以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
[搬送装置及び金型の概略]
図1は、本発明の第1実施形態に係る搬送装置1および金型100の模式的な側面図である。図1を参照して、搬送装置1は、搬送対象としての金型100を把持した状態で搬送するための装置として構成されている。搬送装置1による搬送対象としての金型100(以下、金型100について、搬送対象100とも称する)は、例えば、工場にて製品を製造する際に、製品を構成する部品等を搬送するための製造用の器具として用いられる。本実施形態では、金型100が、伝動ベルトを製造する際に用いられる形態を例にとって説明する。
上記の伝動ベルトとして、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルト等の摩擦伝動ベルトを例示することができる。本実施形態では、伝動ベルトの製造において、金型100には、成形工程において、成形機によって、ゴムシート、補強布、芯体コード等の構成部材が順に巻き付けられる。次いで、加硫工程において、加硫缶によって、加硫を行うことで、ベルトスリーブが作製される。そして、ベルトスリーブが金型100から取り外された後に、ベルトスリーブを所定幅に切断することで、伝動ベルトが得られる。
金型100は、伝動ベルトの製造時、ベルトコンベア機構(図示省略)上に設けられた設置台110に設置された状態で、成形工程、加硫工程等の各工程の装置が配置されている場所の間を搬送される。そして、金型100は、搬送装置1によって、ベルトコンベア機構の設置台110から各工程の装置へと移し替えられるように搬送され、或いは、各工程の装置からベルトコンベア機構の設置台110へと移し替えられるように搬送される。より具体的には、金型100は、例えば、搬送装置1によって、ベルトコンベア機構から成形工程を行う成形機へ、成形機からベルトコンベア機構へ、ベルトコンベア機構から加硫工程を行う加硫缶へと移し替えられるように搬送される。尚、図1においては、設置台110については、その一部が断面の状態で図示されている。
そして、上記のような金型100の移し替えの際には、搬送装置1によって、設置台110から金型100を吊り上げる吊り上げ動作と、吊り上げた金型を別の設置台110へと下ろして設置する設置動作とが行われる。また、金型100は、軸方向が上下方向に延びて鉛直向きに立てられた状態で、搬送装置1によって吊り上げ動作及び設置動作が行われる。また、金型100は、設置台110に設置されてベルトコンベア機構にて搬送される際にも、鉛直向きに立てられた状態で、搬送される。
金型100は、本実施形態では、軸状に形成されており、主軸部101と、把持軸部102と、挿入軸部103と、を有している。
主軸部101は、伝動ベルトの成形工程において、ベルトスリーブが巻かれるための部分である。具体的には、主軸部101は、円柱状に形成されており、伝動ベルトの成形工程において、成形機によって、ゴムシート、補強布、芯体コード等の構成部材が順に主軸部101に巻き付けられる。
把持軸部102は、搬送装置1における後述する把持機構11によって把持される部分として設けられている。把持軸部102は、円柱状に延びる主軸部101の軸方向における一方の端部から突出して主軸部101に一体に形成されている。尚、金型100は、鉛直向きに立てられた状態で搬送装置1によって吊り上げ動作及び設置動作が行われる際には、把持軸部102が、上端側に配置される。即ち、搬送装置1の動作時には、金型100においては、把持軸部102が上端部となる。
また、把持軸部102は、円柱状に形成されており、直径が主軸部101の直径よりも小さく設定されている。そして、把持軸部102は、把持軸部102の軸心が主軸部101の軸心と同軸となるように、主軸部101に一体に設けられている。また、把持軸部102は、頂部102aと、溝部102bと、を有している。
頂部102aは、把持軸部102の先端部分を占める領域として構成される。頂部102aには、後述する把持機構11が下降した際に、把持機構11における後述の当接部22が当接する。溝部102bは、後述する把持機構11が金型100を把持するために設けられた溝である。溝部102bは、把持軸部102の外周面において、切り欠き状に形成され、周方向に亘って凹む溝状に形成されている。
挿入軸部103は、金型100が設置台110に設置される際に、設置台110に設けられた金型100の設置位置である設置孔110aに挿入されて支持される部分として設けられている。挿入軸部103は、円柱状に延びる主軸部101の軸方向における把持軸部102側とは反対側の端部から突出して主軸部101と一体に形成されている。尚、金型100は、鉛直向きに立てられた状態で搬送装置1によって吊り上げ動作及び設置動作が行われる際には、挿入軸部103が、下端側に配置される。即ち、搬送装置1の動作時には、金型100においては、挿入軸部103が下端部となる。尚、金型100の高さは、金型100の軸方向の長さとなる。即ち、把持軸部102が上端部の状態であり、挿入軸部103が下端部の状態であって、軸方向が上下方向に延びた状態において、金型100の軸方向の長さが、金型100の高さとなる。
また、挿入軸部103は、円柱状に形成されており、直径が主軸部101の直径よりも小さく設定されている。挿入軸部103の直径は、例えば、把持軸部102の直径と略同じ径寸法に設定されている。そして、挿入軸部103は、挿入軸部103の軸心が主軸部101及び把持軸部102の軸心と同軸になるように、主軸部101に一体に設けられている。
金型100は、挿入軸部103が設置台110の設置孔110aに挿入されて支持された状態で、設置台110に載置されて設置される。尚、金型100が設置される設置台110は、例えば、図示が省略されたベルトコンベア機構の上に設けられている。金型100は、挿入軸部103が設置孔110aに挿入されて設置台110に設置された状態で、成形工程、加硫工程等の各工程の装置が配置されている場所の間を搬送される。尚、図1では、成形工程が行われる前でベルトスリーブが巻き付けられる前の金型100が例示されている。よって、図1においては、成形工程を行う成形機が配置された場所まで金型100を搬送するためのベルトコンベア機構に設けられた設置台110に対して、搬送装置1によって、金型100が設置される動作時の状態が、例示されている。或いは、図1においては、ベルトコンベア機構から成形工程を行う成形機へと金型を移し替えるために、ベルトコンベア機構上の設置台110から、搬送装置1によって、金型100が吊り上げられる動作時の状態が、例示されている。
[搬送装置の全体構成]
搬送装置1は、金型100を把持する把持機構11と、把持機構11を上下方向に駆動する駆動機構12と、駆動機構12を移動させる搬送台車13と、把持機構11、駆動機構12、及び搬送台車13の動作を制御する制御装置14と、を備えて構成されている。
搬送装置1は、制御装置14からの制御指令に基づいて、把持機構11及び駆動機構12が作動することで、金型100が設置されている設置台110から金型100を吊り上げる動作を行うように構成されている。また、搬送装置1は、制御装置14からの制御指令に基づいて、把持機構11及び駆動機構12が作動することで、金型100を設置台110へと設置する動作を行うように構成されている。
また、搬送装置1は、制御装置14からの制御指令に基づいて、把持機構11によって金型100を把持した状態で搬送台車13が作動することで、ベルトコンベア機構上の設置台110と各工程の装置との間で金型100を移送して搬送するように構成されている。例えば、搬送装置1は、成形工程を行う成形機が配置されている場所へと金型100を搬送するベルトコンベア機構上に設けられた設置台110に対して設置動作を行う位置まで、把持機構11が金型100を把持した状態で搬送台車13が移動し、金型100を搬送する。また、例えば、搬送装置1は、ベルトコンベア機構上に設けられた設置台110から金型100を吊り上げて把持した状態で、成形工程を行う成形機の位置まで搬送台車13が移動して、金型100を搬送する。
搬送台車13は、車体部13a、車輪13b、車輪13bを回転駆動する電動モータ(図示省略)、等を備えて構成されている。搬送台車13は、制御装置14からの制御指令に基づいて、電動モータが作動することで、車輪13bが回転し、電動ベルトの製造の各工程の装置と設置台110が設けられたベルトコンベア機構との間で移動するように構成されている。また、車輪13bは、例えば、電動ベルトの製造の各工程の装置と設置台110が設けられたベルトコンベア機構との間で敷設されたレール(図示省略)上を走行する車輪として構成されている。
制御装置14は、CPU等のハードウェア・プロセッサ、メモリ、ユーザによって操作される操作パネル等の操作部、インターフェース回路、等を備えて構成されている。制御装置14のメモリには、把持機構11、駆動機構12、搬送台車13の作動を制御する制御指令を作成するためのプログラムが記憶されている。ユーザによって操作部が操作されることで、メモリから上記のプログラムがハードウェア・プロセッサによって読み出されて実行される。これにより、上記の制御指令が作成され、その制御指令に基づいて、把持機構11、駆動機構12、搬送台車13が作動する。
次に、搬送装置1において、金型100の吊り上げ動作及び設置動作を行う際に作動する把持機構11及び駆動機構12の詳細について説明する。
[把持機構の構成]
図2は、図1において搬送装置1における駆動機構12の一部及び把持機構11を拡大して示す模式的な側面図である。図1及び図2に示す把持機構11は、駆動機構12に連結され、金型100を把持する機構として設けられている。また、把持機構11は、駆動機構12に対してスライド移動可能に連結されており、搬送装置1が金型100を搬送する際に、高さの異なる金型100に応じて金型100を把持する機構として設けられている。そして、把持機構11は、本体部21、当接部22、係合保持部23、駆動力伝達部24、水平駆動アクチュエータ28、等を備えて構成されている。
本体部21は、把持機構11において、駆動機構12に連結される部分として設けられている。本体部21は、軸部25と、上梁部26と、下梁部27と、を有し、これらがフレーム状に一体に組み合わされて構成されている。
軸部25は、本実施形態では、本体部21において、一対で設けられている。一対の軸部25のそれぞれは、上下方向に延びる円柱状に形成されている。また、一対の軸部25は、互いに平行に上下方向に延びるように設けられており、各軸部25は、後述する駆動機構12において水平方向に延びるように設けられた駆動連結部31に対して垂直な方向に沿って延びるように配置されている。また、一対の軸部25のそれぞれには、後述する駆動連結部31が、上下方向にスライド移動自在に連結されている。
上梁部26は、一対の軸部25の上側の端部を連結する部材として設けられており、本体部21における上端側の部分において、水平方向に延びるように設けられている。このため、上梁部26は、後述する駆動連結部31に対して平行に延びるように配置されている。下梁部27は、一対の軸部25の下側の端部を連結する部材として設けられており、本体部21における下端側の部分において、水平方向に延びるように設けられている。下梁部27は、後述の駆動連結部31に対して平行に延びるとともに上梁部26に対しても平行に伸びるように配置されている。
当接部22は、把持機構11において、本体部21に設けられて把持機構11の下降時に金型100の頂部102aに当接する部分として設けられている。より具体的には、当接部22は、本体部21の下梁部27から下方に向けて片持ち状に突出して設けられている。また、当接部22における本体部21から下方に突出した下端側の先端部分には、円盤状部分22aが設けられている。当接部22は、把持機構11の本体部21が後述する駆動機構12によって駆動されて下降した際に、本体部21とともに下降する。そして、当接部22は、本体部21とともに下降した際に、当接部22の下端側の先端部分に設けられた円盤状部分22aにおいて、設置台110に設置された金型100の頂部102aに対して当接するように、構成されている。尚、円盤状部分22aは、金型100の頂部102aに対して、外形が円形の平坦な面において、安定して面接触した状態で当接するように構成されている。
係合保持部23は、把持機構11において、当接部22が金型100に当接した状態で金型100に係合することで金型100を保持する部分として設けられている。係合保持部23は、本体部21の下梁部27に設けられ、下梁部27から下方に向けて片持ち状に突出するとともに先端側において水平方向に向かって延びる爪部23aが設けられている。そして係合保持部23は、爪部23aにおいて、金型100の把持軸部102に設けられた溝部102bに対して嵌まり込んで係合可能に構成されている。また、係合保持部23は、本体部21の下梁部27に対して、下梁部27の長手方向である水平方向に沿ってスライド移動可能に支持されている。
