JP7192900B2 - 高炉の操業方法および高炉附帯設備 - Google Patents
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Description
なお、送風ガスは、羽口から高炉内に吹き込まれるガスである。送風ガスは、高炉内において微粉炭やコークスをガス化する役割も果たすものである。
「CO2及び/又はCOを含む混合ガスからCO2及び/又はCOを分離回収する工程(A)と、該工程(A)で分離回収されたCO2及び/又はCOに水素を添加し、CO2及び/又はCOをCH4に変換する工程(B)と、該工程(B)を経たガスからH2Oを分離除去する工程(C)と、該工程(C)を経たガスを高炉内に吹き込む工程(D)を有することを特徴とする高炉の操業方法。」
が開示されている。
「高炉ガスを燃料の一部または全部として使用する燃焼炉の排ガスからCO2を分離し、分離したCO2をメタンに改質して得られた還元ガスを高炉に吹込むことを特徴とする高炉操業方法。」
が開示されている。
そのため、安定した操業の下、高炉からの二酸化炭素の排出量の一層の削減が可能な高炉の操業方法の開発が求められている。
また、本発明は、上記の高炉の操業方法に用いる高炉附帯設備を提供することを目的とする。
まず、発明者らは、特許文献1および2の技術において、還元材として高炉に吹込むメタンの量を一定以上とした場合に、操業トラブルが発生する原因について検討した。
その結果、以下の知見を得た。
還元材として高炉に吹込むメタンの量を一定以上にすると、羽口の出口近傍に生じる燃焼領域(レースウェイ)において吹込み還元材およびコークスが燃焼して生じる火炎の温度(以下、羽口先温度ともいう)が大幅に低下する。そして、この羽口先温度の低下が、高炉下部の着熱不足や圧損上昇、出滓不良などの操業トラブルの発生原因となる。
C+0.5O2=CO+110.5kJ/mol
一方、羽口から高炉内に還元材としてメタンを吹込む場合、レースウェイでは以下のような反応が起こる。
CH4+0.5O2=CO+2H2+35.7kJ/mol
当該反応時に発生する熱量を、COおよびH2の合計量の1モルあたりに換算すると、11.9kJ/molとなる。
高炉の安定操業のためには、羽口先温度を2000℃~2400℃の範囲に制御する必要がある。しかし、高炉内に吹込む還元材の多くを微粉炭からメタンガスに置換すると、上記の反応熱の差により、羽口先温度が低下する。その結果、羽口先温度を上記範囲内に制御することができなくなって、種々の操業トラブルが発生する。
その結果、送風ガスとして、熱風(1200℃程度に加熱した空気)ではなく、酸素ガスを使用することにより、高炉内に吹込む還元材に多量のメタンを用いても、羽口先温度の低下が有効に防止されることを知見した。そして、このようなメタンを高炉から排出される副生ガス(以下、高炉ガスともいう)から再生し、この再生したメタン(再生メタンガス)を還元材として高炉内に再度吹込むことによって、高炉からの二酸化炭素の排出量を一層削減しつつ、安定した高炉の操業が可能になるとの知見を得た。
また、送風ガスとして、特に酸素濃度の高い酸素ガスを使用することにより、高炉ガスに含まれる窒素の量が大幅に低減される。その結果、当該高炉ガスから一酸化炭素や二酸化炭素を分離する工程が不要となり、設備のコンパクト化の点でも極めて有利になるとの知見を得た。
すなわち、送風ガスとして、熱風(1200℃程度に加熱した空気)を使用する場合、燃焼ガス中に燃焼反応に寄与しない50体積%程度の窒素が含まれるため、レースウェイにおける火炎の温度は高温となり難い。そのため、高炉内に吹込む還元材の多くを微粉炭からメタンガスに置換すると、上記した微粉炭-酸素の反応における反応熱と、メタンガス-酸素の反応における反応熱との差によって、羽口先温度が低下し、ひいては、羽口先温度が適正温度の下限である2000℃を下回ってしまう。
一方、送風ガスとして、酸素ガスを使用することにより、燃焼反応に寄与しない窒素ガスの混入を抑制できるので、羽口先温度を十分な温度まで昇温することが可能となる。すなわち、レースウェイにおける火炎の温度を、熱風を使用する場合と比べて高温とすることができるため、羽口から還元材として多量のメタンを吹込む場合にも、羽口先温度を適正範囲である2000℃~2400℃の範囲に制御することが可能となる。
