JP7193031B1 - 電子部品搭載基板、及び電子部品保護シート - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた絶縁性を有し、冷熱サイクル耐性に優れ、且つ、ダイシング適正に優れる電子部品搭載基板及び電子部品保護シートを提供する。【解決手段】電子部品搭載基板10において、基板1上には、電子部品保護層3によって被覆される電子部品2が搭載されている。電子部品保護層3の表面は、数式(1)により算出されたFlop Index(FI)が0.3~80である。TIFF0007193031000011.tif32160【選択図】図1

Description

本開示は、電子部品搭載基板、及び電子部品保護シートに関する。
基板に搭載されたICチップ等の電子部品を、基板に対する折り曲げや衝撃から保護したり、温度変化による熱衝撃から保護したりするため、電子部品を基板の一部、或いは全面ごと樹脂によって被覆保護することが行われている。近年では、保護される電子部品および基板回路の著しい性能の向上や小型化に伴い、被覆保護する材料に求められる保護機能の要求水準が高まっている。
電子部品を被覆保護する手法としては、従来より行われてきたコンフォーマルコーティングに置き換わる手段として、溶剤を含まないシート状に成形された熱溶融性の電子部品保護シートが提案されている。
例えば、特許文献1には、芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体を主成分とする形成材料からなる防湿層を備えてなることを特徴とする電子機器部品用防湿シートが開示されている。
特許文献2には、オレフィン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸、および芳香族エチレン性不飽和単量体のグラフト共重合体からなる、基板保護用シートが開示されている。
特許文献3および特許文献4にはエポキシ樹脂、無機フィラー、難燃剤からなるシート状樹脂組成物が開示されている。
特許文献5には、第1の熱伝導層と第2の熱伝導層とを備える積層シートで、搭載部品と基板とを覆う搭載構造体の製造方法が開示されており、同文献の図3(b)には搭載部品と搭載部品との間を前記積層シートの硬化物で隙間なく埋め尽くす製造方法が開示されている。
特許文献6には、表面の平均粗さが特定範囲にある電気絶縁層と、導体層を備えるフレキシブルプリント配線板が開示されている。
特開2003-145687号公報 特開2010-06954号公報 特開2011-246596号公報 特開2012-054363号公報 特開2019-021757号公報 特開2008-160151号公報
前述のとおり、これまで種々の方法によって被覆保護された電子部品搭載基板に関する発明が開示されているが、近年では、要求性能のレベルが高く、より品質の優れた電子部品搭載基板が望まれている。
電子部品搭載基板に積層されている電子部品保護層は、下層の電子部品や基板を絶縁被覆する役割のため、高い絶縁性が求められている。
一方、電子部品搭載基板の生産性を高めるため、大型基板に例えばアレイ状に電子部品を搭載し、特定の部品区画ごとに切り離す、ダイシング工程を行うことがある。この場合、電子部品保護層においてダイシング適正が求められる。ダイシング適性のない電子部品保護層は、ダイシングによる応力によって電子部品保護層の切断面がダレを起こしたり、バリを発生させたりする。なお、本明細書でいうバリとは、電子部品保護層の切断面を基点とした電子部品保護層の捲れをいう。
更に、電子部品搭載基板は電子機器に組み込まれた後、様々な温度環境下で使用されることから、電子部品保護層は急激な温度変化に曝され、電子部品保護層自体が破損することがある。このため、冷熱サイクル耐性に優れる電子部品保護層が切望されている。
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた絶縁性を有し、冷熱サイクル耐性に優れ、且つダイシング適正に優れた電子部品搭載基板、及び電子部品保護シートを提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の特徴を有する物品(電子部品搭載基板、及び電子部品保護シート)を用いることにより、前記課題を解決することを見出し、本開示を完成させるに至った。
[1]: 基板上に電子部品が搭載されており、前記電子部品が電子部品保護層によって被覆されている電子部品搭載基板であって、前記電子部品保護層の表面は、数式(1)により算出されたFlop Index(FI)が0.3~80である電子部品搭載基板。
Figure 0007193031000002
(L 15°、L 45°、L 110°は、それぞれ、電子部品表面の垂線方向に対して45°の角度で入射した光の正反射光からのオフセット角15°、45°、110°のJIS Z8781-4で規定されるL表色系のLである。)
[2]: 前記電子部品保護層のISO 5-2で定められる360~760nmの光学濃度(OD値)が1~6であることを特徴とする、[1]記載の電子部品搭載基板。
[3]: 前記電子部品保護層のJIS Z8781-4で定められるL*a*b*表色系における、L*値が1~50、かつa*値が-10~10、かつb*値が-10~10であることを特徴とする、[1]または[2]記載の電子部品搭載基板。
[4]: 前記電子部品保護層の表面抵抗値が1.0×10Ω/□以上であることを特徴とする、[1]~[3]いずれか記載の電子部品搭載基板。
[5]: 前記電子部品保護層が、バインダー樹脂、および粒状改質剤を含有し、
前記粒状改質剤は、JIS K 6217-4で規定されるDBP吸油量が15~400ml/100gであることを特徴とする、[1]~[4]いずれか記載の電子部品搭載基板。
[6]: 前記粒状改質剤が少なくとも1種類のカーボンブラックを含むことを特徴とする、[5]記載の電子部品搭載基板。
[7]: [1]~[6]いずれか記載の電子部品搭載基板が搭載された電子機器。
[8]: 基板上に搭載された電子部品を被覆するための電子部品保護シートであって、
前記電子部品保護シートを180℃、60分加熱させてなる硬化膜の表面は、
数式(1)により算出されたFlop Index(FI)が0.3~80である電子部品保護シート。
Figure 0007193031000003
(L 15°、L 45°、L 110°は、それぞれ、電子部品表面の垂線方向に対して45°の角度で入射した光の正反射光からのオフセット角15°、45°、110°のJIS Z8781-4で規定されるL表色系のLである。)
