上述したような、ホールレスな回転槽を備えた従来の洗濯機では、節水に優れていても、排水経路の構造や水を循環させる構造等、機能面において改善すべき課題が認められる。
(第1の課題)
特許文献1の洗濯機では、無孔状脱水兼洗濯槽の最上部の脱水孔を通じた溢水によってしか排水できないため、無孔状脱水兼洗濯槽を回転させる必要があり、排水性に難がある。水が入ったまま単純に溢水させるため、受水槽の振幅が大きくなり問題となる。それに対し、特許文献2の洗濯機であれば、水抜孔23bを通じて排水できるので、そのような不利はない。
しかしながら、特許文献2の洗濯機は、排水構造が複雑で、排水不良等を招き易い不利がある。すなわち、水抜孔23bに通じた第1排水路25と、水槽22(水受槽に相当)の底に通じた第2排水路26との合流部位には、いずれか一方を閉じる排水切換手段41が設けられているが、排水には糸屑等が混入するため、水路を切り替える排水切換手段41が糸屑等を噛み込んで適切に作動しなくなり易い。また、特許文献1や特許文献2の洗濯機では、水受槽に多量の水が貯まると、水受槽の外側に漏れ出し、電気系統の故障等のトラブルを招くおそれがある。
(第2の課題)
洗濯機からの排水を、流下による自然排水では無く、排水ポンプで強制的に排水するようにした機種(排水ポンプ付きの洗濯機)もある。排水ポンプ付きの洗濯機は、欧米などに多く認められる。
このような洗濯機では、流し台等に排水するために、排水ポンプより下流側の排水経路の揚程が、洗濯機の貯水量の上限水位より高く設定される。そのため、排水ポンプ付きの洗濯機では、排水を止めなくても、その水位差によって貯水が行える。従って、排水ポンプがある洗濯機は、排水経路に止水弁が設置されていないのが一般的である。
このような貯水可能な回転槽を備えた洗濯機に排水ポンプを配設する場合、通常は、電磁弁や排水弁に代えて排水ポンプが配設される。電磁弁や排水弁の下流側に、直列した状態で、排水ポンプを設置することも考えられるが、そうした場合、電磁弁や排水弁の機能が無駄になる。また、電磁弁や排水弁を閉じた状態で排水ポンプが作動すると、排水ポンプが故障するおそれもある。
(第3の課題)
特許文献2の洗濯機では、排水経路から分岐した循環経路に容量の大きな貯湯槽52を設け、そこに貯まる水をヒーターで加熱している。そのため、貯湯槽52の分だけ、洗浄水の量が増加し、節水の面で不利がある。加熱にも時間を要する。
貯湯槽52が、洗濯機本体20の下部に配置されるので、その設置スペースが必要になり、その分、洗濯兼脱水槽23の容量を減少させたり洗濯機本体20のサイズを拡大したりする必要が生じ、サイズのコンパクト化の面でも不利がある。
ボタン等の異物が洗濯水に混入することがあるが、特許文献2の洗濯機の排水経路や切替片を含む循環経路は、構造が複雑なうえに、異物が混入したままの状態で洗濯水が排水や循環されるので、切換片が故障したり、流路に詰まったり循環ポンプが故障したりし易い。その結果、排水不良や温度検知が不十分な不具合が生じて、貯湯槽52が空焚きになるおそれもある。
更に、循環経路27の吐出管56が洗濯機本体20に配置されている。それに対し、洗濯兼脱水槽23を収容した水槽22は、洗濯機本体20に揺動する状態で支持されているため、吐出管56からの洗濯水の流出位置が洗濯兼脱水槽23の開口から外れてしまい、洗濯水が洗濯兼脱水槽23に戻らずに、水槽22に流入する場合がある。
(第4の課題)
洗濯行程等で回転槽の水を循環させる場合、通常、循環する水は、回転槽の上部の開口を通じてその中に戻される。回転槽や回転槽を収容している水受槽は脱水等の際に揺れ動くため、送水口は、回転槽の開口から離れた位置に配置されている。そのため、循環ポンプの吐出力を利用して、送水口から回転槽の中央に向けて水を噴射したり、送水口の下側に樋状の部材を設けて、回転槽の開口に流下されたりすることで、回転槽の内部に水を送り込むようにしている。
ところが、循環ポンプのオンオフ運転や揚程差等による吐出力のばらつきや、回転槽の回転駆動等に伴う回転槽の開口の揺れ動きなどにより、送水口から出た水の一部が回転槽の外側に溢れ出る場合がある。
ホールレスの回転槽の場合、いったん回転槽の外側に溢れ出た水は、循環ポンプで戻さないかぎり、回転槽の中に戻ることは無い。そのため、回転槽の外側に溢れ出る水の量が増えると、その分、洗濯に用いられる水量が減るので、適切な水量から外れて、洗濯性能が低下したり、駆動に負担がかかって消費電力増加したりするおそれがある。
なお、特許文献3の洗濯機では、水路31を介して洗濯兼脱水槽12に送水されるので、少量ずつでしか送水できない。注水孔34や水路31の深さを大きくすれば送水できるが、現実的ではない。循環水には糸屑が混ざるため、注水孔34が詰まる可能性もある。そのため、多量の水を効率良く循環することが要望される、洗濯行程等の水循環には採用できない。送水口に相当する出水口部25が機枠10に固定されているため、洗濯兼脱水槽12及び外槽11が揺れ動くと、外槽11の外に水が漏れ出す場合もある。
(第5の課題)
回転槽がホールレスである場合、洗濯物に対する水量が少ないため、洗濯物から発生して水中に漂う微細な糸屑(リント)の含有量が相対的に増加し易い。そのため、リントが洗濯物に再付着し、綿埃になるという、問題がある。
リントフィルターを循環経路に設けて、循環時にリントを捕集すれば、再付着が防止できるが、水を円滑に循環させながら、リントフィルターでリントを効率よく捕集するには、安定した強い循環能力が必要である。
特許文献4の洗濯機のように、回転するパルセータの裏羽根で水を循環経路に吐出して水力を得ることが考えられるが、リントの捕集に十分な強い水力を得るのは難しい。
すなわち、ホールレスな回転槽の底部に大径のパルセータが設置されると、パルセータの下側の空間は閉鎖された状態となる。そのため、パルセータの裏側に裏羽根を設け、パルセータの回転時に径方向外側に水を送り出すように構成しても、負圧力に対して、パルセータの裏側に流入する水が不足し、十分な吐出が得られない。
特許文献4の洗濯機では、回転翼33の中心側の範囲に多数の通水孔33cを形成し、負圧を利用して、パルセータの下側に水を流入させているが、本発明者らが検討したところ、改善の余地があることが判明した。
すなわち、ホールレスな回転槽においてパルセータの裏羽根で水を吐出させる場合、通水孔の総開口面積が小さ過ぎても大き過ぎても、安定した強い循環能力が得られないことを見出した。
(第6の課題)
回転槽がホールレスである場合、回転槽の外側のスペース(回転槽と水受槽との間)には、溢水された水はそのまま排水されるため、ほとんど水が貯まらない。そのため、そこには、汚れが蓄積したりカビが発生したりして不衛生な状態になり易い。
回転槽及び水受槽の双方に水を一杯に貯めて浸け置き洗浄することも考えられるが、その場合、多量の水が必要であり、節水の面で難がある。回転槽の外側にのみ水を貯めて浸け置き洗浄することも考えられるが、ユーザーが手作業で、排水されないように止水したうえで、回転槽と水受槽の隙間から洗浄剤等を入れ込み、ホース等を差し込んで給水するしかなく、煩雑なため、現実的ではない。
カビ等に対しても、薬剤による除菌は、薬効への影響が大きく、薬剤が残存しないように十分な濯ぎが必要となるため、かえって多量の水が必要になる。また、洗浄ごとに薬剤が必要になってランニングコストもかかる。それに対し、熱水による除菌は、除菌効果が高く、温度に応じて安定した除菌効果が得られるうえに、濯ぎが不要で節水にも有利である。熱水はまた、汚れの除去にも有効である。
しかし、ヒーター等の加熱装置を用いて多量の水を熱水にするのは、非現実的である。例えば、一般的な洗濯機を想定し、100Lの水(20℃)を、1時間で、カビ等の除菌が可能になる70℃に加熱すると、水の加熱に約5800W、回転槽の加熱に約200W、放熱による消費が約1000W、合計で約7000Wの消費電力が必要になる。
家庭用電源はブレーカとの関係から1500Wが上限となっており、仮に1200Wをその加熱に用いたとしても、加熱に6時間近く要することになってしまう。従って、多量の水を加熱して除菌することは、非現実的である。
常温の水を給水しながら加熱し、熱水にして供給することも考えられるが、洗浄に必要な水量では、1200Wでは電力不足で熱水にできない。
そこで、開示する技術の目的は、これらの課題について改善を図ることにあり、節水に優れるとともに、機能的にも優れた縦型の洗濯機を提供することにある。
開示する技術は、いずれもホールレスな回転槽を備えた縦型の洗濯機に関する。以下、開示する技術を、前述した第1~第6の各課題に対応して、具体的に説明する。
(第1の課題に対する第1の技術)
第1の技術に関する洗濯機は、排水経路が下部に設けられた筐体と、当該筐体の内部に支持された水受槽と、洗濯物が投入され、前記水受槽の内部で垂直方向に延びる軸回りに回転する回転槽と、を備える。前記回転槽は、前記水受槽から独立して貯水可能な胴部材と、当該胴部材の底部に開口する流出口と、を有している。
前記水受槽は、当該水受槽の底部に開口し、当該水受槽の内部に臨む第1排水口と、当該水受槽の底部に開口し、区画された導水経路を介して前記流出口に連通する第2排水口とを有している。
そして、前記排水経路が、前記第1排水口に接続された第1経路と、前記第2排水口に接続された第2経路とを有している。
すなわち、この洗濯機によれば、回転槽や水受槽が、それぞれ個別の排水経路を有しているので、回転槽の貯水や排水、水受槽の貯水や排水が効率的に行える。
前記水受槽は、前記水受槽の上部側面に開口する第3排水口を更に有し、前記排水経路は、前記第3排水口に接続された第3経路を更に有しているのが好ましい。
そうすれば、水受槽の上部側面に開口する第3排水口から第3経路を通じて排水できるので、給水異常等があっても、水受槽から筐体内に水が溢れ出すことがない。従って、電気系統の故障等のトラブルが防止できる。
特に、前記排水経路が、更に、前記第1経路、前記第2経路、及び前記第3経路が接続されて、前記筐体の外に排水する第4の経路を有し、前記1経路に、流路を変位するフロートで止水する止水弁が設置されるとともに、前記第4経路における当該第1経路及び前記第2経路の各合流部位の下流側に排水弁が設置されているようにするとよい。
そうすれば、簡素な構成で、回転槽の貯水や排水、水受槽の貯水や排水が、効率的に行える。電気的な制御も簡略化できるので、部材コストやランニングコストを削減できる利点もある。
前記止水弁は、前記フロートの変位を規制する上下2つの規制部を有し、前記フロート及び前記規制部のうち、少なくともいずれか一方が弾性を有する軟質部材で構成されているようにするとよい。
そうすれば、水受槽が揺れ動いても、フロートと上下の規制部との間が弾性的に接触するため、止水弁に起因して異音が発生することを防止できる。
上側の前記規制部が、流路内に張り出す鍔状に形成されていて、浮上した前記フロートに密着して流路を閉じるとともに、下側の前記規制部が、流路内に突出する凸状に形成されていて、流路を開いた状態で、降下した前記フロートを支持するようにするとよい。
そうすれば、簡素な構成で機能的な止水弁を実現できる。
前記第1経路の一部は柔軟なホースで構成されており、前記ホースと上側の前記規制部とが一体で構成されているようにするのが好ましい。
そうすれば、フロートと上側の規制部との密着が高まって、安定した止水が行える。脱着可能な状態で接続でるので、トラブルがあった場合でも容易に交換できる。異物が詰まっても、そのままホースを摘まむ等することで、詰まりを解消することもできる。
前記排水経路が、更に、前記第1経路、前記第2経路、及び前記第3経路が接続されて、前記筐体の外に排水する第4の経路を有し、前記1経路及び前記第2経路の各々に開閉弁が設置されているようにしてもよい。
このような場合でも、トラブルを防いで機能的な排水が行える。
(第2の課題に対する第2の技術)
第2の技術に関する洗濯機は、排水経路が下部に設けられた筐体と、当該筐体の内部に支持された水受槽と、洗濯物が投入され、前記水受槽の内部で垂直方向に延びる軸回りに回転する回転槽と、を備える。前記回転槽は、前記水受槽から独立して貯水可能な胴部材と、当該胴部材の底部に開口する流出口と、を有している。
前記水受槽は、当該水受槽の底部に開口し、当該水受槽の内部に臨む第1排水口と、当該水受槽の底部に開口し、区画された導水経路を介して前記流出口に連通する第2排水口と、を有している。
そして、前記排水経路が、前記第1排水口に接続された第1経路と、前記第2排水口に接続された第2経路と、前記第1経路及び前記第2経路が接続されて、前記筐体の外に排水する第3経路と、を有している。そして、前記第3経路における前記第1経路及び前記第2経路の各合流部位の下流側に、排水ポンプが設置されている。
すなわち、この洗濯機によれば、回転槽や水受槽が、それぞれ個別の第1経路及び第2経路を有しているので、回転槽の貯水や排水、水受槽の貯水や排水が効率的に行える。そして、これら個別の経路が合流する部位の下流側に、排水ポンプが設置された第3経路が接続されていて、その第3経路を通じて筐体の外へ強制的に排水されるようになっている。従って、排水ポンプと各排水経路とは、直列状態ではないので、これら経路に開閉弁等を設置しても、これらの機能を無駄にせず、機能的な排水が行える。両方の経路が閉ざされない限り、排水ポンプに過剰な負荷を与えることがないので、排水ポンプを適性に機能させることができる。
特に、前記1経路に、流路を変位するフロートで止水する止水弁を設置するとよい。
そうすれば、簡素な構成で、回転槽の貯水や排水、水受槽の貯水や排水が、効率的に行える。電気的な制御も簡略化できるので、部材コストやランニングコストを削減できる利点もある。
前記止水弁は、前記フロートの変位を規制する上下2つの規制部を有し、前記フロート及び前記規制部のうち、少なくともいずれか一方が弾性を有する軟質部材で構成されているようにするとよい。
そうすれば、水受槽が揺れ動いても、フロートと上下の規制部との間が弾性的に接触するため、止水弁に起因して異音が発生することを防止できる。
下側の前記規制部が、流路内に突出する凸状に形成されていて、流路を開いた状態で、降下した前記フロートを支持するようにするとよい。
そうすれば、簡素な構成で機能的な止水弁を実現できる。
前記第1経路の一部は柔軟なホースで構成されており、前記ホースと前記規制部とが一体で構成されているようにするのが好ましい。
そうすれば、フロートと規制部との密着性が高まって、安定した止水が行える。脱着可能な状態で接続できるので、トラブルがあった場合でも容易に交換できる。異物が詰まっても、そのままホースを摘まむ等することで、詰まりを解消することもできる。
また、前記第1経路と前記第2経路とが、切換弁を介して前記第3経路に接続され、前記切換弁が、前記第1経路と前記第3経路とを連通させる第1切替位置と、前記第2経路と前記第3経路とを連通させる第2切替位置と、前記第1経路と前記第2経路とを連通させる第3切替位置と、に切り替え制御されるようにしてもよい。
更には、前記第1経路に第1開閉弁が設置されるとともに、前記第2経路に第2開閉弁が設置され、第1開閉弁及び第2開閉弁が、前記排水ポンプと連動して開閉制御されるようにしてもよい。
これらの場合でも、排水ポンプでのトラブルの発生を防ぎながら、機能的な貯水や排水が行える。
(第3の課題に対する第3の技術)
第3の技術に関する洗濯機は、排水経路が下部に設けられた筐体と、当該筐体の内部に支持された水受槽と、洗濯物が投入され、駆動装置の駆動によって前記水受槽の内部で垂直方向に延びる軸回りに回転する回転槽と、前記回転槽に貯まる水を循環させる循環経路と、前記回転槽に貯まる水を加熱するヒーターと、前記回転槽の回転及び前記ヒーターの加熱を制御する制御装置と、を備える。
前記回転槽は、上部が開口し、前記水受槽から独立して貯水可能な胴部材と、当該胴部材の底部に開口する流出口と、有している。前記水受槽は、当該水受槽の底部に区画されて、前記流出口に連通すると共に、前記排水経路及び前記循環経路の双方に連通する導水経路を有している。そして、前記水受槽の底面に沿って流路断面が拡がるように、前記導水経路が形成されていて、当該導水経路の内部に前記ヒーターが拡がるように設置されている。
すなわち、この洗濯機は、ホールレスな回転槽を備えているので、節水に優れる。回転槽に貯まる水を加熱して循環させる循環経路も備え、洗浄水や濯ぎ水を温水化できるので、洗い性能や濯ぎ性能にも優れる。そして、水受槽の底部に、排水経路及び循環経路の双方に連通する導水経路を有していて、その導水経路が水受槽の底面に沿って流路断面が拡がるように、薄く形成されている。水受槽の広い底面を利用して導水経路を形成したことで、薄くても大きな流路断面を得ることができる。スペースの無駄がなくなるので、筐体に対して水受槽や回転槽の容量を大きくでき、サイズのコンパクト化が図れる。
そして、その導水経路の内部にヒーターが拡がるように設置されているので、僅かなスペースでありながら、循環する水を効率的に加熱できる。少量の水を短時間で高い温度まで高めることができる。
具体的には、前記水受槽の底面が凹んで形成された幅広凹部と、当該幅広凹部の上部を塞ぐ区画プレートとによって、前記水受槽の底部に前記導水経路が区画されているようにするとよい。
そうすれば、簡単な構造で水漏れしない導水経路が形成できる。
