本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図1,図2における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
本実施形態のシリンダ装置1は、図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器である。シリンダ装置1は、具体的には、自動車等の車両の懸架装置に装着されるものである。シリンダ装置1は、作動流体としての油液が封入されるシリンダ2を有している。シリンダ2は、円筒状の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられる有底円筒状の外筒4と、外筒4の上部開口側を覆うカバー5とを有しており、内筒3と外筒4との間にリザーバ室6が形成されている。
外筒4は、円筒状の胴部材11と、胴部材11の下部側に嵌合固定されて胴部材11の下部を閉塞する底部材12とからなっている。底部材12には、胴部材11とは反対の外側に取付アイ13が固定されている。
カバー5は、筒状部15と筒状部15の上端側から径方向内方に延出する内フランジ部16とを有している。カバー5は、胴部材11の上端開口部を内フランジ部16で覆い胴部材11の外周面を筒状部15で覆うように胴部材11に被せられており、この状態で、筒状部15の一部が径方向内方に加締められて胴部材11に固定されている。
シリンダ2の内筒3内には、ピストン18が摺動可能に挿入されている。このピストン18は、シリンダ2に嵌装されて、内筒3内を上室19と下室20の2つの室に区画している。内筒3内の上室19および下室20内には作動流体としての油液が封入され、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液とガスとが封入される。
シリンダ2内には、一端がシリンダ2の外部へと延出されるピストンロッド21の他端側が挿入されており、このピストンロッド21には、シリンダ2内に配置される他端側にピストン18が連結されている。ピストン18およびピストンロッド21は一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす伸び行程において、ピストン18は上室19側へ移動することになり、ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす縮み行程において、ピストン18は下室20側へ移動することになる。
内筒3および外筒4の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合されており、外筒4にはロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である上側にシール部材23が装着されている。ロッドガイド22とシール部材23との間には摩擦部材24が設けられている。ロッドガイド22、シール部材23および摩擦部材24は、いずれも環状をなしており、ピストンロッド21は、これらロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の外部に延出されている。
ここで、ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部で外筒4に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接して、内筒3内の油液と、外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが外部に漏洩するのを防止する。摩擦部材24は、その内周部でピストンロッド21の外周部に摺接して、ピストンロッド21に摩擦抵抗を発生させる。
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合する。外筒4の底部材12上には、下室20とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されており、このベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。ベースバルブ25は、適度な流通抵抗をもって下室20とリザーバ室6とを接続させる。外筒4の上端部は、図示せぬ一部が径方向内方に加締められており、この加締め部分とロッドガイド22とがシール部材23を挟持している。
ピストンロッド21は、主軸部27と、これより小径の取付軸部28とを有している。取付軸部28にはシリンダ2内に配置されてピストン18等が取り付けられている。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に沿って延在する軸段部29となっている。取付軸部28の外周部には、軸方向の主軸部27とは反対側の先端位置にオネジ31が形成されている。
ピストンロッド21には、主軸部27のピストン18とロッドガイド22との間の部分に、いずれも円環状のストッパ部材32および緩衝体33が設けられている。ストッパ部材32は、内周側にピストンロッド21を挿通させており、加締められて主軸部27の径方向内方に凹む固定溝34に固定されている。緩衝体33も、内側にピストンロッド21を挿通させており、ストッパ部材32とロッドガイド22との間に配置されている。
シリンダ装置1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2側の取付アイ13が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2側が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。
図2に示すように、ピストン18は、ピストンロッド21に支持される金属製のピストン本体35と、ピストン本体35の外周面に一体に装着されて内筒3内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材36とによって構成されている。
ピストン本体35には、上室19と下室20とを連通させ、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上室19から下室20に向けて油液が流れ出す通路を内側に形成する複数(図1,図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴37と、複数の通路穴37を下室20側で連通させる環状溝38と、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において下室20から上室19に向けて油液が流れ出す通路を内側に形成する複数(図1,図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴39と、複数の通路穴39を上室19側で連通させる環状溝40と、が設けられている。
つまり、複数の通路穴37内および環状溝38内の通路と複数の通路穴39内および環状溝40内の通路とが、ピストン18の移動により上室19と下室20との間を作動流体である油液が流れるように連通する。
通路穴37は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴39を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン18の軸方向の上室19側が径方向外側に、軸方向の下室20側が径方向内側に位置するように傾斜している。
複数の通路穴37内および環状溝38内の通路に対して、減衰力を発生する減衰力発生機構41が設けられている。減衰力発生機構41は、ピストン18の軸方向の一端側である下室20側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。複数の通路穴37内および環状溝38内の通路は、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側(図2の上側)に移動するときに油液が通過する伸び側の通路となっており、これらに対して設けられた減衰力発生機構41は、複数の通路穴37内および環状溝38内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
