以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<<1.吸引装置の構成例>>
吸引装置は、ユーザにより吸引される物質を生成する装置である。以下では、吸引装置により生成される物質が、エアロゾルであるものとして説明する。他に、吸引装置により生成される物質は、気体であってもよい。
図1は、吸引装置の構成例を模式的に示す模式図である。図1に示すように、本構成例に係る吸引装置100は、電源部111、センサ部112、通知部113、記憶部114、通信部115、制御部116、加熱部40、保持部60、及び断熱部70を含む。
電源部111は、電力を蓄積する。そして、電源部111は、制御部116による制御に基づいて、吸引装置100の各構成要素に電力を供給する。電源部111は、例えば、リチウムイオン二次電池等の充電式バッテリにより構成され得る。
センサ部112は、吸引装置100に関する各種情報を取得する。一例として、センサ部112は、マイクロホンコンデンサ等の圧力センサ、流量センサ又は温度センサ等により構成され、ユーザによる吸引に伴う値を取得する。他の一例として、センサ部112は、ボタン又はスイッチ等の、ユーザからの情報の入力を受け付ける入力装置により構成される。
通知部113は、情報をユーザに通知する。通知部113は、例えば、発光する発光装置、画像を表示する表示装置、音を出力する音出力装置、又は振動する振動装置等により構成される。
記憶部114は、吸引装置100の動作のための各種情報を記憶する。特に、記憶部114は、加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定されている加熱プロファイルを記憶する。記憶部114は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体により構成される。
通信部115は、有線又は無線の任意の通信規格に準拠した通信を行うことが可能な通信インタフェースである。かかる通信規格としては、例えば、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等が採用され得る。
制御部116は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従って吸引装置100内の動作全般を制御する。制御部116は、例えばCPU(Central Processing Unit)、及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって実現される。
保持部60は、スティック型基材150を保持する。保持部60は、吸引装置100に形成された内部空間80を外部空間に連通する開口52から内部空間80に挿入されたスティック型基材150を保持する。
スティック型基材150は、基材部151、及び吸口部152を含む(後述)。スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、基材部151の少なくとも一部は内部空間80に収容され、吸口部152の少なくとも一部は開口52から突出する。そして、開口52から突出した吸口部152をユーザが咥えて吸引すると、基材部151から発生するエアロゾルがユーザの口内に到達する。
加熱部40は、エアロゾル源を加熱することで、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成する。一例として、加熱部40は、フィルム状に構成され、保持部60の外周を覆うように配置される。そして、加熱部40が発熱すると、スティック型基材150の基材部151が外周から加熱され、エアロゾルが生成される。加熱部40は、電源部111から給電されると発熱する。
断熱部70は、加熱部40から他の構成要素への伝熱を防止する。例えば、断熱部70は、真空断熱材、又はエアロゲル断熱材等により構成される。
以下では、吸引装置により生成されたエアロゾルをユーザが吸引することを、単に「吸引」又は「パフ」とも称する。また、ユーザが吸引する動作を、以下では「パフ動作」とも称する。
本実施形態に係る吸引装置100は、スティック型基材150を押圧しながら加熱する構成を有する。以下、かかる構成について詳しく説明する。
図2は、本実施形態に係る吸引装置100の物理構成を模式的に示す図である。図2に示すように、吸引装置100は、加熱部40及び保持部60を含む、ヒータアッセンブリ30を有する。図2に示すように、スティック型基材150がヒータアッセンブリ30(より詳しくは、保持部60)に保持された状態において、ヒータアッセンブリ30とスティック型基材150との間に空隙が存在する。ユーザがスティック型基材150を咥えて吸引すると、開口52から流入した空気が、当該空隙を経由して基材部151の端部からスティック型基材150の内部に流入し、吸口部152の端部からユーザの口内に流出する。即ち、ユーザが吸い込む空気は、空気流190A、空気流190B、空気流190Cの順で流れ、スティック型基材150から発生したエアロゾルと混合された状態で、ユーザの口腔内に導かれる。
図3は、図2に示したヒータアッセンブリ30の斜視図を示す。図3に示すように、ヒータアッセンブリ30は、トップキャップ32と、加熱部40と、チャンバ50と、を有する。チャンバ50は、スティック型基材150を受け入れるように構成される。加熱部40は、チャンバ50に受け入れられたスティック型基材150を加熱するように構成される。トップキャップ32は、チャンバ50にスティック型基材150を挿入する際のガイドの機能を有するとともに、チャンバ50を吸引装置100に対して固定するように構成されてもよい。
図4は、チャンバ50の斜視図を示す。図5は、図4に示す矢視4-4におけるチャンバ50の断面図を示す。図6は、図5に示す矢視5-5におけるチャンバ50の断面図を示す。図4及び図5に示すように、チャンバ50は、スティック型基材150が挿入される開口52と、スティック型基材150を保持する保持部60と、を含む。チャンバ50は、スティック型基材150を受け入れる内部空間80を囲む、中空部材として形成される。中空部材は、有底の筒状部材であり得る。なお、中空部材は底のない筒状体であってもよい。チャンバ50は、熱伝導率の高い金属で構成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等で形成され得る。これにより、チャンバ50からスティック型基材150へ効果的な加熱が可能になる。
図5及び図6に示すように、保持部60は、スティック型基材150の一部を押圧する押圧部62と、非押圧部66と、を含む。押圧部62は、内面62aと、外面62bとを有する。非押圧部66は、内面66aと、外面66bとを有する。図3に示すように、加熱部40は、押圧部62の外面62bに配置される。加熱部40は、押圧部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。
チャンバ50の開口52は、スティック型基材150を押圧せずに受け入れ可能であることが好ましい。チャンバ50の長手方向、言い換えればスティック型基材150がチャンバ50に挿入される方向又はチャンバ50の側面全体として伸びる方向、に直交する面におけるチャンバ50の開口52の形状は多角形又は楕円形であってもよいが、円形であることが好ましい。
図4、図5、及び図6に示すように、チャンバ50は、押圧部62をチャンバ50の周方向に2以上有する。図5及び図6に示すように、保持部60の2つの押圧部62は、互いに対向する。2つの押圧部62の内面62a間の少なくとも一部の距離は、チャンバ50に挿入されるスティック型基材150の押圧部62間に配置される箇所の幅よりも小さいことが好ましい。図示のように、押圧部62の内面62aは平面である。
図6に示すように、押圧部62の内面62aは、向かい合う一対の平面状の平面押圧面を有し、非押圧部66の内面66aは、一対の平面押圧面の両端を接続し、向かい合う一対の曲面状の曲面非押圧面を有する。図示のように、曲面非押圧面は、チャンバ50の長手方向に直交する面において、全体的に円弧状の断面を有し得る。図6に示すように、保持部60は均一な厚みを有する金属筒状体によって構成される。
図7は、スティック型基材150が保持部60に保持された状態の、非押圧部66を含むチャンバ50の縦断面図である。図8は、スティック型基材150が保持部60に保持された状態の、押圧部62を含むチャンバ50の縦断面図である。図9は、図8に示す矢視7-7におけるチャンバ50の断面図である。なお、図9においては、押圧部62においてスティック型基材150が押圧されることがわかりやすいように、押圧される前の状態のスティック型基材150の断面が示されている。
