近年、ユーザーは、まつげエクステに対して、「まつげエクステに持続性」を求める傾向が強い。そのため、ユーザーは、自らが使用する化粧品等によって持続力が低下しないか意識する。まつげエクステの持続力は、接着剤が最も苦手とする応力「剥離」によって低下するものと考えられているおり、この「剥離」とは、具体的には、まつげエクステ人工毛の根本部や先端部に指や化粧ブラシなどが引っかかる「剥がそうとする力」のことである。この「剥がそうとする力」に強い接着剤の開発が求められているところであるが、この「剥離」は物理的刺激のみならず、化粧品などの種類によっては強度を低下させることがあるものと予想される。影響を及ぼす原料名などは現時点ではわかっていないが、まつげエクステユーザーには適していないと一般的に言われてきた「オイルクレンジング」で比較試験をしてみたところ、「製品によって剥離強度が明らかに弱くなるものがあること」がわかった。同時に、剥離強度が弱くなっていないと予測されるオイルクレンジングもあることがわかった。
まつげエクステの装着状態に類似する「接着剤の剥離試験方法」は、JIS規格はもちろん接着剤業界でも定まっておらず前例もない。JIS規格に基づく方法では、一般的には板状の試料を素材別に用意し、それに接着剤を塗布して試験を行うが、その場合、接着面が開放状態に近いまつげエクステとは状態が違いすぎるため試験に時間がかかりすぎるだけでなく、使用実態と違いすぎるという問題があった。そして、まつげエクステの多くは「引張」の応力によって外れるのではなく、「剥離」によって剥がれているため剥離試験でなければならない。「引張」の応力に対する接着力は、無理に引張ると、人工まつ毛だけでなくまつ毛ととも抜けてしまうほど強い。
まつげエクステに使用する素材は様々であるが、接着面は人工毛とまつ毛部分しかない糸状の細さである。そして、まつげエクステの接着強度は、接着剤の性能だけでなく、様々な要因で強くなることもあれば弱くなることもある。それら様々な試験を実施するには、様々な物を試料とできる利用実態に即した試験が求められる。本願発明者は、従来の接着剤の接着強度試験では、まつげエクステンションの接着強度をきちんと測定することができないことを踏まえて、まつげエクステンションに適した接着強度試験を開発した。本願発明者が開発した接着強度試験によれば、細い人工毛(まつげエクステンション)の接着強度を測定することができるとともに、接着剤が何分で十分な接着力を示すかを確認でき、さらには接着箇所に液体(または化粧品)が付与されたときの接着力を調べることができる。したがって、まつげエクステンション用の接着強度試験に適していることがわかった。
また、本試験を行うことにより「接着剤の剥離強度」だけでなく、まつげエクステの機能性を低下させないかの評価を行うことができる。さらに、接着性能低下と判断される場合、溶解による刺激物質の大量溶出の疑いを知ることができることから、まつげエクステユーザーの眼や肌など人体に悪影響を及ぼす製品の流通を未然に防止することも可能となり安全性の向上にも貢献する。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図3(a)から(c)は、本実施形態における剥離用試料糸200を説明する図である。図3(a)は、本実施形態の剥離用試料糸200の構成を示している。図3(b)は、2つの剥離用試料糸200を互いに接着した構成を示す図である。そして、図3(c)は、図3(b)に示した接着した剥離用試料糸200を剥離する様子を示している。
本実施形態の剥離用試料糸200は、まつげエクステンション用の接着強度を試験するための剥離用試料糸(試験キット)であり、接着延長部210とフック部220とを備えている。図3(a)に示すように、本実施形態の剥離用試料糸200は、接着領域250を有する接着延長部210と、接着延長部210の一端に形成されたフック部220とから構成されており、フック部220は、環状部材である。図3(b)に示すように、接着延長部210における接着領域250は、2本の接着延長部210のうちの接着剤270が付与される部位である。
本実施形態の接着延長部210は、化学繊維からなり、樹脂材料(特に、ポリブチレンテレフタレート(PBT))から構成されている。さらに説明すると、接着延長部210は、まつげエクステンションと同じ材料(同じ繊維)から構成されている。本実施形態のフック部220は、1本の化学繊維の一部(先端部)を環状になるように結ぶことで形成している。図示した例の剥離用試料糸200においては、接着延長部210の長さは70mmであり、フック部220の長さは20mmである。また、接着延長部210における接着領域250の長さは、50mmである。なお、これらの長さは、本実施形態の構成の一例であり、他の長さのものを採用しても構わない。また、接着延長部210の太さ(直径、または、幅)は、製品として提供されるまつげエクステンションの太さ(直径、または、幅)に対応したもの(特に、同じもの)にすることが好ましい。
図3(b)は、図3(a)に示した剥離用試料糸200の2本を接着して一体化した構成を示している。具体的には、図3(b)に示した構造は、2本の剥離用試料糸200を揃えて、接着延長部210の接着領域250に接着剤270を塗布して硬化させることによって接着固定させてものである。接着剤270の種類、量、硬化時間などの条件は、本実施形態の接着強度試験に応じて変更することができる。
そして、図3(c)に示すようにして、2本の剥離用試料糸200を接着したサンプルを剥離することによって、接着強度試験を実行する。具体的には、第1の接着延長部210Aに接続されている第1フック部220Aを、昇降装置(昇降機)の固定部280の取付部(引っ掛け部)281に取り付ける(引っ掛ける)。そして、第2の接着延長部210Bに接続されている第2フック部220Bを、昇降装置(昇降機)の上昇部(昇降部)285の取付部(引っ掛け部)282に取り付ける(引っ掛ける)。次いで、矢印290に示すように、昇降機の上昇部285を上にあげると、接着延長部210A・210Bの接着領域250(接着剤270)に応力が加わり、最後には、接着領域250は剥離する。そして、このような剥離までの状態を測定することにより、本実施形態の接着強度試験の結果を得ることができる。