ここで、日本において主流である5,000m3級の大型高炉から発生する高炉ガスの全量を、メタンとして再生するには、60,000m3/h程度の水素が必要である。しかし、このような大量の水素を、製鉄所外部から調達することは極めて困難である。
すなわち、廃棄物には、種々の物質が混在している場合がある。このような廃棄物として、例えば、シュレッダーダスト(廃棄となる自動車や家電製品等を破砕機にかけて粉砕し、サイズの大きな有価金属を取り除いた後の残渣)が挙げられる。シュレッダーダストには、樹脂と他の物質とが混在しており、具体的には、微細な金属片、繊維、廃プラスチック(熱可塑性樹脂を多く含む)、ゴム、木材、砂などが含まれる。このような廃棄物に含まれる樹脂が熱分解すると、主に水素および一酸化炭素からなる熱分解ガスが発生する。そして、この熱分解ガスは、水蒸気と以下のような反応(水蒸気改質)を起こす。
CO+H2O→CO2+H2
そのため、上記の反応後に得られる水蒸気改質ガスには、多量の水素ガスが含まれるようになる。
また、この水蒸気改質ガスは、水の電気分解などと比較して、大量かつ安価に製造することができる。
さらに、この水蒸気改質ガスは、廃棄物中の樹脂由来のものである。ここで、シュレッダーダストのうち、自動車のシュレッダーダストはその多くが再資源化されている。しかし、年間45万t程度発生する自動車以外の家電製品や産業機械等のシュレッダーダストは、分別が困難であるなどの理由から、その大部分が、焼却し、埋め立て処分されているのが現状である。そのため、再生メタンガスの生成に必要な水素ガスの供給源として、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスを利用することは、分別が困難であった樹脂と他の物質とが混在する廃棄物の再資源化推進にも有効に寄与する。
従って、再生メタンガスの生成に必要な水素ガスの供給源として、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスを利用することによって、コスト性に優れ、廃棄物、特には分別が困難であった樹脂と他の物質とが混在する廃棄物の再資源化推進の点からも有利である、高効率な資源循環システムを構築することが可能となる。
また、水蒸気改質に用いる水蒸気に、再生メタンガスを生成する工程において副次的に生成する水(以下、副生水ともいう)を使用すると、資源循環効率が一層高まるので、上記した高炉の操業条件(還元材として再生メタンガスを用いる操業条件)と組み合わせて、特に有利である。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
1.高炉の操業方法であって、
廃棄物に含まれる樹脂の熱分解により発生する熱分解ガス、および、水蒸気を用いて、水蒸気改質ガスを生成する工程と、
前記高炉から排出される副生ガスである高炉ガス、および、前記水蒸気改質ガスを供給源の少なくとも一部とする水素ガスを用いて、再生メタンガスを生成する工程と、
前記高炉の羽口から前記高炉内に送風ガスおよび還元材を吹込む工程と、を有し、
前記送風ガスとして酸素ガスを用い、かつ、前記還元材の少なくとも一部に前記再生メタンガスを用いる、高炉の操業方法。
ここで、循環炭素原子の原単位とは、溶銑1tを製造する際に還元材として高炉内に吹込まれる再生メタンガスの炭素換算質量であり、次式により求める。
[循環炭素原子の原単位(kg/t)]=[還元材として高炉内に吹込まれる再生メタンガス中のメタンの質量(kg)]×(12/16)÷[溶銑製造量(t)]
前記熱分解ガス、および、前記水蒸気を用いて、前記水蒸気改質ガスを生成する、水蒸気改質装置と、
前記高炉ガス、および、前記水蒸気改質ガスを供給源の少なくとも一部とする水素ガスを用いて、前記再生メタンガスを生成する、メタンガス生成装置と、
前記再生メタンガスを前記高炉の羽口に導入するメタンガス供給部、および、前記酸素ガスを前記高炉の羽口に導入する酸素ガス供給部を有する、ガス吹込装置と、
をそなえる、高炉附帯設備。