図9に示された、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150との間の空隙67は、スティック型基材150が保持部60に保持され、スティック型基材150が押圧部62により押圧されて変形しても、実質的に維持される。この空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられたスティック型基材150の端面(図7及び図8中下側の端面、すなわち基材部151の端面)と連通し得る。この空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられチャンバ50の開口52から遠い方に位置づけられたスティック型基材150の端面(図7及び図8中下側の端面、すなわち基材部151の端面)とに連通するということもできる。そして、チャンバ50の開口52からチャンバ50外に位置づけられたスティック型基材150の端面(図7及び図8中上側の端面、即ち吸口部152の端面)にかけて、空隙67及びスティック型基材150の内部を経由する、空気流路が形成される。これにより、スティック型基材150に供給される空気を導入するための流路を吸引装置100に別途設ける必要がないので、吸引装置100の構造を簡素化することができる。また、非押圧部66の、空隙67の一部を形成する箇所が露出するので、流路の清掃を容易に行うことができる。さらには、空隙67を空気が通過する過程で空気が加熱されるので、加熱部40による放熱を有効利用して加熱効率を高めると共に、パフに伴い流入した空気によるスティック型基材150の過度な降温を防止することができる。その結果、加熱部40の消費電力を抑制することができる上に、パフに伴うスティック型基材150の降温に起因する香味低減を防ぐことができる。通気抵抗の観点等から、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150との間の空隙67の高さは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であることがさらに好ましく、0.3mm以上0.5mm以下であることが最も好ましい。
図9に示すように、スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、押圧部62の内面62aとスティック型基材150の中心との距離LAは、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150の中心との距離LBよりも短い。かかる構成により、押圧部62の外面62bに配置された加熱部40とスティック型基材150の中心との距離を、押圧部62が設けられない場合と比較して短くすることができる。よって、スティック型基材150の加熱効率を高めることができる。
図4から図8に示すように、チャンバ50は、底部56を有する。底部56は、図8に示すように、スティック型基材150の端面の少なくとも一部を露出するように、チャンバ50に挿入されたスティック型基材150の一部を、底壁56aにより支持する。また、底部56は、露出したスティック型基材150の端面が空隙67と連通するように、スティック型基材150の一部を、底壁56aにより支持し得る。
図5、図7及び図8に示すように、チャンバ50の底部56は、底壁56aを有し、これに加えて側壁56bを有してもよい。側壁56bによって画定される底部56の幅は、底壁56aに向かって小さくなってもよい。図6及び図9に示すように、保持部60の非押圧部66の内面66aは、チャンバ50の長手方向に直交する面において湾曲している。
非押圧部66の内面66aのチャンバ50の長手方向に直交する面における形状は、チャンバ50の長手方向に直交する面における開口52の形状と、チャンバ50の長手方向の任意の位置において同一であることが好ましい。言い換えれば、非押圧部66の内面66aは、開口52を形成するチャンバ50の内面を長手方向に延長して形成されることが好ましい。
本実施形態では、図6及び図8に示すように、保持部60には、保持しているスティック型基材150の状態を検知する状態検知部69が設けられる。詳しくは、状態検知部69は、押圧部62の内面62aにおける一対の平面押圧面の少なくとも一方の表面に、スティック型基材150のフィルム部材156(後述)と位置合わせされて配置される。図6及び図8に示した例では、状態検知部69は、吸引装置100の長手方向及び短手方向のそれぞれの略中央部に配置されている。例えば、状態検知部69は、圧力センサで構成して、スティック型基材150の接触圧を測定するのがよい。なお、状態検知部69は、平面押圧面以外にも、保持しているスティック型基材150の一部と接触する位置であり、且つ、スティック型基材150のフィルム部材156と位置合わせされるのであれば任意の位置に配置されてよい。例えば、スティック型基材150の一部を支持する底部56に配置されてよい。また、複数の状態検知部69が設けられてもよい。
図3から図5に示すように、チャンバ50は、開口52と保持部60との間に筒状の非保持部54を有することが好ましい。スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、非保持部54とスティック型基材150との間に隙間が形成され得る。
図5から図9に示すように、保持部60の外周面は、保持部60の長手方向全長に亘って同一の形状及び大きさ(保持部60の長手方向に直交する面における保持部60の外周長さ)を有することが好ましい。
また、図4、及び図5に示すように、チャンバ50は、開口52を形成するチャンバ50の内面と押圧部62の内面62aとを接続するテーパ面58aを備えた第1ガイド部58を有することが好ましい。
図3に示すように、加熱部40は、加熱要素42を有する。加熱要素42は、例えばヒーティングトラックであってもよい。例えば図6に示すように、押圧部62の外面62bと非押圧部66の外面66bとは、角度を有して互いに接続され、押圧部62の外面62bと非押圧部66の外面66bとの間に境界71が形成され得る。ヒーティングトラックは、好ましくは境界71の延びる方向(チャンバの長手方向)と交わる方向に延び、好ましくは境界71の延びる方向と直角方向に延びる。
図3に示すように、加熱部40は、加熱要素42に加えて、加熱要素42の少なくとも一面を覆う電気絶縁部材44を有することが好ましい。本実施形態においては、電気絶縁部材44は加熱要素の両面を覆う様に配置される。また、電気絶縁部材44は、保持部60の外面の領域内に配置されることが好ましい。言いかえれば、電気絶縁部材44は、チャンバ50の長手方向の第1ガイド部58側において保持部60の外面からはみ出さないように配置されることが好ましい。上述したように、開口52と押圧部62との間に第1ガイド部58が設けられるので、チャンバ50の長手方向において、チャンバ50の外面の形状及びチャンバの長手方向に直交する面におけるチャンバの外周長さが変わり得る。このため、電気絶縁部材44が保持部60の外面上に配置されることで、たるみが生じることを抑制することができる。
加熱部40は、開口52と第1ガイド部58との間のチャンバ50の外面、即ち非保持部54の外面、第1ガイド部58の外面、及び非押圧部66の外面から選ばれる少なくとも一つには配置されないことが好ましい。加熱部40は、押圧部62の外面62bの全体に亘って配置されることが好ましい。
図3に示すように、吸引装置100は、加熱部40から延びる帯状の電極48を有する。帯状の電極48は、押圧部62の外面62bに加熱部40が配置された状態において、平面である押圧部62の外面62bから押圧部62の外面62bの外部に延びることが好ましい。
また、図3、図7及び図8に示すように、加熱部40は、開口52と反対側に位置する第1部分40aと、開口52側に位置する第2部分40bと、を有する。第2部分40bのヒータ電力密度は、第1部分40aのヒータ電力密度よりも高いことが好ましい。或いは、第2部分40bの昇温速度は、第1部分40aの昇温速度よりも高いことが好ましい。或いは、第2部分40bの加熱温度は任意の同時間において、第1部分40aの加熱温度よりも高いことが好ましい。第2部分40bは、スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、スティック型基材150に含まれる喫煙可能物の長手方向において喫煙可能物の1/2以上に対応する保持部60の外面を覆うことが好ましい。