図4は、本実施形態の接着強度試験方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態の接着強度試験方法は、まつげエクステンション用の接着強度を試験する方法であり、以下に説明するように実行する。
まず、図3(a)に示した剥離用試料糸200を用意する(工程S100)。次いで、図3(b)に示すように、剥離用試料糸200の接着を行う(工程S200)。具体的には、剥離用試料糸200の接着延長部210における接着領域250に接着剤270を塗布して硬化させる。
次に、図3(c)に示すように、互いに接着させた剥離用試料糸200を、昇降機(280、285)に取り付ける(工程S300)。具体的には、剥離用試料糸200の第1ループ部220A(フック部)を固定部280に引っ掛けるとともに、剥離用試料糸200の第2ループ部220B(フック部)を上昇部285に引っ掛ける。
次いで、昇降機の上昇部285を上昇(矢印290)させることによって、剥離用試料糸200の剥離、および、接着強度の計測を実行する(工程S400)。その後は、計測した接着強度データの解析を実行する(工程S500)。そして、その解析から、剥離用試料糸200(接着延長部210)および接着剤270の強度の評価を行う。
本実施形態の接着強度試験方法では、剥離用試料糸200の接着延長部210の人工毛(樹脂材料)および接着剤270に基づく接着強度の評価だけでなく、接着領域250に、液体(水、お湯)、または、化粧品(例えば、クリーム、パウダー、スプレー(噴霧物質))が付着した場合の影響を測定・評価することができる。特に、まつげエクステンションを装着した際、まつげエクステンション(または、地まつげ)に液体(水、お湯)や化粧品が付着することがあり、そのときにおける接着強度を評価することが好ましいことが多い。言い換えると、単に、接着力が強い接着剤270を用いたり、接着剤270とまつげエクステンション(樹脂繊維)との接着の相性を調べるだけでは、まつげエクステンションの持続力(接着力、装着力)の評価は足りず、液体や化粧品が付着したときの影響(持続力に対する影響)を調べることが重要な場合が多い。本実施形態では、剥離用試料糸の接着工程(S200)のときに液体や化粧品を付着させるか、昇降機への取付工程(S300)のときに液体や化粧品を付着させて、その状態で、剥離及び計測の実行(S400)を行って、液体や化粧品が付着したときの計測データの解析(S500)を行うことができる。
また、本実施形態の接着強度試験方法では、接着剤270による接着時間に基づく接着強度の計測を行うことができる。具体的には、剥離用試料糸200の接着工程(S200)を行った後、接着硬化時間を変更しながら、昇降機への取付工程(S300)、および、剥離及び計測の実行(S400)を行うことがで、接着時間に基づく評価を行うことができる。さらに説明すると、接着硬化時間が24時間(またはそれ以上)での計測でなくても、例えば、12時間、6時間(または、3時間、2時間、1時間)のものを対比させることによって、接着硬化時間を変化させたときの影響を検討することができる。さらには、硬化時間が、30分、10分、5分(またはそれ以下)のようなものと比較検討を行うことも可能である。
次に、図5から図7を参照しながら、本実施形態の試験装置300について説明する。図5は、本実施形態の試験装置300の構成を示している。図5に示した試験装置300は、昇降機350および強度解析装置400を備えている。
昇降機350は、ベース部310と、引っ掛け作業部320と、昇降ヘッド(計測器、または、強度測定器)330とから構成されている。ベース部310には、作業ダイヤル312が設けられており、昇降ヘッド330の高さを手動で(ダイヤル312で)調整することができる。本実施形態の昇降ヘッド(計測器)330は、昇降機350の昇降タワーに取り付けられており、昇降機350内(例えば、ベース部310内)に配置されたモータによって昇降(上昇)・下降することができる。また、昇降ヘッド330は、強度を計測する計測器(強度測定器)であり、昇降ヘッド330に加わる力の強さ(強度)を測定する機構を有している。
また、引っ掛け作業部320では、一方のフック部220(環状部材220A)に引っ掛けることが可能な固定治具322(281)と、他方のフック部220(環状部材220B)に引っ掛けることが可能な昇降治具324(282)とが設けられている。本実施形態の構成においては、固定治具322(281)および昇降治具324(282)は、鉤爪状の形状を有しており、それによって、フック部220(環状部材220A、220B)に引っ掛けることができる。
本実施形態の強度解析装置400は、パーソナルコンピュータ(PC)であり、中央演算装置(CPU)、記憶装置(例えば、ハードディスク(HDD)、SSD(Solid State Drive)、半導体メモリ(RAM、ROM)、光記録媒体など)を含んでいる。図示したパーソナルコンピュータは、本体部(入力部含む)410と、表示部(液晶ディスプレイなど)420を備えている。強度解析装置400(PC)の記憶装置には、強度解析プログラムが格納されている。強度解析プログラムが動作すると、中央演算装置(CPU)および記憶装置と協働して強度解析システムが稼働し、表示装置420において、強度解析システムによる強度解析ソフト(450)の画面が表示されて、計測データ、解析結果などを見ることができる。
本実施形態の構成では、強度解析装置400は、昇降機350の計測器(昇降ヘッド)330に電気的に(有線または無線で)接続されており、計測器330で計測した計測データは、強度解析装置400の記憶装置に格納することができる。強度解析プログラムの動作によって稼働した強度解析システムは、当該計測データを使用して、計測データの解析を行う。解析された結果は、強度解析ソフト(450)の画面として表示装置420に表示される。昇降機350から、強度解析装置(PC)400へのデータ送信は、LANのような有線でも、WiFiのような無線でもよし、または、USBメモリやDVDディスクのような情報記録媒体を経由したものでも構わない。なお、本実施形態の試験装置300では、昇降機350および強度解析装置400を別々の構成にしたが、昇降機350に強度解析装置400の機能を持たせたような構成にしても構わない。
