JP7195184B2 - 金属酸硫化物の製造方法 - Google Patents
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Description
上記後者の手法のように、金属硫化物やイオウ粉末をイオウ源に用いる場合においては、反応は真空中で行われ、ガラス容器等で真空密閉して焼成が行われることが多く、一度に製造可能な量もガラス容器の耐圧強度の問題から制限されてしまうことの他、目的の酸硫化物A2B2O5S2を得るには2~10日という長時間の焼成が必要となることも知られている。
一方で、上記前者の手法のように、硫化水素ガスをイオウ源に用いる場合においては、通常の雰囲気制御炉の流通ガスを硫化水素として焼成するだけで、原料の真空密閉等が不要であることの他、金属酸硫化物A2B2O5S2が数時間程度の極めて短い時間で得られることが知られている。
を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、硫化水素ガスをイオウ源として金属酸硫化物A2B2O5S2を製造するに当たり、反応雰囲気中に水素ガス生成を抑制する、又は水素ガスを捕集する機構を組み込み、アニオンの欠損や、還元性のH2による結晶性の悪化、化学量論組成からのずれ、B元素があるべき価数から外れてしまうことを防ぎ、光触媒や、反応電極としてより高い性能を発揮できる金属酸硫化物A2B2O5S2を供給することができることを見出し、本発明に到達した。
[1] 金属酸硫化物であるAaBbOcSd(Aは、Y、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er及びLaからなる群より選択される1種以上を含み、Bは、Ti、Nb、Ta及びLaからなる群より選択される1種以上を含み、1.7≦a≦2.3、1.7≦b≦2.3、c=5、1.7≦d≦2.3である。)を、反応炉中で金属酸化物含有原料と硫化水素とを反応させて製造する工程を含み、前記工程は、以下のM1~4のうち少なくとも一つを含む、金属酸硫化物の製造方法。
M1:金属酸化物含有原料が硫化水素の分解を抑制する成分を含む。
M2:反応炉中に導入する雰囲気ガスが硫化水素の分解を抑制する成分を含む。
M3:反応炉中に金属酸化物含有原料とは別に硫化水素の分解を抑制する成分を発生させる物質が存在する。
M4:反応炉中に金属酸化物含有原料とは別に水素を捕集する機構を設ける。
[2] 前記金属酸化物含有原料が、前記金属酸硫化物の化学量論組成よりもイオウが少ない化学量論組成を有する金属酸化物含有原料を含む、[1]に記載の金属酸硫化物の製造方法。
[3] 前記M2における雰囲気ガスが、硫化水素及びイオウを含む混合ガスである、[1]又は[2]に記載の金属酸硫化物の製造方法。
[4] 前記AがYを含む、[1]乃至[3]のいずれかに記載の金属酸硫化物の製造方法。
[5] 前記BがTiを含む、[1]乃至[4]のいずれかに記載の金属酸硫化物の製造方法。
[6] 前記AがYを含み、A中のYの含有量が80モル%以上であり、かつ、前記BがTiを含み、B中のTiの含有量が80モル%以上である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の金属酸硫化物の製造方法。
なお、本発明では、金属酸化物含有原料や硫化水素を含め、金属酸硫化物の製造に用いられる全ての材料をまとめて「原料」と称する場合もある。
方法」とも称する。)は、金属酸硫化物であるAaBbOcSd(Aは、Y、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er及びLaからなる群より選択される1種以上を含み、Bは、Ti、Nb、Ta及びLaからなる群より選択される1種以上を含み、1.7≦a≦2.3、1.7≦b≦2.3、c=5、1.7≦d≦2.3である。)を、反応炉中で金属酸化物含有原料と硫化水素とを反応させて製造する工程(以下、「反応工程」とも称する。)を含み、かつ、前記工程は、以下のM1~4のうち少なくとも一つを含む、金属酸硫化物の製造方法である。
M1:金属酸化物含有原料が硫化水素の分解を抑制する成分を含む。
M2:反応炉中に導入する雰囲気ガスに硫化水素の分解を抑制する成分を含む。
M3:反応炉中に金属酸化物含有原料とは別に硫化水素の分解を抑制する成分を発生させる物質が存在する。
M4:反応炉中に金属酸化物含有原料とは別に水素を捕集する機構を設ける。
M1:金属酸化物含有原料が硫化水素の分解を抑制する成分を含む。