本発明の一実施形態は、高炉の操業方法であって、
廃棄物に含まれる樹脂の熱分解により発生する熱分解ガス、および、水蒸気を用いて、水蒸気改質ガスを生成する工程と、
前記高炉から排出される副生ガスである高炉ガス、および、前記水蒸気改質ガスを供給源の少なくとも一部とする水素ガスを用いて、再生メタンガスを生成する工程と、
前記高炉の羽口から前記高炉内に送風ガスおよび還元材を吹込む工程と、を有し、
前記送風ガスとして酸素ガスを用い、かつ、前記還元材の少なくとも一部に前記再生メタンガスを用いる、というものである。
図中、符号1は高炉、2は羽口、3はメタンガス生成装置、3-1は水蒸気改質装置、3-2は廃棄物分解装置、4はガス吹込装置、5は第1の脱水装置、6は第2の脱水装置、7はバーナーである。
なお、ここでいう高炉には、シャフト型還元炉なども含むものとする。
本発明の一実施形態に従う高炉の操業方法では、高炉の炉頂部から高炉内へ原料となる焼結鉱や塊鉱石、ペレット(以下、鉱石原料ともいう)やコークスなどが装入される(図示せず)。また、高炉下部に設置された羽口2から高炉1内へ、送風ガスと還元材とが吹込まれる。なお、羽口2から高炉1内へ吹込む還元材を、コークスと区別するため、吹込み還元材ともいう。
そして、送風ガスと還元材の反応により生じた一酸化炭素ガスや水素ガスによって、高炉1内に装入した鉱石原料が還元される。この鉱石原料の還元反応において、二酸化炭素が発生する。そして、この二酸化炭素は、鉱石原料と反応しなかった一酸化炭素や水素などとともに、副生ガスとして、高炉の炉頂部から排出される。高炉の炉頂部は2.5気圧程度の高圧条件となっている。そのため、この高炉の炉頂部から排出される副生ガスである高炉ガスが常圧に戻る際の膨張冷却により、水蒸気が凝縮する。そして、第1の脱水装置5において、その凝縮水が除去される。
なお、再生メタンガスの生成に使用する水素ガスは、水素濃度:100体積%のガスでなくてもよいが、再生メタンガスのメタン濃度を高濃度とするため、水素濃度が高いガス、具体的には、水素濃度が80体積%以上の水素ガスを用いることが好ましい。水素濃度は、より好ましくは90体積%以上、さらに好ましくは95体積%以上である。水素濃度は100体積%であってもよい。水素以外の残部ガスとしては、例えば、COやCO2、H2S、CH4、N2などが挙げられる。
水蒸気改質ガスには、多量の水素ガスが含まれている。また、この水蒸気改質ガスは、水の電気分解などと比較して、大量かつ安価に製造することができる。さらに、この水蒸気改質ガスは、廃棄物中の樹脂由来のものなので、廃棄物、特には分別が困難であった樹脂と他の物質とが混在する廃棄物の再資源化推進にも有効に寄与する。
そのため、再生メタンガスの生成に必要な水素ガスの供給源として、廃棄物に含まれる樹脂由来の水蒸気改質ガスを利用することによって、コスト性に優れ、分別が困難であった樹脂と他の物質とが混在する廃棄物の再資源化推進の点からも有利である、高効率な資源循環システムを構築することが可能となる。
また、水蒸気改質に使用する水蒸気に、再生メタンガスを生成する工程において副次的に生成する副生水を使用すると、資源循環効率が一層高まるので、上記した高炉の操業条件と組み合わせて、特に有利である。
ここで、廃プラスチックとは、合成樹脂くずや合成繊維くず、合成ゴムくず(廃タイヤを含む)等、固形状・液状の全ての合成高分子系化合物の廃棄物に分類されるものである。繊維とは、木綿くずや羊毛くず等の天然繊維の廃棄物に分類されるものである。ゴム類とは、生ゴムや天然ゴムの廃棄物に分類されるものである。
すなわち、廃棄物分解装置3-2に、樹脂を含有する廃棄物を導入する。ついで、廃棄物分解装置3-2において、廃棄物を加熱し、廃棄物に含まれる樹脂を熱分解する。これにより、主に水素および一酸化炭素からなる熱分解ガスが発生する。