図6は、試験装置300における引っ掛け作業部320の拡大図である。また、図7は、本実施形態の剥離用試料糸200を、試験装置300の固定治具322(281)および昇降治具324(282)に引っ掛けた状態の様子を示している。図7に示した状態で、昇降治具324(282)を上方させると(矢印290)、剥離用試料糸200の剥離が行われて、その剥離までの過程における強度(まつげエクステンション用の接着強度)を計測することができる。
<実施例>
本実施形態の試験装置300および剥離用試料糸200を用いた試験方法の結果(実施例)を次に説明する。図8(a)は、例11~例20におけるA値およびB値の実験結果を示している。図8(b)は、A値の分布曲線(水)の結果を示したグラフである。そして、図8(c)は、B値の分布曲線(水)の結果を示したグラフである。
まず、本実施例における試験方法の条件などについて説明する。剥離用試料糸200の材質は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)(デュポン社製)であり、接着延長部210の線径(1本の直径)は0.15mm±0.005mmである。剥離用試料糸200(接着延長部210)の表面において、研磨は施していない。試験開始前の洗浄方法は、溶剤(イソヘキサン、エタノール、イソプロピルアルコール)を用いた脱脂洗浄後の吹き上げである。接着剤の硬化および試験条件の標準状態は、空間条件で、温度25℃±2℃、湿度50±10%RHで、そして、硬化時間は12時間(またはそれ以上)である。接着面積(接着領域250)は、0.15mm(線径)×50mm(接着長さ)である。接着クリアランスの標準状態は、線接触(クリアランス:0.01mm以下)である。
本実施形態の試験方法による強度計測を行うときは、剥離用試料糸200は上記の標準状態に調整しておき、そして、上記の標準状態の空間内で試験(強度測定)を実行する。剥離用試料糸200は、試験糸(試験片)を輪状に結ぶことで輪側(フック部220)を形成することで用意して、そして、図3(a)に示すように、フック部220を20mmで、接着側(接着延長部210)を70mmにする。接着剤(270)の成分は、エチルシアノアクリレート(主成分)、増粘剤、カーボンブラック、メタクリル酸メチルであり、具体的には、MATSUKAZE-GIPS-GLUE((株)松風製)を使用する。
本実施形態の試験方法による実施例においては、剥離用試料糸200は、図3(b)に示すように接着剤270で接着・硬化されて2本が一体となり、そして、図3(b)に示すように昇降機280・285(試験装置300)にセットされる。具体的には、フック部220Aおよび220Bを、昇降機(試験装置300)の引っ掛け部281および282に引っ掛けて(図7の様子を参照)、次いで、フック部220Aおよび220Bの両者の中心が一直線状にあり(図3(c)の状態を参照)、荷重が正しくその線上を通るようにする。引張速度は所定の一定速度(ここでは、50mm/分)であり、剥離用試料糸200に荷重を加えて、そして、昇降機(試験装置300)の駆動上限までの加重を記録する。
計測値(測定値)の算出方法は次の通りである。計測した剥離の測定曲線(チャート、自記グラフ)から、次の2つの手法によって剥離接着強度(A値およびB値)を求める。A値(標準剥離値)およびB値(最大剥離値)を求めることで、標準的な接着強度の評価と、最大値としての接着強度の評価を行うことができる。
(1)A値(標準剥離値):チャート上の最初のピーク値から起算(ピーク値含む)して、50mmの範囲の波状部の平均を求める。
(2)B値(最大剥離値):チャート上の最初のピーク値から起算して50mmの範囲を等間隔(10mm間隔、L1~L5)に分割し、その波状部の最大値の5つの値の平均を求める。
本実施例における試験数(サンプル数)は、次のようにして規格策定を行う。
(1)試験数200個の場合、A値を昇順し、低い測定値1~50と、高い測定値151~200を切り捨て、中間層の測定値51~150を有効数値とする。(平均値と範囲を定める。)
(2)試験数200個の場合、B値を昇順し、低い測定値1~50と、高い測定値151~200を切り捨て、中間層の測定値51~150を有効数値とする。(平均値と範囲を定める。)
(3)A値およびB値の有効範囲の最小値と最大値を、規格値範囲と定める。
また、本実施例における試験数(サンプル数)が10個の場合は、A値およびB値をそれぞれ昇順し、低い測定値1~2と、高い測定値9~10を切り捨て、中間層の測定値3~8に基づいてA値およびB値を求める。
図8(a)に示した例11から例20(試験数10回)は、上述したA値およびB値の実験結果を示している。図8(a)は、上述した標準状態で試験を行い、接着剤は、MATSUKAZE-GIPS-GLUEであり、そして、接着剤硬化後で「水」を付与した条件でのデータを示している。上述したようにA値およびB値のデータ数値について昇降を行って、例11~12、例19~20を排除して、例13~18のデータを使用した。なお、例11~20は、昇降を行った後の番号であるので、必ずしも同じ実験でのデータとは限らない。ここで、A値(標準剥離)の平均値は0.0680(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1437(N/m)である。図8(b)は、A値の分布曲線(水)を示したグラフである。そして、図8(c)はB値の分布曲線(水)を示したグラフである。
次に、図9(a)に示した例21から例30は、上記図8(a)と同じ条件において接着剤硬化後で「水」でなく「湯」を付与した条件でのデータを示している。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0762(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1533(N/m)である。図9(b)は、A値の分布曲線(湯)を示したグラフである。そして、図9(c)はB値の分布曲線(湯)を示したグラフである。
