以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<<1.吸引装置の構成例>>
吸引装置は、ユーザにより吸引される物質を生成する装置である。以下では、吸引装置により生成される物質が、エアロゾルであるものとして説明する。他に、吸引装置により生成される物質は、気体であってもよい。
図1は、吸引装置の構成例を模式的に示す模式図である。図1に示すように、本構成例に係る吸引装置100は、電源部111、センサ部112、通知部113、記憶部114、通信部115、制御部116、加熱部40、保持部60、及び断熱部70を含む。
電源部111は、電力を蓄積する。そして、電源部111は、制御部116による制御に基づいて、吸引装置100の各構成要素に電力を供給する。電源部111は、例えば、リチウムイオン二次電池等の充電式バッテリにより構成され得る。
センサ部112は、吸引装置100に関する各種情報を取得する。一例として、センサ部112は、マイクロホンコンデンサ等の圧力センサ、流量センサ又は温度センサ等により構成され、ユーザによる吸引に伴う値を取得する。他の一例として、センサ部112は、ボタン又はスイッチ等の、ユーザからの情報の入力を受け付ける入力装置により構成される。
通知部113は、情報をユーザに通知する。通知部113は、例えば、発光する発光装置、画像を表示する表示装置、音を出力する音出力装置、又は振動する振動装置等により構成される。
記憶部114は、吸引装置100の動作のための各種情報を記憶する。本実施形態では、記憶部114は、加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定されている加熱プロファイルを記憶する。記憶部114は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体により構成される。
通信部115は、有線又は無線の任意の通信規格に準拠した通信を行うことが可能な通信インタフェースである。かかる通信規格としては、例えば、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等が採用され得る。
制御部116は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従って吸引装置100内の動作全般を制御する。制御部116は、例えばCPU(Central Processing Unit)、及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって実現される。
保持部60は、スティック型基材150を保持する。保持部60は、吸引装置100に形成された内部空間80を外部空間に連通する開口52から内部空間80に挿入されたスティック型基材150を保持する。なお、保持部60に保持されたスティック型基材150は、保持部60を備える吸引装置100と共に、本実施形態に係る吸引システムを構成する。
スティック型基材150は、基材部151、及び吸口部152を含む。基材部151は、エアロゾル源を含む。エアロゾル源が霧化されることで、エアロゾルが生成される。エアロゾル源は、例えば、グリセリン及びプロピレングリコール等の多価アルコール、並びに水等の液体である。エアロゾル源は、たばこ由来又は非たばこ由来の香味成分を含んでいてもよい。吸引装置100がネブライザ等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源は、薬剤を含んでもよい。なお、エアロゾル源は液体に限られるものではなく、固体であってもよい。スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、基材部151の少なくとも一部は内部空間80に収容され、吸口部152の少なくとも一部は開口52から突出する。そして、開口52から突出した吸口部152をユーザが咥えて吸引すると、基材部151から発生するエアロゾルがユーザの口内に到達する。
加熱部40は、エアロゾル源を加熱することで、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成する。一例として、加熱部40は、フィルム状に構成され、保持部60の外周を覆うように配置される。そして、加熱部40が発熱すると、スティック型基材150の基材部151が外周から加熱され、エアロゾルが生成される。加熱部40は、電源部111から給電されると発熱する。
断熱部70は、加熱部40から他の構成要素への伝熱を防止する。例えば、断熱部70は、真空断熱材、又はエアロゲル断熱材等により構成される。
以下では、吸引装置により生成されたエアロゾルをユーザが吸引することを、単に「吸引」又は「パフ」とも称する。また、ユーザが吸引する動作を、以下では「パフ動作」とも称する。
<<2.技術的特徴>>
(1)基材を押圧しながら加熱する構成
本実施形態に係る吸引装置100は、スティック型基材150を押圧しながら加熱する構成を有する。以下、かかる構成について詳しく説明する。
図2は、本実施形態に係る吸引装置100の物理構成を模式的に示す図である。図2に示すように、吸引装置100は、加熱部40及び保持部60を含む、ヒータアッセンブリ30を有する。図2に示すように、スティック型基材150がヒータアッセンブリ30(より詳しくは、保持部60)に保持された状態において、ヒータアッセンブリ30とスティック型基材150との間に空隙が存在する。ユーザがスティック型基材150を咥えて吸引すると、開口52から流入した空気が、当該空隙を経由して基材部151の端部からスティック型基材150の内部に流入し、吸口部152の端部からユーザの口内に流出する。即ち、ユーザが吸い込む空気は、空気流190A、空気流190B、空気流190Cの順で流れ、スティック型基材150から発生したエアロゾルと混合された状態で、ユーザの口腔内に導かれる。
図3は、図2に示したヒータアッセンブリ30の斜視図を示す。図3に示すように、ヒータアッセンブリ30は、トップキャップ32と、加熱部40と、チャンバ50と、を有する。チャンバ50は、スティック型基材150を受け入れるように構成される。加熱部40は、チャンバ50に受け入れられたスティック型基材150を加熱するように構成される。トップキャップ32は、チャンバ50にスティック型基材150を挿入する際のガイドの機能を有するとともに、チャンバ50を吸引装置100に対して固定するように構成されてもよい。
図4は、チャンバ50の斜視図を示す。図5は、図4に示す矢視4-4におけるチャンバ50の断面図を示す。図6は、図5に示す矢視5-5におけるチャンバ50の断面図を示す。図4及び図5に示すように、チャンバ50は、スティック型基材150が挿入される開口52と、スティック型基材150を保持する保持部60と、を含む。チャンバ50は、スティック型基材150を受け入れる内部空間80を囲む、中空部材として形成される。中空部材は、有底の筒状部材であり得る。なお、中空部材は底のない筒状体であってもよい。チャンバ50は、熱伝導率の高い金属で構成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等で形成され得る。これにより、チャンバ50からスティック型基材150へ効果的な加熱が可能になる。
図5及び図6に示すように、保持部60は、スティック型基材150の一部を押圧する押圧部62と、非押圧部66と、を含む。押圧部62は、内面62aと、外面62bとを有する。非押圧部66は、内面66aと、外面66bとを有する。図3に示すように、加熱部40は、押圧部62の外面62bに配置される。加熱部40は、押圧部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。
チャンバ50の開口52は、スティック型基材150を押圧せずに受け入れ可能であることが好ましい。チャンバ50の長手方向、言い換えればスティック型基材150がチャンバ50に挿入される方向又はチャンバ50の側面全体として伸びる方向、に直交する面におけるチャンバ50の開口52の形状は多角形又は楕円形であってもよいが、円形であることが好ましい。
図4、図5、及び図6に示すように、チャンバ50は、押圧部62をチャンバ50の周方向に2以上有する。図5及び図6に示すように、保持部60の2つの押圧部62は、互いに対向する。2つの押圧部62の内面62a間の少なくとも一部の距離は、チャンバ50に挿入されるスティック型基材150の押圧部62間に配置される箇所の幅よりも小さいことが好ましい。図示のように、押圧部62の内面62aは平面である。
図6に示すように、押圧部62の内面62aは、向かい合う一対の平面状の平面押圧面を有し、非押圧部66の内面66aは、一対の平面押圧面の両端を接続し、向かい合う一対の曲面状の曲面非押圧面を有する。図示のように、曲面非押圧面は、チャンバ50の長手方向に直交する面において、全体的に円弧状の断面を有し得る。図6に示すように、保持部60は均一な厚みを有する金属筒状体によって構成される。