係合保持部23は、当接部22と協働して金型100を把持するように構成されている。即ち、係合保持部23は、当接部22が金型100に当接した状態で本体部21の下梁部27に対して水平方向にスライド移動して金型100に係合し、金型100に係合保持部23が係合することで、金型100が当接部22及び係合保持部23によって保持される。尚、係合保持部23は、当接部22が金型100に当接することで、係合保持部23の先端部分の爪部23aが、金型100の把持軸部102の溝部102bに対して、水平方向における真横の位置に位置合わせされるように、構成されている。このため、係合保持部23は、当接部22が金型100に当接した状態で、本体部21の下梁部27に対して水平方向にスライド移動すると、爪部23aが金型100の把持軸部102の溝部102bに嵌まり込んで係合するように、構成されている。
水平駆動アクチュエータ28は、本体部21の下梁部27に設置され、係合保持部23を下梁部27の長手方向に沿って水平方向に駆動するように構成されている。水平駆動アクチュエータ28は、例えば、圧縮空気で作動するシリンダ機構を備えて構成され、シリンダ機構に圧縮空気が給排されることで、シリンダ機構におけるピストン部が水平方向に沿って変位するように構成されている。そして、シリンダ機構のピストン部は、係合保持部23に連結されており、係合保持部23は、ピストン部の変位とともに、水平方向に沿って下梁部27に対してスライド移動するように構成されている。水平駆動アクチュエータ28は、制御装置14からの制御指令に基づいて圧縮空気の給排が制御されることで作動するように構成されている。即ち、制御装置14からの制御指令に基づいて、図示が省略された圧縮空気の供給源が制御されて水平駆動アクチュエータ28への圧縮空気の給排が制御され、水平駆動アクチュエータ28が作動するように構成されている。
駆動力伝達部24は、後述する駆動機構11の駆動連結部31が軸部25に沿って上方に変位したときに駆動連結部31と当接し、上方に変位する駆動連結部31からの駆動力を本体部21に伝達して本体部21を駆動連結部31とともに上方に変位させる部材として設けられている。また、駆動力伝達部24は、本体部21の軸部25に沿って装着されたバネ部材として設けられ、本実施形態では、コイルバネとして設けられている。また、駆動力伝達部24は、一対の軸部25に対応して、一対で設けられている。
コイルバネとして設けられた一対の駆動力伝達部24のそれぞれは、本体部21の各軸部25が内側に挿入された状態で、即ち、各軸部25の外周に対して摺動自在に嵌められた状態で、各軸部25に沿って装着されている。また、各駆動力伝達部24は、本体部21の上梁部26と後述する駆動機構11の駆動連結部31との間に配置されている。そして、コイルバネとして設けられた各駆動力伝達部24のそれぞれは、一端側の端部が本体部21の上梁部26の下面に固定されており、他端側の端部が後述の駆動連結部31に当接可能に配置されている。
上記の構成により、駆動力伝達部24は、後述の駆動連結部31が軸部25に沿って上方に変位したときに駆動連結部31と当接するように構成されている。更に、駆動力伝達部24は、上方に変位する駆動連結部31からの駆動力を本体部21に伝達して本体部21を駆動連結部31とともに上方に変位させるように構成されている。
[駆動機構の構成]
図1に示す駆動機構12は、把持機構11を上下方向に駆動する機構として構成されている。そして、駆動機構12は、駆動連結部31、上下駆動部32、上方変位センサ33、下方変位センサ34、等を備えて構成されている。
駆動連結部31は、駆動機構12において、把持機構11の本体部21に連結された部分として設けられており、本体部21に設けられた軸部25に対して上下方向にスライド移動自在に連結されている。また、駆動連結部31は、駆動連結バー31aと、一対のスライドブッシュ31bとを備えている。
駆動連結バー31aは、上下駆動部32に対して片持ち状に支持されて水平方向に沿って片持ち状に延びる部材として設けられている。駆動連結バー31aには、スライドブッシュ31bが嵌め込まれて固定される貫通孔が設けられている。駆動連結バー31aに設けられた貫通孔は、一対のスライドブッシュ31bに対応して一対で設けられ、上下方向に駆動連結バー31aを貫通するように設けられている。
一対のスライドブッシュ31bのそれぞれは、円筒状の摺動用部材として設けられ、外周側において駆動連結バー31aの貫通孔に嵌め込まれて固定されている。そして、各スライドブッシュ31bは、本体部21の各軸部25が挿通されている。また、スライドブッシュ31bは、各軸部25の外周に対して摺動自在な状態で、各軸部25に装着されている。即ち、スライドブッシュ31bの内周面は、各軸部25の外周面に対して摺動自在に構成されている。
尚、スライドブッシュ31bは、リニアブッシュ、リニアブッシング、リニアベアリング、リニアボール軸受けなどと呼ばれる要素として構成されていてもよい。また、スライドブッシュ31bは、本実施形態で例示した形態以外の他の直動機構として構成されていてもよく、無給油ブッシュ、ミニチュアボールガイド、ボールスプライン、リニアガイドなどを用いて構成される形態が実施されてもよい。
駆動連結部31は、上記のように構成されていることで、本体部21の軸部25に対して上下方向にスライド移動自在に連結されている。駆動連結部31が後述の上下駆動部32によって駆動されて軸部25に沿って上方に変位すると、駆動連結部31のスライドブッシュ31bが駆動力伝達部24に当接する。そして、駆動連結部31は、駆動力伝達部24に当接した状態で更に上方に変位することで、本体部21を駆動連結部31とともに上方に変位させる。また、駆動連結部31は、コイルバネとして設けられた駆動力伝達部24が自然長の状態で駆動力伝達部24の下端部から更に下方に変位すると、駆動力伝達部24の下端部から離間した状態で軸部25に沿って下方に変位する。このとき、駆動連結部31は、軸部25に沿って下方に変位することで、本体部21に対して下方に相対変位することになる。
上下駆動部32は、片持ち状態で支持した駆動連結部31を上下方向に駆動する機構として構成されている。上下駆動部32は、本実施形態では、ボールネジ機構として設けられ、駆動モータ32a、ねじ軸32b、ボールねじ32c、ハウジング(図示省略)、等を備えて構成されている。ハウジングは、駆動モータ32aが設置されるとともに、ボールねじ32cが上下方向に移動するようにボールネジ32cの移動方向をガイドするガイド部を有して構成されている。また、駆動モータ32aが設置されてボールネジ32cの移動方向をガイドするハウジングは、搬送台車13の車体部13aに設置されている。
駆動モータ32aは、電動サーボモータとして構成され、制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、ねじ軸32bを回転駆動するように構成されている。また、駆動モータ32aは、制御装置14からの制御指令に基づいて回転数が制御され、ねじ軸32bを所定の回転数に亘って回転させるように構成されている。
ねじ軸32bは、軸棒に螺旋状のねじ溝が形成された軸部材として設けられ、軸方向が上下方向に沿って延びるように配置されている。そして、ねじ軸32bは、上端側において駆動モータ32aに連結され、下端側において搬送台車の車体部13aに対して軸受(図示省略)を介して回転自在に支持されている。駆動モータ32aが回転することで、ねじ軸32bは、上下方向に延びる軸心周りに回転駆動される。
ボールねじ32cは、ねじ軸32bが貫通するナット部と、ナット部の内側とねじ軸32bとの間に配置された複数のボールとを有している。ナット部は、ねじ軸32bのねじ溝に対向するねじ溝が形成されており、複数のボールは、ナット部のねじ溝とねじ軸32bのねじ溝との間で両方の溝に対して転動自在に嵌まり込むように配置されている。駆動モータ32aによって駆動されてねじ軸32bが軸心回りに回転することで、ボールねじ32cのナット部とねじ軸32bとの間で複数のボールが循環し、ボールねじ32cが、ハウジングのガイド部によって移動方向が上下方向にガイドされながら、ねじ軸32bに対して軸方向に相対移動する。
また、ボールねじ32cは、そのナット部において、駆動連結部31の駆動連結バー31aが固定されている。即ち、駆動連結部31は、ボールねじ32cにおいて、上下駆動部32に支持されている。そして、駆動連結部31は、ねじ軸32bに対して軸方向に沿って上下方向に変位するボールねじ32cに固定されていることで、ボールねじ32cとともに上下方向に変位するように構成されている。
上下駆動部32は、上記のように構成されていることで、駆動連結部31を上下方向に変位させるように構成されている。そして、本実施形態においては、上下駆動部32による駆動連結部31の上下方向の変位量は、所定の値(所定の距離)に設定されている。即ち、制御装置14は、駆動モータ32aを所定の回転数だけ回転させるように制御し、ねじ軸32bを所定の回転数だけ回転させる。これにより、駆動機構12においては、上下駆動部32が、駆動連結部31を上下方向に所定の距離だけ変位させるように、構成されている。このため、高さの異なる金型100を把持機構11によって把持する場合であっても、上下駆動部32は、駆動連結部31を上下方向に所定の距離だけ変位させるように構成されている。よって、駆動機構12によって把持機構11を駆動して高さの高い金型100を把持する場合は、駆動連結部31が把持機構11の軸部25に対して相対変位してスライド移動する距離が長くなる。一方、駆動機構12によって把持機構11を駆動して高さの低い金型100を把持する場合は、駆動連結部31が把持機構11の軸部25に対して相対変位してスライド移動する距離が短くなる。
上方変位センサ33は、駆動力伝達部24に駆動連結部31から所定の負荷より大きい負荷が作用して駆動力伝達部24が所定の変位量以上収縮した際に、駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量以上の距離を上方に相対変位したことを検出するセンサとして構成されている。
上方変位センサ33は、本実施形態では、近接センサとして構成されている。上方変位センサ33を構成する近接センサとしては、例えば、誘導形、静電容量形の近接センサを用いることができる。また、上方変位センサ33は、駆動連結部31に取り付けられて駆動連結部31から上方に向かって片持ち状に延びたセンサ支持部33aによって支持されている。また、上方変位センサ33は、金型100が把持機構11によって正常に吊り下げられた状態で、本体部21の上梁部26に対向する位置に位置するように、センサ支持部33aに対して支持されている。尚、コイルバネとして構成された駆動力伝達部24は、金型100の重量に対して、十分に硬いバネとして設けられており、即ち、十分にバネ定数の大きいバネとして設けられている。このため、駆動力伝達部24は、金型100が把持機構11によって正常に吊り下げられた状態では、わずかな変位量しか収縮をしないように構成されている。
また、上方変位センサ33は、駆動力伝達部24が所定の変位量収縮して駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量だけ上方に相対変位すると、駆動連結部31に固定されたセンサ支持部33aとともに、本体部21に対して上記の所定の変位量だけ上方に相対変位する。そして、上方変位センサ33は、本体部21に対して上記の所定の変位量だけ上方に相対変位することで、本体部21の上梁部26に対向する位置から上梁部26の上方へ外れた位置へと変位するように、センサ支持部33aに設けられている。近接センサとして構成された上方変位センサ33は、上梁部26の上方へ外れた位置へと変位したことを検出することで、駆動力伝達部24が所定の変位量以上収縮して、駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量以上の距離を上方に相対変位したことを検出するように、構成されている。
把持機構11に駆動連結部31から所定の負荷より大きい負荷が作用して、駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量以上の距離を上方に相対変位すると、そのことが、上方変位センサ33によって検出される。このため、金型100の吊り上げ動作の際に異常が生じて駆動連結部31から過大な駆動力が作用した場合に、そのことを検出することができる。例えば、金型100が設置孔110aに対して固着して取り出しにくい状態で設置されている場合のように、金型100の吊り上げ動作に異常が生じている場合を検出することができる。
