以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
図1は、実施形態の蒸気滅菌器1の概略構成を示す系統図である。図1に示されるように、実施形態の蒸気滅菌器1は、ガーゼ、メスなどの医療器具に代表される被滅菌物100を収納可能なチャンバ10を備えている。チャンバ10は、開閉可能な開閉蓋11を含んでいる。開閉蓋11は、チャンバ10の側部に装着されている。開閉蓋11を開放することにより、チャンバ10内への被滅菌物100の搬出入が可能となる。開閉蓋11を閉じることにより、チャンバ10の内部は密閉状態に保持される。
チャンバ10の内底部には、滅菌ヒータ12が設置されている。滅菌ヒータ12は、チャンバ10の底面に沿って延びるように配置されている。滅菌ヒータ12は、チャンバ10内に供給された水を加熱して、蒸気を発生させる。蒸気滅菌器1は、滅菌ヒータ12の加熱により発生した水蒸気で、被滅菌物100を滅菌する。
水は、滅菌処理のためにチャンバ10内に供給される液体の一例である。水は、浄水(水道水)、井戸水、蒸留水または精製水であってもよい。チャンバ10内に供給される液体は、水に限られず、生理食塩水などの水溶液であってもよい。
滅菌ヒータ12の上方には、被滅菌物100を載置可能な載置台13が、チャンバ10の底面に対して略平行に設けられている。
チャンバ10の天井面に、乾燥ヒータ14が取り付けられている。チャンバ10内で被滅菌物100が滅菌処理された後に、チャンバ10の内部を乾燥させる乾燥処理が行なわれる。乾燥処理の際に、乾燥ヒータ14を起動してチャンバ10内の空気を加熱することで、チャンバ10内の湿度を低下させて効率的に乾燥処理を行なうことが可能とされている。
チャンバ10の、開閉蓋11と対向する内側面には、チャンバ10内の温度を検出する温度センサ16が取り付けられている。温度センサ16は、チャンバ10内の気体の温度を計測する。
蒸気滅菌器1は、貯水槽20を備えている。貯水槽20は、チャンバ10内に供給される水を貯留する。チャンバ10から排出される水は、貯水槽20へと戻る。貯水槽20は、チャンバ10から排出される水を貯留する。
チャンバ10と貯水槽20とは、給液経路30と、排蒸経路40と、オーバーフロー経路50と、排気経路70とによって連通されている。給液経路30は、貯水槽20からチャンバ10へ水を供給するための経路である。排蒸経路40は、チャンバ10から貯水槽20へ水および水蒸気を排出するための経路である。オーバーフロー経路50は、チャンバ10内の設定水位を超える量の水をチャンバ10から貯水槽20へ排出するための経路である。排気経路70は、チャンバ10から貯水槽20へ、水蒸気、空気などの気体を排出するための経路である。
給液経路30は、給液管31と、給液ポンプ32と、給液電磁弁33とを含んでいる。給液管31の一端は貯水槽20の底部の取水口に連結され、他端はチャンバ10の底部の連結部17に連結されている。給液ポンプ32は、給液管31の経路上の上流側(貯水槽20に近い側)に設けられている。給液電磁弁33は、給液管31の経路上の下流側(チャンバ10に近い側)に設けられている。
給液ポンプ32は、貯水槽20からチャンバ10へ向かって流れる方向に水を移送して、チャンバ10内へ水を供給する。給液ポンプ32は、実施形態における給液部に相当する。給液電磁弁33は、給液ポンプ32に対して給液経路30の下流側に配置されており、給液経路30を開閉する。給液電磁弁33は、貯水槽20からチャンバ10へ水が流れ得る開状態と、貯水槽20からチャンバ10への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
排蒸経路40は、排蒸管41と、排蒸電磁弁43とを含んでいる。排蒸管41は、チャンバ10から排出される水および水蒸気が流れるための経路である。排蒸管41の一端は、チャンバ10の底部の連結部17に連結されている。排蒸管41の他端は、貯水槽20に連結されている。
排蒸管41には、排蒸電磁弁43が設けられている。排蒸電磁弁43は、排蒸経路40を開閉する。排蒸電磁弁43は、チャンバ10から貯水槽20へ向かって流体が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への流体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