廃棄物に含まれる樹脂の熱分解(ガス化)の方法については特に限定されるものではないが、例えば、水蒸気含むガスをガス化剤として、廃棄物に含まれる樹脂をガス化炉などで600℃以上(好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上、さらに好ましくは850℃以上)の温度に加熱する方法が挙げられる。加熱温度が600℃未満になると、廃棄物に含まれる樹脂が熱分解しにくく、また、熱分解しても油分が生成してガスが得られにくい。また、熱分解ガスには、通常、タールが含有されている。そのため、タール付着によるガス化炉内の閉塞を回避するため、熱分解ガスを1000℃以上に昇温し、タール分を分解することが望ましい。例えば、熱分解ガスに助燃ガスとして酸素ガスを加えて燃焼させることにより、熱分解ガスを1000℃以上に昇温することが可能である。なお、助燃ガスとしては空気を用いることも可能であるが、空気中の窒素によって、燃焼時にサーマルNOxが生成し、また熱分解ガスが希釈されてしまう。そのため、助燃ガスには、酸素ガスを使用する方が好ましい。
すなわち、流動層方式のガス化炉では、廃棄物は流動されながら加熱される。これにより、廃棄物中の樹脂が熱分解されてガス化され、熱分解ガスが生じる。一方で、廃棄物中のガス化しない物質は、比重ごとに層状に分離される。特に、樹脂および2種以上の金属が混在する廃棄物、例えば、シュレッダーダストでは、金属として、鉄や錫、アルミニウム、および銅などが含まれる。そのため、流動層方式のガス化炉を用いることにより、これらの金属を層状に分離して、廃棄物の再資源化(マテリアルリサイクル)を一層有利に推進することが可能となる。
そのため、ガス化炉の形式は、流動層方式とすることが好ましい。
また、熱分解ガスには、チャーおよび塩類などがダストとして含有される場合があるので、その場合には、サイクロン式集塵装置(図示せず)などでこれらのダストを回収することが好ましい。また、熱分解ガスをタールトラップ(図示せず)に導入してもよい。これにより、他の装置などへのタールの付着を防止することができる。
CO+H2O→CO2+H2
そして、上記の反応後に得られるガスから、好適には二酸化炭素を分離する(例えば、PSA等のガス分離装置により、二酸化炭素を分離する)ことによって、水素を主成分とする水蒸気改質ガスを得ることができる。
なお、分離した二酸化炭素は、炭酸ガスもしくはドライアイス等としてリサイクルすることが可能である。また、水蒸気改質反応に使用する水蒸気の供給源としては、再生メタンガスを生成する工程において副次的に生成する副生水を使用することが好適であるが、不足分が生じる場合には、製鉄所内から、適宜、供給すればよい。
なお、再生メタンガスの生成に使用する水素ガスの別の供給源としては、例えば、製鉄所の外部から供給される水素ガス(以下、外部供給水素ガスともいう)や水の電気分解により生成した水素ガスなどが挙げられる。外部供給水素ガスとしては、例えば、天然ガスなどの炭化水素を水蒸気改質などによって改質することで製造される水素ガスや、液化水素を気化させて得られる水素ガス、有機ハイドライドを脱水素して製造される水素ガスなどが挙げられる。
また、外部供給水素ガス、および、水の電気分解により生成される水素ガス(以下、その他の水素ガスともいう)は、例えば、図1に示すように、水蒸気改質ガスとは別のラインでメタンガス生成装置3に導入すればよい。また、メタンガス生成装置3と水蒸気改質装置3-1の間(PSA等のガス(二酸化炭素)分離装置(図示せず)を設ける場合には、その下流側)の水蒸気改質ガス流通路に、その他の水素ガスの供給ラインを接続してもよい。
また、その他の吹込み還元材、例えば、微粉炭や廃プラスチック、水素ガスや一酸化炭素ガス等の還元ガスを一緒に使用してもよい。なお、その他の吹込み還元材の高炉内への吹込み量は、合計で150kg/t以下とすることが好適である。ここで、「kg/t」という単位は、溶銑1tを製造する際に高炉内へ吹込むその他の吹込み還元材の量である。
その他の吹込み還元材を使用する場合、メタンガス供給部に、その他の吹込み還元材も一緒に導入してもよい。また、その他の吹込み還元材として微粉炭や廃プラスチックを用いる場合には、メタンガス供給部とは別に、微粉炭や廃プラスチックを流通させる別の還元材供給部(路)を設けることが好ましい。この場合、ガス吹込装置4は、例えば、図2(b)に示すように、中心管4-1および外管4-3に加え、中心管4-1と外管4-3の間に内管4-2を設けた同軸多重管により構成される。そして、別の還元材供給部となる中心管内路から微粉炭や廃プラスチックなどのその他の吹込み還元材が導入される。また、メタンガス供給部となる中心管4-1と外管4-3との間の環状管路からメタンガスが導入され、酸素ガス供給部となる内管4-2と外管4-3との間の環状管路から酸素が導入される。