前記胴部材の底部の内面に、外周側から中央側に向かって下り傾斜する導水面が形成され、前記流出口が、前記導水経路の流路断面積以上の大きさの開口面積で、前記導水面の最下部に開口しているようにするのが好ましい。
そうすれば、回転槽に貯まる水は、これら導水面に導かれて、流出口から滞ることなく流出する。従って、残水が発生し難く、排水性に優れる。
特に、前記ヒーターの上側及び下側の少なくともいずれか一方には、遮熱プレートが配置されているようにするとよい。
そうすれば、流路断面が薄くても、遮熱プレートによって導水経路を区画している部材が過度に加熱されるのが防止できるので、その部材が合成樹脂製であっても変形等が防止できる。
更に、前記循環経路が、前記胴部材の開口を通じて当該胴部材の中に水を戻す吐出口を有し、前記吐出口が、前記水受槽の上部に設置されているようにするとよい。
そうすれば、水受槽が揺れ動いても、吐出口と胴部材の開口との間の位置関係は変化しない。従って、安定して循環する水を胴部材の中に戻すことができる。
また、前記導水経路が、その下面に開口する循環用の排水口を有し、前記循環経路の端部が、前記循環用の排水口に連結部材を介して接続され、前記連結部材が、その上端部を前記導水経路の下面から突出させた状態で、前記循環用の排水口と前記循環経路の端部との間の隙間を塞いでいるようにしてもよい。
そうすれば、1つの連結部材で、接続部のシール性を確保しながら、ボタン等の異物が循環用の排水口に流入するのを防止できるので、部材点数の削減とトラブルの予防とが両立できる。
前記駆動装置の駆動と前記ヒーターの加熱は、前記制御装置が同時に制御を行ってもよいし、交互に制御を行ってもよい。
同時に行うと、循環している水を加熱できるので、加熱効率を高めることができ、水温をバランスよく高めることができる。電力供給量が十分でない場合などは、交互に行うことで安定した運転が行える。
前記回転槽に貯まる水の水位を検知して、前記制御装置に出力する水位センサを更に備え、前記水位が所定の下限値以上である時に限り、前記制御装置が前記ヒーターの加熱を行えるようにしてもよい。
そうすれば、ヒーターの空焚きを防ぐことができる。
前記循環経路に、前記制御装置によって制御される循環ポンプが設置され、前記制御装置は、前記循環ポンプの駆動及び前記ヒーターの加熱を制御する連動制御回路を有し、前記ヒーターの加熱と前記循環ポンプの駆動とが連動するように、前記連動制御回路が構成されているようにするとよい。
そうすれば、制御に頼らずに、ヒーターの空焚きが防止できるので、より安全性が向上する。
この場合、前記循環ポンプの動作状態を検知して前記制御装置に出力するポンプ動作チェック機構を更に備えるようにするとよい。
そうすれば、循環ポンプの故障によるヒーターの空焚きが防止できるので、よりいっそう安全性が向上する。
更に、前記回転槽に貯まる水の水温を検知して、前記制御装置に出力する水温センサを備え、前記水温が所定の設定値以上である時に限り、前記制御装置が前記循環ポンプを駆動させるようにしてもよい。
この場合、循環ポンプが断続的に駆動されるので、電力消費を抑制でき、過度の加熱も抑制できる。
(第4の課題に対する第4の技術)
第4の技術に関する洗濯機は、筐体の内部に弾性的に支持された水受槽と、洗濯物が投入され、前記水受槽の内部で垂直方向に延びる軸回りに回転する回転槽と、前記回転槽に貯まる水を、吐出口から噴き出すことによって前記回転槽の中に戻す循環経路と、を備える。
前記回転槽は、上部が開口し、前記水受槽から独立して貯水可能な胴部材と、前記胴部材の開口の内側に沿って設置されたリング状のバランサーと、前記バランサーの下方から前記胴部材の上部の外方に連通する溢水経路と、を有している。そして、前記バランサーの上部に、当該バランサーより上方に張り出した円筒状の止水リブが設けられ、前記吐出口が、前記水受槽の上部に設置され、前記止水リブよりも径方向内側に張り出して前記回転槽の内部に臨んでいる。
すなわち、この洗濯機は、ホールレスな回転槽を備えているので、節水に優れる。回転槽に貯まる水を吐出口から噴き出して循環させる循環経路を備え、多量の洗浄水や濯ぎ水を循環できるので、洗い性能や濯ぎ性能にも優れる。
そして、回転槽の開口の内側に沿って設置されたバランサーに、その下方から回転槽の上部の外方に連通する溢水経路が設けられているので、脱水時に、回転槽の内側に沿って上昇した水を、余すこと無く溢水することができ、脱水性能に優れる。
更に、吐出口が水受槽の上部に設置されているので、筐体に弾性的に支持されている水受槽が揺れ動いても、吐出口と胴部材の開口との間の位置関係は変化しない。従って、吐出先の位置がぶれることがなく、安定して回転槽の中に水を戻すことができる。その上、バランサーの上部には止水リブが設けられていて、吐出口が、止水リブよりも径方向内側に張り出して回転槽の内部に臨んでいるので、吐出口から噴き出される水の勢いが弱くなって液垂れ等が発生しても、水受槽への流出が阻止でき、洗濯に用いられる水量が減るのを防止できる。
従って、この洗濯機によれば、回転槽がホールレスであっても、適切な流量を維持しながら安定して水を循環させることができる。
前記水受槽は、その上部に取り付けられる槽カバーを有し、前記槽カバーは、径方向内側に張り出して前記胴部材の開口との間を覆うフランジ部を有し、前記フランジ部に、前記吐出口が一体に形成されているようにしてもよい。
そうすれば、既存の比較的簡素な構造を利用して、隙間の少ない機能的な洗濯機を実現できる。
その場合、前記バランサーの上部の前記止水リブの径方向内側から上方に張り出して、前記フランジ部との間の隙間を塞ぐ円筒状のカバーリブが更に設けられ、前記バランサーに、前記止水リブと前記カバーリブとの間に形成される環状の溝に入り込んだ水を前記胴部材の中に戻す流下経路が設けられているようにするとよい。
そうすれば、カバーリブによって洗濯物の噛み込みが防止できるし、カバーリブの裏側に入り込んだ水も流下経路を通じて回転槽に戻すことができる。
その場合、前記バランサーが、前記胴部材に取り付けられる取付部と、当該取付部の内側に一体化されるバランス調整部と、を有し、前記流下経路が、前記取付部と前記バランス調整部との間に設けられているようにするとよい。
そうすれば、バランサーの胴部材への組み付けが容易になるし、流下経路もバランサーの機能を損なうことなく容易に形成できる。
また、前記バランサーが、その内部に流体を収容する環状の液室と、当該液室に径方向から張り出した複数の流動抑制部と、を有している場合には、前記流下経路が、前記流動抑制部を上下に貫通することによって設けられているようにしてもよい。
この場合も、バランサーの機能を損なうことなく流下経路が形成できる。
(第5の課題に対する第5の技術)
第5の技術に関する洗濯機は、筐体の内部に支持された水受槽と、洗濯物が投入され、前記水受槽の内部で垂直方向に延びる軸回りに回転駆動される回転槽と、を備える。
前記回転槽は、前記水受槽から独立して貯水可能な胴部材と、前記胴部材の底部に設置され、前記軸回りに回転駆動されるパルセータと、前記胴部材の側部に設置され、前記パルセータを境に区画された上側の洗濯空間と下側のポンプ空間とに連通し、前記パルセータを介して水を循環させる循環経路と、有している。
前記パルセータは、円板状のベースと、前記ベースを貫通し、前記洗濯空間と前記ポンプ空間とを連通させる複数の通水孔と、前記ベースの裏面に設けられ、前記ポンプ空間で水を径方向に送り出す裏羽根と、を有している。
そして、前記通水孔が、前記ベースの中心側の領域に偏在して配置され、前記ベースの表面をその垂直方向から見た場合での、その総面積に対する前記通水孔の総開口面積の割合が1.5~4.0%の範囲内に設定されている。
すなわち、この洗濯機は、ホールレスな回転槽が備えられているので、節水に優れる。そして、その回転槽の内部が、パルセータを境に、洗濯空間とポンプ空間とに区画されていて、これらが循環経路を介して連通している。そして、パルセータが、洗濯空間とポンプ空間とを連通させる複数の通水孔と、ポンプ空間で水を径方向に送り出す裏羽根とを有しているので、回転槽に水を貯めた状態でパルセータが回転されると、ポンプ空間の水が裏羽根で循環経路に押し出される共に、通水孔を通じて洗濯空間の水がポンプ空間に導入されるので、回転槽の中の水が循環する。
このとき、ポンプ空間の裏羽根との空間に隙間が少ないほど、強い吐出が得られるが、その吐出に追随できる量の水をポンプ空間へ導入するのは難しい。そのため、十分な負圧力が得られても、ポンプ空間の水が不足して、十分な吐出が得られない。
それに対し、通水孔をベースの中心側の領域に偏在して配置し、ベースの総面積(投影面積)に対する通水孔の総開口面積の割合を1.5~4.0%の範囲内に設定することで、後述するように、強い吐出を得ることが可能になり、水を勢いよく円滑に循環できるようになる。
具体的には、前記ベースの表面のうち、当該ベースと同心かつ外径の80%の大きさを有する円形領域に、総開口面積の92%以上の前記通水孔が配置されているようにするとよい。
そうすれば、ポンプ空間でのポンプ機能を効果的に発揮させることができ、円滑で勢いが強い水の循環が実現できる。
特に、前記回転槽が、更に、前記胴部材の側部に設置されて前記洗濯空間に臨むリントフィルターを有し、前記循環経路が、前記リントフィルターを通じて前記洗濯空間に連通しているようにすればよい。
前述したように、回転槽がホールレスである場合、洗濯物に対する水量が少ないため、水中に漂うリントが高含有量になり易いという問題があるが、この洗濯機では、水量が少なく、強い循環能力が得られるので、リントの効率的な捕集が実現できる。
より具体的には、前記ベースの表面には、その中心に位置するボス部と、前記ボス部から放射状に延びる複数の撹拌羽根部と、隣接する前記撹拌羽根部の間に拡がって外周側が略平坦な平面部と、を有し、前記通水孔が前記平面部に集約して配置されているようにするとよい。
そうすれば、少ない抵抗で水をポンプ空間に導入できる通水孔を、一様に多数形成できる。成形が容易な点でも有利である。回転槽の中に洗濯物があっても、撹拌羽根部で受け止められるので、通水孔が塞がれ難い。従って、水量がばらつくことなく、水をポンプ空間に安定して導入できる。
前記パルセータの外周部分が前記胴部材の底部と隙間を介して近接しているようにすればよい。
そうすれば、ポンプ空間の周囲からの自由な水の出入を抑制できるので、安定した強い吐出を得ることができる。
(第6の課題に対する第6の技術)
第6の技術に関する洗濯機は、筐体の内部に支持された水受槽と、洗濯物が投入され、前記水受槽の内部で垂直方向に延びる軸回りに回転すると共に、前記水受槽から独立して貯水可能な回転槽と、前記回転槽を回転させる駆動装置と、前記回転槽の回転数を検知する回転センサと、前記回転槽に貯まる水の水位を検知する水位センサと、前記回転センサ及び前記水位センサから入力される信号に基づいて、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備える。
そして、前記制御装置が、前記回転槽に投入された洗濯物の洗濯を行う洗濯実行部と共に、予め設定された洗浄水位まで前記回転槽に貯めた洗浄水を、回転速度を制御しながら前記回転槽を回転して溢水させることにより、前記回転槽と前記水受槽との間のスペース(外側スペースともいう)の洗浄を行う槽洗浄実行部を有している。
すなわち、対象は、節水に有利な、いわゆるホールレスな回転槽を備えた縦型の洗濯機である。制御装置は、洗いや脱水等の洗濯処理を実行する洗濯実行部に加えて、外側スペースの洗浄を行う槽洗浄実行部を有している。その槽洗浄実行部は、予め設定された洗浄水位まで回転槽に洗浄水を貯める。洗浄水位は低く設定され、使用する洗浄水は比較的少量とされる。その洗浄水を、回転速度を制御しながら回転槽を回転して溢水させる。洗浄水が少なくても、回転による遠心力で回転槽の上方からその外側に均等に、シャワー状に振りまくことができる(シャワー洗浄)。それにより、回転槽の外側の、洗浄が困難な外側スペースの全域を、少量の洗浄水で、効率良く洗浄することができる。
前記水受槽が、前記筐体に揺動自在な状態で支持されている場合には、前記水受槽の振動を検知する振動センサ、を更に備え、前記槽洗浄実行部が、前記振動センサから入力される信号に基づいて、前記回転槽の回転の加速度を調整しながら、前記回転槽の回転速度を段階的又は連続的に高めて溢水させるようにするとよい。
この場合、回転槽の回転に伴って、洗浄水が貯まる水受槽が大きく揺動すると、騒音や振動、さらには、洗濯機が倒れるような異常振動を発生するおそれがある。それに対し、槽洗浄実行部が、振動センサから入力される振動の信号に基づいて、回転槽の回転の加速度を調整しながら、回転槽の回転速度を段階的又は連続的に高めて溢水させるようにすれば、槽洗浄時にそのようなトラブルが発生するのを防止できる。
更に、前記回転槽に貯まる前記洗浄水を加熱する加熱装置と、前記回転槽に貯まる前記洗浄水の温度及び前記水受槽の周辺の温度を検知するセンサと、を備え、前記制御装置に、除菌の基準となる所定の除菌温度が予め設定されており、前記槽洗浄実行部が、前記センサから入力される信号に基づいて前記除菌温度を上方へ補正し、補正した温度に前記洗浄水を加熱するようにしてもよい。
そうすれば、外側スペースを加熱除菌できるので、カビや細菌を死滅させ、微生物的にも外側スペースを清浄な状態に洗浄できる。シャワー洗浄の場合、洗浄水の温度が低下し易いが、槽洗浄実行部が、除菌温度を上方へ補正し、適正な除菌が行えるように、洗浄水を加熱するので、環境温度等の外因の影響を受けずに、安定した除菌効果を得ることができる。
第6の技術はまた、槽洗浄方法に関する。この槽洗浄方法は、洗濯物が投入される回転槽が、水受槽の内部に、当該水受槽から独立して貯水可能な状態、かつ、垂直方向に延びる軸回りに回転可能な状態で収容されている縦型の洗濯機の槽洗浄方法に関する。予め設定された洗浄水位まで、前記回転槽に洗浄水を貯める準備ステップと、前記回転槽の回転速度を高めながら前記洗浄水を溢水させて前記水受槽の内部を洗浄する洗浄ステップと、を含む。
この槽洗浄方法によれば、前述した洗濯機と同等の作用効果が得られる。
具体的には、前記洗浄ステップが、所定の第1回転数まで、前記回転槽の回転速度を段階的又は連続的に高めることによって溢水させる第1の洗浄ステップと、前記第1回転数で、前記回転槽の回転速度を所定時間維持する中間待機ステップと、前記第1回転数から所定の第2回転数まで、前記回転槽の回転速度を段階的又は連続的に高めることによって溢水させる第2の洗浄ステップと、を含むようにするとよい。
第1の洗浄ステップでは、無回転の状態から第1回転数まで回転速度を高めて溢水させるシャワー洗浄であり、回転数が低いことから、溢水される洗浄水は、主に、外側スペースの下方に向かって振り飛ばされる。つまり、外側スペースの下方の洗浄が効果的に行える。中間待機ステップでは、回転速度が維持されることで、溢水状態や回転槽の回転状態、水受槽の揺れ状態が安定する。
そうして、第2の洗浄ステップでは、より高回転の第2回転数まで回転速度を高めて溢水させるシャワー洗浄が行われるので、溢水される洗浄水は、主に、外側スペースの上方に向かって振り飛ばされる。つまり、外側スペースの上方の洗浄が効果的に行える。従って、外側スペースの上下方向の全域を効果的に洗浄できる。
特に、前記洗浄ステップで、前記水受槽の振幅が所定の許容値を超えた場合に、当該水受槽の振幅が前記許容値以下になるまで、前記回転槽の回転の加速を中断する加速制御処理が行なわれるようにするのが好ましい。
そうすれば、水受槽が大きく揺動する前に、その揺動が抑制されるので、騒音や振動、さらには、洗濯機が倒れるような異常振動の発生を防止できる。
更に、前記準備ステップで、所定の温度まで前記洗浄水を加熱する熱水化処理が行われるようにするとよい。
そうすれば、外側スペースを加熱除菌できるので、微生物的にも外側スペースを清浄な状態に洗浄できる。
その場合、前記熱水化処理で、前記水受槽の周辺の外気温に基づいて、前記温度を上方へ補正する処理が行われるようにするとよい。
シャワー洗浄の場合、洗浄水の温度が低下し易いが、水受槽の周辺の外気温に基づいて除菌温度を上方へ補正すれば、適正な除菌が行え、安定した除菌効果を得ることができる。
開示する技術によれば、節水に優れるだけでなく、機能的にも優れた縦型の洗濯機が実現できる。
例えば、第1や第2の技術によれば、機能的な排水が行える。第3の技術によれば、効率的かつ安全に、洗浄水を加熱して循環できるようになる。第4の技術によれば、適切な水量を維持しながら安定して水を循環させることができる。第5の技術によれば、パルセータの裏羽根で水を効果的に吐出できる。従って、リントの効率的な捕集が実現できる。第6の技術によれば、節水の利点を損なうことなく、ホールレスな回転槽の外側の洗浄が効果的に行える。
以下、開示する技術を、前述した第1~第6の技術毎に、図面に基づいて詳細に説明する(第1~第6の実施形態)。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。第1~第6の各実施形態で開示する技術は、それぞれ独立したものではなく、ある実施形態に他の実施形態の技術を組み合わせたり、ある実施形態の技術から一部の技術を省略したりすることも可能である。
=第1の技術に関する実施形態(第1実施形態)=