次に、図10(a)に示した例31から例40は、上記図8(a)と同じ条件において接着剤硬化後で「水」でなく、「アイメイク&フェイスクレンジングジェル」((株)松風製)を付与した条件でのデータを示している。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0867(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.172(N/m)である。図10(b)は、A値の分布曲線を示したグラフである。そして、図10(c)はB値の分布曲線を示したグラフである。
図11は、A値の実験結果を示した棒ブラフである。左3つの「平均値」、「最大値」および「最小値」は、上記図8(a)と同じ条件において接着剤硬化後で「水」を付与していない条件でのデータである。これらは、試験数(サンプル数)が200個の基礎データであり、参考基準値(液体を付与していないデータ)となり得る。そして、次の「水」、「お湯」および「試料」は、図8(a)、図9(a)および図10(a)の試験結果(A値)のデータである。これらを比較することにより、試料(ここでは、「アイメイク&フェイスクレンジングジェル」を付与したもの)の接着強度を評価することができる。なお、この試料の判定は「適」である。
図12(a)および(b)は、「試料」が「オイルクレンジング(第1)」のA値およびB値の棒グラフである。図12(a)および(b)における「平均値」、「最大値」、「最小値」、「水」、「お湯」は、図11に示したものと同じである。「試料」は、図11における「アイメイク&フェイスクレンジングジェル」を、「オイルクレンジング(第1)」に代えた条件のデータである。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0634(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1418(N/m)である。ここでの「試料」の判定は「適」である。
図13(a)および(b)は、「試料」が「オイルクレンジング(第2)」のA値およびB値の棒グラフである。図13(a)および(b)における「平均値」、「最大値」、「最小値」、「水」、「お湯」は、図12(a)および(b)に示したものと同じである。「試料」は、図12(a)および(b)における「オイルクレンジング(第1)」を、「オイルクレンジング(第2)」に代えた条件のデータである。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0515(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1166(N/m)である。ここでの「試料」の判定は「不適」である。「不適」の1つの基準として、「試料」の値(A値、B値)は、「最小値」よりも下回っていることを採用することができる。したがって、この「オイルクレンジング(第2)」を、まつげエクステンションと組み合わせることは好ましくないと判断できる。
図14(a)および(b)は、「試料」が「オイルクレンジング(第3)」のA値およびB値の棒グラフである。図14(a)および(b)における「平均値」、「最大値」、「最小値」、「水」、「お湯」は、図12(a)および(b)に示したものと同じである。「試料」は、図12(a)および(b)における「オイルクレンジング(第1)」を、「オイルクレンジング(第3)」に代えた条件のデータである。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0535(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1134(N/m)である。ここでの「試料」の判定は、A値は「適」で、B値は「不適」である。「不適」の1つの基準として、「試料」の値(B値)は、「最小値」よりも下回っていることを採用することができる。そして、「適」の1つの基準として、「試料」の値(A値)は、「最小値」よりも上回っていることを採用することができる。したがって、この「オイルクレンジング(第3)」は、
まつげエクステンションと組み合わせるときにおいて、「オイルクレンジング(第2)」よりは好ましいが、「オイルクレンジング(第1)」よりは好ましいないものと判断することができる。
図15(a)および(b)は、「試料」が「オイルクレンジング(第4)」のA値およびB値の棒グラフである。図15(a)および(b)における「平均値」、「最大値」、「最小値」、「水」、「お湯」は、図12(a)および(b)に示したものと同じである。「試料」は、図12(a)および(b)における「オイルクレンジング(第1)」を、「オイルクレンジング(第4)」に代えた条件のデータである。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0663(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1329(N/m)である。ここでの「試料」の判定は、A値およびB値とも「適」である。
図16(a)および(b)は、「試料」が「オイルクレンジング(第5)」のA値およびB値の棒グラフである。図16(a)および(b)における「平均値」、「最大値」、「最小値」、「水」、「お湯」は、図12(a)および(b)に示したものと同じである。「試料」は、図12(a)および(b)における「オイルクレンジング(第1)」を、「オイルクレンジング(第5)」に代えた条件のデータである。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0494(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1016(N/m)である。ここでの「試料」の判定は、A値およびB値とも「不適」である。
図17(a)および(b)は、「試料」が「オイルクレンジング(第6)」のA値およびB値の棒グラフである。図17(a)および(b)における「平均値」、「最大値」、「最小値」、「水」、「お湯」は、図12(a)および(b)に示したものと同じである。「試料」は、図17(a)および(b)における「オイルクレンジング(第1)」を、「オイルクレンジング(第6)」に代えた条件のデータである。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0663(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1483(N/m)である。ここでの「試料」の判定は、A値およびB値とも「適」である。
