本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように稲や麦を刈取りながら脱穀する6条刈りの自脱型コンバイン1は、略矩形状に枠組みする機体フレーム(走行機体)2の下方に走行フレーム3を介して左右のクローラ走行装置4を設ける。なお、左右のクローラ走行装置4は、トランスミッションケース5の左右から突出する駆動軸に取り付ける駆動スプロケット6と、走行フレーム3に軸支するアイドルホイール7、及びトラックローラ8と、これらに巻回するゴムクローラ9を備える。
また、機体フレーム2の機体前進方向の右側前部には、略矩形状になす運転フレームを一体的に連結し、この運転フレーム及びその後方の機体フレーム2にかけて操縦部10を設ける。なお、図3に示すように操縦部10はフロア11の後方に運転席12を設け、また、フロア11の前部にはフロントコンソール(前部操作盤)13を、フロア11と運転席12の左側にはサイドコンソール(側部操作盤)14を設け、さらに、キャビン15で操縦部10を覆っている。
また、機体フレーム2の左側前部から操縦部10の前方にかけて刈取部16を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。そして、刈取部16は、その前端下部に設ける7つの分草体17と左右のナローガイド18によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の最も外側となる分草体17の間に入った刈取穀稈を引起爪19aを備える引起装置19によって引起し、その後、図4に示すように突起付き掻込ベルト20とスターホイール21で構成する掻込装置22で寄せ集めながら穀稈の株元寄りをレシプロ方式の刈刃装置23によって切断する。
さらに、刈刃装置23によって切断して刈取った穀稈は、掻込装置22のスターホイール21で後方に送り、また、後方に送った穀稈は左右と中央に設ける株元搬送装置24、25、26に引き継がせて更に後方に向けて搬送する。そして、中央に設ける株元搬送装置26の終端部は右株元搬送装置24の搬送経路の中途に設ける合流部に臨み、この中株元搬送装置26によって搬送した穀稈は、中途の合流部において右株元搬送装置24によって搬送してきた穀稈と合流し、以後、右株元搬送装置24に引き継がせる。
一方、左側に設ける株元搬送装置25の終端部は右株元搬送装置24の終端部に臨み、この左株元搬送装置25によって搬送した穀稈は、右株元搬送装置24によって搬送してきた穀稈と、両搬送装置24、25の終端部となる合流部において合流する。また、合流した穀稈は、その始端部を両合流部に臨ませる扱深さ搬送装置27に引き継がせ、更に後上方に向けて搬送する。
そして、扱深さ搬送装置27に引き継がせた穀稈は、扱深さ搬送装置27の終端部から補助搬送装置28を介して脱穀フイードチェーン29に引き継がせる。なお、ここまで主に穀稈の株元側の搬送経路について説明したが、穀稈の穂先側は右株元搬送装置24と扱深さ搬送装置27、及び補助搬送装置28の上方側に設ける穂先搬送装置30と、左株元搬送装置25及び中株元搬送装置26の上方側に設ける左掻込搬送装置31と中掻込搬送装置32の各搬送チェーンに取付ける搬送爪に係止して搬送する。
また、脱穀部33は、刈取部16後方の機体フレーム2の左側に設け、上方を覆うシリンダーカバー34の下方に第1と第2の扱室を設ける。この内、第1扱室には刈取部16から搬送されてきた穀稈を扱口に沿って搬送する脱穀フイードチェーン29とその挟持レール35、扱歯を備える第1扱胴とその受網等を設ける。また、第2扱室は第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かうように第1扱室に併設し、第1扱室で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する第2扱胴とその受網を設ける。
一方、第1と第2の扱室の下方には選別室を設ける。この選別室には揺動運動する揺動流板、1番螺旋及び2番螺旋、唐箕ファン及び吸引ファン等を設け、扱室の受網より漏下した穀粒等を揺動流板上において選別し、選別した穀粒は1番螺旋から揚穀装置36を介してグレンタンク37に移送し、藁屑等が混じった2番物は2番螺旋から2番還元装置を介して揺動流板上に戻す。
また、揺動流板の終端に至った藁屑、吸引ファンに捕捉された藁屑、或いは第2扱胴の終端から排出された藁屑は、脱穀部33後方の機外に排出する。さらに、脱穀処理を完了して扱室から排出される排稈は、排藁搬送装置38によってディスク型カッター39に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター39は、排藁搬送装置38で搬送されてきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出するか、そのまま長藁として放出する。
そして、前記グレンタンク37は、操縦部10の下方から後方に設けるディーゼルエンジン40等から構成する原動部のさらに後方に設け、揚穀装置36によって移送された穀粒を一時的に貯留する。また、グレンタンク37内に穀粒が満杯になると、グレンタンク37から穀粒を排出して機外のコンテナ等に放出すべく排出オーガ41を作動させる。
なお、排出オーガ41は、グレンタンク37の底部に設ける横螺旋と縦螺旋を内装する縦パイプを備え、この縦パイプはグレンタンク37の後方にオーガ旋回モータによって回動可能に立設する第1縦パイプ42と、第1縦パイプ42の上部にギヤケース43介して油圧シリンダ44によって昇降可能になす第2縦パイプ45によって構成する。
次に、前述の刈取部16について更に説明すると、図1及び図4に示すように刈取部16は、機体フレーム2の左側前部寄りに設ける支柱の上部にその後部側を回動自在に支持し、油圧シリンダによって前部側が上下方向に昇降する略エ字状に連結するパイプケースによって構成する伝動フレーム46を備える。また、この伝動フレーム46の前部に前処理フレーム47やサポートフレーム等を取付ける。