なお、送風ガスに常温の酸素ガスを用いると着火性が悪くなるので、ガス吹込装置4の酸素ガス供給部を構成する外管の吐出部を多孔構造とし、酸素ガスと吹込み還元材の混合を促進することが好ましい。
なお、外部メタンガスとしては、例えば、化石燃料由来のメタンガスなどが挙げられる。
すなわち、送風ガスとして、熱風(1200℃程度に加熱した空気)を使用する場合、燃焼ガス中に燃焼反応に寄与しない50体積%程度の窒素が含まれるため、レースウェイにおける火炎の温度は高温となり難い。そのため、高炉内に吹込む還元材の多くを微粉炭からメタンガスに置換すると、上記した微粉炭-酸素の反応における反応熱と、メタンガス-酸素の反応における反応熱との差によって、羽口先温度が低下して、羽口先温度が適正温度の下限である2000℃を下回ってしまう。その結果、高炉下部の着熱不足や圧損上昇、出滓不良などの操業トラブルを招く。また、高炉ガスに窒素が多量に含まれるようになるので、高炉ガスからメタンガスを生成する工程の前工程で、窒素と、一酸化炭素および二酸化炭素とを分離する工程が必要となる。
一方、送風ガスとして、酸素ガスを使用することにより、燃焼反応に寄与しない窒素ガスの混入を抑制できるので、羽口先温度を十分な温度まで昇温することが可能となる。すなわち、レースウェイにおける火炎の温度を、熱風を使用する場合と比べて高温とすることができる。そのため、羽口から還元材として多量のメタンを吹込む場合にも、羽口先温度を適正範囲である2000℃~2400℃の範囲に制御することが可能となる。
そのため、本発明の一実施形態に係る高炉の操業方法では、送風ガスとして、酸素ガスを使用することが重要となる。
図6に示したように、熱風送風条件では、循環炭素原子の原単位が52kg/t以上(すなわち、再生メタンの吹き込み量が97Nm3/t以上)になると、羽口先温度が適正温度の下限である2000℃を下回ってしまうことがわかる。このように、一般的に用いられている熱風送風条件では、循環炭素原子の原単位を、55kg/t以上、特には、60kg/t以上にすると、羽口先温度の低下を招き、安定した操業を行うことができない。
一方、酸素ガス送風条件では、循環炭素原子の原単位を55kg/t以上、さらには、60kg/t以上としても、羽口先温度を2000℃以上に保つことが可能であることがわかる。
なお、図6の酸素ガス送風条件では、循環炭素原子の原単位が55kg/t~80kg/tの範囲で羽口先温度が適正温度の上限である2400℃を超えている。これは、吹込み還元材に、全量、再生メタンを使用しているためであり、吹込み還元材の一部に外部メタンガスを使用する場合には、循環炭素原子の原単位が55kg/t~80kg/tの範囲においても羽口先温度を2000℃~2400℃の範囲に制御することが可能である。また、吹込み還元材に、全量、再生メタンを使用する場合にも、酸素ガスの酸素濃度を調整することによって、羽口先温度を2000℃~2400℃の範囲に制御することが可能である。
なお、酸素ガス中の酸素以外の残部ガスとしては、例えば、窒素や二酸化炭素、アルゴン等が含まれていてもよい。
また、廃棄物に含まれる樹脂の熱分解に助燃ガスとして酸素ガスを使用する場合も、上記と同様である。
すなわち、吹込みメタンガス中のメタン濃度が低いと、高炉内への吹込むガス量、ひいては、高炉の圧力損失が増大して、生産性が低下するおそれがある。また、上記したガス循環を繰り返す間に、再生メタンガス中のメタン濃度が相対的に低下する。そのため、吹込みメタンガスのメタン濃度は、80体積%以上とすることが好ましい。吹込みメタンガスのメタン濃度は、より好ましくは90体積%以上、さらに好ましくは95体積%以上である。吹込みメタンガスのメタン濃度は100体積%であってもよい。
同様の理由から、再生メタンガスおよび外部メタンガスのメタン濃度もそれぞれ、80体積%以上とすることが好ましい。再生メタンガスおよび外部メタンガスのメタン濃度はそれぞれ、より好ましくは90体積%以上、さらに好ましくは95体積%以上である。再生メタンガスおよび外部メタンガスのメタン濃度はそれぞれ100体積%であってもよい。