オーバーフロー経路50は、オーバーフロー管51と、オーバーフロー電磁弁53と、オーバーフローセンサ54とを含んでいる。オーバーフロー管51は、管状の部材である。オーバーフロー管51は、チャンバ10に接続されている。オーバーフロー管51の一端は、チャンバ10内に配置されている。オーバーフロー管51の一端は、チャンバ10の下部に開口している。オーバーフロー管51は、チャンバ10の底面から上方に立ち上がる立上り部52を有している。立上り部52の上端は、オーバーフロー管51の一端を構成している。
オーバーフロー管51の他端は、貯水槽20に接続されている。オーバーフロー管51は、チャンバ10と貯水槽20とを連通している。オーバーフロー管51を経由して流れる水は、貯水槽20内へ流出する。
オーバーフロー電磁弁53とオーバーフローセンサ54とは、チャンバ10外に配置されている。オーバーフロー電磁弁53は、オーバーフロー管51の経路上の上流側(チャンバ10に近い側)に設けられている。オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51の経路上の下流側(貯水槽に近い側)に設けられている。
オーバーフロー電磁弁53は、オーバーフローセンサ54に対してオーバーフロー管51の上流側に配置されており、オーバーフロー経路50を開閉する。オーバーフロー電磁弁53は、チャンバ10から貯水槽20へ水が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
オーバーフローセンサ54は、オーバーフロー管51を流れる水の流動を検知する。オーバーフローセンサ54は、チャンバ10からオーバーフロー管51へ流入してオーバーフロー管51を経由して貯水槽20へ向かって流れる、水の流動を検知する。オーバーフローセンサ54は、たとえば、オーバーフローセンサ54を通過する水の流れによって移動するフロートユニットを有する仕様のセンサであってもよい。またはオーバーフローセンサ54は、電極式レベルセンサ、静電容量センサ、光センサなどであってもよい。
排気経路70は、排気管71と、排気電磁弁74とを含んでいる。排気管71の一端は、チャンバ10に接続されている。排気管71の他端は、オーバーフロー管51に接続されている。排気管71には、排気電磁弁74が設けられている。排気電磁弁74は、排気経路70を開閉する。排気電磁弁74は、チャンバ10から貯水槽20へ向かって流体が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への流体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
排気経路70は、分岐管75と安全弁76とをさらに含んでいる。分岐管75は、排気管71に接続された一端と、安全弁76に接続された他端とを有している。安全弁76は、貯水槽20に設けられている。チャンバ10内の圧力が過剰に上昇すると、安全弁76が開き、チャンバ10内の気体が排気管71、分岐管75および安全弁76を順に経由して、貯水槽20内に排出される。これによりチャンバ10内の圧力が低下し、チャンバ10内の圧力が適切な範囲に維持される。
蒸気滅菌器1はまた、チャンバ10内に空気を送り込む給気経路60を備えている。給気経路60は、一端がチャンバ10に連結された給気管61と、給気管61の他端に取り付けられたエアフィルタ62と、給気管61の途中に設けられたエアポンプ63および給気電磁弁64とを含んでいる。エアフィルタ62は、給気管61への空気の取り込み口として機能する。エアフィルタ62を経由して取り込まれた空気は、給気管61の内部を流通する。エアポンプ63は、エアフィルタ62からチャンバ10へ向かう空気の流れを発生して、チャンバ10内に空気を供給する。エアポンプ63は、実施形態における給気部に相当する。