上方変位センサ33は、制御装置14に接続されており、駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量以上の距離を上方に相対変位したことを検出すると、その検出結果の信号を制御装置14に送信する。制御装置14は、上方変位センサ33から検出結果の信号を受信すると、駆動機構12の作動を停止させる。これにより、金型100の吊り上げ動作の際に異常が生じているにも関わらず、駆動連結部31から過大な駆動力を把持機構11に作用させて、駆動機構12或いは把持機構11を破損させてしまうことが防止される。
下方変位センサ34は、駆動連結部31が本体部21における所定位置よりも下方に変位した際に、駆動連結部31が本体部21に対して上記の所定位置よりも下方に変位したことを検出するセンサとして構成されている。
下方変位センサ34は、本実施形態では、近接センサとして構成されている。下方変位センサ34を構成する近接センサとしては、例えば、誘導形、静電容量形の近接センサを用いることができる。また、下方変位センサ34は、駆動連結部31に取り付けられて駆動連結部31から下方に向かって片持ち状に延びたセンサ支持部34aによって支持されている。また、下方変位センサ34は、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに挿入されて金型100が設置台110に適切に設置され、駆動連結部31が所定の距離分だけ下方に変位して停止した状態で、本体部21の下梁部27よりも上方の位置又は下梁部27に対向する位置に位置するように、センサ支持部34aに対して支持されている。
また、下方変位センサ34は、駆動連結部31が本体部21における所定位置よりも下方に変位した際に、本体部21の下梁部27に対向する位置を通過して下梁部27の下方へ外れた位置へと変位するように、センサ支持部34aに設けられている。より具体的には、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに適切に嵌らずに金型100が設置台110に適切に設置されない状態で、駆動連結部31が更に下方に変位すると、駆動連結部31が本体部21における所定位置よりも下方に変位し、下方変位センサ34が、下梁部27の下方へ外れた位置へと変位する。尚、上記の所定位置は、例えば、軸部25における下梁部27側の位置であって、駆動連結部31が下梁部27に当接しない範囲の位置に設定される。駆動連結部31に対してセンサ支持部34aを介して支持される下方変位センサ34の位置は、駆動連結部31が上記の所定位置に達したときに、下梁部27の下端位置に対応する位置となるように、設定される。近接センサとして構成された下方変位センサ34は、下梁部27の下方へ外れた位置へと変位したことを検出することで、駆動連結部31が本体部21の所定位置よりも下方に変位したことを検出するように構成されている。
駆動連結部31が本体部21に対して所定位置よりも下方に変位すると、そのことが、下方変位センサ34によって検出される。このため、金型100の設置動作の際に異常が生じて金型100が設置孔110aに適切に嵌らず、金型100が設置台110に適切に設置されていないにも関わらず駆動連結部31のみが本体部21に対して過度に下降した場合に、そのことを検出することができる。
下方変位センサ34は、制御装置14に接続されており、駆動連結部31が本体部21の所定位置よりも下方に変位したことを検出すると、その検出結果の信号を制御装置14に送信する。制御装置14は、下方変位センサ34から検出結果の信号を受信すると、駆動機構12の作動を停止させる。これにより、金型100の設置動作の際に異常が生じているにも関わらず、駆動連結部31が把持機構11に対して過度に変位してしまい、駆動機構12或いは把持機構11を破損させてしまうことが防止される。
[搬送装置の動作]
次に、搬送装置1の動作について説明する。搬送装置1は、ベルトコンベア機構上の設置台110から各工程の装置へと金型100を移し替えるように搬送し、或いは、各工程の装置からベルトコンベア機構上の設置台110へと金型100を移し替えるように搬送する動作を行う。そして、搬送装置1は、制御装置14からの制御指令に基づいて、把持機構11によって金型100を把持した状態で搬送台車13が作動することで、ベルトコンベア機構上の設置台110と各工程の装置との間で金型100を移送して搬送する動作を行う。
また、搬送装置1は、制御装置14からの制御指令に基づいて、把持機構11及び駆動機構12が作動することで、金型100が設置されている設置台110から金型100を吊り上げる吊り上げ動作を行う。また、搬送装置1は、制御装置14からの制御指令に基づいて、把持機構11及び駆動機構12が作動することで、金型100を設置台110へと設置する設置動作を行う。以下、搬送装置1による金型100の吊り上げ動作及び設置動作について更に詳しく説明する。
[金型の吊り上げ動作]
図3乃至図6は、搬送装置1による金型100の吊り上げ動作を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構11を金型100とともに模式的に示す側面図である。搬送装置1による金型100の吊り上げ動作が行われる場合は、図3に示すように、金型100は、設置孔110aに挿入された状態で、設置台110に設置されている。そして、金型100の吊り上げ動作が開始される際には、設置台110に設置された搬送対象の金型100の上方に把持機構11が配置される位置まで、搬送台車13が駆動機構12を移動させる。金型100の上方に把持機構11が配置された状態で、金型100の吊り上げ動作が開始される。
金型100の吊り上げ動作が開始される際には、上記のように、金型100の上方に把持機構11が配置された状態で、制御装置14の制御指令に基づいて、駆動機構12が作動する。このとき、駆動機構12は、制御装置14からの制御指令に基づいて、上下駆動部32の駆動モータ32aが所定の回転数だけ回転し、上下駆動部32が駆動連結部31が下方に向かって所定の距離だけ下降する。
上記の駆動機構12の動作の開始時には、把持機構11は、軸部25にてスライド移動自在に連結された駆動連結部31に対して、駆動力伝達部24にて当接した状態で、支持されている。この状態で、上下駆動部32が駆動連結部31を下降させ、図3にて矢印で示すように、駆動連結部31とともに把持機構11が金型100に向かって下降する。そして、把持機構11が金型100の近傍まで下降すると、まず、把持機構11の当接部22が、金型100の頂部102aに当接する。駆動連結部31は、把持機構11の本体部21の軸部25に上下にスライド移動自在に連結されているため、図4に示すように、当接部22が金型100の頂部102aに当接して本体部21の金型100に対する相対位置が変化しない状態で、駆動連結部31のみが本体部21の軸部25に沿って(図4に矢印で示す方向に)スライドしながら下降する。
そして、上下駆動部32による駆動連結部31の上下方向の変位量が所定の値(所定の距離)に設定されているため、駆動連結部31は、本体部21の軸部25の途中位置で停止する(図5を参照)。当接部22が金型100の頂部102aに当接しているともに駆動連結部31が停止した状態で、制御装置14の制御指令に基づいて、把持機構11の水平駆動アクチュエータ28が作動し、係合保持部23が、水平方向に下梁部27に沿って把持軸部102に向かって(図5にて矢印で示す方向に向かって)スライド移動する。そして、図5に示すように、係合保持部23の先端部分の爪部23aが、金型100の把持軸部102の溝部102bに対して嵌まり込んで係合する。このように、係合保持部23が金型100に係合することで、当接部22と係合保持部23による金型100の把持動作が完了する。
金型100の把持動作が完了すると、制御装置14からの制御指令に基づいて、上下駆動部32の駆動モータ32aが作動し、上下駆動部32が駆動連結部31を上昇させる。駆動連結部31は、上昇開始時は、本体部21の軸部25に対してスライド移動しながら上昇する。そして、駆動連結部31が本体部21の軸部25に沿って上方に変位すると、駆動連結部31は、把持機構11における駆動力伝達部24に当接する。そして、駆動連結部31が駆動力伝達部24に当接すると、図6に示すように、上方に変位する駆動連結部31からの駆動力が本体部21に伝達されて本体部21が駆動連結部31とともに上方に(図6にて矢印で示す方向に)変位する。これにより、把持機構11が金型100を把持した状態で上昇し、金型100の挿入軸部103が設置孔110aから抜き出され、金型100が吊り上げられる動作が行われることになる。駆動連結部31が上方の所定の高さ位置まで上昇すると、駆動機構12の作動が停止し、金型100の吊り上げ動作が完了する。金型100の吊り上げ動作が完了すると、制御装置14からの制御指令に基づいて、搬送台車13が作動し、把持した金型100の搬送が行われる。
ここで、金型100の吊り上げ動作時における金型100の高さの異なる場合の搬送装置1の動作について更に説明する。図7は、搬送装置1による金型100の吊り上げ動作時における金型100の高さの違いに応じた搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構11を金型100とともに模式的に示す側面図である。尚、図7(a)は、搬送装置1による金型100の吊り上げ動作時における金型100の高さが高い場合の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図である。一方、図7(b)は、搬送装置1による金型100の吊り上げ動作時における金型100の高さが低い場合の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図である。
金型100の吊り上げ動作の際には、搬送装置1は、上述のように作動する。このため、把持機構11が金型100の吊り上げ動作のために下降する際、図7(a)に示すように、金型100の高さが高い場合は、把持機構11の当接部22が高い位置にて金型100の頂部102aに当接する。そして、本体部21の金型100に対する相対位置が変化しない状態で、駆動連結部31のみが本体部21の軸部25にスライドしながら下降し、上下方向の変位量が設定された所定の距離に達した段階で、駆動連結部31は、本体部21の軸部25の途中位置で停止する。尚、図7では、上下方向の変位量が設定された所定の距離に達した段階での駆動連結部31の停止位置を二点鎖線で示している。そして、駆動連結部31の下降動作の停止後、前述の通り、把持機構11による把持動作が行われ、金型100が吊り上げられる動作が行われる。尚、図7(a)は、高さの高い金型100に対して把持機構11による把持動作が行われ、金型100が吊り上げられる動作が行われる前の状態を例示している。
一方、把持機構11が金型100の吊り上げ動作のために下降する際、図7(b)に示すように、金型100の高さが低い場合は、把持機構11の当接部22が低い位置にて金型100の頂部102aに当接する。そして、本体部21の金型100に対する相対位置が変化しない状態で、駆動連結部31のみが本体部21の軸部25にスライドしながら下降し、上下方向の変位量が設定された所定の距離に達した段階で、駆動連結部31は、本体部21の軸部25の途中位置で停止する。そして、前述の通り、把持機構11による把持動作が行われ、金型100が吊り上げられる動作が行われる。尚、図7(b)は、高さの低い金型100に対して把持機構11による把持動作が行われ、金型100が吊り上げられる動作が行われる前の状態を例示している。
上記の通り、搬送装置1によると、金型100の高さが異なる場合であっても、把持機構11の下降位置を個別に制御する必要がなく、制御装置14に対して金型情報を入力する必要もない。よって、搬送装置1によると、金型100の高さが異なる場合であっても、金型100の吊り上げ動作に容易に対応できるため、金型100の吊り上げ動作の自動化を容易に達成することができる。また、搬送装置1によると、金型100の吊り上げ動作に容易に対応できる構成を、把持機構11に当接部22及び駆動力伝達部24を設けるとともに、駆動機構12の駆動連結部31が把持機構11の本体部21の軸部25にスライド移動自在に連結された簡素な構成によって実現することができる。
次に、金型100の吊り上げ動作の際の異常検出時の搬送装置1の動作について更に説明する。図8は、搬送装置1による金型100の吊り上げ動作時における異常検出時の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構11を金型100とともに模式的に示す側面図である。尚、図8(a)は、金型100の吊り上げ動作時に異常が検出されていない正常な場合の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図である。一方、図8(b)は、金型100の吊り上げ動作時に異常が検出された場合の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図である。
