JP7206717B2 - ポット精紡機の制御方法 - Google Patents
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Description
まず、本発明の実施形態に係るポット精紡機の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るポット精紡機の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、ポット精紡機1は、ドラフト装置2と、粗糸供給停止装置3と、導糸管4と、ポット5と、ボビン支持部6と、検査装置7と、を備えている。なお、これらの構成要素は、紡績の一単位となる1つの紡錘を構成するものである。ポット精紡機1は、複数の紡錘を具備するものであるが、各々の紡錘は共通の構成を有するため、ここでは1つの紡錘の構成について説明する。
ドラフト装置2は、糸材料となる粗糸9を所定の細さの糸に引き伸ばす装置である。ドラフト装置2は、バックローラ対15、ミドルローラ対16およびフロントローラ対17からなる複数のローラ対を用いて構成されている。複数のローラ対は、粗糸搬送方向の上流側から下流側に向かって、バックローラ対15、ミドルローラ対16およびフロントローラ対17の順に配置されている。
粗糸供給停止装置3は、ドラフト装置2のバックローラ対15に対して進退移動可能に設けられる楔部8を有している。粗糸供給停止装置3は、バックローラ対15を構成する2つのローラ、すなわちバックトップローラ15aとバックボトムローラ15bとの間に楔部8を食い込ませることにより、ドラフト装置2に対する粗糸9の供給を停止する。
導糸管4は、ドラフト装置2から吸篠管22を通して供給される糸20をポット5内に導くものである。ドラフト装置2によって引き伸ばされた糸20は、たとえば、空気の旋回流を利用して吸篠管22に引き込まれた後、吸篠管22を通して導糸管4に導入される。導糸管4は、細長い管状に形成されている。導糸管4を長さ方向と直交する方向に断面したときの形状は円形になっている。導糸管4は、ドラフト装置2の下流側に、ポット5と同軸に配置されている。導糸管4の下部は、ポット5内に配置されている。導糸管4の下端部には糸排出口4aが形成されている。導糸管4に導入された糸20は、導糸管4の糸排出口4aから紡出される。導糸管4は、後述する導糸管駆動部によって上下方向に移動可能に設けられている。
ポット5は、ケーク24の形成と糸20の巻き返しに用いられるものである。ポット5は、円筒形に形成されている。ポット5は、ポット5の中心軸回りに回転可能に設けられている。ポット5の中心軸Kは、鉛直方向と平行に配置されている。このため、ポット5の中心軸方向の一方は上方、他方は下方となっている。ポット5は、後述するポット駆動部の駆動によって回転する。ポット5の下端部には開口部5aが形成されている。ケーク24は、ポット5の内壁5bに形成される糸20の積層体である。
ボビン支持部6は、ボビン25を支持するものである。ボビン支持部6は、後述するボビン駆動部によって上下方向に移動可能に設けられている。ボビン支持部6は、ボビン台座26と、ボビン装着部27と、を有している。ボビン台座26は板状に形成されている。ボビン装着部27はボビン台座26に固定されている。
検査装置7は、ポット5内に残り糸が有るか否かを検査するものである。検査装置7は、撮影用のカメラ31と、画像処理部32とを有している。カメラ31は、ポット5の内部を撮影し、その撮影によって得られた画像データを出力するものである。画像処理部32は、カメラ31から出力される画像データを画像処理することにより、ポット5内に残り糸が有るか否かを判断するものである。カメラ31および画像処理部32を有する検査装置7は、ポット精紡機1が具備する複数の紡錘と同じ数だけ設けられていてもよいし、複数の紡錘につき1つだけ設けられていてもよい。
図2に示すように、ポット精紡機1は、制御部50と、ドラフト駆動部51と、楔駆動部52と、導糸管駆動部53と、ポット駆動部54と、ボビン駆動部55と、ワゴン駆動部56、を備えている。
制御部50は、ポット精紡機1全体の動作を統括的に制御するものである。制御部50には、制御の対象として、ドラフト駆動部51、楔駆動部52、導糸管駆動部53、ポット駆動部54、ボビン駆動部55およびワゴン駆動部56が電気的に接続されている。また、制御部50には、検査装置7が電気的に接続されている。このうち、ドラフト駆動部51、導糸管駆動部53、ポット駆動部54、ボビン駆動部55およびワゴン駆動部56は、複数の紡錘に対してそれぞれ1つ設けられ、楔駆動部52は、複数の紡錘と1対1の対応関係で複数設けられる。