M2:反応炉中に導入する雰囲気ガスが硫化水素の分解を抑制する成分を含む。
M3:反応炉中に金属酸化物含有原料とは別に硫化水素の分解を抑制する成分を発生させる物質が存在する。
M4:反応炉中に金属酸化物含有原料とは別に水素を捕集する機構を設ける。
以下に、金属酸硫化物や反応工程、上記のM1~4等の詳細を説明する。
上記実施形態により製造される金属酸硫化物は、AaBbOcSdで表される金属酸硫化物である。
Aは、Y(イットリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、La(ランタン)から1種又は2種以上を組み合わせたものである。
特にこれらの中では、Y、Sm、Gd、Tb、Ho、Erを含むことが好ましく、Y、Smを含むことがより好ましく、最も好ましくはYを含むことである。
A中のYの含有量は、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。また、化合物の安定性としては100モル%であることが最も好ましいが、例えば触媒としての寿命等の特性を改善するために別の元素を添加してもよく、その場合、添加量は20モル%以下、より好ましくは10モル%以下であることが好ましい。一
また、aは、結晶の安定性の観点から、1.7≦a≦2.3であるが、1.8≦a≦2.2であることが最も好ましい。
また、Aが2種以上の金属元素を組み合わせたものである場合、A1a1A2a2のように表すことができ、それぞれの金属元素に対してaの値を特定することができ、また、それぞれのaの合計値(a1+a2)に対して上記のaの範囲を特定することができる。例えば、Aaを、Y1.5Pr0.5のように表すことができる。
なお、LaはAとしてもBとしても用いることができる。このためLaが入っているときには、同時に入っているカチオン元素と、アニオン元素を見て、その電荷のバランスから、どちらにどの程度入っているのかを判断すればよい。
また、上記のAと同様に、Bが2種以上の金属元素を組み合わせたものである場合、B1b1B2b2のように表すことができ、それぞれの金属元素に対してbの値を特定することができ、また、それぞれのbの合計値(b1+b2)に対して上記のbの範囲を特定することができる。例えば、Bbを、Ti1.5Nb0.5と表すことができる。
dは、イオウの量であり、酸素と共にアニオン側の電荷を担う。酸素を5とする基準を用いているため、若干の変動が許容され、1.7≦d≦2.3であるが、1.8≦d≦2.2であることがより好ましい。
これら組成に関しては、カチオンはICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析、アニオンについてはONH計(酸素・窒素・水素分析装置)、炭素・イオウ分析装置を用いて行えばよい。
<2-1.紫外・可視拡散反射スペクトル測定>
上記の金属酸硫化物に対して紫外・可視拡散反射スペクトル測定を行うことにより、従来の方法で製造された金属酸硫化物との差異を確認することができる。
当該測定条件は、特段制限されないが、例えば、以下の条件とすることができる。
測定装置:V-670 Spectrophotometer(JASCO製)
・測定範囲:300~800mm
・データ間隔:1.0nm
・走査速度:10000nm/分
・光源切換え:340.0nm
・データ解析ソフト:Spectra Manager version 2
解析:縦軸をクベルカ-ムンク(K.M.)変換
クベルカ-ムンク変換式
f(R∞)=(1-R∞)2/2R∞=K/S
ここで、f(R∞)はK.M.関数、R∞は絶対反射率、Kは分子吸光係数、Sは散乱係数である。
なお、試料の絶対反射率R∞を測定することは困難であり、実際には標準試料を用いた相対反射率r∞を用いることが一般的である。よって、
r∞=r(測定試料)/r(標準試料)(標準試料としてBaSO4を使用)
を用いて相対反射率r∞の測定を行い、
f(r∞)=(1-r∞)2/2r∞=K/S
より、導出してもよい。
上記の金属酸硫化物は、反応炉10中で金属酸化物含有原料16と硫化水素とを反応させることにより製造される。
金属酸化物含有原料は、上記のA及びB、並びにO(酸素)の元素を含むものであれば特段制限されないが、例えば、A元素を含む酸化物(Aa3Oc3)や硫化物(Aa3Sd3)、酸硫化物(Aa3Oc3Sd3)のうちから1種類又は2種類以上、B元素を含む酸化物(Bb3Oc3)や硫化物(Bb3Sd3)、酸硫化物(Bb3Oc3Sd3)のうちから1種類又は2種類以上、A元素及びB元素を含む酸化物(Aa3Bb3Oc3)や硫化物(Aa3Bb3Sd3)、酸硫化物(Aa3Bb3Oc3Sd3)のうちから1種類又は2種類以上、A元素及びB元素を含む共沈組成物を任意に用いることができる。
