以下、本実施形態に係るモータシステムを、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るモータシステムAの概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、モータシステムAは、電源装置1、モータ2、及びモータ駆動装置3を備える。
電源装置1は、直流電源であって、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、電源装置1は、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。さらに、電源装置1は、交流電源からの出力を直流に整流する装置であってもよい。
モータ2は、モータ駆動装置3によって駆動が制御される電動モータである。本実施形態ではモータ2は、三相(U、V、W)のブラシレスモータである。具体的には、モータ2は、永久磁石を有するロータと、三相(U相、V相、W相)それぞれに対応するコイルLu、Lv、Lwがロータの回転方向に順に巻装されているステータとを備えている。そして、各相のコイルLu、Lv、Lwのそれぞれは、モータ駆動装置3に接続されている。
モータ駆動装置3は、電源装置1からの直流電力を交流電力に変換してモータ2に供給することでそのモータ2を駆動する。以下に、第1の実施形態に係るモータ駆動装置3の構成について、具体的に説明する。
モータ駆動装置3は、インバータ4及びインバータ制御部5を備える。なお、インバータ4は、本発明の「電力変換装置」の一例である。
インバータ4は、電源装置1からの直流電力を交流電力に変換する。そして、インバータ4は、変換した交流電力をモータ2に供給する。
具体的には、インバータ4は、入力端子N1、基準端子N2、及び出力端子N3~N5を備える。
入力端子N1は、接続線L1を介して電源装置1の正極端子に接続されている。基準端子N2は、接続線L2を介して電源装置1の負極端子に接続されている。また、出力端子N3には、コイルLuが接続されている。出力端子N4には、コイルLvが接続されている。出力端子N5には、コイルLwが接続されている。
したがって、インバータ4は、電源装置1から入力端子N1に入力した直流電力を交流電力に変換して出力端子N3~N5に出力する。
以下に、インバータ4の構成について、具体的に説明する。
インバータ4は、複数のスイッチング素子SWを有し、このスイッチング素子のオン状態とオフ状態とがインバータ制御部5によりスイッチング制御されることで電源装置1からの直流電力を交流電力に変換してモータ2に出力する。これにより、モータ2が駆動する。なお、本実施形態では、インバータ4は、3組のスイッチング素子対Su,Sv,Swを備える。このスイッチング素子対Su,Sv,Swは、電源装置1からの正負の電源ライン間に並列に接続されている。この3組のスイッチング素子対Su,Sv,Swは、インバータ制御部5によりそれぞれモータ2の電気角で120度ずつずれてオンオフされる。
スイッチング素子対Suは、互いに直列に接続されたスイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2を備える。スイッチング素子対Svは、互いに直列に接続されたスイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4を備える。スイッチング素子対Swは、互いに直列に接続されたスイッチング素子SW5及びスイッチング素子SW6を備える。
6つのスイッチング素子SW1~SW6がFET(Field Effective Transistor)である場合について説明するが、これに限定されず、例えば、IGBT(Insulated gate bipolar transistor)、及びBJT(bipolar junction transistor)であってもよい。また、インバータ4は、スイッチング素子SWの個数には特に限定されない。なお、複数のスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれを区別しない場合には、単に「スイッチング素子SW」と標記する。
具体的には、直列に接続されたスイッチング素子SW1,SW2と、直列に接続されたスイッチング素子SW3,SW4と、直列に接続されたスイッチング素子SW5,SW6とは、入力端子N1と、基準端子N2との間に並列に接続されている。
スイッチング素子SW1のドレイン端子は、入力端子N1に接続されている。スイッチング素子SW2のソース端子は、基準端子N2に接続されている。スイッチング素子SW1のソース端子と、スイッチング素子SW2のドレイン端子との接続点(出力端子N3)は、U相のコイルLuの一端に接続されている。
スイッチング素子SW3のドレイン端子は、スイッチング素子SW1のドレイン端子に接続されている。スイッチング素子SW4のソース端子は、基準端子N2に接続されている。スイッチング素子SW3のソース端子と、スイッチング素子SW4のドレイン端子との接続点(出力端子N4)は、V相のコイルLvの一端に接続されている。
スイッチング素子SW5のドレイン端子は、スイッチング素子SW1のドレイン端子に接続されている。スイッチング素子SW6のソース端子は、基準端子N2に接続されている。スイッチング素子SW5のソース端子と、スイッチング素子SW6のドレイン端子との接続点(出力端子N5)は、W相のコイルLwの一端に接続されている。
また、各スイッチング素子SW1~SW6のゲート端子は、インバータ制御部5に接続されている。
なお、各スイッチング素子対Su,Sv,Swにおいて、高電位側に設けられているスイッチング素子SWを「ハイサイドスイッチング素子SWH」と称し、低電位側に設けられているスイッチング素子SWを「ローサイドスイッチング素子SWL」と称する場合がある。すなわち、スイッチング素子SW1,SW3,SW5がハイサイドスイッチング素子SWHであり、スイッチング素子SW2,SW4,SW6がローサイドスイッチング素子SWLである。
インバータ制御部5は、インバータ4の駆動を制御する。具体的には、インバータ制御部5は、スイッチング素子SW1~SW6をスイッチング制御する。以下に、インバータ制御部5の構成について、具体的に説明する。