以上で説明した実施形態では、チャンバ50は互いに対向する一対の押圧部62を有しているが、チャンバの形状はこれに限らない。例えば、チャンバ50は、1つの押圧部62を有していてもよいし、3つ以上の押圧部62を有していてもよい。
以上説明したように、吸引装置100は、押圧部62によりスティック型基材150を押圧しながら保持し、加熱する。かかる構成により、以下に説明する種々の効果が奏される。
まず、加熱部40からスティック型基材150への熱伝導率が向上する。即ち、スティック型基材150の加熱効率を向上させることができる。スティック型基材150の加熱効率が向上するため、スティック型基材150の温度を目標温度に早く到達させることができるので、後述する予備加熱にかかる時間を短縮することができる。さらに、スティック型基材150の加熱効率が向上するため、加熱部40の温度変化に対するスティック型基材150の温度の追随性を向上させることができる。その結果、第1に、エアロゾルの生成量の制御をより容易にすることができる。第2に、ユーザによるパフに伴いスティック型基材150の温度が低下したとしても、直ぐに元の温度に戻すことができる。第3に、外気温等の外部環境の影響を低減することができる。第4に、後述する加熱プロファイルにおける温度変化と同様の温度変化をスティック型基材150において実現することが容易になる。第5に、加熱プロファイルにおける後述する再昇温区間の効果である香味向上の効果を迅速に生じさせることができる。
また、吸引装置100は、スティック型基材150を押圧しつつ、外周から加熱する。かかる構成により、スティック型基材150内のエアロゾル源の形状によらず、上述したスティック型基材150の加熱効率の向上、及びスティック型基材150の温度の追随性の向上を、実現することができる。さらに、かかる構成により、スティック型基材150の製造工程で発生するバラつきに起因する、スティック型基材150の形状又は大きさの誤差によらず、上述したスティック型基材150の加熱効率の向上、及びスティック型基材150の温度の追随性の向上を、実現することができる。これに対し、スティック型基材150にブレード状の加熱部を挿入し、スティック型基材150を内部から加熱する構成をとる比較例では、これらの効果を奏することが困難である。なぜならば、当該比較例において、仮にスティック型基材150を外周から押圧したとしても、ブレード状の加熱部とスティック型基材150内のエアロゾル源とをうまく接触させることが困難なためである。
また、吸引装置100では、断熱部70は、加熱部40を外周から囲むように配置される。その場合、押圧部62の外面62bが非押圧部66の外面66bと比較して内部空間80の中心寄りに位置している分、押圧部62の外面62bと断熱部70の内面との間で形成される空気層の厚みを厚くすることができる。若しくは、押圧部62に重畳される断熱部70の厚みを厚くすることができる。従って、断熱部70による断熱効果を向上させることができる。
<<2.スティック型基材の構成>>
図10は、吸引装置100によって加熱されるスティック型基材150の構成例を模式的に示す模式図である。図10に示すスティック型基材150は、基材部151と、吸口部152と、これらを巻装するチップペーパー153とを備える。スティック型基材150の一例は、棒状の非燃焼加熱式たばこである。
基材部151は、霧化によりエアロゾルを生成するエアロゾル源154と、エアロゾル源154を巻装するための巻紙155と、エアロゾル源154及び巻紙155の間に配置されるフィルム部材156と、を備える。
エアロゾル源154は、例えば、グリセリン及びプロピレングリコール等の多価アルコール、並びに水等の液体である。吸引装置100が非燃焼加熱式たばこ用のものである場合、エアロゾル源154は、たばこ由来又は非たばこ由来の香味成分を含んでいてもよい。また、吸引装置100がネブライザ等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源は、薬剤を含んでもよい。なお、エアロゾル源154は液体に限られるものではなく、固体であってもよい。
巻紙155は、例えば、パルプが主成分のもののような当業者には通常知られた態様としてよい。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ製品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。
フィルム部材156は、エアロゾル源154及び巻紙155の間に配置されるフィルム状の部材であり、巻紙155の内側で巻紙155と重ね合わされて、巻紙155と共にエアロゾル源154を巻装するように構成される。フィルム部材156は、巻紙155の全領域で重ね合わされてもよいし、一部の領域で部分的に重ね合わされてもよい。
フィルム部材156は、外部からの作用によって状態が変化する状態変化部材である。一例では、フィルム部材156は、加熱によって硬度が変化する樹脂材料を用いて構成される。具体的には、フィルム部材156は、熱硬化性樹脂材料又は可塑性樹脂材料を用いて構成されるのがよい。ここで、熱硬化性樹脂は、官能基をもつプレポリマー(重縮合中間生成物)を主成分とする反応性混合物で、加熱により、次第に三次元網目構造を形成する架橋反応を起こして硬化する性質を有する。熱可塑性樹脂は、加熱により軟化・流動して可塑性を示す性質を有する。なお、可塑性とは、材料が力を受けて弾性限界を超えた変形を自在に行い、その力を除去しても形状を保持する性質のことである。
熱硬化性樹脂材料も可塑性樹脂材料も、何れも公知のものを用いてよい。熱硬化性樹脂の例は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等を含んでよい。また、熱可塑性樹脂の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等を含んでよい。
吸口部152は、冷却セグメント157と、フィルター濾材を含むフィルターセグメント158とを含む。冷却セグメント157は、スティック型基材150の軸方向に対して、基材部151とフィルターセグメント158とに隣接して挟持され、且つ、冷却セグメント157の周方向に同心状に開孔Vが設けられてもよい。フィルターセグメント158は、フィルター濾材を含み、該フィルター濾材に活性炭が所定量となるように添加されている。
冷却セグメント157に設けられる開孔Vは、通常、使用者の吸引による外部からの空気の流入を促進するための孔であり、この空気の流入により基材部151から流入する成分や空気の温度を下げることができる。開孔Vは、冷却セグメント157とフィルターセグメント158との境界から、冷却セグメント157側の方向の所定の距離(例えば、4mm)以上の領域に設けるのがよい。このような構成とすることにより、加熱により生成される成分や空気の温度を下げる冷却能力を向上させることができ、更には、冷却セグメント157内での該成分や空気の滞留を抑制し、エアロゾルのデリバリー量を向上させることができる。
チップペーパー153は、例えば、パルプが主成分のもののような当業者には通常知られた態様としてよい。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。これらのパルプは、単独の種類で用いてもよく、複数の種類を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。また、チップペーパー153は一枚で構成されても、複数枚以上で構成されてもよい。
<<3.加熱プロファイル>>
吸引装置100は、加熱プロファイルに基づいて加熱部40の動作(つまり、加熱動作)を制御する。詳しくは、吸引装置100は、加熱プロファイルにおいて規定された目標温度の時系列推移が実現されるように、電源部111から加熱部40への給電動作を制御することで加熱部40の温度を制御する。加熱プロファイルとは、加熱部40の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された情報である。なお、加熱プロファイルの情報は、記憶部114に格納される。スティック型基材150を加熱するために加熱部40の加熱動作を実行する際に当該情報が参照される。また、当該情報は、参照されるのみならず、スティック型基材150の加熱の途中で更新されてもよい。