図18(a)および(b)は、「試料」が「オイルクレンジング(第7)」のA値およびB値の棒グラフである。図18(a)および(b)における「平均値」、「最大値」、「最小値」、「水」、「お湯」は、図12(a)および(b)に示したものと同じである。「試料」は、図17(a)および(b)における「オイルクレンジング(第1)」を、「オイルクレンジング(第7)」に代えた条件のデータである。この試験結果のA値(標準剥離)の平均値は0.0510(N/m)であり、B値(最大剥離)の平均値は0.1201(N/m)である。ここでの「試料」の判定は、A値は「不適」で、B値は「適」である。
以上、本実施形態の試験方法の実施例の一例について説明したが、上記の事件方法(実施例)は、さらに改変することができる。具体的には、「水」(及び/又は「湯」)と、「オイルクレンジング」(及び/又は「アイメイク&フェイスクレンジングジェル」との組み合わせの影響(A値、B値の変化)を調べる試験を実行してもよい。また、「オイルクレンジング」、「アイメイク&フェイスクレンジングジェル」だけでなく、その他の化粧品の影響を調べる実験を行うことができる。化粧品は、マスカラなどの目元に使用するものの他、ファンデーション、乳液、化粧液、ジェルや、紫外線カット剤、ヘアスプレー、ヘヤムース、ヘヤワックスなどを挙げることができる。具体的には、まつげエクステンションに付着しそうな物質(例えば、クリーム、液体、噴霧物質、および、パウダー物質など)の影響を実験することができる。また、接着剤の種類、硬化時間を変更してもよい。また、剥離用試料糸200の材質、厚さ(幅、直径など)を変更して、その変更した剥離用試料糸200で試験を実行することができる。さらに、具体的には、実際に製品として開発・販売したい「まつげエクステンション」、「接着剤」(そして、影響を調べたい「化粧品」)の種類・特性などにあわせて、本実施形態の試験方法の条件について適宜好適なものを選択・決定することができる。
また、化粧品の影響を調べる他、目薬の影響を調べることも可能である。もちろん、化粧品と目薬の両方の影響を調べることができる。加えて、液体(または、クリーム、噴霧物質、および、パウダー物質など)の影響の他、物理的な影響(例えば、摩擦)を調べることができる。具体的にはマスカラブラシのブラシ部分による物理的な影響(摩擦、または、ひっかき、接触などの影響)を調べることができる。加えて、本実施形態の試験方法を用いて、まつげエクステの素材を変えたり、表面に接着面積が増える加工を施した人工毛(まつげエクステ)において強度が向上するかどうかの試験を行うことができる。さらには、それらの素材変更や加工を施した人工毛(まつげエクステ)と、化粧品、目薬などの影響、及び/又は、物理的な影響(摩擦など)を調べることもできる。
次に、本実施形態の試験方法を経て適切と判断された形態のまつげエクステンション(まつげエクステ)、または、本実施形態の試験方法を経て適切と判断された材料(構造、形状など)を用いて製造されるまつげエクステについて説明する。図19は、本実施形態のまつげエクステ100の構成を示す斜視図である。図20は、図19中のA-A線に沿った断面図を示している。図21は、図19中のB部分における断面図を示している。
本実施形態のまつげエクステ100は、先端部11と末端部15とを有する人工まつげ本体部10を備えている。人工まつげ本体部10は、まつげ型の形状を有しており、そして、人工まつげ本体部10には、まつげ50に取り付けた時に自然な角度になるようなカーブ(湾曲部10c)が形成されている。具体的には、人工まつげ本体部10の末端部15の径(ここでは、直径)は、先端部11の径(直径)よりも太い。人工まつげ本体部10は、かるく湾曲しており、先端部11のトップは尖っている。本実施形態の人工まつげ本体部10の長さは、例えば5mm~20mmであり、末端部15の端面15aの直径(または厚さ)は例えば0.07mm~0.3mmである。図20及び図21では、末端部15における直径φを表記している。
本実施形態の人工まつげ本体部10は、樹脂12から構成されている。言い換えると、人工まつげ本体部110は、化学繊維からなり、樹脂材料から構成されている。本実施形態の人工まつげ本体部10を構成する樹脂は、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、ナイロンから構成されている。そして、当該樹脂材料を用いて、上述の実施形態の剥離用試料糸200を構築することができる。本実施形態の人工まつげ本体部10は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から構成されている。なお、本実施形態の人工まつげ本体部10は、樹脂以外に、天然素材のものを使用できる場合がある。例えば、人工まつげ本体部10は、獣毛(例えば、ミンクの毛)であるが、他の獣毛を用いても構わない。なお、樹脂由来のまつげエクステ以外のものとしては、ここで挙げた獣毛の他、動物由来の材料(典型的には、人毛、シルクなど)、植物由来の材料(典型的には綿)を使用することも可能である。また、タンパク質を含んだ化学繊維から構成された人工まつげ本体部10を用いることも可能である。そして、当該樹脂以外の材料を用いて、上述の実施形態の剥離用試料糸200を構築することができる。
なお、人工まつげ本体部10は、黒色の他、着色された材料から構成されていてもよい。人工まつげ本体部10は、例えば、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイト、イエローなどの色にすることができ、それによって、カラーエクステンションを実現することが可能である。
本実施形態の人工まつげ本体部10の断面は、図20に示すように、円形形状を有している。本実施形態の構成における「円形形状」は、幾何学的な意味での円形の形状(真円)に限らず、多少歪んでいても構わない。例えば、真円から見ると、楕円形状、長円形状などのものであっても構わない。本実施形態の例では、人工まつげ本体部10の断面には、溝、山・谷のような凹凸は形成されておらず、人工まつげ本体部10の断面は、なめらかな曲線からなる形状(略円形)となっている。
