JP7198638B2 - コーキング材用カートリッジの底蓋及びコーキング材用カートリッジ - Google Patents

Description

本発明は、コーキング材用カートリッジの底蓋、及びコーキング材用カートリッジに関する。

なお本明細書及び特許請求の範囲では、文中に特に明示する場合を除き、「アルミニウム」の語は純アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む意味で用いられ、「コーキング材」の語はシーリング材を含む意味で用いられる。

建築現場などでは、目地、継手などの隙間を埋めて防水性や気密性を確保するため、コーキング材を隙間に充填するというコーキング作業が行われる。

このコーキング作業は一般に次のように行われる。すなわち、コーキング材入り円筒状カートリッジをコーキングガンに装填し、カートリッジの本体内に配置された底蓋をコーキングガンの押圧部で押圧することにより、底蓋をカートリッジ本体の先端方向に摺動移動させ、これによりコーキング材をカートリッジ本体の先端のノズルから吐出させて隙間に充填する。

カートリッジ本体や底蓋の材料としては、一般に樹脂が用いられたり金属の軟包材などが用いられている（特許文献１～３参照）。

特許第５７１３６４９号公報 実公平６－２１８５９号公報 特開２００４－５１２２９号公報

而して、カートリッジの底蓋には、コーキング材の品質の劣化を防止するため、高い密封性と空気（例：酸素）や水分に対する高いバリア性とが要求される。

しかし、樹脂製の底蓋は金属製の蓋板と比べてバリア性が低いという難点がある。金属の軟包材で形成された底蓋は、その周縁に形成される短円筒状スカート部にしわが発生し易く、このしわの部分から空気や水分がカートリッジ本体内に入るという難点がある。

本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、高いバリア性と高い密封性を有するコーキング材用カートリッジの底蓋を提供することにある。

本発明は以下の手段を提供する。

１） 内部にコーキング材が充填される筒状カートリッジ本体内に前記カートリッジ本体の先端方向に摺動移動可能に配置される、コーキング材用カートリッジの底蓋であって、
カートリッジ本体の底側の開口を閉塞するように前記カートリッジ本体内に配置される底板部と、前記底板部の周縁から前記底板部の外面側に屈曲して形成されるとともに外周面が前記カートリッジ本体の内周面に接触して前記カートリッジ本体内に配置される筒状スカート部とを備えた有底筒状に形成されており、
前記底板部及び前記スカート部は、アルミニウム層と前記アルミニウム層の一方の片側に積層されるとともに前記アルミニウム層を保護する保護層と前記アルミニウム層の他方の片側に積層された熱融着性樹脂層とを備えたアルミラミネートフィルムが、前記保護層側が凸側になるように有底筒状に曲げ加工されて形成されたものである、コーキング材用カートリッジの底蓋。

２） 前記スカート部の内側に配置されるとともに前記底板部及び前記スカート部を補強する樹脂製補強部材を備え、
前記補強部材が、前記底板部における前記アルミラミネートフィルムの前記熱融着性樹脂層と前記スカート部における前記アルミラミネートフィルムの前記熱融着性樹脂層とに熱融着されている前項１記載のコーキング材用カートリッジの底蓋。

３） 前記補強部材は前記熱融着性樹脂層の樹脂と同種の樹脂製である前項２記載のコーキング材用カートリッジの底蓋。

４） 前記底板部及び前記スカート部は、前記アルミラミネートフィルムが前記曲げ加工として深絞り加工されて形成されたものである前項１～３のいずれかに記載のコーキング材用カートリッジの底蓋。

５） 前項１～４のいずれかに記載の底蓋を具備する、コーキング材用カートリッジ。

本発明は以下の効果を奏する。

前項１では、底蓋の底板部及びスカート部が、保護層とアルミニウム層と熱融着性樹脂層とを備えたアルミラミネートフィルムが、保護層側が凸側になるように有底筒状に曲げ加工されて形成されたものであることにより、アルミラミネートフィルムを有底筒状に曲げ加工する際に底蓋のスカート部にしわが発生するのを抑制できる。そのため、底蓋はこれをカートリッジ本体内に配置したとき高い密封性を有する。

さらに、アルミラミネートフィルムのアルミニウム層により空気（例：酸素）及び水分が遮断されるので、底蓋は空気及び水分に対して高いバリア性を有する。

さらに、アルミラミネートフィルムのアルミニウム層がその両側にそれぞれ積層された保護層と熱融着性樹脂層により保護されるので、アルミニウム層が腐食されにくくなり底蓋の高いバリア性を確実に維持できる。

前項２では、底蓋の底板部及びスカート部を補強部材により補強できる。そのため、例えばコーキングガンの押圧部で底蓋が押圧された場合でも底蓋の破れ及び変形を確実に抑制できる。