さらに、これら伝動フレーム46や前処理フレーム47、或いはサポートフレーム等には、引起装置19、掻込装置22、刈刃装置23、株元搬送装置24、25、26、扱深さ搬送装置27、補助搬送装置28、穂先搬送装置30、及び掻込搬送装置31、32等の各装置や、分草体17、サイドカバー48、穂先案内板49、フード50等を取付ける。
そして、伝動フレーム46内にはベベルギヤを備える伝動軸を軸支し、原動部に設けるエンジン40は、搬送HST(静油圧式無段変速装置)51とベルトテンションクラッチで構成する刈取クラッチ52を介して伝動フレーム46内の入力伝動部46aの入力軸53を駆動し、その後、縦伝動部46b、穂先・補助搬送伝動部46c、右株元伝動部46d、扱深さ伝動部46e、中株元伝動部46f、下伝動部46g、左株元伝動部46h、引起し伝動部46i、及び刈刃駆動部46jから各装置を駆動する。
なお、前記脱穀部33は、エンジン40からベルトテンションクラッチで構成する脱穀クラッチ54を介して駆動し、その脱穀部33の駆動系から分岐した動力によって搬送HST51を駆動し、また、搬送HST51から脱穀部33の脱穀フイードチェーン29と刈取部16の各部を駆動する。さらに、左右のクローラ走行装置4を駆動する走行変速装置は、エンジン40からベルトテンションクラッチで構成する走行クラッチ55を介して駆動する。
また、上記走行変速装置は、トランスミッションケース5に取付ける主変速装置を構成する走行HST(静油圧式無段変速装置)56とトランスミッションケース5内に設ける標準(刈取脱穀作業速)と走行(路上走行速)に切換え可能な歯車変速装置57から構成する副変速装置を備え、さらに、左右の駆動スプロケット6はトランスミッションケース5内に設ける左右サイドクラッチやブレーキ等から構成する操向装置を介して駆動する。
従って、路上走行を行う場合は、エンジン40をスタータキーによって始動させ、操縦部10に設ける副変速レバー58を前方の走行位置に操作し、また、主変速レバー59を中立位置から前方の前進位置、或いは後方の後進位置に位置させて、増減操作すればコンバイン1を必要な速度で走行させることができる。また、圃場において刈取作業を行う場合は、副変速レバー58を後方の標準位置に操作し、同様に主変速レバー59を増減操作すれば路上速度より低速でコンバイン1を走行させることができる。
なお、刈取作業を行う場合は、操縦部10に設けるモーメンタリ型のロッカースイッチによって構成するパワークラッチスイッチ60の前部寄りを押して、先ず図示しないパワークラッチ電動モータによって脱穀クラッチ54を入りにし、さらに、再びパワークラッチスイッチ60の前部寄りを押してパワークラッチ電動モータによって刈取クラッチ52を入りにして、脱穀部33や刈取部16の各部とカッター39を駆動する。なお、刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54を切りにする場合は、パワークラッチスイッチ60の後部寄りを押すと順次、それらのクラッチを切断することができる。
また、操縦部10に設けるマルチステアリングレバー(昇降操作具)61をその中立位置から前方側に傾倒操作すると、図7に示すように昇降レバーポテンショメータ62がこれを検出してマイクロコンピュータユニットによって構成する制御装置63は、下降ソレノイド64に通電して油圧昇降電磁切換弁を下降側に切換え、それにより油圧シリンダは刈取部16を上昇させた非作業姿勢から下降させた作業姿勢に下降させる。なお、マルチステアリングレバー61をその中立位置に戻せば刈取部16の下降は停止し、また、マルチステアリングレバー61をその中立位置から後方側に傾倒操作すると上昇ソレノイド65に通電して刈取部16を上昇させることができる。
さらに、マルチステアリングレバー61を、その中立から左右方向に傾倒操作すると、制御装置63は、トランスミッションケース5内に設ける左右サイドクラッチやブレーキ等から構成する操向装置を作動させてコンバイン1の進行方向を変更することができ、係る操作の下に圃場の立毛穀稈の刈取作業を開始する。
なお、圃場の立毛穀稈が立ち姿勢から風雨によって倒伏している場合は、操縦部10に設ける主変速レバー59のグリップに設けるオルタネート型のスイッチで構成する倒伏刈りスイッチ66を押して倒伏刈りを行う。そして、この場合、倒伏刈りスイッチ66が入りになると制御装置63は、搬送HST51のトラニオン軸を搬送電動モータを介して正逆作動させて例えば、図8に示すように走行速度(車速)に同調させて刈取部16を駆動する速度を、標準から倒伏に切換えて標準より1.5倍程度、増速させた速度になるように搬送HST制御(車速同調搬送制御)を行う。
一方、倒伏して折り重なり乾燥し難い重量の増した立毛穀稈を刈取って脱穀する場合は、立ち姿勢の立毛穀稈を刈取って脱穀する場合よりコンバイン1の負荷が増大する。そこで、この負荷を軽減するため、作業者は作業能率が低下するものの適切な操向操作や穀粒損失を考慮して、走行速度を減速して刈取作業を行うことになる。
従って、このように倒伏刈りを行う場合、主変速レバー59を減速側に操作して標準刈りを行う場合より走行速度を低下させると、刈取部16の駆動速度は倒伏刈りを行わない標準刈りを行う際の速度と略同速となり、特に引起爪19aによる穀稈の引起し性能を落とさず刈取作業を行うことができる。なお、走行速度を標準刈りと同じ速度で刈取作業を行うと刈取部16の駆動速度は増速して引起爪19aによる穀稈の引起し性能はより高まることになる。
なお、走行速度に同調させて刈取部16を駆動する速度を標準刈りより倒伏刈りを増速させる方法としては、走行HST56と副変速装置57の間から刈取クラッチ52を経由して刈取部16の入力軸53を駆動するようになすと共に、走行変速装置に設ける副変速装置57に標準と走行に加えて倒伏に切換え可能な歯車変速装置に変更する。
