JP7206913B2 - 物品、非晶性ポリアミド樹脂、物品の強度向上方法 - Google Patents
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Description
そこで、耐塩性に優れた熱可塑性樹脂が検討されている。
-C(O)(CH2)mC(O)NHCH2ArCH2NH- (I)
の繰り返し単位、および
45~75モルパーセントの式
-C(O)(CH2)mC(O)NH(CH2)nNH- (II)
の繰り返し単位から本質的になる、少なくとも1つの半芳香族コポリアミドであって、mが8、10、および/または12であり、nが6、10および/または12であり、Arがメタ-置換ベンゼン環であり;および前記ポリアミドが225℃以下の融点を有するコポリアミドと:(b)少なくとも2000の数平均分子量(Mn)を有し、および、エチレン/ビニルアルコールコポリマーおよびポリ(ビニルアルコール)からなる群から選択される0.25~20質量パーセントの1種または複数種のポリヒドロキシポリマーとを含むポリアミド組成物が開示されている。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、耐塩性に優れた熱可塑性樹脂を用いた物品、非晶性ポリアミド樹脂および物品の強度向上方法を提供することを目的とする。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<11>により、上記課題は解決された。
<1>非晶性ポリアミド樹脂を含む物品であって、前記物品の内部に、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩を含む、物品。
<2>前記非晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する、<1>に記載の物品。
<3>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する非晶性ポリアミド樹脂を含む物品であって、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩の存在下で使用する物品。
<4>前記ジカルボン酸由来の構成単位の、10~90モル%がイソフタル酸に由来し、90~10モル%が炭素数8~12の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<2>または<3>に記載の物品。
<5>前記塩の少なくとも一部は、前記物品の表面から2μmまでの間の領域に含まれる、<1>~<4>のいずれか1つに記載の物品。
<6>前記物品は、厚みが10μm以上の部位を有し、前記部位における物品の表面から4~6μmまでの間の部位に含まれる前記塩の量が、前記物品の表面から2μmまでの間の部位に含まれる塩の量の30質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の物品。
<7>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する非晶性ポリアミド樹脂であって、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩の90℃の飽和水溶液に浸漬した後の強度が、浸漬前の90%以上である、非晶性ポリアミド樹脂;
但し、強度は、前記非晶性ポリアミド樹脂をダンベル片に成形した試験片を、前記塩の90℃の飽和水溶液に1時間浸漬し、さらに、90℃で1時間乾燥する作業を20回繰り返し、ダンベル片の表面をふき取った後のISO527に従った引張強度をいう。
<8>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する非晶性ポリアミド樹脂であって、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩の溶解度が80%以上である塩水が存在する雰囲気下で用いられる非晶性ポリアミド樹脂。
<9>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する非晶性ポリアミド樹脂であって、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩を含む物質を取り扱うための物品、あるいは、海上および海岸で使われる物品に用いられる非晶性ポリアミド樹脂。
<10><1>~<6>のいずれか1つに記載の物品の製造に用いられる非晶性ポリアミド樹脂。
<11>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する非晶性ポリアミド樹脂を含む物品を、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩の溶解度が80%以上である塩水が存在する雰囲気下に、5時間以上置くことを含む、物品の強度向上方法;但し、強度は、前記非晶性ポリアミド樹脂をダンベル片に成形した試験片を、前記塩の90℃の飽和水溶液に1時間浸漬し、さらに、90℃で1時間乾燥する作業を20回繰り返し、ダンベル片の表面をふき取った後のISO527に従った引張強度をいう。
本実施形態に係る物品は、最終製品である必要はなく、部品等であってもよい。
非晶性ポリアミド樹脂を所望の形状に成形した後の物品の内部に塩化亜鉛等を含ませる方法としては、物品を塩化亜鉛等を含む塩水に接触させる方法および物品を塩化亜鉛等に直接に接触させる方法が挙げられる。
塩化亜鉛等を含む塩水としては、人工的に調整した塩水のほか、海水や海岸の空気中に存在する塩水などが例示される。本実施形態では、塩水は、飽和塩水であることが好ましい。
物品を塩水に浸漬する方法としては、海水に浸漬する方法が例示される。例えば、物品が釣り糸の場合、釣りを繰り返すことにより、物品である釣糸の内部に徐々に塩化亜鉛等が取り込まれる。
物品の内部に塩水を通過させる方法は、物品がホース、チューブ、パイプなどの中空体である場合に好ましく用いられる。
塩化亜鉛等を含む物質を取り扱うための物品の一例として、融雪剤ケースおよび凍結防止剤ケースが挙げられる。融雪剤や凍結防止剤は、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩を含む物質の一例である。本実施形態では、これらの剤のケースとして、非晶性ポリアミド樹脂を含む物品を用いることができる。融雪剤や凍結防止剤は、経時により、非晶性ポリアミド樹脂から形成されるケースの内部に徐々に浸透する。結晶性ポリアミド樹脂や他の熱可塑性樹脂から形成されるケースでは、融雪剤や凍結防止剤に含まれる塩によって、ケースがダメージを受けやすい。しかしながら、非晶性ポリアミド樹脂から形成されるケースを用いることにより、融雪剤や凍結防止剤に含まれる塩化亜鉛等によって、ケースの強度が低下しにくく、むしろ向上する傾向にある。