図1に、第1の技術を適用した洗濯機1Aを示す。この洗濯機1Aは、流下による自然排水によって排水を行う、排水ポンプの無いタイプであり、筐体10、水受槽20、回転槽30、パルセータ40、駆動装置50などで構成されている。
筐体10は、縦長な矩形箱型の形状であり、パネルや樹脂部材等を組み合わせて形成されている。筐体10の上面には、トップカバー11が組み付けられており、そのトップカバー11の前側の領域に洗濯物を出し入れする投入口12が大きく形成されている。トップカバー11における投入口12の後縁の部分には、蓋13が揺動可能に取り付けられており、投入口12は、蓋13によって開閉されるようになっている。トップカバー11における投入口12の前縁の部分に、洗濯機1Aの運転時には、閉じた蓋13をロックするロック装置14が設置されている。
トップカバー11における投入口12より後側の部分には、上方に膨出した膨出部11aが設けられている。膨出部11aの前面には、ユーザーが操作するスイッチやタッチパネル、モニター等が配置された操作部15が設置されており、膨出部11aの内部には、操作部15を通じて行われるユーザーの指示に従って洗濯機1Aの各装置の作動を制御する制御装置60が設置されている。
制御装置60は、プロセッサやメモリ、入出力装置等のハードウエアと、これらに実装された制御プログラム等のソフトウエアとで構成されている。制御装置60は、洗濯機1Aに取り付けられた各種センサ等の入力信号に基づいて、洗濯機1Aに設置されている各装置の駆動を制御する。図2に、制御装置60と、その主な入力装置及び出力装置との関係を示す。
制御装置60には、洗い行程、濯ぎ行程、及び脱水行程を主体とした、洗濯を行う複数の洗濯コースが設定されている。ユーザーは、操作部15を操作することにより、任意に洗濯コースを選択し、好みの洗濯処理を行うことができる。特に、この洗濯機1Aでは、水受槽20の内側の洗浄と回転槽30の外側の洗浄を行う槽洗浄コースも設定されている。
筐体10の内部の後部上方には、給水装置70が設置されている。給水装置70は、給水接続配管71、給水弁72、注水ケース73などで構成されている。給水接続配管71の上流側の端部は、筐体10の外部に突出しており、これに水供給源となる水道の蛇口等が、ホース等を介して接続される。給水接続配管71には、制御装置60によって開閉される給水弁72が設置されている。給水接続配管71の下流側の端部は、注水ケース73に接続されている。注水ケース73には、トレイ状の洗剤投入容器73aが着脱可能に収容されている。
水受槽20は、有底円筒形状をした貯水可能な大型容器である。筐体10の内部の上方には、弾性変形可能なサスペンション16が複数箇所に取り付けられている。水受槽20は、これらサスペンション16によって懸架されることにより、揺れ動きが可能な状態で筐体10の内部に支持されている。水受槽20の上端には、フランジ状に内側に張り出す槽カバー21が取り付けられている。注水ケース73は、回転槽30の内部に給水できるように、この槽カバー21の上方を横切って回転槽30の開口上に突き出すように配置されている。
回転槽30は、水受槽20の内部に収容されている。回転槽30は、水受槽20と同心に配置されていて、垂直方向に延びる縦軸Jの回りに回転可能に構成されている。従って、この洗濯機1Aは、縦型の洗濯機である。
回転槽30は、水受槽20から独立して貯水可能な有底円筒形状の胴部材31を有している。すなわち、回転槽30に単独で水が貯められるように、胴部材31の周壁の下部や中間部には、内外に連通する孔は形成されておらず、胴部材31の上端部にのみ、複数の脱水孔32が全周にわたって形成されている(ホールレス)。なお、胴部材31の上部から溢水できればよいため、複数の脱水孔32は必須ではない。胴部材31は、ステンレス鋼板等で構成されている。
洗濯物は、投入口12を通じてこの回転槽30に投入され、洗いや濯ぎ、脱水等の一連の行程からなる洗濯の各処理は、この回転槽30に洗濯物を収容した状態で行われる。胴部材31の上縁部には、その縁に沿ってリング状のバランサー33が取り付けられている。
図3に示すように、胴部材31の底部の中央には、貫通した軸孔34が形成されている。この軸孔34を通じて、縦軸Jに沿って延びる第1軸81が、胴部材31の内部に突出している。軸孔34と第1軸81との間はシール構造34aによって水封されている。第1軸81の突端にパルセータ40が固定されている。パルセータ40は、撹拌機能を有する円板状の部材であり、その上面には、中心部から外周に向かって突出した状態で延びる複数の羽根部が放射状に設けられている。
胴部材31の底部は、第1軸81と同軸に設けられた第2軸82の突端に固定されている。第1軸81及び第2軸82は、軸ユニット80として一体化されており、互いに独立して回転可能に構成されている。
胴部材31の底部の裏面(外側)には、フランジシャフト35が取り付けられている。フランジシャフト35により、回転槽30の底部の強度が補強されている。フランジシャフト35には流出口36が形成されていて、胴部材31の底部における軸孔34の周囲には、流出口36が開口している。
フランジシャフト35の下部には、シールリング37が設けられており、これらの中央を貫通して軸孔37aが形成されている。軸ユニット80は、この軸孔37aを通じて上下に貫通するように配置されていて、フランジシャフト35及びシールリング37は胴部材31に固定されて第2軸82を貫通している。フランジシャフト35及びシールリング37における軸孔37aの周囲には、通水口38が開口している。
水受槽20の底部の表面(内側)には、その表面に被せ付けるようにして、シールホルダー22が設置されている。シールホルダー22により、水受槽20の底部の内部空間が区画されていて、その内部に導水経路91が形成されている。導水経路91は、通水口38に連通している。シールホルダー22の上部中央には、シールリング37を回転可能に受け入れるシール開口23が形成されている。シールリング37とシール開口23との間は、オイルシール23aによって水封されている。
水受槽20の底部の中心には、貫通した軸孔24が形成されている。軸ユニット80は、導水経路91及びこの軸孔24を通じて水受槽20の外部に回転可能な状態で突出している。軸孔24と軸ユニット80との間はオイルシール24aによって水封されている。
水受槽20の底部の裏面に、駆動装置50が設置されている。また、水受槽20の底部の裏面には、水受槽20の揺れ量を検知して、制御装置60に出力する加速度センサ25も設置されている。駆動装置50は、モータ51、切換機構52などで構成されており、その運転は制御装置60によって制御される。駆動装置50には、モータ51の回転数を検知して制御装置60に出力する回転センサ53(通常はモータ51に内蔵)も設けられている。
水受槽20の底部から突出した軸ユニット80は、切換機構52を介してモータ51の出力軸51aと連結されている。切換機構52は、クラッチ52aを内蔵しており、制御装置60がそのクラッチ52aを制御することにより、第1軸81及び第2軸82が出力軸51aに連結される第1連結状態と、第1軸81だけが出力軸51aに連結される第2連結状態と、に切り替え可能となっている。
それにより、洗濯時に行われる各行程のうち、例えば、脱水行程では、第1連結状態にされることで、回転槽30及びパルセータ40が一体的に回転する。洗い行程や濯ぎ行程では、第2連結状態にされることで、回転槽30は回転せずに、パルセータ40が反転しながら回転する。
(排水経路)
水受槽20の底部には、水受槽20の内部の空間に臨む第1排水口26と、導水経路91に臨む第2排水口27と、が開口している。また、水受槽20の上部側面に、第3排水口28が開口している。第2排水口27は、導水経路91、及び通水口38を介して流出口36と連通している。
そして、第1排水口26は、水受槽20の底部から下方に延びる管路(第1経路92)の上端に接続されている。第2排水口27は、第1経路92と並列した状態で、水受槽20の底部から下方に延びる管路(第2経路93)の上端に接続されている。第2経路93には、通気管29aを介して水位センサ29が取り付けられている。
通気管29aは、第2経路93ではなく、導水経路91等に接続してもあってもよい。水位センサ29は、通気管29a内の空気圧の変化に基づいて、回転槽30に貯まる水の水位を検知して、制御装置60に出力する。本実施形態では、通気管29aの下部に水を導入する例を示したが、通気管29aの下部にエアートラップを設けて通気管29aに水が入らないようにしてもよい。第3排水口28は、水受槽20の側面に沿って下方に延びる管路(第3経路94)の上端に接続されている。
筐体10の下部には、筐体10の内底に沿って延び、筐体10の背面から端部(ホース接続口95a)が外部に突出した管路(第4経路95)が設置されている。ホース接続口95aには、排水ホースが接続され、この排水ホースを介して自然に排水(流下による排水)がされるようになっている。そして、この第4経路95の上流側に、第1~第3の経路92,93,94の下端が接続されている。具体的には、上流側から順に、第2経路93、第1経路92、第3経路94が接続されている。
それにより、回転槽30に貯まる水は、流出口36から、導水経路91、第2経路93、第4経路95を通じて排水が行える。そして、水受槽20に貯まる水は、第1排水口26から第1経路92、第4経路95を通じて排水が行える。そして、水受槽20の貯水量の上限を超える水は第3排水口28から第3経路94、第4経路95を通じて排水が行える。
従って、回転槽30や水受槽20に貯まる水は、水受槽20から溢れさせること無く、安定して排水できる。
(止水構造)
この洗濯機1Aでは、簡素な構造で安定して回転槽30に水が貯められるようにするために、排水経路に、止水弁100及び排水弁110からなる止水構造が設けられている。止水弁100は、第1経路92の途中に設置されており、排水弁110は、第4経路95における第1経路92及び第2経路93の各合流部位の下流側に設置されている。止水弁100は、排水状態に応じて非電気的に作動するフロート式の開閉弁であり、排水弁110は、制御装置60によって制御され、電気的に作動するベローズ式の開閉弁である。
図4A及び図4Bに、止水弁100を示す。第1経路92は、硬質な上側継手92aと、柔軟な止水ホース92b(軟質部材の一例)と、硬質な下側継手92cとで構成されている。
上側継手92aは、水受槽20の底部と一体に円筒状に形成されていて、下側継手92cは、第4経路95と一体に円筒状に形成されている。上側継手92aと下側継手92cは上下に対向する位置に配置されている。止水ホース92bの上下の開口に、これら上側継手92a及び下側継手92cの各々を差し込むことにより、止水ホース92bは、垂直方向に延びた状態で、上側継手92a及び下側継手92cに接続されている。
止水ホース92bは、止水弁100を構成し、その内部には、フロート101と、上下の規制部102a,102bとが設けられている。フロート101は、中空の球体形状をしたプラスチック製の部材であり、十分な浮力が得られるように構成されている。なお、フロート101は、十分な浮力が得られるものであれば、その素材や構造は問わない。フロート101はまた、止水ホース92bの内部の流路を自在に変位できるように、止水ホース92bの内径よりも外径が小さく設定されている。フロート101が上下に変位できるスペースが確保できる限り、止水ホース92bは、仕様に応じて適宜曲げて配置してもよい。
上下の規制部102a,102bは、そのフロート101の変位を規制する。図4Bに示すように、上側の規制部102aは、流路内に張り出す環形をした鍔状に形成されている。対して、下側の規制部102bは、流路内に突出する凸状に形成されていて、周方向の一部に形成されている(1つであってもよい)。上下の規制部102a,102bの内径は、フロート101の外径よりも小さく設定されている。上下の規制部102a,102bは、止水ホース92bと一体に形成されている。
上側の規制部102aは、弾性変形し易いように、下側の規制部102bよりも厚みが小さく設定されている(a1<a2)。それにより、上側の規制部102aは、フロート101が浮上すると、弾性変形しながらフロート101に密着し、流路を閉じる。下側の規制部102bは、フロート101が降下すると、安定してフロート101に接触し、その周囲の規制部102bの間に流路を開いた状態でフロート101を支持する。下側の規制部102bは、外力や水圧でフロート101が止水ホース92bから外れない形状にするのが好ましい。
これら上下の規制部102a,102bは、上下の継手92a,92cの差し込み量を規制し、抜け外れを防止する機能も果たすようにしてもよい。また、柔軟な止水ホース92bは、揺れ動く水受槽20と固定された第4経路95との間に介在することで、振動や異音の発生を抑制する機能も果たす。なお、詳細は説明しないが、同様の理由により、第2経路93や第3経路94も柔軟なホースで中継されている。フロート101と上下の規制部102a,102bとの間も、弾性的に接触するため、止水弁100に起因して異音が発生することも防止できる。
図5に、排水弁110を示す。排水弁110は、弁室111、ベローズ112、弁体113、駆動モータ114などで構成されている。弁室111は、第4経路95に介在してその流路の一部を構成している。弁室111は、その流路の上流側に開口する入口111aと、その流路の下流側に開口する出口111bとを有している。弁室111における入口111aの対向部位に、バルブ口111cが形成されている。
このバルブ口111cを通じて、先端にバルブ113aを有する弁体113が、入口111aに向かってスライド可能に配置されている。バルブ口111cを塞ぐように、弁室111にベローズ112が取り付けられている。弁体113は、ベローズ112と共に、駆動モータ114の作動によってスライドし、入口111aを塞ぐ閉じ位置と、入口111aを開く開き位置とに変位する。駆動モータ114の作動は、制御装置60によって制御される。
(洗濯の運転、排水)
洗濯の運転に先だって、ユーザーは、回転槽30に洗濯物を投入し、洗剤投入容器73aに洗剤を投入する。蓋13が閉じられると、蓋13がロックされる。そうして、ユーザーが操作部15を操作し、いずれかの洗濯コースが指示されると、制御装置60が、給水弁72や駆動装置50等を制御し、その洗濯コースの一連の処理を実行する。ここでは、各洗濯コースを構成する洗い行程、濯ぎ行程、及び脱水行程の内容、及びこれら行程で行われる排水の仕組みについて具体的に説明する。
洗い行程が開始されると、制御装置60は、排水弁110を閉じた状態で、給水弁72を開く。それにより、図6に示すように、水道水(単に水ともいう)が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給される。その際、洗剤も水と共に回転槽30に供給される。回転槽30に供給された水は、胴部材31の下側から順に貯まっていくため、流出口36から流下し、導水経路91、第2経路93を通じて第4経路95に流入する。
排水弁110は閉じられているので、第4経路95に流入した水は排水されない。そのため、水は、第1経路92、第2経路93、通気管29aに次第に貯まっていく。そうして、水位が上昇すると、第1経路92の止水弁100のフロート101が浮上して上側の規制部102aに密着し、第1経路92の流路が閉じられて止水される。すなわち、水受槽20の内部への水の流入が阻止される。
更に、回転槽30に水が供給されることで、第1経路92を除く、第2経路93(更には導水経路91、回転槽30)及び通気管29aの水位が上昇していく。そうして、回転槽30及び通気管29aの水位が所定の水位に達すると、水位センサ29の検出値に基づいて、制御装置60が給水を停止する。
制御装置60は、駆動装置50を制御し、切換機構52を第2連結状態に切り替え、回転センサ53の検出置に基づいてモータ51を駆動することにより、回転槽30は回転せずに、所定時間、パルセータ40を正逆回転させる。そうして洗い処理が実行される。
洗い処理が終わると、排水処理が行われ、制御装置60によって排水弁110が開かれる。それにより、回転槽30に貯まった水が排水される。水位の低下によって止水弁100のフロート101も下降し、水位が下側の規制部102bより低下すると、フロート101は下側の規制部102bによって支持される。それにより、第1経路92の流路も開かれた状態となる。
次に、濯ぎ行程が開始されると、洗い行程と同様に、制御装置60は、排水弁110を閉じて給水弁72を開く。それにより、水が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給されて水が溜まっていく。図7に示すように、所定量の水が回転槽30に貯まると、制御装置60は、駆動装置50を制御してパルセータ40を正逆回転させる。
濯ぎ処理は、通常、溢水しない程度の水量で行われるが、溢水する水量、あるいは注水しながら濯ぎ処理が行われる場合もある。図7はその場合を示している。その場合、胴部材31に貯まる水の水位が上昇すると、脱水孔32から溢水するようになる。脱水孔32から溢水した水は、水受槽20に貯まっていく(第1経路92は止水弁100によって止水されている)。
