JP7211043B2 - 位相差フィルム - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、以下を提供する。
構造性複屈折を発現する、ラメラ状の相分離構造を含み、
前記相分離構造は、前記重合単位Aを主成分とする相(A)と、前記重合単位Bを主成分とする相(B)とを含み、
下記式(1)及び(2)を満たす、位相差フィルム。
f(B)>0.5 (1)
D(A)>D(B) (2)
ここで、f(B)は、前記共重合体Pにおける、前記重合単位Bの総重量比率を表し、
D(A)=ReA(450)/ReA(550)であり、
D(B)=ReB(450)/ReB(550)であり、
ReA(450)は、前記重合単位Aからなる重合体(A)から形成されたフィルム(A)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReA(550)は、前記フィルム(A)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(450)は、前記重合単位Bからなる重合体(B)から形成されたフィルム(B)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(550)は、前記フィルム(B)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表す。
[2] 更に下記式(3)を満たす、[1]に記載の位相差フィルム。
D(A)≧1.06 (3)
[3] 更に下記式(4)を満たす、[1]又は[2]に記載の位相差フィルム。
(D(A)-D(B))≧0.04 (4)
[4] 波長550nmで測定された面内方向レターデーションRe(550)が、0nm以上10nm以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[5] 波長450nmで測定された厚み方向レターデーションRth(450)の、波長550nmで測定された厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0以上1未満である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[6] 前記厚み方向レターデーションRth(450)の、前記厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0.75以上0.95以下である、[5]に記載の位相差フィルム。
[7] 前記ラメラ状の相分離構造における前記相(A)及び前記相(B)の厚みが、それぞれ50nm以下である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[8] 前記重合体(A)の屈折率n(a)と前記重合体(B)の屈折率n(b)との差の絶対値(|n(a)-n(b)|)が、0.05以上である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[9] 前記相分離構造における相間距離が、200nm以下である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[10] 前記共重合体Pが、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有するブロック重合体である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[11] 前記共重合体Pが、トリブロック共重合体P’を含み、前記トリブロック共重合体P’は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)トリブロック共重合体である、[1]~[10]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[12] 前記共重合体Pが、ペンタブロック共重合体P”を含み、前記ペンタブロック共重合体P”は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)ペンタブロック共重合体である、[1]~[11]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
本実施形態の位相差フィルムは、樹脂Cからなる。
樹脂Cは、特定の共重合体Pを含有する。共重合体Pは、重合単位Aと重合単位Bとを含む。共重合体Pは、好ましくは、重合単位Aを主成分とするブロック(A)、及び重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有するブロック共重合体である。一般に、ブロック共重合体とは、複数種類のブロックが連結された分子構造を有する重合体であり、それぞれのブロックは、重合単位が連結することにより構成される鎖である。本発明の一実施形態における特定のブロック共重合体は、特定のブロック(A)及びブロック(B)を有する。以下の説明においては、かかる特定のブロック共重合体を、単に「ブロック共重合体」という場合がある。ここで、あるブロックにおいて主成分である重合単位とは、当該ブロックを構成する重合単位の全重量に対して、50重量%以上である重合単位をいう。
式(A)においては、
好ましくは、R1が水素原子である。
好ましくは、R2及びR3が水素原子である。
好ましくは、RCがナフチル基である。
より好ましくは、R2及びR3が水素原子であり且つRCがナフチル基であるか、又は、R2及びR3が水素原子であり且つR1が水素原子である。更に好ましくは、R2及びR3が水素原子であり、RCがナフチル基であり、且つR1が水素原子である。
共重合体Pは、重合単位Aとして1種のみを単独で有していてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて有していてもよい。したがって、重合単位Aを形成するための単量体(a)としては、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