これにより、加熱プロファイルに従った加熱部40の動作に応じて、加熱プロファイルにより計画された通りにエアロゾルが生成される。加熱プロファイルは、典型的には、スティック型基材150から生成されるエアロゾルをユーザが吸引した際にユーザが味わう香味が最適になるように設計される。よって、加熱プロファイルに基づいて加熱部40の動作を制御することにより、ユーザが味わう香味を最適にすることができる。
制御部116は、加熱プロファイルにおいて規定された目標温度と加熱部40の実際の温度(以下、実温度とも称する)との乖離に基づいて、加熱部40の動作を制御する。より詳しくは、制御部116は、加熱プロファイルに基づく加熱部40への給電動作の制御を開始してからの経過時間に対応する加熱部40の目標温度と、加熱部40の実温度と、の乖離に基づいて、電源部111による加熱部40への給電動作を制御する。制御部116は、加熱部40の実温度の時系列推移が、加熱プロファイルにおいて定義された加熱部40の目標温度の時系列推移と同様になるように、加熱部40の温度を制御する。加熱部40の温度制御は、例えば公知のフィードバック制御によって実現できる。具体的には、制御部116は、電源部111からの電力を、パルス幅変調(PWM)又はパルス周波数変調(PFM)によるパルスの形態で、加熱部40に供給させる。その場合、制御部116は、電力パルスのデューティ比を調整することによって、加熱部40の温度制御を行うことができる。
フィードバック制御では、制御部116は、実温度と目標温度との差分等に基づいて、電源部111から加熱部40へ供給する電力、例えば上述したデューティ比を制御すればよい。フィードバック制御は、例えばPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)であってよい。若しくは、制御部116は、単純なON-OFF制御を行ってもよい。例えば、制御部116は、電源部111に指令することにより、実温度が目標温度に達するまで加熱部40による加熱動作を実行させ、実温度が目標温度に達した場合に加熱部40による加熱を停止させ、実温度が目標温度より低くなると加熱部40による加熱動作を再度実行させてもよい。
加熱部40の温度は、例えば、加熱部40を構成する発熱抵抗体の電気抵抗値を測定又は推定することによって定量できる。これは、発熱抵抗体の電気抵抗値が、温度に応じて変化するためである。発熱抵抗体の電気抵抗値は、例えば、発熱抵抗体での電圧降下量を測定することによって推定できる。発熱抵抗体での電圧降下量は、発熱抵抗体に印加される電位差を測定する電圧センサによって測定できる。他の例では、加熱部40の温度は、加熱部40付近に設置された温度センサによって測定されることができる。
加熱プロファイルに基づく加熱は、加熱開始を指示する操作が行われたことが検出されたタイミングから開始される。加熱開始を指示する操作の一例は、吸引装置100に設けられたボタンの押下である。加熱開始を指示する操作の他の一例は、パフ動作である。加熱開始を指示する操作の他の一例は、スマートフォン等の他の装置からの信号の受信である。
加熱開始後、時間経過と共に基材に含まれるエアロゾル源は徐々に減少していく。典型的には、エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングで、加熱部40による加熱動作が停止される。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してから所定時間が経過したタイミングである。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、所定回数のパフが検出されたタイミングである。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、吸引装置100に設けられたボタンが押下されたタイミングである。かかるボタンは、例えば、ユーザが十分な香味を感じることができなくなった際に押下される。
なお、十分な量のエアロゾルが発生すると想定される期間は、パフ可能期間とも称される。他方、加熱が開始されてからパフ可能期間が開始されるまでの期間は、予備加熱期間とも称される。予備加熱期間において行われる加熱は、予備加熱とも称される。パフ可能期間が開始するタイミング及び終了するタイミングが、ユーザに通知されてもよい。その場合、ユーザは、かかる通知を参考に、パフ可能期間においてパフを行うことができる。
制御部116は、保持部60によるスティック型基材150の保持状態に基づいて加熱部40の動作を制御する。詳しくは、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62によって押圧された状態で加熱プロファイルに基づきスティック型基材150が加熱されるように、加熱部40の動作を制御する。即ち、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62によって押圧された状態で、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する目標温度に応じて加熱部40への給電量を調整し、加熱部40によるスティック型基材150の加熱を制御する。その際、制御部116は、押圧部62による押圧の強さに応じて給電量をさらに調整してもよい。また、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62により押圧されていない状態では、加熱プロファイルに基づくスティック型基材150の加熱を行わないように、加熱部40の動作を制御してもよい(例えば、加熱部40への給電を行わない)。押圧することでスティック型基材150の加熱効率が向上することを考慮すれば、かかる構成により、スティック型基材150の加熱効率の向上の程度に応じて、加熱部40の動作を制御することが可能となる。したがって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含む。複数の時間区間の各々には、時間区間の終期における目標温度が関連付けられて設定される。そして、制御部116は、複数の時間区間のうち、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する時間区間に設定された目標温度と、実温度と、の乖離に基づいて、加熱部40の動作を制御する。具体的には、制御部116は、加熱プロファイルに含まれる複数の時間区間の各々の終期までに、設定された目標温度に達するよう、加熱部40の動作を制御する。加熱プロファイルの一例を、下記の表1に示す。
表1に示す加熱プロファイルは、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間から成り、これらを順に含む。表1に示した例では、初期昇温区間は、加熱プロファイルの開始から35秒後までの区間である。途中降温区間は、初期昇温区間の終期から10秒後までの区間である。再昇温区間は、途中降温区間の終期から310秒後までの区間である。加熱プロファイルが、これらの時間区間を含むことにより、以下に説明するように、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。すなわち、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能となる。
初期昇温区間は、加熱プロファイルの最初に含まれる時間区間である。初期昇温区間に設定された目標温度は、初期値よりも高い。初期値とは、加熱開始前の加熱部40の温度として想定される温度である。初期値の一例は、0℃等の任意の温度である。初期値の他の一例は、気温に対応する温度である。
途中降温区間は、加熱プロファイルの途中に含まれる時間区間である。途中降温区間に設定された目標温度は、途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度よりも低い。表1に示した例では、途中降温区間に設定された目標温度230℃は、ひとつ前の時間区間である初期昇温区間に設定された目標温度295℃よりも低い。
再昇温区間は、加熱プロファイルの最後に含まれる時間区間である。再昇温区間に設定された目標温度は、再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度よりも高い。表1に示した例では、再昇温区間に設定された目標温度260℃は、ひとつ前の時間区間である途中降温区間に設定された目標温度230℃よりも高い。