金型100の吊り上げ動作が行われる際には、前述の通り、把持機構11による把持動作が行われ、駆動連結部31が上昇して駆動力伝達部24に当接し、駆動連結部31とともに把持機構11が上昇し、金型100が吊り上げられる動作が行われる。このとき、図8(a)に示す正常な場合は、駆動連結部31が駆動力伝達部24に当接して上昇すると、駆動連結部31とともに、把持機構11及び把持機構11に把持された金型100が上昇する。このとき、上方変位センサ33は、本体部21の上梁部26に対向する位置に位置しており、金型100が把持機構11によって正常に吊り下げられた状態であることが検知されており、金型100の吊り上げ動作の際の異常は検出されない。
一方、図8(b)に示すように、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに固着等して取り出しにくい状態で金型100が設置台110に設置されている場合は、上方変位センサ33によって、金型100の吊り上げ動作時の異常が検出される。挿入軸部103が設置孔110aに固着等して金型100が設置台110から取り出しにくい状態の場合は、駆動連結部31が駆動力伝達部24に当接して上昇すると、金型100及び本体部21は上昇せず、駆動力伝達部24が収縮し、駆動連結部31が本体部21に対して上方に相対変位する。そして、駆動力伝達部24が所定の変位量収縮し駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量だけ上方に相対変位する。
上記に伴い、上方変位センサ33は、駆動連結部31に固定されたセンサ支持部33aとともに、本体部21に対して上記の所定の変位量だけ上方に相対変位する。そして、上方変位センサ33は、本体部21に対して上記の所定の変位量だけ上方に相対変位することで、本体部21の上梁部26に対向する位置から上梁部26の上方へ外れた位置へと変位する。上方変位センサ33は、上梁部26の上方へ外れた位置へと変位したことを検出することで、駆動力伝達部24が所定の変位量以上収縮して、駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量以上の距離を上方に相対変位したことを検出する。これにより、上方変位センサ33によって、金型100の吊り上げ動作時の異常が検出される。
上方変位センサ33は、上記のようにして金型100の吊り上げ動作時の異常を検出すると、その検出結果の信号を制御装置14に送信する。上方変位センサ33から検出結果の信号を受信した制御装置14は、駆動機構12の作動を停止させる。これにより、金型100の吊り上げ動作の際に異常が生じているにも関わらず、駆動連結部31から過大な駆動力を把持機構11に作用させて、駆動機構12或いは把持機構11を破損させてしまうことが防止される。
[金型の設置動作]
図9乃至図12は、搬送装置1による金型100の設置動作を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構11を金型100とともに模式的に示す側面図である。搬送装置1による金型100の設置動作が行われる場合は、図9に示すように、金型100は、搬送装置1において把持機構11に把持された状態で保持されている。そして、金型100の設置動作が開始される際には、設置台110における金型100を設置する設置位置である設置孔110aの上方に把持機構11に把持された金型100が配置される位置まで、搬送台車13が駆動機構12を移動させる。把持機構11に把持された金型100が設置位置である設置孔110aの上方に配置された状態で、金型100の設置動作が開始される。
金型100の設置動作が開始される際には、上記のように、把持機構11に把持された金型100が設置孔110aの上方に配置された状態で、制御装置14の制御指令に基づいて、駆動機構12が作動する。このとき、駆動機構12は、制御装置14からの制御指令に基づいて、上下駆動部32の駆動モータ32aが所定の回転数だけ回転し、上下駆動部32が駆動連結部31が下方に向かって所定の距離だけ下降する。
上記の駆動機構12の動作の開始時には、金型100を当接部22と係合保持部23とで把持した状態の把持機構11は、軸部25にてスライド移動自在に連結された駆動連結部31に対して、駆動力伝達部24に当接した状態で、支持されている。この状態で、上下駆動部32が駆動連結部31を下降させる。これにより、図9にて矢印で示すように、金型100を把持した把持機構11が駆動連結部31とともに下降し、金型100が設置位置である設置孔110aに向かって下降する。金型100が設置孔110aまで下降し、挿入軸部103が設置孔110aに挿入されて金型100が設置孔110aに設置されると、把持機構11は、金型100とともに下降を停止する。そして、金型100が設置孔110aに設置されて把持機構11が金型100とともに停止した状態で、図10に示すように、駆動連結部31のみが本体部21の軸部25に沿って(図10にて矢印で示す方向に沿って)スライドしながら下降する。
そして、上下駆動部32による駆動連結部31の上下方向の変位量が所定の値(所定の距離)に設定されているため、駆動連結部31は、本体部21の軸部25の途中位置で停止する(図11を参照)。駆動連結部31が停止した状態で、制御装置14の制御指令に基づいて、把持機構11の水平駆動アクチュエータ28が作動し、係合保持部23が、水平方向に沿って把持軸部102と反対側に向かって(図11にて矢印で示す方向に向かって)スライド移動する。そして、図11に示すように、係合保持部23の先端部分の爪部23aが、金型100の溝部102bから外れ、係合保持部23の金型100への係合が解除される。このように、係合保持部23の金型100への係合が解除されることで、把持機構11による金型100の把持が解除される。
金型100の把持が解除されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、上下駆動部32の駆動モータ32aが作動し、上下駆動部32が駆動連結部31を上昇させる。駆動連結部31は、上昇開始時は、本体部21の軸部25に対してスライド移動しながら上昇する。そして、駆動連結部31が本体部21の軸部25に沿って上方に変位すると、駆動連結部31は、把持機構11における駆動力伝達部24に当接する。そして、駆動連結部31が駆動力伝達部24に当接すると、上方に変位する駆動連結部31からの駆動力が本体部21に伝達されて本体部21が駆動連結部31とともに上方に(図12にて矢印で示す方向に)変位する。これにより、把持機構11は、金型100の把持動作を解除した状態で上昇し、金型100の設置位置への設置動作が終了することになる。
ここで、金型100の設置動作時における金型100の高さの異なる場合の搬送装置1の動作について更に説明する。図13は、搬送装置1による金型100の設置動作時における金型100の高さの違いに応じた搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構11を金型100とともに模式的に示す側面図である。尚、図13(a)は、搬送装置1による金型100の設置動作時における金型100の高さが高い場合の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図である。一方、図13(b)は、搬送装置1による金型100の設置動作時における金型100の高さが低い場合の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図である。
金型100の設置動作の際には、搬送装置1は、上述のように作動する。このため、把持機構11が金型100の設置動作のために下降する際、把持機構11は、設置位置である設置孔110aに設置されて下降を停止した金型100とともに下降を停止する。このため、図13(a)に示すように、金型100の高さが高い場合は、把持機構11は、高さの高い位置にて下降を停止することになる。そして、把持機構11が金型100とともに停止した状態で、駆動連結部31のみが本体部21の軸部25にスライドしながら下降し、上下方向の変位量が設定された所定の距離に達した段階で、駆動連結部31は、本体部21の軸部25の途中位置で停止する。尚、図13では、上下方向の変位量が設定された所定の距離に達した段階での駆動連結部31の停止位置を二点鎖線で示している。そして、駆動連結部31の下降動作の停止後、前述の通り、把持機構11による把持を解除する動作が行われ、把持機構11が上昇し、金型100の設置動作が完了する。尚、図13(a)は、高さの高い金型100の設置動作が行われ、把持機構11による把持の解除が行われる前の状態を例示している。
一方、把持機構11が金型100の設置動作のために下降する際、図13(b)に示すように、金型100の高さが低い場合は、設置位置である設置孔110aに設置された金型100とともに下降を停止した把持機構11は、高さの低い位置にて下降を停止することになる。そして、把持機構11が金型100とともに停止した状態で、駆動連結部31のみが本体部21の軸部25にスライドしながら下降し、上下方向の変位量が設定された所定の距離に達した段階で、駆動連結部31は、本体部21の軸部25の途中位置で停止する。そして、前述の通り、把持機構11による把持を解除する動作が行われ、把持機構11が上昇し、金型100の設置動作が完了する。尚、図13(b)は、高さの低い金型100の設置動作が行われ、把持機構11による把持の解除が行われる前の状態を例示している。
上記の通り、搬送装置1によると、金型100の高さが異なる場合であっても、把持機構11の下降位置を個別に制御する必要がなく、制御装置14に対して金型情報を入力する必要もない。よって、搬送装置1によると、金型100の高さが異なる場合であっても、金型100の設置動作に容易に対応できるため、金型100の設置動作の自動化を容易に達成することができる。また、搬送装置1によると、金型100の設置動作に容易に対応できる構成を、把持機構11に当接部22及び駆動力伝達部24を設けるとともに、駆動機構12の駆動連結部31が把持機構11の本体部21の軸部25にスライド移動自在に連結された簡素な構成によって実現することができる。
次に、金型100の設置動作の際の異常検出時の搬送装置1の動作について更に説明する。図14は、搬送装置1による金型100の設置動作時における異常検出時の搬送装置1の動作を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構11を金型100とともに模式的に示す側面図である。尚、図14(a)は、金型100の設置動作時に異常が発生し、異常を検出する直前の搬送装置1の状態を示す図である。一方、図14(b)は、金型100の設置動作時に異常が発生し、異常を検出した搬送装置1の状態を示す図である。
金型100の設置動作が行われる際には、前述の通り、金型100を把持した把持機構11が駆動連結部31とともに下降し、金型100が設置位置である設置孔110aに向かって下降する。このとき、動作が正常に行われる場合は、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに挿入されて金型100が設置台110に適切に設置され、駆動連結部31が、設定された所定の距離分だけ下方に変位した状態で停止する。この状態では、下方変位センサ34は、本体部21の下梁部27よりも上方の位置又は下梁部27に対向する位置に位置している(図11及び図13を参照)。このため、金型100が設置位置である設置孔110aに正常に設置された状態であることが検知されており、金型100の設置動作の際の異常は検出されない。
一方、図14に示すように、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに適切に嵌らずに金型100が設置台110に適切に設置されない状態が発生した場合は、下方変位センサ34によって、金型100の設置動作の異常が検出される。図14では、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに適切に嵌らずに異常が発生した場合として、金型100の挿入軸部103が設置孔110aの縁に当接した場合を例示している。
図14(a)に示すように、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに適切に嵌らずに異常が発生すると、金型100が下降を停止するとともに、金型100を把持した把持機構11も下降を停止する。しかし、異常が発生して金型100及び把持機構11が下降を停止しても、駆動連結部31は、停止せず、設定された所定の距離に達するまで下降を継続しようとする。このとき、把持機構11は、金型100が正常に設置された状態で停止する予定の位置よりも高い位置に位置している。このため、駆動連結部31は、本体部21に対して、金型100が正常に設置される場合よりも更に下方に相対変位することになる。