図7は、スティック型基材150が保持部60に保持された状態の、非押圧部66を含むチャンバ50の縦断面図である。図8は、スティック型基材150が保持部60に保持された状態の、押圧部62を含むチャンバ50の縦断面図である。図9は、図8に示す矢視7-7におけるチャンバ50の断面図である。なお、図9においては、押圧部62においてスティック型基材150が押圧されることがわかりやすいように、押圧される前の状態のスティック型基材150の断面が示されている。
図9に示された、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150との間の空隙67は、スティック型基材150が保持部60に保持され、スティック型基材150が押圧部62により押圧されて変形しても、実質的に維持される。この空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられたスティック型基材150の端面(図7及び図8中下側の端面、即ち基材部151の端面)と連通し得る。この空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられチャンバ50の開口52から遠い方に位置づけられたスティック型基材150の端面(図7及び図8中下側の端面、即ち基材部151の端面)とに連通するということもできる。そして、チャンバ50の開口52からチャンバ50外に位置づけられたスティック型基材150の端面(図7及び図8中上側の端面、即ち吸口部152の端面)にかけて、空隙67及びスティック型基材150の内部を経由する、空気流路が形成される。これにより、スティック型基材150に供給される空気を導入するための流路を吸引装置100に別途設ける必要がないので、吸引装置100の構造を簡素化することができる。また、非押圧部66の、空隙67の一部を形成する箇所が露出するので、流路の清掃を容易に行うことができる。さらには、空隙67を空気が通過する過程で空気が加熱されるので、加熱部40による放熱を有効利用して加熱効率を高めると共に、パフに伴い流入した空気によるスティック型基材150の過度な降温を防止することができる。その結果、加熱部40の消費電力を抑制することができる上に、パフに伴うスティック型基材150の降温に起因する香味低減を防ぐことができる。通気抵抗の観点等から、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150との間の空隙67の高さは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であることがさらに好ましく、0.3mm以上0.5mm以下であることが最も好ましい。
図9に示すように、スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、押圧部62の内面62aとスティック型基材150の中心との距離LAは、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150の中心との距離LBよりも短い。かかる構成により、押圧部62の外面62bに配置された加熱部40とスティック型基材150の中心との距離を、押圧部62が設けられない場合と比較して短くすることができる。よって、スティック型基材150の加熱効率を高めることができる。
図4から図8に示すように、チャンバ50は、底部56を有する。底部56は、図8に示すように、スティック型基材150の端面の少なくとも一部を露出するように、チャンバ50に挿入されたスティック型基材150の一部を、底壁56aにより支持する。また、底部56は、露出したスティック型基材150の端面が空隙67と連通するように、スティック型基材150の一部を、底壁56aにより支持し得る。
図5、図7及び図8に示すように、チャンバ50の底部56は、底壁56aを有し、これに加えて側壁56bを有してもよい。側壁56bによって画定される底部56の幅は、底壁56aに向かって小さくなってもよい。図6及び図9に示すように、保持部60の非押圧部66の内面66aは、チャンバ50の長手方向に直交する面において湾曲している。
非押圧部66の内面66aのチャンバ50の長手方向に直交する面における形状は、チャンバ50の長手方向に直交する面における開口52の形状と、チャンバ50の長手方向の任意の位置において同一であることが好ましい。言い換えれば、非押圧部66の内面66aは、開口52を形成するチャンバ50の内面を長手方向に延長して形成されることが好ましい。
本実施形態では、図6及び図8に示すように、保持部60は、保持しているスティック型基材150の状態を検知する状態検知部69が設けられる。詳しくは、状態検知部69は、押圧部62の内面62aにおける一対の平面押圧面の少なくとも一方の表面に、長手方向及び短手方向のそれぞれの略中央部に配置される。例えば、状態検知部69は、圧力センサで構成して、スティック型基材150の接触圧を測定するのがよい。なお、状態検知部69は、平面押圧面以外にも、保持しているスティック型基材150の一部と接触する位置であれば任意の位置に配置されてよい。例えば、スティック型基材150の一部を支持する底部56に配置されてよい。また、複数の状態検知部69が設けられてもよい。
図3から図5に示すように、チャンバ50は、開口52と保持部60との間に筒状の非保持部54を有することが好ましい。スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、非保持部54とスティック型基材150との間に隙間が形成され得る。
図5から図9に示すように、保持部60の外周面は、保持部60の長手方向全長に亘って同一の形状及び大きさ(保持部60の長手方向に直交する面における保持部60の外周長さ)を有することが好ましい。
また、図4、及び図5に示すように、チャンバ50は、開口52を形成するチャンバ50の内面と押圧部62の内面62aとを接続するテーパ面58aを備えた第1ガイド部58を有することが好ましい。
図3に示すように、加熱部40は、加熱要素42を有する。加熱要素42は、例えばヒーティングトラックであってもよい。例えば図6に示すように、押圧部62の外面62bと非押圧部66の外面66bとは、角度を有して互いに接続され、押圧部62の外面62bと非押圧部66の外面66bとの間に境界71が形成され得る。ヒーティングトラックは、好ましくは境界71の延びる方向(チャンバの長手方向)と交わる方向に延び、好ましくは境界71の延びる方向と直角方向に延びる。
図3に示すように、加熱部40は、加熱要素42に加えて、加熱要素42の少なくとも一面を覆う電気絶縁部材44を有することが好ましい。本実施形態においては、電気絶縁部材44は加熱要素の両面を覆う様に配置される。また、電気絶縁部材44は、保持部60の外面の領域内に配置されることが好ましい。言いかえれば、電気絶縁部材44は、チャンバ50の長手方向の第1ガイド部58側において保持部60の外面からはみ出さないように配置されることが好ましい。上述したように、開口52と押圧部62との間に第1ガイド部58が設けられるので、チャンバ50の長手方向において、チャンバ50の外面の形状及びチャンバの長手方向に直交する面におけるチャンバの外周長さが変わり得る。このため、電気絶縁部材44が保持部60の外面上に配置されることで、たるみが生じることを抑制することができる。
加熱部40は、開口52と第1ガイド部58との間のチャンバ50の外面、即ち非保持部54の外面、第1ガイド部58の外面、及び非押圧部66の外面から選ばれる少なくとも一つには配置されないことが好ましい。加熱部40は、押圧部62の外面62bの全体に亘って配置されることが好ましい。
図3に示すように、吸引装置100は、加熱部40から延びる帯状の電極48を有する。帯状の電極48は、押圧部62の外面62bに加熱部40が配置された状態において、平面である押圧部62の外面62bから押圧部62の外面62bの外部に延びることが好ましい。
また、図3、図7及び図8に示すように、加熱部40は、開口52と反対側に位置する第1部分40aと、開口52側に位置する第2部分40bと、を有する。第2部分40bのヒータ電力密度は、第1部分40aのヒータ電力密度よりも高いことが好ましい。或いは、第2部分40bの昇温速度は、第1部分40aの昇温速度よりも高いことが好ましい。或いは、第2部分40bの加熱温度は任意の同時間において、第1部分40aの加熱温度よりも高いことが好ましい。第2部分40bは、スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、スティック型基材150に含まれる喫煙可能物の長手方向において喫煙可能物の1/2以上に対応する保持部60の外面を覆うことが好ましい。
以上で説明した実施形態では、チャンバ50は互いに対向する一対の押圧部62を有しているが、チャンバの形状はこれに限らない。例えば、チャンバ50は、1つの押圧部62を有していてもよいし、3つ以上の押圧部62を有していてもよい。
以上説明したように、吸引装置100は、押圧部62によりスティック型基材150を押圧しながら保持し、加熱する。かかる構成により、以下に説明する種々の効果が奏される。