前項３では、底蓋の底板部及びスカート部に補強部材を強固に熱融着することができる。そのため、前項２に記載の効果を確実に奏しうる。

前項４では、底蓋の底板部及びスカート部は、アルミラミネートフィルムが曲げ加工として深絞り加工されて形成されたものであることにより、アルミラミネートフィルムを有底筒状に曲げ加工する際に底蓋のスカート部にしわが発生するのを確実に抑制できる。

前項５では、前項１～４のいずれかに記載の効果を奏しうるコーキング材用カートリッジを提供できる。

図１は、本発明の一実施形態に係る底蓋を具備するコーキング材用カートリッジの一部断面側面図である。 図２は、底蓋の縦断面図である。 図３は、実施例において底蓋の形成方法を説明する概略図である。

次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。

図１に示すように、本発明の一実施形態に係るコーキング材用カートリッジ１は、カートリッジ本体２、底蓋３などを備えている。

カートリッジ本体２はその底側が開口した円筒状に形成されており、その内径はカートリッジ本体２の長さ方向に一定である。カートリッジ本体２の材料は一般に用いられているものであり、具体的には樹脂、金属、紙などの単体、あるいはその組み合わせによる積層体(複合体)などである。

カートリッジ本体２の内部にはコーキング材（ドットハッチングで示す）７が充填されている。カートリッジ本体２の先端部にはコーキング材７を吐出するノズル２ｂが設けられている。

底蓋３は、カートリッジ本体２内にカートリッジ本体２の先端方向に摺動移動可能に配置された有底円筒状（詳述すると有底短円筒状）のものである。

本実施形態のコーキング材入りカートリッジ１を用いてコーキング作業をする場合、カートリッジ１はコーキングガン（図示せず）に装填される。そして、コーキングガンの押圧部（二点鎖線で示す）９でカートリッジ１の底蓋３（詳述すると底蓋３の後述の底板部３ａ）をその外面側から押圧することにより、底蓋３をカートリッジ本体２の先端方向に摺動移動させる。これにより、コーキング材７をカートリッジ本体２の先端部のノズル２ｂから吐出させて、目地、継手などの隙間に充填する。

次に、カートリッジ１の底蓋３の構成について以下に詳述する。

底蓋３は、カートリッジ本体２の内部の横断面形状に対応した円板状の底板部３ａと、円筒状（詳述すると短円筒状）のスカート部３ｂとを備えている。スカート部３ｂは、底板部３ａの周縁から底板部３ａの外面側に底板部３ａに対して直角に屈曲して一体に形成されている。

底板部３ａは、カートリッジ本体２の底側の開口を閉塞するようにカートリッジ本体２内にカートリッジ本体２の内部を横断する状態に配置されている。

スカート部３ｂは、その外周面がカートリッジ本体２の内周面２ａにその全周に亘って面接触した状態にカートリッジ本体２内に配置されている。

図２に示すように、底蓋３の底板部３ａ及びスカート部３ｂは、所定のアルミラミネートフィルム５が有底円筒状（詳述すると有底短円筒状）に曲げ加工されて形成されたものである。

アルミラミネートフィルム５は、保護層５ａとアルミニウム層５ｂと熱融着性樹脂層５ｃとを備えるとともにこの順に積層一体化されて形成されたものである。すなわち、保護層５ａはアルミニウム層５ｂを保護するものでありアルミニウム層５ｂの一方の片側に積層されている。熱融着性樹脂層５ｃはアルミニウム層５ｂの他方の片側に積層されている。

そして、底板部３ａ及びスカート部３ｂは、アルミラミネートフィルム５がその保護層５ａ側が凸側になるように有底円筒状に曲げ加工されることにより形成されている。

さらに、底蓋３は、底板部３ａ及びスカート部３ｂを補強する樹脂製の補強部材４を備えている。

補強部材４は、底蓋３のスカート部３ｂの内側に嵌合状に配置可能な有底円筒状（詳述すると有底短円筒状）のものであり、底部４ａと周壁部４ｂを備えている。補強部材４が底蓋３のスカート部３ｂの内側に配置された状態において、補強部材４の底部４ａが底板部３ａにおけるアルミラミネートフィルム５の熱融着性樹脂層５ｃに熱融着されるとともに、補強部材４の周壁部４ｂがスカート部３ｂにおけるアルミラミネートフィルム５の熱融着性樹脂層５ｃに熱融着されており、これにより補強部材４が底板部３ａ及びスカート部３ｂに一体化されている。

アルミラミネートフィルム５の保護層５ａとしては、ポリエステル（例：ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）、ＰＢＴ（ポリブチレンテレフタレート）、ＰＥＮ（ポリエチレンナフタレート））層、ポリアミド（例：６－ナイロン）層、ポリオレフィン（例：ＰＰ（ポリプロピレン）、ＰＥ（ポリエチレン））層、フッ素樹脂層、エポキシアクリル層などが用いられる。保護層５ａの厚さは限定されるものではなく特に１～２０μｍであることが好ましい。