そして、このように変更を加えると刈取部16の駆動速度は搬送HST51に代わる走行HST56によって車速に同調する速度で駆動することができ、しかも、副変速レバー58を標準位置から新たに設ける倒伏位置に切換え操作すれば走行速度は標準より低下するが、刈取部16の駆動速度はそのままの速度となり、相対的に前述の搬送HST51の倒伏における搬送HST制御を行わせながら主変速レバー59を減速側に操作して走行速度を低下させた場合と同等となる。
なお、副変速レバー58の倒伏位置に切換え操作を検出するスイッチを設ければ、このスイッチによって制御装置63は標準刈りから倒伏刈りに移行したことを検出することができる。また、実施形態の搬送HST制御は、トランスミッションケース5内に設ける副変速装置57の伝動下流側に設ける伝動軸の回転数を検出するトランスミッション回転センサ67と図示しない搬送HST51の出力回転数を検出する搬送回転センサに基づいて、搬送HST51のトラニオン軸を搬送電動モータを介して正逆作動させて制御するものであるが、その詳細な制御内容の説明は省略する。
以上、コンバインの構造の概要と特に倒伏刈りにおける操作形態について説明したが、次に刈取部16の昇降制御を自動制御に基づいて行う形態について説明する。先ず、制御装置63は昇降の自動制御を行うために、刈取部16の走行機体に対する昇降量をその昇降角度によって検出するポジションセンサ(リフトポテンショメータ)68を刈取部16を回動自在に支持する支柱の近傍に設け(不図示)、また、刈高さセンサ69を刈取部16に設ける。
そして、この刈高さセンサ69は図5に示すように、刈取部16の前処理フレーム47に前方から差し込んで固定する分草フレーム70の先端部に設ける取付板70aの長孔にボルトで上下調節自在に取付ける分草体17に取付け、刈取部16と地面との間の高さ(対地高さ)を検出する。なお、刈高さセンサ69は左右方向に7つ設ける分草体17の内、左から3番目と5番目の分草体17に一つずつ設け、その分草体17は略三角形になすデバイダ部17aと、このデバイダ部17aの上面に固設する前低後高に傾斜させて前部寄りから後部寄りに幅広に形成する案内部17bを備える。
また、刈高さセンサ69は、分草体17の案内部17bによって上方が覆われるようにデバイダ部17aに、そのベースプレート71をボルトで取付ける。さらに、ベースプレート71の左側面に設ける左右方向となすボス71aの孔に検出軸72を嵌合させて回動自在に軸支する。そして、検出軸72の左端には第1作動体73の上部寄りを検出軸72と一体に回動するように固設する。
さらに、第1作動体73の下部に前後方向となるボス73aを設け、このボス73aの孔に第2作動体74の前部に固設するピン74aを嵌合させて抜け止めし、これにより第2作動体74を左右方向に回動自在に軸支する。また、第2作動体74の後部寄りに固設する左右方向となるピン74bに所定幅を備えるそり体75の上部を回動自在に取付ける。
一方、前記検出軸72の右端には、第1作動アーム76の前部を検出軸72と一体に回動するように取付け、また、検出軸72の右端にフランジナットを取付けて、検出軸72のベースプレート71のボス71aからの抜け止めを行う。さらに、ベースプレート71の右側面にリターンスプリング付きのポテンショメータ77をビスで取付け、このポテンショメータ77の作動軸に固定する第2作動アーム78の先端部を第1作動アーム76の後部に当接させて設ける。
なお、ボス71aの外周に嵌めるねじりコイルばね79は第1作動体73を前方に回動するように付勢し、また、ボス73aの外周に嵌めるねじりコイルばね80は第2作動体74に取付けるそり体75を下方を向くように付勢し、さらに、ピン74bの外周に嵌めるねじりコイルばね81はそり体75を後方に回動するように付勢する。また、第1作動体73の上部はベースプレート71の左側面に設けるピン71bに当接して、第1作動体73のそれ以上の後方への回動が規制され、そり体75は自らが第2作動体74の後部に当接して、そり体75のそれ以上の後方への回動が規制される。
そして、このように刈高さセンサ69を構成すると、図6に示すように刈取部16が地面から高く離れて上昇している際には、図5に示す刈高さセンサ69のフリー状態となってポテンショメータ77はその検出範囲の上限に近い電圧を出力し、これによって制御装置63は刈取部16が地面から高く離れて上昇していると判断することができる。また、刈取部16が下降してそり体75が地面に接地して第2作動体74を介して第1作動体73が後方に回動すると、検出軸72と第1作動アーム76を介して第2作動アーム78を上動(左側から見て反時計回り)させる。
そのため、ポテンショメータ77は、その検出範囲の上限に近い電圧から徐々に高い電圧を出力し、これによって制御装置63は刈高さセンサ69によって刈取部16の高さを検出可能であること、また、その出力電圧によって例えば、分草体17のデバイダ部17a下面と地面との間の高さ、延いては本来の刈刃装置23と地面との間の刈高さを求めることができる(制御目標値[高]~[中]~[低])。
なお、刈取部16が地面に接近して分草体17のデバイダ部17aの下面が地面に埋まるか埋まらないか瀬戸際に下降している際には、刈高さセンサ69がメカストップ状態(第1作動体73の上部がベースプレート71のピン71bに当接して、第1作動体73のそれ以上の後方への回動が規制された状態)となって、ポテンショメータ77はその検出範囲の下限に近い電圧を出力し、これによって制御装置63は刈高さセンサ69によって刈取部16の刈高さのそれ以上の検出が不能になったと判断することができる。
また、刈取部16が下降してそり体75が地面に接地して刈高さを検出している状態で、立毛穀稈に倣って機体の操向を行うとそり体75は左右方向の抵抗を地面から受けるが、その際、そり体75は第1作動体73の前後方向となるボス73aを中心として左右方向に回動して抵抗を逃がすので、刈高さセンサ69の損傷を防止する。さらに、刈取部16を上昇させることなく機体を後進させると、そり体75は第2作動体74のピン74bを中心に前方に向けて回動して地面からの抵抗を逃がすので、同じく刈高さセンサ69の損傷を防止する。なお、82はポテンショメータ77等を覆うカバーである。