インバータ制御部5は、電流検出部6、電圧検出部7、及び制御部8を備える。
電流検出部6は、電源装置1からインバータ4の入力端子N1に入力する入力電流Iinを検出する。例えば、電流検出部6は、接続線L1に設けられ、接続センサL1に流れる電流を検出することで、入力電流Iinを検出する。そして、電流検出部6は、検出した入力電流Iinを制御部8に出力する。
この電流検出部6は、入力電流Iinを検出する構成であれば特に限定されないが、例えば、トランスを備えたカレントトランス(CT)やホール素子を備えた電流センサである。また、電流検出部6は、接続線L1に直列に接続されたシャント抵抗の両端の電圧から入力電流Iinを検出してもよい。
電圧検出部7は、インバータ4に入力する入力電圧Vinを検出する。例えば、電圧検出部7は、入力端子N1と基準端子N2との間の電位差を検出することで、入力電圧Vinを検出する。なお、電圧検出部7は、インバータ4に入力する入力電圧Vinをそのまま読み取るのではなく、例えば、抵抗分圧回路で入力電圧Vinを抵抗分圧した電圧(以下、「分圧電圧」という。)を読み取ってもよい。この場合には、電圧検出部7は、読み取った分圧電圧から、抵抗分圧回路の分圧比に基づいて入力電圧Vinを算出する。
電圧検出部7は、検出した入力電圧Vinを制御部8に出力する。なお、上述したように、入力端子N1が電源装置1の正極端子に、基準端子N2が電源装置1の負極端子に接続されているため、入力電圧Vinは電源装置1の出力電圧に相当する。
制御部8は、スイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのオン状態及びオフ状態を制御することで、インバータ4において電源装置1からの直流電力を交流電力に変換させる。例えば、制御部8は、U相のコイルLu、V相のコイルLv及びW相のコイルLwのそれぞれに流れる電流の位相が120度ずつずれるようにスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのオン状態及びオフ状態を制御するスイッチング制御を行う。
その際、制御部8は、スイッチング素子SW1~SW6のそれぞれにおいて、スイッチング素子SWをオン状態に維持する期間であるオン固定通電期間θonを変化させながら、電源装置1からインバータ4に入力する直流電力(以下、「入力電力」という。)Pinが最小となるようにオン固定通電期間θonを制御する最小損失点追従制御を実行する。したがって、本実施形態では、オン固定通電期間θonは、固定値ではなく、入力電力Pinに応じて変動する変動値である。なお、オン固定通電期間θonは、スイッチング素子SWをオン状態に維持する位相幅であってもよい。
以下に、第1の実施形態に係る制御部8のスイッチング制御の一例について、図2を用いて説明する。
制御部8は、スイッチング素子SW1~SW6のゲート端子に制御信号を出力することで、スイッチング素子SW1~SW6をオン状態又はオフ状態に制御するスイッチング制御を行う。例えば、ハイサイドスイッチング素子SWHに対して出力する制御信号を「制御信号P」と称し、ローサイドスイッチング素子SWLに対して出力する制御信号を「制御信号N」と称す。
制御部8は、一つのスイッチング対SWにおいて、ハイサイドスイッチング素子SWHとローサイドスイッチング素子SWLとを半周期ΔTごとに交互にスイッチング制御する。制御部8は、そのスイッチング制御中において、電流検出部6が検出した入力電流Iinと、電圧検出部7が検出した入力電圧Vinとを乗算することで現在の入力電力Pin(=Iin×Vin)を算出し、算出した現在の入力電力Pinが最小になるようにオン固定通電期間θonを調整する最小損失点追従制御を実行する。しがって、制御信号P及び制御信号Nのそれぞれには、変動値であるオン固定通電期間θonを含む。
ここで、制御部8は、所定の周期(PWM周期)TのPWM信号を各スイッチング素子SWに出力することでスイッチング素子SWをPWM制御してもよい。すなわち、本実施形態に係るスイッチング制御は、少なくとも最小損失点追従制御を含んでいればよく、PWM制御をさらに含んでもよい。ただし、スイッチング制御として、最小損失点追従制御とPWM制御とを含む場合には、制御部8は、最小損失点追従制御において、PWM制御のPWM周期Tよりも長いオン固定通電期間θonを設ける。すなわち、制御部8がスイッチング制御を行うにあたって、当該スイッチング制御にPWM制御を含める場合には、制御部8は、スイッチング制御において、PWM周期TでPWM制御を行う期間であるPWM通電期間θpwmと、PWM周期Tよりも長いオン状態を維持するオン固定通電期間θonとを含むようにスイッチングSWを制御する。したがって、制御信号P及び制御信号Nのそれぞれには、PWM周期Tでありデューティ比DでスイッチングSWをオンオフするPWM信号と、オン固定通電期間θonの間において常にスイッチングSWをオン状態に維持する信号(以下、「オン固定通電信号」という。)を含む。
なお、このPWM通電期間θpwmは、連続している必要はなく、不連続であってもよい。すなわち、スイッチング制御を行う期間(半周期ΔT)において、二以上のPWM通電期間θpwmを設けてもよい。ただし、本実施形態では、オン固定通電期間θonは、スイッチング制御を行う期間(半周期ΔT)において一つのみ設けられる。例えば、図2に示す例では、スイッチング制御を行う期間(半周期ΔT)は、一つのオン固定通電期間θonと二つのPWM通電期間θpwmとから構成される。
なお、制御部8は、PWM制御において、モータ2に流れる相電流(駆動電流)Ipが目標値Irefに追従するようにPWM信号のデューティ比Dを設定することでモータ2の駆動電流をフィードバック制御してもよい。例えば、制御部8は、モータ2の駆動電流Ipと目標値Irefとの差分値ΔIに基づいてPI制御を行うことにより上記フィードバック制御を行ってもよい。
なお、本実施形態において、スイッチング素子SWに対してオン固定通電期間θonを設けるタイミングは特に限定されない。例えば、制御部8は、スイッチング素子SWに対して、スイッチング制御を行う半周期ΔTの期間の半分の時点(ΔT/2)を中心としてオン固定通電期間θonを設けてもよい。例えば、あるスイッチング素子SWに対して電気角0度から180度においてスイッチング制御を行う場合であって、オン固定通電期間(位相幅)θonが30度である場合には、電気角が90度である位置を中心として±15度の範囲をオン固定通電期間として設定してもよい。