さらに、本実施形態における塩化亜鉛等を含む物質を取り扱うための物品には、雪国仕様や寒冷地仕様の自動車、除雪機ならびに除雪器具などのように、融雪剤や凍結防止剤などが、路面に散布された状況下で用いられる物品も含まれる。
塩化亜鉛等を含む物質を取り扱うための物品としては、塩分を含む調味料の容器も例示される。調味料としては、醤油、味噌、ドレッシングなど塩化亜鉛等の塩を含む物質が例示される。
例えば、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する非晶性ポリアミド樹脂を含む物品を、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩の溶解度が80%以上となるように含む雰囲気下に、5時間以上置くことにより、物品の強度を向上させることができる。
上記溶解度が80%以上となる塩水が存在する雰囲気下の温度は、特に定めるものではないが、通常、-20~100℃の範囲であり、-10~90℃の範囲であることが好ましい。
本実施形態で用いる非晶性ポリアミド樹脂の一実施形態としては、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する非晶性ポリアミド樹脂であって、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩の90℃の飽和水溶液に浸漬した後の強度が、浸漬前の強度の90%以上である非晶性ポリアミド樹脂が例示される。
ここでの強度は、前記非晶性ポリアミド樹脂をダンベル片に成形した試験片を、前記塩の90℃の飽和水溶液に1時間浸漬し、さらに、90℃で1時間乾燥する作業を20回繰り返し、ダンベル片の表面をふき取った後のISO527に従った引張強度をいう。
具体的には、本実施形態で用いる非晶性ポリアミド樹脂は、後述する実施例に記載の方法で測定された飽和塩水処理後の強度維持率が95%以上であることが好ましく、100%以上とすることもでき、さらには105%以上とすることもでき、特には110%以上とすることもできる。特に、本発明では、塩化亜鉛および/または塩化カルシウムの飽和水溶液で処理した後の強度を、処理前の強度よりも高くすることができる点で特に有益である。
また、前記強度維持率の上限値は特に定めるものではないが、120%以下であってもよく、115%以下であってもよい。
前記飽和水溶液に含まれる塩は、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される1種でもよいし、2種以上でもよく、飽和水溶液の状態にあればよい。
また、本発明で用いる塩は、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種に代えて、塩化マグネシウム、塩化カリウム、リン酸アンモニウムおよび硫酸亜鉛から選択される少なくとも1種の塩を用いてもよい。
本実施形態に係る非晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上)が、脂肪族ジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位が、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。
脂肪族ジアミンとしては、直鎖脂肪族ジアミンであっても、脂環式ジアミンであってもよく、脂環式ジアミンが好ましい。
脂肪族ジアミンとしては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンが例示され、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、少なくともイソフタル酸を含むことがより好ましい。
さらに、ジカルボン酸由来の構成単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位に加え、脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位も含むことが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数8~12の直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
上記非晶性ポリアミド樹脂におけるジアミン由来の構成単位は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上、より一層好ましくは98モル%以上、さらに一層好ましくは99モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等に由来する。
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が例示される。これらの他のジアミンは、1種のみでも2種以上であってもよい。
本実施形態で用いられる非晶性ポリアミド樹脂の原料ジアミンである1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等は、シス体とトランス体がある。これらの異性体モル比(シス/トランス)は、好ましくは100/0~50/50であり、より好ましくは90/10~60/40である。また、本実施形態に係る物品の用途に応じて、上記異性体モル比(トランス/シス)を、90/10~60/40とすることもできる。
ここでテレフタル酸に由来する構成単位を実質的に含まないとは、例えば、ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、テレフタル酸が10モル%以下であることをいい、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。下限値としては、0モル%であってもよい。
前記ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合の下限値は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましく、45モル%以上が一層好ましい。前記イソフタル酸の割合の上限値は、80モル%以下が好ましく、75モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましく、65モル%以下が一層好ましい。このような範囲とすることにより、非晶性ポリアミド樹脂の透明性がより向上する傾向にあり好ましい。