そして、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに適切に嵌っていない状態で、駆動連結部31が更に下方に変位すると、図14(b)に示すように、駆動連結部31が本体部21における所定位置よりも下方に変位する。これに伴い、下方変位センサ34も、駆動連結部31に固定されたセンサ支持部34aとともに、駆動連結部31の変位量と同じ変位量だけ本体部21に対して下方に変位する。そして、下方変位センサ34は、駆動連結部31の変位量と同じ変位量だけ本体部21に対して下方に変位することで、本体部21の下梁部27に対向する位置を通過して下梁部27の下方へ外れた位置へと変位する。下方変位センサ34は、下梁部27の下方へ外れた位置へと変位したことを検出することで、駆動連結部31が本体部21の所定位置よりも下方に変位したことを検出する。これにより、下方変位センサ34によって、金型100の設置動作時の異常が検出される。
下方変位センサ34は、上記のようにして金型100の設置動作時の異常を検出すると、その検出結果の信号を制御装置14に送信する。下方変位センサ34から検出結果の信号を受信した制御装置14は、駆動機構12の作動を停止させる。これにより、金型100の設置動作の際に異常が生じているにも関わらず、駆動連結部31が把持機構11に対して過度に変位してしまい、駆動機構12或いは把持機構11を破損させてしまうことが防止される。
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態によると、金型(搬送対象)100の高さが異なる場合であっても、金型100の吊り上げ動作に容易に対応できるため、金型100の吊り上げ動作の自動化を容易に達成することができる。また、本実施形態によると、金型100の吊り上げ動作に容易に対応できる構成を、把持機構11に当接部22及び駆動力伝達部24を設けるとともに、駆動機構12の駆動連結部31が把持機構11の本体部21の軸部25にスライド移動自在に連結された簡素な構成によって実現することができる。
また、本実施形態によると、金型100の高さが異なる場合であっても、金型100の設置動作に容易に対応できるため、金型100の設置動作の自動化を容易に達成することができる。また、本実施形態によると、金型100の設置動作に容易に対応できる構成を、把持機構11に当接部22及び駆動力伝達部24を設けるとともに、駆動機構12の駆動連結部31が把持機構11の本体部21の軸部25にスライド移動自在に連結された簡素な構成によって実現することができる。
従って、本実施形態によると、金型100の高さが異なる場合であっても、簡素な構成によって金型100の吊り上げ動作及び設置動作に容易に対応でき、金型100の吊り上げ動作及び設置動作の自動化を容易に達成することができる搬送装置1を提供することできる。
また、本実施形態によると、駆動力伝達部24がバネ部材として構成されるため、金型100の吊り上げ動作の際に駆動連結部31から過大な駆動力が作用した場合であっても、バネ部材の弾性変形によって吸収し、本体部21に過大な応力が生じてしまうこと抑制することができる。
また、本実施形態によると、把持機構11に駆動連結部31から所定の負荷より大きい負荷が作用して、駆動連結部31が本体部21に対して所定の変位量以上の距離を上方に相対変位すると、そのことが、上方変位センサ33によって検出される。このため、金型100の吊り上げ動作の際に異常が生じて駆動連結部31から過大な駆動力が作用した場合に、そのことを検出することができる。例えば、金型100が設置位置である設置孔110aに対して固着して取り出しにくい状態で設置されている場合のように、金型100の吊り上げ動作に異常が生じている場合を検出することができる。このように、金型100の吊り上げ動作の際の異常を検出できることで、その検出結果に基づいて、搬送装置1の動作を停止させることができる。これにより、金型100の吊り上げ動作の際に異常が生じているにも関わらず、駆動連結部31から過大な駆動力を把持機構11に作用させて、駆動機構12或いは把持機構11を破損させてしまうことを防止することができる。
また、本実施形態によると、駆動連結部31が本体部21に対して所定位置よりも下方に変位すると、そのことが、下方変位センサ34によって検出される。このため、金型100の設置動作の際に異常が生じて金型100が設置位置に適切に設置されず、駆動連結部31のみが本体部21に対して過度に下降した場合に、そのことを検出することができる。例えば、金型100が設置位置である設置孔110aに対して適切に嵌らず、金型100が設置孔110aに設置されていないにも関わらず駆動連結部31のみが下降する場合のように、金型100の設置動作に異常が生じている場合を検出することができる。このように、金型100の設置動作の際の異常を検出できることで、その検出結果に基づいて、搬送装置1の動作を停止させることができる。これにより、金型100の設置動作の際に異常が生じているにも関わらず、駆動連結部31が把持機構11に対して過度に変位してしまい、駆動機構12或いは把持機構11を破損させてしまうことを防止することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図15は、本発明の第2実施形態に係る搬送装置2の模式的な側面図であって、搬送装置2における駆動機構12の一部及び把持機構41を金型100とともに示す図である。
第2実施形態の搬送装置2は、第1実施形態の搬送装置1と同様に、搬送対象としての金型100を把持した状態で搬送するための装置として構成されている。尚、搬送装置2についての以下の説明においては、前述の第1実施形態と同様に構成される要素及び前述の第1実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
搬送装置2は、金型100を把持する把持機構41と、把持機構41を上下方向に駆動する駆動機構12と、駆動機構12を移動させる搬送台車13と、把持機構41、駆動機構12、及び搬送台車13の動作を制御する制御装置14と、を備えて構成されている。搬送装置2の駆動機構12、搬送台車13、及び制御装置14は、第1実施形態の搬送装置1の駆動機構12、搬送台車13、及び制御装置14と同様に構成されている。尚、図15においては、搬送台車13、制御装置14、駆動機構12における上方変位センサ33及び下方変位センサ34の図示は省略されている。
搬送装置2は、把持機構41の構成の一部において、第1実施形態の搬送装置1と異なっている。以下、第1実施形態と異なる把持機構41の構成について説明する。
把持機構41は、駆動機構12に連結され、金型100を把持する機構として設けられている。また、把持機構41は、駆動機構12に対してスライド移動可能に連結されており、搬送装置2が金型100を搬送する際に、高さの異なる金型100に応じて金型100を把持する機構として設けられている。そして、把持機構41は、本体部42、当接部22、係合保持部23、駆動力伝達部24、水平駆動アクチュエータ28、等を備えて構成されている。把持機構41は、本体部42の構成において、第1実施形態の搬送装置1の把持機構11の構成と異なっている。
本体部42は、駆動機構12に対して駆動連結部31にて連結される部分として設けられている。そして、本体部42は、第1本体部分43、第2本体部分44、水平スライド機構45、水平動作規制部46、上下駆動アクチュエータ47、等を備えて構成されている。
第1本体部分43は、本体部42において上方に配置された部分として設けられ、駆動機構12の駆動連結部31に連結される部分としての一対の軸部25と、一対の軸部25の上側の端部を連結する上梁部26とを備えて構成されている。第1本体部分43における一対の軸部25の下側の端部は、後述する水平スライド機構45の水平プレート51に連結されている。
第2本体部分44は、第1本体部分43の下方に配置され、当接部22及び係合保持部23が設けられる部分として構成されている。そして、第2本体部分44は、一対の柱部58と、下梁部27とを備えて構成されている。一対の柱部58のそれぞれは、上下方向に延びる円柱状に形成されている。一対の柱部58は、互いに平行に上下方向に延びるように設けられている。また、一対の柱部58の上側の端部は、後述する水平スライド機構45の水平プレート53に連結されている。また、一対の柱部58の下側の端部は、下梁部27に連結されている。下梁部27には、第1実施形態と同様に、当接部22、係合保持部23、及び水平駆動アクチュエータ28が設けられている。
水平スライド機構45は、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動可能に支持する機構として設けられている。また、水平スライド機構45は、第1本体部分43と第2本体部分44との間に設けられ、第1本体部分43及び第2本体部分44に連結されている。そして、水平スライド機構45は、駆動連結部31が連結された第1本体部分43に対して当接部22及び係合保持部23が設けられた第2本体部分44を水平方向にスライド移動可能に支持することで、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動可能に支持するように構成されている。
また、水平スライド機構45は、より具体的には、水平プレート51、水平プレート52、水平プレート53、レール54、ブロック55、レール56、ブロック57を備えて構成されている。
水平プレート(51、52、53)は、いずれも、外形が矩形の板状の部材として設けられており、矩形状に広がる面方向が水平方向に沿って配置されている。そして、水平プレート(51、52、53)は、水平方向に沿って互いに平行に配置された状態で、上下方向に沿って並んで配置されている。また、水平プレート51が最も上側に配置され、水平プレート53が最も下側に配置され、水平プレート52が、水平プレート51及び52の間に配置されている。また、水平プレート51には、その上面側において、一対の軸部25の下側の端部が固定されて連結されている。また、水平プレート53には、その下面側において、一対の柱部58の上側の端部が固定されて連結されている。
また、水平プレート51には、その中央部分において、上下方向に貫通する貫通孔51aが設けられている。また、水平プレート52には、その中央部分において、上下方向に貫通する貫通孔52aが設けられている。また、水平プレート53には、その中央部分において、上下方向に貫通する貫通孔53aが設けられている。水平プレート(51、52、53)に設けられた貫通孔(51a、52a、53a)は、上下方向に並んで同軸に沿って配置され、後述する水平動作規制部46が貫通自在な孔として設けられている。
レール54は、一対で設けられ、水平プレート52の上面側に固定されている。一対のレール54は、水平プレート52の上面に沿って互いに平行に延びるように設けられ、水平方向に沿って延びるように設けられている。
ブロック55は、複数設けられ、それぞれ水平プレート51の下面側に固定されている。また、複数のブロック55のそれぞれは、レール54に対してスライド移動自在に取り付けられている。尚、複数のブロック55は、例えば、4つ設けられており、一対のレール54のそれぞれに対して、一対で対応して設けられている。そして、各ブロック55は、レール54をスライド移動自在な状態で且つ吊り下げた状態で支持している。よって、レール54及びブロック55は、水平プレート51に対して水平プレート52を水平方向に沿ってスライド移動自在に支持するリニアガイドとして構成されている。尚、水平プレート51及び水平プレート52には、水平プレート51から水平プレート52が脱落してしまうことを防止するためのストッパ(図示省略)が設けられている。
レール56は、一対で設けられ、水平プレート52の下面側に固定されている。一対のレール56は、水平プレート52の下面に沿って互いに平行に延びるように設けられ、水平方向に沿って延びるように設けられている。
ブロック57は、複数設けられ、それぞれ水平プレート53の上面側に固定されている。また、複数のブロック57のそれぞれは、レール56に対してスライド移動自在に取り付けられている。尚、複数のブロック57は、例えば、4つ設けられており、一対のレール56のそれぞれに対して、一対で対応して設けられている。そして、各ブロック57は、レール56に対して、スライド移動自在な状態で且つ吊り下げられた状態で、支持されている。よって、レール56及びブロック57は、水平プレート52に対して水平プレート53を水平方向に沿ってスライド移動自在に支持するリニアガイドとして構成されている。尚、水平プレート52及び水平プレート53には、水平プレート52から水平プレート53が脱落してしまうことを防止するためのストッパ(図示省略)が設けられている。
水平スライド機構45は、上記の構成を備えていることにより、第1本体部分43に対して第2本体部分44を水平方向にスライド移動可能に支持し、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動可能に支持している。