共重合体Pは、重合単位Bとして1種のみを単独で有していてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて有していてもよい。したがって、重合単位Bを形成するための単量体(b)としては、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
共重合体Pがブロック(B)を有する場合、ブロック(B)は、重合単位B以外に任意の重合単位を有しうる。かかる任意の重合単位の例としては、単量体(b)が重合してなる重合単位であって水素化されていない二重結合が残存するもの、並びに単量体(b)と共重合可能な任意の単量体の重合により形成される単位及び当該単位の水素化により形成される単位が挙げられる。
ただし、樹脂Cの光学的特性及び機械的特性の発現の観点から、ブロック(A)における重合単位Aの割合及びブロック(B)における重合単位Bの割合はいずれも高いことが好ましい。ブロック(A)における重合単位Aの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であり、特に好ましくは、ブロック(A)は重合単位Aのみからなる。ブロック(B)における重合単位Bの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であり、特に好ましくは、ブロック(B)は重合単位Bのみからなる。
直線型ブロック共重合体の例としては、ブロック(A)及びブロック(B)が連結した(A)-(B)のブロック構成を有するジブロック共重合体;ブロック(A)、ブロック(B)及びもう一つのブロック(A)がこの順に連結した(A)-(B)-(A)のブロック構成を有するトリブロック共重合体(本願において、「トリブロック共重合体P’」という場合がある);3つのブロック(A)及び2つのブロック(B)が、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)の順に連結したブロック構成を有する、ペンタブロック共重合体(本願において、「ペンタブロック共重合体P”」という場合がある);並びにそれより多数のブロックが連結したブロック構成を有する直線型ブロック共重合体が挙げられる。多数のブロックが連結したブロック構成の例としては、(A)-((B)-(A))n-(B)-(A)、及び(B)-((A)-(B))n-(A)-(B)(nは1以上の整数)のブロック構成が挙げられる。
グラフト型ブロック共重合体の例としては、ブロック(A)に、側鎖としてブロック(B)が連結した(A)-g-(B)のブロック構成を有するブロック共重合体が挙げられる。
位相差フィルムは、構造性複屈折を発現する、ラメラ状の相分離構造を含む。相分離構造は、位相差フィルムを構成する樹脂Cの層内に形成される。樹脂Cの相分離構造とは、樹脂Cにおける共重合体Pの重合単位Aで構成される部分(例えばブロック(A))と重合単位Bで構成される部分(例えばブロック(B))の自己組織化により、層内において、重合単位Aを主成分とする相(相(A)ともいう。)と、重合単位Bを主成分とする相(相(B)ともいう。)とが、区別しうる別々の相に分離することをいう。以下の説明においては、これらの相を単に「重合単位Aの相」及び「重合単位Bの相」ということがある。ラメラ状の相分離構造とは、層状の相(A)と層状の相(B)とが交互に重なりあった構造を意味する。このような相分離構造を呈した配向層は、構造が光の波長よりも十分に小さい場合に構造性複屈折を発現しうる。
ここで、ある相において、主成分である重合単位とは、相を構成する重合単位の全重量に対して、50重量%以上含まれる重合単位をいう。
f(B)>0.5 (1)
f(B)は、共重合体Pの製造のための材料及び製造の操作を適宜調整することにより調整しうる。
D(A)>D(B) (2)
ここで、D(A)=ReA(450)/ReA(550)であり、D(B)=ReB(450)/ReB(550)である。位相差フィルムが、式(1)及び式(2)を満たすことで、位相差フィルムが逆波長分散性を備えうる。
ReA(550)は、フィルム(A)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(450)は、重合単位Bからなる重合体(B)から形成されたフィルム(B)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(550)は、フィルム(B)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表す。
D(A)≧1.06 (3)
D(A)は、好ましくは1.06以上、より好ましくは1.07以上、更に好ましくは1.08以上であり、1.20以下としうる。D(A)の範囲が前記範囲にあることで、より効果的に位相差フィルムに逆波長分散性を付与しうる。
(D(A)-D(B))≧0.04 (4)
(D(A)-D(B))は、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、0.10以下としうる。(D(A)-D(B))の範囲が前記範囲にあることで、より効果的に位相差フィルムに逆波長分散性を付与しうる。
相間距離の調整は、共重合体Pの分子構造を調整することにより行いうる。例えば共重合体Pとしてブロック共重合体を採用し、ブロック(A)及び(B)の長さ等の要素を適宜調整することにより行いうる。
本実施形態の位相差フィルムは、樹脂Cから従前公知の方法により製造されうる。製造方法の例としては、押出成形法、プレス加工法、及び溶剤キャスト法が挙げられる。中でも、ラメラ状の相分離構造を発現しやすくする観点から、プレス加工法が好ましい。
本実施形態の位相差フィルムは、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置の構成要素として用いうる。