本開示によれば、優れた絶縁性を有し、冷熱サイクル耐性に優れ、且つダイシング適正に優れる電子部品保護シートおよびこれを備えた電子部品搭載基板を提供できるという優れた効果を奏する。
本実施形態に係る電子部品搭載基板の模式的な断面図である。 Flop Index(FI)測定系を説明した図である。 FI測定系を説明した図である。 FI測定系を説明した図である。 本実施形態の粒状改質剤のアグリゲートの一例を示す図である。 本実施形態の電子部品搭載基板の製造工程を示した模式的な図である。 本実施形態の導電層を有する電子部品搭載基板の模式的な断面図である。 本実施形態に係る試験基板の模式的な断面図である。
《電子部品搭載基板》
本開示の電子部品搭載基板10は、図1に示すように、基板1と、基板上に搭載された1つ以上の電子部品2と、前記電子部品2の一部分、あるいは全部と基板1を被覆保護する電子部品保護層3、を含む。電子部品保護層3は、基板1と、電子部品2上面から基板1に亘って被覆されており、電子部品2の上面の他、電子部品2の搭載によって形成された段差部の側面および基板の少なくとも一部を被覆する。なお、電子部品保護層3は、電子部品2の形状に追随するように被覆する構成に限定されず、電子部品2上に電子部品2と基板1を被覆するように形成されている態様も包含する。
電子部品2は半田バンプ4を介して基板と電気的に接続されていてもよく、電子部品から延長される接続端子と基板が直接接続されていてもよい。電子部品2が半田バンプ4を介して基板と接続される場合、図1に示すように電子部品2と基板1の間には中空部分5が生じる。電子部品保護層3は前記中空部分5を維持するようにして電子部品2と基板1を被覆保護してもよく、中空部分5を埋めるように被覆保護してもよい。電子部品保護層は例えば後述する方法によって製造することができる。
《電子部品保護層》
次いで、本開示の電子部品保護層について説明する。電子部品保護層は、上述の通り基板上に搭載された電子部品を被覆保護するためのものである。
《二乗平均平方根高さSq》
二乗平均平方根高さSq(以下、Sqともいう)はISO 25178-2:2012において、下記数式(2)で規定される表面性状パラメータである。Aは定義表面の面積を表す。
Figure 0007193031000004
二乗平均平方根高さSqは、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡、および電子顕微鏡いずれかで得られる表面形状の座標データを、解析ソフトによって処理することにより、算出することができる。二乗平均平方根高さSqは、定義表面における凹凸高さの二乗平均平方根を表したものであり、表面粗さの標準偏差を表す。
本開示における電子部品保護層の表面は、ISO 25178-2:2012に準拠して求めた二乗平均平方根高さSqが0.15~1.0μmであることが好ましい。電子部品保護層の表面が前述の範囲内であることで、電子部品保護層表面に帯電物が接触した際、界面に適度な空隙を維持することができるため絶縁性を良化することができ、絶縁破壊電圧が向上可能となる。また、電子部品保護層の表面が前述の範囲内であることで、ダイシング工程においてカッターと切断点に適度な応力集中を起こすことができ、バリの発生をより効果的に抑制することができる。
《二乗平均平方根傾斜Sdq》
二乗平均平方根傾斜Sdq(以下、Sdqともいう)はISO 25178-2:2012において、下記数式(3)で規定される表面性状パラメータである。Aは定義表面の面積、∂xはx軸方向、∂yはy軸方向、∂z(x,y)はz軸方向の微小変位を表す。
Figure 0007193031000005
二乗平均平方根傾斜Sdqは、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡、および電子顕微鏡いずれかで得られる表面形状の座標データを、解析ソフトによって処理することにより、算出することができる。二乗平均平方根傾斜Sdqは、定義表面の全点における傾斜の二乗平均平方根を表しており、定義表面における凹凸の険しさを表現するパラメータである。
本開示における電子部品保護層の表面は、ISO 25178-2:2012に準拠して求めた二乗平均平方根傾斜Sdqが0.0001~5であることが好ましい。電子部品保護層の表面が前述の範囲内であることで、電子部品保護層の防汚性を向上することができる。二乗平均平方根傾斜Sdqを0.0001以上とすることで、電子部品保護層に適度な凹凸傾斜を付与することができ、塵や埃の付着を抑制することができる。一方、二乗平均平方根傾斜Sdqを5以下とすることで、微細な塵や埃が電子部品保護層の凹凸壁面に付着するのを抑制することができる。電子部品保護層の二乗平均平方根傾斜Sdqは、0.0005~4.5であることがより好ましく、0.001~4であることがさらに好ましく、0.005~3.5であることが特に好ましい。
《Flop Index(FI)》
Flop Index(FI)(以下、FIともいう)は数式(1)によって算出されるパラメータである。
Figure 0007193031000006
FI測定系を図2Aに示す。FIは、測定対象表面13の垂線方向に対して45°の入射角で光(入射光12)を照射し、一定の角度で反射された光(正反射光)を検出器によって検出し、数値化した明度Lを用いて算出される。LはJIS Z8781-4で規定されるL表色系における明度Lであり、L 15°、L 45°、L 110°は、それぞれ、測定対象表面の垂線方向に対して45°の角度で入射した光の正反射光からのオフセット角15°、45°、110°で観測されるLである。
FIは測定対象表面の凹凸険しさと表面凹凸の秩序性を評価する指標となる。図2Bに示すように、測定対象表面の凹凸が激しく、無秩序な場合は、入射光12はあらゆる角度で反射(散乱)されるため、検知される光量の角度依存性は小さくなる。その結果、数式(1)によって算出されるFIの値は小さな値となる。一方、図2Cに示すように、測定対象表面の凹凸がなだらかであり、秩序性が高い場合は、入射光12は一定の角度で強く反射されるため、検知される光量の角度依存性は大きくなる。特に、前述のオフセット角15°、45°、110°で観測される光のうち、15°の光量が大きくなるため、FIは大きな値となる。
(FIの効果)