このように、本実施形態に係る特徴の一つは、オン固定通電期間θonを変化させながら、モータ2で発生する損失(以下、「モータ損失」という。)PMとインバータ4で発生する損失(以下、「インバータ損失」という。)PIVとを合計した損失(以下、「合計損失」という。)PSが最小となるオン固定通電期間θonを常に探索する最小損失点追従制御を行うことである。換言すれば、本実施形態に係る最小損失点追従制御とは、モータ2を駆動している状態において、合計損失PSが最小となるように、オン固定通電期間θoをパラメータとして変化させながら合計損失PSが最小となるようにスイッチング素子SWをスイッチング制御することである。
以下に、第1の実施形態に係る合計損失PSについて、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るモータ損失PM、インバータ損失PIV及び合計損失PSのオン固定通電期間θonに対する傾向の一例を示す図である。
本発明者らは、オン固定通電期間θonが高くなるにつれて、モータ損失PMが増加する傾向にあるともにインバータ損失PIVが減少する傾向にあることを発見した。図3に示すように、縦軸を損失、横軸をオン固定通電期間θonとしたグラフにおいて、モータ損失PM及びインバータ損失PIVをプロットした場合には、オン固定通電期間θonの所定範囲内において、合計損失PSが最小となるポイント(以下、「最小損失点」という。)が存在する。すなわち、合計損失PSには、オン固定通電期間θonの所定範囲内において、必ず最小損失点が存在することになる。したがって、制御部8は、オン固定通電期間θonを変化させながら常に最小損失点のオン固定通電期間θonminを探索してスイッチング制御することで、モータ2の負荷変動が発生した場合でも、合計損失PSを低減することができる。
ここで、モータ2の負荷が一定である場合には、オン固定通電期間θonに対する合計損失PSの傾向と電源装置1からインバータ4に入力する直流電力(以下、「入力電力」という。)Pinの傾向とは、同一の傾向を示す。すなわち、モータ2の負荷が一定である場合には、合計損失PSが最小となるオン固定通電期間θonと、入力電力Pinが最小となるオン固定通電期間θonとは、同一となる。したがって、本実施形態に係る制御部8は、最小損失点追従制御において、モータ2の駆動時にインバータ4のオン固定通電期間θonを変化させながら、入力電力Pinが最小となるようにスイッチング素子SW1~SW6のオン状態及びオフ状態を制御する。
なお、モータ2が負荷変動すると最小損失点も変動するため、図4に示すように、最小損失点追従制御においてオン固定通電期間θonを変化させる制御系の応答角周波数ωθは、想定されるモータ2の負荷変動の周波数ωLよりも大きい値に設定される。この第2の制御系の応答角周波数ωθとは、オン固定通電期間θonを制御する周波数(オン固定通電期間θonの制御周波数)である。なお、想定されるモータ2の負荷変動の周波数ωLは、想定されるモータ2の負荷変動の最大周波数であることが望ましい。
さらに、応答角周波数ωθがモータ2の負荷変動時における上記PWM制御の制御系の共振角周波数ωr(>ωL)より大きいと、オン固定通電期間θonが共振などの過渡状態(不安定状態)に追従してしまう可能性がある。
したがって、応答角周波数ωθは、上記共振角周波数ωrよりも小さい値に設定されてもよい。例えば、応答角周波数ωθは、以下の条件(1)になるように設定される。
ωL<<ωθ<<ωr …(1)
以下に、第1の実施形態に係る制御部8の概略構成の一例を、図5を用いて説明する。なお、以下に説明する制御部8の構成は、スイッチング制御として、最小損失点追従制御とPWM制御とを実行する場合の構成を例として説明する。
制御部8は、電流制御部10、最小損失点追従制御部11、キャリア波生成部12、指令値生成部13及び制御信号生成部14を備える。
電流制御部10は、モータ2の駆動電流Ipを、例えば、インバータ4に設けられた電流センサ(不図示)から取得する。また、電流制御部10は、目標値Irefを制御部8の記憶部(不図示)から読み取る。そして、電流制御部10は、駆動電流Ipと目標値Irefとの差ΔIを算出する。電流制御部10は、算出した差ΔIに対してPI演算を実行することで、差ΔIをゼロに近づけるための第1の制御指令値S1を算出する。そして、電流制御部10は、算出した第1の制御指令値S1を指令値生成部13に出力する。なお、この第1の制御指令値S1は、電圧値がVs1の信号である。
最小損失点追従制御部11は、電流検出部6が検出した入力電流Iinと、電圧検出部7が検出した入力電圧Vinとを乗算することで現在の入力電力Pin(=Iin×Vin)を算出する。そして、最小損失点追従制御部11は、算出した現在の入力電力Pinと前回の入力電力Pinとを比較して、その比較結果に応じてオン固定通電期間θonの幅を調整する。例えば、最小損失点追従制御部11は、現在の入力電力Pinが前回の入力電力Pin以上の場合には、前回の調整とは異なる方向にオン固定通電期間θoの幅を増加又は減少させる。すなわち、最小損失点追従制御部11は、前回の調整にてオン固定通電期間θoの幅を増加させた場合には現在のオン固定通電期間θonから所定の値だけ減少させた値を新たなオン固定通電期間θonとし、前回の調整にてオン固定通電期間θoの幅を減少させた場合には現在のオン固定通電期間θonから所定の値だけ増加させた値を新たなオン固定通電期間θonとする。
一方、最小損失点追従制御部11は、算出した現在の入力電力Pinと前回の入力電力Pinとを比較して、現在の入力電力Pinが前回の入力電力Pinよりも小さい場合には、前回の調整と同じ方向にオン固定通電期間θoの幅を増加又は減少させる。すなわち、最小損失点追従制御部11は、前回の調整にてオン固定通電期間θoの幅を増加させた場合には現在のオン固定通電期間θonから所定の値だけ増加させた値を新たなオン固定通電期間θonとし、前回の調整にてオン固定通電期間θoの幅を減少させた場合には現在のオン固定通電期間θonから所定の値だけ減少させた値を新たなオン固定通電期間θonとする。最小損失点追従制御部11は、設定した新たなオン固定通電期間θonを指令値生成部13に出力する。