まず、加熱部40からスティック型基材150への熱伝導率が向上する。即ち、スティック型基材150の加熱効率を向上させることができる。スティック型基材150の加熱効率が向上するため、スティック型基材150の温度を目標温度に早く到達させることができるので、後述する予備加熱にかかる時間を短縮することができる。さらに、スティック型基材150の加熱効率が向上するため、加熱部40の温度変化に対するスティック型基材150の温度の追随性を向上させることができる。その結果、第1に、エアロゾルの生成量の制御をより容易にすることができる。第2に、ユーザによるパフに伴いスティック型基材150の温度が低下したとしても、直ぐに元の温度に戻すことができる。第3に、外気温等の外部環境の影響を低減することができる。第4に、後述する加熱プロファイルにおける温度変化と同様の温度変化をスティック型基材150において実現することが容易になる。第5に、加熱プロファイルにおける後述する再昇温区間の効果である香味向上の効果を迅速に生じさせることができる。
また、吸引装置100は、スティック型基材150を押圧しつつ、外周から加熱する。かかる構成により、スティック型基材150内のエアロゾル源の形状によらず、上述したスティック型基材150の加熱効率の向上、及びスティック型基材150の温度の追随性の向上を、実現することができる。さらに、かかる構成により、スティック型基材150の製造工程で発生するバラつきに起因する、スティック型基材150の形状又は大きさの誤差によらず、上述したスティック型基材150の加熱効率の向上、及びスティック型基材150の温度の追随性の向上を、実現することができる。これに対し、スティック型基材150にブレード状の加熱部を挿入し、スティック型基材150を内部から加熱する構成をとる比較例では、これらの効果を奏することが困難である。なぜならば、当該比較例において、仮にスティック型基材150を外周から押圧したとしても、ブレード状の加熱部とスティック型基材150内のエアロゾル源とをうまく接触させることが困難なためである。
また、吸引装置100では、断熱部70は、加熱部40を外周から囲むように配置される。その場合、押圧部62の外面62bが非押圧部66の外面66bと比較して内部空間80の中心寄りに位置している分、押圧部62の外面62bと断熱部70の内面との間で形成される空気層の厚みを厚くすることができる。若しくは、押圧部62に重畳される断熱部70の厚みを厚くすることができる。従って、断熱部70による断熱効果を向上させることができる。
(2)加熱プロファイルに基づく加熱動作の制御
(2-1)加熱プロファイル
吸引装置100は、加熱プロファイルに基づいて加熱部40の動作(つまり、加熱動作)を制御する。詳しくは、吸引装置100は、加熱プロファイルにおいて規定された目標温度の時系列推移が実現されるように、電源部111から加熱部40への給電動作を制御することで加熱部40の温度を制御する。加熱プロファイルとは、加熱部40の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された情報である。なお、加熱プロファイルの情報は、記憶部114に格納される。スティック型基材150を加熱するために加熱部40の加熱動作を実行する際に当該情報が参照される。また、当該情報は、参照されるのみならず、スティック型基材150の加熱の途中で更新されてもよい。
これにより、加熱プロファイルに従った加熱部40の動作に応じて、加熱プロファイルにより計画された通りにエアロゾルが生成される。加熱プロファイルは、典型的には、スティック型基材150から生成されるエアロゾルをユーザが吸引した際にユーザが味わう香味が最適になるように設計される。よって、加熱プロファイルに基づいて加熱部40の動作を制御することにより、ユーザが味わう香味を最適にすることができる。
(2-2)加熱部40における加熱プロファイルに基づく温度制御
制御部116は、加熱プロファイルにおいて規定された目標温度と加熱部40の実際の温度(以下、実温度とも称する)との乖離に基づいて、加熱部40の動作を制御する。より詳しくは、制御部116は、加熱プロファイルに基づく加熱部40への給電動作の制御を開始してからの経過時間に対応する加熱部40の目標温度と、加熱部40の実温度と、の乖離に基づいて、電源部111による加熱部40への給電動作を制御する。制御部116は、加熱部40の実温度の時系列推移が、加熱プロファイルにおいて定義された加熱部40の目標温度の時系列推移と同様になるように、加熱部40の温度を制御する。加熱部40の温度制御は、例えば公知のフィードバック制御によって実現できる。具体的には、制御部116は、電源部111からの電力を、パルス幅変調(PWM)又はパルス周波数変調(PFM)によるパルスの形態で、加熱部40に供給させる。その場合、制御部116は、電力パルスのデューティ比を調整することによって、加熱部40の温度制御を行うことができる。
フィードバック制御では、制御部116は、実温度と目標温度との差分等に基づいて、電源部111から加熱部40へ供給する電力、例えば上述したデューティ比を制御すればよい。フィードバック制御は、例えばPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)であってよい。若しくは、制御部116は、単純なON-OFF制御を行ってもよい。例えば、制御部116は、電源部111に指令することにより、実温度が目標温度に達するまで加熱部40による加熱動作を実行させ、実温度が目標温度に達した場合に加熱部40による加熱を停止させ、実温度が目標温度より低くなると加熱部40による加熱動作を再度実行させてもよい。
加熱部40の温度は、例えば、加熱部40を構成する発熱抵抗体の電気抵抗値を測定又は推定することによって定量できる。これは、発熱抵抗体の電気抵抗値が、温度に応じて変化するためである。発熱抵抗体の電気抵抗値は、例えば、発熱抵抗体での電圧降下量を測定することによって推定できる。発熱抵抗体での電圧降下量は、発熱抵抗体に印加される電位差を測定する電圧センサによって測定できる。他の例では、加熱部40の温度は、加熱部40付近に設置された温度センサによって測定されることができる。
加熱プロファイルに基づく加熱は、加熱開始を指示する操作が行われたことが検出されたタイミングから開始される。加熱開始を指示する操作の一例は、吸引装置100に設けられたボタンの押下である。加熱開始を指示する操作の他の一例は、パフ動作である。加熱開始を指示する操作の他の一例は、スマートフォン等の他の装置からの信号の受信である。
加熱開始後、時間経過と共に基材に含まれるエアロゾル源は徐々に減少していく。典型的には、エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングで、加熱部40による加熱動作が停止される。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してから所定時間が経過したタイミングである。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、所定回数のパフが検出されたタイミングである。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、吸引装置100に設けられたボタンが押下されたタイミングである。かかるボタンは、例えば、ユーザが十分な香味を感じることができなくなった際に押下される。
なお、十分な量のエアロゾルが発生すると想定される期間は、パフ可能期間とも称される。他方、加熱が開始されてからパフ可能期間が開始されるまでの期間は、予備加熱期間とも称される。予備加熱期間において行われる加熱は、予備加熱とも称される。パフ可能期間が開始するタイミング及び終了するタイミングが、ユーザに通知されてもよい。その場合、ユーザは、かかる通知を参考に、パフ可能期間においてパフを行うことができる。
制御部116は、保持部60によるスティック型基材150の保持状態に基づいて加熱部40の動作を制御する。詳しくは、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62によって押圧された状態で加熱プロファイルに基づきスティック型基材150が加熱されるように、加熱部40の動作を制御する。即ち、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62によって押圧された状態で、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する目標温度に応じて加熱部40への給電量を調整し、加熱部40によるスティック型基材150の加熱を制御する。その際、制御部116は、押圧部62による押圧の強さに応じて給電量をさらに調整してもよい。また、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62により押圧されていない状態では、加熱プロファイルに基づくスティック型基材150の加熱を行わないように、加熱部40の動作を制御してもよい(例えば、加熱部40への給電を行わない)。押圧することでスティック型基材150の加熱効率が向上することを考慮すれば、かかる構成により、スティック型基材150の加熱効率の向上の程度に応じて、加熱部40の動作を制御することが可能となる。したがって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