本開示における電子部品保護層表面のFIは、0.3~80である。FIは前述の範囲内であることで、電子部品保護層のダイシング適性と電圧耐性(絶縁破壊電圧)を良好なものとすることができる。FIが0.3以上であることで、電子部品保護層表面の凹凸形状に一定の秩序性を付与することが可能となる。電子部品保護層に電圧が印加された際に表面凹凸形状に一定の秩序性をもたせることにより、絶縁破壊の起点が発生することを抑制することが可能となるため、電圧耐性(絶縁破壊電圧)が向上する。一方、電子部品保護層表面のFIが80以下であることで、表面凹凸形状に一定の無秩序性を付与することが可能となる。凹凸形状が高い秩序性を有する表面では、切断などで加わる外部応力が特定箇所に集中しやすくなるが、凹凸が一定の無秩序性を有する場合は、当該外部応力を適切に分散させることができ、ダイシング適性が向上する。また、冷熱サイクル耐性を向上させることができる。電子部品保護層表面のFIは1~75であることがより好ましく、3~50であることがさらに好ましく、5~26であることが特に好ましい。
更に本発明者は鋭意検討の結果、電子部品保護層表面のFIを5~26とすることで、冷熱サイクル耐性がより向上することを見出した。電子部品搭載基板は電子機器へ組み込まれた後、様々な温度環境下で使用されることから、電子部品保護層は急激な温度変化に曝されることがある。電子部品保護層表面のFIが特定の範囲内であり、表面凹凸が一定程度の無秩序性を有する場合、急激な温度変化に対する電子部品保護層の膨張・収縮に起因する応力を適度に分散することが可能となるため、温度変化時に電子部品保護層が破損するのを防ぐことができる。
[Sq、Sdq、FIの制御方法]
電子部品保護層表面の二乗平均平方根高さSq、二乗平均平方根傾斜Sdq、Flop Index(FI)を制御する方法は、物体の表面形状を調整する方法として従来公知の方法を適用することができ、それぞれ異なった方法を適用することもでき、あるいは共通した方法を適用することもできる。具体的には、研磨布紙を用いて表面を研磨する方法、圧縮空気によって研磨材を電子部品保護層表面に吹き付けるショットブラスト法、所定の二乗平均平方根高さSq、二乗平均平方根傾斜Sdq、あるいはFIを有するキャリア材の上に電子部品保護層の前駆体となる電子部品保護シート6(図4参照)を形成し、キャリア材表面の凹凸を転写する方法、所定の二乗平均平方根高さSq、二乗平均平方根傾斜Sdq、あるいはFIを有するフィルムと電子部品保護シート6を圧着し、フィルム表面の凹凸を転写する方法、電子部品保護層に粒子状物質を含有させて表面凹凸を制御する、といった方法が挙げられる。電子部品保護層表面のSq、Sdq、FIを制御する方法としては、例示した方法に限定されるものではないが、電子部品保護層に粒子状物質を含有させて表面凹凸を制御する方法であれば、特に前/後処理も行う必要がなくなるため、生産性の観点から好ましい。
《光学濃度(OD値)》
光学濃度(以下、OD値と省略もする)は対象物を透過する入射光線の減衰率であり数式(4)によって算出されるパラメータである。PIは特定波長における入射光量、PTは特定波長の透過光量を表す。
Figure 0007193031000007
光学濃度(OD値)が大きくなるほど入射光の減衰率は大きくなることから、対象物の光線遮蔽性は良好であるといえる。図1に示すように、電子部品2上に電子部品保護層3が積層された構造においては、電子部品保護層3の光学濃度(OD値)が高いほど、光線遮蔽性が高く、下層の電子部品2に光が照射、反射されることがなくなり、電子部品の色味は観察者から観測されにくくなる。よって、電子部品と電子部品保護層の色味が同一でない場合には、電子部品上に電子部品保護層が積層されている部分と積層されていない部分を外観から判断することができる。前述の観点から、電子部品保護層のISO 5-2で定められる360~760nm(可視光領域)の光学濃度(OD値)は0.5~6の範囲内であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、2~6の範囲内であることが更に好ましい。
電子部品保護層において、電子部品のエッジ部等のヒビ割れ、電子部品保護層の端部が流動しすぎ(染み出し)ていないか等の品質チェック精度を高める技術が求められている。電子部品保護層を黒に着色する方法があるが、単純に黒く着色するのみでは、例えば電子部品に黒色の封止樹脂で封止されたチップ上では識別しにくく、検査精度を高める技術が求められている。本開示の電子部品保護層によれば、OD値を上記範囲とすることにより、電子部品保護層自体を適度に着色させ、視認性を高め、検査精度を効果的に高めることができる。
電子部品保護層のOD値を高める方法として、高い吸光特性を示すバインダー樹脂を用いる方法、入射光を散乱させるフィラーを含有させる方法が例示できる。後述する粒状改質剤についても前述する入射光の散乱効果を得ることができ、粒状改質剤の種類および/又は量を制御することで、電子部品保護層のOD値を所望の範囲とすることが可能となる。
《L値》
本開示の電子部品保護層はJIS Z8781-4で定められるL表色系における、L値が1~50、かつa値が-10~10、かつb値が-10~10であることが好ましい。L値を前記範囲とすることで、基板との色味の違いが明確となり、識別性が向上する。なお、L値は色空間を表す座標軸である。Lは、明度を意味する次元、aおよびbは、補色次元を意味する。L値が低く、a値が0に近しい程、対象面の漆黒性は高くなり、通常着色されている基板との色味の違いは明確となる。ここでLはFI測定におけるL 45である。L値は1~40であることがより好ましく、1~30であることが更に好ましい。また、a値、およびb値は-5~5であることがより好ましく、-3~3であることが更に好ましい。
本開示の電子部品保護層は、Sdq、OD値、およびL値を最適化することでいかなる色の電子部品及び基板上に電子部品保護層を形成しても電子部品保護層を視認できるようになり、検査精度を顕著に向上させることができる。
《電子部品保護層の絶縁性》
電子部品搭載基板に搭載された電子部品や電気回路などの通電材料を被覆保護する必要性から、電子部品保護層は優れた絶縁性を有することが好ましい。具体的には、電子部品保護層の表面抵抗値は1.0×10Ω/□以上であることが好ましく、1.0×10Ω/□以上であることがより好ましく、1.0×10Ω/□以上であることがさらに好ましい。
《バインダー樹脂》