(フィルムのレターデーション)
位相差測定装置(王子計測機器(株)製「KOBRA-21-ADH」)を用いてフィルムのレターデーションを測定した。
フィルムを2mm×4mmの大きさにカットし、それらを厚み方向に30枚重ねてフォルダに固定し、小角X線散乱測定施設(あいちSR、ビームライン8S3)を用い、カメラ長4m、X線エネルギー8.2KeV、測定qレンジ:約0.06~3nm-1、1試料あたりの露光時間60秒の条件で散乱パターンを得た。得られた散乱パターンを理論曲線とフィッティングして相分離構造を決定し、各相の厚み及び相間距離を算出した。
(D(A)の測定)
(重合体(A)の製造)
乾燥し、窒素ガスで置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン500mL、重合触媒としてn-ブチルリチウム0.29mmolを入れた後、単量体(a)として2-ビニルナフタレン7.0gを添加して25℃で1時間反応させ、重合反応を行った。反応混合物を大量の2-プロパノールに注いで、重合体を沈殿させ分取した。得られた重合体をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ重量平均分子量(Mw)は100000であった。熱機械的分析装置(TMA)により測定した重合体のガラス転移温度は145℃であった。
得られた重合体を粉砕機により粉砕し粉体とした。得られた粉体を一対のポリイミドフィルム(各厚み100μm)の間に挟み積層体とし、積層体を加圧した。加圧は、電熱加圧装置を用いて行った。加圧の条件は、温度280℃、圧力40MPa、加圧時間2分間とした。加圧終了後、圧を解放して空気中で室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを除去した。この操作により、厚み100μmの未延伸である、プレスフィルム(A)を作製した。
作製したプレスフィルム(A)を、加熱式引張試験機を用いて、チャック間80mm、延伸速度100%/分、温度155℃の条件で1.5倍に一軸延伸し、延伸フィルム(フィルム(A))を得た。波長550nmで測定されたフィルム(A)の、面内方向におけるレターデーションRe(550)は、140nmであった。また、フィルム(A)の、Re(450)/Re(550)の値(D(A))は、1.08であった。
(重合体(B)の製造)
乾燥し窒素ガスで置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン100mL、重合触媒としてn-ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液270μL(0.43mモル)を入れた。その後、単量体(b)としてのブタジエンの25wt%トルエン溶液64gを添加し、更に50℃で1時間反応させ重合体を得た。GPC測定より、重合体の数平均分子量(Mn)は80000、重量平均分子量(Mw)は85000、分子量分布は1.06であった。1H-NMR測定より、オレフィン部分の積分値の割合から、重合体は、89%のポリ(1,4-ブタジエン)、11%のポリ(1,2-ブタジエン)により構成されていた。
得られた重合体(B)としての水添重合体の塊2gを一対のポリイミドフィルム(各厚み100μm)の間に挟み積層体とし、積層体を加圧した。加圧は、電熱加圧装置を用いて行った。加圧の条件は、温度25℃、圧力20MPa、加圧時間2分間とした。加圧終了後、圧を解放し、ポリイミドフィルムを除去した。この操作により、厚み100μmの未延伸である、プレスフィルム(B)を作製した。
作製したプレスフィルム(B)を、加熱式引張試験機を用いて、チャック間80mm、延伸速度100%/分、温度25℃の条件で3倍に一軸延伸し、延伸フィルム(フィルム(B))を得た。波長550nmで測定されたフィルム(B)の、面内方向におけるレターデーションRe(550)は、140nmであった。また、フィルム(B)の、Re(450)/Re(550)の値(D(B))は1.03であった。
JA-ウーラム社製エリプソメータ「M-2000U]を用いて、前記プレスフィルム(A)及びプレスフィルム(B)について波長550nmでの屈折率を測定した。プレスフィルム(A)の屈折率(n(a))は、1.67であった。プレスフィルム(B)の屈折率(n(b))は、1.53であった。
(ネガティブAプレートの作製)
共押出成形により、[1]層(15μm)-[3]層(5μm)-[2]層(100μm)-[3]層(5μm)-[1]層(15μm)をこの順で備える、長尺の未延伸積層体フィルムを得た。ここで、[1]層は、ノルボルネン系重合体(日本ゼオン(株)、ゼオノア1020、ガラス転移温度105℃)からなる。[2]層は、スチレン-無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)、ダイラークD332、ガラス転移温度130℃、オリゴマー含有量3重量%)からなる。[3]層は、変性エチレン-酢酸ビニル共重合体(三菱化学(株)、モディックAPA543、ビカット軟化点80℃)からなる。
得られた延伸フィルムの波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe(550)、及び厚み方向のレターデーションRth(550)を、前記の方法で測定した。Re(550)は150nmであり、Rth(550)は-75nmであり、面内遅相軸は長手方向に垂直であり、そのばらつきは±0.05°であり、残留揮発成分含有量は0.01重量%以下であった。すなわち、得られた延伸フィルムは、面内遅相軸が長手方向に垂直である、ネガティブAプレートであった。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。次いで、評価対象の位相差フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の一方の表面に貼り付けた。