(2-3)温度遷移の基本態様
加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含む。複数の時間区間の各々には、時間区間の終期における目標温度が関連付けられて設定される。そして、制御部116は、複数の時間区間のうち、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する時間区間に設定された目標温度と、実温度と、の乖離に基づいて、加熱部40の動作を制御する。具体的には、制御部116は、加熱プロファイルに含まれる複数の時間区間の各々の終期までに、設定された目標温度に達するよう、加熱部40の動作を制御する。加熱プロファイルの一例を、下記の表1に示す。
表1に示す加熱プロファイルは、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間から成り、これらを順に含む。表1に示した例では、初期昇温区間は、加熱プロファイルの開始から35秒後までの区間である。途中降温区間は、初期昇温区間の終期から10秒後までの区間である。再昇温区間は、途中降温区間の終期から310秒後までの区間である。加熱プロファイルが、これらの時間区間を含むことにより、以下に説明するように、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。すなわち、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能となる。
初期昇温区間は、加熱プロファイルの最初に含まれる時間区間である。初期昇温区間に設定された目標温度は、初期値よりも高い。初期値とは、加熱開始前の加熱部40の温度として想定される温度である。初期値の一例は、0℃等の任意の温度である。初期値の他の一例は、気温に対応する温度である。
途中降温区間は、加熱プロファイルの途中に含まれる時間区間である。途中降温区間に設定された目標温度は、途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度よりも低い。表1に示した例では、途中降温区間に設定された目標温度230℃は、ひとつ前の時間区間である初期昇温区間に設定された目標温度295℃よりも低い。
再昇温区間は、加熱プロファイルの最後に含まれる時間区間である。再昇温区間に設定された目標温度は、再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度よりも高い。表1に示した例では、再昇温区間に設定された目標温度260℃は、ひとつ前の時間区間である途中降温区間に設定された目標温度230℃よりも高い。
制御部116が表1に示した加熱プロファイルに従って加熱部40の動作を制御した場合の、加熱部40の実温度の時系列推移について、図10を参照しながら説明する。図10は、表1に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
図10に示すように、加熱部40の実温度は、初期昇温区間において上昇し、初期昇温区間の終期において目標温度である295℃に達している。加熱部40の実温度が初期昇温区間に設定された目標温度に達した場合、スティック型基材150の温度が十分な量のエアロゾルが発生する温度に達することが想定される。初期昇温区間は、加熱プロファイルの最初に設定される。そのため、加熱部40は、初期昇温区間において、初期温度から初期昇温区間に設定された目標温度である295℃まで一気に昇温される。なお、初期温度とは、加熱プロファイルに基づく加熱開始時の加熱部40の実温度である。かかる構成により、予備加熱を早期に終えることが可能となる。
制御部116は、初期昇温区間において実温度が初期昇温区間に設定された目標温度に達するように加熱部40の温度制御を行う。即ち、制御部116は、初期温度から295℃に向けて加熱部40の温度を制御する。加熱開始から35秒が経過する前に実温度が295℃に達した場合、制御部116は、295℃を維持するよう加熱部40の温度を制御する。
図10に示すように、加熱部40の実温度は、途中降温区間において降下し、途中降温区間の終期において目標温度である230℃に達している。途中降温区間は、初期昇温区間の次に設定される。そのため、加熱部40は、途中降温区間において、初期昇温区間の設定温度から途中降温区間の設定温度まで一旦降温することとなる。加熱部40を初期昇温区間の目標温度のような高い温度のまま維持すると、スティック型基材150に含まれるエアロゾル源が急速に消費され、ユーザが味わう香味が強すぎてしまう等の不都合が生じる。その点、途中降温区間を設けることで、そのような不都合を回避して、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能である。
制御部116は、途中降温区間においては、加熱部40に給電しないよう制御する。つまり、制御部116は、途中降温区間においては、加熱部40への給電を停止し、加熱部40による加熱が行われないように制御する。かかる構成によれば、加熱部40の実温度を最も早く降下させることが可能となる。また、途中降温区間においても加熱部40への給電を行う場合と比較して、吸引装置100の消費電力を低減することも可能である。
図10に示すように、加熱部40の実温度は、再昇温区間において上昇し、再昇温区間の終期において目標温度である260℃に達している。再昇温区間は、途中降温区間の次であって、加熱プロファイルの最後に設定される。そのため、加熱部40は、再昇温区間において、途中降温区間の設定温度から再昇温区間の設定温度まで再度昇温されて、その後加熱を停止する。初期昇温区間の後に加熱部40を降温させ続けると、スティック型基材150も降温するので、エアロゾルの生成量が低下し、ユーザが味わう香味が劣化してしまい得る。その点、途中降温区間の後に再昇温区間を設けることで、加熱プロファイルの後半においてもユーザが味わう香味の劣化を防止することが可能となる。
制御部116は、再昇温区間において実温度が再昇温区間に設定された目標温度に達するように加熱部40の温度制御を行う。即ち、制御部116は、260℃に向けて加熱部40の温度を制御する。再昇温区間の開始から310秒が経過する前に実温度が260℃に達した場合、制御部116は、260℃を維持するよう加熱部40の温度を制御する。
初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、再昇温区間が最も小さく、途中降温区間が次に小さく、初期昇温区間が最も大きくてもよい。初期昇温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、初期昇温区間に設定された目標温度と初期値との差の絶対値を初期昇温区間の時間長で割った値である。途中降温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、途中降温区間に設定された目標温度と途中降温区間のひとつ前の時間区間(例えば、初期昇温区間)に設定された目標温度との差の絶対値を途中降温区間の時間長で割った値である。再昇温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、再昇温区間に設定された目標温度と再昇温区間のひとつ前の時間区間(例えば、途中降温区間)に設定された目標温度との差の絶対値を再昇温区間の時間長で割った値である。また、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、途中降温区間が最も短く、初期昇温区間が次に短く、再昇温区間が最も長い。かかる構成により、図10に示すように、加熱部40は、初期昇温区間において急速に昇温し、途中降温区間において高温な状態から早期に脱し、再昇温区間においてゆっくりと昇温することとなる。したがって、予備加熱を早期に終えることが可能となると共に、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
制御部116は、加熱プロファイルにおける複数の時間区間の切り替えの少なくとも一部を、加熱部40の実温度に基づいて判定してもよい。例えば、制御部116は、初期昇温区間から途中降温区間への切り替え、及び再昇温区間の終了を、各々の時間区間に設定された目標温度と加熱部40の実温度との乖離が所定の閾値以内になったことに基づいて判定してもよい。