通路穴39は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴37を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン18の軸線方向の下室20側が径方向外側に、軸線方向の上室19側が径方向内側に位置するように傾斜している。
複数の通路穴39内および環状溝40内の通路に対して、減衰力を発生する減衰力発生機構42が設けられている。減衰力発生機構42は、ピストン18の軸方向の他端側である上室19側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。複数の通路穴39内および環状溝40内の通路は、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側(図2の下側)に移動するときに油液が通過する縮み側の通路となっており、これらに対して設けられた減衰力発生機構42は、複数の通路穴39内および環状溝40内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストン本体35は、略円板形状をなしており、その径方向の中央には、軸方向に貫通して、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる嵌合穴45が形成されている。ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部には、環状溝38の下室20側の開口よりも径方向内側に固定シート部46が形成されており、環状溝38の下室20側の開口よりも径方向外側に、減衰力発生機構41の一部である環状のバルブシート部47が形成されている。また、ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部には、環状溝40の上室19側の開口よりも径方向内側に固定シート部48が形成されており、環状溝40の上室19側の開口よりも径方向外側に、減衰力発生機構42の一部である環状のバルブシート部49が形成されている。
ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部は、その嵌合穴45と環状溝38との間の固定シート部46が減衰力発生機構41の内周側を支持している。ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部は、その嵌合穴45と環状溝40との間の固定シート部48が減衰力発生機構42の内周側を支持している。
ピストン本体35において、バルブシート部47の嵌合穴45とは反対側は、バルブシート部47よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路穴39の下室20側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体35において、バルブシート部49の嵌合穴45とは反対側は、バルブシート部49よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路穴37の上室19側の開口が配置されている。
伸び側の減衰力発生機構41は、圧力制御型の減衰力発生機構であり、軸方向のピストン18側から順に、複数枚(具体的には2枚)のディスク50と、一枚のディスク51と、一枚のディスクバルブ52と、一つのシート部材53と、一枚のディスク54と、一枚のディスク55と、複数枚(具体的には2枚)のディスク56と、複数枚(具体的には3枚)のディスク57と、複数枚(具体的には3枚)のディスク58と、一枚のディスク59と、一枚のディスク60と、一つの環状部材62とを有している。
ディスク50,51,54~60、シート部材53および環状部材62は、金属製である。ディスク50,51,54~60および環状部材62は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ディスクバルブ52およびシート部材53は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な円環状をなしており、略有底円筒状である。ディスク50,51,54~60およびディスクバルブ52は、可撓性を有している。
シート部材53は、軸直交方向に沿う有孔円板状の底部71と、底部71の内周側に形成された軸方向に沿う円筒状の内側円筒状部72と、底部71の外周側に形成された軸方向に沿う円筒状の外側円筒状部73とを有している。底部71は、内側円筒状部72および外側円筒状部73に対し軸方向の一側にずれており、底部71には、軸方向に貫通する貫通穴74が形成されている。
シート部材53の内側円筒状部72の軸方向の底部71側の端部は、ディスク54の内周側を軸方向に支持しており、内側円筒状部72の軸方向の底部71とは反対側の端部は、ディスクバルブ52の内周側を軸方向に支持している。シート部材53の外側円筒状部73の軸方向の底部71側の端部は、環状のバルブシート部79となっている。貫通穴74を含むシート部材53の内側は、ディスクバルブ52にピストン18の方向に圧力を加える背圧室80となっている。
ディスク50は、バルブシート部47の内径よりも小径の外径となっている。ディスク51は、ディスク50と同等の外径となっている。ディスク51には、外周側に切欠部82が形成されている。
ディスクバルブ52は、図3に示すように、環状であり、金属製の環状のディスク85と、図4に示すように、ディスク85の厚さ方向一側のみに固着されるゴム等の弾性体からなる環状の弾性シール部材86とからなっている。よって、ディスクバルブ52は、弾性シール部材86が表と裏とで異なる形状となっている。ディスクバルブ52は、具体的には、弾性シール部材86の有無が表と裏とで異なる形状となっている。弾性シール部材86は、加硫・接着等によってディスク85に固着されている。
ディスク85は、図2に示すように、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な有孔円形板状である。ディスク85は、バルブシート部47の外径よりも若干大径の外径となっており、バルブシート部47に離着座する。
ディスク85は、取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状のベース板部91と、ベース板部91の径方向外側に設けられ、ベース板部91から径方向外側に離れるほど軸方向に位置がずれるテーパ状のテーパ板部92と、テーパ板部92の径方向外側に設けられてバルブシート部47に着座面93aで着座する円形平板状の着座板部93とを有している。
図4に示すように、着座板部93の着座面93aは、着座面93aと同側に向くベース板部91のベース面91aと同一平面上にない。着座面93aは、同側に向くテーパ板部92のテーパ面92aでベース面91aと接続されている。着座板部93の着座面93aとは反対側の面93bは、ベース板部91のベース面91aとは反対側の面91bと同一平面上にない。面93bは、テーパ板部92のテーパ面92aとは反対側の面92bで面91bと接続されている。
ベース板部91と着座板部93とは平行であり、これらをテーパ板部92が繋いでいる。ベース板部91とテーパ板部92と着座板部93とは中心軸線を一致させて同軸状に配置されている。ベース板部91のテーパ板部92側の部分と、テーパ板部92と、着座板部93のテーパ板部92側の部分とが、ディスク85の厚さ方向に段差状をなす環状の段差部96(視認部)を構成している。図3に示すように、段差部96は、ディスク85の内周面および外周面と中心軸線を一致させた円環状をなしている。
図4に示すように、ディスク85は、段差部96が凹んでいる側(図4における上側)において、着座板部93の着座面93aとベース板部91のベース面91aとが同一平面に配置されておらず、着座面93aとベース面91aとをテーパ面92aで接続した形状となっている。ディスク85は、段差部96が突出している側(図4における下側)においても、着座板部93の面93bとベース板部91の面91bとが同一平面に配置されておらず、平坦な面93bと平坦な面91bとをテーパ状の面92bで接続した形状となっている。
ディスク85は、それ自体が、段差部96によって表裏を視認可能となっている。例えば、ディスク85の外周側の着座板部93に対して段差部96が突出する側(図4における下側)を表側とし、ディスク85の着座板部93に対して段差部96が凹む側(図4における上側)を裏側とすれば、ディスク85は、外周側の着座板部93に対する段差部96の凹凸で表裏を識別可能となっている。よって、ディスク85には、ディスク85自体に表裏を視認可能な段差部96が形成されている。