次に、前記で作製した延伸フィルム(ネガティブAプレート)を、評価対象の位相差フィルムの表面に、接着剤を用いて貼り付けた。このとき、前記偏光子の吸収軸と、位相差フィルムの遅相軸とが垂直になるように配置した。厚み80μmのセルローストリアセテートフィルム(富士フイルム(株)製「TD-80UF」)を用意し、片面に鹸化処理を行った。次いで、偏光子の裏面(位相差フィルムが貼合されていない側の面)と、前記セルローストリアセテーロフィルムの鹸化処理された面とを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ、視認側偏光板(P1)を作製した。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。また、市販のセルロースアシレートフィルム1(富士フイルム(株)製「Z-TAC」)を用意し、鹸化処理した。次いで、偏光子の一方の面に、前記セルロースアシレートフィルム1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付けた。市販のセルローストリアシレートフィルム2(富士フイルム(株)製「フジタックTD80UF」)を用意し、鹸化処理を行った。次いで、偏光子の他方の面に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理されたセルローストリアシレートフィルム2を貼り付け、70℃で10分間以上乾燥して、偏光板(P2)を作製した。
IPSモードの液晶テレビ(松下電器産業(株)社製「TH-32LX500」)から、液晶セルを取り出し、視認側及びバックライト側に貼られてあった偏光板、及び光学フィルムを剥がした。この液晶セルは、電圧無印加状態及び黒表示時では液晶分子がガラス基板間で実質的に平行配向しており、その遅相軸方向は画面に対して水平方向であった。上記の平行配向セルの上下のガラス基板に、視認側偏光板として作製した前記偏光板(P1)、及びバックライト側偏光板として作製した偏光板(P2)を、粘着剤を用いて貼り合わせた。偏光板(P1)については、評価対象の位相差フィルムを液晶セルガラス基板に接触させて貼合し、偏光板(P2)については、セルローストリアシレートフィルム1(Z-TACフィルム)を液晶セルガラス基板に接触させて貼合した。また、偏光板(P1)のそれぞれの吸収軸と液晶セルの遅相軸とが垂直になるようにし、偏光板(P1)と偏光板(P2)のそれぞれの吸収軸が直交するように配置した。このようにして偏光板を貼り合せた液晶セルを、再度、液晶テレビに組み込み、表示性能評価用の液晶表示装置を作製した。
前記で作製した液晶表示装置を、正面方向及び傾斜方向から目視で観察し、光漏れ及びカラーシフトを評価した。
(共重合体Pの製造)
乾燥し窒素ガスで置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン100mL、重合触媒としてn-ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液270μL(0.43mモル)を入れた。その後、耐熱反応器に、単量体(a)としての、2-ビニルナフタレン(芳香族ビニル系化合物)の25wt%トルエン溶液10gを添加して25℃で1時間反応させ、一段階目の重合反応を行った。一段階目の重合反応の終了後、重合体の一部を採取し、テトラヒドロフランを溶剤とするGPCによる分子量の測定から、数平均分子量(Mn)が18300、重量平均分子量(Mw)が19700、分子量分布が1.08であることを確認した。
前記項目(共重合体Pの製造)で得られたトリブロック共重合体を、樹脂Cとして用いた。樹脂Cを、粉砕機により粉砕し粉体とした。得られた粉体を一対のポリイミドフィルム(各厚み100μm)の間に挟み積層体とし、積層体を加圧した。加圧は、電熱加圧装置を用いて行った。加圧の条件は、温度290℃、圧力40MPa、加圧時間5分間とした。加圧終了後、圧を解放して空気中で室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを除去した。この操作により、厚み75μmの位相差フィルム1を作製した。
日本ゼオン製のシクロオレフィン樹脂「ゼオノア1020」を用意した。この樹脂を、押し出し機を用いて樹脂温260℃で溶融し、幅400mmのダイから表面温度90℃の冷却ロール状にシート状に押し出し、厚み100μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、フロート方式の縦延伸機を用いて110℃で流れ方向に1.5倍に延伸し、更にテンターを用いて幅方向に110℃で1.4倍に延伸し、厚み58μmの位相差フィルムC1を得た。
実施例1において、重合の第2段階において添加するブタジエンの量を調整し、2-ビニルナフタレン:ブタジエンの重量比67:33(すなわち、重量分率wA=0.67、重量分率wB=0.33)のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のガラス転移温度は123℃であった。このブロック共重合体を樹脂Cの代わりに用いた以外は実施例1の(位相差フィルムの作製)と同様にして、厚み75μmの位相差フィルムC2を得た。
共重合体を含んでいない比較例1に係る位相差フィルムC1は、逆波長分散性を示さず、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトの評価が悪い。
また、ラメラ状の相分離構造を有していても、f(B)(比較例2においては、重合単位Bの共重合体Pにおける重量分率wB)>0.5を満たさない位相差フィルムC2も、逆波長分散性を示さず、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトの評価が悪い。
これに対して、実施例1に係る、f(B)(実施例1においては、重合単位Bの共重合体Pにおける重量分率wB)>0.5を満たし、ラメラ状の相分離構造を有する位相差フィルム1は、逆波長分散性を示し、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトの評価が良好である。