給水は、水受槽20の貯水上限を超えない範囲で行われる。給水弁72の故障等により、水受槽20の貯水上限を超える量が給水されても、第3排水口28及び第3経路94を通じて排水できる。従って、水受槽20の外側に水が漏れ出して、電気系統の故障等のトラブルを招くおそれがない。
濯ぎ処理が終わると、洗い処理と同様に排水処理が行われ、制御装置60によって排水弁110が開かれる。それにより、水受槽20の水は貯まった状態で、回転槽30や第3経路94に貯まった水が排水される。そうして、水受槽20に貯まった水の水頭圧が、回転槽30等に貯まった水の水圧及びフロート101の浮力より高まると、フロート101が下降し、第1経路92が開いて、水受槽20に溜まった水の排水が開始される。それにより、回転槽30及び水受槽20の双方に溜まった水が順次排水される。
次に、脱水行程が開始されると、制御装置60は、排水弁110を開いた状態で、駆動装置50を制御し、回転槽30及びパルセータ40が一体に回転するように、切換機構52を第1連結状態に切り替える。そうして、図8に示すように、モータ51を駆動し、洗濯行程や濯ぎ行程よりも高速で回転槽30等を回転させる。遠心力の作用で、洗濯物に含まれる水は、胴部材31の内面に沿って上昇し、脱水孔32から溢水する。脱水孔32から溢水した水は、水受槽20の底部に流下し、第1排水口26、第1経路92(止水弁100は開いた状態)、第4経路95を通じて排水される。
所定時間が経過すると、制御装置60は、モータ51の駆動を停止し、脱水行程を終了する。脱水行程が終了すると、ブザー等で運転の停止がユーザーに報知されるとともに、蓋13のロックが解除され、ユーザーが洗濯物を回転槽30から取り出せる状態となる。
(槽洗浄)
この洗濯機1Aのように、回転槽30が独立して貯水可能な場合、水受槽20の内壁面や回転槽30の外壁面等、回転槽30の外側のスペース(外側スペース39)には、ほとんど水が貯まらない。そのため、回転槽30の外側スペース39は、汚れが蓄積したりカビが発生したりして不衛生な状態になり易い。ユーザーにとっては回転槽30の外側スペース39も衛生的であることが好ましい。従って、洗濯機1Aには、外側スペース39を洗浄する運転コースを設定するとよい。次に、その槽洗浄コースの一例を示す。
槽洗浄に先だって、ユーザーは、洗剤投入容器73aに洗浄剤を投入する。蓋13が閉じられると、蓋13がロックされる。ユーザーが、操作部15を操作し、槽洗浄コースを指示することで、制御装置60は、槽洗浄の処理を開始する。
槽洗浄が開始すると、洗い行程と同様に、制御装置60は、排水弁110を閉じた状態で、給水弁72を開く。それにより、水が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給される。その際、洗浄剤も水と共に回転槽30に供給され、回転槽30に貯まっていく。そして、図9に示すように、回転槽30に水が充満すると、脱水孔32を通じて水が溢水する。それにより、その後は、溢水した水が水受槽20に貯まっていく。
そうして、水受槽20にも十分量の水が貯まるまで、すなわち水受槽20の貯水上限を超える程度まで給水が行われる。制御装置60は、駆動装置50を制御してパルセータ40を正逆回転させる。パルセータ40及び回転槽30を低速で回転させてもよい。それにより、洗浄水をかき混ぜることができ、回転槽30の外側スペース39を効率的に洗浄できる。かき混ぜ作用により、回転槽30の外側スペース39で洗浄水が大きく波打っても、第3排水口28を通じて排水できるため、水受槽20の外側に溢水するおそれはない。なお、駆動装置50を駆動せず、いわゆる漬け置き洗いを行うようにしてもよい。
そうして、所定時間が経過すると、制御装置60は、排水弁110を開いて洗浄水を排水する。洗浄水の排水後は、濯ぎ行程を行って回転槽30の内部を濯ぐのが好ましい。
<第1変更例>
図10に、第1の技術を適用した別形態の洗濯機1Bを示す。この洗濯機1Bの基本的な構成は、洗濯機1Aと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、主に、異なる構造について説明する。
この洗濯機1Bは、洗濯機1Aとでは止水構造が異なる。すなわち、この洗濯機1Bでは、第1経路92及び第2経路93の各々に、制御装置60の制御によって開閉する第1開閉弁121及び第2開閉弁122が設置されている。第4経路95に排水弁110は設置されていない。
第1開閉弁121及び第2開閉弁122は、いずれも同じ構造であり、排水弁110と同じ、ベローズ式の開閉弁が用いられている。制御装置60は、これら第1開閉弁121及び第2開閉弁122の各々を独立して制御する。
従って、回転槽30に水を貯める場合には、第1開閉弁121を閉じればよく、外側スペース39に水を貯める場合には、第2開閉弁122を閉じればよい。制御により、回転槽30及び水受槽20の各々の排水が自在にできる。
=第2の技術に関する実施形態(第2実施形態)=
図11、図12に、第2の技術を適用した洗濯機1Cを示す。図13に、洗濯機1Cの制御装置60と、その主な入力装置及び出力装置との関係を示す。
この洗濯機1Cは、排水ポンプで排水を行うタイプである。筐体10、水受槽20、回転槽30、パルセータ40、駆動装置50など、この洗濯機1Cの基本的な構成は、洗濯機1Aと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、主に、異なる構造について説明する。
(排水経路)
水受槽20の底部には、水受槽20の内部の空間に臨む第1排水口26と、導水経路91に臨む第2排水口27と、が開口している。第2排水口27は、導水経路91、及び通水口38を介して流出口36と連通している。
そして、第1排水口26は、水受槽20の底部から下方に延びる管路(第1経路92)の上端に接続されている。第2排水口27は、第1経路92と並列した状態で、水受槽20の底部から下方に延びる管路(第2経路93)の上端に接続されている。第2経路93には、通気管29aを介して水位センサ29が取り付けられている。水位センサ29は、回転槽30に貯まる水の水位を検知して、制御装置60に出力する。
筐体10の下部には、筐体10の内底に沿って延び、筐体10の背面から端部(ホース接続口94a)が外部に突出した管路(第3経路94)が設置されている。第3経路94の途中に、排水ポンプ150が設置されている。排水ポンプ150は、制御装置60の制御によって駆動する。排水ポンプ150より下流側の第3経路94は、排水ポンプ150と一体に構成されている。その排水ポンプ150と一体に構成されているホース接続口94aには、水受槽に貯まる水の所定の水位(通常は、水受槽の上限水位)よりも高位置まで持ち上げられた排水ホース96が接続されている。
それにより、この洗濯機では、自然に排水(流下による排水)することはできず、排水ポンプ150が作動して、強制的に排水されるようになっている。そして、この第3経路94における排水ポンプ150より上流側の部位に、第1及び第2の経路92,93の下端が接続されている。換言すれば、上流側から順に、第2経路93、第1経路92が、並列した状態で第3経路94に接続されており、これら経路92,93の合流部位の下流側に排水ポンプ150が設置されている。
それにより、回転槽30に貯まる水は、流出口36から、導水経路91、第2経路93、第3経路94を通じて排水が行える。そして、水受槽20に貯まる水は、第1排水口26から第1経路92、第3経路94を通じて排水が行える。
従って、回転槽30や水受槽20に貯まる水は、それぞれ個別に排水可能であり、排水ポンプ150の上流側に、これら2つの排水経路92,93が存在している。そのため、両方の排水経路92,93が詰まらない限り、排水ポンプ150に過度な負荷を強いることが無い。従って、排水ポンプ150による強制的に排水が行われる排水経路であっても、安定して排水できる。
(止水構造)
この洗濯機1Cでは、簡素な構造で安定して回転槽30に水が貯められるようにするために、排水経路に、前述した止水弁100(図4A及び図4B参照)と、排水ポンプ150との組み合わせからなる止水構造が設けられている。止水弁100は、第1経路92の途中に設置されている。止水弁100は、排水状態に応じて非電気的に作動するフロート式の開閉弁である。従って、止水弁100は、複雑な電気制御が不要で、故障等もほとんどないため、耐久性に優れる。
(洗濯の運転、排水)
この洗濯機1Cでは、洗い行程が開始されると、制御装置60は、給水弁72を開く。それにより、図14に示すように、水道水(単に水ともいう)が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給される。その際、洗剤も水と共に回転槽30に供給される。回転槽30に供給された水は、胴部材31の下側から順に貯まっていくため、流出口36から流下し、導水経路91、第2経路93を通じて第3経路94に流入する。
排水ホース96が、水受槽の水位よりも高位置まで持ち上げられているので、第3経路94に流入した水は排水されない。そのため、水は、第1経路92、第2経路93、通気管29aに次第に貯まっていく。そうして、水位が上昇すると、第1経路92の止水弁100のフロート101が浮上して上側の規制部102aに密着し、第1経路92の流路が閉じられて止水される。すなわち、水受槽20の内部への水の流入が阻止される。
更に、回転槽30に水が供給されることで、第1経路92を除く、第2経路93(更には導水経路91、回転槽30)及び通気管29aの水位が上昇していく。そうして、回転槽30及び通気管29aの水位が所定の水位に達すると、水位センサ29の検出値に基づいて、制御装置60が給水を停止する。
制御装置60は、駆動装置50を制御し、切換機構52を第2連結状態に切り替え、回転センサ53の検出置に基づいてモータ51を駆動することにより、回転槽30は回転せずに、所定時間、パルセータ40を正逆回転させる。そうして洗い処理が実行される。
洗い処理が終わると、排水処理が行われ、制御装置60は、排水ポンプ150を、所定時間、連続的又は間欠的に駆動する。それにより、回転槽30に貯まった水が強制的に排水される。水位の低下によって止水弁100のフロート101も下降し、水位が下側の規制部102bより低下すると、フロート101は下側の規制部102bによって支持される。それにより、第1経路92の流路も開かれた状態となる。
次に、濯ぎ行程が開始されると、洗い行程と同様に、制御装置60は、給水弁72を開く。それにより、水が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給されて水が溜まっていく。図15に示すように、所定量の水が回転槽30に貯まると、制御装置60は、駆動装置50を制御してパルセータ40を正逆回転させる。
濯ぎ処理は、通常、溢水しない程度の水量で行われるが、溢水する水量、あるいは注水しながら濯ぎ処理が行われる場合もある。図15はその場合を示している。その場合、胴部材31に貯まる水の水位が上昇すると、脱水孔32から溢水するようになる。脱水孔32から溢水した水は、水受槽20に貯まっていく(第1経路92は止水弁100によって止水されている)。制御装置60は、水受槽20に貯まる水が水受槽20の上限水位に達する前に給水を停止して、濯ぎ処理を終了する。
濯ぎ処理が終わると、洗い処理と同様に排水処理が行われ、制御装置60によって排水ポンプ150が駆動される。それにより、水受槽20の水は貯まった状態で、回転槽30に貯まった水が排水される。そうして、水受槽20に貯まった水の水頭圧が、回転槽30等に貯まった水の水圧及びフロート101の浮力より高まると、フロート101が下降し、第1経路92が開いて、水受槽20に溜まった水の排水が開始される。それにより、回転槽30及び水受槽20の双方に溜まった水が排水される。
次に、脱水行程が開始されると、制御装置60は、駆動装置50を制御し、回転槽30及びパルセータ40が一体に回転するように、切換機構52を第1連結状態に切り替える。そうして、図16に示すように、モータ51を駆動し、洗濯行程や濯ぎ行程よりも高速で回転槽30等を回転させる。遠心力の作用で、洗濯物に含まれる水は、胴部材31の内面に沿って上昇し、脱水孔32から溢水する。脱水孔32から溢水した水は、水受槽20の底部に流下し、第1排水口26、第1経路92(止水弁100は開いた状態)、第3経路94を通じて、排水ポンプ150の駆動によって強制的に排水される。
所定時間が経過すると、制御装置60は、モータ51の駆動を停止し、脱水行程を終了する。脱水行程が終了すると、ブザー等で運転の停止がユーザーに報知されるとともに、蓋13のロックが解除され、ユーザーが洗濯物を回転槽30から取り出せる状態となる。
(槽洗浄)
この洗濯機1Cでの槽洗浄コースの一例を示す。槽洗浄が開始すると、洗い行程と同様に、制御装置60は、給水弁72を開く。それにより、水が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給される。その際、洗浄剤も水と共に回転槽30に供給され、回転槽30に貯まっていく。そして、図17に示すように、回転槽30に水が充満すると、脱水孔32を通じて水が溢水する。それにより、その後は、溢水した水が水受槽20に貯まっていく。
そうして、水受槽20にも十分量の水が貯まるまで、すなわち水受槽20の貯水上限を超える程度まで給水が行われる。制御装置60は、駆動装置50を制御してパルセータ40を正逆回転させる。パルセータ40及び回転槽30を低速で回転させてもよい。それにより、洗浄水をかき混ぜることができ、回転槽30の外側スペース39を効率的に洗浄できる。なお、駆動装置50を駆動せず、いわゆる漬け置き洗いを行うようにしてもよい。
<第1変更例>
図18に、第2の技術を適用した洗濯機1Dを示す。この洗濯機1Dの基本的な構成は、洗濯機1Cと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、異なる構造について説明する。
この洗濯機1Dは、洗濯機1Cとでは止水構造が異なる。すなわち、この洗濯機1Dでは、フロート式の止水弁100に代えて、ベローズ式の止水弁110Aが設置されている。
図19に、その止水弁110Aを示す。止水弁110Aは、弁室111、ベローズ112、弁体113、コイルバネ115、駆動モータなどで構成されている。弁室111は、第1経路92に介在してその流路の一部を構成している。弁室111は、その流路の上流側に開口する入口111aと、その流路の下流側に開口する出口111bとを有している。弁室111における出口111bの対向部位に、バルブ口111cが形成されている。
このバルブ口111cを通じて、先端にバルブ113aを有する弁体113が、出口111bに向かってスライド可能に配置されている。バルブ口111cを塞ぐように、弁室111にベローズ112が取り付けられている。弁体113は、ベローズ112と共に、駆動モータの作動によってスライドし、出口111bを塞ぐ閉じ位置と、出口111bを開く開き位置とに変位する。駆動モータの作動は、制御装置60によって制御される。
<第2変更例>
図20に、第2の技術を適用した洗濯機1Eを示す。この洗濯機1Eの基本的な構成も、洗濯機1Cと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、異なる構造について説明する。
この洗濯機1Eは、洗濯機1Cとでは止水構造が異なる。すなわち、この洗濯機では、フロート式の止水弁100に代えて、切換弁160が設置されている。
図21A及び図21Bに、その切換弁160を示す。切換弁160は、固定弁体161、回動弁体162、制御モータ163などで構成されている。固定弁体161は、円筒状の部材からなり、その部材に、径方向に延びる3つの流路161aが、周方向に等間隔(120度間隔)で内外に貫通して形成されている。固定弁体161は、第1経路92、第2経路93、及び第3経路94に合流部位に設置され、これら経路92,93,94の各々が、各流路161aと接続されている。
回動弁体162は、円柱状の部材からなり、固定弁体161の内部に回動可能に収容されている。回動弁体162には、固定弁体161のいずれか2つの流路161a,161aと連通するV字状の接続流路162aが形成されている。制御モータ163は、回動弁体162に連結されており、制御装置60の指示に従って、回動弁体162を回動し、所定の位置に配置する。それにより、切換弁160は、制御モータ163により、第1経路92と第3経路94とを連通させる第1切替位置と、第2経路93と第3経路94とを連通させる第2切替位置と、第1経路92と第2経路93とを連通させる第3切替位置と、に切り替え可能となっている。
この洗濯機の洗い行程では、回転槽30の内部が第3経路94と連通するように、切換弁160が第2切換位置に制御される。そして、洗い処理が終了すると、切換弁160はそのままの状態で、排水ポンプ150が駆動され、排水処理が行われる。
濯ぎ行程では、水受槽20の内部が第3経路94と連通するように、切換弁160が第1切換位置に制御される。そして、切換弁160はそのままの状態で、排水ポンプ150が駆動され、排水処理が行われる。脱水行程も、濯ぎ行程と同様に、水受槽20の内部が第3経路94と連通するように、切換弁160が第1切換位置に制御された状態で、排水ポンプ150が駆動され、排水処理が行われる。
