) | 2006-11-14 | 2008-05-29 | Kumamoto Seifun Kk | βグルカンを高濃度に含有する麦顆粒 |
JP2008278811A (ja) | 2007-05-11 | 2008-11-20 | National Agriculture & Food Research Organization | 咀嚼・口内滞留特性が向上した食品の製造法 |
JP2011527900A (ja) | 2008-07-15 | 2011-11-10 | シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド | カルボキシメチルセルロース成分を欠くバクテリアセルロース含有製剤 |
WO2017006330A1 (en) | 2015-07-09 | 2017-01-12 | Yissum Research Development Company Of The Hebrew University Of Jerusalem Ltd | 3-dimensional printing of food |
JP2018065920A (ja) | 2016-10-19 | 2018-04-26 | 中越パルプ工業株式会社 | セルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバーの製造方法 |
Non-Patent Citations (5)
Title |
---|
フードテックニュースサイトFoovoに掲載された2020年12月 7日付け記事「植物性代替肉SavorEatがイスラエルでIPO(上場)、2021年夏までに試験販売を開始」,2020年,[オンライン],[検索日:2022年 5月10日],URL,https://foodtech-japan.com/2020/12/07/savoreat-ipo/ |
世界のウェブアーカイブ|筑波大学生物学類のウェブサイト上の「BotanyWEB」に掲載された「細胞壁」の頁のアーカイブ,2021年 4月,[オンライン],[検索日:2022年 5月10日],URL,https://web.archive.org/web/20200419002502/https://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/BotanyWEB/cell-wall.html |
徳島県立工業技術センター研究報告,2017年,26,pp.37-40 |
第2回CNF実用化セミナー資料 日本製紙のCNF-食品用添加剤としての利用-,2021年02月05日,https://www.saitama-j.or.jp/wp-content/uploads/2021/02/5fb39e17739bddfa6ce6045b99dac341.pdf |
繊維学会誌(繊維と工業),1992年,48(10),P566-P569 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2022181158A (ja) | 2022-12-07 |
JP2023027106A (ja) | 2023-03-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
AU2019240309B2 (en) | Seaweed-based powder | |
Ye et al. | Konjac glucomannan (KGM), deacetylated KGM (Da-KGM), and degraded KGM derivatives: A special focus on colloidal nutrition | |
TWI514969B (zh) | Cellulose composition | |
KR102168623B1 (ko) | 조성물, 이것을 사용한 튀김옷 재료, 음식품과 사료 및 조성물의 제조방법 | |
JP6164930B2 (ja) | ゲル製剤 | |
CN1098644C (zh) | 肉制品稳定剂和肉制品组合物 | |
JP5955147B2 (ja) | ゲル化剤 | |
CN1287564A (zh) | 含纤维素的复合物 | |
US20210337842A1 (en) | Seaweed flour | |
JP3969512B2 (ja) | 食物繊維強化麺類 | |
JP7217555B2 (ja) | 水不溶性炭水化物を離解する方法 | |
JP6935424B2 (ja) | 乾燥食品 | |
JPH1146723A (ja) | 肉製品用の安定剤及び肉製品組成物 | |
US20220339224A1 (en) | Seaweed-based composition | |
TWI721401B (zh) | 纖維素粉末 | |
JP2017175990A (ja) | 包餡食品 | |
JP6703880B2 (ja) | とろみを有する半固形食品及び調理食品 | |
JP6744938B2 (ja) | 固体状または液体状の調味料を含有する肉加工食品 | |
EP4132297A1 (en) | Fish analogue | |
TW200803755A (en) | Method of improving flavor of soybean protein-glucomannan jelly |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A80 | Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80 Effective date: 20211228 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20220411 |
|
A871 | Explanation of circumstances concerning accelerated examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871 Effective date: 20220411 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20220517 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20220715 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20220829 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20221122 |
|
C60 | Trial request (containing other claim documents, opposition documents) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60 Effective date: 20221122 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20221130 |
|
C21 | Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21 Effective date: 20221201 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20230111 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20230117 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7217555 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R3D04 |