キャリア波生成部12は、所定の周波数の周期的な信号(例えば、三角波の信号)であるキャリア波CWを生成する。そして、キャリア波生成部12は、生成したキャリア波CWを制御信号生成部14に出力する。なお、例えば、キャリア波CWは、電圧値がVcの三角波やノコギリ波状の信号である。
指令値生成部13は、最小損失点追従制御部11が求めた新たなオン固定通電期間θonの間では常にキャリア波CWの電圧値Vcよりも高い電圧値Vonになり、且つ、当該新たなオン固定通電期間θon以外の期間においては第1の制御指令値の電圧値Vs1となる信号を、最終的な指令値(第2の制御指令値)S2として求める。
制御信号生成部14は、指令値生成部13から取得した第2の制御指令値S2に基づいて制御信号を生成する。例えば、制御信号生成部14は、指令値生成部13から取得した第2の制御指令値S2と、キャリア波生成部12から取得したキャリア波CWとを比較し、キャリア波CWより第2の制御指令値の振幅(電圧値)が大きい期間には、第1の電圧(例えば、ハイレベル)V1となり、キャリア波CWより第2の制御指令値S2の電圧値が小さい期間には第1の電圧V1とは異なる第2の電圧V2(例えば、0V等のローレベル)となる制御信号を生成する。ここで、オン固定通電期間θonの期間においては、必ずキャリア波CWより第2の制御指令値の電圧値が大きくなる(Von>Vc)。そのため、制御信号生成部14が生成する制御信号は、オン固定通電期間θonにおいて常に第1の電圧V1となる。このように、制御部8は、オン固定通電期間θon以外の期間においてはPWM信号をスイッチング素子SWに出力するが、オン固定通電期間θonの期間においては強制的に第1の電圧V1をスイッチング素子SWに出力する。
次に、第1の実施形態に係る最小損失点追従制御の動作の流れについて、図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係る最小損失点追従制御のフロー図である。
まず、制御部8は、オン固定通電期間θonを予め設定された初期値θ0に設定した制御信号をスイッチング素子SW1~SW6に出力することで、インバータ4を駆動する。これにより、オン固定通電期間θon=初期値θ0の期間において、スイッチング素子SWがオン状態に制御されたインバータ4は、電源装置1から入力した入力電力Pinを交流電力に変換してモータ2に供給する。これにより、モータ2が駆動する(ステップS101)。なお、初期値θ0は、例えば、シミュレーションから得られた基準値や設計値、試験的に得られた基準値である。
次に、制御部8は、モータ2が駆動している状態において、現在のオン固定通電期間θonに、微小期間Δθon×増減フラグFを加える(ステップS102)。ここで、微小期間Δθonは、予め設定されており、最小損失点追従制御において、制御周期ごとにオン固定通電期間θonを変化させる変化量である。増減フラグFは、最小損失点追従制御においてオン固定通電期間θonを変化させる場合に、当該オン固定通電期間θonを増加させるのか、又は減少させるのかを決定するものである。例えば、増減フラグFが「+1」ならばオン固定通電期間θonを増加させ、増減フラグFが「-1」ならばオン固定通電期間θonを減少させる。なお、増減フラグFの初期値は、ステップS101において設定され、本実施形態では初期値として「+1」に設定する。ただし、増減フラグFの初期値は、「-1」でもよい。
電流検出部6は、電源装置1からインバータ4に入力する入力電流Iinを検出し、その検出した入力電流Iinを制御部8に出力する。また、電圧検出部7は、電源装置1からインバータ4に入力する入力電圧Vinを検出し、その検出した入力電圧Vinを制御部8に出力する(ステップS103)。
制御部8は、電流検出部6から取得した入力電流Iinと、電圧検出部7から取得した入力電圧Vinとを乗算することで、現在の入力電力Pin(=Iin×Vin)を算出する(ステップS104)。
制御部8は、現在の入力電力Pinを算出すると、その算出した現在の入力電力Pinと、前回の制御周期で算出した入力電力Pinとを比較する(ステップS105)。なお、説明が煩雑になることを防ぐため、前回の制御周期で算出した入力電力Pinを入力電力Prefと表記する。なお、入力電力Prefの初期値は、ステップS101において設定され、本実施形態では「0」に設定される。
制御部8は、現在の入力電力Pinと前回の入力電力Prefとを比較し、現在の入力電力Pinが、前回の入力電力Prefより小さい場合(Pin<Pref)には、増減フラグFの符号は変更しない。そして、制御部8は、現在の入力電力Pinを前回の入力電力Prefとして設定して(ステップS107)、ステップS102の処理に戻る。したがって、ステップS102の処理にて、制御部8は、現在のオン固定通電期間θonに微小期間Δθon×増減フラグFを加えて、新たなオン固定通電期間θonを設定する。したがって、制御部8は、その新たなオン固定通電期間θonを有する制御信号をスイッチング素子SWに出力する。
一方、制御部8は、現在の入力電力Pinと前回の入力電力Prefとを比較し、現在の入力電力Pinが、前回の入力電力Pref以上である場合(Pin≧Pref)には、増減フラグFの符号を反転させる(ステップS107)。そして、制御部8は、現在の入力電力Pinを前回の入力電力Prefとして設定して(ステップS106)、ステップS102の処理に戻る。したがって、ステップS102の処理にて、制御部8は、現在のオン固定通電期間θonに微小期間Δθon×増減フラグFを加えて、新たなオン固定通電期間θonを設定する。したがって、制御部8は、その新たなオン固定通電期間θonを有する制御信号をスイッチング素子SWに出力する。