尚、本実施形態では、水平プレート51及び水平プレート53が、本発明の第1水平プレート(51、53)を構成し、水平プレート52が、本発明の第2水平プレート52を構成している。即ち、水平スライド機構45は、水平方向に沿って配置される第1水平プレート51及び第2水平プレート52と、第1水平プレート51及び第2水平プレート52のうちの一方の第2水平プレート52に固定されたレール54と、第1水平プレート51及び第2水平プレート52のうちの他方の第1水平プレート51に固定されてレール54に対して水平方向にスライド移動自在に取り付けられたブロック55と、を有している。更に、水平スライド機構45は、水平方向に沿って配置される第1水平プレート53及び第2水平プレート52と、第1水平プレート53及び第2水平プレート52のうちの一方の第2水平プレート52に固定されたレール56と、第1水平プレート53及び第2水平プレート52のうちの他方の第1水平プレート53に固定されてレール56に対して水平方向にスライド移動自在に取り付けられたブロック57と、を有している。
また、水平スライド機構45においては、レール54及びブロック55が水平プレート51に対して水平プレート52を水平方向に沿ってスライド移動自在に支持する方向と、レール56及びブロック57が水平プレート52に対して水平プレート53を水平方向に沿ってスライド移動自在に支持する方向とは、互いに直交する方向に設定されている。このため、水平スライド機構45は、水平方向に延びる直交する2軸のそれぞれに沿って、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動可能に支持している。
水平動作規制部46は、駆動連結部31に対する当接部22及び係合保持部23の水平方向の動作を規制可能な部材として設けられている。そして、水平動作規制部46は、駆動連結部31が連結された第1本体部分43に対する当接部22及び係合保持部23が設けられた第2本体部分44の水平方向の動作を規制することで、駆動連結部31に対する当接部22及び係合保持部23の水平方向の動作を規制するように構成されている。
また、本実施形態では、水平動作規制部46は、円柱状に形成された部分と先端側で円錐状に設けられた部分とを有するピン状の部材として設けられ、軸方向が上下方向に延びた状態で配置されている。そして、水平動作規制部46は、第1本体部分43に対する第2本体部分44の水平方向の動作を規制する規制ピンとして構成されている。尚、以下の説明においては、水平動作規制部46について、規制ピン46とも称する。
規制ピン46は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52に対して、上下方向に相対変位可能に設けられている。また、規制ピン46は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52のそれぞれに設けられた貫通孔(51a、53a、52a)に対応した位置で、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52に対して、上下方向に相対変位するように設けられている。
そして、規制ピン46は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52のそれぞれに設けられた貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を規制するように構成されている。
そして、規制ピン46は、第1水平プレート(51a、53a)及び第2水平プレート52の少なくともいずれかの貫通孔(51a、53a、52a)から脱抜された状態で第1水平プレート(51a、53a)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容するように構成されている。本実施形態では、規制ピン46は、第1水平プレート51及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、52a)から脱抜された状態で、第1水平プレート51の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容するように構成されている。更に、規制ピン46は、第1水平プレート53及び第2水平プレート52の貫通孔(53a、52a)の一方の貫通孔52aから脱抜された状態で、第1水平プレート53の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容するように構成されている。
上下駆動アクチュエータ47は、第2本体部分44の下梁部27に設置され、規制ピン46を下梁部27の長手方向と直交する方向に沿って上下方向に駆動するように構成されている。上下駆動アクチュエータ47は、例えば、圧縮空気で作動するシリンダ機構を備えて構成され、シリンダ機構に圧縮空気が給排されることで、シリンダ機構におけるピストン部が水平方向に沿って変位するように構成されている。そして、シリンダ機構のピストン部は、規制ピン46に連結されており、規制ピン46は、ピストン部の変位とともに、上下方向に沿って移動し、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52に対して上下方向に相対変位するように構成されている。上下駆動アクチュエータ47は、制御装置14からの制御指令に基づいて圧縮空気の給排が制御されることで作動するように構成されている。即ち、制御装置14からの制御指令に基づいて、図示が省略された圧縮空気の供給源が制御されて上下駆動アクチュエータ47への圧縮空気の給排が制御され、上下駆動アクチュエータ47が作動するように構成されている。
搬送装置2は、第1実施形態の搬送装置1が備える構成に加えて、更に、上述した水平スライド機構45及び規制ピン(水平動作規制部)46を備えている。このため、搬送装置2は、搬送装置1の動作に加えて、水平スライド機構45及び規制ピン46による動作も行うことができる。
図16は、搬送装置2の動作を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構41を金型100とともに模式的に示す側面図である。尚、図16(a)は、規制ピン46が、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を規制した状態を示している。一方、図16(b)は、規制ピン46が、第1水平プレート51及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、52a)から脱抜された状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容した状態を示している。尚、図16(a)及び図16(b)では、把持機構41が金型100を把持した状態を例示している。
搬送装置2が、金型100の吊り上げ動作を行う場合は、設置台110に設置された搬送対象の金型100の上方に把持機構41が配置される位置まで、搬送台車13が駆動機構12を移動させる。金型100の上方に把持機構41が配置された状態で、金型100の吊り上げ動作が開始される。このとき、上下駆動アクチュエータ47は、制御装置14からの制御指令に基づいて、規制ピン46を下方に変位させている。これにより、規制ピン46は、第1水平プレート51及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、52a)から脱抜された状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容している。
金型100の吊り上げ動作が開始される際には、上記のように、金型100の上方に把持機構41が配置された状態で、制御装置14の制御指令に基づいて、駆動機構12が作動する。そして、駆動機構12が作動することで、上下駆動部32が駆動連結部31を下降させ、駆動連結部31とともに把持機構41が金型100に向かって下降する。そして、把持機構41が金型100の位置まで下降すると、把持機構41の当接部22が、金型100の頂部102aに当接する。そして、当接部22の頂部102aへの当接後、駆動連結部31のみが軸部25に対してスライド移動し、その後、駆動連結部31が下降を停止する。
駆動連結部31が下降を停止すると、把持機構41が制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、係合保持部23が金型100に係合し、金型100の把持動作が行われる。このとき、金型100の中心位置と把持機構41の中心位置とに若干の位置ずれがあっても、水平スライド機構45は、把持動作時に生じる負荷に応じて、自律的に、第1本体部分43を第2本体部分44に対してスライド移動させる。これにより、水平スライド機構45は、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動させ、金型100の中心位置と把持機構41の中心位置との位置ずれを吸収する。このため、当接部22及び係合保持部23が設けられた第2本体部分44の中心位置と金型100及び設置孔110aの中心位置とが、合っている状態となり、把持機構41によって金型100が適切な姿勢で把持される。
金型100の把持動作が完了すると、駆動機構12が作動して上下駆動部32が駆動連結部31を上昇させ、駆動連結部31が駆動力伝達部24と当接し、本体部42が駆動連結部31とともに上昇する。これにより、把持機構41が金型100を把持した状態で上昇し、金型100が吊り上げられる動作が行われることになる。この吊り上げ動作の際には、当接部22及び係合保持部23が設けられた第2本体部分44の中心位置と金型100及び設置孔110aの中心位置とが合っており、金型100が適切な姿勢で把持されているため、金型100が設置位置である設置孔110から斜めの姿勢で吊り上げられてしまうことが抑制される。このため、設置孔110aから金型100を取り出しにくくなってしまう状態が発生することが防止されることになる。これにより、搬送装置2によると、金型100の吊り上げ動作の際に、金型100と把持機構41との間に若干の位置ずれがある場合であっても、金型100の吊り上げ動作に容易に対応できるため、金型100の吊り上げ動作の自動化を容易に達成することができる。
尚、金型100の把持動作が完了して金型100の吊り上げ動作が行われ、金型100の挿入軸部103が設置孔110aから引き抜かれると、金型100と把持機構41との間の位置ずれの吸収が終了し、位置ずれの吸収が必要の無い状態となる。この状態では、上下駆動アクチュエータ47は、制御装置14からの制御指令に基づいて、規制ピン46を上方に変位させる。これにより、規制ピン46は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を規制する。これにより、水平スライド機構45の作動が規制されて安定した状態で、金型100の搬送が行われることになる。
搬送装置2が、金型100の設置動作を行う場合は、設置台110における金型100を設置する設置位置である設置孔110aの上方に把持機構41に把持された金型100が配置される位置まで、搬送台車13が駆動機構12を移動させる。搬送台車13の作動による金型100の搬送中は、金型100の設置位置である設置孔110aと金型100との間の位置ずれの吸収が必要の無い状態となっている。このため、金型100の搬送中は、上下駆動アクチュエータ47は、制御装置14からの制御指令に基づいて、規制ピン46を上方に変位させている。これにより、図16(a)に示すように、規制ピン46は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を規制している。
把持機構41に把持された金型100が設置位置である設置孔110aの上方に配置された状態で、金型100の設置動作が開始される。金型100の設置動作が開始されると、制御装置14の制御指令に基づいて、駆動機構12が作動し、上下駆動部32が駆動連結部31を下降させ、金型100を把持した把持機構41とともに駆動連結部31が下降する。
上記のように、金型100を把持した把持機構41とともに駆動連結部31が下降する際、その下降の途中のタイミングで、制御装置14の制御指令に基づいて、上下駆動アクチュエータ47が、規制ピン46を下方に変位させる。例えば、駆動連結部31及び把持機構41とともに下降する金型100の挿入軸部103が設置孔110aに挿入される直前のタイミングで、上下駆動アクチュエータ47が、規制ピン46を下方に変位させる。これにより、挿入軸部103が設置孔110aに挿入される際、図16(b)に示すように、規制ピン46は、第1水平プレート51及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、52a)から脱抜された状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容した状態となる。