電子部品保護層は、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂は電子部品保護層の基体となる。後述する粒状改質剤やその他の任意成分を含む。バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂、もしくは熱硬化性樹脂および硬化剤、のいずれか若しくは組み合わせて用いることができる。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ジエン系樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。特に限定するものではないが、耐熱性の観点から、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を複数有する樹脂である。官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、酸無水物基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール系樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
これらの中でも耐熱性の点から、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
[硬化剤]
硬化剤は、熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を複数有している。硬化剤は、例えばエポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物、有機金属化合物等の公知の化合物が挙げられる。硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。
硬化剤は、熱硬化性樹脂100質量部に対して各種1~50質量部含むことが好ましい。硬化剤量が1質量部以上であることで、電子部品保護層に強固な架橋構造が形成されるようになり、電圧耐性(絶縁破壊電圧)が向上する。一方、硬化剤量が50質量部以下であることで、電子部品保護層の過剰な硬化を抑制し、後述する電子部品搭載基板の製造工程において、加熱加圧時に電子部品保護シート6(図4参照)が電子部品の形状に追随して変形し、欠陥のない電子部品保護層を形成することができる。硬化剤は、熱硬化性樹脂100質量部に対して各種3~45質量部含むことがより好ましく、5~40質量部含むことがさらに好ましい。
《粒状改質剤》
電子部品保護層は、粒状改質剤を含むことが好ましい。粒状改質剤は電子部品保護層の、二乗平均平方根高さSq、二乗平均平方根傾斜Sdq、Flop Index(FI)を所望の範囲とすることを主目的として用いられる。また、粒状改質剤の種類、添加量を適宜変更することにより電子部品保護層の弾性率、ヤング率、押し込み固さといった機械的性質を良好な範囲とすることができる。
粒状改質剤は、JIS K 6217-4で規定されるDBP吸油量が15~400ml/100gであることが好ましい。粒状改質剤のDBP吸油量が15~400ml/100gであることで、ダイシング適性を向上させることができる。ダイシング適性の向上は、後述する推定作用により生ずると推定されるが、本開示における効果の作用機構については、当該推定作用に限定を受けるものではない。
DBP吸油量は、対象となる物質がDBP(ジブチルフタレート)を吸収できる量を指し、後述する粒状改質剤のアグリゲートの発達度合いを把握するための指標とすることができる。
本開示の粒状改質剤は、基となる微小粒子(以下、一次粒子21)が凝集、結着、または融着することで二次粒子様結着体(以下、アグリゲート22)を形成する。図3に粒状改質剤のアグリゲートの模式図を示す。
(推定作用)
以下に、粒状改質剤が電子部品保護層のダイシング適性向上に寄与する作用の推定について示す。粒状改質剤の一次粒子21は、静電相互作用等、複数の粒子間相互作用によって、互いに寄せ集まる性質を有し、複数の一次粒子21が凝集、結着、または融着することでアグリゲート22を形成する。一次粒子が凝集する際には、必ずしも一次粒子21が最密充填されることはなく、アグリゲート22には空間23が生じる。
粒状改質剤が油や高分子溶液といった液体に浸漬されると、液体中の低分子、あるいは高分子がアグリゲート中の空間23に入り込む。当該空間23に入り込むのが高分子であれば、当該高分子は分子鎖全てが当該空間23に入り込むのではなく、分子鎖の一部分が空間23内に入り込む。上述の現象が、高分子中の複数末端で生じた際には、複数の粒状改質剤が高分子鎖によって繋がれた状態が形成される。前述する現象が、電子部品保護層で多数形成されることで、疑似架橋構造が形成され、電子部品保護層の強度が向上しダイシング時のダレやバリの発生を抑制する。
当該推定作用は、アグリゲート中の空間の大きさに影響を受ける。即ち、アグリゲートの発達がより進み、大きくなるほど、一次粒子は最密充填で凝集することが困難となり、より広い空間が形成されたり、より多数の空間が形成される。それにより、粒状改質剤はより高密度な疑似架橋構造を形成し、電子部品保護層はより高い強度を得る。
当該空間の大きさを測る指標として、DBP吸油量が用いられる。DBP吸油量は、対象となる物質がDBP(ジブチルフタレート)を吸収できる量、即ちアグリゲート中の空間の総体積と正の相関関係にある。DBP吸油量が高いほど、アグリゲート中の空間は広く、多くなり、電子部品保護層には高密度な疑似架橋構造が形成される。
以上が粒状改質剤による電子部品保護層の強度向上における推定作用である。但し、本開示における効果の作用機構については、当該推定作用に限定を受けるものではない。
本開示で用いられる粒状改質剤は、JIS K 6217-4で規定されるDBP吸油量が15~400ml/100gである。粒状改質剤のDBP吸油量が15ml/100g以上であることで、アグリゲートの発達度合いを充分なものとでき、充分な疑似架橋効果が生じる。その結果、電子部品保護層を積層した電子部品搭載基板をダイシング加工した際に、電子部品保護層のダレを抑制することができる。また、粒状改質剤のDBP吸油量が400ml/100g以下であることで、多量の高分子が粒状改質剤に取り込まれるのを防ぎ、高分子が不足した領域の発生を抑え、電子部品保護層を積層した電子部品搭載基板をダイシング加工した際に、当該欠陥を起点とした電子部品保護層の割れなどの外観不良発生を抑制することができる。粒状改質剤のDBP吸油量は30~350ml/100gがより好ましく、50~250ml/100gが更に好ましい。