アルミニウム層５ｂはアルミニウム箔からなる。アルミニウム層（アルミニウム箔）５ｂの厚さは限定されるものではなく特に３０～１５０μｍであることが好ましい。また、アルミニウム箔の両面うち少なくとも一方にはクロメート処理等の下地処理が施されていてもよい。下地処理がクロメート処理である場合、アルミニウム層５ｂの耐食性を向上させることができる。

熱融着性樹脂層５ｃとしては、ポリオレフィン（例：ＰＰ、ＰＥ）層などが用いられる。熱融着性樹脂層５ｃの厚さは限定されるものではなく特に２０～５００μｍであることが好ましい。

補強部材４は上述したように樹脂製であり、好ましくは熱融着性樹脂層５ｃの樹脂と同種の樹脂製であることがよい。すなわち、例えば熱融着性樹脂層５ｃがＰＰ（例：無延伸ＰＰ、二軸延伸ＰＰ）層である場合、補強部材４はＰＰ製であることが好ましい。このように、補強部材４が熱融着性樹脂層５ｃの樹脂と同種の樹脂製である場合、底板部３ａ及びスカート部３ｂに補強部材４を強固に熱融着することができる。

補強部材４の厚さは限定されるものではなく特に０．５～５ｍｍであることが好ましい。

底板部３ａ及びスカート部３ｂに補強部材４を熱融着して一体化する方法としては、スカート部３ｂの内側に補強部材４を配置した状態で底蓋３の凸側から底板部３ａ及びスカート部３ｂを押圧しつつ加熱する方法であってもよいし、スカート部３ｂの内側にインサートインジェクションにより補強部材４を成形する方法であってもよいし、その他の方法であってもよい。

本実施形態のカートリッジ１の底蓋３は次の利点がある。

底蓋３の底板部３ａ及びスカート部３ｂが、保護層５ａとアルミニウム層５ｂと熱融着性樹脂層５ｃとを備えたアルミラミネートフィルム５が、保護層５ａ側が凸側になるように有底円筒状に曲げ加工されて形成されたものであるから、アルミラミネートフィルム５を有底円筒状に曲げ加工する際にスカート部３ｂにしわが発生するのを抑制できる。そのため、底蓋３はこれをカートリッジ本体２内に配置したとき高い密封性を有する。

さらに、アルミラミネートフィルム５のアルミニウム層５ｂにより空気（例：酸素）及び空気中の水分が遮断されるので、底蓋３は空気及び水分に対して高いバリア性を有する。

さらに、アルミラミネートフィルム５のアルミニウム層５ｂがその両側にそれぞれ積層された保護層５ａと熱融着性樹脂層５ｃにより保護されるので、アルミニウム層５ｂが腐食されにくくなり底蓋３の高いバリア性を確実に維持できる。

さらに、補強部材４が、底板部３ａにおけるアルミラミネートフィルム５の熱融着性樹脂層５ｃとスカート部３ｂにおけるアルミラミネートフィルム５の熱融着性樹脂層５ｃとに熱融着されているので、底蓋３の底板部３ａ及びスカート部３ｂを補強部材４により補強できる。そのため、例えばコーキングガンの押圧部９で底蓋３が押圧された場合でも、底板部３ａ及びスカート部３ｂに対して補強部材４が滑ることがなくなり、底蓋３の破れ及び変形を確実に抑制できる。したがって、コーキング作業時において、カートリッジ本体２内のコーキング材７の充填量が満タン状態から空状態までの間に亘って均一な押圧力をコーキング材７に加えることができる。

ここで、底蓋３の底板部３ａ及びスカート部３ｂは、上述したようにアルミラミネートフィルム５が曲げ加工されて形成されたものであるが、特に、アルミラミネートフィルム５が曲げ加工として深絞り加工されて形成されたものであることが望ましい。この場合、アルミラミネートフィルム５を有底円筒状に曲げ加工する際に底蓋３のスカート部３ｂにしわが発生するのを確実に抑制できる。

以上で本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能であることは言うまでもない。

本発明の具体的実施例を以下に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

アルミラミネートフィルム５を製造するため、アルミニウム層５ｂとしてアルミニウム箔（その厚さ４０μｍ）を準備した。アルミニウム箔の材質はＪＩＳ Ｈ４１６０で規定されるＡ８０２１－Ｏである。そして、アルミニウム箔の両面にそれぞれ下地処理としてクロメート処理（その厚さ１μｍ）を常法に従って施した。

