JP7192268B2 - フルフラール化合物の脱カルボニル触媒、およびフラン化合物の製造方法 - Google Patents

フルフラール化合物の脱カルボニル触媒、およびフラン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はフルフラール化合物からフラン化合物を製造する方法に関するものである。
フランはテトラヒドロフランやピロール、チオフェン等の製造原料に用いることができ
る有用な中間体化学品であり、フルフラールの脱カルボニル反応により製造される。
フルフラールの脱カルボニル反応によるフランの製造は、通常、フルフラールを含む原
料ガスを、触媒を装填した反応器中に通じる方法、すなわち気相固定床流通反応方式で行
なわれる。この方式では、Zn-Cr-Mn、Zn-Cr-Fe複合酸化物のような酸化
物触媒や、担持金属触媒が用いられる(特許文献1~4)。
一方で、液相反応方式として、触媒が比較的低い反応温度でも活性を示す担持貴金属触
媒を用いた方法も提案されている(特許文献5)。
脱カルボニル反応を担持金属触媒で行う場合、脱カルボニル反応時間の経過とともに触
媒表面に炭素質が蓄積して性能が悪化する。触媒表面の炭素質の蓄積を防いで触媒の長期
連続的に使用すること、すなわち長期使用に耐えうる触媒を開発することは、フルフラー
ルを原料とする化学品製造の経済性を向上させるために重要である。
米国特許第2,374,149号明細書 米国特許第4,780,552号明細書 米国特許第3,223,714号明細書 国際公開WO2009/069714号パンフレット 米国特許第3,257,417号明細書
フルフラールの脱カルボニル反応によってフランを製造する際、触媒への炭素質の蓄積
により、触媒の活性が経時的に低下してしまうことが問題である。また、焼成などの処理
により蓄積した炭素質を除去して触媒を再生する場合においても、蓄積した炭素質が多い
と多大な労力を要するなどの問題があり、より耐性の高い触媒や効率的な製造方法が求め
られていた。
本発明は、フルフラール化合物からフラン化合物を製造するにあたり、炭素質の蓄積が
少なく、かつ、触媒活性の経時的な低下が少ない触媒、および、それを用いてフルフラー
ル化合物からフラン化合物を製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、フルフラールの脱カルボニル反応について、詳細に検討した結果、驚く
べきことに、担持金属触媒に使用する担体について、特定の物性を有するものを使用する
ことにより、フルフラール化合物からフラン化合物を製造するにあたり、特に活性点を担
う金属上への炭素質の付着と蓄積を抑制し、触媒活性の経時的な低下を抑制できることを
見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の要旨は、次の[1]~[8]に存する。
[1]金属と担体とを有する担持金属触媒であって、該担体の比誘電率が10以上である
ことを特徴とする、フルフラール化合物の脱カルボニル触媒。
[2]前記担体の細孔径分布において、50nm以上の細孔径を有する細孔が、全細孔容
積の10%以下である、[1]に記載のフルフラール化合物の脱カルボニル触媒。
[3]前記触媒が、前記金属として、周期表第8族、第9族、及び第10族からなる群か
ら選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、[1]または[2]に記載のフルフラ
ール化合物の脱カルボニル触媒。
[4]前記触媒が、さらに、周期表第1族、第2族、第4族、及び第6族からなる群から
選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のフル
フラール化合物の脱カルボニル触媒。
[5]フルフラール化合物を脱カルボニルする工程を有するフラン化合物の製造方法であ
って、該脱カルボニル工程において、[1]~[4]のいずれかに記載の触媒を用いるこ
とを特徴とする、フラン化合物の製造方法。
[6]前記フルフラール化合物の純度が99%以上である、[5]に記載のフラン化合物
の製造方法。
[7]前記フルフラール化合物を、予め気化させてガス状とし、少なくとも、該ガス状フ
ルフラール化合物および水素を含む原料ガスを、前記触媒と接触させる、[5]または[
6]に記載のフラン化合物の製造方法。
[8]前記原料ガス中のフルフラール化合物の濃度が25体積%以上である、[5]~[
7]のいずれかに記載のフラン化合物の製造方法。
本発明によれば、フルフラール化合物から脱カルボニル反応によりフラン化合物を製造
する際に、炭素質の付着、蓄積や活性低下を抑制し、触媒を長期にわたり使用することが
可能となり、高効率かつ安定的にフラン化合物を製造することが可能となる。
また、触媒に蓄積した炭素質を取り除くために行う焼成等の再生処理においても、炭素
質の量が少ないため、多大な労力を要しない。
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の
説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではな
く、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明のフラン化合物の製造方法は、フルフラール化合物を特定の触媒と接触させる工