電子部品保護層100質量%中の粒状改質剤含有率は、1~30質量%であることが好ましい。粒状改質剤含有率が1質量%以上であると、電子部品保護層に十分な疑似架橋効果を生じさせることができ、ダイシング適性がより向上する。粒状改質剤含有率が30質量%以下であると、多量の高分子が粒状改質剤に取り込まれるのを防ぎ、電子部品保護層中に高分子が不足した領域の発生を抑え、ダイシング適性がより向上する。電子部品保護層中の粒状改質剤含有率は5~20質量%であることが更に好ましい。
粒状改質剤の例としては、電子部品保護層のダイシング適性を向上させる作用を有するものであれば、制限されないが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンナノプレートなどの炭素系粒子、または特開2018/185938号公報に記載のリン酸三リチウム(LiPO)や、国際公開2016/021467号公報に記載のシリカなどの無機粒子等が挙げられる。アグリゲーションを有し、DBP吸油量が測定可能なものであれば、公知のものを使用することができる。なかでも、カーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックは、ケッチェンブラックやアセチレンブラックといった特定の分類がなされるものから、前述のような特定分類がなされないものも含み得る。これらの粒状改質剤は繊維状のカーボンナノチューブのような絡み合った過剰な自己凝集を起こすことなく高分子との強固な相互作用を生じるため、電子部品保護層中に均一分散することができ、ダイシング時の割れを抑制することができるために好ましい。
粒状改質剤は電子部品保護層に絶縁性を付与する観点から、体積抵抗率1.0×10-3Ω・cm以上であることが好ましい。粒状改質剤の体積抵抗率は、1.0×107Ω・cm以上であることがより好ましく、1.0×1013Ω・cm以上であることが更に好ましい。粒状改質剤に含まれる物質の体積抵抗率はJIS C2141に準拠して測定できる。体積抵抗率の上限は限定されないが、通常1.0×1017Ω・cm以下である。
粒状改質剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。粒状改質剤を2種類以上併用することにより、それぞれの特性を補完することができる。例えば、第一の粒状改質剤としてカーボンブラック(DBP吸油量:100ml/100g、体積抵抗率:1.6×10-5Ω・cm)を用い、第二の粒状改質剤としてシリカ(DBP吸油量:220ml/100g、体積抵抗率:1.6×1016Ω・cm)を用いた場合、カーボンブラックによってダイシング耐性と識別性を向上させ、シリカによってダイシング耐性と絶縁破壊電圧を向上させる、といったことが可能となる。
《電子部品保護層の厚み》
電子部品保護層の厚みは10~1000μmであることが、絶縁破壊電圧向上と薄膜化を両立する観点から好ましい。電子部品保護層の厚みは、15~500μmであることがより好ましく、20~250μmであることが更に好ましい。
《電子部品保護シート》
電子部品保護シート6は電子部品保護層の前駆体物品であって、絶縁性の樹脂シートである。電子部品保護シートが熱硬化性樹脂を含む場合、電子部品保護シートを所定以上の時間、温度で加熱し、硬化反応を起こすことによって電子部品保護層となる。電子部品保護シートは表面保護のために、片面あるいは両面に剥離性シートを具備していてもよい。また、後述する電子部品保護シートによる被覆保護工程において用いられるクッション材があらかじめ積層されていてもよい。
《電子部品保護シートの製造方法》
電子部品保護シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、電子部品保護層を形成する上記バインダー樹脂等の材料を溶媒等に溶解させた組成物を、剥離シートに塗布する方法が挙げられる。塗布方法として、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式、又は、各種印刷方式が挙げられる。
本開示の電子部品保護シートは、所望の厚みを実現するために2枚以上の電子部品保護シートを積層してもよい。前述のように積層された構成物については、電子部品保護シートのみから構成されていてもよく、中間層として特定の機能を有する層を含んでいてもよい。
《電子部品保護シートの用途》
本開示の電子部品保護シートは、基板が、金属、樹脂、繊維、セラミック、ガラス、および導電性シリコンのいずれである場合にも、実用上十分な密着力を示す。金属としては、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄、クロムなどに使用できる。樹脂としてはエポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン系グラフトポリマー、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどに使用できる。それゆえに本電子部品保護シートは極性の異なる異種材料間の密着にも好適に用いることができる。
本開示の電子部品保護シートは、各種基板、すなわち、リジッド基板、FPC基板など各種基板の保護に好適に用いることができる。
本開示の電子部品保護用シートを使用した電子部品搭載基板は、液晶ディスプレイ、タッチパネル等のほか、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器に備えることが好ましい。
《電子部品搭載基板の製造方法》
本開示の電子部品保護シートを用いる電子部品搭載基板の製造方法(以下、被覆保護方法、被覆方法、保護方法と略すことがある)について説明する。
本開示の電子部品搭載基板の製造方法は、1つ以上の電子部品を基板上に搭載する工程(工程i)、電子部品保護シートを用意する工程(工程ii)、前記電子部品のうち、最も高さの高い電子部品と、電子部品保護シートが接するように電子部品保護シートを載置する工程(工程iii、仮貼り工程ともいう)、加熱加圧により前記電子部品保護シートを個々の電子部品の形状に沿うように変形させ、前記電子部品および基板の少なくとも一部を被覆する工程(工程iv)、変形した電子部品保護シートを変形した状態で硬化させ電子部品保護層を形成する工程(工程v)を経て製造できる。これらの工程を経て、本開示の電子部品保護シートから形成される電子部品保護層により被覆保護した電子部品搭載基板が得られる。工程ivと工程vとは一連の工程とすることもできる。