ディスク85には、ベース板部91のテーパ板部92側の部分に、厚さ方向に貫通する通路穴97が形成されている。通路穴97は、図3に示すように、ディスク85の周方向に等間隔で複数(具体的には5箇所)形成されている。複数の通路穴97は、ディスク85の中心軸線から等距離の位置に形成されている。複数の通路穴97は、ディスク85の中心軸線を中心とする円弧状をなしている。通路穴97は、図2に示すように、ディスク51の切欠部82と径方向の位置を重ね合わせている。通路穴97内の通路は、切欠部82内の通路と連通する。
弾性シール部材86は、着座板部93に対して段差部96が突出するディスク85の表側に固着されている。弾性シール部材86は、ディスク85のピストン18とは反対の外周側に固着されており、ディスク85の着座板部93とテーパ板部92の着座板部93側の部分とに固着されている。弾性シール部材86は、図3に示すように円環状をなしている。弾性シール部材86は、図4に示すように、通路穴97よりも、ディスク85の径方向の外側に通路穴97から離れて固着されている。
ディスクバルブ52は、ディスク85の厚さ方向における弾性シール部材86の有無によって表裏を視認可能となっている。また、ディスクバルブ52は、ディスク85の段差部96によっても表裏を視認可能となっている。言い換えれば、ディスクバルブ52は、ディスク85の厚さ方向における弾性シール部材86の有無によって表裏の形状が異なっている。ディスク85も、その厚さ方向における段差部96の凹凸によって表裏の形状が異なっている。
弾性シール部材86の外周部は、固着されたディスク85から離れるにしたがって拡径するテーパ状に形成されている。弾性シール部材86の外周部には、同心上に配置された複数の環状突出部87が形成されている。ディスクバルブ52は、図2に示すように、弾性シール部材86を先頭側としディスク85を後尾側として、シート部材53の外側円筒状部73の内側の挿入され、外側円筒状部73の内周面に、弾性シール部材86において嵌合する。
ディスクバルブ52は、ピストン18に設けられた通路穴37内および環状溝38内の通路と、シート部材53内に設けられた背圧室80との間に設けられており、ピストン18の伸び側への摺動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
弾性シール部材86は、シート部材53の外側円筒状部73の内周面に全周にわたり接触して、ディスクバルブ52と外側円筒状部73との隙間をシールする。その際に、ディスクバルブ52は、図4に示す複数の環状突出部87によって、図2に示す外側円筒状部73の内周面との摺動部分を多段にシールする。
ディスクバルブ52とシート部材53との間の上記した背圧室80は、ディスクバルブ52に、ピストン18の方向、つまりディスク85をバルブシート部47に着座させる閉弁方向に内圧を作用させる。ディスク51の切欠部82内の通路と、ディスクバルブ52の通路穴97内の通路とが、背圧室80にシリンダ2内の上室19から通路穴37内および環状溝38内の通路を介して油液を導入する背圧室入口通路98となっている。
ディスク51の切欠部82内の通路は、この背圧室入口通路98のオリフィスである上流側オリフィス99となっている。ディスクバルブ52は、撓んでバルブシート部47からリフトすると、これと同時に、ディスク51からもリフトすることになり、これにより、背圧室入口通路98の流路面積を増大させる。
このように、ディスクバルブ52は、背圧室80を有するパイロットタイプの減衰バルブであり、ディスク85がピストン18のバルブシート部47から離座して開くと、ディスク85とバルブシート部47との間の通路100を介して、通路穴37内および環状溝38内の通路からの油液を下室20に流す。伸び側の減衰力発生機構41は、上室19からの油液の流れの一部を背圧室入口通路98を介して背圧室80に導入して、この背圧室80の圧力によってディスクバルブ52の開弁を制御する。
ディスク54は、シート部材53のバルブシート部79の内径よりも小径の外径となっている。ディスク55は、バルブシート部79の外径よりも若干大径の外径となっており、バルブシート部79に着座可能となっている。ディスク55には、外周側に切欠部103が形成されており、切欠部103は、バルブシート部79を径方向に横断して下室20に開口している。ディスク56は、外径がディスク55の外径と同等になっている。ディスク55およびディスク56には、下室20に開口する通路105が形成されている。ディスク54は、通路105を開閉可能であり、下室20側から背圧室80側への通路105を介しての油液の流通のみを許容する逆止弁106を構成している。
ディスク57は、ディスク56の外径と同径の外径となっている。ディスク58は、外径がディスク57の外径よりも小径となっている。ディスク59は、外径がディスク58の外径よりも小径となっている。ディスク60は、外径がディスク59の外径よりも小径となっている。環状部材62は、外径がディスク60の外径よりも大径であり、ディスク59の外径よりも小径となっている。
ディスク54~59が、バルブシート部79に離着座可能であって、バルブシート部79から離座することで、バルブシート部79との間の通路110を介して背圧室80と下室20とを連通させるリリーフバルブ111を構成している。リリーフバルブ111は、所定圧力に達した背圧室80内の油液を下室20へリリーフする。背圧室80は、ディスクバルブ52とシート部材53とリリーフバルブ111とで囲まれて形成されており、ディスク55の切欠部103は、ディスク55がバルブシート部79に当接状態にあっても背圧室80を下室20に連通させる下流側オリフィス113を構成している。
環状部材62は、リリーフバルブ111の開方向への変形時にディスク59に当接してリリーフバルブ111の変形を抑制する。下流側オリフィス113は、ディスク55に切欠部103を設ける以外にも、バルブシート部79にコイニングにより溝を形成することによって形成することができる。
ピストン18のバルブシート部47と、複数枚のディスク50と、ディスク51と、ディスクバルブ52と、シート部材53と、リリーフバルブ111とが、伸び行程でのピストン18の摺動により生じる油液の流れを規制してディスクバルブ52の両側に圧力差を生じさせるバルブ機構101を構成している。バルブ機構101は、ディスクバルブ52を含んでいる。バルブ機構101は、背圧室80を含んでいる。減衰力発生機構41のバルブ機構101は、下室20に設けられている。リリーフバルブ111には、下室20側から背圧室80側への油液の流通のみを許容する逆止弁106が設けられている。
ピストン18に設けられた伸び側の通路穴37内および環状溝38内の通路と、開時のディスクバルブ52とバルブシート部47との間の通路100と、背圧室入口通路98と、背圧室80と、下流側オリフィス113と、開時のリリーフバルブ111とバルブシート部79との間の通路110とが、伸び行程でのピストン18の移動により上室19から下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の連通路121を構成している。伸び側の減衰力発生機構41は、この伸び側の連通路121に設けられ、連通路121の油液の流動を制御して減衰力を発生させる。
縮み側の減衰力発生機構42も、圧力制御型の減衰力発生機構であり、伸び側の減衰力発生機構41のバルブ機構101とほぼ同様の構成のバルブ機構101Aを有している。以下、縮み側の減衰力発生機構42について、伸び側の減衰力発生機構41との相違部分を中心に説明する。縮み側の減衰力発生機構42において、伸び側の減衰力発生機構41と同様の構成については符号に「A」を付して区別する。
バルブ機構101Aは、上室19に設けられている。バルブ機構101Aは、軸方向のピストン18側から順に、複数枚(具体的には2枚)のディスク50Aと、一枚のディスク51Aと、一枚のディスクバルブ52Aと、一つのシート部材53Aとを有している。バルブ機構101Aは、ディスクバルブ52Aが、ディスク85Aにおいて、バルブシート部49に離着座する。