制御部116が表1に示した加熱プロファイルに従って加熱部40の動作を制御した場合の、加熱部40の実温度の時系列推移について、図11を参照しながら説明する。図11は、表1に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
図11に示すように、加熱部40の実温度は、初期昇温区間において上昇し、初期昇温区間の終期において目標温度である295℃に達している。加熱部40の実温度が初期昇温区間に設定された目標温度に達した場合、スティック型基材150の温度が十分な量のエアロゾルが発生する温度に達することが想定される。初期昇温区間は、加熱プロファイルの最初に設定される。そのため、加熱部40は、初期昇温区間において、初期温度から初期昇温区間に設定された目標温度である295℃まで一気に昇温される。なお、初期温度とは、加熱プロファイルに基づく加熱開始時の加熱部40の実温度である。かかる構成により、予備加熱を早期に終えることが可能となる。
制御部116は、初期昇温区間において実温度が初期昇温区間に設定された目標温度に達するように加熱部40の温度制御を行う。即ち、制御部116は、初期温度から295℃に向けて加熱部40の温度を制御する。加熱開始から35秒が経過する前に実温度が295℃に達した場合、制御部116は、295℃を維持するよう加熱部40の温度を制御する。
図11に示すように、加熱部40の実温度は、途中降温区間において降下し、途中降温区間の終期において目標温度である230℃に達している。途中降温区間は、初期昇温区間の次に設定される。そのため、加熱部40は、途中降温区間において、初期昇温区間の設定温度から途中降温区間の設定温度まで一旦降温することとなる。加熱部40を初期昇温区間の目標温度のような高い温度のまま維持すると、スティック型基材150に含まれるエアロゾル源が急速に消費され、ユーザが味わう香味が強すぎてしまう等の不都合が生じる。その点、途中降温区間を設けることで、そのような不都合を回避して、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能である。
制御部116は、途中降温区間においては、加熱部40に給電しないよう制御する。つまり、制御部116は、途中降温区間においては、加熱部40への給電を停止し、加熱部40による加熱が行われないように制御する。かかる構成によれば、加熱部40の実温度を最も早く降下させることが可能となる。また、途中降温区間においても加熱部40への給電を行う場合と比較して、吸引装置100の消費電力を低減することも可能である。
図11に示すように、加熱部40の実温度は、再昇温区間において上昇し、再昇温区間の終期において目標温度である260℃に達している。再昇温区間は、途中降温区間の次であって、加熱プロファイルの最後に設定される。そのため、加熱部40は、再昇温区間において、途中降温区間の設定温度から再昇温区間の設定温度まで再度昇温されて、その後加熱を停止する。初期昇温区間の後に加熱部40を降温させ続けると、スティック型基材150も降温するので、エアロゾルの生成量が低下し、ユーザが味わう香味が劣化してしまい得る。その点、途中降温区間の後に再昇温区間を設けることで、加熱プロファイルの後半においてもユーザが味わう香味の劣化を防止することが可能となる。
制御部116は、再昇温区間において実温度が再昇温区間に設定された目標温度に達するように加熱部40の温度制御を行う。即ち、制御部116は、260℃に向けて加熱部40の温度を制御する。再昇温区間の開始から310秒が経過する前に実温度が260℃に達した場合、制御部116は、260℃を維持するよう加熱部40の温度を制御する。
初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、再昇温区間が最も小さく、途中降温区間が次に小さく、初期昇温区間が最も大きくてもよい。初期昇温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、初期昇温区間に設定された目標温度と初期値との差の絶対値を初期昇温区間の時間長で割った値である。途中降温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、途中降温区間に設定された目標温度と途中降温区間のひとつ前の時間区間(例えば、初期昇温区間)に設定された目標温度との差の絶対値を途中降温区間の時間長で割った値である。再昇温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、再昇温区間に設定された目標温度と再昇温区間のひとつ前の時間区間(例えば、途中降温区間)に設定された目標温度との差の絶対値を再昇温区間の時間長で割った値である。また、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、途中降温区間が最も短く、初期昇温区間が次に短く、再昇温区間が最も長い。かかる構成により、図11に示すように、加熱部40は、初期昇温区間において急速に昇温し、途中降温区間において高温な状態から早期に脱し、再昇温区間においてゆっくりと昇温することとなる。したがって、予備加熱を早期に終えることが可能となると共に、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
制御部116は、加熱プロファイルにおける複数の時間区間の切り替えの少なくとも一部を、加熱部40の実温度に基づいて判定してもよい。例えば、制御部116は、初期昇温区間から途中降温区間への切り替え、及び再昇温区間の終了を、各々の時間区間に設定された目標温度と加熱部40の実温度との乖離が所定の閾値以内になったことに基づいて判定してもよい。
制御部116は、加熱プロファイルにおける複数の時間区間の切り替えの少なくとも一部を、経過時間に基づいて判定してもよい。例えば、制御部116は、途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、途中降温区間の終期を判定してもよい。例えば、図11に示した加熱プロファイルでは、途中降温区間は10秒間として設定されている。そのため、制御部116は、途中降温区間を開始してから10秒経過した場合に、再昇温区間への切り替えを判定し、加熱部40による加熱を再開させる。かかる構成によれば、加熱部40の温度を測定せずに途中降温区間から再昇温区間への切り替えを判定することができるので、制御部116の処理負荷を軽減することが可能となる。さらに、加熱部40を構成する発熱抵抗体の電気抵抗値に基づいて加熱部40の温度を測定する構成をとる場合であっても、途中降温区間において加熱部40への給電を停止しつつ、再昇温区間への切り替えを判定することが可能となる。
ただし、途中降温区間の終期における加熱部40の実温度は、外気温等の外部環境に依存して変動し得る。例えば、図11に示した加熱プロファイルに基づいて動作する場合、途中降温区間の終期における加熱部40の実温度は、外気温が低い場合には220℃となり、外気温が高い場合には240℃になり得る。
そこで、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間(即ち、再昇温区間)の始期において、加熱部40の実温度と途中降温区間に設定された目標温度とに基づいて、加熱部40の動作を制御する。より詳しくは、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間の始期において、加熱部40の実温度が途中降温区間に設定された目標温度未満である場合に、第1のデューティ比で加熱部40への給電を行う。他方、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間の始期において、加熱部40の実温度が途中降温区間に設定された目標温度以上である場合に、第2のデューティ比で加熱部40への給電を行う。ここで、第1のデューティ比は、第2のデューティ比よりも大きい。ここでのデューティ比とは、所定期間に占める加熱部40への給電が継続される期間の比である。かかる構成によれば、外部環境の影響によって加熱部40の目標温度と実温度との間に乖離が生じる場合であっても、当該乖離を迅速に小さくすることができるので、ユーザが味わう香味の劣化を抑制することが可能となる。