給気電磁弁64は、エアポンプ63に対し下流側(チャンバ10に近い側)の、給気管61の途中に設けられている。給気電磁弁64は、給気経路60を開閉する。給気電磁弁64は、給気経路60を経由してチャンバ10内へ空気が流れ得る開状態と、エアポンプ63からチャンバ10への空気の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
蒸気滅菌器1は、圧力計68と、圧力管69とをさらに備えている。圧力管69は、給気管61に接続された一端と、圧力計68に接続された他端とを有している。チャンバ10内の空気は、給気管61および圧力管69を経由して、圧力計68に到達する。圧力計68は、チャンバ10内の気体の圧力を計測する。
図2は、蒸気滅菌器1の電気的構成を示すブロック図である。図2に示されるように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部80を備えている。制御部80は、温度センサ16およびオーバーフローセンサ54に電気的に接続されている。制御部80は、温度センサ16からチャンバ10の内部の温度に係る検出値の入力を受ける。制御部80は、オーバーフローセンサ54から、オーバーフロー管51を流れる水の流動の有無に係る検出値の入力を受ける。
制御部80はまた、入力部81を有している。蒸気滅菌器1を操作する操作者は、滅菌温度、滅菌時間および乾燥時間などの設定値を、入力部81から制御部80に入力する。制御部80はさらに、所定時間を計測するタイマ82を有している。タイマ82は、被滅菌物100の滅菌時間および乾燥時間を制御するために使用され、また、チャンバ10内への給水のタイミングの制御のために使用される。
制御部80は、蒸気滅菌器1の各制御ステップに対応して、滅菌ヒータ12、乾燥ヒータ14、排気電磁弁74、給液電磁弁33、給気電磁弁64、オーバーフロー電磁弁53、排蒸電磁弁43、給液ポンプ32およびエアポンプ63などの、蒸気滅菌器1に含まれる各機器に制御信号を出力する。制御部80からの制御信号を受けて各機器が適切に動作することにより、蒸気滅菌器1による被滅菌物100の滅菌処理が確実に行なわれる。
以上の構成を備えている蒸気滅菌器1の動作について、以下に説明する。図3は、蒸気滅菌器1の動作の概略を示すフローチャートである。図4は、蒸気滅菌器1の各機器の動作を示すタイミングチャートである。図3に示されるフローチャート、および図4に示されるタイミングチャートに従って、蒸気滅菌器1による被滅菌物100の滅菌処理のための各工程のうち、給水工程における蒸気滅菌器1の動作について、詳細に説明する。
図4に示されるように、時刻T0において蒸気滅菌器1の電源をオンにし、蒸気滅菌器1を起動する。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、給水を開始する以前に、チャンバ10の開閉蓋11を開放して、被滅菌物100を載置台13に載せ置き、被滅菌物100をチャンバ10内に収納する。操作者は、蒸気滅菌器1の電源をオンにするよりも前に、被滅菌物100をチャンバ10内に収納してもよい。
図5は、チャンバ10への給液開始前の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す系統図である。蒸気滅菌器1を電源オフから電源オンに切り替えることにより、図4,5に示されるように、排気電磁弁74がオンになり、開状態となる。本実施形態において、給液電磁弁33、排蒸電磁弁43、オーバーフロー電磁弁53、給気電磁弁64および排気電磁弁74はいずれも、オフ(非通電)状態で閉状態を保ち、オン(通電)状態で開く、常時閉仕様の電磁弁である。
貯水槽20の内部空間は、大気圧に保たれている。排気電磁弁74を開くことにより、チャンバ10の内部空間と貯水槽20の内部空間とが、排気管71およびオーバーフロー管51を介して、互いに連通する。これにより、チャンバ10の内部空間が、貯水槽20と同じ大気圧に調整される。チャンバ10内の空気圧と外気圧とが一定にされることにより、チャンバ10の開閉蓋11を容易に開閉できるようになる。