以上、刈高さセンサ69の構造について説明したが、次に、前述の制御装置63について説明すると、図7の制御装置63のブロック図に示すように、制御装置63は4つのマイクロコンピュータユニット(ECUA~ECUD)を備え、各ユニットはコントローラーエリアネットワーク(CAN)で相互通信可能に結び各種の制御を行っている。なお、ここでは刈取部16の昇降制御に関わる入出力系統に限って説明する。
すなわち、制御装置63の入力回路には、既に説明するパワークラッチスイッチ60、昇降レバーポテンショメータ62、倒伏刈りスイッチ66、トランスミッション回転センサ67、リフトポテンショメータ68、左右の刈高さセンサ69R、69Lのポテンショメータ77を接続する。
また、制御装置63の入力回路には、操縦部10に設ける可変抵抗器によって構成する刈高さダイヤル(刈高さ設定器)83、モーメンタリー型の押しボタンスイッチによって構成する選択スイッチ84、主変速レバー59の回動操作角度を検出する主変速レバーポテンショメータ85、マルチステアリングレバー61のグリップに設けるモーメンタリー型の押しボタンスイッチによって構成するトリガースイッチ86等を接続する。
さらに、制御装置63の出力回路には、操縦部10に夫々設ける発光ダイオードで構成する昇降自動ランプ87、上昇自動ランプ88、刈高さポジション制御ランプ89と液晶モニター90と、既に説明する下降ソレノイド64と上昇ソレノイド65、及び刈取部16を昇降作動させる油圧シリンダの油圧回路中に設ける電磁比例流量調節弁の流量調整ソレノイド91を接続する。
そして、以上のように構成する制御装置63は、図8に纏めて示すように刈取部16の昇降制御に関する昇降自動制御、上昇自動制御、刈高さポジション制御、手動昇降制御の内、一つの制御を操縦部10に設ける選択スイッチ84の入り操作に基づいて順次選択することができる。また、この選択状態は昇降自動ランプ87、上昇自動ランプ88、刈高さポジション制御ランプ89の何れかの点灯と、手動昇降制御の全ランプの消灯で報知すると共に、液晶モニター90に表示するのでこのモニターを見て確認することができる。
また、上記3つの昇降自動制御、上昇自動制御、刈高さポジション制御は、既に説明する車速同調搬送制御に関連が深く、この車速同調搬送制御の「標準」制御状態から倒伏刈りスイッチ66を入りにして車速同調搬送制御の「倒伏」制御状態に移行すると、3つの各制御もこれに追従するように「標準」制御状態から「倒伏」制御状態に、或いは「倒伏」制御状態から「標準」制御状態に戻って各制御を実行する。
なお、手動昇降制御は標準刈りや倒伏刈りに関わらず、リフトポテンショメータ68の出力電圧をA/D変換した値に基づいて、制御装置63がマルチステアリングレバー61の中立位置から前後方向に所定量以上に傾倒操作されたことを判断し、例えば、刈取部16を下降操作したと判断すると、下降ソレノイド64に通電して油圧昇降電磁切換弁を下降側に切換えて油圧シリンダを委縮作動させる。また、逆に刈取部16を上昇操作したと判断すると、上昇ソレノイド65に通電して油圧昇降電磁切換弁を上昇側に切換えて油圧シリンダを伸長作動させる。
さらに、マルチステアリングレバー61が中立位置に戻ったと判断すると、何れのソレノイド64、65の通電を断って油圧昇降電磁切換弁を中立位置に戻し、油圧シリンダの伸縮作動を停止させる。従って、手動昇降制御は、刈取部16の下面が地面に接地して停止するか、或いは油圧シリンダの作動ストローク等に基づく機械的な作動限界の範囲内で刈取部16を任意の高さに昇降させる制御を行う。
以下、上述の昇降自動制御、上昇自動制御、及び刈高さポジション制御の具体的な制御内容について説明するが、先ずこれらの制御に共通する刈取部16の対地高さ検出方法等について説明すると、制御装置63が刈高さセンサ69R、69Lの検出した対地高さと刈高さの制御目標値等に基づいて刈取部16を昇降させて刈高さを制御する際に、制御装置63は刈取部16の左右方向の異なる箇所に設ける二つの刈高さセンサ69R、69Lが検出した対地高さの内、何れか低い対地高さに基づいて刈取部16を昇降させて刈高さを制御する。
この場合、刈高さセンサ69は全ての分草体17に設ける等、刈取部16の左右方向の異なる箇所に複数設けることが好ましい。これは刈高さセンサ69を1つ設けると、刈高さセンサ69を設ける刈取部16の1箇所の部位の対地高さは検出することができるが、例えば刈取部16の左右方向の他の部位の対地高さは検出することができず、地面と刈取部16に左右方向の相対的な傾きがある場合や、地面に部分的な凸部がある場合は、これらと刈取部16の間の高さを検出することができない。そこで、コストを勘案しながら出来るだけ多数の刈高さセンサ69を設けることになる。
また、刈高さセンサ69R、69Lが検出した対地高さの内、何れか低い対地高さに基づいて刈取部16を昇降させて刈高さを制御すると、その最も低い対地高さを検出した刈高さセンサ69R、69Lを含むこれら全ての刈高さセンサ69R、69Lを設ける刈取部16の対地高さを、その際に設定する制御目標値以上の高さに制御することができ、これにより刈取部16と地面との当接を少なくして、例えば地面への分草体17の突っ込みや刈刃装置23の泥土や石等の噛み込みを防いで、それらの破損や故障を無くすことができる。
それでは、昇降自動制御から説明すると、制御装置63は刈高さセンサ69R、69Lの検出した対地高さと刈高さの制御目標値に基づいて刈取部16を昇降させて刈高さを制御する昇降自動制御を備え、この昇降自動制御を実行している場合に、圃場の倒伏する立毛穀稈を刈取るために刈取部16の駆動速度を増速させて刈取作業を行う際には、刈高さの制御目標値を低く設定して刈残しを防止するように刈高さを制御する。