Claims (13)
- 重合単位Aと重合単位Bとを含む共重合体Pを含む樹脂Cからなり、
前記重合単位Aは、下記一般式(A)で表される単位であり、
前記重合単位Bは、下記一般式(B-1)又は一般式(B-2)で表される単位であり、
構造性複屈折を発現する、ラメラ状の相分離構造を含み、
前記相分離構造は、前記重合単位Aを主成分とする相(A)と、前記重合単位Bを主成分とする相(B)とを含み、
下記式(1)及び(2)を満たす、位相差フィルム。
f(B)>0.5 (1)
D(A)>D(B) (2)
ここで、f(B)は、前記共重合体Pにおける、前記重合単位Bの総重量比率を表し、
D(A)=ReA(450)/ReA(550)であり、
D(B)=ReB(450)/ReB(550)であり、
ReA(450)は、前記重合単位Aからなる重合体(A)から形成されたフィルム(A)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReA(550)は、前記フィルム(A)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
前記フィルム(A)は、前記重合体(A)の粉体を2枚のポリイミドフィルムの間に挟んで積層体とし、前記積層体を、温度280℃、圧力40MPa、2分間の条件で加圧してから前記ポリイミドフィルムを除去して厚み100μmのプレスフィルム(A)を製造し、次いで、前記プレスフィルム(A)を1.5倍に一軸延伸することにより製造され、
ReB(450)は、前記重合単位Bからなる重合体(B)から形成されたフィルム(B)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(550)は、前記フィルム(B)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
前記フィルム(B)は、前記重合体(B)の粉体を2枚のポリイミドフィルムの間に挟んで積層体とし、前記積層体を、温度25℃、圧力20MPa、2分間の条件で加圧してから前記ポリイミドフィルムを除去して厚み100μmのプレスフィルム(B)を製造し、次いで、前記プレスフィルム(B)を3倍に一軸延伸することにより製造される。
R C は、フェニル基、ビフェニルイル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基、及びターフェニルイル基からなる群より選択される基であり、
R 1 ~R 3 のそれぞれは独立に、水素原子及び炭素数1~12のアルキル基からなる群より選択される基である。)
R 4 ~R 9 のそれぞれは独立に、水素原子及び炭素数1~6のアルキル基からなる群より選択される基である。) - 更に下記式(3)を満たす、請求項1に記載の位相差フィルム。
D(A)≧1.06 (3) - 更に下記式(4)を満たす、請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
(D(A)-D(B))≧0.04 (4) - 波長550nmで測定された面内方向レターデーションRe(550)が、0nm以上10nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 波長450nmで測定された厚み方向レターデーションRth(450)の、波長550nmで測定された厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0以上1未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 前記厚み方向レターデーションRth(450)の、前記厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0.75以上0.95以下である、請求項5に記載の位相差フィルム。
- 前記ラメラ状の相分離構造における前記相(A)及び前記相(B)の厚みが、それぞれ50nm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 前記重合体(A)の屈折率n(a)と前記重合体(B)の屈折率n(b)との差の絶対値(|n(a)-n(b)|)が、0.05以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 前記相分離構造における相間距離が、200nm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 前記共重合体Pが、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有するブロック重合体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 前記共重合体Pが、トリブロック共重合体P’を含み、前記トリブロック共重合体P’は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)トリブロック共重合体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 前記共重合体Pが、ペンタブロック共重合体P”を含み、前記ペンタブロック共重合体P”は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)ペンタブロック共重合体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 請求項1~12のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法であって、
前記樹脂Cを、プレス加工法により加工することを含む、製造方法。
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