程を有することを特徴とする。まず、原料として用いるフルフラール化合物、目的物のフ
ラン化合物、副生物のフルフリルアルコール化合物について説明する。
[フルフラール化合物の脱カルボニル触媒]
本発明のフルフラール化合物の脱カルボニル触媒(以下、「本発明の触媒」と称するこ
とがある。)は、フルフラール化合物の脱カルボニル反応の進行に有効な担持金属触媒で
あって、該担体の比誘電率が10以上であることを特徴とするものであり、後述の本発明
のフラン化合物の製造方法に好適に用いることができる。
<フルフラール化合物>
本発明において、フルフラール化合物とは、下記一般式(1)で表される化合物をいう
Figure 0007192268000001
[式(1)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、官能基を有してい
てもよい脂肪族炭化水素基、官能基を有していてもよい芳香族炭化水素基、水酸基又はア
ルデヒド基を示す。]
上記一般式(1)のR、R、Rにおいて、水素原子、官能基を有していてもよい
炭素数2個以下の脂肪族炭化水素基が好ましいものとして挙げられる。さらに具体的には
、水素原子(-H)、-CHOH、-CH、-CHOCH、-C(=O)CH
、-CHO等が好ましい。
フルフラール化合物の具体例としては、ヒドロキシメチルフルフラール、2-メチルフ
ルフラール、3-メチルフルフラール、フルフリルジアルデヒド、フルフラールが好まし
いものとして挙げられる。中でもR、R、Rがすべて水素原子であるフルフラール
がより好ましい。
<フラン化合物>
前記フルフラール化合物の脱カルボニル反応が進行するとフラン化合物となる。本発明
において、フラン化合物とは、前記フルフラール化合物が脱カルボニルされることで得ら
れるものをいう。具体的には、前記一般式(1)のフルフラール化合物が脱カルボニルさ
れた、対応する下記一般式(2)で表される化合物をいう。
Figure 0007192268000002
[式(2)中、R、RおよびRは、前記一般式(1)における定義と同じである。

フラン化合物の具体例としては、2-メチルフラン、3-メチルフラン、フラン等が挙
げられる。中でもR、R、Rがすべて水素原子であるフランがより好ましい。
<フルフリルアルコール化合物>
本発明において、フルフリルアルコール化合物とは、前記フルフラール化合物が還元さ
れることで生成するものをいう。具体的には前記一般式(1)のフルフラール化合物のカ
ルボニル基が還元された、対応する下記一般式(3)で表される化合物をいう。
Figure 0007192268000003
[式(3)中、R、RおよびRは、前記一般式(1)における定義と同じである。

フルフリルアルコール化合物の具体例としては、2-メチルフルフリルアルコール、3
-メチルフルフリルアルコール、2,5-ジヒドロキシメチルフルフラール、フルフリル
アルコール等が挙げられる。
これらフルフリルアルコール化合物は、上記のとおり、原料として用いたフルフラール
化合物に対応するアルコール類として副生する化合物である。
<脱カルボニル触媒>
本発明の触媒は、金属と担体とを有する担持金属触媒であって、該担体の比誘電率が1
0以上であることを特徴とし、フルフラール化合物の脱カルボニル反応の進行に有効であ
る。
本発明において用いられる触媒は、該担体の比誘電率が10以上であれば、特に限定さ
れないが、以下に詳細に説明する。
(金属)
本発明の触媒は、前記金属として、周期表第8族、第9族、第10族元素からなる群か
ら選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する。前記金属元素は、いわゆる触媒の活性
成分となるものであり、以下、「活性金属」と呼ぶ。
活性金属の種類は特に限定されないが、具体的にはNi、Ru、Rh、Ir、Pd、P
tから選ばれる少なくとも1種であり、活性が高い点で好ましくはRu、Rh、Ir、P
d、Ptから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはRh、Pd、Pt、さらに
好ましくはPdである。Pdを含有する触媒は、フルフラール化合物からフラン化合物を
製造するにあたり、フラン化合物の選択性が高いことから特に好適である。
なお、活性金属は1種類を用いても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の触媒において、後述する担体への活性金属の導入方法は特に限定されないが、
イオン交換法や含浸担持法、ポアフィリング法、incipient-wetness法
、スプレー担持法等が好適に用いられる。イオン交換法や含浸担持等に用いる原料として
は、通常、ハロゲン物や硝酸塩などの水溶性の塩、あるいはそれらの酸性溶液が用いられ
る。中でも、硝酸塩やアンミン錯体硝酸塩、アンミンニトロ化合物等のハロゲン元素を含
まない水溶性原料が好ましい。これらの原料を溶液として用いるが、担体との接触の際に
は原料濃度やpH、温度等の制御が好適に行われる。イオン交換法や含浸担持法によって
活性金属成分を担体に担持させた後、濾過水洗や乾燥により水分を除去する。
本発明の触媒中の好ましい活性金属の担持量は、活性金属や、後述する担体の種類によ
り適宜調製可能であり、特に限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.