ドラフト駆動部51は、バックローラ対15、ミドルローラ対16およびフロントローラ対17をそれぞれ所定の回転数で回転させるものである。ドラフト駆動部51は、制御部50からドラフト駆動部51に与えられる制御指令に基づいて駆動することにより、バックローラ対15、ミドルローラ対16およびフロントローラ対17を回転させる。
楔駆動部52は、粗糸供給停止装置3の楔部8を動作させるものである。楔駆動部52は、制御部50から楔駆動部52に与えられる制御指令に基づいて駆動することにより、バックローラ対15に対して楔部8を前進移動または後退移動させる。制御部50は、粗糸供給停止装置3を作動させる場合は、楔駆動部52の駆動により楔部8を前進移動させ、粗糸供給停止装置3の作動を解除する場合は、楔駆動部52の駆動により楔部8を後退移動させる。
導糸管駆動部53は、導糸管11を動作させるものである。導糸管駆動部53は、制御部50から導糸管駆動部53に与えられる制御指令に基づいて駆動することにより、導糸管11を上下方向に移動させる。
ポット駆動部54は、ポット12を回転させるものである。ポット駆動部54は、制御部50からポット駆動部54に与えられる制御指令に基づいて駆動することにより、ポット12の中心軸Kを回転中心としてポット12を回転させる。
ボビン駆動部55は、ボビン25を動作させるものである。ボビン駆動部55は、制御部50からボビン駆動部55に与えられる制御指令に基づいて駆動することにより、ボビン装着部27に装着されるボビン25を、ボビン台座26と一体に上下方向に移動させる。
ワゴン駆動部56は、上述したワゴンを動作させるものである。ワゴン駆動部56は、制御部50からワゴン駆動部56に与えられる制御指令に基づいて駆動することにより、ワゴンと共に検査装置7を移動させる。
検査装置7は、カメラ31および画像処理部32を用いて検査した結果を制御部50に通知する。ポット精紡機1が具備する複数の紡錘にはそれぞれ固有の識別情報が割り当てられている。これに対して、検査装置7は、ワゴンの移動により各紡錘のポット5内をカメラ31で撮影し、これによって得られた画像データを画像処理部32で画像処理する。その際、画像処理部32は、ポット5内に残り糸が有るか否かを紡錘ごとに判断する。そして、画像処理部32は、ポット5内に残り糸が有る紡錘を検出した場合は、検出した紡錘の識別情報を検査結果として制御部50に通知する。また、画像処理部32は、いずれの紡錘のポット5内にも残り糸が無かった場合、すなわちすべての紡錘で巻き返しに成功した場合は、その旨を検査結果として制御部50に通知する。
次に、本発明の実施形態に係るポット精紡機の基本的な動作について説明する。
まず、ポット精紡機1が行う工程には、ドラフト装置2から供給される糸20をポット5内に紡出する紡出工程と、ポット5内に紡出された糸20をボビン25に巻き返す巻き返し工程とが、少なくとも含まれる。以下に、紡出工程および巻き返し工程でのポット精紡機1の動作について説明する。なお、紡出工程および巻き返し工程は、いずれもポット5を所定の速度で回転させた状態で行われる。このため、制御部50は、ポット精紡機1の運転を開始するときにポット駆動部54に制御指令を与えることにより、ポット5を所定の速度で回転させ、その状態で紡出工程に移行する。
まず、制御部50は、ドラフト駆動部51に制御指令を与えることにより、バックローラ対15、ミドルローラ対16およびフロントローラ対17をそれぞれ所定の速度で回転させる。これにより、粗糸9は、各々のローラ対15,16,17の回転に従って搬送される。その際、ミドルローラ対16はバックローラ対15よりも高速で回転し、フロントローラ対17はミドルローラ対16よりも高速で回転する。これにより、粗糸9は、各々のローラ対15,16,17の回転速度差によって所定の細さに引き伸ばされる。
まず、制御部50は、上述したポット駆動部54の駆動によりポット5を所定の速度で回転させながら、ボビン駆動部55に制御指令を与えることにより、ボビン台座26を上方に移動させる。このとき、ボビン25は、ボビン台座26と共に上方に移動する。また、ボビン25は、ポット5の開口部5aを通してポット5内に進入する。これにより、ボビン25がポット5内に挿入される。また、制御部50は、ポット5内に挿入されるボビン25が導糸管4に接触しないよう、導糸管駆動部53に制御指令を与えることにより、導糸管4を上方に移動させる。
ここではポット精紡機1が具備する複数の紡錘の中から3つの紡錘を例に挙げて説明する。また、3つの紡錘を第1の紡錘61、第2の紡錘62および第3の紡錘63に区分する。そして、第1の紡錘61は導糸管4-1とポット5-1を備え、第2の紡錘62は導糸管4-2とポット5-2を備え、第3の紡錘63は導糸管4-3とポット5-3を備えるものとする。