縮み側の減衰力発生機構42は、シート部材53Aと軸段部29との間に、シート部材53A側から順に、一枚のディスク54Aと、一枚のディスク55Aと、複数枚(具体的には2枚)のディスク56Aと、複数枚(具体的には2枚)のディスク57Aと、一枚のディスク58Aと、一枚のディスク131と、一つの環状部材62Aとを有している。ディスク131も金属製であり、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ディスク131は、外径がディスク60の外径よりも小径となっている。
ディスクバルブ52Aは、ピストン18に設けられた通路穴39内および環状溝40内の通路とシート部材53A内に設けられた背圧室80Aとの間に設けられており、ピストン18の縮み側への摺動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。ディスク51Aの切欠部82A内の通路とディスクバルブ52Aの通路穴97A内の通路とからなる背圧室入口通路98Aは、背圧室80Aにシリンダ2内の下室20から複数の通路穴39内および環状溝40内の通路を介して油液を導入する。
バルブ機構101Aの背圧室80Aは、ディスクバルブ52Aに、ピストン18の方向、つまりディスク85Aをバルブシート部49に着座させる閉弁方向に内圧を作用させる。ディスクバルブ52Aは、ディスク85Aがピストン18のバルブシート部49から離座して開くと、ディスク85Aとバルブシート部49との間の通路100Aを介して通路穴39内および環状溝40内の通路からの油液を上室19に流す。縮み側の減衰力発生機構42は、下室20からの油液の流れの一部を背圧室入口通路98Aを介して背圧室80Aに導入して、この背圧室80Aの圧力によってディスクバルブ52Aの開弁を制御する。
ディスク54A~58Aが、バルブシート部79Aに離着座可能であって、バルブシート部79Aから離座することで、バルブシート部79Aとの間の通路110Aを介して、背圧室80Aと上室19とを連通させるリリーフバルブ141を構成している。背圧室80Aは、ディスクバルブ52Aとシート部材53Aとリリーフバルブ141とで囲まれて形成されている。ディスク55Aの切欠部103Aは、ディスク55Aがバルブシート部79Aに当接状態にあっても背圧室80Aを上室19に連通させる下流側オリフィス113Aを構成している。
リリーフバルブ141には、上室19側から背圧室80A側への油液の流通のみを許容する逆止弁106Aが設けられている。逆止弁106Aは、ディスク55Aおよびディスク56Aに形成された通路105Aと、ディスク54Aとによって構成されている。
環状部材62Aは、リリーフバルブ141の開方向への変形時にディスク58Aに当接してリリーフバルブ141の変形を抑制する。バルブ機構101Aは、ピストン18のバルブシート部49とリリーフバルブ141とを含んでいる。バルブ機構101Aは、縮み行程でのピストン18の摺動により生じる油液の流れを規制してディスクバルブ52Aの両側に圧力差を生じさせる。
ピストン18に設けられた縮み側の通路穴39内および環状溝40内の通路と、開時のディスクバルブ52Aとバルブシート部49との間の通路100Aと、背圧室入口通路98Aと、背圧室80Aと、下流側オリフィス113Aと、開時のリリーフバルブ141とバルブシート部79Aとの間の通路110Aとが、縮み行程でのピストン18の移動により下室20から上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の連通路121Aを構成している。縮み側の減衰力発生機構42は、この縮み側の連通路121Aに設けられて、連通路121Aの油液の流動を制御して減衰力を発生させる。
ピストンロッド21には、取付軸部28をそれぞれの内側に挿通させた状態で、環状部材62A、ディスク131、ディスク58A、複数枚のディスク57A、複数枚のディスク56A、ディスク55A、ディスク54A、シート部材53A、ディスクバルブ52A、ディスク51A、複数枚のディスク50A、ピストン18、複数枚のディスク50、ディスク51、ディスクバルブ52、シート部材53、ディスク54、ディスク55、複数枚のディスク56、複数枚のディスク57、複数枚のディスク58、ディスク59、ディスク60および環状部材62が、この順に、軸段部29に重ねられている。その際に、シート部材53Aは、バルブシート部79Aをディスク55Aに当接させ、ディスクバルブ52Aの弾性シール部材86Aを外側円筒状部73Aに嵌合させている。また、その際に、シート部材53は、バルブシート部79をディスク55に当接させ、ディスクバルブ52の弾性シール部材86を外側円筒状部73に嵌合させている。
このように部品が配置された状態で、環状部材62よりも突出する取付軸部28のオネジ31にナット125が螺合されている。この状態で、環状部材62A、ディスク54A~58A,131、シート部材53A、ディスクバルブ52A、ディスク50A,51A、ピストン18、ディスク50,51、ディスクバルブ52、シート部材53、ディスク54~59,60および環状部材62は、それぞれ少なくとも内周側がピストンロッド21の軸段部29とナット125とに挟持されて軸方向にクランプされている。
このとき、ディスクバルブ52は、ディスク85のベース板部91において、シート部材53の内側円筒状部72とピストン18の固定シート部46とに、ディスク50,51を介して軸方向にクランプされる。また、このとき、ディスクバルブ52は、着座板部93およびテーパ板部92の全体がディスク51の外周部よりも外側にある。また、このとき、ディスクバルブ52のディスク85は、着座板部93の着座面93aが、ベース板部91のベース面91aよりも軸方向のバルブシート部47側にあり、着座面93aにおいてバルブシート部47に着座する。また、このとき、ディスク85のバルブシート部47とは反対の背面側には、環状の弾性シール部材86が固着されており、この弾性シール部材86の外周部がシート部材53の外側円筒状部73の内周面に、摺動可能かつ液密的に当接されて、シート部材53内に背圧室80を形成する。
また、このとき、ディスクバルブ52Aは、ディスク85Aのベース板部91Aにおいて、シート部材53Aの内側円筒状部72Aとピストン18の固定シート部48とに、ディスク50A,51Aを介して軸方向にクランプされる。また、このとき、ディスクバルブ52Aは、着座板部93Aおよびテーパ板部92Aの全体がディスク51Aの外周部よりも外側にある。また、このとき、ディスクバルブ52Aのディスク85Aは、着座板部93Aの着座面93aAが、ベース板部91Aのベース面91aAよりも軸方向のバルブシート部49側にあり、着座面93aAにおいてバルブシート部49に着座する。また、このとき、ディスク85Aのバルブシート部49とは反対の背面側には、環状の弾性シール部材86Aが固着されており、この弾性シール部材86Aの外周部がシート部材53Aの外側円筒状部73Aの内周面に、摺動可能かつ液密的に当接されて、シート部材53A内に背圧室80Aを形成する。
伸び行程において、連通路121に、背圧室入口通路98側から下流側オリフィス113側へ油液の流れが生じたとき、これらの流路面積差によって、背圧室80が加圧されるようになっている。ここで、背圧室80の外周径(弾性シール部材86の外周部が当接する外側円筒状部73の内周面の径)は環状のバルブシート部47の径よりも大径となっている。このため、行程反転時に下室20の圧力が高くなると、ディスクバルブ52はその外周側で背圧室80の外周径とバルブシート部47の径との径差の分だけ、開弁方向に流体力を受けるようになる。また、行程反転時に、下室20側が加圧された場合には、逆止弁106が開弁することにより、逆止弁106の流路面積と下流側オリフィス113の流路面積とを合計した流路面積が背圧室入口通路98の流路面積よりも大きくなり、背圧室80の背圧を高めることになる。このため、背圧室80の圧力によりディスクバルブ52に閉弁方向に作用する流体力が、下室20の圧力による開弁方向に作用する流体力よりも大きくなるようになっている。
また、縮み行程において、連通路121Aに、背圧室入口通路98A側から下流側オリフィス113A側へ油液の流れが生じたとき、これらの流路面積差によって、背圧室80Aが加圧されるようになっている。ここでも、背圧室80Aの外周径は環状のバルブシート部49の径よりも大径となっている。このため、行程反転時に上室19の圧力が高くなると、ディスクバルブ52Aはその外周側で背圧室80Aの外周径とバルブシート部49の径との径差の分だけ、開弁方向に流体力を受けるようになる。また、行程反転時に、上室19側が加圧された場合には、逆止弁106Aが開弁することにより、逆止弁106Aの流路面積と下流側オリフィス113Aの流路面積とを合計した流路面積が背圧室入口通路98Aの流路面積よりも大きくなり、背圧室80Aの背圧を高めることになる。このため、背圧室80Aの圧力によりディスクバルブ52Aに閉弁方向に作用する流体力が、上室19の圧力による開弁方向に作用する流体力よりも大きくなるようになっている。