このように制御装置63に昇降自動制御を備えると、倒伏刈りを行わない標準刈りにおいて、刈高さセンサ69R、69Lの検出した対地高さと刈高さの制御目標値に基づいて刈取部16を昇降させて刈高さを自動制御することができ、そのため手動による刈高さの調節操作を不要にして、作業者の操作負担を軽減しながら刈取部16の刈高さを常に一定になるように制御させて、刈取部16の損傷や穀粒損失等を生じさせずに刈取作業を行うことができる。
また、昇降自動制御を用いて刈高さの制御を行っている際に、圃場に部分倒伏があって倒伏刈りを行う場合には、制御装置63がその制御目標値を自動的に低く設定して穀稈の刈残しを防止する制御を行うから、昇降自動制御を一旦終了させたり制御目標値を人為的に変更する必要がなく、さらに、倒伏刈りから標準刈りに戻すと、制御目標値も元の値に戻って通常の昇降自動制御の下に刈取作業を行うことができる。
以下、昇降自動制御の具体的な制御内容をフローチャートに基づいて説明すると、図9に示すように制御装置63は、先ず左右の刈高さセンサ69R、69Lのポテンショメータ77が検出した対地高さ、予め定めた制御目標値、トランスミッション回転センサ67が検出した副変速装置57の伝動下流側に設ける伝動軸の回転数、主変速レバーポテンショメータ85が検出した主変速レバー59の回動操作角度、昇降レバーポテンショメータ62が検出したマルチステアリングレバー61の操作状態、パワークラッチスイッチ60に基づく刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54の入切状態、選択スイッチ84による昇降制御の選択状態、倒伏刈りスイッチ66の入切状態に基づく車速同調搬送制御の有無等の「センサ値等読込」を実行する(S1)。
次に、制御装置63は、読み込んだデータに基づいて制御開始条件を判断する(S2)。なお、制御開始条件としては例えば、刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54が入りになっていること、昇降自動制御が選択されていること、各ポテンショメータ等に断線やショートがない等のエラーが無いこと、トランスミッションが回転していること、主変速レバー59が前進領域にあること、刈高さセンサ69R、69Lがフリー状態でないこと等があげられ、これらを全て満足していれば条件が成立していることになる。
また、上述の制御開始条件が成立していれば、昇降レバーポテンショメータ62が検出するマルチステアリングレバー61の操作状態から「手動昇降操作」の有無を判断し(S3)、手動昇降操作が行われていなければ「倒伏刈り」の有無を倒伏刈りスイッチ66の入切状態から判断する(S4)。そして、倒伏刈りスイッチ66が切りとなっいて標準刈りが行われていると制御目標値を予め定めた制御目標値として使用する。
しかし、倒伏刈りスイッチ66が入りとなって倒伏刈りが行われる際には、「制御目標値」の判断を行い(S5)、制御目標値より予め定めた倒伏刈値の刈高さが低い場合には制御目標値を倒伏刈値に置換する(S6)。従って、予め定めた制御目標値が図6に示す制御目標値「高」の刈高さであり、一方、予め定めた倒伏刈値が制御目標値「中」、「低」、或いはセンサ「メカストップ」近傍の刈高さであれば、制御目標値は「中」、「低」、或いはセンサ「メカストップ」近傍の刈高さに置き換わることになる。
また、以上のもとに確定した制御目標値に基づいて、その上下の所定の範囲内で昇降制御を行わない「不感帯設定」を行い(S7)、次に「左右刈高さセンサ値」の判断を行い(S8)、例えば、右の刈高さセンサ69Rのポテンショメータ77が検出した対地高さが左の刈高さセンサ69Lのポテンショメータ77が検出した対地高さより低い場合には刈高さセンサ値を右の刈高さセンサ69Rのポテンショメータ77が検出した対地高さになし(S9)、同等か逆であれば刈高さセンサ値を左の刈高さセンサ69Rのポテンショメータ77が検出した対地高さになす(S10)。
そして、次に「刈高さセンサ値」の判断を行い(S11)、刈高さセンサ値が不感帯より低ければ「上昇作動」を実行し(S12)、また、刈高さセンサ値が不感帯より高ければ「下降作動」を実行し(S13)、或いは刈高さセンサ値が不感帯内に入っていれば「昇降作動停止」を実行する(S14)。従って、上昇作動を実行する際は上昇ソレノイド65に通電して油圧昇降電磁切換弁を上昇側に切換え、それにより油圧シリンダは刈取部16を上昇させる。
また、下降作動を実行する際は下降ソレノイド64に通電して油圧昇降電磁切換弁を下降側に切換え、それにより油圧シリンダは刈取部16を下降させる。そして、昇降作動停止を実行する際は下降ソレノイド64と上昇ソレノイド65の通電を止めて油圧昇降電磁切換弁を中立に切換え、それにより油圧シリンダは刈取部16の昇降作動を止めて停止する。
なお、刈取部16の昇降制御におけるフィードバック制御は、この場合に発生し易いオーバーシュートやハンチング等の問題があり、単なるオンオフ制御ではなくインチング制御やPID等の制御方式を採用することもあり、その際は下降ソレノイド64と上昇ソレノイド65の他に油圧回路中に設ける電磁比例流量調節弁の流量調整ソレノイド91を用いて制御する場合がある。
また、前述のステップS3で手動昇降操作が行われた場合は、前述の昇降自動制御は実質的に行われず既に説明した手動昇降制御によって刈取部16の昇降を行わせることになる。しかし、昇降自動制御を選択して実際の制御を開始する際に、刈高さセンサ69R、69Lがフリー状態から逸脱する(制御開始条件)ためにマルチステアリングレバー61によって刈取部16の下降操作を行い続けると、地面に刈取部16を衝突させて埋もれさせる虞があり、また、刈高さセンサ69R、69Lがフリー状態から逸脱する際の刈取部16の高さは一般的に目視困難である。