なお、吹込みメタンガス、再生メタンガスおよび外部メタンガス中のメタン以外の残部ガスとしては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および炭化水素、ならびに、窒素などの不純物ガスが含まれていてもよい。
また、再生メタンガスのメタン濃度が低下した場合には、例えば、吹込みメタンガスにおける再生メタンガスの割合を低下させる一方、メタン濃度の高い外部メタンガスの割合を増加させることによって、吹込みメタンガス中のメタン濃度を高く保つことが可能である。
ここで、循環炭素原子の原単位とは、溶銑1tを製造する際に還元材として高炉内に吹込まれる再生メタンガスの炭素換算質量であり、次式により求める。
[循環炭素原子の原単位(kg/t)]=[還元材として高炉内に吹込まれる再生メタンガス中のメタンの質量(kg)]×(12/16)÷[溶銑製造量(t)]
なお、還元材における循環炭素原子の原単位は、吹込み還元材における再生メタンガスの羽口への吹き込み量を調整することにより、制御することができる。
特に、吹込みメタンガスにおける再生メタンガスの割合を80体積%以上、好ましくは90体積%以上とすることにより、高い二酸化炭素の排出量削減効果が得られる。
本発明の一実施形態に従う高炉附帯設備は、上記の高炉の操業方法に用いる高炉附帯設備であって、
前記熱分解ガス、および、水蒸気を用いて、前記水蒸気改質ガスを生成する、水蒸気改質装置と、
前記高炉ガス、および、前記水蒸気改質ガスを供給源の少なくとも一部とする水素ガスを用いて、前記再生メタンガスを生成する、メタンガス生成装置と、
前記再生メタンガスを前記高炉の羽口に導入するメタンガス供給部、および、前記酸素ガスを前記高炉の羽口に導入する酸素ガス供給部を有する、ガス吹込装置と、
をそなえる、高炉附帯設備である。
CO+H2O→CO2+H2
なお、水蒸気改質装置3-1は、水蒸気取入れ部の上流に、同装置の一部、または、別装置として、ボイラーなどの水蒸気発生器を有していてもよい。また、水蒸気改質ガス取出し部~再生メタンガス生成装置の間に、水蒸気改質装置3-1の一部、または、別装置として、ガス(二酸化炭素)分離装置を有していてもよい。
なお、メタンガスの生成反応では発熱が起こるので、反応部は冷却機構をそなえることが好ましい。
また、その他の吹込み還元材、例えば、微粉炭や廃プラスチック、水素ガスや一酸化炭素ガス等の還元ガスを一緒に使用してもよい。
その他の吹込み還元材を使用する場合、メタンガス供給部に、その他の吹込み還元材も一緒に導入してもよい。また、その他の吹込み還元材として微粉炭や廃プラスチックを用いる場合には、メタンガス供給部とは別に、微粉炭や廃プラスチックを流通させる別の還元材供給部(路)を設けることが好ましい。この場合、ガス吹込装置は、例えば、図2(b)に示すように、中心管4-1および外管4-3に加え、中心管4-1と外管4-3の間に内管4-2を設けた同軸多重管により構成される。そして、別の還元材供給部となる中心管内路から微粉炭や廃プラスチックなどのその他の吹込み還元材が導入される。また、メタンガス供給部となる中心管4-1と外管4-3との間の環状管路からメタンガスが導入され、酸素ガス供給部となる内管4-2と外管4-3との間の環状管路から酸素が導入される。
なお、ガス化炉の形式などは上述したとおりであるが、流動層方式のガス化炉の場合、比重分離された後の各層含まれる金属を排出する排出口を、該流動層方式のガス化炉の高さ方向に沿って複数設けることが好ましい。これにより、層状に分離した金属を、種類ごとに連続的に回収することが可能となる。
なお、図3~5中、符号9は熱風炉、10はガス分離装置、11は熱風炉排ガス用脱水装置である。