制御部116は、加熱プロファイルにおける複数の時間区間の切り替えの少なくとも一部を、経過時間に基づいて判定してもよい。例えば、制御部116は、途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、途中降温区間の終期を判定してもよい。例えば、図10に示した加熱プロファイルでは、途中降温区間は10秒間として設定されている。そのため、制御部116は、途中降温区間を開始してから10秒経過した場合に、再昇温区間への切り替えを判定し、加熱部40による加熱を再開させる。かかる構成によれば、加熱部40の温度を測定せずに途中降温区間から再昇温区間への切り替えを判定することができるので、制御部116の処理負荷を軽減することが可能となる。さらに、加熱部40を構成する発熱抵抗体の電気抵抗値に基づいて加熱部40の温度を測定する構成をとる場合であっても、途中降温区間において加熱部40への給電を停止しつつ、再昇温区間への切り替えを判定することが可能となる。
ただし、途中降温区間の終期における加熱部40の実温度は、外気温等の外部環境に依存して変動し得る。例えば、図10に示した加熱プロファイルに基づいて動作する場合、途中降温区間の終期における加熱部40の実温度は、外気温が低い場合には220℃となり、外気温が高い場合には240℃になり得る。
そこで、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間(即ち、再昇温区間)の始期において、加熱部40の実温度と途中降温区間に設定された目標温度とに基づいて、加熱部40の動作を制御する。より詳しくは、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間の始期において、加熱部40の実温度が途中降温区間に設定された目標温度未満である場合に、第1のデューティ比で加熱部40への給電を行う。他方、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間の始期において、加熱部40の実温度が途中降温区間に設定された目標温度以上である場合に、第2のデューティ比で加熱部40への給電を行う。ここで、第1のデューティ比は、第2のデューティ比よりも大きい。ここでのデューティ比とは、所定期間に占める加熱部40への給電が継続される期間の比である。かかる構成によれば、外部環境の影響によって加熱部40の目標温度と実温度との間に乖離が生じる場合であっても、当該乖離を迅速に小さくすることができるので、ユーザが味わう香味の劣化を抑制することが可能となる。
(2-4)処理の流れ
図11は、吸引装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、まず、吸引装置100は、初期昇温区間において初期温度から初期昇温区間に設定された目標温度まで加熱部40を昇温させる(ステップS102)。
次いで、吸引装置100は、途中降温区間において加熱部40への給電を停止し、途中降温区間に設定された目標温度まで加熱部40を降温させる(ステップS104)。
次に、吸引装置100は、再昇温区間において再昇温区間に設定された目標温度まで加熱部40を昇温させる(ステップS106)。
そして、吸引装置100は、再昇温区間が終了すると共に、加熱部40への給電を停止する(ステップS108)。
(2-5)温度遷移の変形態様
初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間は、各々、加熱部40の温度を一定に維持させるための温度維持区間を含んでもよい。その場合の加熱プロファイルの一例を表2に示す。
図12は、表2に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度(℃)である。本グラフにおける線22は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
表2に示した例では、初期昇温区間は、加熱プロファイルの開始から35秒後までの区間である。初期昇温区間のうち最初の25秒間が昇温区間であり、目標温度を最初に0℃から295℃に上昇させる予備加熱のための時間区間を構成する。また、最後の(昇温区間に後続する)10秒間が温度維持区間であり、目標温度を295℃に維持させる。
初期昇温区間の次の途中降温区間は、初期昇温区間の終期から145秒後までの区間である。途中降温区間のうち最初の10秒間が降温区間であり、目標温度を295℃から230℃に下降させる。また、最後の(降温区間に後続する)135秒間が温度維持区間であり、目標温度を230℃に維持させる。
途中降温区間の次の再昇温区間は、途中降温区間の終期から220秒後までの区間である。再昇温区間のうち最初の80秒間が昇温区間であり、目標温度を230℃から260℃に再び上昇させる。また、最後の(昇温区間に後続する)140秒間が温度維持区間であり、目標温度を260℃に維持させる。
表2の例では、初期昇温区間の目標温度は295℃、途中降温区間の目標温度は230℃、及び再昇温区間の目標温度は260℃であり、これらの温度が、各々の時間区間に関連付けられる目標温度(以下、区間目標温度)を構成している。区間目標温度は、加熱プロファイルにおいて各々の時間区間に関連付けるように規定される。
なお、区間目標温度は、1又は複数の値が設定されてよい。また、温度維持区間の始期と終期の目標温度は必ずしも同一でなくてもよい。
加熱プロファイルがこれらの時間区間を含むことにより、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。特に、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々に、温度維持区間を設ける構成とすることにより、初期昇温区間及び再昇温区間にあっては、スティック型基材150を内部まで効果的に昇温させることができる。また、途中降温区間にあっては、スティック型基材150を内部まで十分に降温させることができる。すなわち、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能となる。
(3)加熱プロファイルの補正動作
(3-1)加熱プロファイルの補正
スティック型基材150の加熱が進むにつれて、エアロゾル源が霧化される量が増え、スティック型基材150の消費量が増える。スティック型基材150の消費に伴い、スティック型基材150は、徐々に物理的に縮小することになる。その結果、スティック型基材150は、保持部60に保持された状態で、加熱時間と共にスティック型基材150の径方向の距離(例えば、図9の距離LA及びLB)が短くなる場合がある。スティック型基材150の径方向の距離が短くなると、押圧部62における押圧の大きさが減少する。これにより、加熱時の熱伝導率が低下し、加熱部40の実温度が目標温度に到達しにくくなる場合もある。
本実施形態は、スティック型基材150の消費の状況に応じて、加熱プロファイルを動的に調整することが可能な吸引装置100を提供する。すなわち、スティック型基材150の消費が進行した状況でも、吸引体験を低下させることなく、ユーザに対し、十分なエアロゾル及び香味を供給可能な吸引装置100を提供する。
図6及び図8に関して前述したように、本実施形態の吸引装置100は、保持しているスティック型基材150の状態を検知する状態検知部69が保持部60に設けられる。状態検知部69を用いることで、押圧されているスティック型基材150の状態を検知することができる。ここで、スティック型基材150の状態とは、例えば、押圧の強さに基づく接触の状態である。接触の状態を検知するために、状態検知部69は、押圧されたスティック型基材150からの応力を測定するのがよい。具体的には、状態検知部69を圧力センサで構成することにより、状態検知部69は、スティック型基材150の接触圧を測定するのがよい。なお、本実施形態では、圧力センサに替えて、接触センサを使用としてもよい。
図13は、本実施形態により処理を実行するための制御部116の構成を機能的に示したブロック図である。図示するように、制御部116は、給電指示部116a、検知指示部116b、判定部116c、補正部116d、及び通知指示部116eを含む。給電指示部116aは、電源部111に対し、加熱部40への給電又はその停止を指示する。検知指示部116bは、状態検知部69に対し、スティック型基材150の状態の検知を指示する。判定部116cは、スティック型基材150の状態を判定する。補正部116dは、加熱プロファイルに規定される目標温度を補正する。通知指示部116eは、通知部113に対し、所定の通知動作を実行するように指示する。
(3-2)処理の流れ
図14は処理の流れの一例を示すフローチャートであり、図15は図14に示した処理の一部の詳細の一例を示すフローチャートである。なお、図14及び図15に示される各処理ステップは例示に過ぎず、これに限定されずに任意の他の処理ステップが含まれてもよいし、一部の処理ステップが省略されてもよい。また、ここに示される各処理ステップの順序も例示に過ぎず、これに限定されずに任意の順序としてよく、或いは、並列的に実行されてよい場合もある。