そこで、制御装置63は、昇降自動制御を行っている場合に、マルチステアリングレバー61を下降操作して刈取部16を下降させる際には、刈高さセンサ69の検出した対地高さが制御目標値に達すると刈取部16の下降を停止させる。そのため、制御装置63はそれ以上の刈取部16の下降を阻止して刈取部16が地面に接地して埋没することを防ぐことができる。
また、刈始め等において昇降自動制御によって刈高さを制御させるために刈取部16を下降させる際の下降停止操作タイミングをあまり気にせず刈取部16の下降操作を行うことができ、これにより刈取部16の損傷を防止することができ、しかも、刈取部16は係る制御によって制御目標値に達しているので、引き続く昇降自動制御によって刈取部16が暫く昇降作動を控えることになるから、制御の安定性を高めることができる。
すなわち、この際に制御装置63は「手動操作」を判断し(S15)、上昇操作が行われた場合は「上昇作動」を行う(S16)。しかし、下降操作が行われた場合は前述のステップS8~S10と同様なステップS17~S19を踏んで刈高さセンサ値を求め、次に「刈高さセンサ値」を判断する(S20)。
そして、刈高さセンサ値が制御目標値よりフリー状態を含めて高い場合は「下降作動」を行わせるが(S21)、刈高さセンサ値が制御目標値に達すると「昇降作動停止」を実行し(S22)、それにより刈取部16は停止して、前述の問題を解決する制御を行う。
次に、上昇自動制御について説明すると、制御装置63は刈高さセンサ69R、69Lの検出した対地高さが制御開始高さより下回った際に刈取部16を上昇させる上昇自動制御を備え、この上昇自動制御を実行している場合に、圃場の倒伏する立毛穀稈を刈取るために刈取部16の駆動速度を増速させて刈取作業を行う際には、刈高さの制御目標値を低く設定して刈残しを防止するように刈高さを制御する。
このように制御装置63に上昇自動制御を備えると、倒伏刈りを行わない標準刈りにおいて、刈高さセンサ69R、69Lの検出した対地高さが制御開始高さより下回った際に刈取部16を自動上昇させることができ、例えば、マルチステアリングレバー61で刈取部16を下降させて停止させた刈高さで刈取作業を行っている場合に、圃場に凸部や障害物等があってこれを検出した刈高さセンサ69R、69Lの対地高さが制御開始高さより下回ると刈取部16を自動的に上昇させることができ、これにより刈取部16の損傷を防止することができる。
なお、障害物等との衝突を回避すべく自動上昇させた刈取部16は、その後、マルチステアリングレバー61で刈取部16を手動下降させて刈取作業を行うことができ、このような上昇自動制御を用いて刈取作業を行うと圃場に凸部や障害物等が存在しない間は刈取部16の昇降作動を行わないようにすることができるため安定した刈取りを行うことができる。
また、このような上昇自動制御を用いて刈高さの制御を行っている際に、圃場に部分倒伏があって倒伏刈りを行う場合には、制御装置63が昇降自動制御を行っている場合と同様に、刈高さの制御目標値を低く設定して刈残しを防止するように刈高さを制御するから、上昇自動制御を終了させて例えば、昇降自動制御に切替えたり、制御目標値を低く設定し直す必要がなく、さらに、倒伏刈りから標準刈りに戻ると、制御開始高さに基づく通常の上昇自動制御の下に刈取作業を行うことができ、煩わしい切替操作から解放することができる。
以下、上昇自動制御の具体的な制御内容をフローチャートに基づいて説明すると、図10と図11に示すように制御装置63は、先ず昇降自動制御と同様の「センサ値等読込」を実行する(S1)。なお、上昇自動制御では昇降自動制御のものに加えて予め定めた制御開始高さとリフトポテンショメータ68が検出した刈取部16の走行機体に対する昇降量も読み込む。また、制御装置63は、読み込んだデータに基づいて制御開始条件を判断する(S2)。
なお、この場合の制御開始条件としては例えば、刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54が入りになっていること、上昇自動制御が選択されていること、各ポテンショメータ等にエラーが無いこと、リフトポテンショメータ68の検出値に基づいて刈取部16の走行機体に対する昇降量が予め設定した所定量以下(例えば、刈高さ換算で250ミリ以下)であること等があげられ、これらを全て満足していれば条件が成立していることになる。
また、上述の制御開始条件が成立していれば、昇降レバーポテンショメータ62が検出したマルチステアリングレバー61の操作状態から「手動昇降操作」の有無を判断し(S3)、手動昇降操作が行われていなければ「倒伏刈り」の有無を倒伏刈りスイッチ66の入切状態から判断する(S4)。そして、倒伏刈りスイッチ66が切りとなっていて標準刈りが行われている場合は、前述の昇降自動制御のステップS8~S10と同様なステップS5~S7を踏んで刈高さセンサ値を求め、次に「刈高さセンサ値」を判断する(S8)。
そして、刈高さセンサ値が予め設定した制御開始高さより高い場合は刈取部16の昇降作動を行わないが、制御開始高さに達したり低くなると「上昇作動」を実行し(S9)、その後「一定量上昇」の判断を行う(S10)。ここで、刈取部16が一定量上昇していない場合は「上昇作動」を継続させ、刈取部16が一定量上昇すると「昇降作動停止」を実行する(S11)。
従って、上記上昇制御を終えた刈取部16の刈高さは、例えば上昇作動を開始する際の刈取部16の刈高さに対して数十ミリ程度上昇して、圃場の凸部や障害物等を乗り越え例えば、地面への分草体17の突っ込みや刈刃装置23の泥土や石等の噛み込みを防いで、それらの破損や故障を無くすことができる。なお、この場合の「一定量上昇」の判断は、走行機体に対する刈取部16の昇降量を用いて判断するためリフトポテンショメータ68の検出値に基づくものである。