本実施形態に係る物品では、物品の厚さが最も厚い部分について、表面から厚さ方向に10%までの距離(表層)の領域に含まれる非晶性ポリアミド樹脂の重量平均分子量が20,000~35,000であることが好ましく、25,000~32,000であることがより好ましく、26,000~30,000であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る物品の厚さが最も厚い部分について、表面から厚さ方向に40~60%の距離(中央)の領域に含まれる非晶性ポリアミド樹脂の重量平均分子量が21,000~36,000であることが好ましく、26,000~33,000であることがより好ましく、27,000~31,000であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る物品の上記表層の領域と中央の領域に含まれる非晶性ポリアミド樹脂の重量平均分子量の差は、3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,700以下であることがさらに好ましく、1,500以下であることが一層好ましい。前記ポリアミド樹脂の重量平均分子量の差の下限値は、0であってもよいが、例えば、100以上でも十分に実用レベルである。
重量平均分子量の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素気流中、室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱したのち、ただちに室温以下まで冷却し、再び室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際のガラス転移温度を測定することができる。示差走査熱量計としては、(株)島津製作所製DSC-60を用いることができる。
また、本実施形態に係る物品の他の一例として、物品において、非晶性ポリアミド樹脂に加え、強化繊維を配合する形態も挙げられる。かかる実施形態の場合、非晶性ポリアミド樹脂と強化繊維の合計量が60質量%以上を占めることが好ましく、80質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る物品において、塩化亜鉛等に含まれる金属元素の量は、物品に含まれる窒素元素の量に対し、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましく、4.0質量%以上であることが一層好ましく、5.0質量%以上であることがより一層好ましい。前記塩化亜鉛等の金属元素の量の上限は特に定めるものではないが、例えば、20.0質量%以下であり、17.0質量%以下であってもよく、また16.0質量%以下であってもよく、さらに15.0質量%以下であってもよい。
本実施形態に係る物品は、前記金属元素の少なくとも一部は、前記物品の表面から2μmまでの間の領域に含まれることが好ましい。このような範囲に前記金属元素が含まれることにより、物品内部の水分が物品の表層付近まで引き上げられ、物品の機械的強度が高く維持できると考えられる。
本実施形態に係る物品は、特に、前記物品の表面から2μmまでの間の領域に含まれる、塩化亜鉛等の量が上記範囲を満たすことがより好ましい。
また、本実施形態に係る物品は、厚みが10μm以上の部位を有し、前記部位における物品の表面から4~6μmの間の部位に含まれる前記塩の量が、前記物品の表面から2μmまでの間の部位に含まれる塩の量の30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0質量%であってもよい。このように、物品の表層付近に塩化亜鉛等を集中して存在させることにより、物品内部の水分が物品の表層付近までより引き上げられやすくなり、物品の機械的強度が高く維持できると考えられる。
本実施形態に係る物品には、塩化亜鉛等は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。2種以上含まれる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
物品中の塩化亜鉛等の量は、後述する実施例に記載の方法に従って測定された値とする。
本実施形態に係る非晶性ポリアミド樹脂と強化繊維を含む物品は、非晶性ポリアミド樹脂と強化繊維を含む組成物を溶融混練してなるペレット、非晶性ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させたプリプレグ、非晶性ポリアミド樹脂フィルムに強化繊維を融着した未含浸プリプレグ、繊維成分として、非晶性ポリアミド樹脂を含む連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維を含む混繊糸、組み紐または撚り紐、非晶性ポリアミド樹脂を含む連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維を用いた織物または編み物、ならびに、非晶性ポリアミド樹脂を含む熱可塑性樹脂繊維と強化繊維から構成される不織布などから成形された物品が例示される。
他の熱可塑性樹脂としては、結晶性ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂が例示される。
添加剤としては、核剤、充填剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、耐衝撃改良剤、滑剤、着色剤、導電性添加剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂を例示できる。これらのポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。但し、本実施形態に係る物品において、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂の量は、本実施形態に係る非晶性ポリアミド樹脂の量の5質量%以下であることが好ましい。