具体的には、廃棄物分解装置(流動層方式のガス化炉)において、廃棄物(樹脂と2種以上の金属が混在する廃棄物)を900℃に加熱して、廃棄物中の樹脂をガス化し、熱分解ガスを得た。ついで、この熱分解ガスを、高温のまま水蒸気改質装置に導入し、1300℃で水蒸気と反応させて、主に水素と二酸化炭素とからなる水蒸気改質ガスを得た。なお、水蒸気は、製鉄所内のボイラーで生成し、この水蒸気(水蒸気源となる水)に、再生メタンガスの生成工程で生成した副生水を使用した。再生メタンガスの生成工程で生成した副生水を使用した。ついで、得られた水蒸気改質ガスを、冷却・脱水したのち、ガス分離装置により、二酸化炭素を分離して、水素ガス濃度が99体積%以上の水蒸気改質ガスを得た。また、廃棄物に含まれる金属は、流動層方式のガス化炉において、その種類ごとに層状に分離して、回収した。なお、後述する発明例2~5でも同様である。
発明例2では、図1に模式的に示した高炉および高炉附帯設備を用い、高炉ガスの一部から再生メタンガスを生成し、高炉ガスの余剰分を製鉄所内に供給した。また、吹込み還元材には、全量、再生メタンガスを使用し、再生メタンガスの余剰分が発生しないように、再生メタンガスの生成量を調整した。さらに、再生メタンガスの生成に必要な水素ガスには、全量、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスに含まれる水素ガスを使用した。
発明例3では、図1に模式的に示した高炉および高炉附帯設備を用い、高炉ガスの全量から再生メタンガスを生成した。また、吹込み還元材には、全量、再生メタンガスを使用し、再生メタンガスの余剰分を、製鉄所内に供給した。さらに、再生メタンガスの生成に必要な水素ガスの一部に、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスに含まれる水素ガスを使用し、残りを外部から供給した。なお、水蒸気改質の際に使用した水蒸気は、製鉄所内のボイラーで生成し、この水蒸気(水蒸気源となる水)に、再生メタンガスの生成工程で生成した副生水の一部を使用した。
発明例4および5では、図1に模式的に示した高炉および高炉附帯設備を用い、高炉ガスの一部から再生メタンガスを生成し、高炉ガスの余剰分を製鉄所内に供給した。また、吹込み還元材には、再生メタンガスに加え、一部、化石燃料由来の外部メタンガスを使用した。さらに、再生メタンガスの生成に必要な水素ガスには、全量、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスに含まれる水素ガスを使用した。
比較例2では、図4に模式的に示した高炉および高炉附帯設備を用いた。ここでは、送風ガスとして、熱風(1200℃程度に加熱した空気(酸素濃度:21~25体積%程度))を、吹込み還元材として再生メタンガスをそれぞれ使用した。また、再生メタンガスの生成前に、高炉ガスから一酸化炭素および二酸化炭素を分離し、分離した一酸化炭素および二酸化炭素から、再生メタンガスを生成した。なお、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスに含まれる水素ガスは、再生メタンガスの生成に使用しなかった。
比較例3では、図5に模式的に示した高炉および高炉附帯設備を用いた。ここでは、送風ガスとして、熱風(1200℃程度に加熱した空気(酸素濃度:21~25体積%程度))を、吹込み還元材として再生メタンガスをそれぞれ使用した。また、再生メタンガスの生成では、高炉ガスではなく、熱風炉の副生ガス(以下、熱風炉排ガスともいう)を使用した。そして、熱風炉排ガスから二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素から、再生メタンガスを生成した。なお、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスに含まれる水素ガスは、再生メタンガスの生成に使用しなかった。
比較例4では、図1に類似した高炉および高炉附帯設備を用い、高炉ガスの一部から再生メタンガスを生成し、高炉ガスの余剰分を製鉄所内に供給した。また、吹込み還元材には、再生メタンガスに加え、一部、化石燃料由来の外部メタンガスを使用した。なお、廃棄物中の樹脂由来の水蒸気改質ガスに含まれる水素ガスは、再生メタンガスの生成に使用しなかった。
比較例5では、比較例2と同様、図4に模式的に示した高炉および高炉附帯設備を用いた。なお、比較例5は、吹込みメタンガス比を増加させたこと以外は、比較例2と同じ条件である。