また、前述のステップS4で、倒伏刈りスイッチ66が入りとなって倒伏刈りが行われる場合には、「制御目標値」を昇降自動制御と同じく予め定めた倒伏刈値に設定し(S12)、次に昇降自動制御のステップS7~S14と同様のステップS13~S20を実行する。さらに、前述のステップS3で手動昇降操作が行われた場合は、昇降自動制御のステップS15~S22と同様のステップS21~S28を実行する。なお、昇降自動制御のステップS20の「刈高さセンサ値」の判断では制御目標値と比較しているが、上昇自動制御では制御開始高さに所定高さ加えた高さと比較する。
従って、上昇自動制御で手動の下降操作が行われた場合、制御装置63は刈高さセンサ69の検出した対地高さが制御開始高さに所定高さ加えた高さに達すると刈取部16の下降を停止させるから、それ以上の刈取部16の下降を阻止して刈取部16が地面に接地して埋没することを防ぐことができる。また、刈取部16を元の制御開始高さ近くまで下降させる際の下降停止操作タイミングをあまり気にせず刈取部16の下降操作を行うことができ、これにより刈取部16の損傷を防止することができる。
しかも、制御開始高さ以上に下降させると引き続く上昇自動制御によって刈取部16は再び上昇することになるから、これを防止して制御の安定性を高めることができる。なお、制御開始高さに所定高さ加えた高さは、上昇自動制御を開始する際に下降させた刈取部16の走行機体に対する昇降量を保持しておくことにより、この昇降量に制御することもできる。
次に、刈高さポジション制御について説明すると、制御装置63は、マルチステアリングレバー61によって刈取部16を下降させた際にリフトポテンショメータ68が検出した刈取部16の走行機体に対する昇降量が刈高さダイヤル83によって設定された下限値に達すると刈取部16の下降を停止させ、或いは、トリガースイッチ86と共にマルチステアリングレバー61を下降操作した際には下限値を超えて刈取部16を下降させる刈高さポジション制御を備え、この刈高さポジション制御を実行している場合に、圃場の倒伏する立毛穀稈を刈取るために刈取部16の駆動速度を増速させて刈取作業を行う際には、刈高さの制御目標値を低く設定して刈残しを防止するように刈高さを制御する。
このように制御装置63に刈高さポジション制御を備えると、倒伏刈りを行わない標準刈りにおいて、マルチステアリングレバー61によって刈取部16を下降させた際にリフトポテンショメータ68が検出した昇降量が刈高さダイヤル83によって設定された下限値に達すると刈取部16の下降を停止させ、或いは、トリガースイッチ86と共にマルチステアリングレバー61を下降操作した際には下限値を超えて刈取部16を下降させることができる。
従って、例えば、刈高さダイヤル83によって刈高さを一度設定しておくと、マルチステアリングレバー61を下降操作するだけで刈取部16の刈高さを設定した高さに合わせることができ、マルチステアリングレバー61による手動での刈高さの調節を容易にして、刈高さを常に一定の高さになして安定した刈取作業を行うことができる。
また、圃場に凹部や溝があったり、刈始めにヘッドアップした刈取部16を下降させて刈高さを一時的に低くしたい場合があり、このような場合にはトリガースイッチ86を引きながらマルチステアリングレバー61を下降操作すれば、設定した高さを超えて刈取部16を下降させることができ、これにより刈残しを無くすことができる。なお、下降させた刈取部16はマルチステアリングレバー61の上昇操作によって設定した高さ以上に上昇させた後、マルチステアリングレバー61の下降操作によって設定した元の刈高さに戻すことができる。
そして、このような刈高さポジション制御を用いて刈高さの制御を行っている際に、圃場に部分倒伏があって倒伏刈りを行う場合には、制御装置63が昇降自動制御や上昇自動制御を行っている場合と同様に、刈高さの制御目標値を低く設定して刈残しを防止するように刈高さを制御するから、刈高さポジション制御を終了させて例えば、昇降自動制御に切替えたり、制御目標値や刈高さダイヤル83によって刈高さを低く設定し直す必要がなく、さらに、倒伏刈りから標準刈りに戻ると、通常の刈高さポジション制御の下に刈取作業を行うことができる。
なお、制御装置63は、上述の刈高さポジション制御を行っている場合に、トリガースイッチ86を引きながらマルチステアリングレバー61を下降操作して刈高さダイヤル83によって設定した下限値を超えて刈取部16を下降させる際には、刈高さセンサ69の検出した対地高さが予め定めた停止規制値に達すると刈取部16の下降を停止させる。そのため、通常の刈取作業を行っている際に、圃場に凹部や溝があったり、刈始めに刈取部がヘッドアップした場合に、刈残し等を防止するためトリガースイッチ86を引きながらマルチステアリングレバー61を下降操作して、設定した高さを超えて刈取部16を下降させることができるが、そのまま下降操作を続ければ刈取部16は地面に接地して埋没してしまう。
しかし、その場合、制御装置63は刈高さセンサ69の検出した対地高さが例えば、図6に示す制御目標値「低」或いはセンサ「メカストップ」に相当する停止規制値に達すると刈取部16の下降を停止させるから、それ以上の刈取部16の下降を阻止して刈取部16が地面に接地して埋没することを防ぐことができる。従って、刈取部16を設定した高さを超えて下降させる際の下降停止操作タイミングをあまり気にせず刈取部16の下降操作を行うことができ、これにより刈取部16の損傷や刈残しを確実に防止することができる。
以下、刈高さポジション制御の具体的な制御内容をフローチャートに基づいて説明すると、図12に示すように制御装置63は、先ず昇降自動制御等と同様の「センサ値等読込」を実行する(S1)。なお、刈高さポジション制御では昇降自動制御のセンサ値等読込のものに加えて予め定めた停止規制値と刈高さダイヤル83によって設定する下限値とリフトポテンショメータ68が検出した刈取部16の走行機体に対する昇降量とトリガースイッチ86の入切状態も読み込む。また、制御装置63は、読み込んだデータに基づいて「倒伏刈り」を判断する(S2)。