槽洗浄では、回転槽30及び水受槽20に水が貯まるように、切換弁160が第3切換位置(回転槽30の内部と水受槽20の内部とが排水経路を介して連通した状態)に制御される。そうして、給水が行われることで、回転槽30及び水受槽20の各々には、同じ水位で水が貯まっていく。従って、水位センサ29でその水位を検知することで、回転槽30の外側スペース39に安定して水を上限一杯まで充満させることができる。
槽洗浄が終了すると、切換弁160を、第1切替位置及び第2切換位置の各々に、順次切り替えて排水する。そうすることで、回転槽30及び水受槽20の双方に貯まった水が排水できる。
<第3変更例>
図22に、第2の技術を適用した洗濯機1Fを示す。この洗濯機の基本的な構成も、洗濯機1Cと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、異なる構造について説明する。
この洗濯機1Fも、洗濯機1Cとでは止水構造が異なる。すなわち、この洗濯機では、フロート式の止水弁100に代えて、電気的に作動する第1開閉弁171及び第2開閉弁172が設置されている。
すなわち、この洗濯機では、第1経路92及び第2経路93の各々に、制御装置60の制御によって開閉する、ベローズ式の第1開閉弁171及び第2開閉弁172が設置されている。
図23に、第1開閉弁171を示す(第1開閉弁171及び第2開閉弁172は、いずれも同じ構造であるため(止水方向は異なる)、第2開閉弁172の説明は省略)。第1開閉弁171は、弁室181、ベローズ182、弁体183、駆動モータ184などで構成されている。
弁室181は、第1経路92に介在してその流路の一部を構成している。弁室181は、その流路の上流側に開口する入口181aと、その流路の下流側に開口する出口181bとを有している。弁室181における出口181bの対向部位に、バルブ口181cが形成されている。
このバルブ口181cを通じて、先端にバルブ183aを有する弁体183が、出口181bに向かってスライド可能に配置されている。バルブ口181cを塞ぐように、弁室181にベローズ182が取り付けられている。弁体183は、ベローズ182と共に、駆動モータ184の作動によってスライドし、出口181bを塞ぐ閉じ位置と、出口181bを開く開き位置とに変位する。駆動モータ184の作動は、制御装置60によって制御される。
制御装置60は、排水ポンプ150と連動しながら、これら第1開閉弁171及び第2開閉弁172の各々を独立して制御する。例えば、洗い行程や濯ぎ行程等、回転槽30に水を貯める場合には、排水ポンプ150は駆動しないで、第1開閉弁171及び第2開閉弁172が閉じられる。排水処理や排水行程では、第1開閉弁171及び第2開閉弁172が開かれる。そして、その状態で、排水ポンプ150が駆動され、排水及び脱水が行われる。
槽洗浄等を行うために、外側スペース39に水を貯める場合には、回転槽30の内部と水受槽20の内部とが連通した状態となるように、第1開閉弁171及び第2開閉弁172が開かれ、給水が行われる。このように、制御装置60が、排水ポンプ150と連動して第1開閉弁171及び第2開閉弁172を開閉制御することにより、排水ポンプ150に故障等を招くことなく、回転槽30及び水受槽20の各々の貯水及び排水が自在にできる。
=第3の技術に関する実施形態(第3実施形態)=
図24及び図25に、第3の技術を適用した洗濯機1Gの全体構造を示す。図24は、理解を容易にするために、洗濯機の各構成部材を模式的に表したものであり、図25は、洗濯機の各構成部材を具体的に表したものである。また、図26~図34に、各構成部材を具体的に表したものを示す。なお、構成部材によっては、いずれかの図にのみ示す場合がある。
図24や図25に示すように、洗濯機1Gは、筐体10、水受槽20、回転槽30、パルセータ40、駆動装置50などで構成されており、その基本的な構成は、前述した洗濯機1C(排水ポンプがあるタイプ)と同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、主に、異なる構造について説明する。
図28に、洗濯機1Gの制御装置60と、その主な入力装置及び出力装置との関係を示す。制御装置60は、駆動回路61又は駆動回路62を介して各出力装置と接続されており、各出力装置は、制御装置60が駆動回路61又は駆動回路62を制御することで作動する。
図29に示すように、水受槽20は、有底円筒形状をした貯水可能な大型容器である。筐体10の内部の上方には、弾性変形可能なサスペンション16が複数箇所に取り付けられている。水受槽20は、これらサスペンション16によって懸架されることにより、揺れ動きが可能な状態で筐体10の内部に支持されている。水受槽20の上端には、フランジ状に内側に張り出す槽カバー21が取り付けられている(図30も参照)。注水ケース73は、回転槽30の内部に給水できるように、この槽カバー21の上方を横切って回転槽30の開口に向かって突き出すように配置されている。
図26、図27に拡大して示すように、第1軸81と第2軸82との間はオイルシール34aによって水封されている。胴部材31の底部は、第1軸81と同軸に設けられた第2軸82の突端に固定されている。第1軸81及び第2軸82は、軸ユニット80として一体化されており、互いに独立して回転可能に構成されている。
胴部材31の底部の裏面(外側)には、シール部材35aを介してフランジシャフト35が取り付けられている。また、フランジシャフト35により、回転槽30の底部の強度が補強されている。胴部材31の底部における軸孔34の周囲の3箇所には、流出口36が開口している(図31も参照)。
図31にも示すように、胴部材31の底部の表面(内側)には、外周側から中央側に向かって下り傾斜する導水面201が形成されている。そして、これら導水面201の最下部に流出口36が開口している。従って、図27に白抜き矢印で示すように、回転槽30に貯まる水は、これら導水面201に導かれて、流出口36から流出するので、残水が発生し難くなっている。
しかも、これら流出口36の総開口面積(3つの開口面積の和)は、これら流出口36が連なる回転側導水経路90、及び後述する固定側導水経路91の各流路断面積(流路に直交する方向の断面積)の最小値以上の大きさに形成されている。従って、これら流出口36によって排水性が損なわれることが無い。回転槽30に貯まる水は、安定して流出口36から下流側に流出する。
フランジシャフト35の下部には、シールリング37が設けられており、これらの中央を貫通して軸孔37aが形成されている。軸ユニット80は、この軸孔37aを通じて上下に貫通するように配置されていて、フランジシャフト35及びシールリング37は胴部材31に固定されており、第2軸82を貫通している。フランジシャフト35及びシールリング37における軸孔37aの周囲には、通水口38が開口している。
フランジシャフト35及びシールリング37により、胴部材31の底部の下側に、周囲が区画された回転側導水経路90が形成されている。回転槽30の内部は、流出口36を通じて回転側導水経路90と連通している。
図32にも示すように、水受槽20の底部の表面(内側)には、その表面に被せ付けるようにして、シールホルダーに相当する区画プレート22が設置されている。区画プレート22により、水受槽20の底部の内部空間が区画されていて、その内部に固定側導水経路91が形成されている。回転側導水経路90は、通水口38を通じて固定側導水経路91と連通している。区画プレート22の上部中央には、シールリング37を回転可能に受け入れるシール開口23が形成されている。シールリング37とシール開口23との間は、オイルシール23aによって水封されている。固定側導水経路91の詳細については、別途後述する。
水受槽20の底部の裏面に、駆動装置50が設置されている。また、水受槽20の底部には、水受槽20の揺れ量を検知して、制御装置60に出力する加速度センサ25も設置されている。本実施形態の駆動装置50は、図26に示すように、1つのステータ202cの内外にインナーロータ202aとアウターロータ202bとが独立して回転可能に配置されたモータ202で構成されており、その運転は制御装置60によって制御される。駆動装置50には、モータ202の回転数を検知して制御装置60に出力する回転センサ53も設けられている。
水受槽20の底部から突出した軸ユニット80は、モータ202と連結されている。具体的には、第1軸81はアウターロータ202bと連結され、第2軸82はインナーロータ202aと連結されている。制御装置60が、ステータ202cに供給する複合電流を制御することにより、第1軸81及び第2軸82が同期して同一方向に回転する第1状態と、第1軸81だけが回転する第2状態等と、に切り替え可能となっている。
それにより、洗濯時に行われる各行程のうち、例えば、脱水行程では、第1状態にされることで、回転槽30及びパルセータ40が同一方向に回転する。洗い行程や濯ぎ行程では、第2状態にされることで、回転槽30は回転せずに、パルセータ40が反転しながら回転する。洗い行程等において、回転槽30とパルセータ40とが同時に相反回転等、様々に組み合わされた状態もある。
(排水経路)
図24に示すように、水受槽20の底部には、水受槽20の内部の空間に臨む第1排水口26と、固定側導水経路91に臨む第2排水口27と、後述する循環経路210に連通する第3排水口211(循環用の排水口)と、が開口している(図33も参照)。第2排水口27及び第3排水口211は、固定側導水経路91の下側の内面に開口し、その内部の空間に臨んでいる。従って、第2排水口27及び第3排水口211は、固定側導水経路91、通水口38、及び回転側導水経路90を介して流出口36と連通している。それにより、回転槽30に貯まる水は、図27に白抜き矢印で示すように、流出口36、回転側導水経路90を通って固定側導水経路91に導入され、第2排水口27又は第3排水口211のいずれかから流出する。
筐体10の下部には、筐体10の内底に沿って延び、筐体10の背面から端部(ホース接続口94a)が外部に突出した管路(第3経路94)が設置されている。第3経路94の途中に、排水ポンプ150が設置されている。排水ポンプ150は、制御装置60の制御によって駆動する。ホース接続口94aには、水受槽に貯まる水の所定の水位(通常は、水受槽の上限水位)よりも高位置まで持ち上げられた排水ホース96が接続されている。
それにより、この洗濯機1Gでは、自然に排水(流下による排水)することはできず、排水ポンプ150が作動して、強制的に排水されるようになっている。そして、この第3経路94における排水ポンプ150より上流側の部位に、第1及び第2の経路92,93の下端が接続されている。換言すれば、上流側から順に、第2経路93、第1経路92が、並列した状態で第3経路94に接続されており、これら経路92,93の合流部位の下流側に排水ポンプ150が設置されている。
それにより、回転槽30に貯まる水は、流出口36から、回転側導水経路90、固定側導水経路91、第2経路93、第3経路94を通じて排水が行える。そして、水受槽20に貯まる水は、第1排水口26から第1経路92、第3経路94を通じて排水が行える。
従って、回転槽30や水受槽20に貯まる水は、それぞれ個別に排水可能であり、排水ポンプ150の上流側に、これら2つの排水経路92,93が存在している。従って、排水ポンプ150による強制的に排水が行われる排水経路であっても、安定して排水できる。
(止水構造)
この洗濯機1Gでは、簡素な構造で安定して回転槽30に水が貯められるようにするために、排水経路に、止水弁100と、排水ポンプ150との組み合わせからなる止水構造が設けられている。止水弁100は、第1経路92に設置されていて、排水状態に応じて開閉する。止水弁100は、制御装置で制御される電動式の開閉弁であってもよいし、排水状態に応じて非電気的に作動するフロート式の開閉弁であってもよい。
(循環経路)
図24に示すように、回転槽30に貯まる水を循環させる循環経路210は、水受槽20の外周面に沿って上方に延びるように設置されている。第3排水口211は、循環経路210の端部(下側の端部)に接続されている。図29にも示すように、水受槽20の底部の裏面に、制御装置60によってその駆動が制御される循環ポンプ212が設置されており、循環経路210の途中に位置するように循環ポンプ212が配置されている。循環経路210は、その上端部に、胴部材31の開口を通じてその中に水を戻す吐出口213を有している。
図30に示すように、吐出口213は、水受槽20の上部に取り付けられた槽カバー21と一体に形成されている。循環ポンプ212とこの吐出口213との間は、ホース部材214によって接続されている。このように、循環経路210の吐出口213が水受槽20と一体に構成されているので、水受槽20が揺れ動いても、吐出口213と胴部材31の開口との間の位置関係は変化しない。従って、安定して循環する水を胴部材31の中に戻すことができる。
循環経路210の下側の端部は、シール部材及び異物除去部材の双方の部材としての機能を果たす連結部材215を介して第3排水口211に接続されている。
具体的には、図36に示すように、連結部材215は、第3排水口211に圧入されて第3排水口211に外面が密着すると共に、循環経路210の下側の端部が圧入されてその端部に内面が密着する接続部215aと、固定側導水経路91の内部に突出する異物侵入防止部215bと、を有している。
接続部215aが、第3排水口211及び循環経路210の下側の端部に密着することで、これらの間の隙間が塞がれ、シール性が確保される。そして、異物侵入防止部215bが固定側導水経路91の内部に突出することにより、ボタン等の異物が第3排水口211に流入するのを規制する規制壁が形成される。従って、循環ポンプ212への異物の噛み込みを防止できる。水は、異物侵入防止部215bの側方に開口するスリット215cを通じて第3排水口211に流入する。
(固定側導水経路)
固定側導水経路91は、コンパクトな構成で、効率よく循環する水を加熱できるように、水受槽20の底面に沿って流路断面が拡がるように形成されている。
具体的には、図26、図33、図35に示すように、水受槽20の底面に、その中央部位から周辺部位に至る所定の範囲が、縦軸の方向から見てY字状に、小さく凹むことによって、幅広凹部220が形成されている。図34にも示す、区画プレート22が、水受槽20の底面に取り付けられることにより、図32に示すように、この幅広凹部220の上部が塞がれ、水受槽20の底部に固定側導水経路91が区画されている。
図33に示すように、幅広凹部220の底面(固定側導水経路91の下側の内面を構成)の、外周側の両側に離れて第2排水口27と第3排水口211とが配置されている。図32に示すように、区画プレート22の内面(固定側導水経路91の上側の内面を構成)の、中央側にシール開口23があり、このシール開口23の内側に形成される回転側導水経路90を通じて固定側導水経路91に水が流入する。従って、固定側導水経路91では、径方向を中心側から外周側に向かう流れが形成される。その流路断面が、水受槽20の底面に沿って薄く拡がるように、固定側導水経路91が形成されている。
水受槽20の広い底面を利用したことで、薄くても大きな流路断面を得ることができる。固定側導水経路91が水受槽20の底面に沿って薄く形成されているので、スペースの無駄がない。従って、筐体に対して水受槽20や回転槽30の容量を大きくでき、サイズのコンパクト化が図れる。
固定側導水経路91の内部には、制御装置60によってその作動(発熱)が制御されるヒーター221が、拡がる(固定側導水経路91の内部空間に沿って延びる)ように設置されている。ヒーター221は、細管状の発熱体を繰り返し曲げて平たく加工され、広く狭いスペースに効率よく収容できるように形成されている。ヒーター221は、幅広凹部220の底面及び区画プレート22から離れるように、支持部材221aを介して固定側導水経路91の流路の中央に配置されている。
幅広凹部220の底面及び区画プレート22の内面の双方の、ヒーター221に対向する部位には、金属製の遮熱プレート222が設置されている。遮熱プレート22は、ステンレスで形成するとよい。そうすれば、錆に強いうえに、放熱ロスを抑制でき、優れた保温効果を得ることができる。この遮熱プレート222により、区画プレート22等が過度に加熱されるのが防止できるので、区画プレート22等が合成樹脂製であっても変形等が防止できる。ヒーター221の近傍には、水温を検知して制御装置60に出力する水温センサ223が設置されている。
このように、厚みの薄い流路の内部に、大きく拡がるようにヒーター221が配置されているので、僅かなスペースでありながら、循環する水を効率的に加熱できる。少量の水を短時間で高い温度まで高めることができる。
(連動制御回路)
この洗濯機1Gでは、ヒーター221の空焚きを防止するため、回路構成が工夫されている。すなわち、循環ポンプ212の駆動及びヒーター221の加熱を制御する回路が、制御装置60の制御から独立して、ヒーター221の加熱と循環ポンプ212の駆動とか連動し、ヒーター221を加熱する時は必ず循環ポンプ212が駆動するように構成されている(連動制御回路230)。