金属酸化物含有原料の化学量論組成におけるA、B及びOの元素の量、つまり、上記のa3、b3及びc3は、特段制限されず、上述した目的物である金属酸硫化物のa、b及びcと同様でなくともよいが、所望の金属酸硫化物が得られるという観点からは、同様であることが好ましい。また、金属酸化物含有原料の化学量論組成におけるSの元素の量、つまり、上記のd3は、特段制限されないが、目的物である金属酸硫化物のdより小さいことが好ましい。
また、金属酸化物含有原料は、欠陥構造発生の抑制の観点から、目的の金属酸硫化物の化学量論組成よりもイオウが少ない化学量論組成を有する金属酸化物含有原料を含むことが好ましい。
また、本発明では、金属酸化物含有原料を前駆体の語を用いて、例えば、AaBbOcを前駆体酸化物とも称する。
体積基準の平均粒径は、レーザー粒度計により測定された値である。ここで体積基準の平均粒径とは、レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて、試料を測定し、粒度分布(累積分布)を求めたときの体積基準の相対粒子量が50%になる粒子径(d50)と定義される。
硫化水素の態様は、特段限定されず、気体であっても液体であってもよいが、常温常圧での安定性の観点から、気体、つまり硫化水素ガスであることが好ましい。その態様に関わらず、市販されているものを用いることができる。
反応炉10は、金属酸化物含有原料と硫化水素とを反応させることができるものであれば特段限定されず、一般的な反応炉を用いることができる。例えば、石英管状炉や電気マッフル炉を用いることができる。
また、反応炉中の金属酸化物含有原料の配置態様は、特段制限されないが、例えば、反応炉に台や器(例えば、図1に示すアルミナボード14)等を設置し、その上に金属酸化物含有原料を配置することもできる。
反応炉10中に載置された金属酸化物含有原料16と硫化水素とを反応させる反応条件について、以下に示す。
反応炉中の反応圧力は、特段限定されないが、特段の設備が必要ない点から、通常0.
001MPa以上であり、0.005MPa以上であることが好ましく、常圧が最も好ましい。ただし反応時の加熱、発熱により、特段の設備を設けることなく常圧より高くなっても良い。上限としては通常100MPa以下であり、50MPa以下であることが好ましく、最も好ましくは上述の通り常圧である。
反応炉中の反応温度は、特段限定されないが、目的とする金属酸硫化物を高純度で得る観点から、通常300℃以上であり、500℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがより好ましく、800℃以上であることがさらに好ましく、900℃以上であることが特に好ましく、一方で、通常2000℃以下であり、1800℃以下であることが好ましく、1400℃以下であることがより好ましく、1300℃以下であることがさらに好ましく、1200℃以下であることが特に好ましい。
なお、反応温度を制御する手段として、図1に示すように、反応炉に反応用ヒーター13を設けることができる。
なお、上述のM2においては、後述するM2の説明における雰囲気ガスの条件を適用し得る。
<4-1.M1>
M1は、金属酸化物含有原料16が硫化水素の分解を抑制する成分を含むことである。
硫化水素の分解を抑制する成分とは、特段制限されないが、例えば、単体のイオウ(S)や金属硫化物等が挙げられる。単体のイオウを添加することにより、下記の式(1)における化学平衡、つまり、硫化水素と当該硫化水素の分解物であるイオウ及び水素との化学平衡において、硫化水素が生成する側に平衡が移動するために硫化水素の分解を抑制することができる。添加とは、例えば、金属酸化物含有原料と、硫化水素の分解を抑制する成分とを混合させることを意味する。
上記の金属酸硫化物中のイオウ量に対する原料中のイオウ量の比率は、特段制限されないが、不純物相の生成を抑制する観点から、通常1.05倍以上1.5倍以下であり、1.05倍以上1.2倍以下であることが好ましい。
M2は、反応炉10中に導入する雰囲気ガスに硫化水素の分解を抑制する成分を含むことである。