なお、「kcal/t」という単位は、溶銑1tを製造する際に発生するヒートロス量(kcal)を意味するものである。同様に、コークス比などで使用する「kg/t」という単位は、溶銑1tを製造する際に使用されるコークスの量(kg)などを意味するものである。また、吹込みメタン比などに使用する「Nm3/t」という単位も、溶銑1tを製造する際に高炉内に吹込まれる吹込みメタンガス中のメタン量(Nm3)などを意味するものである(なお、吹込みメタン比は、再生メタン比および外部メタン比の和であるが、再生メタンガスには、メタン以外の微量の残部ガスが含まれている。また、表1中に表示している再生メタン比および外部メタン比の値は、いずれもメタン以外の微量の残部ガスを除いたメタン量であり、小数点以下第1位を四捨五入した値である。そのため、表1中の吹込みメタン比と、再生メタン比および外部メタン比の和が一致しない場合がある。また、表1中の他の数値についても、同様の場合がある。)。
また、表1中の「高炉InputC」は、溶銑1tを製造する際に使用する外部由来の(具体的には、コークス、微粉炭および外部メタンガスに含まれる)炭素原子の質量(kg)を意味するものである。
一方、比較例1~4では、十分な二酸化炭素量の削減効果が得られなかった。また、比較例5では、吹込みメタンガス量の増加により、羽口先温度が2000℃未満になったため、安定した高炉の操業を行うことができなかった。
2:羽口
3:メタンガス生成装置
3-1:水蒸気改質装置
3-2:廃棄物分解装置
4:ガス吹込装置
4-1:中心管
4-2:内管
4-3:外管
5:第1の脱水装置
6:第2の脱水装置
7:バーナー
8:レースウェイ
9:熱風炉
10:ガス分離装置
11:熱風炉排ガス用脱水装置
Claims (7)
- 高炉の操業方法であって、
廃棄物に含まれる樹脂の熱分解により発生する熱分解ガス、および、水蒸気を用いて、水蒸気改質ガスを生成する工程と、
前記高炉から排出される副生ガスである高炉ガス、および、前記水蒸気改質ガスを供給源の少なくとも一部とする水素ガスを用いて、再生メタンガスを生成する工程と、
前記高炉の羽口から前記高炉内に送風ガスおよび還元材を吹込む工程と、を有し、
前記送風ガスとして酸素ガスを用い、かつ、前記還元材の少なくとも一部に前記再生メタンガスを用い、
溶銑1tを製造する際に還元材として高炉内に吹込まれる再生メタンガスの炭素換算質量である循環炭素原子の原単位が55kg/t以上であり、
前記酸素ガスの酸素濃度が80体積%以上である、高炉の操業方法。 - 前記水蒸気の少なくとも一部に、前記再生メタンガスを生成する工程において生成する副生水を使用する、請求項1に記載の高炉の操業方法。
- 前記水素ガスの供給源を、全量、前記水蒸気改質ガスとする、請求項1または2に記載の高炉の操業方法。
- 前記還元材における循環炭素原子の原単位が60kg/t以上である、請求項1~3のいずれかに記載の高炉の操業方法。
ここで、循環炭素原子の原単位は、次式により求める。
[循環炭素原子の原単位(kg/t)]=[還元材として高炉内に吹込まれる再生メタンガス中のメタンの質量(kg)]×(12/16)÷[溶銑製造量(t)] - 前記高炉ガスの一部から前記再生メタンガスを生成し、前記高炉ガスの余剰分を製鉄所内に供給する、請求項1~4のいずれかに記載の高炉の操業方法。
- 前記再生メタンガスの余剰分を製鉄所内に供給する、請求項1~5のいずれかに記載の高炉の操業方法。
- 請求項1~6のいずれかに記載の高炉の操業方法に用いる高炉附帯設備であって、
前記熱分解ガス、および、前記水蒸気を用いて、前記水蒸気改質ガスを生成する、水蒸気改質装置と、
前記高炉ガス、および、前記水蒸気改質ガスを供給源の少なくとも一部とする水素ガスを用いて、前記再生メタンガスを生成する、メタンガス生成装置と、
前記再生メタンガスを前記高炉の羽口に導入するメタンガス供給部、および、前記酸素ガスを前記高炉の羽口に導入する酸素ガス供給部を有する、ガス吹込装置と、
をそなえる、高炉附帯設備。
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