図37に、その連動制御回路230の構成を示す。図28に示したように、制御装置60は、駆動回路61を介して循環ポンプ212と接続されており、また、駆動回路62を介してヒーター221と接続されている。制御装置60には、これら駆動回路61,62の中の、第1及び第2の駆動回路231,232を制御する制御回路233が設けられていて、制御回路233が、これら駆動回路231,232を開閉することで、循環ポンプ212の駆動及びヒーター221の加熱が制御される。
連動制御回路230には、第1~第3の開閉回路234,235,236も配置されている。各駆動回路231,232及び各開閉回路234,235,236は、無通電時には回路を開くように構成されている(ノーマルオープン)。
制御回路233は、循環ポンプ212と、第1の開閉回路234を介して電気的に接続されている。第1の開閉回路234は、第1駆動回路231を閉じることで閉じられる。制御回路233が第1駆動回路231を閉じることで、循環ポンプ212に電力が供給され、循環ポンプ212が駆動する。
制御回路233は、また、ヒーター221と、その電力の入力側及び出力側の各々の配線に配置された第2の開閉回路235及び第3の開閉回路236を介して電気的に接続されている。第2の開閉回路235及び第3の開閉回路236は、第2駆動回路232を閉じることで閉じられる。循環ポンプ212と第1の開閉回路234との間、及び第2の開閉回路235とヒーター221との間が電気的に接続されていて、導通している。
制御回路233が第2駆動回路232を閉じ、第2の開閉回路235及び第3の開閉回路236が閉じられることで、ヒーター221に電力が供給され、ヒーター221が発熱する。第2の開閉回路235が閉じられることで、第1の開閉回路234が閉じられなくても(循環ポンプ212の駆動の制御が行われなくても)、循環ポンプ212に電力が供給され、循環ポンプ212が駆動する。すなわち、ヒーター221を加熱する時は必ず循環ポンプ212が駆動する。
また、循環ポンプ212が駆動していない時は、ヒーター221を加熱できないように構成してもよい。
図38に、その連動制御回路230の構成を示す。連動制御回路230は、第4の開閉回路238、第3駆動回路239、第5の開閉回路240、第4駆動回路241などで構成されている(いずれもノーマルオープン)。
制御回路233は、循環ポンプ212と、その電力の入力側及び出力側の各々の配線に配置された第4の開閉回路238及び第3駆動回路239を介して電気的に接続されている。制御回路233は、また、ヒーター221と、第5の開閉回路240を介して電気的に接続されている。第5の開閉回路240は、第3駆動回路239を閉じることで閉じられる。第3駆動回路239には、循環ポンプ212に電力が供給されることで閉じられるリレーが内蔵されており、循環ポンプ212に電力が供給されない限り、制御回路233が第3駆動回路239を閉じても、第5の開閉回路240に通電できなくなっている。
制御回路233が第4駆動回路241を閉じることで、第4の開閉回路238が閉じられて循環ポンプ212に電力が供給され、循環ポンプ212が駆動する。一方、制御回路233が第3駆動回路239を閉じても、循環ポンプ212に電力が供給されていないと、第5の開閉回路240は閉じられず、ヒーター221は加熱されない。循環ポンプ212に電力が供給されている場合に限り、第3駆動回路239に内蔵されたリレーが閉じられて第5の開閉回路240に通電可能となり、第5の開閉回路240が閉じられて、ヒーター221が発熱する。
<洗濯機1Gの運転>
洗濯機1Gの主な運転動作について説明する。洗濯機1Gの基本的な運転動作は、前述した洗濯機1C(排水ポンプが有るタイプ)と同様である。大略すれば、洗濯物や洗剤が投入されて蓋13がロックされ、ユーザーの指示に基づいて制御装置60が一連の処理を実行する。ここでは、各洗濯コースを構成する洗い行程等で行われる排水の仕組みについて簡単に説明すると共に、回転槽30の水を加熱して循環させる機構について具体的に説明する。
洗い行程が開始されると、制御装置60は、給水弁72を開く。それにより、水道水(単に水ともいう)が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給される。その際、洗剤も水と共に回転槽30に供給される。排水ホース96が、水受槽20の水位よりも高位置まで持ち上げられているので、供給された水は排水されない。そうして、回転槽30及び通気管29aの水位が所定の水位に達すると、水位センサ29の検出値に基づいて、制御装置60が給水を停止する。
制御装置60は、駆動装置50を制御し、第2状態に切り替え、回転センサ53の検出置に基づいてモータ202を駆動することにより、回転槽30を回転させずに、所定時間、パルセータ40を正逆回転させる。そうして洗い処理が実行される。洗い処理が終わると、排水処理が行われ、制御装置60は、水位センサ29の検出結果により、排水ポンプ150を、所定時間、連続的又は間欠的に駆動する。それにより、回転槽30に貯まった水が強制的に排水される。濯ぎ行程も、洗い行程と同様の制御によって行われる。
脱水行程が開始されると、制御装置60は、駆動装置50を制御し、回転槽30及びパルセータ40が一体的に回転するように、第1状態に切り替える。そうして、モータ202を駆動し、洗濯行程や濯ぎ行程よりも高速で回転槽30等を回転させる。遠心力の作用で、洗濯物に含まれる水は、胴部材31の内面に沿って上昇し、脱水孔32から溢水する。脱水孔32から溢水した水は、水受槽20の底部に流下し、第1排水口26、第1経路92(止水弁100は開いた状態)、第3経路94を通じて、排水ポンプ150の駆動によって強制的に排水される。
所定時間が経過すると、制御装置60は、モータ202の駆動を停止し、脱水行程を終了する。脱水行程が終了すると、ブザー等で運転の停止がユーザーに報知されるとともに、蓋13のロックが解除され、ユーザーが洗濯物を回転槽30から取り出せる状態となる。
(水の循環及び加熱)
前述した洗い行程や濯ぎ行程において、洗浄水や濯ぎ水の循環が必要に応じて行われる。その際、洗浄水や濯ぎ水を加熱して温水化する処理も必要に応じて行われる。洗い行程を例に具体的に説明する。
洗い行程が開始されて、制御装置60が、給水を停止し、パルセータ40を正逆回転するようになると、制御装置60は、循環ポンプ212を駆動する。それにより、回転槽30に貯められた水は、回転側導水経路90や固定側導水経路91、循環経路210を通じて吐出口213へと送水され、図39に示すように、吐出口213から吐出されて回転槽30の開口からその中に戻される。
吐出口213は、水受槽20に一体に設けられているので、パルセータ40の回転によって水受槽20が揺れ動いても、吐出先の位置がぶれることがない。安定して回転槽30の中に水を戻すことができる。
その際、制御装置60は、ヒーター221を加熱し、循環する洗浄水を温水化する。前述したように、連動制御回路230が設けられているので、ヒーター221の空焚きを防止できる。制御装置60は、水温センサ223の検出値に基づいて、循環する洗浄水の温度が予め設定されている所定の温度(例えば、洗濯物の種類や汚れ成分等によって設定される)に達するまで、ヒーター221を加熱する。従って、優れた洗浄効果が得られる。
ヒーター221の加熱は、駆動装置50の駆動と同時、又は駆動装置50の駆動と交互に行われる。駆動装置50の駆動と同時に行うと、循環している水を加熱できるので、洗浄水の温度をバランスよく高めることができる。ヒーター221の加熱や駆動装置50の駆動には、大きな電力が必要になる。従って、電力供給量が十分でない場合など、駆動装置50の駆動と同時に行うのが困難な場合には、交互に行うことで、安定した運転が行える。
濯ぎ行程においても、洗い行程と同様に、濯ぎ水を温水化することで、濯ぎ効果を促進できる。また、水温を加熱殺菌できるレベルまで高めれば、回転槽30や水受槽20の微生物的な浄化処理にも利用できる。
<変更例>
第3実施形態では、ヒーター221の空焚きを防止するために、連動制御回路230を設けたが、より安全性を向上するため、空焚きを防止する制御を行ってもよい。
具体的には、制御装置60が、回転槽30に貯まる水位が所定の下限値以上である時に限り、ヒーター221の加熱が行えるようにプログラムを設定するとよい。そうすれば、水位センサ29が故障や誤動作しない限り、ヒーター221の空焚きを防止できる。
更に、循環ポンプ212に、その動作状態を検知して制御装置60に出力するポンプ動作チェック機構を設けるのが好ましい。ポンプ動作チェック機構の具体例としては、循環ポンプ212の駆動電流を検知する電流センサを設け、循環ポンプ212の駆動状態を検知することや、循環経路210に流量センサを設け、水の循環状態を検知することなどが考えられる。そうすれば、循環ポンプ212の故障によるヒーター221の空焚きが防止できる。
連動制御回路230を設けずに、循環ポンプ212の駆動とヒーター221の加熱とを個別に動作できるようにし、水温に基づいて制御してもよい。
すなわち、水温が所定の設定値、つまり目標とする最適温度以上である時に限り、制御装置60が循環ポンプ212を駆動させるようにプログラムを設定する。そうすれば、まず、ヒーター221によって固定側導水経路91の中の水が加熱され、その水が所定の設置値なると循環ポンプ212が駆動する。そうすると、固定側導水経路91の中も水が入れ替わって水温が下がるので、所定の水温以下になると、循環ポンプ212の駆動は停止する。そして、再度、固定側導水経路91の中の水が加熱され、その水が所定の設置値なると循環ポンプ212が駆動する。循環ポンプ212が断続的に駆動されるので、電力消費を抑制できる。過度の加熱も抑制できる。
図40に示すように、循環経路210は、水受槽20と一体に構成してもよい。具体的には、水受槽20の側部に、ダクト状の循環経路210を一体に構成する。槽カバー21にも、循環経路210と接続されるように、吐出口213を一体に構成する。接続部位には、水漏れを防止するパッキン245を装着し、水受槽20に槽カバー21を取り付けることで、循環経路210と吐出口213とを接続する。
このような循環経路210によれば、ホース部材214による接続とは異なり、水受槽20が揺れ動いても外れることが無い。
また、第3実施形態では、循環ポンプ212を用いて水を循環させる洗濯機を例示したが、パルセータ40を用いて水を循環させてもよい。
図41に、その一例を示す。パルセータ40の裏側に複数の裏羽根2120を放射状に設ける。そうすれば、パルセータ40が回転すると、裏羽根2120の作用でパルセータ40の裏側の水が、その径方向外側へと押し出される。それによってパルセータ40の裏側の中心側が減圧される。その結果、固定側導経路91や回転側導水経路90の水が引っ張られ、流出口36を通じて回転槽30の中に流入する。
従って、このようにすれば、循環ポンプ212による水循環に加え、パルセータ40を回転させるだけで、回転槽30の水を加熱して循環させることができる。この場合、循環ポンプ212や循環経路210を省略してもよい。
なお、第3実施形態では、排水ポンプを備えた洗濯機を例示したが、第3の技術が、排水ポンプを備えていない洗濯機、つまり自然排水(流下による排水)を行う洗濯機にも適用できることはいうまでもない。
=第4の技術に関する実施形態(第4実施形態)=
図42に、第4実施形態の洗濯機1Hの全体構造を示す。図43に、洗濯機1Hの制御装置60と、その主な入力装置及び出力装置との関係を示す。筐体10、水受槽20、回転槽30、パルセータ40、駆動装置50など、洗濯機1Hの基本的な構成は、洗濯機1Gと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、主に、異なる構造について説明する。
トップカバー11の蓋13の内側には、仮想線で示すように、少量の洗濯物を手洗いできるように、手洗い洗濯用の桶部材301が揺動可能に取り付けられている。蓋13と共に、桶部材301を後方に跳ね上げることにより、投入口12が開放され、回転槽30への洗濯物の出し入れが可能になる。
給水装置70は、第1給水接続配管71a、第2給水接続配管71b、第1給水弁72a、第2給水弁72b、注水ケース73などで構成されている。第1給水接続配管71a及び第2給水接続配管71bの上流側の端部は、筐体10の外部に突出しており、これらに水供給源となる水道の蛇口や温水供給装置等が、ホース等を介して接続される。第1給水接続配管71a及び第2給水接続配管71bには、制御装置60によって開閉される第1給水弁72a及び第2給水弁72bが各々設置されている。第1給水接続配管71a及び第2給水接続配管71bの下流側の端部は、注水ケース73に接続されている。
先の図29に示すように、水受槽20は、貯水可能な有底円筒形状をした槽本体20aと、槽本体20aの上端に取り付けられる槽カバー21とを有している(槽カバー21については別途後述)。水受槽20は、これらサスペンション16によって懸架されることにより、揺れ動きが可能な状態で筐体10の内部に弾性的に支持されている。胴部材31の底部の中央には、縦軸Jに沿って延びる第1軸81が、胴部材31の内部に突出している。第1軸81の突端にパルセータ40が固定されている。
なお、洗濯機1Hの排水経路、止水構造、及び循環経路は洗濯機1Gと同様である。
(槽カバー)
図45、図46に、槽カバー21を示す。槽カバー21は、リング枠状の部材であり、円筒状の周壁部21aと、周壁部21aの上縁から径方向内側に環状に張り出すフランジ部21bと、で大略構成されている。フランジ部21bの一部に、径方向内側に向かってV字状に拡がる口構成部21cが形成されている。この口構成部21cに、V字状に拡がるトレイ状の口構成パーツ21dを取り付けることで、フランジ部21bに吐出口213が一体に形成されている。口構成部21cの側方には、吐出口213に連通するホース接続部21eが形成されている。
図44に示すように、槽本体20aに回転槽30を収容した状態で、槽本体20aの上端に周壁部21aが固定され、先の図30に示すように、槽本体20aと槽カバー21とが一体化される。それにより、フランジ部21bは、胴部材31の開口の縁の上方に張り出した状態となり、槽本体20aと胴部材31の開口との間の隙間(径方向の隙間)はフランジ部21bによって覆われる。循環ポンプ212と吐出口213のホース接続部21eとの間は、ホース部材214によって接続される。吐出口213は、胴部材31の中央部を指向しており、循環ポンプ212が駆動して吐出口213から水が噴き出ると、胴部材31の中央に向かって拡がるように散水される。
(バランサー)
図47、図48A及び図48Bに、バランサー33を示す。第4実施形態のバランサー33は、内部に流体を有する流体バランサーであり、取付部331と、バランス調整部332とを有している。取付部331及びバランス調整部332は、樹脂成形品である。
取付部331は、リング状の中空枠部331aと、その下に連なる円筒状の嵌合部331bとを有している。取付部331は、嵌合部331bを胴部材31の内側に嵌め込んだ状態で、胴部材31に取り付けられる。中空枠部331aには、円筒状の止水リブ333が、その上端部から上方に張り出すように設けられている。
バランス調整部332は、リング状の部材からなり、その内部には、内外2層に区画された環状の液室332aが形成されている。バランス調整部332は、上下一対の部材を突き合わせ、溶着して接合することによって形成されている。各液室332aには、高比重な不凍液からなる流体が、所定量封入されている。各液室332aの周方向の数カ所には、流体が過度に流動するのを抑制するため、径方向から液室332aの中に張り出した流動抑制部332bや規制リブ332cが形成されている。
バランス調整部332は、胴部材31に取り付けられた取付部331の内側に、スピン溶着や振動溶着等によって一体化される。このように、バランサー33を取付部331とバランス調整部332とで構成し、スピン溶着で溶着すれば、短時間でバランサー33と胴部材31とを一体化できるので、生産性の向上が図れる。
バランス調整部332には、円筒状のカバーリブ334が、その上端部から上方に張り出すように設けられている。カバーリブ334は、止水リブ333の径方向内側に、止水リブ333と隙間を隔てた状態で対向するように配置されている。
回転槽30は水受槽20の中に位置決めされているので、水受槽20が揺れ動いても、胴部材31やバランサー33とフランジ部21bとの間の位置関係は変化しない。そのため、バランサー33よりも上方に張り出しているカバーリブ334及び止水リブ333の突端を、フランジ部21bの近傍に位置させることができる。
特に、カバーリブ334の突端はフランジ部21bの突端に近接しており、カバーリブ334により、バランサー33とフランジ部21bとの間の隙間(縦方向の隙間)が塞がれている。それにより、回転槽30の回転時に、洗濯物がその隙間に噛み込まれるのを防止している。
フランジ部21bに設けられている吐出口213との関係においても、カバーリブ334は、吐出口213の開口の直ぐ下に位置している。そして、吐出口213は、止水リブ333よりも径方向内側に張り出して回転槽30の内部に臨んでいる。