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したセバシン酸(伊藤精油社製)7000g(34.61mol)、イソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル社製)5750g(34.61mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)3.3g(0.019mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.4g(0.018mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めた1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC、異性体モル比:シス/トランス=75/25)(三菱ガス化学社製)9847g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を295℃まで昇温した。1,3-BACの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂は、JIS K7121およびK7122に準じて測定した、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmが1J/g未満の非晶性ポリアミド樹脂であった。得られた非晶性ポリアミド樹脂を、「1,3-BAC10I-1」という。
実施例1において、セバシン酸とイソフタル酸のモル比率を、36:64とし、他は同様に行って、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂は、JIS K7121およびK7122に準じて測定した、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmが1J/g未満の非晶性ポリアミド樹脂であった。得られた非晶性ポリアミド樹脂を、「1,3-BAC10I-2」という。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したセバシン酸(伊藤精油社製)7000g(34.61mol)、イソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル社製)5750g(34.61mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)3.3g(0.019mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.4g(0.018mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めた1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC、異性体モル比:シス/トランス=60/40)(三菱ガス化学社製)9847g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を295℃まで昇温した。1,4-BACの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂は、JIS K7121およびK7122に準じて測定した、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmが1J/g未満の非晶性ポリアミド樹脂であった。得られた非晶性ポリアミド樹脂を、「1,4-BAC10I」という。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したセバシン酸(伊藤精油社製)7000g(34.61mol)、イソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル社製)5750g(34.61mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)3.3g(0.019mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.4g(0.018mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めた1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC、異性体モル比:シス/トランス=20/80)(三菱ガス化学社製)と1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC、異性体モル比:シス/トランス=20/80)(三菱ガス化学社製)の1,3-BAC/1,4-BAC=7/3(モル比)の割合で混合した混合ジアミン9847g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を295℃まで昇温した。前記混合ジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂は、JIS K7121およびK7122に準じて測定した、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmが1J/g未満の非晶性ポリアミド樹脂であった。得られた非晶性ポリアミド樹脂を、「1,3-BAC/1,4-BAC10」という。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、アジピン酸(Roadia社製)7.22kg(49.4mol)および酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol、三菱ガス化学社製)を、反応容器内の溶融物に撹拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて270℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂を、「MP6」という。得られたポリアミド樹脂は、JIS K7121およびK7122に準じて測定した、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmが、5J/gをはるかに上回る結晶性ポリアミド樹脂であった。
PA6:ポリアミド6、宇部興産社製、1024B、結晶性ポリアミド樹脂
PA66:ポリアミド66、東レ株式会社製、CM3001N、結晶性ポリアミド樹脂
上記非晶性ポリアミド樹脂1,3-BAC10I-1を150℃で5時間真空乾燥した後、ファナック社製、射出成形機100Tにて、樹脂温度280℃にてダンベル片に成形した(ISO試験片 4mm厚み)。得られた試験片をアルミ袋で密封して保存した。