雰囲気ガスとしては、特段限定されず、窒素等の不活性ガスにイオウを添加したものを使用してもよいが、好ましくは硫化水素とイオウとの混合ガスにすることである。当該混合ガスの混合比は、イオウが少量でも含まれていれば原理的には効果があるので、特に限定されないが、イオウ含有量に対して5~20vlo%が好ましい。また、使用する硫化水素の純度は、不純物相の生成を抑制する観点から、95vol%以上が好ましい。不活性ガスを使用する場合においても、同様に95vol%以上が好ましい。
イオウを含むガスは、間欠的に導入してもよく、反応中、又は反応後にも連続して導入してもよい。
また、雰囲気ガスの流量や流速等は、上述した反応炉中の気体の硫化水素の条件と同様とすることができる。
M3は、反応炉10中に金属酸化物含有原料16とは別に硫化水素の分解を抑制する成分を発生させる物質が存在することである。
当該成分を発生させる物質は、単体のイオウが好ましく、例えば、イオウ粉末を用いることができる。当該M3においては、イオウ自体の純度が多少低くても、イオウが先に揮発して気体となって雰囲気中に残り、金属酸化物含有原料中に不純物が入り込み難くなる点で好ましい。
当該成分を発生させる物質の存在位置は、特に制限されないが、金属酸化物含有原料よりもガス流入側に存在することが必要である。「存在する」の態様は特段制限されず、例えば、反応炉や反応炉中に設置した台や器(例えば、図1に示すアルミナボード14)等の上に金属酸化物含有原料が置かれている状態を示す。
また、図1に示すように、反応炉10にヒーター12を設けることにより、イオウの揮発を促進させることができる。
M4は、反応炉10中に金属酸化物含有原料16とは別に水素を捕集する機構を設けることである。
当該M4において、水素を捕集する物質としては、水素吸蔵合金等の他、水素ガスを分離する膜等又はこれらを組み合わせたものを用いてもよい。
水素吸蔵合金は、特段制限されず、例えば、チタン、マンガン、ジルコニウム、ニッケル等の遷移元素をベースとしたAB2型、ニッケル、コバルト、アルミニウム等の遷移元素をベースとしたAB5型、Ti-Fe系、V系、Mg合金、Pd系、Ca系合金等を用いることができる。
水素ガスを分離する膜としては、例えばパラジウム膜、シリカ膜、ゼオライト膜、高分子膜などを用いることができ、特に分離すべきガスの温度を考慮すると、パラジウム膜、シリカ膜、ゼオライト膜を好ましく用いることができる。
上述の実施形態は、上記の反応工程以外の工程、例えば、以下の工程を含んでもよい。<5-1.金属酸化物含有原料の調製工程>
反応工程よりも前に、金属酸化物含有原料を調製する工程を含んでもよい。調整方法は特段制限されないが、例えば、錯体重合法による調製が挙げられる。例えば、チタンテトライソプロポキシド、硝酸イットリウム及びクエン酸を、エチレングリコールメタノール溶液中で混合し、特定の温度で加熱して錯体重合させることにより、金属酸化物含有原料Y2Ti2O7を調製することができる。
<5-2.金属酸化物含有原料の焼成工程>
反応工程よりも前に、金属酸化物含有原料を焼成する焼成工程を含んでもよい。
焼成温度は、特段制限されないが、粒子の過度な成長を抑制しつつ、硫化水素との反応を阻害する粒子表面に吸着した水分を除去できるという観点から、通常60℃以上であり、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが特に好ましく、一方で、通常1000℃以下であり、900℃以下であることが好ましく、850℃以下であることが特に好ましい。
硫化後の金属酸化物含有原料は、粒子表層の還元生成物を除去する目的で、酸処理を行う工程を含んでもよい。
酸処理に用いられる酸性物質は、特段制限されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、王水、有機酸などを用いることができる。
図1は、上記の金属酸硫化物の製造方法を適用することができる、本発明の一実施形態である反応システムの一例である。当該製造方法を適用できる反応システムは、図1の態様に限定されない。
についても、使用の有無は任意であるが、これ使用しない場合には、金属酸化物含有原料が硫化水素の分解を抑制する成分を含んでいることが必要となる。
金属酸化物含有原料として前駆体酸化物Y2Ti2O7を用いた。当該前駆体酸化物Y2Ti2O7は、錯体重合法により調製した。具体的には、チタンテトライソプロポキシドと硝酸イットリウムとクエン酸とを1:1:15の割合で、エチレングリコールメタノール溶液中にて混合し、200℃に加熱して重合させた後、350℃及び500℃の二段階でそれぞれ1時間焼成して、前駆体酸化物Y2Ti2O7を得た。