胴部材31と取付部331との間の周方向の複数カ所には、バランサー33の下方のスペースから胴部材31の上部の外方に連通する溢水経路335が設けられている。具体的には、前述したように、胴部材31の上端部の複数カ所には、脱水孔32が全周にわたって形成されており、これら脱水孔32は、バランサー33の下方に位置している。そして、胴部材31の内面に沿ってこれら脱水孔32より上方に延び、胴部材31の上端を越えて溢水させる溢水経路335が、胴部材31と取付部331との間の周方向の複数カ所に設けられている。
また、取付部331とバランス調整部332との間の周方向の複数カ所には、止水リブ333とカバーリブ334との間に形成される環状の溝に入り込んだ水を胴部材31の中に戻す流下経路336が設けられている。具体的には、バランス調整部332の径方向外側の周面における周方向の複数カ所に、流下経路336として、止水リブ333に沿って上下に貫通するスリット状の縦孔が形成されている。この縦孔336が、バランサー33の上方の、止水リブ333とカバーリブ334との間のスペースと、バランサー33の下方のスペースとに連通している。
<洗濯機1Hの運転>
洗濯機1Hの主な運転動作のうち、洗濯機1Gと異なる点について説明する。
洗い行程が開始されると、制御装置60は、パルセータ40を回転させ、その時にモータに作用する負荷に基づいて、投入された洗濯物(乾燥状態)の重量を推定する。その後、制御装置60は、回転槽30やパルセータ40を適宜回転させた状態で、第1給水弁72a又は第2給水弁71bを開く。それにより、水道水又は温水(単に水ともいう)が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給される。その際、洗剤も水と共に回転槽30に供給される。
そうして、回転槽30及び通気管29aの水位が、所定の水位(推定された洗濯物の重量に基づいて設定される)に達すると、水位センサ29の検出値に基づいて、制御装置60が給水を停止する。
洗い処理の実行中は循環ポンプ212が駆動されて、回転槽30に貯められた水は吐出口213へと送水される。図49に示すように、吐出口213に送水された水は、吐出口213から回転槽30の中央に向かって拡がるように噴き出され、回転槽30の中へと戻される。
吐出口213は、水受槽20と一体に設けられているので、安定して回転槽30の中に水を戻すことができる。しかしながら、循環ポンプ150の駆動の開始時や停止時など、吐出口213から噴き出される水の勢いが弱くなると、液垂れ等が発生し、図48Aに細矢印で示すように、吐出口213から出た水が、カバーリブ334の裏側に入り込む場合がある。その水が、水受槽20に流出してしまうと、回転槽30に戻ることが無いため、回転槽30の中の水が次第に減少し、洗濯性能が低下する。
それに対し、この洗濯機1Hでは、止水リブ333が設けられているので、カバーリブ334の裏側に水が入り込んでも、水受槽20への流出を阻止できる。止水リブ333とカバーリブ334との間には、縦孔336が設けられているので、止水リブ333とカバーリブ334との間に水が貯まることなく、図48Aに細矢印で示すように、回転槽30の中に戻すことができる。
止水リブ333の内側に沿うように縦孔336が形成されているので、揺れ動きによって径方向外側に集まる水が縦孔336へと誘導されて、回転槽30の中に円滑に流下する。
カバーリブ334の裏側に入り込む水は少量であるので、縦孔336の流路断面積は小さくてもよく、その総流路断面積も小さくてよいので、バランサー33の周方向の一部に小さく設けるだけでよい。従って、縦孔336を形成するために、バランサー33の液室332aを縮小する必要が無く、バランサー33の機能を損なうことが無い。
脱水行程が開始されると、高速で回転槽30が回転し、遠心力の作用で、洗濯物に含まれる水は、胴部材31の内面に沿って上昇する。
胴部材31の内面の上端部には、バランサー33が配置されているので、上昇した水はバランサー33によって受け止められる。バランサー33の下方には、多数の脱水孔32が形成されているので、上昇した水は、これら脱水孔32から溢水する。
一部の水は、バランサー33の下隅部(脱水孔32の上側)に集まるが、この洗濯機1Hでは、溢水経路335が設けられているので、図48Aに破線矢印で示すように、そのような水も溢水経路335を通じて溢水させることができる。上昇した水は余すこと無く溢水できるので、脱水性能に優れる。
脱水孔32から溢水した水は、水受槽20の底部に流下し、第1排水口26、第1経路92(止水弁100は開いた状態)、第3経路94を通じて、排水ポンプ150の駆動によって強制的に排水される。
<変更例>
バランサー33の構造は、仕様に応じて適宜変更できる。その変更例をいくつか示す。
図50Aに、第1変更例のバランサー33Aを示す。第4実施形態のバランサー33は、取付部331とバランス調整部332とからなる複数部材で構成したが、このバランサー33Aは、取付部331とバランス調整部332とが一部材で構成されている(一体型)。一体型のバランサーは、部材点数が少ない利点がある。
胴部材31に取り付ける構造は、取付部331と同じであるため、溢水経路335も第4実施形態のバランサー33と同様に構成されている。それに対し、流下経路336は、一体型であるため、バランサー33を上下に貫通する孔を形成する必要がある。孔を形成するために、液室332aを縮小するとバランサー33の機能が損なわれる。そこで、このバランサー33では、流動抑制部332bに、上下に貫通する縦孔を形成することで、流下経路336が設けられている。
前述したように、流下経路336の流路断面積は小さくてもよく、その総流路断面積も小さくてよいので、数カ所の流動抑制部332bに、小径の縦孔が形成されている。従って、この変更例であれば、一体型のバランサーであっても、前述したバランサー33と同等の機能が得られる。
図50Bに、第2変更例のバランサー33Bを示す。このバランサー33Bも、第1変更例と同じ一体型であるが、流下経路336の構造が異なっている。すなわち、カバーリブ334の付け根部分の複数カ所に、流下経路336として、内外に貫通する横孔が形成されている。
図50Cに、第3変更例のバランサー33Cを示す。このバランサー33Cも一体型であり、流下経路336を形成するために、カバーリブ334に相当する部分が省略されている。
第4実施形態では、排水ポンプを備えた洗濯機を例示したが、第4の技術は、排水ポンプを備えていない洗濯機、つまり自然排水(流下による排水)を行う洗濯機にも適用できる。
バランサーは、流体バランサーに限らず、ボールバランサーであってもよい。すなわち、流体に代えて、複数のボールが内部に周回可能に収容されている。
止水リブ333やカバーリブ334は、薄板状に限らず突起状であってもよい。要は、水を堰き止めることができればよい。溢水経路の構造も、流下経路と同様に仕様に応じて適宜変更できる。
=第5の技術に関する実施形態(第5実施形態)=
図51に、第5実施形態の洗濯機1Jの全体構造を示す。筐体10、水受槽20、回転槽30、パルセータ40、駆動装置50など、洗濯機1Jの基本的な構成は、洗濯機1Hと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、主に、異なる構造について説明する。
図示は省略するが、洗濯機1Jの制御装置60のブロック図は、図43のブロック図から水温センサ223及び循環ポンプ212が省略された構成となっている。
胴部材31の内部は、パルセータ40を境に、洗濯物が収容されて洗濯等の処理が行われる洗濯空間450(上側の空間)と、パルセータ40の回転によってポンプ作用を発揮するポンプ空間451(下側の空間)とに区画されている。
胴部材31の側部には、この洗濯空間450とポンプ空間451とに連通する循環経路460が設置されている。循環経路460は、縦軸Jを挟んで対向状に複数(この洗濯機では2つ)配置されている。胴部材31の側部にはまた、各循環経路460に対応して、リントフィルター470が設置されている(循環経路460及びリントフィルター470については、別途後述)。
(排水経路)
洗濯機1Jには循環経路210が無いので、水受槽20の底部には、水受槽20の内部の空間に臨む第1排水口26と、導水経路91に臨む第2排水口27とが開口している。第2排水口27は、導水経路91の下側の内面に開口し、その内部の空間に臨んでいる。従って、第2排水口27は、導水経路91を介して流出口36と連通している。それにより、回転槽30に貯まる水は、流出口36から導水経路91に導入され、第2排水口27から流出する。
(パルセータ)
図52、図53に、パルセータ40を示す。パルセータ40は、樹脂で一体に形成された射出成形品であり、円板状のベース401を有している。ベース401の表面の中央には、第1軸81が固定される円錐状のボス部401aが形成されている。更に、ベース401の表面には、このボス部401aから放射状に延びるように複数(このパルセータ40では、6個)の撹拌羽根部401bが形成されている。
各撹拌羽根部401bは、ベース401の表面から膨出し、略逆Uないし略逆V状の横断面を有すると共に、中心側から外周側に向かって次第に横幅が拡がるように形成されている。互いに隣接する2つの撹拌羽根部401b,401bの間には、外周側が略平坦な平面部401cが拡がるように形成されている。すなわち、このパルセータ40は、カップ形状ではなく皿形状をしている。
そして、各平面部401cには、ベース401を貫通した通水孔402の一群が形成されている(通水孔402については別途後述)。これら通水孔402は、小物が通過しない、つまり洗濯物に含まれるボタン等の異物が通り抜けない大きさに形成されている。そして、隣接する通水孔402との間のピッチは、必要な強度が確保できる範囲で設定されている。
ベース401の裏面には、複数の裏羽根403が設けられている。各裏羽根403は、薄板状の部材からなり、中心のボス部401aから外周側に向かって放射状に配置されている。
(循環経路及びリントフィルター)
図54、図55に、循環経路460及びリントフィルター470の構造を示す。
胴部材31の底部は、その側方から内側に張り出している。それにより、パルセータ40の外周縁と、胴部材31の底部とが僅かな隙間を介して近接するように構成されている。すなわち、パルセータ40により、胴部材31の内部は、洗濯空間450とポンプ空間451とに区画されている。
胴部材31の底部の周辺部分から側部の下側部分にわたる所定の範囲に、上方に向かって帯状に延びる厚みの薄いダクト状の空間(循環経路460)が形成されている。循環経路460の下側の開口(入水口460a)はポンプ空間451に臨んでおり、循環経路460は、この入水口460aを通じてポンプ空間451に連通している。循環経路460の上側の開口(出水口460b)は、洗濯空間450に臨んでおり、循環経路460は、この出水口460bを通じて洗濯空間450に連通している。
出水口460bは、大きな開口面積を有する矩形状に、胴部材31の内側面に形成されている。この出水口460bに、リントフィルター470が脱着可能に装着されている。リントフィルター470は、格子状の開口を有する支持体470aと、支持体470aに取り付けられた濾過材470b(リントを捕集する粗いメッシュ状のもの)とで構成されている。リントフィルター470は、洗濯空間450に臨んでおり、循環経路460は、このリントフィルター470、詳しくは濾過材470b及び支持体470aの開口を通じて洗濯空間450に連通している。
回転槽30に水が貯められた状態で、パルセータ40が回転すると、図55に矢印で示すように、ポンプ空間451の内部の水は、裏羽根403によって径方向外側へと押し出される。ポンプ空間451は、その周囲が仕切られていて、径方向外側に入水口460aが配置されているので、径方向外側に押し出された水は、強い勢いで、入水口460aから循環経路460に導入される。その結果、循環経路460に導入された水が、出水口460bから濾過材470bを通じて洗濯空間450へと流出する。
ポンプ空間451は、通水孔402を介して洗濯空間450と連通しているため、ポンプ空間451で減少する水は、図55に矢印で示すように、通水孔402を通じて補充される。
(通水孔の配置、開口率)
この洗濯機1Jでは、通水孔402の配置や開口率が工夫されている。
すなわち、通水孔402の一群は、ベース401のうち、ボス部401a及び撹拌羽根部401bを除く各平面部401cの中心側に偏在した領域に格子状に配置されている。詳しくは、図56に模式的に示すように、ベース401の表面のうち、ベース401と同心であり、かつ、その外径D2がベース401の外径D1の80%の大きさを有する円形領域の内側に位置する平面部401c(斜線で示す領域)に、総開口面積の92%以上の通水孔402が配置されている。
すなわち、ベース401の外周部分には、通水孔402は形成されないか形成されても僅かであり、通水孔402は、中心側に集約して配置されている。これら通水孔402は、遠心ポンプのように機能(外周側が相対的に正圧になり、中心側が相対的に負圧になる)するポンプ空間451に洗濯空間450の水を送り込む。
通水孔402を外周側に形成すると、外周側の通水孔402から水が吐出されてしまい、循環する水量が低下し、ポンプ機能が損なわれる。中心側からポンプ空間451に水を導入することで、ポンプ空間451に円滑に水を取り入れて、円滑に水を吐出させることができる。
詳細には、ポンプ空間451では、パルセータ40の回転によって水の流動が形成されるので、その中心側から外周側に向かうほど、遠心力が水の流動に強く作用する。そのため、パルセータ40の外周側にも通水孔402が多数形成されていると、図55に、破線の矢印で示すように、その外周側の通水孔402を通じて洗濯空間450に水が戻る現象が発生する。
洗濯空間450でも、パルセータ40の撹拌羽根部401bの撹拌作用で、その中心側から外周側に向かい、回転槽30の内壁に沿って上昇する水の流動が形成されている。そのため、外周側の通水孔402を通じて洗濯空間450に戻った水は、その流動の作用で、図55に、破線の矢印で示すように、ポンプ空間451から更に遠ざかっていく。
それに対し、洗濯空間450の中心側では、上方からパルセータ40に向かう水の流動が形成されるので、パルセータ40の上部の中心側は相対的に正圧になり易い。それに、ポンプ空間451の中心側の負圧が加わって、ポンプ空間451に円滑に水を取り入れることができる。
パルセータ40の外周側に通水孔402が無ければ、ポンプ空間の外周側を相対的に正圧に維持できるので、循環経路460に効率良く、水を吐出することができる。
そのためには、外径D2が、ベース401の外径D1の80%の大きさを有する円形領域の内側に、ほとんどの通水孔402を形成するのが好ましい。円形領域の外側に多少の貫通孔があっても、機能が大きく損なわれることはないので、総開口面積の92%以上としている。
パルセータ40の回転方向に直交する平坦な平面部401cに設けることで、少ない抵抗で水をポンプ空間451に導入できる通水孔402を、一様に多数形成できる。成形が容易な点でも有利である。洗濯物があっても、撹拌羽根部401bで受け止められるので、通水孔402が塞がれ難い。従って、水量がばらつくことなく、水をポンプ空間451に安定して導入できる。
なお、撹拌羽根部401bの側面に回転方向に臨むように通水孔402を形成してもよい。そうすれば、パルセータ40の回転を利用して積極的に水をポンプ空間451に導入できる。
更に、本発明者らが検討したところ、ポンプ空間451が略密閉された状態であると、通水孔402の開口率によって、吐出性能に差が生じ、最適な条件があることを見出した。すなわち、ベース401の表面をその垂直方向から見た場合での、そのベース401の表面の総面積(いわゆる投影面積)に対し、円形領域での通水孔402の総開口面積(各通水孔402の開口面積の総和)の割合(通水孔402の開口率)が1.5~4.0%の範囲内にあるようにするのが好ましい。
図57に、その通水孔402の開口率(%)と、吐出との関係を示したグラフを示す。縦軸は、循環時に循環経路460で上昇する水位の変化量(mm)であり、吐出に相当する。破線は、回転槽の底部に孔が有る場合(ポンプ空間451の周囲に水が自由に出入できる孔や隙間が多数存在)であり(比較例)、実線が、ホールレスな回転槽の場合である(実施例)。いずれも、その他の構造は洗濯機1Jと同様である。
実施例では、通水孔402の開口率(%)の増加に従って、吐出も増加したが、2.8%当たりにピークがあり、その後は吐出が減少する傾向が認められた。
従って、通水孔402の開口率(%)を、前述したように1.5~4.0%の範囲内とすることで、良好な吐出が得られ、安定した水循環が行える。
また、通水孔402の配置との関係では、開口率が2.8%以上の範囲は、ベース401の外周部分にも通水孔402が多数配置される状態となっている。従って、図57から、前述したように、ベース401の外周部分に通水孔402を多数配置することで吐出が低下することも確認できる。
<洗濯機1Jの運転>
洗濯機1Jの主な運転動作のうち、洗濯機1Hと異なる点について説明する。
洗い処理の実行中にパルセータ40が回転することで、ポンプ空間451の水が循環経路460に吐出され、洗濯空間450の水が通水孔402を通じてポンプ空間451に導入される。それにより、回転槽30の水が、循環経路460を通じて循環する水循環が行われると共に、リントフィルター470によるリントの捕集が行われる。従って、単にパルセータ40で撹拌するだけの場合に比べて、洗濯性能が向上する。