以下、工程iii~工程vについて図4を用いて、電子部品保護シートを用いた加熱加圧による電子部品搭載基板の被覆保護方法の一例を説明する。
(工程iii:電子部品保護シート載置工程)
基板1に電子部品2a及び電子部品2bが半田バンプ4によって搭載された電子部品搭載基板(以下、搭載基板ともいう)100を用意する。電子部品2は半導体チップ、コンデンサ、トランジスタ、インダクタ、サーミスタ等であり、基板1に半田バンプ4を介して実装されている。半田バンプ4により、電子部品2a、2bと基板1に間隙が存在する。電子部品2aは、電子部品2bよりも高く設計されている。
次いで、電子部品2a、2bの実装面上に、所定のサイズにカットした電子部品保護シート6を載置する。電子部品2bよりも電子部品2aの高さが大きいので、電子部品保護シート6は電子部品2aと接触し、仮貼りされる。なお、電子部品保護シート6がしなり、電子部品2bと接触することもある(図4では図示せず)。
なお、電子部品保護シート6にはクッション材7を積層してもよい。図4はクッション材を使用した例を示している。クッション材7は電子部品保護シート6を載置した後に積層してもよく、あらかじめ電子部品保護シート6とクッション材7とを重ねた積層体を載置してもよい。上記クッション材7とは加熱加圧時に軟化もしくは溶融する材料であり、電子部品保護シート6の電子部品2a、2bへの、そして電子部品同士の隙間への追随性を促す機能を有する。
クッション材7は、例えば熱可塑性を有する素材であれば特に限定されないが、加圧時の温度よりも低い溶融温度及びガラス転移点(Tg)であることが好ましい。好適な例として、ポリオレフィン系フィルム、塩化ビニルフィルム、PVAフィルムが例示できる。電子部品2aと電子部品2bの間に形成される溝の深さによるが、クッション材の厚みは、通常、100μm~1mm程度である。クッション材7を複数積層する場合には、合計の厚みがこの範囲にあることが好ましい。
なお、本実施形態に示した電子部品搭載基板は一例であって、電子部品と基板の構造は特に限定されるものではなく、電子部品2a、2bと基板1との間には隙間があってもなくともよい。搭載する電子部品の配置位置は限定されない。
次いで、加熱加圧機20により加熱加圧を行うことで、前記電子部品保護シート6が変形し、個々の電子部品の形状に沿うように、即ち電子部品2a、2bの上面と側面に沿うように変形させ、電子部品および基板1の少なくとも一部に追従させる。クッション材7は熱によって軟化もしくは溶融し電子部品保護シート6の搭載基板100の電子部品間の凹凸への追随を促す。
加熱加圧時において加熱加圧機20とクッション材7との間に、剥離性シートを介する方法も好ましい。剥離性シートは、紙やプラスチック等の基材に公知の剥離処理を行ったシートである。また、テフロン(登録商標)等の極性が低いプラスチックシートを用いることもできる。
加熱温度は、電子部品保護シート6が適度に軟化し、個々の電子部品の形状に沿い、変形し、個々の電子部品同士の間隙に入り込める温度であればよく、100~260℃であることが好ましく、120~240℃であることがより好ましい。温度が低すぎると搭載された個々の電子部品同士の間隙への電子部品保護シート6の入り込み性が低下する。一方で、温度が高すぎると、電子部品保護シート6の熱硬化性樹脂の熱硬化反応が急速に進み、搭載された電子部品間への電子部品保護シートの入り込み性が低下する。
加熱加圧する場合の圧力は、0.01~10MPaが好ましく、0.1~6.0MPaがより好ましい。上記の圧力で加熱加圧することで、電子部品を破損することなく、埋め込み性がより向上する。
加熱時間は、通常0.5~30分であり、1~20分の範囲が好ましい。加熱時間が短すぎると搭載された電子部品間への電子部品保護シートの入り込み性が低下する。一方で時間が長すぎると、熱硬化性樹脂の熱分解や酸化が起こりやすくなり、反応生成物などによる接着部位の信頼性低下の可能性が増す。上記加熱加圧工程は真空状態で行うことが好ましい。
加熱加圧の方法として、加熱加圧機を用いる他に、所定の圧力になるよう適度な重量の金属板を積層し、この積層物をオーブンに投入する方法も好ましい。
一方、加熱加圧機以外の加熱加圧方法としては、真空成形法または真空圧空成形も好ましい。
(工程v:変形した電子部品保護シートの硬化工程)
加熱加圧後、電子部品保護シート6を変形した状態で、さらに150℃~230℃の温度で10分から60分加熱することにより、電子部品保護シート6中の熱硬化性樹脂を熱硬化し、硬化膜である電子部品保護層を形成する。電子部品保護層は電子部品および基板と強固に接着し、外部の衝撃や擦傷から電子部品の破損を防止、保護するための保護層として機能する。なお、(工程iv)の段階で加熱加圧の温度を150℃以上、時間を30分以上とすることで、熱硬化を完了させ被覆保護層を形成することもできる。被覆保護層は電子部品間のショートを防ぐため絶縁体であることが必須であり、表面抵抗値は1×10Ω/□以上が求められる。なお、熱硬化性樹脂を用いずに、熱可塑性樹脂を用いる場合には工程vを省略することができる。
本開示の電子部品搭載基板は、電子部品保護層が最外層であってもよく、更に他の機能層を積層してもよい。他の機能層とは、例えば、導電層、ハードコート性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、熱伝導性、低誘電率、高誘電率性または耐熱性の機能を有する層である。なかでも、導電層は被覆保護する電子部品を電磁波ノイズから保護する目的で用いられることがある。
図5に導電層を有する電子部品搭載基板11の構成例を示す。導電層8は電子部品保護層3の上層に形成され、グランド9に接続される。グランド9との接続点は基板1の表面上に存在していてもよく、基板1の側面に存在していてもよい。導電層は、電子部品保護層表面上にスパッタやメッキにより金属層を形成する、あるいは導電性粒子を含有する導電シートを電子部品保護層上に積層させて形成する、といった方法によって形成することができる。
《電子機器》
本開示の電子部品搭載基板は、液晶ディスプレイ、タッチパネル等のほか、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器に備えることが好ましい。
以下、実施例、比較例を挙げて本開示を詳細に説明するが、本開示は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」に基づく値である。