図14に示すように、最初に、吸引装置100の動作が開始される。そして、給電指示部116aは、加熱開始を指示する操作が行われたことに応じて、電源部111に対し加熱部40への給電を指示する。これに応じて、加熱部40は、加熱プロファイルに基づく加熱動作を開始する(ステップS202)。その結果、保持部60に保持されているスティック型基材150が加熱される。
次いで、検知指示部116bは、状態検知部69に対し、スティック型基材150の状態の検知を開始させる。これに応じて、状態検知部69は、加熱プロファイルに基づき加熱部40がスティック型基材150を加熱している間、スティック型基材150の状態を検知する(ステップS204)。具体的には、押圧部62において押圧されたスティック型基材150の一部からの応力を圧力センサで測定することにより、スティック型基材150の押圧の強さを検知する。なお、当該検知はリアルタイムで実施するのがよい。
引き続き、判定部116cは、スティック型基材150の接触の状態が所定の条件を満たすかについて判定する(ステップS206)。具体的には、測定された応力が所定の閾値を下回るかについて判定する。
ここで、測定された応力が所定の閾値を下回ったと判定される場合とは(Yes)、押圧部62において押圧されたスティック型基材150の一部の接触圧が弱まっており、つまり、スティック型基材150が縮小したことを意味する。そこで、補正部116dは、加熱プロファイルを調整する(ステップS208)。具体的には、加熱プロファイルに規定されている目標温度の少なくとも一部を補正して、加熱の度合を強める。詳しくは、当該目標温度の少なくとも一部を、規定されている目標値よりも高い値に更新する。
上述したように、加熱プロファイルに含まれる複数の時間区間の各々には、1又は複数の区間目標温度が関連付けられて設定されている。図15のフローチャートに示すように、S208の加熱プロファイルの調整は、最初に、現在の時間に対応する現在の時間区間を特定し(ステップS208a)、次いで、現在の時間区間以降の時間区間に関連付けられる区間目標温度を補正するのがよい(ステップS208b)。加熱プロファイルにおける区間目標温度の補正は、関連付けられる時間区間に共通して所定の値だけ各目標値よりも高い値に更新するのがよい。或いは、関連付けられる時間区間ごとに異なる値だけ各目標値よりも高い値に更新するのがよい。
また、上述したように、複数の時間区間の各々は、区間目標温度を維持するための温度維持区間を最後に含んでよく、この場合、区間目標温度は、温度維持区間の終期に関連付けられるのがよい。これに加えて、区間目標温度は、温度維持区間の始期に関連付けられてもよい。
例えば、S208aにおいて現在の時間が温度維持区間に含まれると特定される場合には、S208bにおいて、現在の時間区間の終期に関連付けられている区間目標温度と、これに後続する時間区間に関連付けられている区間目標温度とを補正するのがよい。ここでは、特に、後続する時間区間に含まれる温度維持区間の始期及び終期に関連付けられている区間目標温度を補正するのがよいこのように、温度維持区間の始期及び終期に区間目標温度を関連付けることにより、更に柔軟な加熱プロファイルの調整を可能とする。
代替では、S208aにおいて現在の時間が温度維持区間に含まれると特定される場合に、(現在の時間区間の終期の目標温度は補正せず)現在の時間区間に後続する時間区間に関連付けられている区間目標温度を補正するのがよい。これにより、現在の時間区間の終期直前における急な区間目標温度の補正の発生を回避することができ、電源部110及び加熱部40への負荷の急激な増加を回避し、吸引装置100の故障を予防することができる。
図14に戻り、S208で加熱プロファイルを調整したのに併せて、通知指示部116eは、通知部113に対し、その旨の通知を指示する。これに応じて、通知部113は、所定の通知動作を実行する(ステップS210)。通知動作は、発光する発光装置、画像を表示する表示装置、音を出力する音出力装置、又は振動する振動装置等を用いて実行される。これにより、加熱プロファイルが調整された旨を即座にユーザに提示することができる。
引き続き、給電指示部116aは電源部111に対し加熱部40への給電を指示する。これに応じて、加熱部40は、調整された加熱プロファイルに基づいて、加熱動作を加熱の終了まで実行する(ステップS212)。
他方、S206で応力が所定の閾値を下回っていないと判定される場合とは(No)、押圧部62において押圧されたスティック型基材150の一部の接触圧が許容範囲にあり、スティック型基材150が未だ縮小していないことを意味する。この場合は、給電指示部116aは引き続き、電源部111に対し加熱部40への給電を指示する。つまり、加熱部40は、当初の加熱プロファイルに基づいて、加熱動作を継続する(ステップS216)。
加熱の終了に至るまでは(ステップS218)、繰り返し、S204でスティック型基材150の状態を検知して、S206で所定の閾値を下回るかについて判定を行う。これにより、スティック型基材150の状況を効率的にチェックすることができる。
現在の時間が、加熱プロファイルに含まれる最後の時間区間に到達したときは、給電指示部116aは、電源部111に対し、加熱部40への給電の停止を指示する。つまり、加熱部40は、加熱動作を終了する(ステップS214)。その結果、本フローチャートの一連の処理ステップは終了する。
(3-3)変更例
a)上記では、最初に、給電指示部116aは、加熱開始を指示する操作が行われたことに応じて、電源部111に対し加熱部40への給電を指示するものとした。これに応じて、ステップS202では、加熱部40は加熱プロファイルに基づく加熱動作を開始した。これに替えて、変更例では、加熱開始を指示する操作が行われたことに応じて、判定部116cは、最初に、測定された応力が所定の閾値を下回るかについて判定を行ってもよい。そして、測定された応力が所定の閾値を下回っている場合は、そのまま、ステップS202に進み、加熱部40は加熱プロファイルに基づく加熱動作を開始してよい。
他方、測定された応力が所定の閾値を下回っていない場合は、給電指示部116aは、電源部111に対し加熱部40への給電を禁止させるのがよい。これは、最初の状態で応力が所定の閾値を下回っていないような場合は、スティック型基材150が不良状態であると推定されるべきとの想定に基づく。不良状態には、例えば、不良品や模倣品のような不適切なスティック型基材150が使用されている状態、及び保持部60がスティック型基材150を適切に保持できていない状態等が含まれる。
b)また、変更例では、上記に加え、状態検知部69によって測定された応力に基づく他の処理ステップが組み込まれてもよい。例えば、応力がゼロであると判定される場合には、制御部116は、スティック型基材150の保持部60への接触状態が解除されたと判断するのがよい。つまり、スティック型基材150が保持部60から取り外されたと判断して、給電指示部116aは、電源部111に対し、加熱部40への給電の停止を指示し、加熱部40による加熱動作を強制的に終了させてもよい。
c)更に、変更例では、上記では、スティック型基材150の押圧の強さをリアルタイムで検知するものとしたが、これに替えて、特定のタイミングで検知を行うようにしてもよい。具体的には、連続する2つの時間区間の遷移のタイミングに関連付けられるタイミングで検知を行ってもよい。一例では、区間目標温度が切り替わるタイミングにおいて、スティック型基材150の押圧の強さを検知してもよい。これにより、リアルタイムで検知するのと比べて、制御部116の制御動作負荷、電源部110の給電負荷、及び/又は加熱部40の加熱動作負荷を低減させることができる。また、吸引装置100の消費電力を低減させることができる。
他の例では、当該区間目標温度が切り替わるタイミングの所定秒前(例えば、5秒前)又は所定秒後(例えば、5秒後)において、スティック型基材150の押圧の強さを検知してもよい。検知のタイミングに、区間目標温度が切り替わる前後のタイミングを採用することにより、切り替わるタイミングを採用するのと比べて、電源部110及び加熱部40への負荷の増加を回避し、吸引装置100の故障を予防することができる。
本実施形態によれば、スティック型基材150の消費状況に応じて加熱プロファイルを柔軟に補正することができる。詳しくは、状態検知部69が応力を測定することを通じて、加熱部40による加熱動作を、押圧部62によるスティック型基材150の押圧の強さに応じて動的に制御することができる。これにより、加熱の結果、スティック型基材150の径方向の距離が短くなり、押圧部62における押圧の大きさが減少することによる熱伝導率の低下を防ぐことができる。すなわち、スティック型基材150の消費がある程度進行した状況でも、吸引体験を低下させることなく、ユーザに対して十分なエアロゾル及び香味を供給可能とすることができる。
(4)加熱プロファイルの補正動作の適用例
(4-1)温度遷移の基本態様への適用
本適用例では、加熱プロファイルの補正動作(図13乃至図15)を、温度遷移の基本態様(図10及び図11)に適用している。そのような一適用例の加熱プロファイルを表3に示す。本適用例では、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間のうち、再昇温区間に含まれる時間T1において加熱プロファイルが調整される。