濯ぎ行程も、洗い行程と同様の制御によって行われる。すなわち、回転槽30に水を貯めた状態でパルセータ40が回転駆動され、洗濯物を撹拌すると共に、水循環によってリントの捕集が行われる。濯ぎ行程は、複数回行うのが好ましい。パルセータ40の回転により、水循環とリントの捕集とが行われるので、単にパルセータ40で撹拌するだけの場合に比べて、濯ぎ性能も向上する。
<リントの捕集効果>
洗濯機1Jと同等の洗濯機を用いて、同一の条件の下で洗濯を行い、通水孔402の開口率を変えてリントを捕集する試験を行った。その試験結果を図58に示す。
図58は、通水孔402の開口率(%)とリントの捕集率との関係を示しており、リントの捕集率の変化は、図57に示した吐出とほぼ同様の傾向が認められた。すなわち、通水孔402の開口率(%)の増加に従って、リントの捕集率も増加するが、2.8%当たりにピークがあり、その後はリントの捕集率が減少する傾向が認められた。
従って、リントを良好に捕集するためにも、通水孔402の開口率(%)は、1.5~4.0%の範囲内とするのが好ましいことが確認された。
<変更例>
洗濯機1Jでは、パルセータ40の裏羽根403による水循環をリントの捕集に利用したが、それに限るものではない。例えば、リントフィルター470に代えて、スリット状や多孔状の吐水口を回転槽の上部に設け、循環する水をその吐水口から回転槽の内部にシャワー状に濯ぐようにしてもよい。
また、循環経路460に洗剤が投入できる洗剤投入口を付設し、循環する水に洗剤を直接混合できるようにしてもよい。更には、銀イオン等の制菌剤が収容できる薬剤収容室を、循環経路460に連通するように併設し、循環する水に制菌作用を付与できるようにしてもよい。
ポンプ空間451の内部には、ヒーターを設置してもよい。そうすれば、洗い水や濯ぎ水を温水化できるので、よりいっそう洗浄性が向上する。
第5実施形態では、排水ポンプを備えた洗濯機を例示したが、第5の技術は、排水ポンプを備えていない洗濯機、つまり自然排水(流下による排水)を行う洗濯機にも適用できる。乾燥機能を有する洗濯機にも適用できる。
=第6の技術に関する実施形態(第6実施形態)=
第6の技術について、図10に示した洗濯機1Bを用いて具体的に説明する。図59に、洗濯機1Bに第6の技術を適用した場合における制御装置60の構成を示す。筐体10、水受槽20、回転槽30、パルセータ40、駆動装置50などの基本的な構成は、洗濯機1Bと同じである。従って、同じ部材には同じ符号を用いてその説明は省略し、第6の技術の適用に伴って異なった構造について説明する。
図60に示すように、シールホルダー22の内部には、ヒーター200と、導水経路91の内部の温度(水温)を検知する水温センサ201と、が設置されている。また、水受槽20の底部の裏面には、水受槽20の水平方向や垂直方向等、複数方向の揺れ量を検知して、制御装置60に出力する加速度センサ25(振動センサの一例)も設置されている。
(洗濯の運転、排水)
ユーザーによっていずれかの洗濯コースが指示されると、制御装置60に備えられている洗濯実行部60aが、その洗濯コースの一連の処理を実行する。
洗い行程が開始されると、制御装置60は、排水弁110を閉じた状態で、給水弁72を開く。それにより、回転槽30に水が洗剤と共に供給される。第1開閉弁121は閉じられていて、第4経路95に流入した水は排水されない。そうして、回転槽30及び通気管29aの水位が所定の水位に達すると、制御装置60が給水を停止する。
制御装置60は、駆動装置50を制御し、所定時間、パルセータ40を正逆回転させる。洗い処理が終わると、第1開閉弁121を開いて、回転槽30に貯まった水が排水される。濯ぎ行程も、洗い行程と同様の制御によって行われる。
脱水行程が開始されると、制御装置60は、第1開閉弁121及び第2開閉弁122を開いた状態で、駆動装置50を制御し、回転槽30及びパルセータ40が一体に回転するように切り替える。そうして高速で回転槽30等を回転させ、洗濯物に含まれる水を脱水孔32から溢水する。脱水孔32から溢水した水は、水受槽20の底部に流下し、第1排水口26、第1経路92、第4経路95を通じて排水される。
(槽洗浄)
この洗濯機1Bも、前述した洗濯機1Aや洗濯機1Cと同様に、外側スペース39には、ほとんど水が貯まらないため、不衛生な状態になり易い。第1実施形態や第2実施形態で説明したように、回転槽30から洗浄水を溢水させれば外側スペース39にも洗浄水を貯めることはできるが、多量の水及を要するので、節水の利点が損なわれるし、不経済である。
そこで、本実施形態の洗濯機1Bには、節水の利点を損なうことなく、外側スペース39を効果的に洗浄することができる運転コース(槽洗浄コース)が設定されている。そのため、制御装置60には、槽洗浄コースを実行する槽洗浄実行部60bが備えられている。
すなわち、槽洗浄実行部60bは、予め設定された洗浄水位まで回転槽30に貯めた洗浄水を、回転速度を制御しながら回転槽30を回転して溢水させることにより、外側スペース39の洗浄を行う。具体的には、槽洗浄実行部60bは、準備ステップ、洗浄ステップ、及び後処理ステップを実行する。
槽洗浄の詳細を、フローチャートを参照しながら説明する。図61は、槽洗浄の主な処理の流れを示している。
ユーザーが、操作部15を操作し、槽洗浄コースを指示することで、制御装置60は、蓋13をロックし、槽洗浄の処理を開始する。
(準備ステップ)
槽洗浄が開始すると、洗い行程と同様に、制御装置60は、第1開閉弁121を閉じた状態で、給水弁72を開く。それにより、図63に示すように、水が給水装置70に流入し、回転槽30に水が供給される(ステップS1)。その際、洗浄剤を洗剤投入容器73aに投入しておけば、洗浄剤も水と共に回転槽30に供給できる(洗浄剤の有無に関係なく、洗浄用の水を「洗浄水」ともいう)。
この時、水位センサ29は、通気管29aの水位に基づいて回転槽30に貯まる洗浄水の水位を検知し、その信号を制御装置60に連続的に出力する(ステップS2)。そうして、制御装置60は、その水位が所定の洗浄水位に達した場合に、給水弁72を閉じて給水を停止する(ステップS3)。「洗浄水位」は、回転槽30の容量に対して少量となる水位であり、予め制御装置60に設定されている。洗浄水位は、例えば、回転槽30の容量の半量以下の水を貯めた場合の水位であり、好ましくは、回転槽30の容量を3等分又は4等分した容量以下の水を貯めた場合の水位である。
そうして、回転槽30に所定量の洗浄水が貯まると、制御装置60は、駆動装置50を制御してパルセータ40を間欠的に正逆回転させる。そうして、回転槽30の内部を洗浄水で洗う(ステップS4)。制御装置60は、駆動装置50のクラッチ52aを第2状態から第1連結状態に切り替え、回転槽30を回転できるようにする(ステップS5)。なお、これらの処理(ステップS4、ステップS5)は省略してもよい。
(洗浄ステップ)
洗浄ステップでは、回転槽30に貯まる少量の洗浄水を効果的に利用して、外側スペース39の洗浄を行う(ステップS6)。具体的には、回転槽30の回転速度を高めながら洗浄水を溢水させ、水受槽20の内部、具体的には外側スペース39を洗浄する(シャワー洗浄)。
図62に、そのシャワー洗浄での具体的な処理の流れを示す。シャワー洗浄では、第1のシャワー洗浄ステップ、中間待機ステップ、第2のシャワー洗浄ステップからなる処理が実行される。
具体的には、制御装置60は、駆動装置50を制御して、回転槽30の回転を徐々に加速して高めていく(ステップS61)。その際、回転槽30の回転は、段階的に高めてもよいし、連続的に高めてもよい。そうして、回転槽30の回転数が、脱水行程での回転数よりも低い所定の第1回転数に達するまで、回転槽30の回転を、脱水行程での加速度よりも低い加速度で加速する(ステップS62)。
そうすることで、図64に示すように、洗浄水は、胴部材31の内面に沿って上昇し、脱水孔32から連続的に溢水する(第1のシャワー洗浄ステップ)。第1回転数が低いため、脱水孔32から溢水する洗浄水は、主に、下方に向かい、水受槽20の内壁面の下側部分に飛散する状態となる。すなわち、水受槽20の下側部分を洗浄することができる。
第1回転数に達すると、制御装置60は、第1回転数で、回転槽30の回転速度を所定時間維持し(加速しない)、待機状態にする(ステップS63、S64、中間待機ステップ)。
そうして、回転槽30の回転が安定すると、制御装置60は、第1回転数から、第1回転数よりも更に高い所定の第2回転数まで回転槽30の回転を徐々に加速して高める(ステップS65、S66)。その際、その加速度は第1のシャワー洗浄ステップよりも高くするのが好ましい。
そうすることで、図65に示すように、洗浄水は、脱水孔32から連続的に溢水する(第2のシャワー洗浄ステップ)。第2回転数は、第1回転数よりも高いため、脱水孔32から溢水する洗浄水の勢いは強い。そのため、脱水孔32から溢水する洗浄水は、主に、上方に向かい、水受槽20の内壁面の上側部分に飛散する状態となる。すなわち、水受槽20の上側部分を洗浄することができる。
第2回転数に達すると、制御装置60は、第2回転数で、回転槽30の回転速度を所定時間維持する(ステップS67、S68)。その後、減速し、回転槽30の回転を停止させる(図61のステップS7)。
(後処理ステップ)
そうして、回転槽30の回転が停止すると、制御装置60は、第1開閉弁121及び第2開閉弁122を開いた状態にして洗浄水を排水する(ステップS8)。
排水が終了すると、制御装置60は、回転槽30を、例えば第2回転数よりも高回転で回転させ、それにより、回転槽30に付着した洗浄水を吹き飛ばし、脱水する(ステップS9)。
この洗濯機1Bによれば、煩雑な作業を要さずに、少量の水で、ホールレスな回転槽30の外側、つまりは外側スペース39を効果的に洗浄できる。従って、節水の利点を損なうことなく、清浄性を維持できる高品質な洗濯機が提供できる。なお、槽洗浄での洗浄水位や第1回転数、第2回転数、加速度、待機時間は、回転槽30や水受槽20の寸法や重量等、仕様に応じて適宜設定される。
<応用例1>
槽洗浄の際、回転槽30から溢水した洗浄水は、水受槽20の下部に貯まる。水受槽20の下部に貯まった洗浄水が増えると、回転する回転槽30やフランジシャフト35によって撹拌されることで、その洗浄水に水流が発生する。水受槽20は、揺れ動きが可能な状態で筐体10の内部に支持されているため、その水流等の影響で、水受槽20の内部に貯まる洗浄水の分布に偏りが生じ得る。溢水量がばらつくことによっても、洗浄水の分布に偏りが生じ得る。
水受槽20の下部に貯まる洗浄水の分布が偏ると、回転槽30の回転と共振して、水受槽20が大きく揺れ動く場合がある。水受槽20が大きく揺れ動くと、騒音や振動が発生し得る。そうして、筐体10に水受槽20が接触すると、その衝撃で、洗浄水の分布が一気に大きく偏り、洗濯機1Bが倒れたり破損したりするような異常振動が発生し得る。
従って、槽洗浄での各洗浄ステップで、詳細にはステップS61やステップS65の回転槽30の回転を加速する過程で、そのような騒音や振動、更には異常振動の発生を防ぐ加速制御処理を行うのが好ましい。
図66に、その加速制御処理の流れを示す。制御装置60は、前述したステップS61等に示したように、駆動装置50を制御して回転槽30の回転を徐々に加速し(ステップS601)、回転センサ53から入力される信号に基づいて、回転数が目標回転数(第1設定回転数又は第2設定回転数)に達するまで、回転槽30の回転を高めていく(ステップS602)。
このとき、制御装置60は、加速度センサ25から入力される信号(水受槽20の水平方向の揺れ成分である振幅に関する信号)に基づいて、水受槽20の振幅が、予め設定されている限界値(例えば、異常振動が発生する振幅に所定の安全量を加えた設定値)をチェックしている(ステップS603)。そして、水受槽20の振幅がその限界値を超えた場合には、制御装置60は、回転槽30の回転を停止し、槽洗浄を強制終了させる(ステップS604)。従って、槽洗浄時に異常振動が発生することは、未然に防止できる。また、回転槽30に洗濯物が誤って投入されているなど、想定外の理由で発生する異常振動も阻止できる。
通常では、水受槽20の振幅は限界値を超えることは無く、回転槽30の回転数が目標回転数に達するまで、水受槽20は、限界値よりも十分小さい振幅で揺れ動く。その間、制御装置60はまた、水受槽20の振幅が、予め設定されている許容値(限界値よりも小さい設定値であり、水受槽20等の仕様に応じて設定される設定値)をチェックしている(ステップS605)。
そして、水受槽20の振幅がその許容値を超えた場合には、回転槽30の回転の加速を中断し、その時の回転数を維持する(ステップS606)。そうすることで、回転槽30からの溢水が抑制され、回転槽30の回転による水受槽20に貯まる洗浄水への作用が低減されるので、水受槽20の揺れ動きが低減されてその振幅も低下する。
そうして、水受槽20の振幅が許容値以下になれば(ステップS605でNo)、制御装置60は、回転槽30の回転の加速を再開する。このように、回転槽30の回転速度を段階的に高めることで、溢水を適度かつ円滑に行えるようになるので、水受槽20に貯まる洗浄水の分布に偏りが生じるのが抑制できる。その結果、槽洗浄時に、騒音や振動が発生するのが抑制でき、異常振動の発生を未然に防止できる。
<応用例2>
塵埃等の汚れであれば、洗浄水をシャワー状に散水することでも除去可能であるが、外側スペース39で発生したカビや細菌(微生物)の除去は容易でない。除菌剤を用いれば、カビ等を死滅させることもできるが、その後に多量の濯ぎが必要になるため、節水の面で難がある。その点、加熱による除菌は、安定した効果が得られるため、有効である。
例えば、大腸菌は65℃で容易に死滅する。カビの除菌温度も同レベルであり、例えば、65℃の熱水に数秒浸けること(いわゆる湿熱除菌)で、一般的な細菌やカビであれば死滅させることができる。従って、洗浄水量が少ない利点を活かし、加熱除菌を行って、カビ等も除去(洗浄)できるようにするのが好ましい。
具体的には、前述した準備ステップにおいて、65℃等、所定の除菌温度まで洗浄水を加熱する処理を行う(熱水化処理)。除菌温度は、予め制御装置60に設定される。シャワー洗浄に用いる洗浄水の量が少ないため、家庭用電源でも、実用的な時間で除菌温度まで加熱できる。消費電力も少なく、経済的である。
シャワー洗浄では、熱水が、シャワーのように、外側スペース39に振りまかれるので、偏ることなく熱水を外側スペース39に作用させることができ、外側スペース39の全域を湿熱状態にできるので、安定した除菌が行える。
特に、熱水化処理の際、水受槽20の周辺の外気温に基づいて、除菌温度を上方へ補正する処理を行うのが好ましい。具体的には、槽洗浄実行部60bが、気温センサ202及び水温センサ201から入力される信号に基づいて、除菌温度を上方へ補正し、補正した温度(補正除菌温度)に洗浄水を加熱するようにすればよい。
シャワー洗浄では、洗浄水を振りまくので、水受槽20の周辺の外気と接触して温度が低下する。また、水受槽20の壁面等もシャワー洗浄の前は、外気と同等の温度であるため、壁面等に接触した洗浄水は、熱を奪われて更に温度が低下する。洗浄水の量が多ければ、それだけ熱量も多いため、シャワー洗浄の後半には、外側スペース39を除菌温度の湿熱状態にすることも可能であるが、洗浄水の量が少ないため、除菌が不十分になるおそれがある。
それに対し、制御装置60は、水受槽20の周辺の外気温から、外気及び水受槽20の壁面等の昇温によって失われる熱量、加熱中の放熱量等を換算する。そして、これら熱量と洗浄水の水温とに基づき、外側スペース39を速やかに除菌温度の湿熱状態にできるように、除菌温度を補正除菌温度へ上方補正する。その結果、季節等によって外気温や水温が変化しても、その影響を受けずに加熱除菌が行えるので、安定した除菌性能が得られる。
<変更例>
第6実施形態では、自然排水(流下による排水)するタイプの洗濯機1Bを例示したが、先の図11に示す洗濯機1Cのような、排水ポンプ付きの洗濯機にも適用できる。
その他、槽洗浄での温度設定は、ユーザーが操作部15を操作する際に、選択できるようにするとよい。例えば、洗浄や除菌の強度と、温度と、を関連付けして表示し、洗浄・除菌(弱)として60℃の設定や、洗浄・除菌(強)として70℃の設定などを表示し、選択できるようにする。そうすれば、利便性、経済性に優れる。
また、回転槽に貯まる水の水温が高い場合には、ロック装置14を作動させ、蓋13をロックするとよい(ユーザーが開けようとしても開けられない状態)。水温が下がれば、ロックを解除する(蓋13は、閉じられているが、ユーザーが開けようと操作すれば、開けることができる状態)。そうすれば、安全性が向上する。
また、水受槽に貯まる水を排水する際には、その水が所定の温度以下になった後に、排水するようにしてもよい。そうすれば、排水ホース等が必要以上に熱せられるのを防ぐことができる(耐熱性が不要)。
また、第6実施形態では、水受槽の振幅が限界値を超えた場合には、槽洗浄を強制終了したが、いったん回転槽の回転を停止し、所定の時間が経過した後、再度、槽洗浄を開始してもよい。水受槽の振幅が限界値を超えた場合、ブザーや点滅表示等により、ユーザーにエラーを報知するのが好ましい。