《原料》
実施例で使用した原料を以下に示す。
<熱硬化性樹脂>
[熱硬化性樹脂1の合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管、減圧設備を備えたガラス製フラスコにテレフタル酸166部、アジピン酸146部、3-メチル-1,5-ペンタンジオール212部およびエチレングリコール25部を仕込み、窒素ガスを通じながら攪拌し、常圧下徐々に昇温し、200~230℃にて約8時間反応させ酸価43の液状物を得た。次いでテトラ-n-ブトキシチタン0.01部を仕込み、窒素置換後密閉下180℃にて30分間攪拌した。次いで230℃、5mmHgにて2時間反応させ、酸価1.1、水酸基価114.2、分子量982、色相10(APHA法、以下同様)のポリエステルジオールを得た。
次いで、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、前記ポリエステルジオールを734部、ジメチロールプロピオン酸23.9部、トルエンジイソシアネート219部、及びトルエン242部を仕込み、窒素雰囲気下50℃で8時間反応させた。これに、トルエン1200部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。
次に得られたプレポリマーの溶液を70℃に加温しその温度を保ちながら、1,3-ジアミノプロパン20.0部、ベンジルアミン3.1部、2-プロノール600部、及びトルエン961部を混合した溶液を1時間で滴下した。滴下終了後70℃にて更に6時間反応させることで、分子量(Mw)が130000、酸価は10mgKOH/g、Tgは20℃、固形分が25%であるポリウレタン系樹脂を得た。
硬化剤1:ビスフェノールA型エポキシ化合物「jER828」(エポキシ当量=189g/eq)三菱ケミカル社製
<粒状改質剤>
・粒状改質剤1:カーボンブラック「MA100」(平均一次粒子径:24nm、DBP吸油量:100ml/100g、体積抵抗率:1.6×10-5Ω・cm)三菱ケミカル社製
・粒状改質剤2:シリカ「ウルトラシルU360」(DBP吸油量:220ml/100g、体積抵抗率:1.6×1016Ω・cm)NANOCYL社製
<粒状改質剤の平均一次粒子径>
粒状改質剤の平均一次粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)により5万倍~100万倍程度に拡大した画像から観察できる20個の一次粒子の平均値から求めた。なお、粒状改質剤の粒子形状が、1.5以上の平均アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)を有する場合、平均一次粒子径は、長軸長さを平均して求めた。
<粒状改質剤のDBP吸油量>
粒状改質剤のDBP吸油量は、JIS K 6217-4に準拠して行った。測定には吸収量測定器(吸収量測定器 S‐500、あさひ総研社製)を使用した。
《電子部品保護シートの作成》
[電子部品保護シート1の作成]
熱硬化性樹脂1(固形分)100部と、硬化剤1を15部と、粒状改質剤1を2部と、粒状改質剤2を4部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで組成物を得た。この組成物を乾燥厚みが40μmになるようにドクターブレードを使用してクッション材に塗工した。そして、100℃で2分間乾燥することでクッション材と電子部品保護シート1とが積層された実施例1の積層シートを得た。
表1の配合量を変更した以外は電子部品保護シート1と同様の所作によって、実施例2~8、および比較例1~2の積層シートをそれぞれ得た。
[電子部品搭載基板1の作成]
(搭載基板の作製)
ガラスエポキシからなる基板上に、モールド封止された電子部品(1000μm×1000μm)を5×5個アレイ状に搭載した基板を用意した。基板の厚みは0.3mmであり、モールド封止厚、即ち基板上面からモールド封止材の頂面までの高さ(部品高さ)Hは0.7mmである。その後、部品同士の間隙である溝に添ってハーフダイシングを行い、搭載基板を得た(図6参照)。ハーフカット溝深さは0.8mm(基板のカット溝深さは0.1mm)、ハーフカット溝幅は200μmとした。
上記搭載基板(5×5個アレイ状に電子部品が搭載された基板)に、各実施例および比較例の積層シートを8MPa、170℃の条件で5分間熱圧着し、クッション材を手で剥離した。その後、180℃2時間キュアを行い、表1に基づき、表面のバフ研磨等の処理が必要なものについては、Sq、Sdq、FIが所定の値となるよう処理を行い、各実施例および比較例の電子部品搭載基板を得た。
<二乗平均平方根高さSq、二乗平均平方根傾斜Sdqの測定>
電子部品保護層の二乗平均平方根高さSq、ならびに二乗平均平方根傾斜Sdqは、以下の方法により測定した。まず、電子部品搭載基板における電子部品保護層表面をレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK-X100)を使用し、測定データ取得を行った。続いて、取得した測定データを解析ソフトウェア(ISO 25178表面性状計測モジュール「VK-H1XR」を備えた、解析アプリケーション「VK-H1XA」、ともにキーエンス社製)に取り込み、ISO25178表面性状計測を実行し、Sq、Sdqを算出した。(条件は、S‐フィルター:1μm、L‐フィルター:0.2mm)。
<Flop Index(FI)の測定>
まず、電子部品搭載基板における電子部品保護層表面を多角度測色計(BYK社製、BYK‐mac i23mm測定口径)を用いてL 15°、L 45°、L 110°を測定した後、数式(1)に基づいてFIを算出した。光源はD50、視野は2°視野の条件にて測定を行った。
<光学濃度(OD値)の測定>
電子部品搭載基板における電子部品保護層表面のOD値をエックスライト社製「361T 卓上式透過濃度計」を用いて測定した。
<aの測定>
電子部品搭載基板における電子部品保護層表面のa値をKONICA MINOLTA社製「色彩色差計CR-400」を用いて測定した。
<表面抵抗値の測定>
電子部品搭載基板における電子部品保護層の表面抵抗値を日東精工アナリティック社製「ハイレスタ-UX MCP-HT800 高抵抗 抵抗率計」を用いて測定した。
《評価》
[絶縁破壊電圧]
クッション材と電子部品保護シートとが積層された積層シートのクッション材を剥離性シートに変えて、剥離性シートつき電子部品保護シートを作製した。