図12は、吸引装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、まず、吸引装置100は、初期昇温区間において初期温度から初期昇温区間に設定された目標温度まで加熱部40を昇温させる(ステップS102)。
次いで、吸引装置100は、途中降温区間において加熱部40への給電を停止し、途中降温区間に設定された目標温度まで加熱部40を降温させる(ステップS104)。
次に、吸引装置100は、再昇温区間において再昇温区間に設定された目標温度まで加熱部40を昇温させる(ステップS106)。
そして、吸引装置100は、再昇温区間が終了すると共に、加熱部40への給電を停止する(ステップS108)。
<<4.吸引システム>>
(1)吸引システムの構成
本実施形態による吸引システムは、図1乃至図9に関して説明したエアロゾル源154を霧化させてエアロゾルを生成する吸引装置100と、図10に関して説明したエアロゾル源154を含むスティック型基材150とを備える。本実施形態に係る吸引システムにおいて、吸引装置100は、スティック型基材150を内部に受け入れて、例えば、図11及び図12に関して説明した加熱プロファイルに基づく加熱動作の制御を行う。
ここで、吸引システムが備える吸引装置100及びスティック型基材150は、市場に流通される際は、個別に販売されてもよいし、セットで販売されてもよい。その過程において、スティック型基材150に替えて、サードパーティー製の互換品又は模倣品のような非正規品が別途市場に流通し、ユーザに販売されることがある。非正規品は、正規品であるスティック型基材150と比べて品質が劣悪となることも多い。また、非正規品が吸引装置100と共に使用されると、粗悪な香味がユーザに送達されることになり、その結果、十分な吸引体験がユーザに提供されないことがある。更に、吸引装置100は加熱を伴うことから、吸引装置100に対して非正規品が使用されることには、安全性の点で問題が生じることにもなり得る。
本実施形態によれば、このような非正規品のスティック型基材の使用を適宜検出可能とし、更にはその使用を制限可能とする吸引装置100及び/又は吸引システムが提供される。また、非正規品のスティック型基材150の使用を適切に検出した際に、ユーザに対し、吸引装置の適切な使用を催促可能とする吸引装置100及び/又は吸引システムを提供する。
図6及び図8に関して説明したように、本実施形態に係る吸引装置100には、内部に保持しているスティック型基材150の状態を検知する状態検知部69が設けられる。そして、状態検知部69を用いることにより、押圧されているスティック型基材150の状態が検知される。スティック型基材150の状態とは、例えば、押圧の強さに基づく接触の状態である。このような接触の状態を検知するために、状態検知部69は、押圧されたスティック型基材150からの応力を測定するのがよい。具体的には、状態検知部69を圧力センサで構成することにより、状態検知部69は、保持されているスティック型基材150の接触圧を測定するのがよい。なお、圧力センサに替えて、接触センサを使用してもよい。
また、図10に関して説明したように、本実施形態に係るスティック型基材150は基材部151を備えており、該基材部151において、エアロゾル源154及び巻紙155の間にフィルム部材156が配置される。フィルム部材156は、外部からの作用によって状態が変化する状態変化部材であり、例えば、加熱によって硬度が変化する樹脂材料を用いて構成される。つまり、吸引装置100に保持されたスティック型基材150のフィルム部材156は、加熱部40を通じて加熱されるにつれて、その硬度が変化する。
ここで、スティック型基材150のフィルム部材156の硬度は、吸引装置100に保持された状態では、状態検知部69で検知される押圧の強さ(つまり、応力)に関連付けることができる。具体的には、加熱により硬化する熱硬化性樹脂材料を用いてフィルム部材156が構成される場合、吸引装置100の加熱部40を通じて加熱されるにつれてその硬度は大きくなる。これに伴い、状態検知部69で測定される応力も大きくなる。他方、加熱により軟化する熱可塑性樹脂材料を用いてフィルム部材156が構成される場合、加熱部40を通じて加熱されるにつれてその硬度は小さくなる。これに伴い、状態検知部69で測定される応力も小さくなる。つまり、スティック型基材150のフィルム部材156の硬度は、吸引装置100の状態検知部69で検知される押圧の強さを測定することにより、特定することができる。
すなわち、フィルム部材156の硬度は、状態検知部69で測定される応力に関連付けられることにより、吸引装置100は、応力の大きさに基づいてスティック型基材150の状態を検知することができる。ここでのティック型基材150の状態は、具体的には、状態変化部材であるフィルム部材156の状態を含んでよい。本実施形態の吸引装置100は、加熱部40がスティック型基材150を加熱している間、及び/又は当該加熱の前に、スティック型基材150のフィルム部材156の状態が所定の条件を満たすかを判定するように構成される。その判定の結果に応じて、吸引装置100は、加熱部40への給電を制御する。
このようにして、スティック型基材150のフィルム部材156の状態に基づく加熱の制御態様が提供される。なお、ここでの制御態様には、許可、禁止、及び抑制の各動作が含まれる。
(2)吸引システムの動作例
以下に、本実施形態に係る吸引システムの幾らかの動作例について説明する。各動作例では、制御部116は、加熱部40がスティック型基材150を加熱している間及び/又は当該加熱の前に、スティック型基材150の状態が所定の条件を満たすかを判定し、次いで、その判定の結果に応じて、加熱部40への給電を制御する。
図13乃至図15は動作例1を説明するためのものであり、図16乃至図18は動作例2を説明するためのものである。図13及び図16は、吸引システムの各動作例に関し、吸引装置100に含まれる制御部116の構成を機能的に示したブロック図である。図14及び図17は、各動作例1、2の処理の流れを示すフローチャートである。図15及び図18は、各動作例1、2において、表1に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移のグラフ図である。
なお、図13及び図16に示されるブロック図は例示に過ぎず、これに限定されずに任意の他の機能ブロックが含まれてもよいし、一部の機能ブロックが省略されてもよい。また、図14及び図17のフローチャートに示される各処理ステップは例示に過ぎず、これに限定されずに任意の他の処理ステップが含まれてもよいし、一部の処理ステップが省略されてもよい。更に、ここに示される各処理ステップの順序も例示に過ぎず、これに限定されずに任意の順序としてよく、或いは、並列的に実行されてよい場合もある。
(2-1)動作例1
図13のブロック図に示すように、動作例1の処理を実行する制御部1161は、給電指示部116a、検知指示部116b、判定部116c、及び通知指示部116dを含む。給電指示部116aは、電源部111に対し、加熱部40への給電又はその停止を指示する。検知指示部116bは、状態検知部69に対し、スティック型基材150の状態の検知を指示する。判定部116cは、スティック型基材150の状態を判定する。通知指示部116dは、通知部113に対し、所定の通知動作を実行するように指示する。
図14のフローチャートに示すように、動作例1では、最初に吸引装置100の動作が開始された後の任意のタイミングで、検知指示部116bは、状態検知部69に対し、スティック型基材150の状態のリアルタイムの検知を開始させる(ステップS202)。また、給電指示部116aは、加熱開始を指示する操作が行われたことに応じて、電源部111に対して加熱部40への給電を指示し、加熱部40は、加熱プロファイルに基づく加熱動作を開始する(ステップS204)。その結果、保持部60に保持されているスティック型基材150が加熱される。
次いで、判定部116cは、加熱部40がスティック型基材150を加熱する間に、スティック型基材150の状態が所定の条件を満たすかを判定する(ステップS206)。具体的には、判定部116cは、状態検知部69で検知されるスティック型基材150による押圧の強さ(つまり、応力)が所定の第1範囲内にあるかについて判定する。なお、当該判定は、加熱部40がスティック型基材150を加熱している間及び/又は当該加熱の前に実行されてよい。