このように、制御部8は、ステップS102~ステップS107を繰り返すことで、オン固定通電期間θonをパラメータとして、前回のオン固定通電期間θonから微小期間Δθonだけ増加又は減少させながら入力電力Pinが前回の値よりも小さくなるようにインバータ4をスイッチング制御する。これにより、制御部8は、オン固定通電期間θonを増加又は減少させながら最小損失点を探索することが可能となる。その結果、モータシステムAは、モータ2の回転数、モータ2やスイッチング素子SW1~6の温度、電源装置1の出力電圧、モータ2やスイッチング素子SW1~6の個体ばらつき等によらず、最小損失でモータ2を運転継続することができる。
上記第1の実施形態において、制御部8は、最小損失点追従制御の開始時において、ステップS101の処理で初期条件を設定した後に、オン固定通電期間θon(初期値θ0)に微小期間Δθon×増減フラグFを足してから(ステップS102)、入力電流Iin及び入力電圧Vinの取得(ステップS103)、入力電力Pinの演算(ステップS104)を行ったが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部8は、最小損失点追従制御の開始時においては、ステップS101の処理を行った後に、ステップS102の処理を行わずに、ステップS103,S104の処理を実行してもよい。この場合には、制御部8は、ステップS107の処理を行った後に、ステップS102の処理を行うことになる。
具体的には、図7に示すように、まず、制御部8は、初期条件を設定する。すなわち、制御部8は、スイッチ101の処理と同様に、オン固定通電期間θonを予め設定された初期値θ0に設定した制御信号をスイッチング素子SW1~SW6に出力することで、インバータ4を駆動する。さらに、制御部8は、前回の入力電力Prefを初期値「0」に、増減フラグFを初期値「+1」に設定する(ステップS201)。
初期条件が設定された後、電流検出部6は、電源装置1からインバータ4に入力する入力電流Iinを検出し、その検出した入力電流Iinを制御部8に出力する。また、電圧検出部7は、電源装置1からインバータ4に入力する入力電圧Vinを検出し、その検出した入力電圧Vinを制御部8に出力する(ステップS202)。
制御部8は、電流検出部6から取得した入力電流Iinと、電圧検出部7から取得した入力電圧Vinとを乗算することで、入力電力Pin(=Iin×Vin)を算出する(ステップS203)。
制御部8は、現在の入力電力Pinを算出すると、その算出した現在の入力電力Pinと、前回算出した入力電力Prefとを比較し(ステップS204)、現在の入力電力Pinが、前回の入力電力Prefより小さい場合(Pin<Pref)には、増減フラグFの符号は変更しない。そして、制御部8は、現在の入力電力Pinを前回の入力電力Prefとして設定する(ステップS206)。一方、制御部8は、現在の入力電力Pinと前回の入力電力Prefとを比較し、現在の入力電力Pinが、前回の入力電力Pref以上である場合(Pin≧Pref)には、増減フラグFの符号を反転させる(ステップS205)。そして、制御部8は、現在の入力電力Pinを前回の入力電力Prefとして設定する(ステップS206)。その後、制御部8は、現在のオン固定通電期間θonに、微小期間Δθon×増減フラグFを加えて(ステップS207)、ステップS202の処理に戻る。
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係るモータシステムBについて、説明する。第2の実施形態に係るモータシステムBは、第1の実施形態に係るモータシステムAと比較して、合計損失PSを求める方法が異なる点で相違する。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
図8は、第1の実施形態に係るモータシステムAの概略構成の一例を示す図である。
図8に示すように、モータシステムBは、電源装置1、モータ2、及びモータ駆動装置3Bを備える。モータ駆動装置3Bは、インバータ4及びインバータ制御部5Bを備える。インバータ制御部5Bは、交流電力検出部20、インバータ損失演算部21及び制御部8Bを備える。
交流電力検出部20は、例えば、出力端子N3とコイルLuとの間及び出力端子N5とコイルLwとの間に設けられたカレントトランス(CT)等により、モータ2に流れる相電流(駆動電流)Ipを検出する。ただし、交流電力検出部20は、モータ2に流れる相電流(駆動電流)Ipを検出できればよく、その検出方法には特に限定されない。
交流電力検出部20は、モータに印加される各相の交流電圧Vmotを検出する。交流電力検出部20は、駆動電流Ip及び交流電圧Vmotを乗算することでモータ2に入力される電力(以下、「モータ入力電力」という。)Pmotを算出する。そして、交流電力検出部20は、算出したモータ入力電力Pmotを制御部8Bに出力する。さらに、交流電力検出部20は、検出した駆動電流Ipの情報をインバータ損失演算部21に出力する。
インバータ損失演算部21は、交流電力検出部20から取得した駆動電流Ipの情報に基づいて、インバータ損失PIVを求める。そして、インバータ損失演算部21は、求めたインバータ損失PIVを制御部8Bに出力する。ここで、インバータ損失演算部21は、駆動電流Ipの情報からインバータ損失PIVを求めることができれば、その求める方法には特に限定されないが、例えば予め設定された計算式やテーブルに基づいて駆動電流Ipの情報からインバータ損失PIVを求めてもよい。これら計算式やテーブルは、例えば、駆動電流Ipに基づいてインバータ損失PIVが決定できるように、実験的又は理論的に定めればよい。予め設定されたテーブルを用いる場合には、各駆動電流Ipと、その駆動電流Ip毎に関連付けられたインバータ損失PIVとを備えるルックアップテーブルを制御部8B内の記憶部(不図示)に予め記憶されていてもよい。そして、インバータ損失演算部21は、交流電力検出部20から取得した駆動電流Ipに対応するインバータ損失PIVを上記ルックアップテーブルから取得し、取得したインバータ損失PIVを制御部8Bに出力してもよい。例えば、インバータ損失演算部21は、交流電力検出部20から取得した駆動電流Ipの情報から公知の技術を用いてインバータ損失PIVを求めてもよい。