図16は、表3に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度(℃)である。本グラフにおける線21aは、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
表3に示すように、加熱プロファイルに含まれる再昇温区間は、当初、加熱部40の目標温度を230℃から260℃に上昇させるように規定されていた。再昇温区間の当初の区間目標温度は、再昇温区間の終期に関連付けられ、その目標温度である260℃としていた。現在の時間が時間T1である。
図16に示すように、時間T1に対応する再昇温区間において、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったのに応じて、当初の区間目標温度である260℃は、調整後では280℃へと当初より高い値に更新される。
加熱プロファイルの調整の結果、再昇温区間の途中で加熱プロファイルのグラフの線21aは当初の線21とは異なるものとなる。具体的には、図示したように、再昇温区間における時間T1以降の直線の傾きは、時間T1以前の直線の傾きよりも大きくなる。なお、本適用例では、区間目標温度を260℃から280℃に20℃だけ上昇させている。上昇させる温度値は、予め決められた値としてもよいし、又は予め決められた数式に従い、応力の値に基づいて動的に算出されてもよい。
加熱プロファイルの調整は、時間区間ごとに実施有無を決定するのがよい。加熱プロファイルの調整の実施有無は、例えば、加熱プロファイル中でフラグを設定することにより、時間区間ごとに設定することができる。本適用例では、再昇温区間において加熱プロファイルの調整が実施される。スティック型基材150が消費されることにより押圧の大きさが減少するのは、通常、ユーザがパフ動作を実行している再昇温区間内で生じるものと想定される。すなわち、再昇温区間で加熱プロファイルが調整されることにより、ユーザの吸引体験を低下させることなく、これを維持させることができるからである。
その一方で、再昇温区間に先行する途中降温区間や該途中降温区間に先行する初期昇温区間においては、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったと判定された場合であっても、加熱プロファイルを調整する必要はない。この場合は寧ろ、加熱部40の給電動作は停止されるのがよい。何故ならば、初期昇温区間又は途中降温区間において応力が所定の閾値を下回る場合は、スティック型基材150が不良状態にあることが想定されるからである。
詳しくは、初期昇温区間及び途中降温区間の区間長は、加熱開始から終了に至るまでの合計時間の10%程度に過ぎない。このような相対的に短い区間において、加熱の結果、スティック型基材150の径方向の距離が短くなり、応力が所定の閾値を下回ることは通常想定されにくい。つまり、初期昇温区間及び途中降温区間で応力が所定の閾値を下回る場合は、スティック型基材150が不良状態にあることが想定され、ここでの不良状態とは、例えば、(i)保持部60がスティック型基材150を適切に保持できていないこと(スティック挿入不良)、及び(ii)適切なスティック型基材150が使用されていない(不良品又は模倣品)ことが想定される。
このような場合に加熱プロファイルに基づく動作が継続されると、いわゆる空焚きによる吸引装置100の故障、及び粗悪な喫味をユーザに供給することによる吸引体験の低減を引き起こすことになる。そこで、このような場合は、加熱部40への給電が強制的に停止され、ユーザが装置100を使用できないようにするのがよい。
上記の途中降温区間のみならず、途中降温区間に先行する初期昇温区間においても同様のことが言える。つまり、予備加熱を行う初期昇温区間においても、途中降温区間と同様に、スティック型基材150が不良状態にあることを考慮して、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったと判定された場合には、加熱部40への給電が強制的に停止され、ユーザが装置100を使用できないようにするのがよい。
(4-2)温度遷移の変更態様への適用1
本適用例では、加熱プロファイルの補正動作(図13乃至図15)を、温度遷移の変更態様(図12)に適用している。そのような一適用例の加熱プロファイルを表4に示す。本適用例では、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間のうち、再昇温区間のうち昇温区間(つまり、温度維持区間ではない区間)に含まれる時間T2において加熱プロファイルが調整される。
図17は、表4に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度(℃)である。本グラフにおける線22aは、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
表4に示すように、加熱プロファイルに含まれる再昇温区間の昇温区間は、当初、加熱部40の目標温度を230℃から260℃に上昇させるように規定されていた。また、再昇温区間の当初の区間目標温度は、再昇温区間の温度維持区間の始期及び終期に関連付けられ、その目標温度である260℃としていた。なお、現在の時間が時間T2である。
図17に示すように、時間T2に対応する再昇温区間において、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったのに応じて、当初の区間目標温度である260℃は、調整後では280℃へと当初より高い値に更新される。具体的には、加熱プロファイルにおいて、区間目標温度に関連付けられる再昇温区間の温度維持区間の始期及び終期の目標温度が何れも280℃に更新される。
加熱プロファイルの調整の結果、再昇温区間の昇温区間の途中で加熱プロファイルのグラフの線22aは当初の線22とは異なるものとなる。具体的には、図示したように、再昇温区間の昇温区間における時間T2以降の直線の傾きは、時間T2以前の直線の傾きよりも大きくなる。なお、本適用例では、区間目標温度を260℃から280℃に20℃だけ上昇させている。上昇させる温度値は、予め決められた値としてもよいし、又は予め決められた数式に従い、応力の値に基づいて動的に算出されてもよい。また、温度維持区間の始期及び終期の値が別個の値で更新されて、各々が区間目標温度に関連付けられてもよい。
本適用例は、時間T2が再昇温区間の昇温区間に含まれる場合に加熱プロファイルの調整が実施される。上述のとおり、スティック型基材150が消費されることにより押圧の大きさが減少するのは、主に、現在の時間が、ユーザがパフ動作を実行している再昇温区間の昇温区間内であるものと想定される。すなわち、再昇温区間で加熱プロファイルが調整されることにより、ユーザの吸引体験を低下させることなく、維持させることができる。
その一方で、再昇温区間に含まれる温度維持区間においては、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったと判定された場合であっても、加熱プロファイルを調整しなくてもよい。つまり、現在の時間が再昇温区間の温度維持区間に含まれる場合は、温度維持区間の目標値260℃は補正しないようにしてもよい。本適用例では、再昇温区間は加熱プロファイルに含まれる最後の時間区間であり、これに後続する時間区間は存在しない。そのため、再昇温区間の温度維持区間の終期に対し、その目標温度を高い値に更新しても、ユーザの吸引体験への効果はさほど見込めない場合もあるからである。
(4-3)温度遷移の変更態様への適用2
本適用例でも、加熱プロファイルの補正動作(図13乃至図15)を、温度遷移の変更態様(図12)に適用している。そのような一適用例の加熱プロファイルを表5に示す。本適用例では、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間のうち、途中降温区間の温度維持区間に含まれる時間T3において加熱プロファイルが調整される。
図18は、表5に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度(℃)である。本グラフにおける線22bは、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
表5に示すように、加熱プロファイルに含まれる再昇温区間の昇温区間は、当初、加熱部40の目標温度を230℃から260℃に上昇させるように規定されていた。また、再昇温区間の当初の区間目標温度は、再昇温区間の温度維持区間の始期及び終期に関連付けられ、その目標温度である260℃としていた。なお、現在の時間が時間T3である。
図18に示すように、時間T3に対応する途中降温区間の温度維持区間において、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったのに応じて、再昇温区間の当初の区間目標温度である260℃は、調整後では280℃へと高い値に更新される。具体的には、加熱プロファイルにおいて、再昇温区間の区間目標温度に関連付けられる再昇温区間の温度維持区間の始期及び終期の目標温度が何れも280℃に更新される。