図1に示すように、外筒4の底部材12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室20とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材191と、このベースバルブ部材191の下側つまりリザーバ室6側に設けられるディスク192と、ベースバルブ部材191の上側つまり下室20側に設けられるディスク193と、ベースバルブ部材191にディスク192およびディスク193を取り付ける取付ピン194とを有している。
ベースバルブ部材191は、径方向の中央に取付ピン194が挿通される円環状をなしている。ベースバルブ部材191には、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路穴195と、これら通路穴195の径方向の外側にて、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路穴196とが形成されている。リザーバ室6側のディスク192は、下室20から通路穴195を介するリザーバ室6への油液の流れを許容する一方でリザーバ室6から下室20への通路穴195を介する油液の流れを抑制する。ディスク193は、リザーバ室6から通路穴196を介する下室20への油液の流れを許容する一方で下室20からリザーバ室6への通路穴196を介する油液の流れを抑制する。
ディスク192は、ベースバルブ部材191とによって、シリンダ装置1の縮み行程において開弁して下室20からリザーバ室6に油液を流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ197を構成している。ディスク193は、ベースバルブ部材191とによって、シリンダ装置1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室20内に油液を流すサクションバルブ198を構成している。なお、サクションバルブ198は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室20に実質的に減衰力を発生させることなく液を流す機能を果たす。
ピストンロッド21が伸び側に移動する伸び行程においては、ピストン18の移動速度(以下、ピストン速度と称す)が遅い低速域(ピストンロッド21の初期ストローク域)では、上室19からの油液は、図2に示す通路穴37内および環状溝38内の通路、上流側オリフィス99を含む背圧室入口通路98、背圧室80およびリリーフバルブ111の下流側オリフィス113を介して下室20に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、伸び行程において、上記よりもピストン速度が速い中速域では、ディスクバルブ52が開き、上室19からの油液は、通路穴37内および環状溝38内の通路と、ディスクバルブ52とピストン18のバルブシート部47との間の通路100とを介して下室20に流れ、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率は、低速域よりもやや下がることになる。
ディスクバルブ52が開弁すると、同時に背圧室入口通路98の流路面積が増大して、背圧室80の背圧が上昇する。これにより、ピストン速度の上昇にともなって、ディスクバルブ52の開弁圧力が上昇して、減衰力が大きくなる。そして、背圧室80の圧力が所定圧力に達すると、リリーフバルブ111が開弁して背圧室80の圧力を、リリーフバルブ111とバルブシート部79との間の通路110を介して下室20側へリリーフする。これにより、ディスクバルブ52の開弁圧力、すなわち、伸び側減衰力の過度の上昇を防止することができる。
ピストンロッド21が縮み側に移動する縮み行程においては、ピストン18の移動速度が遅い低速域(ピストンロッド21の初期ストローク域)では、下室20からの油液は、通路穴39内および環状溝40内の通路、上流側オリフィス99Aを含む背圧室入口通路98A、背圧室80Aおよびリリーフバルブ141の下流側オリフィス113Aを介して上室19に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、縮み行程において、上記よりもピストン速度が速い中速域では、ディスクバルブ52Aが開き、下室20からの油液は、通路穴39内および環状溝40内の通路と、ディスクバルブ52Aとピストン18のバルブシート部49との間の通路100Aとを介して上室19に流れ、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率は、低速域よりもやや下がることになる。
ディスクバルブ52Aが開弁すると、同時に背圧室入口通路98Aの流路面積が増大して、背圧室80Aの背圧が上昇する。これにより、ピストン速度の上昇にともなって、ディスクバルブ52Aの開弁圧力が上昇して、減衰力が大きくなる。そして、背圧室80Aの圧力が所定圧力に達すると、リリーフバルブ141が開弁して背圧室80Aの圧力を、リリーフバルブ141とバルブシート部79Aとの間の通路110Aを介して上室19側へリリーフする。これにより、ディスクバルブ52Aの開弁圧力、すなわち、縮み側減衰力の過度の上昇を防止することができる。
シリンダ装置1は、このように、ディスクバルブ52,52Aの開弁によって背圧室入口通路98,98Aの流路面積を増加させて背圧室80,80Aの圧力を調整することにより、減衰力特性の設定の自由度を高めて、適切な減衰力を得ることができる。それとともに、伸び側および縮み側減衰力発生機構41,42の構造を簡素化および小型化することが可能となる。
また、シリンダ装置1は、ピストンロッド21の縮み行程時において、伸び側の減衰力発生機構41では、逆止弁106が開いて、下室20(伸び行程における下流側の室)の圧力を背圧室80に導入する。これにより、背圧室80の圧力が、ディスクバルブ52を開弁する方向に作用する流体力よりも大きくなり、伸び側のディスクバルブ52を確実に閉弁状態に維持することができ、安定した減衰力を得ることができる。同様に、シリンダ装置1は、ピストンロッド21の伸び行程時において、縮み側の減衰力発生機構42では、逆止弁106Aが開いて、上室19(縮み行程における下流側の室)の圧力を背圧室80Aに導入する。これにより、背圧室80Aの圧力が、ディスクバルブ52Aを開弁する方向に作用する流体力よりも大きくなり、縮み側のディスクバルブ52Aを確実に閉弁状態に維持することができ、安定した減衰力を得ることができる。その結果、背圧室入口通路98,98Aを大きくし、また、下流側オリフィス113,113Aを小さくすることが可能となり、減衰力特性の設定の自由度を高めることができる。
上記実施形態においては、背圧室80,80Aを有する減衰力発生機構41,42を伸び側および縮み側の双方に設けたが、伸び側および縮み側のいずれか一方の側のみに設けるようにしてもよい。さらに、減衰力発生機構41,42をピストンロッド21に設けたが、これに限らず、例えば、減衰力発生機構41,42をシリンダ2外に設け、ピストン18の摺動によって生じる油液の流れを通路を介してシリンダ2外の減衰力発生機構41,42に導くようにしてもよい。
次に、シリンダ装置1の製造方法の一部であるディスクバルブ52,52Aの製造方法について説明する。ディスクバルブ52,52Aは共通の部品であるため、ここでは、ディスクバルブ52を例にとり説明する。
ディスクバルブ52を製造する場合、まず、ディスク85を形成する。その場合、例えば、金属製の平板状の板材から、図5に示すような金型201を用いたプレスによる打ち抜きによりディスク85を形成する。金型201は、下型202および上型203を備えている。
下型202は、下方に凹む凹部210を有している。凹部210は、その底面211が、円形の平面である外側上面部212と、テーパ面である中間上面部213と、平面である内側上面部214とを有している。外側上面部212と中間上面部213と内側上面部214とは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。外側上面部212は内側上面部214よりも下側に配置されており、中間上面部213がこれらを繋いでいる。よって、下型202の底面211は、上方に凸の形状をなしている。