制御部8Bは、制御部8と同様に、スイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのオン状態及びオフ状態を制御することで、インバータ4において電源装置1からの直流電力を交流電力に変換させる。例えば、制御部8Bは、U相のコイルLu、V相のコイルLv及びW相のコイルLwのそれぞれに流れる電流の位相が120度ずつずれるようにスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのオン状態及びオフ状態を制御するスイッチング制御を行う。
その際、制御部8Bは、スイッチング素子SW1~SW6のそれぞれにおいて、スイッチング素子SWをオン状態に維持する期間であるオン固定通電期間θonを変化させながら合計損失PSが最小となるようにオン固定通電期間θonを制御する最小損失点追従制御を実行する。
例えば、制御部8Bは、交流電力検出部20が算出したモータ入力電力Pmotと、インバータ損失演算部21が求めたインバータ損失PIVとを加算した値(加算値)Pcを求める。ここで、モータ2の負荷が一定である場合には、オン固定通電期間θonに対する合計損失PSの傾向と、加算値Pcの傾向とは、同一の傾向を示す。すなわち、モータ2の負荷が一定である場合には、合計損失PSが最小となるオン固定通電期間θonと、加算値Pcが最小となるオン固定通電期間θonとは、同一となる。したがって、第2の実施形態に係る制御部8Bは、加算値Pcを合計損失Psとして求め、最小損失点追従制御において、モータ2の駆動時にインバータ4のオン固定通電期間θonを変化させながら、加算値Pcが最小となるようにスイッチング素子SW1~SW6のオン状態及びオフ状態を制御する。なお、スイッチング素子SW1~SW6に対する制御部8Bのスイッチング制御は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
次に、第2の実施形態に係る最小損失点追従制御の動作の流れについて、図9を用いて説明する。図9は、第2の実施形態に係る最小損失点追従制御のフロー図である。
まず、制御部8Bは、オン固定通電期間θonを予め設定された初期値θ0に設定した制御信号をスイッチング素子SW1~SW6に出力することで、インバータ4を駆動する。これにより、オン固定通電期間θon=初期値θ0の期間において、スイッチング素子SWがオン状態に制御されたインバータ4は、電源装置1から入力した入力電力Pinを交流電力に変換してモータ2に供給する。これにより、モータ2が駆動する(ステップS301)。
次に、制御部8Bは、モータ2が駆動している状態において、現在のオン固定通電期間θonに、微小期間Δθon×増減フラグFを加える(ステップS302)。交流電力検出部20は、モータに印加される各相の交流電圧Vmotを検出する。そして、交流電力検出部20は、駆動電流Ipと交流電圧Vmotとを乗算することでモータ2に入力されるモータ入力電力Pmotを算出する。また、インバータ損失演算部21は、交流電力検出部20から取得した駆動電流Ipの情報に基づいて、インバータ損失PIVを求める(ステップS303)。そして、制御部8Bは、交流電力検出部20が算出したモータ入力電力Pmotと、インバータ損失演算部21が求めたインバータ損失PIVとを加算した加算値Pcを求める(ステップS304)。
制御部8Bは、現在の加算値Pcを算出すると、その算出した現在の加算値Pcと、前回の制御周期で算出した加算値Pcとを比較する(ステップS305)。なお、説明が煩雑になることを防ぐため、前回の制御周期で算出した加算値Pcを入力電力Prefと表記する。なお、入力電力Prefの初期値は、ステップS301において設定され、本実施形態では「0」に設定される。
制御部8Bは、現在の加算値Pcと前回の入力電力Prefとを比較し、現在の加算値Pcが、前回の入力電力Prefより小さい場合(Pc<Pref)には、増減フラグFの符号は変更しない。そして、制御部8Bは、現在の加算値Pcを前回の入力電力Prefとして設定して(ステップS307)、ステップS302の処理に戻る。したがって、ステップS302の処理にて、制御部8Bは、現在のオン固定通電期間θonに微小期間Δθon×増減フラグFを加えて、新たなオン固定通電期間θonを設定する。したがって、制御部8Bは、その新たなオン固定通電期間θonを有する制御信号をスイッチング素子SWに出力する。
一方、制御部8Bは、現在の加算値Pcと前回の入力電力Prefとを比較し、現在の加算値Pcが、前回の入力電力Pref以上である場合(Pc≧Pref)には、増減フラグFの符号を反転させる(ステップS306)。そして、制御部8Bは、現在の加算値Pcを前回の入力電力Prefとして設定して(ステップS307)、ステップS302の処理に戻る。したがって、ステップS302の処理にて、制御部8Bは、現在のオン固定通電期間θonに微小期間Δθon×増減フラグFを加えて、新たなオン固定通電期間θonを設定する。したがって、制御部8Bは、その新たなオン固定通電期間θonを有する制御信号をスイッチング素子SWに出力する。
このように、制御部8Bは、ステップS302~ステップS307を繰り返すことで、オン固定通電期間θonをパラメータとして、前回のオン固定通電期間θonから微小期間Δθonだけ増加又は減少させながら加算値Pcが前回の値よりも小さくなるようにインバータ4をスイッチング制御する。これにより、制御部8Bは、オン固定通電期間θonを増加又は減少させながら最小損失点を探索することが可能となる。その結果、モータシステムAは、モータ2の回転数、モータ2やスイッチング素子SW1~6の温度、電源装置1の出力電圧、モータ2やスイッチング素子SW1~6の個体ばらつき等によらず、最小損失でモータ2を運転継続することができる。
上記第2の実施形態において、制御部8Bは、最小損失点追従制御の開始時において、ステップS301の処理で初期条件を設定した後に、オン固定通電期間θon(初期値θ0)に微小期間Δθon×増減フラグFを足してから(ステップS302)、モータ入力電力Pmot及びインバータ損失PIVの取得(ステップS303)、加算値Pcの演算(ステップS304)を行ったが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部8Bは、最小損失点追従制御の開始時においては、ステップS301の処理を行った後に、ステップS302の処理を行わずに、ステップS303,S104の処理を実行してもよい。この場合には、制御部8Bは、ステップS307の処理を行った後に、ステップS302の処理を行うことになる。