本実施形態のまつげエクステ100を製造するには、以下のようにしたらよい。まず、本実施形態のまつげエクステ100の製造方法では、製造したいまつげエクステ100の材料・構造にあわせて上述した実施形態の試験方法を実行して接着強度の適正なものを確認した上で、当該剥離用試料糸200の接着延長部210を構成する樹脂材料と同一の樹脂材料を用意する。次に、当該樹脂材料を、人工まつげ本体部10の形状を規定する開口部を有する金型から押し出す。その後、押し出しした繊維状の材料を切断することを行うことによって、まつげエクステ100を製造する。以下にさらに詳しく説明する。
まず、人工まつげ本体部10を構成する樹脂(例えば、PBT)12を準備し、その樹脂を金型から押し出す。金型には、人工まつげ本体部10の形状(断面形状)を規定する開口部が形成されている。本実施形態では、図20に示すような円形形状を有する開口部を規定する金型を用いている。その金型を用いて樹脂12を押し出すと、図20に示した断面形状を有する繊維状の材料が得られる。なお、上述したように、本実施形態の円形形状は、幾何学形状の円形(真円)に限らず、略円形のものであってよい。また、金型の開口部は、円形形状に近い略円形の形状のものでなく、扁平率の大きいもの(例えば、横広の楕円形または長円)にしても構わない。
次に、押し出しした繊維状の材料を、人工まつげ本体部10の長さに切断する。すなわち、まつげエクステ100の長さに切断する。切断するときは、所定長さで繊維状の材料をカッターで切断すればよい。その後、切断して所定の長さ(まつげエクステ100の長さ)になった人工まつげ本体部10の先端を薬品につけて、人工まつげ本体部10の先端部11を形成する。すなわち、樹脂12を溶解させる薬品に人工まつげ本体部10の一部(先端)をつけることで、樹脂12の一部を溶解させて、人工まつげ本体部10の径を細めて先端部11を形成する。
その後、人工まつげ本体部10にカーブ(湾曲)を形成して、まつげエクステ100が得られる。人工まつげ本体部10にカーブを形成するには、人工まつげ本体部10を加熱して、人工まつげ本体部10を曲げて、そして、その形を記憶(固定)させるようにすればよい。このようにして、本実施形態のまつげエクステ100が得られる。
本実施形態のまつげエクステ100を着色する場合には、樹脂12に顔料を入れて、着色を行うことができる。樹脂12の着色(または染色)は、黒色にすることができる他、例えば、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイト、イエローなどの色にすることができる。
図22は、本実施形態のまつげエクステ100を、使用者(装着者)55のまつげ50に取り付けた様子を示す図である。本実施形態のまつげエクステ100は、使用者55のまつげ50の長さを延長する人工まつげであり、接着剤(グルー)20によってまつげ50に固定される。接着剤20は、上述した実施形態の試験方法を実行して接着強度の適正なものを確認した上で選択されている。
本実施形態の接着剤20がシアノアクリレート系接着剤である場合、シアノアクリレート系接着剤は、メチル系(メチルシアノアクリレート)、エチル系(エチルシアノアクリレート)、ブチル系(ブチルシアノアクリレート)、オクチル系(オクチルシアノアクリレート)、メトキシ系(メトキシエチルシアノアクリレート)、エトキシ系(エトキシエチルシアノアクリレート)などの種類に分類可能で瞬間接着剤として使用できる。それらを所定割合でブレンドしたものも使用可能である。まつげエクステ業界においては、刺激臭や皮膚粘膜への刺激性の弱いグルーとして、メトキシエチル系、エトキシエチル系、ブチル系を挙げることができる。これらのグルーは一般的に、低刺激で、硬化速度が遅く、粘性があるタイプのグルーである。一方、プロ用グルーとしては、エチル系、メチル系を挙げることができる。これらのグルーは、刺激が強く、硬化速度が速く、サラサラした液状のタイプのグルーが一般的である。まつげエクステ用の接着剤では、ほとんど、シアノアクリレート系の瞬間接着剤が使用されているが、ゼラチン-アルデヒド系接着剤、フィブリングルー系接着剤を挙げることができ、また、これ以外の接着剤(例えば、紫外線吸収剤(光硬化開始剤)を含む接着剤、紫外線硬化樹脂を含む接着剤など)の使用を禁止するものではない。そして、これらの接着剤を用いて、上述の実施形態の試験方法を行うことができる。
図23は、上まつげ50のそれぞれにまつげエクステ100を取り付けた様子を示している。図23に示すように、数多くのまつげエクステ100が上まつげ50に取り付けられている。このような状態でまつげエクステ100がなるべく長時間まつげ50に付いていることが、使用者(ユーザ)55によって好ましい。そして、この長時間の装着維持力の予測は、接着剤20との相性、化粧品などの影響なども含めて、上述の実施形態の試験方法を行うことによって確認することができる。
なお、図20に示したまつげエクステ100では、断面が円形であるものを示したが、それに限らず、まつげエクステ100の断面を多面形(六角形、八角形など)に改変することも可能であるし、断面を星形(六角形の星形、八角形の星形)にすることも可能である。具体的には、図24から図26に示すように、溝34が形成された多角形の星形形状のまつげエクステ101にすることができる。図24は、本実施形態のまつげエクステ101の構成を示す斜視図である。図25は、図24中のA-A線に沿った断面図を示している。図26は、図24中のB部分における拡大側面図を示している。
本実施形態のまつげエクステ101では、人工まつげ本体部10の延長方向65に沿って溝34が延びている。また、図25に示すように、人工まつげ本体部10の断面は、正八角形の構造を有しており、各頂点32の間に溝34が形成されている。より具体的には、人工まつげ本体部10の断面の頂点32は、正八角形の頂点に位置している。したがって、頂点32は45°ごとに形成されている。0°と90°との間の部分で説明すると、0°と45°と90°の位置に頂点32が位置しており、0°と45°との頂点の間に溝34が設けられ、そして、45°と90°との頂点の間にも溝34が設けられている。な
お、断面の星形は、六角形でも五角形でも四角形でも、又は三角形を採用しても構わない。