下型202には、内側上面部214の内側に中央抜穴216が形成されており、内側上面部214の中間上面部213側の部分に中間抜穴217が形成されている。中間抜穴217は内側上面部214の周方向に等間隔で複数(具体的には5箇所)形成されている。
上型203は、その下面221が、円形の平面である外側下面部222と、テーパ面である中間下面部223と、平面である内側下面部224とを有している。外側下面部222と中間下面部223と内側下面部224とは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。外側下面部222は内側下面部224よりも下側に配置されており、中間下面部223がこれらを繋いでいる。よって、上型203の下面221は、上方に凹の形状をなしている。
上型203には、内側下面部224の内側に下方に突出する中央凸部226が形成されており、内側下面部224の中間下面部223側の部分に下方に突出する中間凸部227が形成されている。中間凸部227は内側下面部224の周方向に等間隔で複数(具体的には5箇所)形成されている。
下型202と上型203とで、平板状の板材を打ち抜く打ち抜き工程を行う。すると、上型203の外周部と下型202の凹部210の内周部とがディスク85の外周部を形成する。また、このとき、上型203の中央凸部226の外周部と下型202の中央抜穴216の内周部とがディスク85の内周部を形成する。また、このとき、上型203の中間凸部227の外周部と下型202の中間抜穴217の内周部とが通路穴97を形成する。また、このとき、上型203の外側下面部222と下型202の外側上面部212とが着座板部93を形成する。また、このとき、上型203の中間下面部223と下型202の中間上面部213とがテーパ板部92を形成する。また、このとき、上型203の内側下面部224と下型202の内側上面部214とがベース板部91を形成する。
よって、この打ち抜き工程が、ディスク85に厚さ方向一側に段差状をなす段差部96を塑性変形により形成する工程となる。段差部96は、環状に折り曲げられている。この段差部96が形成されることにより、ディスク85は表裏を視認可能となる。すなわち、この打ち抜き工程が、ディスク85に、ディスク85の表裏を視認可能な段差部96を形成する視認部形成工程となっている。この視認部形成工程は、プレスによりディスク85を打ち抜く打ち抜き工程に含まれ、打ち抜きと同時に折り曲げが行われる。
次に、このようにして形成されたディスク85を多数纏めてバレル研磨機に投入して、打ち抜き時に発生したバリを取るバリ取り工程を行う。ディスク85は、バリ取り工程によって多数が混ぜられた状態になっても、段差部96を有しているため、表裏が識別可能であり、このときに識別した表裏は、打ち抜き工程後に識別した表裏と一致する。
次に、ディスク85に弾性シール部材86を加硫・接着する固着工程を行う。固着工程では、まず、図6に示すように、ディスク85に弾性シール部材86を加硫・接着するための金型231にディスク85をセットする。その際に、段差部96に基づいてディスク85の表裏判別を目視あるいはカメラ等の画像判定により行うことにより、ディスク85を金型231へのセットする際の表裏方向を所定の方向に統一することができる。言い換えれば、ディスク85の打ち抜き時の表裏方向(打ち抜きの前後方向)と、ディスク85に弾性シール部材86を加硫・接着する金型231へのセット時の表裏方向とを一定させることができる。
金型231は、下型232および上型233を有している。上型233は円筒型部235と押さえ金236とを有している。
下型232は、下方に凹む凹部240を有する有底円筒状をなしており、凹部240の径方向の中央部に円柱状の芯金239を有している。凹部240の底面241は、円形の平面である外側上面部242と、テーパ面である中間上面部243と、円形の平面である内側上面部244とを有している。外側上面部242と中間上面部243と内側上面部244とは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。外側上面部242は内側上面部244よりも下側に配置されており、中間上面部243がこれらを繋いでいる。よって、下型232の底面241は、上方に凸の形状をなしている。下型232には、径方向外側の壁面部246に、径方向外方に凹む円環状の外周形成面部247が形成されている。
上型233の円筒型部235は、下型232の凹部240内に嵌合する。円筒型部235は、その下面251が、円形の平面である外側下面部252と、テーパ面である外側中間下面部253と、テーパ面である内側中間下面部254と、平面である内側下面部255とを有している。外側下面部252と外側中間下面部253と内側中間下面部254と内側下面部255とは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。外側下面部252は、内側下面部255よりも上側にあり、外側中間下面部253は径方向内側ほど下側に位置するように傾斜している。内側中間下面部254は径方向内側ほど上側に位置するように傾斜している。上型233には、外側下面部252に開口する材料供給通路261が形成されている。
上型233の押さえ金236は、円筒状であり、円筒型部235と下型232の芯金239との間に挿入される。
固着工程では、まず、ディスク85を、下型232の凹部240と芯金239との間にセットする。その際に、ディスク85を段差部96が上側に凸の状態でセットする。すると、ディスク85は、内周部が芯金239に当接することによって径方向に位置決めされる。また、ディスク85は、着座板部93が外側上面部242に載置され、テーパ板部92が中間上面部243に載置され、ベース板部91が内側上面部244に載置される。
次に、円筒型部235を下型232にセットする。すると、円筒型部235は、内側中間下面部254がテーパ板部92に当接し、内側下面部255がベース板部91に当接する。これにより、下型232の底面241と円筒型部235の下面251とで、ディスク85のテーパ板部92の径方向のベース板部91側の部分およびベース板部91の径方向のテーパ板部92側の部分を軸方向に挟持する。これと並行して、押圧部材236を下型232にセットする。すると、押圧部材236は、ベース板部91に当接する。これにより、下型232の底面241と押圧部材236の下面とで、ディスク85のベース板部91の径方向中間部を軸方向に挟持する。
このように金型231にディスク85をインサートし、金型231を型締めした状態で、上型233の円筒型部235の材料供給通路261から溶融状態のゴム材料を供給する。これにより、ディスク85の着座板部93上と、テーパ板部92の径方向の着座板部93側の部分上と、下型232の外周形成面部247と、上型233の外側下面部252および外側中間下面部253とで囲まれて形成されたキャビティ265にゴム材料が充填される。そして、キャビティ265内でゴム材料を加硫、硬化させる。すると、弾性シール部材86は、ディスク85に接着されるとともに、複数の環状突出部87を有する外周面が外周形成面部247で成形され、軸方向のディスク85とは反対側の端面が外側下面部252で成形され、内周面が外側中間下面部253で成形される。
以上が、段差部96で表裏方向を規定してディスク85に弾性シール部材86を固着する固着工程である。よって、ディスク85に弾性シール部材86を固着する工程は、ディスク85に、ディスク85の表裏を視認可能な段差部96を形成する視認部形成工程と、段差部96で表裏方向を規定してディスク85に弾性シール部材86を固着する固着工程と、を含む。
ここで、下型232の内側上面部244は外側上面部242に対して上型233の方向にあり、また、上型233の内側中間下面部254は内側下面部255に対して下型232の方向にある。このことにより、例えばディスクバルブ52を上記とは逆に段差部96が下方に凸の状態で下型232にセットした場合、上型233が所定の位置にセットされなくなる。これを検知することで、固着工程時において表裏が正しくないディスク85に弾性シール部材86を加硫・接着することを規制することができる。