具体的には、図10に示すように、まず、制御部8Bは、初期条件を設定する。すなわち、制御部8Bは、ステップS301の処理と同様に、オン固定通電期間θonを予め設定された初期値θ0に設定した制御信号をスイッチング素子SW1~SW6に出力することで、インバータ4を駆動する。さらに、制御部8Bは、前回の入力電力Prefを初期値「0」に、増減フラグFを初期値「+1」に設定する(ステップS401)。
初期条件が設定された後、交流電力検出部20は、駆動電流Ipと交流電圧Vmotとを演算することでモータ2に入力されるモータ入力電力Pmotを算出する。また、インバータ損失演算部21は、交流電力検出部20から取得した駆動電流Ipの情報に基づいて、インバータ損失PIVを求める(ステップS402)。
制御部8Bは、交流電力検出部20が算出したモータ入力電力Pmotと、インバータ損失演算部21が求めたインバータ損失PIVとを加算した加算値Pcを求める(ステップS403)。
制御部8Bは、現在の加算値Pcを算出すると、その算出した現在の加算値Pcと、前回算出した入力電力Prefとを比較し(ステップS404)、現在の加算値Pcが、前回の入力電力Prefより小さい場合(Pc<Pref)には、増減フラグFの符号は変更しない。そして、制御部8Bは、現在の加算値Pcを前回の入力電力Prefとして設定する(ステップS406)。一方、制御部8Bは、現在の加算値Pcと前回の入力電力Prefとを比較し、現在の加算値Pcが、前回の入力電力Pref以上である場合(Pc≧Pref)には、増減フラグFの符号を反転させる(ステップS405)。そして、制御部8Bは、現在の加算値Pcを前回の入力電力Prefとして設定する(ステップS406)。その後、制御部8Bは、現在のオン固定通電期間θonに、微小期間Δθon×増減フラグFを加えて(ステップS407)、ステップS402の処理に戻る。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
(変形例1)
第1の実施形態又は第2の実施形態において、最小損失点追従制御において、変更するオン固定通電期間θonの範囲に制限を設けてもよい。例えば、制御部8又は制御部8Bは、最小損失点追従制御におけるオン固定通電期間θonを、最小値θonMIN(最小限度値)と最大値θonMAX(最大限度値)との間の範囲(θonMIN≦θon≦θonMAX)内において変更してもよい。
(変形例2)
第1の実施形態又は第2の実施形態において、モータシステムは、スイッチング素子SW1~SW6の温度Tswを測定する第1の温度センサを備えてもよい。そして、制御部8又は制御部8Bは、最小損失点追従制御において、上記第1の温度センサで測定された温度Tswが予め設定された第1の閾値Tth1以上になった場合には、当該温度Tswが第1の閾値Tth1未満になるまで強制的にオン固定通電期間θonを増大させてもよい。例えば、制御部8又は制御部8Bは、最小損失点追従制御を行っていても、温度Tswが第1の閾値Tth1以上になった場合には、割り込み処理として強制的にオン固定通電期間θonを増大させてもよい。これにより、スイッチング素子SW1~SW6による損失(インバータ損失)が低減され、制御部8又は制御部8Bは、スイッチング素子SW1~SW6が発熱により故障することを防止することができる。なお、強制的にオン固定通電期間θonを増大させる方法として、例えば、増減フラグFの符号を強制的に「+1」に固定させる方法がある。
(変形例3)
第1の実施形態又は第2の実施形態において、モータシステムは、モータ2の温度TMを測定する第2の温度センサを備えてもよい。このモータ2の温度TMとは、例えば、コイルLu、Lv、Lwの各温度である。そして、制御部8又は制御部8Bは、最小損失点追従制御において、上記第2の温度センサで測定された温度TMが予め設定された第2の閾値Tth2以上になった場合には、当該温度TMが第2の閾値Tth2未満になるまで強制的にオン固定通電期間θonを低減させてもよい。例えば、制御部8又は制御部8Bは、最小損失点追従制御を行っていても、温度TMが第2の閾値Tth2以上になった場合には、割り込み処理として強制的にオン固定通電期間θonを低減させてもよい。これにより、モータ損失が低減され、制御部8又は制御部8Bは、コイルLu、Lv、Lwの発熱によりモータ2が故障することを防止することができる。なお、強制的にオン固定通電期間θonを低減させる方法として、例えば、増減フラグFの符号を強制的に「-1」に固定させる方法がある。
(変形例4)
第1の実施形態又は第2の実施形態において、モータシステムは、上記第1の温度センサと上記第2の温度センサとの双方を備えてもよい。そして、制御部8又は制御部8Bは、温度Tswが第1の閾値Tth1以上となり、かつ、温度TMが第2の閾値Tth2以上となった場合には、モータ2の駆動電流が低減するように制御してもよい。例えば、制御部8又は制御部8Bは、モータ2の駆動電流における目標値を下げる。これにより、インバータ損失とモータ損失との双方が低減され、スイッチング素子SW1~SW6とモータ2との発熱による故障を防止することができる。
(変形例5)
第1の実施形態において、制御部8は、電流検出部6で検出された入力電流Iinと電圧検出部7で検出された入力電圧Vinとを乗算することで入力電力Pinを取得したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、制御部8は、入力電力Pinを取得できればよく、その取得方法には特に限定されない。例えば、制御部8は、接続線L1に設けられた電力センサにより入力電力Pinを取得してもよい。また、制御部8は、モータ2の駆動電流やインバータ4の変換効率等から入力電力Pinを算出することで、当該入力電力Pinを取得してもよい。
(変形例6)
第1の実施形態又は第2の実施形態において、制御部8又は制御部8は、指令値生成部13は、最小損失点追従制御部11が求めた新たなオン固定通電期間θonの間では常にキャリア波CWの電圧値Vcよりも高い電圧値Vonになり、且つ、当該新たなオン固定通電期間θon以外の期間においては第1の制御指令値の電圧値Vs1となる信号を、最終的な指令値(第2の制御指令値)S2として求めたが、これに限定されない。例えば、制御部8は、図11に示すように、PWM信号とオン固定通電信号とを個々に生成して、スイッチング素子SWに出力してもよい。