ステップS206でスティック型基材150の状態が所定の条件を満たしたと判定されたことに応じて、給電指示部116aは、加熱部40への給電を制御する。具体的には、スティック型基材150による押圧の強さが第1範囲内にある場合(ステップS206:Yes)、給電指示部116aは、加熱部40への給電を許可してよい(ステップS208)。つまり、スティック型基材150の状態は正常であると判断される。引き続き、給電指示部116aは、加熱部40に対し、加熱プロファイルに基づく加熱動作を継続させると共に、判定部116cに対し、リアルタイムの判定処理(ステップS206)を継続させる。
ここで、第1範囲は、スティック型基材150が正常状態であることを規定する。詳しくは、第1範囲は、スティック型基材150が正規品であり且つ製造業者が定める使用方法が遵守される場合にスティック型基材150の硬度が取り得る許容範囲に関連付けられるように、予め設定されている。つまり、第1範囲は、製造業者の設計・実験により、予め、フィルム部材156の硬度の許容範囲に対してその上限及び下限が関連付けられて決定され、記憶部118に格納されている。
この点、第1範囲は、スティック型基材150が使用前の場合(つまり、未使用状態)に、スティック型基材150による押圧の強さがその範囲内となるように設定されるのがよい。また、第1範囲は、スティック型基材150が正規品でない場合や使用後の場合に、その押圧の強さがその範囲外となるように設定されるのがよい。なお、スティック型基材150が使用後の場合とは、例えば、スティック型基材150が加熱された状態で所定回数のパフ動作が実施され、スティック型基材150が使用済みの状態にある場合としてよい。
図14に戻り、スティック型基材150による押圧の強さが第1範囲内にない場合は(ステップS206:No)、スティック型基材150の状態は正常ではないと判定される。この場合は、給電指示部116aは、加熱部40への給電を禁止するのがよい(ステップS210)。スティック型基材150の状態が正常でないとは、例えば、非正規品が用いられている、又は正規品が用いられている場合でもその再利用を重ねている等のような異常事態であることが考えられる。つまり、加熱部40がスティック型基材150を加熱している途中において、押圧の強さが第1範囲から外れたことにより所望の遷移を示さなくなったような場合は、スティック型基材150の状態は異常であるとして加熱部40への給電が禁止される。
ステップS210で加熱部40への給電が禁止されると、通知指示部116dは、通知部113に対し、その旨の通知を指示する。これに応じて、通知部113は、所定の通知動作を実行する(ステップS212)。通知動作は、発光する発光装置、画像を表示する表示装置、音を出力する音出力装置、又は振動する振動装置等を用いて実行される。例えば、発光装置が赤色に発光することにより、給電が禁止された旨をユーザに提示するのがよい。
ステップS212の後に、動作例1の一連の処理は終了する。なお、一連の処理の結果、加熱部40による加熱動作は停止されている。
動作例1の一連の処理が実行された場合の加熱部40の実温度の時系列推移のグラフが図15に示される。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度(℃)である。本グラフにおける線21aは、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
図15に示されるグラフの例では、再昇温区間の途中の時間T1において、スティック型基材150による押圧の強さが第1範囲内から外れたものと判定され、これに応じて加熱部40への給電が禁止される。時間T1以降、加熱プロファイルに設定されている目標温度に拘わらず、加熱部40への給電は停止される。その結果、グラフの線aは、図11のグラフの線21とは異なり、時間T1から先は加熱部40の温度が低下することになる。つまり、当初再昇温区間であった時間区間のうち時間T1以降の区間は、強制的に加熱禁止区間と設定される。
図15のグラフの例では、動作例1に関し、加熱プロファイルに規定される再昇温区間の途中でスティック型基材150による押圧の強さが第1範囲内から外れるものとした。しかしながら、これに限定されず、例えば、加熱プロファイルに規定される初期昇温区間又は途中降温区間の途中で、押圧の強さが第1範囲内から外れた場合も、同様に、それに応じて加熱部40への給電が禁止されてよい。
なお、第1範囲は、上記以外にも製造業者によって柔軟に設定されてよい。具体的には、第1範囲は、加熱プロファイルに関連付けられて時系列推移するように設定されてもよい。一例では、第1範囲は、加熱部40による加熱時間に関連付けられて、加熱時間に応じてその上限及び/又は下限を変化させることで、時系列推移するように設定されてもよい。加熱時間は、演算処理装置に具備される内蔵タイマ(不図示)によって計測されるのがよい。他の例では、第1範囲は、加熱プロファイルの各時間区間の目標温度に関連付けられて、時間区間中の目標温度に応じてその上限及び/又は下限が時系列推移するように設定されてもよい。
このように、本実施形態の吸引システムによれば、吸引装置100において第1範囲を柔軟に設定することにより、スティック型基材150の使用及びその状態を適宜検出可能とし、更には、不適切な使用である場合は、その使用を制限することができる。不適切なスティック型基材150の使用には、所望の吸引体験が提供されないことが想定される非正規品(互換品又は模倣品を含む。)の使用、正規のスティック型基材150の過度の再利用等が含まれる。また、このような不適切な使用を検出した際に、ユーザに対してその旨を通知することにより、不適切な使用を止めるよう催促可能とする。これにより、ユーザに粗悪なエアロゾルを送達するといった不都合を抑制することができ、吸引装置100の安全な使用をユーザに促すことができる。このように、吸引装置100を用いた吸引体験を劣化させないようにすることができる。
(2-2)動作例1の変更例
前述の動作例1では、最初に、検知指示部116bは、状態検知部69に対し、スティック型基材150の状態のリアルタイムの検知を開始させ(ステップS202)、次いで、給電指示部116aは、加熱開始を指示する操作が行われたことに応じて電源部111に対して加熱部40への給電を指示し、加熱部40は加熱プロファイルに基づく加熱動作を開始する(ステップS204)ものとした。これに替えて、変更例では、ステップS202とステップS204の間で、判定部116cは、状態検知部69で検知されるスティック型基材150による押圧の強さ(つまり、応力)が所定の第1範囲内にあるかについて判定を行ってもよい。そして、応力が所定の第1範囲内にある場合にはじめてステップS204に進み、加熱部40は加熱プロファイルに基づく加熱動作を開始してよい。
他方、応力が所定の第1範囲内にはない場合は、給電指示部116aは、電源部111に対し加熱部40への給電を禁止するのがよい。これは、最初の状態で応力が所定の第1範囲内にはないような場合は、スティック型基材150が不良状態であると推定されるべきとの想定に基づく。不良状態には、例えば、不良品や模倣品のような不適切なスティック型基材150が使用されている状態、及び保持部60がスティック型基材150を適切に保持できていない状態等が含まれる。
このように、変更例では、応力が所定の第1範囲内にあるかについて判定する処理を、加熱部40が加熱プロファイルに基づく加熱動作を実施している間と、当該加熱動作の開始前との両方において実行する。これにより、スティック型基材150の状態を更に適宜検出可能とし、不良状態である場合は、その使用を禁止することができる。
(2-3)動作例2
前述の動作例1では、使用済みのスティック型基材150が使い回しにより再利用される場合、吸引装置100はスティック型基材150の加熱を強制的に禁止するものとした。これに対し、動作例2では、スティック型基材150が再利用される場合であっても、一定の条件を満たす場合には、スティック型基材150の加熱を禁止せずに、当該加熱を抑制するように構成される。
図16のブロック図に示すように、動作例1の処理を実行する制御部1162は、給電指示部116g、検知指示部116h、判定部116i、補正部116j、及び通知指示部116kを含む。このうち給電指示部116g、検知指示部116h、判定部116i、及び通知指示部116kについては、図15に示した制御部1161の給電指示部116a、検知指示部116b、判定部116c、及び通知指示部116dと同様である。動作例2では、補正部116jによって、加熱プロファイルに規定される目標温度が補正される。