金型100の設置動作の際には、上記のように、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに挿入される前に、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位が許容される。このため、金型100の中心位置と設置位置である設置孔110aとに若干の位置ずれがあっても、水平スライド機構45は、挿入軸部103の設置孔110aへの挿入時に生じる負荷に応じて、自律的に、第1本体部分43を第2本体部分44に対してスライド移動させる。これにより、水平スライド機構45は、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動させ、金型100の中心位置と設置孔110aとの位置ずれを吸収する。これにより、把持機構41によって金型100が適切な姿勢で把持された状態で、金型100の挿入軸部103が設置孔110aに滑り込むように滑らかに挿入され、金型100が設置孔110aに設置されることになる。このため、金型100が設置孔110aに適切に嵌らず、金型100を設置孔110aに設置できない状態が発生することが防止されることになる。これにより、金型100の設置動作の際に、金型100と設置孔110aとの間に若干の位置ずれがある場合であっても、金型100の設置動作に容易に対応できるため、金型100の設置動作の自動化を容易に達成することができる。
尚、金型100が設置孔110aに設置されると、把持機構41が作動し、係合保持部23の金型100への係合が解除され、把持機構41による金型100の把持が解除される。金型100の把持が解除されると、駆動機構12が作動して上下駆動部32が駆動連結部31を上昇させ、駆動連結部31が駆動力伝達部24と当接し、本体部42が駆動連結部31とともに上昇する。これにより、把持機構41は、金型100の把持動作を解除した状態で上昇し、金型100の設置孔110aへの設置動作が終了することになる。
以上説明した搬送装置2は、第1実施形態の搬送装置1と同様に構成された要素を備えている。即ち、搬送装置2は、駆動機構12と、駆動機構12の駆動連結部31がスライド移動自在に連結される軸部25、当接部22、及び係合保持部23が設けられた把持機構41と、駆動力伝達部24と、を備えている。これにより、搬送装置2は、第1実施形態の搬送装置1と同様に、金型100の高さが異なる場合であっても、簡素な構成によって金型100の吊り上げ動作及び設置動作に容易に対応することができ、金型100の吊り上げ動作及び設置動作の自動化を容易に達成することができる。
そして、搬送装置2によると、金型100を吊り上げるために把持する動作を行う際に、金型100の中心位置と把持機構41の中心位置とに若干の位置ずれがあっても、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動させることで、その位置ずれを吸収することができる。これにより、把持機構41によって金型100を適切な姿勢で把持することができる。従って、金型100を設置孔110aから斜めの姿勢で吊り上げてしまうことを抑制することができる。このため、設置孔110aから金型100を取り出しにくくなってしまう状態が発生することを防止することができる。これにより、金型100の吊り上げ動作の際に、金型100と把持機構41との間に若干の位置ずれがある場合であっても、金型100の吊り上げ動作に容易に対応できるため、金型100の吊り上げ動作の自動化を容易に達成することができる。
また、搬送装置2によると、金型100を設置する動作を行う際に、金型100の中心位置と設置孔110aとに若干の位置ずれがあっても、駆動連結部31に対して当接部22及び係合保持部23の位置を水平方向にスライド移動させることで、その位置ずれを吸収することができる。これにより、把持機構41によって金型100を適切な姿勢で把持した状態で、金型100を設置孔110aに設置することができる。このため、金型100が設置孔110aに適切に嵌らず、金型100を設置孔110aに設置できない状態が発生することを防止することができる。これにより、金型100の設置動作の際に、金型100と設置孔110aとの間に若干の位置ずれがある場合であっても、金型100の設置動作に容易に対応できるため、金型100の設置動作の自動化を容易に達成することができる。
従って、本実施形態によると、金型100の吊り上げ動作及び設置動作の際に、金型100と把持機構41又は設置孔110aとの間に若干の位置ずれがある場合であっても、金型100の吊り上げ動作及び設置動作に容易に対応でき、金型100の吊り上げ動作及び設置動作の自動化を容易に達成することができる搬送装置2を提供することができる。
また、搬送装置2によると、上記の通り、金型100の吊り上げ動作及び設置動作の際に、金型100と把持機構41又は設置孔110aとの間に若干の位置ずれがある場合は、その位置ずれを水平スライド機構45によって吸収することができる。そして、搬送装置2によると、位置ずれの吸収が終了した状態、或いは、位置ずれの吸収が必要の無い状態においては、水平動作規制部46を作動させることで、駆動連結部31に対する当接部22及び係合保持部23の水平方向の動作を規制することができる。このため、位置ずれの吸収が終了した状態、或いは、位置ずれの吸収が必要の無い状態においては、水平スライド機構45の作動を規制し、安定した状態で、金型100の搬送動作を行うことができる。例えば、金型100を吊り上げるために把持する動作を行う際に水平スライド機構45によって位置ずれを吸収した後は、水平スライド機構45の作動を規制することで、安定した状態で金型100を吊り上げて搬送することができる。また、金型100を設置する動作を行う前に、金型100を設置孔110aまで搬送する際には、水平スライド機構45の作動を規制することで、安定した状態で金型100を搬送することができる。
また、搬送装置2によると、第1水平プレート(51、53)、第2水平プレート52、第1及び第2水平プレートの一方に固定されたレール(54、56)、第1及び第2水平プレートの他方に固定されたブロック(55、57)を備えた簡素な構成により、コンパクトな構造の水平スライド機構45を構成することができる。また、第1及び第2水平プレートに貫通可能で第1及び第2水平プレートに対して上下方向に相対変位する規制ピン46により、水平動作規制部46を簡素な構造で構成することができる。
また、搬送装置2によると、本体部42において、駆動連結部31に連結される第1本体部分43と当接部22及び係合保持部23が設けられる第2本体部分44との間に、水平スライド機構45が配置される。このため、水平スライド機構45を把持機構41の本体部42においてコンパクトに組み込むことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図17は、本発明の第3実施形態に係る搬送装置3の模式的な側面図であって、第3実施形態の搬送装置3における駆動機構12の一部及び把持機構61を金型200とともに示す図である。
第3実施形態の搬送装置3は、第1実施形態の搬送装置1と同様に、搬送対象としての金型200を把持した状態で搬送するための装置として構成されている。尚、搬送装置3についての以下の説明においては、前述の第1実施形態と同様に構成される要素及び前述の第1実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付することで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
搬送対象としての金型200は、第1実施形態と同様に、成形工程及び加硫工程を経て伝動ベルトが得られるように使用され、各工程において搬送装置3によって搬送される。
本実施形態に係る搬送装置3によって搬送される金型200は、第1実施形態と同様に軸状に形成されており、ベルトスリーブが巻かれる主軸部201と、把持機構61によって把持される把持軸部202と、金型200を設置台110に設置するための挿入軸部203と、を有している。一方で、金型200は、第1実施形態とは異なり、内部に中空部210が形成されている。
把持軸部202は、第1実施形態と同様に、頂部202aと、溝部202bと、を有している。
挿入軸部203は、金型200を設置台110の設置孔110aに出し入れしやすいように、その直径が設置孔110aの開口径よりも小さく設定されている。
中空部210は、金型200の内部に蒸気や水を通過させるための空間として設けられており、蒸気や水を通過させることで、金型200の温度調整が可能となっている。中空部210の把持軸部202側においては、突出軸66が挿入可能な挿入穴211が設けられている。
挿入穴211は、把持軸部202の頂部202aにおいて開口するように設けられている。挿入穴211は、金型200の把持軸部202の部分を軸方向に貫通するように設けられている。挿入穴211は、一定の開口径を有して金型200の軸方向と平行な方向に延びている。また、挿入穴211は、その軸心が金型200の軸心と同軸になるように設けられている。更に、挿入穴211は、把持軸部202の頂部202aにおいて傾斜部212を有している。傾斜部212は、テーパ状に形成されており、より具体的には、頂部202aの端面に近づくに従って円錐状に開口径が広がる傾斜面を有して形成されている。
搬送装置3は、把持機構61において突出部64を更に備えて構成されている点で、第1実施形態と異なる。尚、図17、図18及び図20においては、搬送台車13、制御装置14、駆動機構12、上方変位センサ33、及び下方変位センサ34の図示は、適宜その一部又は全部が省略されている。以下、第1実施形態の構成と異なる把持機構61の構成について説明する。
把持機構61は、金型200を把持する機構として、本体部62、当接部63、係合保持部23、駆動力伝達部24、水平駆動アクチュエータ28、突出部64、等を備えて構成されている。
本体部62は、軸部25と、上梁部26と、第1実施形態における下梁部27と一部構成が異なる下梁部65と、を有している。
下梁部65には、突出部64が設けられている。また、下梁部65には、後述する突出軸66が挿通される貫通孔が中央部分に形成されている。
当接部63には、第1実施形態と一部構成が異なり、後述する突出軸66が収容される貫通孔が軸心に沿って形成されている。また、当接部63は、第1実施形態と一部構成が異なる円盤状部分63aが設けられており、円盤状部分63aには、後述する突出軸66が収容される貫通孔が形成されている。
突出部64は、設置台110に傾いた状態で設置された金型200の姿勢を矯正するための部分として設けられている。突出部64によって傾きが矯正された金型200は、把持機構61の係合保持部23によって確実に把持される。また、突出部64は、突出軸66と、突出軸駆動部67と、を備える。
突出軸66は、把持機構61に設けられている。具体的には、突出軸66は、当接部63から下方に向かって突出可能なように本体部62に支持されている。突出軸66は、当接部63から突出して金型200の頂部202aで開口する挿入穴211に対して挿入可能に構成されている。突出軸66は、軸状に形成されており、先端部分においてテーパ状の部分を含む先細り部68を有している。先細り部68は、傾いた状態の挿入穴211に突出軸66が挿入される際、傾斜部212に当接するように構成されている。把持機構61によって金型200が把持される際、突出軸66は、下梁部65及び当接部63の内部に収容された状態から当接部63から突出した状態に突出軸駆動部67によって駆動されて挿入穴211に挿入される。また、金型200の把持動作が解除される際、突出軸66は、当接部63から突出した状態から下梁部65及び当接部63の内部に収容された状態に突出軸駆動部67によって駆動される。
突出軸駆動部67は、突出軸66を制御装置14からの制御指令に基づいて駆動する部分として設けられている。突出軸駆動部67は、本体部63の下梁部65中央部分に設置され、突出軸66を下梁部65の延びる方向に対して垂直な方向に駆動するように構成されている。突出軸駆動部67は、例えば、圧縮空気で作動するシリンダ機構を備えて構成され、シリンダ機構に圧縮空気が給排されることで、シリンダ機構におけるピストン部が上下方向に沿って変位するように構成されている。そして、シリンダ機構のピストン部は、突出軸66に連結されており、突出軸66は、ピストン部の変位とともに、上下方向に沿って下梁部65及び当接部63を貫通するようにスライド移動するように構成されている。突出軸駆動部67は、制御装置14からの制御指令に基づいて圧縮空気の給排が制御されることで作動するように構成されている。即ち、制御装置14からの制御指令に基づいて、図示が省略された圧縮空気の供給源が制御されて突出軸駆動部67への圧縮空気の給排が制御され、突出軸駆動部67が作動するように構成されている。