そして、倒伏刈りスイッチ66が切りとなっていて標準刈りが行われている場合には、昇降レバーポテンショメータ62が検出したマルチステアリングレバー61の操作状態から「手動下降操作」の有無を判断し(S3)、上昇操作や昇降操作が行われていなければ復帰する。しかし、ここで手動下降操作が行われていれば「昇降量」の判断を行い(S4)、刈取部16の走行機体に対する昇降量が刈高さダイヤル83によって設定する下限値より高ければ「下降作動」を実行する(S5)。
また、昇降量が下限値以下であると「解除操作具」の判断を行い(S6)、解除操作具を構成するトリガースイッチ86がマルチステアリングレバー61と共に引かれて入りとなっていなければ、「下降作動停止」を実行する(S7)。一方、トリガースイッチ86がマルチステアリングレバー61と共に引かれて入りとなっていれば、「左右刈高さセンサ値」の判断を行い(S8)、既に述べたように右刈高さセンチ値が左刈高さセンチ値より低い場合は刈高さセンサ値に右刈高さセンチ値を代入し(S9)、それ以外である場合は刈高さセンサ値に左刈高さセンサ値を代入する(S10)。
そして、「刈高さセンサ値」の判断を行い(S11)、刈高さセンサ値が予め定めた停止規制値以下であると「下降作動停止」を実行し(S7)、それ以外であれば「下降作動」を継続して実行する(S12)。
また、前述のステップS2で、倒伏刈りスイッチ66が入りとなって倒伏刈りが行われる場合には、「制御開始条件」の判断を行い(S13)、例えば、刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54が入りになっていること、刈高さポジション制御が選択されていること、各ポテンショメータ等にエラーが無いこと、トランスミッションが回転していること、主変速レバー59が前進領域にあること等の制御開始条件の一つでも満足していなければ、不成立として前述のステップS3以降のステップに戻る。
しかし、制御開始条件を全て満足していれば、昇降レバーポテンショメータ62が検出したマルチステアリングレバー61の操作状態から「手動昇降操作」を判断し(S14)、手動昇降操作が行われていれば、前述のステップS3以降のステップに戻る。また、手動昇降操作が行われていなければ、以下、上昇自動制御のステップS12~S20と同じ、ステップS15~S23を実行する。なお、前述のステップS18以降のステップを実行する際には、特にフローには載せていないが左右刈高さセンサ69R、69Lが共に故障等のエラーを生じていないことが前提条件である。
以上、昇降自動制御と上昇自動制御と刈高さポジション制御の制御内容について説明したが、この際に使用する昇降自動制御の刈高さの制御目標値、上昇自動制御の制御開始高さについてはプログラム上に標準的な固定値として設けることもできる。しかし、制御装置63が刈高さポジション制御の下限値を設定する刈高さダイヤル83を用いて昇降自動制御、又は上昇自動制御を実行する際にこれを参照してこれらの値を決定することができる。
そして、その際は、昇降自動制御の制御目標値を作業者が望む刈高さに自由に設定することができ、或いは上昇自動制御の制御開始高さを作業者が望む高さに自由に設定することができ、自動制御の裁量の幅を拡げることができる。また、一つの刈高さダイヤル83を共用することによってコストダウンを図ることができると共に、操縦部における設置スペースも少なくてすみ他の操作具との干渉を避けて操作性を向上させることができる。
なお、倒伏刈りに伴って刈高さを制御する倒伏刈値、制御上の不感帯の幅、上昇自動制御の上昇量(一定量)と制御開始高さに加える所定高さ、刈高さポジション制御の停止規制値もプログラム上に標準的な固定値として設けることもできるが、例えば、これらの値を書換え可能な不揮発性メモリに書き込み、各制御の開始に当たってこの不揮発性メモリに書き込まれた値を読み出して使用すれば、液晶モニター90を用いて各値を予め変更することができ、各制御上の微調整が可能となる。
また、昇降自動制御等における制御開始条件は、基本的に刈取作業を実際に行っていることを条件としており例えば、刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54を入りにしている場合であっても走行を停止していれば刈高さの調節は不要であると共に、寧ろ何らかのタイミングで勝手に刈取部16が意図せず昇降するのを阻止して危険を防ぐことを優先する。
さらに、刈取部16の昇降は手動操作を優先し、あくまでも作業者が刈取部16の下降操作を伴って刈取作業を開始する際に自動制御を開始させるものである。従って、本実施形態では、その制御開始条件を前述のように定めるが、係る意図を逸脱しない範囲で制御開始条件を適宜変更することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、自脱型コンバインに限らず汎用コンバインで実施する場合には、刈取部(ヘッダ部)に設ける掻込リールの駆動速度を倒伏する立毛穀稈を掻き込む際に増速させると共に、掻込リールを前下方に移動させて確実に立毛穀稈を漏れなく掻き込むことができるようにする。また、その際に刈高さの制御目標値を低く設定して刈残しを防止するように構成する。
また、段落番号0077~0079に説明するように倒伏刈りを判断する際に、副変速レバー58の倒伏位置への切換操作を検出するスイッチを用いたり、倒伏する立毛穀稈を刈取るために刈取部の駆動速度を増速させて刈取作業を行う際の刈取部の増速方法を種々変更したり、刈取部の全体ではなく例えば、引起装置や刈刃装置のみを増速させることもできる。
さらに、手動下降操作時における刈高さセンサを用いた刈取部の下降規制は、刈取部を地面に一時的に埋没させても刈残しを優先するユーザーにとっては邪魔な機能となり得るため、この規制を行わないように液晶モニター等を用いて選択することができるようにしてもよく、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。