次いで、アルミニウム箔の一方の片面にウレタン系接着剤を厚さ２μｍに塗布し、アルミニウム箔の当該片面に保護層５ａとしてのＰＥＴフィルム（その厚さ１２μｍ）をこの接着剤で接着し積層した。

また、アルミニウム箔の他方の片面にウレタン系接着剤を厚さ２μｍに塗布し、アルミニウム箔の当該片面に熱融着性樹脂層５ｃとしての無延伸ＰＰフィルム（その厚さ４０μｍ）をこの接着剤で接着し積層した。

次いで、このように互いに接着されたアルミニウム箔、ＰＥＴフィルム及び無延伸ＰＰフィルムを４０℃で５日間エージング処理した。

以上の方法によりアルミラミネートフィルム５を得た。

次いで、アルミラミネートフィルム５を直径７０ｍｍの円形状に裁断し、これによりアルミラミネートフィルム５からなるブランクを得た。そして、図３に示すように、このブランクをその中央部においてＰＥＴフィルム（保護層５ａ）側が凸側になるように有底短円筒状に深絞り加工し、その後そのフランジ部３ｃを切除線（一点鎖線で示す）Ｃに沿って切除することにより、底蓋３の底板部３ａ及びスカート部３ｂを形成した。この深絞り加工の際に用いたパンチ１０は直径Ｄが５０ｍｍで長さＬが１０ｍｍの円柱状のものであった。また、底蓋３のスカート部３ｂの長さは８ｍｍであった。

次いで、底蓋３のスカート部３ｂの内側にＰＰ製の補強部材４（その厚さ２ｍｍ）を配置し、底蓋３の凸側から底板部３ａ及びスカート部３ｂを押圧しつつ２００℃で３秒間加熱することにより、底板部３ａにおけるアルミラミネートフィルム５の無延伸ＰＰフィルム（熱融着性樹脂層５ｃ）とスカート部３ｂにおけるアルミラミネートフィルム５の無延伸ＰＰフィルム（熱融着性樹脂層５ｃ）とに補強部材４を熱融着し、これにより補強部材４を底板部３ａ及びスカート部３ｂに一体化した。

以上の方法により底蓋３を得た。

この底蓋３を観察したところ、底蓋３のスカート部３ｂにしわが発生していなかった。したがって、底蓋３は、これをカートリッジ本体２内に配置したとき高い密封性を得ることができる。

本発明は、コーキング材用カートリッジの底蓋、及びコーキング材用カートリッジに利用可能である。

１：カートリッジ
２：カートリッジ本体
３：底蓋
３ａ：底板部
３ｂ：スカート部
４：補強部材
５：アルミラミネートフィルム
５ａ：保護層
５ｂ：アルミニウム層
５ｃ：熱融着性樹脂層

Claims (4)

1. 内部にコーキング材が充填される筒状のカートリッジ本体内に前記カートリッジ本体の先端方向に摺動移動可能に配置される、コーキング材用カートリッジの底蓋であって、
   カートリッジ本体の底側の開口を閉塞するように前記カートリッジ本体内に配置される底板部と、前記底板部の周縁から前記底板部の外面側に屈曲して形成されるとともに外周面が前記カートリッジ本体の内周面に接触して前記カートリッジ本体内に配置される筒状のスカート部とを備えた有底筒状に形成されており、
   前記底板部及び前記スカート部は、アルミニウム層と前記アルミニウム層の一方の片側に積層されるとともに前記アルミニウム層を保護する保護層と前記アルミニウム層の他方の片側に積層された熱融着性樹脂層とを備えたアルミラミネートフィルムが、前記保護層側が凸側になるように有底筒状に曲げ加工されて形成されたものであり、
   底部及び周壁部を備えた有底筒状に形成されるとともに前記底板部及び前記スカート部を補強する補強部材が、前記スカート部の内側に嵌合状に配置されており、
   前記補強部材は、前記アルミラミネートフィルムの前記熱融着性樹脂層の樹脂と同種の樹脂製であり、
   前記補強部材の前記底部が前記底板部における前記アルミラミネートフィルムの前記熱融着性樹脂層に熱融着されるとともに、前記補強部材の前記周壁部が前記スカート部における前記アルミラミネートフィルムの前記熱融着性樹脂層に熱融着されている、コーキング材用カートリッジの底蓋。
2. 前記底板部及び前記スカート部は、前記アルミラミネートフィルムが前記曲げ加工として深絞り加工されて形成されたものである請求項１記載のコーキング材用カートリッジの底蓋。
3. 前記底板部及び前記スカート部は、前記アルミラミネートフィルムが前記スカート部にしわが発生しないように前記曲げ加工として深絞り加工されて形成されたものである請求項１記載のコーキング材用カートリッジの底蓋。
4. 請求項１～３のいずれかに記載の底蓋を具備する、コーキング材用カートリッジ。
   

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