人工まつげ本体部10に形成される溝34の深さTは、太さを100とした場合に、例えば20から40(典型的には30)にすることができる。本実施形態の構成では、溝34は、根本部(末端部)15の端面15aから先端部11まで形成されている。ただし、必ずしも先端部11の先まで溝34を形成しなくてもよく、少なくとも根本部15に形成されていればよい。これは、まつげエクステ110の製造方法によっては、径が細くなる先端部11において溝34が消えてしまうことがあるからである。
本実施形態のまつげエクステ101では、例えば、溝34は、根本部15から、根本部15の端面15aと先端部11との中間に位置する中間点まで延ばすようにすることができる。なお、まつげエクステ101の製造方法によっては、根本部15の端面15aの位置では、人工まつげ本体部10の一部が溶けて溝34が消えた構造になることもある。したがって、根本部15の部分に溝34が形成されていても、根本部15の端面15aの箇所に溝34が形成されていなくてもよい。
本実施形態のまつげエクステ101では、人工まつげ本体部10における根本部の断面は、頂点32の間に溝34が位置する多角形状を有している。したがって、人工まつげ本体部10の多角形状の溝34によって、接着剤20を保持することが容易となり、使用者のまつげ50と人工まつげ本体部10との接着性を良好にすることができる。そして、上述の実施形態の試験方法を用いると、このような形状のまつげエクステ101の装着維持力の予測も行うことができる。
また、多角形の断面の頂点32の間に溝34が位置しているので、1つの方向だけでなく他の方向からでも、接着剤を保持した溝34を使って、人工まつげ本体部10をまつげ50に接着させることができる。さらに、人工まつげ本体部10には複数本の溝34が形成されているので、溝34が形成されていないものと比較すると、まつげエクステ101の重さ(質量)を軽くすることができる。まつげエクステ100の一本一本の重さは軽くても、それらは使用者のまつげに取り付けられるものであるから、まつげエクステ101の重さを軽くできることは、使用者(ユーザ)の使用感に影響を与えることができ、その結果、つけ心地の感じのよいまつげエクステ101を実現することができる。本実施形態のまつげエクステ110では、人工まつげ本体部10の太さや溝34の深さTにも依存するが、複数の溝34がないものと比較して、まつげエクステの重さを例えば10%~70%程度軽くすることが可能である。
次に、図19に示したまつげエクステ100では、人工まつげ本体部10の表面10aに凹凸部やザラザラ部が形成されていないものを示したが、それに限らず、まつげエクステ100の表面10aに凹凸部やザラザラ部が形成されているものに改変することも可能である。具体的には、図27から図29に示すように、ザラザラした表面部40を有するまつげエクステ102にすることができる。図27は、本実施形態のまつげエクステ102の構成を示す斜視図である。図28は、図27中のA-A線に沿った断面図を示している。図29は、図27中のB部分における拡大断面図を示している。
本実施形態のまつげエクステ102では、人工まつげ本体部10の長手方向における中間点よりも根本部(末端部)15の端面15a側に、ザラザラした表面部40が形成されている。特に、ザラザラした表面部40は、まつげ50と接する領域に形成されていればよく、接着剤20が付与される箇所だけに選択的に形成することも可能である。
本実施形態のザラザラした表面部40は、複数の粒状の凹凸41を含んでいる。この粒状の凹凸41からなるザラザラした表面部40は、根本部15の全周にわたって形成されている。したがって、根本部15の表面の全方位において、ザラザラした表面部40が形成されており、接着剤20を何れの方向から根本部15に付与しても、ザラザラした表面部40の上に塗布することができる。
本実施形態の構成において、人工まつげ本体部10におけるザラザラした表面部40は、フロスト加工を施すことによって形成されている。言い換えると、人工まつげ本体部10には、フロスト加工によって生じた凹凸41が形成されている。フロスト加工とは、表面を霜のようにザラザラさせる加工(または、磨りガラスのようにザラザラされる加工)のことをいい、本実施形態では、サンドブラストによって人工まつげ本体部10に凹凸41を形成する。サンドブラストは、表面に砂などの研磨材を吹き付ける加工方法のことである。例えば、人工まつげ本体部10の根本部15に、コンプレッサによる圧縮空気に研
磨剤を混ぜて吹き付けることにより、当該根本部15にザラザラした表面部40を形成することができる。サンドブラストに使用するサンド(研磨材)は、いわゆる砂に限らず、人工まつげ本体部10に凹凸41を形成するのに適した研磨剤を使用することができる。
本実施形態の凹凸41の深さ(凸部から凹部までの高さの差)は、例えば、0.01mm~0.1mm程度であるが、それに限定されるものではない。具体的には、ザラザラした表面部40を形成するために使用したフロスト加工(例えば、サンドブラスト)の条件によって決定されるとともに、使用するフロスト加工にあわせて適宜好適な凹凸41を形成することが可能である。
加えて、人工まつげ本体部10に貫通孔を形成して、その貫通孔によって、ザラザラした表面部40を形成することも可能である。その場合には、凹凸41を構成する貫通孔の長さは、人工まつげ本体部10の直径φに相当するものになる。また、貫通孔を形成した場合には、まつげエクステ102の重さ(質量)を軽くすることができるという利点も得られる。まつげエクステ102の一本一本の重さは軽くても、それらは使用者のまつげに取り付けられるものであるから、まつげエクステの重さを軽くできることは、使用者(装着者)の装着感に影響を与えることができ、その結果、つけ心地の感じのよいまつげエク
ステを実現することができる。
本実施形態のザラザラした表面部40は、ヤスリ(具体的には、紙ヤスリ)を擦りつけることによって形成することができる。紙ヤスリは、研磨加工に用いる紙状のシートに研磨材を塗布した工具である。紙ヤスリによって、ザラザラした表面部40を形成する場合、使用する紙ヤスリの粗さ(番手)によって、ザラザラした表面部40の凹凸41の形状・深さなどを調整することができる。