なお、ディスク85の外周部を凹部240の壁面部246に当接させることで、ディスク85の径方向の位置決めをすることも可能である。この場合、芯金239を省略することもできる。芯金239があると、ディスク85の外周部と壁面部246との間に径方向の隙間を形成した上で、ディスク85の径方向の位置決めをすることができる。よって、ディスク85の外周部にも弾性シール部材86を成形することができるので、より望ましい。
すなわち、下型232の凹部240の径方向の中央部に立設された芯金239が、ディスク85の内周部に挿通されることにより、ディスク85を径方向に位置決めすると、ディスク85の外径よりもやや大径に形成された、凹部240の壁面部246とディスク85との間に、ディスク85の外周部を覆うように弾性シール部材86が形成されて、弾性シール部材86がディスク85の外周部にも接着されることになる。
上記した特許文献1に記載のものは、ディスクバルブの背面に、ディスクバルブに閉弁方向に力を作用させる背圧室を設け、制御の自由度を高めたシリンダ装置が開示されている。このようなシリンダ装置に使用されるディスクバルブには、特許文献1に記載のように、ディスクの外周側に弾性シール部材を設けたものや、ディスクの内周側に弾性シール部材を設けたものがある。このようなディスクバルブを製造する場合に、ディスクに表裏の区別がないと、ディスクの厚さ方向に対し、弾性シール部材の固着方向を一定させずに、ディスクに弾性シール部材を固着してしまうことになる。すると、ディスクバルブの特性が安定せず、シリンダ装置に性能のばらつきを生じてしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態のシリンダ装置1の製造方法は、シリンダ装置1に含まれるディスクバルブ52のディスク85に弾性シール部材86を固着する工程が、ディスク85に、ディスク85の表裏を視認可能な段差部96を形成する視認部形成工程と、段差部96で表裏方向を規定してディスク85に弾性シール部材86を固着する固着工程と、を含んでいる。これにより、ディスク85の厚さ方向に対し、弾性シール部材86の固着方向を一定させてディスク85に弾性シール部材86を固着することができる。よって、ディスクバルブ52の特性を安定させることができ、シリンダ装置1の性能のばらつきを抑制することができる。
また、視認部形成工程は、プレスによりディスク85の内周部、外周部および複数の通路穴97を打ち抜く打抜工程に含まれるため、固着工程では、プレスによって形成された段差部96で表裏方向を規定してディスク85に弾性シール部材86を固着することになる。したがって、プレスによるディスク85の打ち抜きの方向に対し、段差部96の方向を一定させることができる。その結果、プレスによるディスク85の打ち抜きの方向に対し、弾性シール部材86の固着方向を一定させてディスク85に弾性シール部材86を固着することができる。よって、ディスクバルブ52の特性を安定させることができ、シリンダ装置1の性能のばらつきを抑制することができる。
また、プレスによりディスク85の内周部、外周部および通路穴97を打ち抜く際に段差部96を形成することができるため、プレスの工程数を減らすことができる。なお、プレスによりディスク85を打ち抜く打抜工程に対し、この打抜工程とディスク85の表裏方向が変わらない一連のプレス工程で段差部96を形成するようにしても良い。言い換えれば、同一のディスク85に対して、打抜工程での打ち抜き方向と、視認部形成工程でのプレス方向とを規定する。例えば、プレスによりディスク85の内周部、外周部および通路穴97を打ち抜く打抜工程を行った後、ディスク85に、このときの打ち抜き方向に対し規定されたプレス方向で行われるプレス工程で、段差部96を形成するようにしても良い。
本実施形態のシリンダ装置1は、バルブ機構101の環状のディスクバルブ52が、環状のディスク85と、ディスク85の厚さ方向一側に固着される環状の弾性シール部材86とを有しており、弾性シール部材86がディスクバルブ52の表裏で異なる形状となっている。そして、ディスク85自体にも表裏を視認可能な段差部96が形成されている。これにより、ディスク85の厚さ方向に対し、弾性シール部材86の固着方向を一定させてディスク85に弾性シール部材86を固着することができる。よって、ディスクバルブ52の特性を安定させることができ、シリンダ装置1の性能のばらつきを抑制することができる。
ディスク85に段差部96を形成することでディスク85の表裏を視認可能とするため、ディスク85を表裏を視認可能な形状に容易に形成することができる。したがって、製造コストを低減することができる。また、段差部96は、プレスによる打ち抜きと同時形成や、打ち抜きと一連の工程での形成が可能であるため、さらに製造コストを低減することができる。
なお、以上においては、ディスクバルブ52を例にとり説明したが、共通部品であるディスクバルブ52Aも同様である。
「変形例1」
ディスクバルブ52にかえて、図7,図8に示す変形例1のディスクバルブ52Bを用いても良い。ディスクバルブ52Bは、環状であり、金属製の環状のディスク85Bと、ディスクバルブ52と同様の弾性シール部材86とからなっている。ディスク85Bは、内径および外径は、ディスク85と同等になっている。
ディスク85Bは、ディスク85と同等の内径および外径を有する一定厚さの有孔円形平板状のベース板部91Bと、ベース板部91Bの径方向の中間所定位置に設けられ、ベース板部91Bからベース板部91Bの厚さ方向に突出する突起部96B(視認部)とを有している。突起部96Bは、ディスク85Bの周方向に等間隔で複数(具体的には5箇所)形成されている。一枚のディスク85Bにおいて全部の突起部96Bが厚さ方向同側に突出している。
ディスク85Bには、ディスク85と同様の複数(具体的には5箇所)の通路穴97が形成されている。突起部96Bと通路穴97とがディスク85Bの周方向において交互に設けられている。突起部96Bと通路穴97とはディスク85Bの径方向の位置を合わせている。突起部96Bは、ディスク85Bの周方向に隣り合う通路穴97と通路穴97との間の中央位置に形成されている。
ベース板部91Bは、厚さ方向一側が、バルブシート部47に着座する着座面91aBとなっており、厚さ方向他側が、背圧室80を形成する背圧室形成面91bBとなっている。突起部96Bは、背圧室形成面91bBから着座面91aBとは反対側に突出している。突起部96Bは、着座面91aBから背圧室形成面91bB側に凹んでいる。複数の突起部96Bは、ディスク85Bの中心軸線から等距離の位置に形成されている。
ディスク85Bは、それ自体が、突起部96Bによって表裏を視認可能となっている。例えば、ディスク85Bの突起部96Bが突出する側を表側とし、ディスク85Bの突起部96Bが凹む側を裏側とすれば、突起部96Bの凹凸で表裏を識別可能となっている。よって、ディスク85Bには、ディスク85B自体に表裏を視認可能な、ディスク85Bの厚さ方向に突出する突起部96Bが形成されている。
弾性シール部材86は、ディスク85Bの突起部96Bが突出する表側に固着されている。弾性シール部材86は、ディスク85Bのベース板部91Bの突起部96Bが突出する表側の背圧室形成面91bBに固着されている。弾性シール部材86は、突起部96Bおよび通路穴97よりも、ディスク85Bの径方向の外側に固着されている。
ディスクバルブ52Bは、弾性シール部材86の有無によって表裏を視認可能となっている。また、ディスクバルブ52Bは、ディスク85Bの突起部96Bによっても表裏を視認可能となっている。
プレスによりディスク85Bの内周部、外周部および通路穴97を打ち抜く打抜工程とディスク85Bの表裏方向が変わらない一連のプレス工程で突起部96Bを形成する。言い換えれば、同一のディスク85Bに対して、打抜工程での打ち抜き方向と、視認部形成工程でのプレス方向とが規定されることになる。例えば、プレスによりディスク85Bの内周部、外周部および通路穴97を打ち抜く打抜工程を行った後、ディスク85Bに、このときの打ち抜き方向に対し規定されたプレス方向で行われるプレス工程で、突起部96Bを形成する。このように、突起部96Bが形成されることにより、ディスク85Bは表裏を視認可能となる。すなわち、突起部96Bを形成するこのプレス工程が、ディスク85Bに、ディスク85Bの表裏を視認可能な突起部96Bを形成する視認部形成工程となっている。