まず、紡出工程では、ケーク24の形成を終えて糸切りするときに、フロントローラ対17の回転を継続したまま、バックローラ対15およびミドルローラ対16の回転を停止させる。このため、糸切りした後のドラフト装置2では、図10に示すように、粗糸9の先端9aがフロントローラ対17の直近に位置する。この状態で次の回の紡出工程を行うと、粗糸供給停止装置3が作動している紡錘では、図11に示すように、バックトップローラ15aとバックボトムローラ15bとの間に楔部8が食い込んだ状態で、ミドルローラ対16とフロントローラ対17が回転する。このため、バックローラ対15とミドルローラ対16との間で粗糸9が引っ張られて切断される。その結果、粗糸9の切れ端部分9bがミドルローラ対16とフロントローラ対17の回転によって搬送され、ポット5内に入り込んでしまうおそれがある。また、ポット5内に入り込んでしまった粗糸9を捨て糸にすることは可能だが、そうすると原料分玉が悪化し、生産性低下につながる。また、フロントローラ対17およびミドルローラ対16を回転したまま、バックローラ対15の回転を停止させて糸切りを行えば、バックローラ対15およびミドルローラ対16の逆回転は不要となるが、その場合は糸切れ位置が各錘間でばらつき、巻き返し成功率や紡出開始成功率の低下につながり、生産性が低下する。
本発明の実施形態に係るポット精紡機の制御方法は、紡出工程および巻き返し工程を終えた後で、かつ、次の回の紡出工程を開始する前に、ポット5内に残り糸が有るか否かを紡錘ごとに検査する検査工程を有する。そして、検査工程で残り糸が有ると判断された紡錘については、次の回の紡出工程でポット5内に糸20が紡出されないよう、粗糸供給停止装置3を作動させる構成を採用している。これにより、巻き返し工程で巻き返しに失敗し、ポット5内に残り糸が存在する紡錘があったとしても、その紡錘では次の回の紡出工程でポット5内に糸20が紡出されなくなる。このため、いずれかの紡錘で糸の巻き返しに失敗した場合でも、ポット5内で残り糸と後の糸が積層されることを回避することができる。
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
Claims (5)
- 粗糸搬送方向の上流側から下流側に順に配置されたバックローラ対、ミドルローラ対およびフロントローラ対を有し、前記バックローラ対、前記ミドルローラ対および前記フロントローラ対をそれぞれ回転させることにより、粗糸を引き伸ばすドラフト装置と、
前記バックローラ対に対して進退移動可能に設けられる楔部を有し、前記バックローラ対を構成する2つのローラの間に前記楔部を食い込ませることにより、前記ドラフト装置に対する前記粗糸の供給を停止する粗糸供給停止装置と、
所定の速度で回転するポットと、
をそれぞれ備える複数の紡錘を具備するポット精紡機の制御方法であって、
前記ドラフト装置から供給される糸を前記ポット内に紡出する紡出工程と、
前記ポット内に紡出された糸をボビンに巻き返す巻き返し工程と、
前記紡出工程および前記巻き返し工程を終えた後で、かつ、次の回の前記紡出工程を開始する前に、前記ポット内に残り糸が有るか否かを前記紡錘ごとに検査する検査工程と、を有し、
前記検査工程で前記残り糸が有ると判断された前記紡錘については、前記次の回の前記紡出工程で前記ポット内に糸が紡出されないよう、前記粗糸供給停止装置を作動させる
ポット精紡機の制御方法。 - 前記検査工程では、前記ポットの内部をカメラで撮影し、前記撮影によって得られる画像データを画像処理して、前記ポット内に残り糸が有るか否かを判断する
請求項1に記載のポット精紡機の制御方法。 - 前記検査工程でいずれかの前記紡錘の前記ポット内に前記残り糸が有ると判断された場合に、前記残り糸が有ると判断された前記紡錘について、前記粗糸供給停止装置を作動させる前に、すべての前記紡錘について、前記バックローラ対および前記ミドルローラ対を粗糸搬送時と反対方向に所定量だけ回転させる
請求項1または2に記載のポット精紡機の制御方法。 - 前記検査工程で前記ポット内に前記残り糸が有ると判断された回数がN回(Nは2以上の整数)連続した場合に、ポット精紡機の運転を停止させる
請求項1~3のいずれか一項に記載のポット精紡機の制御方法。 - 1回の前記検査工程で前記ポット内に前記残り糸が有ると判断された前記紡錘の数が予め設定された上限値を超えた場合に、ポット精紡機の運転を停止させる
請求項1~3のいずれか一項に記載のポット精紡機の制御方法。
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