人工まつげ本体部10の根本部15にザラザラした表面部40を形成する場合、多数の人工まつげ本体部10を揃えて、次いで、サンドブラストを根本部15に施すことにより、一度の処理で、ザラザラした表面部40を有する人工まつげ本体部10を多数形成することができる。また、多数の人工まつげ本体部10を揃えた状態で、根本部15に紙ヤスリを施すことにより、一度の処理で、ザラザラした表面部40を有する人工まつげ本体部10を多数形成することも可能である。もちろん、一本の人工まつげ本体部10に紙ヤスリを施して、ザラザラした表面部40を形成しても構わない。
本実施形態のまつげエクステ102では、人工まつげ本体部10の根本部15はザラザラした表面部40を有しているので、当該ザラザラした表面部40によって、接着剤20を保持することが容易となり、使用者のまつげ50と人工まつげ本体部10との接着性を良好にすることができる。すなわち、本実施形態のまつげエクステ102の場合、ザラザラした表面部40により、平滑の場合の表面と比較して表面積が増えたことによって(あるいは、凹凸41によって)接着剤20の保持がよく、それゆえに、接着剤20の付きがよい。そして、上述の実施形態の試験方法を用いると、このようなザラザラした表面部40を有するまつげエクステ102の装着維持力の予測も行うことができる。
以上説明したように、本発明の実施形態に係る試験方法によれば、剥離用試料糸200の接着延長部210を互いに接着剤270で接着した後、剥離用試料糸200のフック部220を昇降機300(280、285)に取り付けて、次いで、昇降機300(285)を動作させることにより、接着延長部210の剥離を実行しながら強度測定を行うことができる。したがって、まつげエクステンション(100)のような細くて柔軟性のある糸状の物質であっても接着強度を測定することができるとともに、しっかりとした接着状態になったかどうかの時間を測定することができる。加えて、接着した状態のまつげエクステンションに対して、化粧品等の液体を塗布したり、浸けたりした場合にも、その接着強度が低下しないかどうかを測定することができる。本発明の実施形態の手法によれば、まつげエクステンション用の接着強度を測定するのに適した試験方法を提供することができる。
そして、本実施形態の試験方法を行うことにより、接着剤(270、20)の種類別に硬化時間測定が可能となった。このような硬化時間測定が可能になったことにより、安全性の優れた接着剤の提供が可能となる。例えば、アレルギーや刺激性皮膚炎の原因となる目に見えない接着剤の蒸気(または、皮膚に付着したポリマー(蒸気))を洗い流すまでの時間を予測することができ、接着剤が硬化して接着強度を発揮した後、なるべく早くに、接着剤のケア(洗浄など)を実行するステップを構築することができる。
また、本実施形態の試験方法を用いることにより、接着剤の種類別に剥離強度比較ができるようになる。まつげエクステは、主に剥離の応力がかかることによって剥がれてしまうため、この剥離に対する力は、まつげエクステが長持ちするための持続力に欠かせない強さであり、それらは接着剤性能評価の1つの指標となる。そして、いままでは、接着剤の接着力の高さはカタログからわかったとしても、まつげエクステ用グルーとしてどの接着剤が、剥離強度が強いか科学的にわからなかったところ、本実施形態の試験方法によれば、剥離強度がわかるようになる。
さらに、本実施形態の試験方法によると、試料となる人工毛を変えた場合(材質変更、表面加工、コーティング等)でも、人工毛の種類別に剥離強度が強くなるかどうか測定が可能となる。そして、これは、持続力の長いまつげエクステ人工毛の科学的な証明となる。加えて、リムーバーの性能評価ができる。時系列で測定すれば、短時間で剥離強度を弱めることができるリムーバーの開発にも貢献する。
また、本実施形態の試験方法を用いると、試料(接着剤塗布済み人工毛原料)に化粧水やマスカラやクレンジングなどを塗布したり、漬けたりした際に強度低下しないかどうかの測定が可能である。これによって、化粧品が接着強度低下や皮膚への刺激リスク増加(剥離強度が低下し、膨潤、浸潤したと考えられる場合は接着剤の刺激リスクが増える)などの影響を証明することができる。それらの影響によって、事実、接着剤によっては硬化時間が変わることが判明した。すなわち、化粧品(クレンジング)に漬けることで剥離強度が低下するものとしないものがあることがわかった。このようないままでわからなかったことも、本実施形態の試験方法で明らかになっていくという技術的利点は非常に大きい。
上述した本試験の基礎データ(200回試験)は、まつげエクステ用接着剤の接着強度を測定するためのものであり、これを応用する試験は多岐にわたる。上述したように、基礎データを基準として、液体に浸す・塗布することによる「強度向上」や「強度低下」の測定を行う。また、グルーの強度評価、リムーバーの溶解能力評価、人工毛の素材や特殊加工による強度評価、クレンジング、マスカラなどの化粧品が及ぼす影響の評価を行うことができる。加えて、液体以外の物理的衝撃等を加えた場合の評価などにも活用することができる。そして、本試験において、「第三の液体」(例えば、クレンジングのような化粧品)等が塗布されることによって「接着強度を低下」させた場合、その接着剤から刺激物質(ホルムアルデヒド)の溶出が増加するかどうかの影響があるかどうかの検査をしたくなるところ、本試験を行うことで、そういった機能性低下をさせる製品の使用を見つけることができる。そして、それに対して、販売の注意喚起を行うことができれば、消費者の安全性向上に貢献することができる。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、図3に示した例では、剥離用試料糸200のフック部220を環状部材にして、鉤爪状の形状を有する引っ掛け部281および282に引っ掛けるようにしたが、適切に剥離試験(強度測定)を実行できるのであれば、他の係合手法(または固定手法)することも可能である。また、図3に示した例では、矢印290に示すように鉛直方向に引っ張ったが、それ以外の方向に回転させて、例えば水平方向に引っ張っても剥離試験(強度測定)を実行することも可能である。ただし、図3に示した例のように、引っ張り方向(矢印290)を鉛直方向にした方が、フック部220が一直線になっていることを確認するのが容易であるので、便利である。また、上述した実施形態の各要素は、互いに矛盾するものでない限り、適宜組み合わせることができ、限定的解釈されるべきものではない点を付言しておく。