そして、バリ取り工程の後、ディスク85Bに弾性シール部材86を加硫・接着する固着工程を行う。その際に、突起部96Bに基づいてディスク85Bの表裏判別を目視あるいはカメラ等の画像判定により行う。これによって、ディスク85Bを弾性シール部材86を加硫・接着するための金型へのセットする際の表裏方向を所定の方向に統一することができる。言い換えれば、ディスク85Bの打ち抜き時の表裏方向と、弾性シール部材86の固着用の金型へのセット時の表裏方向とを一定させることができる。固着工程では、突起部96Bで表裏方向を規定してディスク85Bに弾性シール部材86を固着する。よって、ディスク85Bに弾性シール部材86を固着する工程は、ディスク85Bに、ディスク85Bの表裏を視認可能な突起部96Bを形成する視認部形成工程と、突起部96Bで表裏方向を規定してディスク85Bに弾性シール部材86を固着する固着工程と、を含む。
変形例1のディスクバルブ52Bにおいても、ディスク85Bの表裏方向に対し、弾性シール部材86の固着方向を一定させてディスク85Bに弾性シール部材86を固着することができるため、ディスクバルブ52Bの特性を安定させることができ、シリンダ装置1の性能のばらつきを抑制することができる。上記したディスクバルブ52Aにかえて、この変形例1のディスクバルブ52Bを用いることも可能である。
「変形例2」
ディスクバルブ52にかえて、図9,図10に示す変形例2のディスクバルブ52Cを用いても良い。ディスクバルブ52Cは、環状であり、金属製の環状のディスク85Cと、ディスクバルブ52と同様の弾性シール部材86とからなっている。ディスク85Cは、内径および外径が、ディスク85と同等になっている。
ディスク85Cは、ディスク85と同等の内径および外径を有する一定厚さの有孔円形平板状のベース板部91Cと、ベース板部91Cの径方向中間の所定位置に設けられ、ベース板部91Cからベース板部91Cの厚さ方向に突出する突条部96C(視認部)とを有している。突条部96Cは、ディスク85Cの周方向に全周にわたって連続する円環状である。
ディスク85Cには、ディスク85と同様の複数(具体的には5箇所)の通路穴97が形成されている。突条部96Cは、ディスク85Cの径方向における複数の通路穴97の外側に形成されている。
ベース板部91Cは、厚さ方向一側が、バルブシート部47に着座する着座面91aCとなっており、厚さ方向他側が、背圧室80を形成する背圧室形成面91bCとなっている。突条部96Cは、背圧室形成面91bCから着座面91aCとは反対側に突出している。突条部96Cは、着座面91aCから背圧室形成面91bC側に凹んでいる。突条部96Cは、ディスク85Cの中心軸線を中心とする円形状に形成されている。
ディスク85Cは、それ自体が、突条部96Cによって表裏を視認可能となっている。例えば、ディスク85Cの突条部96Cが突出する側を表側とし、ディスク85Cの突条部96Cが凹む側を裏側とすれば、突条部96Cの凹凸で表裏を識別可能となっている。よって、ディスク85Cには、ディスク85C自体に表裏を視認可能な、ディスク85Cの厚さ方向に突出する突条部96Cが形成されている。
弾性シール部材86は、ディスク85Cの突条部96Cが突出する表側に固着されている。弾性シール部材86は、ディスク85Cのベース板部91Cの突条部96Cが突出する表側の背圧室形成面91bCに固着されている。弾性シール部材86は、突条部96Cよりも、ディスク85Cの径方向の外側に固着されている。
ディスクバルブ52Cは、弾性シール部材86の有無によって表裏を視認可能となっている。また、ディスクバルブ52Cは、ディスク85Cの突条部96Cによっても表裏を視認可能となっている。
プレスによりディスク85Cの内周部、外周部および通路穴97を打ち抜く打抜工程とディスク85Cの表裏方向が変わらない一連のプレス工程で突条部96Cを形成する。言い換えれば、同一のディスク85Cに対して、打抜工程での打ち抜き方向と、視認部形成工程でのプレス方向とが規定されることになる。例えば、プレスによりディスク85Cの内周部、外周部および通路穴97を打ち抜く打抜工程を行った後、ディスク85Cに、このときの打ち抜き方向に対し規定されたプレス方向で行われるプレス工程で、突条部96Cを形成する。このように、突条部96Cが形成されることにより、ディスク85Cは表裏を視認可能となる。すなわち、突条部96Cを形成するこのプレス工程が、ディスク85Cに、ディスク85Cの表裏を視認可能な突条部96Cを形成する視認部形成工程となっている。
そして、バリ取り工程の後、ディスク85Cに弾性シール部材86を加硫・接着する固着工程を行う。その際に、突条部96Cに基づいてディスク85Cの表裏判別を目視あるいはカメラ等の画像判定により行う。これにより、ディスク85Cを弾性シール部材86を加硫・接着するための金型へのセットする際のディスク85Cの表裏方向を所定の方向に統一することができる。言い換えれば、ディスク85Cの打ち抜き時の表裏方向と、弾性シール部材86の固着用の金型へのセット時の表裏方向とを一定させることができる。固着工程では、突条部96Cで表裏方向を規定してディスク85Cに弾性シール部材86を固着する。よって、ディスク85Cに弾性シール部材86を固着する工程は、ディスク85Cに、ディスク85Cの表裏を視認可能な突条部96Cを形成する視認部形成工程と、突条部96Cで表裏方向を規定してディスク85Cに弾性シール部材86を固着する固着工程と、を含む。
変形例2のディスクバルブ52Cにおいても、ディスク85Cの表裏方向に対し、弾性シール部材86の固着方向を一定させてディスク85Cに弾性シール部材86を固着することができるため、ディスクバルブ52Cの特性を安定させることができ、シリンダ装置1の性能のばらつきを抑制することができる。上記したディスクバルブ52Aにかえて、この変形例2のディスクバルブ52Cを用いることも可能である。
なお、ディスクバルブ52,52A,52B,52Cは、弾性シール部材86が表と裏とで異なる形状であれば、ディスク85,85A,85B,85Cの厚さ方向両側に固着される環状の弾性シール部材86を有していても良い。すなわち、ディスクバルブ52,52A,52B,52Cは、ディスク85,85A,85B,85Cと、ディスク85,85A,85B,85Cの少なくとも厚さ方向一側に固着される環状の弾性シール部材86とを有していれば良い。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、流体が封入されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されるピストンと、該ピストンに連結されるピストンロッドと、前記ピストンの摺動により生じる流体の流れを規制して圧力差を生じさせるバルブ機構と、を備え、前記バルブ機構が、環状のディスクと、該ディスクの少なくとも厚さ方向一側に固着される環状の弾性シール部材と、を有する環状のディスクバルブを含む、シリンダ装置の製造方法であって、前記ディスクに前記弾性シール部材を固着する工程は、前記ディスクに、該ディスクの表裏を視認可能な視認部を形成する視認部形成工程と、前記視認部で前記ディスクの表裏方向を規定して前記ディスクに前記弾性シール部材を固着する固着工程と、を含む。これにより、性能のばらつきを抑制することが可能となる。
第2の態様は、第1の態様において、前記視認部形成工程は、プレスにより前記ディスクを打ち抜く打抜工程に含まれる。
第3の態様は、第1の態様において、プレスにより前記ディスクを打ち抜く打抜工程を含み、前記視認部形成工程は、前記視認部をプレスにより形成する工程であり、前記ディスクに対して、前記打抜工程での打ち抜き方向と、前記視認部形成工程でのプレス方向とが規定されている。
第4の態様は、流体が封入されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されるピストンと、該ピストンに連結されるピストンロッドと、前記ピストンの摺動により生じる流体の流れを規制して圧力差を生じさせるバルブ機構と、を備え、前記バルブ機構が、環状のディスクと、該ディスクの少なくとも厚さ方向一側に固着される環状の弾性シール部材と、を有する環状のディスクバルブを含む、シリンダ装置であって、前記ディスクには、該ディスク自体に表裏を視認可能な視認部が形成されている。これにより、性能のばらつきを抑制することが可能となる。
第5の態様は、第4の態様において、前記視認部は、前記ディスクの厚さ方向に段差状をなす環状の段差部である。
第6の態様は、第4の態様において、前記視認部は、前記ディスクの厚さ方向に突出する突起部である。
第7の態様は、第4の態様において、前記視認部は、前記ディスクの厚さ方向に突出する突条部である。