本適用例では、区間目標温度を260℃から280℃に20℃だけ上昇させている。上昇させる温度値は、予め決められた値としてもよいし、又は予め決められた数式に従い、応力の値に基づいて動的に算出されてもよい。また、再昇温区間の温度維持区間の始期及び終期の値が別個の値で更新されて、各々が区間目標温度に関連付けられてもよい。
前述の表3及び図16の適用例では、途中降温区間においては、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったと判定された場合であっても、加熱プロファイルを調整せずに、加熱部40の給電動作は強制的に停止されるのがよいものとした。これに対し、本適用例では、現在の時間が、途中降温区間であっても、その温度維持区間に関しては、加熱部40の温度を低下させる区間ではない(加熱部40の目標温度を230℃に下降させた後の区間である。)ことから、加熱プロファイルが調整されるのがよい。但し、本適用例では、途中降温区間の区間目標温度は更新しておらず、後続する再昇温区間の区間目標温度を更新している。その結果、加熱プロファイルは表4及び表5で同じものとなっている。
なお、上述のとおり、現在の時間が途中降温区間のうち降温区間に含まれるときは、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったと判定された場合に、加熱プロファイルは調整されずに、加熱部40の給電動作が強制的に停止されるのがよい。
(4-4)温度遷移の変更態様への適用3
本適用例でも、加熱プロファイルの補正動作(図13乃至図15)を、温度遷移の変更態様(図12)に適用している。そのような一適用例の加熱プロファイルを表6に示す。本適用例では、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間のうち、途中降温区間の温度維持区間に含まれる時間T4において加熱プロファイルが調整される。
図19は、表6に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度(℃)である。本グラフにおける線22bは、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
表6に示すように、加熱プロファイルに含まれる途中降温区間の温度維持区間は、当初、加熱部40の目標温度を230℃に維持させるように規定されていた。つまり、途中降温区間の当初の区間目標温度は、途中降温区間の温度維持区間の始期及び終期に関連付けられ、その目標温度である230℃としていた。また、再昇温区間の昇温区間は、当初、加熱部40の目標温度を230℃から260℃に上昇させるように規定されていた。つまり、再昇温区間の当初の区間目標温度は、再昇温区間の温度維持区間の始期及び終期に関連付けられ、その目標温度である260℃としていた。なお、現在の時間が時間T4である。
図19に示すように、時間T4に対応する途中降温区間の温度維持区間において、スティック型基材150に対し測定された応力が所定の閾値を下回ったのに応じて、途中降温区間の当初の区間目標温度は、調整後では245℃へと当初より高い値に更新される。具体的には、加熱プロファイルにおいて、途中降温区間の区間目標温度に関連付けられる途中降温区間の温度維持区間の終期の目標温度が245℃に更新される。その結果、途中降温区間において、当初の区間目標温度である230℃まで加熱部40の温度が低下した後に、改めて、加熱部40の温度は、更新後の区間目標温度である245℃まで上昇することになる。
また、表5及び図18に示した適用例と同様、再昇温区間において当初の区間目標温度である260℃は、調整後では280℃へと当初より高い値に更新される。具体的には、加熱プロファイルにおいて、再昇温区間の区間目標温度に関連付けられる再昇温区間の温度維持区間の始期及び終期の目標温度が何れも280℃に更新される。
本適用例では、途中降温区間の区間目標温度を230℃から245℃に15℃だけ上昇させている。また、再昇温区間の区間目標温度を260℃から280℃に20℃だけ上昇させている。上昇させる各温度値は、時間区間ごとに、予め決められた値としてもよいし、又は予め決められた数式に従い、応力の値に基づいて動的に算出されてもよい。
本適用例では、表5及び図18に示した適用例よりも更に柔軟に加熱プロファイルを調整することができ、ユーザに更に快適な吸引体験を提供することができる。
<<3.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上記では、途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、途中降温区間の終期が判定される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。制御部116は、途中降温区間に設定された目標温度と加熱部40の実際の温度との差に基づいて、途中降温区間の終期を判定してもよい。例えば、制御部116は、加熱部40付近に設置された温度センサによる測定を所定周期で実行しながら、加熱部40の実温度を監視する。そして、制御部116は、測定された実温度が途中降温区間の目標温度に達した場合に、途中降温区間から再昇温区間への切り替えを判定する。かかる構成によれば、外気温等の外部環境によらず、適切なタイミングで途中降温区間から再昇温区間への切り替えを行うことが可能となる。
上記では、制御部116は、目標温度と実温度との乖離に応じて加熱部40の動作を制御するものと説明した。一例として、制御部116は、現在の実温度と現在の時間区間(即ち、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する時間区間)に設定された目標温度との乖離に応じて加熱部40の動作を制御してもよい。即ち、表1及び図10に示した例において、加熱開始から10秒後の加熱部40の実温度が100℃であった場合、制御部116は、100℃と295℃との乖離である195℃に基づいて、加熱部40の動作を制御してもよい。他の一例として、制御部116は、現在の実温度と現在の目標温度との乖離に応じて加熱部40の動作を制御してもよい。即ち、表1及び図10に示した例において、加熱開始から10秒後の加熱部40の実温度が100℃であった場合、現在の目標温度は概算で295÷35×10=84℃となる。そのため、制御部116は、100℃と84℃との乖離である-16℃に基づいて、加熱部40の動作を制御してもよい。
現在の時間区間に設定された目標温度よりも現在の実温度の方が低い場合に行われる、昇温のための加熱部40の動作は、多様に実現され得る。一例として、かかる昇温のための加熱部40の動作は、時間区間の終期までの残り時間と、実温度と目標温度との乖離と、に基づいて制御されてもよい。即ち、表1及び図10に示した例において、加熱開始から10秒後の加熱部40の実温度が100℃であった場合、制御部116は、25秒後に、あと195℃昇温するように、加熱部40へ給電される電力パルスのデューティ比を調整してもよい。他の一例として、かかる昇温のための加熱部40の動作は、固定されていてもよい。即ち、制御部116は、昇温の際には、加熱部40へ給電される電力パルスのデューティ比を、例えば常に最大にしてもよい。
パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、任意のタイミングで実施され得る。一例として、パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、初期昇温区間の終期において行われてもよい。他の一例として、初期昇温区間の最後に温度維持区間が含まれる場合、パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、初期昇温区間に含まれる温度維持区間の始期において行われてもよい。他の一例として、初期昇温区間と途中降温区間との間に温度維持区間が含まれる場合、パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、かかる温度維持区間の終期において行われてもよい。
例えば、上記では、ヒータアッセンブリ30とスティック型基材150との間に形成される空隙が、スティック型基材150に空気を導入する流路として機能する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ヒータアッセンブリ30の底壁に、外気と連通する開口が設けられていてもよい。そして、ユーザによりパフが行われた際には、かかる開口からスティック型基材150へ空気が導入されてもよい。
例えば、上述した適用例は、適宜組み合わされてもよいことが当業者に理解される。
また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。