図18は、第3実施形態の搬送装置3の動作の一部の工程を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構61を金型とともに模式的に示す側面図である。図19は、第3実施形態に係る当接部63及び金型200の一部を拡大して示す模式的な側面図であって、(a)は、傾いた状態の金型200に突出軸66が挿入される際の図であり、(b)は、突出軸66によって金型200の傾きが矯正された際の図である。図20は、第3実施形態の搬送装置3の動作の一部の工程を説明するための一例を示す図であって、駆動機構12の一部及び把持機構61を金型とともに模式的に示す側面図である。
金型200の吊り上げ動作が開始される際には、金型200の上方に把持機構61が配置された状態で、制御装置14の制御指令に基づいて、駆動機構12が作動する。そして、駆動機構12が作動することで、上下駆動部32が駆動連結部31を図18にて矢印で示す方向に下降させ、駆動連結部31とともに把持機構61が金型200に向かって下降する。
把持機構61が下降した際、円盤状部分63aが金型200の頂部202aに接触する直前において、突出軸66が円盤状部分63aから突出する。そして、把持機構61が下降した後、円盤状部分63aから突出した突出軸66は、金型200の挿入穴211に挿入された状態となり、金型200の傾きが矯正される。より具体的には、以下の通りである。
挿入軸部203は、前述の通り、金型200を設置台110の設置孔110aに出し入れしやすいように、その直径が設置孔110aの開口径よりも小さく設定されている。このため、設置台110に設置される金型200は、通常、その軸心が設置した面と垂直な方向になるように設置されるが、挿入軸部203と設置孔110aとの間には隙間が形成される。このため、金型200は、その軸心が、金型200が設置された面と垂直な方向に対して傾いた状態で設置されてしまう場合がある。このとき、円盤状部分63aから突出した突出軸66は、図19(a)に示すように、傾いた状態で設置された金型200の挿入穴211に挿入される。そして、傾いた状態の金型200は、図19(b)に示すように、突出軸66が挿入穴211に挿入されることで、突出軸66の軸心と金型200の軸心とが平行になるように矯正される。
その結果、円盤状部分63aは、図20に示すように、挿入穴211に突出軸66が挿入された後、金型200の頂部202aに接触した状態となる。尚、突出軸66の突出動作は、円盤状部分63aが金型200の頂部202aに接触した後に行われてもよいし、また、把持機構61が下降する前に行われてもよい。
突出軸66が挿入穴211に挿入されて円盤状部分63aが頂部202aに接触した後は、第1実施形態と同様の動作によって、金型200が把持機構61の係合保持部23によって把持され搬送される。
以上説明した搬送装置3は、第1実施形態の搬送装置1と同様に構成された要素を備えている。また、搬送装置3は、第2実施形態の搬送装置2の本体部42を構成要素として備えるものであってもよい。
本実施形態に係る搬送装置3において、金型200の挿入穴211に挿入される突出軸66は、突出軸駆動部67によって駆動されることで、下梁部65及び当接部63に収容された状態から突出する場合を例に説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、突出軸66は把持機構61の下梁部65において固定された状態で設けられてもよい。この場合、突出部64は、突出軸駆動部67を備えない突出軸66のみを備えるものであってもよい。
また、本実施形態に係る搬送装置3によって搬送される金型200は、挿入穴211が設けられた中空構造のものを例に挙げて説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、金型200は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、中空構造でない挿入穴211が設けられていないものであってもよい。この場合、把持機構61に設けられた突出軸66は、金型200の頂部202aに当接した際、当接部63に退避するように構成されていてもよい。
上述した搬送装置3は、把持機構61に設けられた突出軸66を備えている。そして、突出軸66は、当接部63から下方に向かって突出可能なように本体部62に支持されており、搬送対象の頂部202aで開口する挿入穴211に対して挿入可能である。このため、設置台110に対して傾いた状態で搬送対象が設置された場合であっても突出軸66を搬送対象の挿入穴211に挿入することによって姿勢を矯正することができる。その結果、把持機構61は、搬送対象を正しい位置で確実に把持することができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。
(1)前述の実施形態では、把持機構の本体部において駆動機構の駆動連結部がスライド移動自在に連結される軸部が、一対で設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。本体部において1つ又は3つ以上設けられた軸部に対して駆動連結部がスライド移動自在に連結される形態が実施されてもよい。
(2)前述の実施形態では、駆動力伝達部がコイルバネとして設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。駆動力伝達部が、板バネ或いは空気バネなどのコイルバネ以外のバネとして構成された形態が実施されてもよい。また、駆動力伝達部が、バネ以外の弾性体を用いて構成された形態が実施されてもよい。
(3)前述の実施形態では、上方変位センサ及び下方変位センサが、近接センサとして設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。上方変位センサ及び下方変位センサが、光電センサ或いはレーザセンサなどの近接センサ以外のセンサとして設けられた形態が実施されてもよい。また、上方変位センサ及び下方変位センサが、リミットスイッチなどの接触式センサとして設けられた形態が実施されてもよい。
(4)前述の実施形態では、把持機構の係合保持部が、金型の把持軸部において周方向に切り欠かれて設けられた溝部に対して係合する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、金型において、外部に開口した孔とその孔の内側に形成された切り欠きとが設けられ、金型の内側の切り欠きに対して引っ掛かるようにして係合する係合保持部を有する把持機構の形態が実施されてもよい。
(5)前述の第2実施形態では、水平動作規制部を構成する規制ピンが、円柱状に形成された部分と先端側で円錐状に設けられた部分とを有する形状である形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。他の形状の規制ピンの形態が実施されてもよい。例えば、長く延びる円錐形状に形成されたテーパ状の規制ピンの形態が実施されてもよい。
図17は、本発明の変形例の搬送装置2aの模式的な側面図であって、変形例の搬送装置2aにおける駆動機構12の一部及び把持機構41を金型とともに示す図である。変形例の搬送装置2aは、第2実施形態の搬送装置2と同様に構成されているが、水平動作規制部を構成する規制ピン59の構成において、第2実施形態の搬送装置2と異なっている。尚、以下の説明においては、第2実施形態の搬送装置2と異なる規制ピン59に関する形態について説明し、前述の第2実施形態と同様に構成される要素及び前述の第2実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
図17に示すように、規制ピン59は、長く延びる円錐形状に形成されたテーパ状の規制ピンとして設けられている。規制ピン59は、軸方向が上下方向に延びた状態で配置されている。そして、規制ピン59は、駆動連結部31が連結された第1本体部分43に対する当接部22及び係合保持部23が設けられた第2本体部分44の水平方向の動作を規制することで、駆動連結部31に対する当接部22及び係合保持部23の水平方向の動作を規制するように構成されている。
規制ピン59は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52に対して、上下方向に相対変位可能に設けられている。そして、規制ピン59は、上下駆動アクチュエータ47によって駆動されることで、上下方向に変位する。また、規制ピン59は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52のそれぞれに設けられた貫通孔(51a、53a、52a)に対応した位置で、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52に対して、上下方向に相対変位するように設けられている。尚、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)は、テーパ状に設けられた規制ピン59の形状に応じたテーパ状の内周面を有する貫通孔として構成されている。
また、規制ピン59は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52のそれぞれに設けられた貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を規制するように構成されている。規制ピン59は、上下駆動アクチュエータ47によって駆動されて上方に変位することで、水平プレート(51、52、53)の貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態となる。尚、図17(a)は、規制ピン59が、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態を示している。
また、規制ピン59は、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に対して遊嵌状態で挿入された状態で、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容するように構成されている。規制ピン59は、上下駆動アクチュエータ47によって駆動されて下方に変位することで、水平プレート(51、52、53)の貫通孔(51a、53a、52a)に対して遊嵌状態で挿入された状態となる。尚、図17(b)は、規制ピン59が、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に対して遊嵌状態で挿入された状態を示している。
図17(a)に示すように、規制ピン59が、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に貫通して嵌められた状態となることで、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位が規制される。そして、図17(b)に示すように、規制ピン59が、第1水平プレート(51、53)及び第2水平プレート52の貫通孔(51a、53a、52a)に対して遊嵌状態で挿入された状態となることで、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位が許容される。
本変形例によると、テーパ状に設けられ、第1及び第2水平プレートに貫通可能で第1及び第2水平プレートに対して上下方向に相対変位する規制ピン59により、水平動作規制部59を簡素な構造で構成することができる。また、本変形例によると、規制ピン59が、水平プレート(51、52、53)の貫通孔(51a、53a、52a)に対して遊嵌状態で挿入可能なテーパ状に設けられているため、規制ピン59の下方への変位量が少なくても、容易に、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を許容することができる。また、本変形例によると、規制ピン59が、水平プレート(51、52、53)の貫通孔(51a、53a、52a)に遊嵌状態で挿入可能なテーパ状に設けられているため、規制ピン59の上方への変位量が少なくても、容易に、第1水平プレート(51、53)の第2水平プレート52に対する水平方向の相対変位を規制することができる。
(6)前述の第2実施形態では、水平スライド機構及び水平動作規制部を備える搬送装置において、把持機構に対して駆動機構の駆動連結部がスライド移動自在に連結された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。水平スライド機構及び水平動作規制部を備える搬送装置において、把持機構に対して駆動機構の駆動連結部がスライド移動しない状態で連結された形態が実施されてもよい。