[実施例1:イオウ蒸気添加硫化法]
上記前駆体酸化物Y2Ti2O7をアルミナボートに載せ、石英管状炉に封入し、窒素ガスを流通し、ガス置換を行った。その後、反応ガスである硫化水素ガスを流通し、再度ガス置換を行った。更にガス導入部前段(ガス流入側)に前述のイオウガスを生成する成分として、前駆体酸化物に対して10モル倍量のイオウ粉末を封入し、150℃で加熱保持することでイオウガスを発生させた。このイオウガス及び硫化水素を50mL/minで流通しながら1050℃まで10℃/minで昇温し、その後60分間保持することで金属酸硫化物Y2Ti2O5S2の粉末試料Aを得た。
上記前駆体酸化物Y2Ti2O7を前駆体に対して10モル倍量のイオウ粉末を混合した後、アルミナボートに載せ、石英管状炉に封入し、窒素ガスを流通してガス置換を行った。その後、反応ガスである硫化水素ガスを流通し、再度ガス置換を行った。更に、硫化水素を50mL/minで流通しながら1050℃まで10℃/minで昇温し、その後60分間保持することで金属酸硫化物Y2Ti2O5S2の粉末試料Bを得た。
上記前駆体酸化物Y2Ti2O7をアルミナボートに載せ、石英管状炉に封入し、窒素ガスを流通し、ガス置換を行った。その後、反応ガスである硫化水素ガスを流通し、再度ガス置換を行った。硫化水素を50mL/minで流通しながら1050℃まで10℃/minで昇温し、その後60分間保持することで金属酸硫化物Y2Ti2O5S2の粉末試料Cを得た。
上記の硫化後の各粉末試料について、粒子表層の還元生成物を除去する目的で以下の操作を行った。各粉末試料を9mol/Lの硫酸溶液に浸漬し、2時間攪拌をすることで粒子表面のエッチングを行った。その後、各粉末試料を十分に水洗した後、40℃かつ減圧
下で一晩乾燥を行った。
上記の酸処理後の各粉末試料に対して紫外・可視拡散反射スペクトル測定を行った。
当該測定条件は、特段制限されないが、例えば、以下の条件とすることができる。
測定装置:V-670 Spectrophotometer(JASCO製)
・測定範囲:300~800mm
・データ間隔:1.0nm
・走査速度:10000nm/分
・光源切換え:340.0nm
・データ解析ソフト:Spectra Manager version 2
解析:縦軸をクベルカ-ムンク(K.M.)変換
クベルカ-ムンク変換式
f(R∞)=(1-R∞)2/2R∞=K/S
ここで、f(R∞)はK.M.関数、R∞は絶対反射率、Kは分子吸光係数、Sは散乱係数である。
なお、試料の絶対反射率R∞を測定することは困難であり、実際には標準試料を用いた相対反射率r∞を用いることが一般的である。よって、
r∞=r(測定試料)/r(標準試料)(標準試料としてBaSO4を使用)
を用いて相対反射率r∞の測定を行い、
f(r∞)=(1-r∞)2/2r∞=K/S
より、導出した。
10 反応炉
11 酸化ケイ素メッシュ
12 ヒーター
13 反応用ヒーター
14 アルミナボード
15 イオウ粉末
16 金属酸化物含有原料
Claims (4)
- 金属酸硫化物であるAaBbOcSd(Aは、Y、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er及びLaからなる群より選択される1種以上を含み、Bは、Ti、Nb、Ta及びLaからなる群より選択される1種以上を含みかつTiを必須とし、1.7≦a≦2.3、1.7≦b≦2.3、c=5、1.7≦d≦2.3である。)を、反応炉中で金属酸化物含有原料と硫化水素とを反応させて製造する工程を含み、前記工程は、以下のM1~3のうち少なくとも一つを含む、金属酸硫化物の製造方法。
M1:金属酸化物含有原料がイオウを化学両論組成の1.05倍以上1.5倍以下含む。M2:反応炉中に導入する雰囲気ガスがイオウを含む。
M3:反応炉中に金属酸化物含有原料とは別にイオウが存在する。 - 前記金属酸化物含有原料が、前記金属酸硫化物の化学量論組成よりもイオウが少ない化学量論組成を有する金属酸化物含有原料を含む、請求項1に記載の金属酸硫化物の製造方法。
- 前記AがYを含む、請求項1又は2に記載の金属酸硫化物の製造方法。
- 前記A中のYの含有量が80モル%以上であり、かつ、前記B中のTiの含有量が80モル%以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属酸硫化物の製造方法。
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