時刻T1において、給水工程が開始される。給水工程においては、まず図3に示されるステップS1において、チャンバ10への給気が開始される。図6は、チャンバ10への給気中の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す系統図である。図6および後述する図中の各経路に示す矢印は、各経路を流れる流体(水、水蒸気または空気)の流れを示している。
図4,6に示されるように、排気電磁弁74がオンからオフに切り換わり閉状態となる。給気電磁弁64およびオーバーフロー電磁弁53が、オフからオンに切り換わり開状態となる。エアポンプ63が起動される。時刻T1の時点では、給液ポンプ32は起動しておらず、チャンバ10へ水が供給されてはいない。制御部80は、給液ポンプ32の運転を開始してチャンバ10への水の移送を開始する前に、エアポンプ63の運転を開始して、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給を開始する。
前回の滅菌処理が中断された場合など、チャンバ10内に滅菌処理に必要な量以上の水が貯留されている場合に、チャンバ10への給水前にチャンバ10へ空気を供給することによって、過剰な水がチャンバ10から排出される。また、チャンバ10内に貯留されている水がわずかであっても、チャンバ10に供給される空気がオーバーフロー管51を経由してチャンバ10から排出されることで、オーバーフロー管51内、特にチャンバ10とオーバーフローセンサ54との間に留まっている水が、オーバーフロー管51から貯水槽20に送られる。
図4に示されるように、チャンバ10内の水、またはオーバーフロー管51内に留まっている水が、オーバーフローセンサ54を通過することにより、時刻Taにおいて、オーバーフローセンサ54が水の流動を検出して、オーバーフローセンサ54がオンに切り換わっている。時刻T1においてエアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給を開始した後、所定時間が経過するまでは、オーバーフローセンサ54の検出結果にかかわらず、給液ポンプ32の停止が継続され、またエアポンプ63の運転が継続される。
本実施形態の場合、時刻T1から時刻T2までの時間がステップS2における所定時間であり、時刻T1と時刻T2との間の時刻Taにおいてオーバーフローセンサ54がオフからオンに切り換わっても、給液ポンプ32およびエアポンプ63の運転状態はそのまま維持される。時刻T1から時刻T2までの時間中、給液ポンプ32によるチャンバ10への水の移送の停止が継続され、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給が継続される。
図3に示されるステップS2において、給気開始から所定時間が経過したか否かの判断がなされる。実施形態の場合、時刻T2になるまで、ステップS2においてNOと判断され、ステップS2の判断が繰り返される。時刻T2になると、ステップS2においてYESと判断されてステップS3に進み、オーバーフローセンサ54がオフであるか否かの判断がなされる。
オーバーフローセンサ54がオンであると判断された場合(ステップS3においてNO)、ステップS4に進み、所定時間が経過したか否かが判断される。ステップS4における所定時間は、ステップS2の所定時間(時刻T1から時刻T2までの時間)とは異なる時間である。ステップS4における所定時間は、給気開始時刻(T1)を起点としてもよく、ステップS2の所定時間が経過した時刻(T2)を起点としてもよい。ステップS4における所定時間は、ステップS2の所定時間の倍の時間であってもよい。
ステップS4の判断において、所定時間が未だ経過していなければ(ステップS4においてNO)、ステップS3に戻り、オーバーフローセンサ54がオフであるか否かの判断が再度行なわれる。ステップS3においてオーバーフローセンサ54がオンであると判断され、オーバーフロー経路50を通る水の流れがある場合に、排水が完了するまでの待ち時間とされる所定時間が設定され、この所定時間の間はエラーとして処理されない。
ステップS4において、所定時間が経過したと判断されれば(ステップS4においてYES)、ステップS5に進む。所定時間経過してもオーバーフローセンサ54がオフにならなければ、オーバーフローセンサ54自体が故障しているか、または、異物噛み込みなどの故障によって給液電磁弁33が開状態のままとなっている可能性があるので、エラーを報知して滅菌処理を終了する。