剥離性シートつき電子部品保護シートから一方の剥離性シートを剥離し、アルミウム板と重ね合わせ、180℃で2MPaの条件で10分熱プレスを行った後、180℃で2時間キュアすることで試験片を作成した。その後、25℃、50%RHで一晩放置した。その後、同環境下でTM650耐電圧試験器(鶴賀電気株式会社製)を用いて、耐電圧(絶縁破壊電圧)を測定した。
+++:絶縁破壊電圧が2.0kV以上。
++:絶縁破壊電圧が1.5kV以上、2.0kV未満。
+:絶縁破壊電圧が1.0kV以上、1.5kV未満。(実用レベル)
NG:絶縁破壊電圧が1.0kV未満。
[ダイシング適性]
各実施例および比較例の電子部品搭載基板に対し、個片化工程(フルダイシング)を行ったときのバリの発生状況を、レーザー顕微鏡を用いて以下の基準で評価した。
+++:ダレおよびバリが確認されない。
++:ダレおよび/又はバリの発生が個片化した電子部品搭載基板25個中2個未満。
+:ダレおよび/又はバリの発生が個片化した電子部品搭載基板25個中2個以上、5個未満。(実用レベル)
NG:ダレおよび/又はバリの発生が個片化した電子部品搭載基板25個中5個以上。
[識別性]
(試験個片の作製)
ガラスエポキシからなる基板上に、モールド封止された電子部品(1000μm×1000μm)を5×5個アレイ状に搭載した基板を用意した。基板の厚みは0.3mmであり、モールド封止厚、即ち基板上面からモールド封止材の頂面までの高さ(部品高さ)Hは0.7mmである。その後、部品同士の間隙である溝に添ってハーフダイシングを行い、試験基板を得た(図6参照)。ハーフカット溝深さは0.8mm(基板20のカット溝深さは0.1mm)、ハーフカット溝幅は200μmとした。前記試験基板に、各実施例および比較例の電子部品保護シートを8MPa、170℃の条件で5分間熱圧着し、クッション材を手で剥離した。その後、180℃2時間キュアを行い、表1に基づき、表面のバフ研磨等の処理が必要なものについては、Sq、Sdq、FIが所定の値となるよう処理を行い、各実施例および比較例の電子部品搭載基板を得た。その後、得られた電子部品搭載基板をハーフカット溝に沿ってフルダイシングを行うことにより、各実施例および比較例につき25個の試験個片を得た。更に同様の操作を、電子部品保護シートを積層せずに実施し、電子部品保護層のない試験個片を得た。
(識別性評価)
電子部品保護層つき試験個片、および電子部品保護なし試験個片について、それぞれ1個を組み合わせて一組とし、これを10組用意した。そして、電子部品保護層が積層されている試験個片と、電子部品保護層が積層されていない試験個片とを識別できた組数を数えた。観察は目視にて、以下の基準により評価した。
+++:10組全て識別できた。
++:識別できた組数が8組以上、9組以下。
+:識別できた組数が6組以上、8組未満。(実用レベル)
NG:識別できた組数が6組未満。
[冷熱サイクル耐性]
前述の[識別性]評価と同様の方法により試験固片を作製し、冷熱サイクル耐性評価を行った。
電子部品保護層つき試験個片を冷熱衝撃装置(「TSE‐11‐A」、エスペック社製)に投入し、高温さらし:125℃、15分、低温さらし:-50℃、15分の曝露条件にて交互曝露を1000回実施した。その後、試験個片を取出し、電子部品保護層の外観を観察し、破損した試験個片数を数え、以下の基準によって評価した。試験個数は各例についてそれぞれ10個とした。
+++:破損した試験個片数が0個であった。
++:破損した試験個片数が1個以上、2個以下。
+:破損した試験個片数が3個以上、5個以下。(実用レベル)
NG:破損した試験個片数が6個以上。
Figure 0007193031000008
1:基板
2:電子部品
3:電子部品保護層
4:半田バンプ
5:中空部分
6:電子部品保護シート
7:クッション材
8:導電層
9:グランド
10:電子部品搭載基板
11:導電層を有する電子部品搭載基板
12:入射光
13:測定対象表面
20:加熱加圧機
21:一次粒子
22:アグリゲート
23:空間
100:搭載基板

Claims (8)

  1. 基板上に電子部品が搭載されており、前記電子部品が電子部品保護層によって被覆されている電子部品搭載基板であって、前記電子部品保護層の表面は、数式(1)により算出されたFlop Index(FI)が0.3~80である電子部品搭載基板。
    Figure 0007193031000009
    (L 15°、L 45°、L 110°は、それぞれ、電子部品表面の垂線方向に対して45°の角度で入射した光の正反射光からのオフセット角15°、45°、110°のJIS Z8781-4で規定されるL表色系のLである。)
  2. 前記電子部品保護層のISO 5-2で定められる360~760nmの光学濃度(OD値)が1~6であることを特徴とする、請求項1記載の電子部品搭載基板。
  3. 前記電子部品保護層のJIS Z8781-4で定められるL*a*b*表色系における、L*値が1~50、かつa*値が-10~10、かつb*値が-10~10であることを特徴とする、請求項1記載の電子部品搭載基板。
  4. 前記電子部品保護層の表面抵抗値が1.0×10Ω/□以上であることを特徴とする、請求項1記載の電子部品搭載基板。
  5. 前記電子部品保護層が、バインダー樹脂、および粒状改質剤を含有し、
    前記粒状改質剤は、JIS K 6217-4で規定されるDBP吸油量が15~400ml/100gであることを特徴とする、請求項1記載の電子部品搭載基板。
  6. 前記粒状改質剤が少なくとも1種類のカーボンブラックを含むことを特徴とする、請求項5記載の電子部品搭載基板。
  7. 請求項1~6いずれか記載の電子部品搭載基板が搭載された電子機器。
  8. 基板上に搭載された電子部品を被覆するための電子部品保護シートであって、
    前記電子部品保護シートを180℃、60分加熱させてなる硬化膜の表面は、
    数式(1)により算出されたFlop Index(FI)が0.3~80である電子部品保護シート。
    Figure 0007193031000010
    (L 15°、L 45°、L 110°は、それぞれ、電子部品表面の垂線方向に対して45°の角度で入射した光の正反射光からのオフセット角15°、45°、110°のJIS Z8781-4で規定されるL表色系のLである。)
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