例えば、図11に示すように、制御部8は、電流制御部10、キャリア波生成部12、最小損失点追従制御部110、PWM信号生成部140及び選択部150を備える。
最小損失点追従制御部110は、電流検出部6が検出した入力電流Iinと、電圧検出部7が検出した入力電圧Vinとを乗算することで現在の入力電力Pin(=Iin×Vin)を算出する。そして、最小損失点追従制御部110は、算出した現在の入力電力Pinと前回の入力電力Pinとを比較して、現在の入力電力Pinが前回の入力電力Pinよりも大きい場合には、増減フラグFの符号を反転させ、現在のオン固定通電期間θonにΔθon×増減フラグFを加えて新たなオン固定通電期間θonだけ常に第1の電圧V1であるオン固定通電信号を生成する。一方、最小損失点追従制御部110は、算出した現在の入力電力Pinと前回の入力電力Pinとを比較して、現在の入力電力Pinが前回の入力電力Pinよりも小さい場合には、増減フラグFの符号を変えずに、現在のオン固定通電期間θonにΔθon×増減フラグFを加えて新たなオン固定通電期間θonだけ常に第1の電圧V1であるオン固定通電信号を生成する。そして、最小損失点追従制御部110は、生成したオン固定通電信号を選択部150に出力する。
PWM信号生成部140は、電流制御部10が生成した第1の制御指令値S1と、キャリア波生成部12から取得したキャリア波CWとを比較し、キャリア波CWより第1の制御指令値S1の電圧値が大きい期間には、第1の電圧V1となり、キャリア波CWより第1の制御指令値S1の電圧値が小さい期間には第1の電圧V1とは異なる第2の電圧V2となるPWM信号を生成する。そして、PWM信号生成部140は、生成したPWM信号を選択部150に出力する。
選択部150は、最小損失点追従制御部110から電圧値V1のオン固定通電信号を取得した場合には、当該オン固定通電信号を制御信号としてスイッチング素子SWに出力する。一方、選択部150は、最小損失点追従制御部110から電圧値V1のオン固定通電信号を取得しない場合には、PWM信号生成部140から取得するPWM信号を制御信号としてスイッチング素子SWに出力する。このように、選択部150は、最小損失点追従制御部110から電圧値V1のオン固定通電信号を取得した場合には、制御信号として当該オン固定通電信号を選択し、当該オン固定通電信号を取得しない場合には、PWM信号を制御信号として選択してスイッチング素子SWに出力する。
なお、変形例7及び図11で説明した方法は、第2の実施形態に係る制御部8Bに適用可能である。ただし、その場合には、制御部8Bの最小損失点追従制御部110は、現在の加算値Pcと前回の加算値とを比較することになる。
上述したように、本発明者は、オン固定通電期間θonが高くなるにつれて、モータ損失PMが減少する傾向にあるともにインバータ損失PIVが増加する傾向にあることを発見し、合計損失PSにはオン固定通電期間θonをパラメータとする最小損失点が存在することを見出した。本実施形態に係るモータ駆動装置3は、このような知見に基づいてなされたものであって、インバータ4を構成するスイッチング素子SW1~SW6のオン固定通電期間θonを変化させながら、モータ損失PMとインバータ損失PIVとを含む合計損失PSが最小となるようにスイッチング素子SW1~SW6をスイッチング制御する制御部8又は制御部8Bを備える。
このような構成によれば、モータ2の負荷変動が発生した場合であっても、合計損失PSを常に最小損失となるように維持することができる。そのため、モータ2の負荷変動によりモータシステムで発生する損失を低減することができる。
例えば、制御部8は、電源装置1からインバータ4に入力する入力電力Pinが最小となるようにスイッチング素子SW1~SW6のオン固定通電期間θonを変化させてもよい。例えば、制御部8Bは、交流電力検出部20が算出したモータ入力電力Pmotと、インバータ損失演算部21が求めたインバータ損失PIVとを加算した値(加算値)Pcが最小となるようにスイッチング素子SW1~SW6のオン固定通電期間θonを変化させてもよい。
このように、オン固定通電期間θonは、固定値ではなく、合計損失PSに応じて変動する変動値である。
また、制御部8又は制御部8Bは、モータ2の駆動電流が目標値に追従するようにその駆動電流をフィードバック制御する構成を備えてもよい。そして、制御部8又は制御部8Bは、オン固定通電期間θonの制御周波数は、負荷変動時におけるフィードバック制御の共振周波数よりも小さく、かつ、モータ2の負荷変動の周波数よりも大きい値であってもよい。
このような構成によれば、最小損失点追従制御において設定されるオン固定通電期間θonは、共振などの過渡状態には追従せずに、モータ2の負荷変動に十分に応答して追従できる。
また、モータシステムA又はモータシステムBは、スイッチング素子SW1~SW6の温度Tswを測定する第1の温度センサを更に備えてもよい。そして、制御部8又は制御部8Bは、第1の温度センサにより測定された温度Tswが第1の閾値Tth1以上になった場合には、強制的にオン固定通電期間θonを低減させてもよい。
このような構成によれば、インバータ損失が低減され、スイッチング素子SW1~SW6が発熱により故障することを防止することができる。
また、モータシステムA又はモータシステムBは、モータ2の温度を測定する第2の温度センサを更に備えてもよい。そして、制御部8又は制御部8Bは、第2の温度センサにより測定された温度TMが第2の閾値Tth2以上になった場合には、強制的にオン固定通電期間θonを増加させてもよい。
このような構成によれば、モータ損失が低減され、コイルLu、Lv、Lwの発熱によりモータ2が故障することを防止することができる。
なお、上述した制御部8又は制御部8Bの全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、上記制御部8又は制御部8Bの全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。