実施形態では、図4に示されるように、所定時間が経過する前の時刻T3において、オーバーフローセンサ54がオフになる。オーバーフローセンサ54のオフが検出されると(ステップS3においてYES)、ステップS6に進み、チャンバ10への給液が開始される。図7は、チャンバ10への給液中の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す系統図である。図4,7に示されるように、時刻T3でオーバーフローセンサ54がオフになると、給液電磁弁33がオフからオンに切り換えられて開状態とされ、給液ポンプ32が起動される。給液ポンプ32による水の移送が開始されて、貯水槽20からチャンバ10へ水が供給される。
このときオーバーフロー電磁弁53は開状態のままとされている。チャンバ10内の空気は、オーバーフロー経路50を経由して、チャンバ10から排出される。そのため、チャンバ10の内圧が上昇してチャンバ10への給水が妨げられることが回避されている。
給液が開始されてオーバーフローセンサ54がオンになると(ステップS7においてYES)、ステップS8に進み、チャンバ10への給液が一時停止する。図4に示されるように、時刻Tbでオーバーフローセンサ54がオンになり、オーバーフロー管51を流れる水の流動が検出されると、給液電磁弁33がオンからオフに切り換えられて閉状態とされ、給液ポンプ32が停止される。これにより、給液ポンプ32による水の移送が一旦停止され、貯水槽20からチャンバ10への水の供給が停止される。このとき、給液電磁弁33をオンのままで開状態とし、給液ポンプ32は停止とするようにしてもよい。
本来、チャンバ10への給水中にオーバーフローセンサ54がオンになると、チャンバ10内に貯留されている水が立上り部52の上端に到達して過剰な量の水がオーバーフロー管51に流入したものと判断され、滅菌処理に必要な量以上の水がチャンバ10に既に供給されたと判断されて、チャンバ10への給水が停止される。他方、前回の滅菌処理が中断された場合など、滅菌ヒータ12が加熱されたままの高温の状態でチャンバ10への給水が開始されると、滅菌ヒータ12の熱により水蒸気が発生する。この水蒸気がオーバーフロー経路50を流れるときに、水蒸気の流動を検出することでオーバーフローセンサ54がオンになる可能性がある。
そのため、オーバーフローセンサ54がオンになって給液を一時停止した後、給液を再開するようにする。ステップS8で給液が一時停止されると、ステップS9に進み、オーバーフローセンサ64がオフであるか否かの判断が行われる。図3に示されるように、オーバーフローセンサ54がオフになるまで、ステップS9の判断が繰り返される。オーバーフローセンサ54のオフが検出されると(ステップS9においてYES)、ステップS10に進み、チャンバ10への給液が再開される。なお。ステップS9での判断は行わず、S8で給液が停止された後、所定時間経過するとステップS10に進み、チャンバ10への給液が再開されるようにしてもよい。
ステップS10において給液が再開されると、ステップS11に進み、オーバーフローセンサ54がオンであるか否かが判断される。図3に示されるように、オーバーフローセンサ54がオンになるまで、ステップS11の判断が繰り返される。図4,7に示されるように、オーバーフローセンサ54がオンになるまで、給液電磁弁33がオンのままとされ、給液ポンプ32の運転が継続される。これにより、貯水槽20からチャンバ10への水の供給が続けられる。
オーバーフローセンサ54がオンになると(ステップS11においてYES)、ステップS12に進み、給液が終了する。図8は、チャンバ10への給液停止後の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す系統図である。図4,8に示されるように、時刻T5でオーバーフローセンサ54がオンになり、オーバーフロー管51を流れる水の流動が検出されると、給液電磁弁33がオンからオフに切り換えられて閉状態とされ、給液ポンプ32が停止される。これにより、給液ポンプ32による水の移送が停止され、貯水槽20からチャンバ10への水の供給が停止される。