図17のフローチャートに示すように、動作例2において、ステップS302乃至S308は、図14に示した動作例1のステップS202乃至S208と同様である。具体的には、動作例2では、最初に吸引装置100の動作が開始された後の任意のタイミングで、検知指示部116hは、状態検知部69に対し、スティック型基材150の状態のリアルタイムの検知を開始させる(ステップS302)。また、給電指示部116gは、加熱開始を指示する操作が行われたことに応じて、電源部111に対して加熱部40への給電を指示し、加熱部40は、加熱プロファイルに基づく加熱動作を開始する(ステップS304)。次いで、判定部116iは、加熱部40がスティック型基材150を加熱している間に、スティック型基材150による押圧の強さ(つまり、応力)が第1範囲内にあるか判定する(ステップS306)。そして、押圧の強さが第1範囲内にあると判定されたことに応じて(Yes)、給電指示部116gは、加熱部40への給電を許可する(ステップS308)。
加えて、動作例2では、ステップS306でスティック型基材150による押圧の強さが第1範囲内にないと判定される場合(No)、判定部116iは更に、押圧の強さが第2範囲内にあるかを判定する(ステップS322)。そして、スティック型基材150による押圧の強さが、第1範囲内にないものの第2範囲内にあると判定されるか否かに応じて、給電指示部116gは、加熱部40への給電を異なる態様で制御する。
具体的には、ステップS322でスティック型基材150による押圧の強さが第2範囲内にあると判定される場合は(Yes)、給電指示部116gは、加熱部40への給電を(禁止するのではなく)抑制するように指示する(ステップS324)。具体的には、補正部116jが、加熱プロファイルに規定されている目標温度の少なくとも一部を補正し、当該補正された加熱プロファイルに基づいて加熱部40に加熱動作を実行させる。
詳しくは、補正部116jは、加熱の度合を弱めるように、目標温度の少なくとも一部を、規定されている目標値よりも低い値に更新する。これは、ユーザが正規品を利用している以上、動作例1のように敢えて給電を禁止するまでもなく、その代わりとして、スティック型基材150を低温に制限して加熱すればよいとの方針に基づく。これにより、ユーザに対し、正規のスティック型基材150の再利用を許容すると共に、初回の使用よりも吸引体験を劣化させることで再利用状態であることを明示することができる。すなわち、ユーザに、スティック型基材150の交換を促すことができる。
これに替えて、補正部116jは、加熱の度合を強めるように、目標温度の少なくとも一部を、規定されている目標値よりも高い値に更新してもよい。これは、ユーザが正規品を利用している以上、動作例1のように敢えて給電を禁止することなく、その代わりとして、スティック型基材150を高温に加熱することで、再利用時であっても1回目と同等の香味をユーザに送達するのがよいとの方針に基づく。これにより、ユーザに対し、正規のスティック型基材150の再利用を許容すると共に、初回と同等の吸引体験をユーザに提供することができる。
ここで、第2範囲は、スティック型基材150が許容される再利用状態であることを規定する。詳しくは、第2範囲は、スティック型基材150が正規品を再利用している状態であってもそれが尚も許容される状態にある場合に、スティック型基材150の硬度が取り得る許容範囲に関連付けられるように予め設定されている。つまり、第2範囲は、製造業者の設計・実験により、予め、使用後のフィルム部材156の硬度の許容範囲に対してその上限及び下限が関連付けられて決定され、記憶部118に格納されている。なお、使用後とは、未使用の状態から、スティック型基材150が加熱されて所定回数のパフ動作がユーザにより実施された後の状態のことである。なお、第2範囲は、第1範囲と同様に、製造業者によって柔軟に設定されてよい。
図17に戻り、ステップS324で加熱部40への給電が抑制されると、通知指示部116kは、通知部113に対し、その旨の通知を指示する。これに応じて、通知部113は、所定の通知動作を実行する(ステップS326)。加熱抑制の通知動作は、特に、動作例1のステップS212及び動作例2のステップ344(後述)における加熱禁止の通知動作とは、異なる態様とするのがよい。これにより、ユーザに対し、現在のスティック型基材150の使用が再利用であることを通知すると共に、このようなパフ動作を止めてスティック型基材150の交換するように促すことができる。
ステップS322でスティック型基材150による押圧の強さが第2範囲内にない場合(No)、以降のステップS342及びステップS344は、加熱部40への給電の禁止及びその通知に係る動作例1のステップS210及びステップS212と同様となる。つまり、給電指示部116gは、加熱部40への給電を禁止し(ステップS342)、次いで、通知指示部116kは、通知部113に対し、加熱禁止の通知を指示する(ステップS344)。
ステップS344の後に、動作例1の一連の処理は終了する。なお、一連の処理の結果、加熱部40による加熱動作は停止されている。
動作例2の一連の処理が実行された場合の加熱部40の実温度の時系列推移のグラフが図18に示される。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度(℃)である。本グラフにおける線21aは、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
また、図18において適用されている加熱プロファイルを表2に示す。ここでは、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間のうち、再昇温区間に含まれる時間T2において加熱プロファイルが調整される。表2には調整後の加熱プロファイルが示されている。
表2に示すように、加熱プロファイルに含まれる再昇温区間は、当初、加熱部40の目標温度を230℃から260℃に上昇させるように規定されていた。つまり、再昇温区間の当初の区間目標温度は、再昇温区間の終期に関連付けられ、その目標温度である260℃としていた。現在の時間が時間T2である。
図18に示すように、時間T2に対応する再昇温区間において、スティック型基材150による押圧の強さが第2範囲内にないと判定されたのに応じて、加熱プロファイルの当初の区間目標温度である260℃は、調整後では250℃へと更新される。その結果、再昇温区間では当初の予定よりも低温度で加熱部40に加熱動作を抑制させることになる。
加熱プロファイルの調整の結果、再昇温区間の途中で加熱プロファイルのグラフの線21bは当初の線21とは異なるものとなる。具体的には、図示したように、再昇温区間における時間T2以降の直線の傾きは、時間T2以前の直線の傾きよりも小さくなる。なお、動作例2では、区間目標温度を260℃から250℃に10℃だけ低温にしているが、降温させる温度の値は、予め決められた値としてもよいし、又は予め決められた数式に従い、応力の値に基づいて動的に算出されてもよい。
図15のグラフの例では、動作例2に関し、加熱プロファイルに規定される再昇温区間の途中でスティック型基材150による押圧の強さが第2範囲内から外れるものとした。しかしながら、これに限定されず、例えば、加熱プロファイルに規定される初期昇温区間又は途中降温区間の途中で、押圧の強さが第2範囲内から外れた場合も、同様に、これら区間及び再昇温区間の目標温度がより低い値で更新させて、加熱部40への給電が抑制されてよい。
このように、本実施形態の吸引システムによれば、吸引装置100において第2範囲を柔軟に設定することにより、ユーザによる正規のスティック型基材150の再利用を適宜検出可能とし、更には、不適切な使用である場合は、その使用を制限することができる。不適切なスティック型基材150の使用には、所望の吸引体験が提供されないことが想定される非正規品(互換品又は模倣品を含む。)の使用、正規のスティック型基材150の過度の再利用等が含まれる。また、このような再利用を検出した際に、ユーザに対してその旨を通知することにより、再利用を止めるよう催促可能とする。これにより、ユーザに粗悪なエアロゾルを送達するといった不都合を抑制することができ、吸引装置100の安全な使用をユーザに促すことができる。このように、吸引装置100を用いた吸引体験を劣化させないようにすることができる。
<<5.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。