上記で得られたアルミ袋で密封していた試験片について、アルミ袋から取り出し、90℃の飽和塩水(塩は、塩化カルシウム)に1時間浸漬し、90℃で1時間乾燥した。前記作業を20回繰り返した。次いで、試験片をイオンミリングで表面から厚さ方向に2μmまでの領域と、厚さ方向に4~6μmの領域を切り出した。次いで、日立ハイテクノロジーズ製、走査電子顕微鏡(SU8020)を用いて、前記切り出した領域に電子線を照射して、試験片内部の塩の量を測定した。窒素の質量濃度に対する、カルシウム元素の質量濃度として示した。
前記厚さ方向に2μmまでの領域は、試験片の表面の任意の一点について、表面から深さ2μm、試験片の面の方向に10μmの長方形の領域を選択し、その領域における金属元素(カルシウム)の質量として測定できる。
試験片(物品)が凹凸を有する場合、厚さが最も厚い部位を上記任意の一点とし、物品をより厚い部位が含まれるように上記長方形の領域を選択する。但し、面方向に10μmの領域を確保できない場合は、選択領域を最小2μmまで狭めてもよい。最小2μmの領域が確保できない場合、凹凸を有する試験片の次に厚さが厚い部位を上記任意の一点として、測定することとする。
前記4~6μmの領域についても、同様に行う。
上記で得られたアルミ袋で密封していた試験片について、アルミ袋から取り出し、カールフィッシャー法により、水分量を測定した。
上記で得られたアルミ袋で密封していた試験片について、アルミ袋から取り出し、90℃の飽和塩水(塩は、塩化カルシウム)に1時間浸漬し、90℃で1時間乾燥した。前記作業を20回繰り返した。飽和塩水処理後の試験片の表面をふき取った後、カールフィッシャー法により、水分量を測定した。
上記飽和塩水処理前の試験片(上記で得られたアルミ袋で密封していた試験片について、アルミ袋から取り出した試験片)および上記飽和塩水処理後の試験片について、それぞれ、ISO527に従って、引張強度を測定した。以下の式に従って、強度維持率を測定した。
強度維持率(%)=[飽和塩水処理後の試験片の強度/飽和塩水処理前の試験片の強度]×100
試験片の表面から厚さ方向に10%までの距離(表層)の領域、および、表面から厚さ方向に40~60%の距離(中央)の領域を、ミクロトーム(ライカ社製、EM UC7)を用いてガラスナイフ(日新EM社製)で削り取り、それぞれ、その重量平均分子量を測定した。前記表層領域は、試験片の表面の任意の一点を選択し、前記点を中心とする半径25μmの円であって、表面から厚さ方向に10%までの領域におけるポリアミド樹脂の重量平均分子量として測定できる。試験片(物品)が凹凸を有する場合、最も厚い部位を上記任意の一点として、選択する。前記中央領域についても、同様に行う。
<<重量平均分子量の測定>>
ポリアミド樹脂の重量平均分子量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC-8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めた。
測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM-H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/Lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃(313K)、流速0.3mL/分、屈折率検出器(RI)にて測定した。また、検量線は6水準のPMMAをHFIP(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)に溶解させて測定し作成した。
上記で得られたアルミ袋で密封していた試験片について、アルミ袋から取り出し、神奈川県平塚市で2016年11月30日から12月5日までの5日間、成形品を直射日光が当たる場所で、成形品が移動しないように固定して、屋外に暴露した。暴露前と暴露後の黄色度(YI値)の差(試験後のYI値-試験前のYI値)から耐候性を評価した。YI値の測定方法はJIS K-7105に準じた。測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH-300A)を使用した。YI値の差が5未満だったものをA、5以上10未満だったものをB、10以上だったものをCと評価した。
実施例1において、ポリアミド樹脂を表1に示す各ポリアミド樹脂に変更し、他は同様に行って試験片を製造した。実施例1と同様に評価した。ただし、PA6においては260℃で射出成形した。結果を表1に示す。
また、結晶性樹脂を用いた場合(比較例1~3)、機械的強度が著しく劣ってしまった。また、耐候性も劣る結果となった。
実施例1において、塩の種類を表2に示すように変更し、他は同様に行って試験片を製造した。実施例1で述べた方法に従って、飽和塩水処理後の強度維持率および耐候性を測定した。耐候性の測定は、神奈川県平塚市で2017年11月20日から11月24日までの5日間、成形品を直射日光が当たる場所で行った。結果を下記表2に示す。
Claims (3)
- 非晶性ポリアミド樹脂を含む物品であって、前記物品の内部に、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩を含み、前記物品における非晶性ポリアミド樹脂の割合が60質量%以上であり、かつ、前記物品が非晶性ポリアミド樹脂に加え、強化繊維を含む場合は、前記非晶性ポリアミド樹脂と強化繊維の合計量が60質量%以上を占め、かつ、強化繊維が炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種を含み、
前記非晶性ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも一方に由来する構成単位であり、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、10~90モル%がイソフタル酸に由来し、90~10モル%が炭素数8~12の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、
前記物品の最も薄い部分の厚さが、1mm以上10mm以下である、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも1種の物質を取り扱う用の物品。 - 前記塩の少なくとも一部は、前記物品の表面から2μmまでの間の領域に含まれる、請求項1に記載の物品。
- 前記物品は、厚みが1mm以上の部位を有し、該部位における物品の表面から4~6μmまでの間の部位に含まれる前記塩の量が、前記物品の表面から2μmまでの間の部位に含まれる塩の量の30質量%以下である、請求項1または2に記載の物品。
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