次にステップS13において、オーバーフローセンサ54がオフであるか否かが判断される。図4に示されるように、時刻T5を過ぎた後、時刻T6になるまでは、オーバーフローセンサ54を通過して水が流れ続け、オーバーフローセンサ54はオンのままとされている(ステップS13においてNO)。図3に示されるように、オーバーフローセンサ54がオフになるまで、ステップS13の判断が繰り返される。図4,8に示されるように、オーバーフロー電磁弁53が開状態を維持するとともにチャンバ10への給気が維持される。これにより、チャンバ10内の過剰な水が、オーバーフロー経路50を経由して、チャンバ10から排出される。
オーバーフローセンサ54がオフになると(ステップS13においてYES)、ステップS14に進み、給気が終了する。図9は、チャンバ10への給気停止後の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す系統図である。図4,9に示されるように、時刻T6でオーバーフローセンサ54がオフになると、給気電磁弁64がオンからオフに切り換えられて閉状態とされ、エアポンプ63が停止される。これにより、チャンバ10への給気が停止される。
このような各ステップを経て給水工程が終了し、その後、滅菌処理のためにチャンバ10内を加熱する加熱工程が開始される。図10は、加熱工程開始時における蒸気滅菌器1の各機器の動作を示す系統図である。図4,10に示されるように、時刻T7でオーバーフロー電磁弁53がオンからオフに切り換えられて閉状態とされ、排気電磁弁74がオフからオンに切り換えられて開状態とされる。
この状態で、滅菌ヒータ12が起動されて、チャンバ10内の水の加熱が開始される。チャンバ10内の空気は、発生した水蒸気によってチャンバ10から押し出される。チャンバ10内に所定の温度および圧力の水蒸気が充満すると、排気電磁弁74が閉じられてチャンバ10の内部空間が密閉される。チャンバ10内が所定の時間高温高圧に維持されることにより、被滅菌物100の滅菌処理が行なわれる。
チャンバ10内で被滅菌物100が滅菌処理された後に、チャンバ10内に残留する水蒸気は、排蒸経路40を経由して、チャンバ10外へ排出される。次に、チャンバ10の内部を乾燥させる乾燥処理が行われる。この後、蒸気滅菌器1を使用する操作者は、開閉蓋11を開けて、滅菌処理後の被滅菌物100をチャンバ10から取り出すことができる。
上述した説明と一部重複する部分もあるが、実施形態の蒸気滅菌器1の特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。なお、実施形態の構成に参照番号を付すが、これは一例である。
実施形態の蒸気滅菌器1では、図3,4に示されるように、チャンバ10への給水時に、時刻Tbで、チャンバ10への水の移送を一時停止する一時停止処理(ステップS8)が実行される。一時停止処理の後に、時刻Tcで、チャンバ10への水の移送を再開する再開処理(ステップS10)が実行される。
チャンバ10への給水開始時に、滅菌ヒータ12が高温である場合に、滅菌ヒータ12に水が接触することにより滅菌ヒータ12が冷却される。高温の滅菌ヒータ12に接触した水は気化して水蒸気になるが、チャンバ10に水を供給する工程を複数回繰り返すことにより、滅菌ヒータ12は、少なくとも水蒸気が発生しなくなる程度にまで冷却される。滅菌ヒータ12の冷却後にチャンバ10への給水が再開されるので、時刻T5においてオーバーフローセンサ54がオーバーフロー管51を流れる水の流動を検出することが、チャンバ10内に貯留されている水が立上り部52の上端に到達して過剰な量の水がオーバーフロー管51に流入したものと判断される。これにより、滅菌処理に必要な量の水を確実にチャンバ10内に供給することができる。
図3,4に示されるように、時刻T3で給液ポンプ32の運転を開始しチャンバ10への水の移送を開始し(ステップS6)、その後、時刻Tbでオーバーフローセンサ54がオーバーフロー管51を流れる水の流動を検出(ステップS7)すると、一時停止処理(ステップS8)が実行される。
滅菌ヒータ12が高温の状態でチャンバ10への給水が開始されると、チャンバ10内に水蒸気が発生し、オーバーフロー経路50を流れる水蒸気の流動を検出することでオーバーフローセンサ54がオンになる。したがって、オーバーフローセンサ54による水の流動の検出をトリガーとしてチャンバ10への給水を一時停止するようにすれば、高温の滅菌ヒータ12を確実に冷却することができる。
他方、滅菌ヒータ12が高温でなければ、チャンバ10への給水が開始されても水蒸気は発生しないが、チャンバ10内の水が立上り部52の上端に到達して過剰な量の水がオーバーフロー管51に流入することにより、オーバーフローセンサ54が水の流動を検出する。そして、チャンバ10への給水を一時停止し、その後、チャンバ10への給水を再開する。この場合、滅菌ヒータ12を冷却する必要はないが、滅菌ヒータ12が高温の場合と同じ制御により、滅菌処理に必要な量の水をチャンバ10に供給することができる。
図3,4に示されるように、一時停止処理(ステップS8)の実行後、時刻Tcでオーバーフローセンサ54がオーバーフロー管51を流れる水の流動を検出しなくなる(ステップS9)と、再開処理(ステップS10)が実行される。このようにすれば、少なくとも水蒸気が発生しなくなる程度にまで滅菌ヒータ12が冷却されたとの判断の後に、チャンバ10への給水が再開されるので、滅菌処理に必要な量の水を確実にチャンバ10内に供給することができる。
また図1に示されるように、蒸気滅菌器1は、チャンバ10に空気を供給するエアポンプ63を備えている。図4に示されるように、チャンバ10への給水時に、給液ポンプ32によるチャンバ10への水の移送が開始される前に、エアポンプ63の運転が開始されて、チャンバ10への空気の供給が開始される。チャンバ10への給水を開始する前に、オーバーフロー経路50に留まっている水を空気で押し出して排出し、オーバーフロー管51内に滞留する水の量を減少させることで、給液開始直後におけるオーバーフロー管51内の水流れの発生を抑制することができる。
また図4に示されるように、給液ポンプ32によるチャンバ10への水の移送を開始する前のエアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給中に、オーバーフローセンサ54がオーバーフロー管51を流れる水の流動を検出した場合、エアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給を継続するとともに給液ポンプ32によるチャンバ10への水の移送の停止を継続する。その後オーバーフローセンサ54がオーバーフロー管51を流れる水の流動を検出しなくなると、給液ポンプ32によるチャンバ10への水の移送を開始する。このようにすれば、チャンバ10への給水開始前にオーバーフローセンサ54および給液電磁弁33に故障がないことを確認した上で、給水を開始することができるので、給水によりオーバーフローした水をオーバーフローセンサ54で確実に検出することができる。
また図4に示されるように、給液ポンプ32によるチャンバ10への水の移送を開始する前に時刻T1でエアポンプ63によるチャンバ10への空気の供給を開始した後、所定時間が経過して時刻T2になるまでは、オーバーフローセンサ54の検出結果にかかわらず給液ポンプ32によるチャンバ10への水の移送の停止を継続する。このようにすれば、オーバーフロー管51から水を確実に排出した後に、チャンバ10への給水を開始することができる。
実施形態においては、チャンバ10への給水の一時停止と再開とを一回ずつ実行する例について説明した。この例に限られず、チャンバ10への給水の一時停止と再開とを二回以上実行するようにしてもよい。給水の一時停止と再開とを繰り返す回数は、その回数繰り返すことでチャンバ10に供給された水の蒸発が確実に生じなくなるという想定のもと、予め蒸気滅菌器1に設定されてもよい。この場合、給水を一時停止した後に所定時間経過すると給水を再開し、給水再開後に所定時間経過すると給水を一時停止するように、蒸気滅菌1の動作を設定してもよい。
以上のように本発明の実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。