05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上
であり、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以
下、さらに好ましくは10質量%以下である。前記担持量の範囲であれば、フルフラール
化合物を主成分とする原料が十分に転化し、未反応のフルフラール化合物の回収等が不要
になるため効率的である。また前記範囲であれば副反応も抑制され、目的物の収率を向上
させることができる。
(担体)
前記の活性金属は、そのまま用いることもできるが、本発明においては、高誘電率の担
体を用いる。前記担体の誘電率は、比誘電率(1MHz)として通常10以上、好ましく
は15以上、さらに好ましくは20以上、特に好ましくは50以上である(物質の誘電率
は、例えば日本化学会編 化学便覧改訂5版丸善や日本学術振興会編 薄膜ハンドブック
第2版オーム社、あるいは、MRS Bulletin 2002年March 219pに、比誘電率として記載さ
れている。また、日本工業規格で定められている方法等によって測定することが可能で、
LCRメーターやインピーダンスアナライザーによって測定可能である)。
前記担体は常誘電体でも強誘電体でもかまわないが、より好ましくは強誘電体である。
担体の誘電率が上記の値であると、担体と活性金属との間のインタラクションが強まるた
め、フルフラール化合物の脱カルボニル反応中における活性金属の電子状態が安定化し、
炭素質の蓄積が妨げられ、触媒活性が経時的に低下しにくくなるという効果が得られる。
本発明では、前記担体の細孔径について、窒素吸着法や水銀ポロシメーターで測定され
る細孔径分布が5nm以上、50nm未満の範囲にあることが好ましい。前記担体として
、このような細孔径分布を有しているものを用いると、触媒の耐性がさらに高くなり、好
ましい。
細孔径が広すぎると、脱カルボニル反応中に担体表面上に蓄積する炭素質の量が多大に
なり、触媒活性の低下に至ることがある。また、細孔径が広く蓄積する炭素質の量が多い
と、炭素質を除去して触媒を再生するに際にも多大な労力を有する。
一方で、細孔径が狭すぎても不都合があり、少量の炭素質の蓄積でフルフラール化合物
の活性金属へのアクセスが阻害されて活性低下が速くなる。
本発明で用いる担体の細孔径分布の好ましい範囲は5nm以上、50nm未満であり、
5nm以上、50nm未満の細孔径を有する細孔は、通常、全細孔容積の85%以上、好
ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
5nm未満の細孔径を有する細孔は、通常、全細孔容積の15%以下、好ましくは10
%以下、より好ましくは5%以下である。50nm以上の細孔径を有する細孔は、通常、
全細孔容積の10%以下、好ましくは5%以下である。
本発明で用いる担体の細孔のメディアン径(細孔をその細孔径から2つに分けたとき、
大きい側と小さい側が等容積となる径)は、5nm以上、40nm以下、好ましくは8n
m以上、30nm以下、より好ましくは 10nm以上、25nm以下である。
また、前記担体として、複数の細孔径分布ピーク、すなわちバイモーダルあるいはマル
チモーダルな細孔径分布を有する担体が好ましい。担持される活性金属の分散度と原料化
合物や生成物の拡散向上のバランスに優れるとともに、炭素質の蓄積に対する耐性が向上
することが理由である。
本発明で用いる担体の比表面積は、通常1m/g以上、好ましくは10m/g以上
、より好ましくは20m/g以上であり、また、通常500m/g以下、好ましくは
400m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。担体の比表面積が20
/g以上であると、担持した活性金属について触媒反応を進行させるうえで充分に有
効な金属露出面積が得られる傾向にあり、比表面積が200m/g以下であると、担体
と担持された活性金属との間のインタラクションが最適になると同時に、担体が露出する
割合が低くなることによって担体表面の触媒作用による副反応が進行しにくくなり、また
担体への炭素質の蓄積も抑制される傾向にある。
前記担体の種類は、特に限定されないが、Al、SiO、TiO、ZrO
、HfO、MgO、BaO、Cr、La、Nb、Ta、Sr
TiO(チタン酸ストロンチウム)、BaTiO(チタン酸バリウム)、PbZrO
(ジルコン酸鉛)、LiNbO(ニオブ酸リチウム)等の金属酸化物や複合酸化物、
チタン酸塩、ジルコン酸塩、ニオブ酸塩;粘土、ゼオライト等の多孔性酸化物;活性炭等
の炭素質担体等を用いることができる。
前記金属酸化物等は担体の成分として含まれていればよい。また、2種類以上が担体成
分として含まれてもよい。前記ゼオライトの種類は特に限定されず、例えばIntern
ational Zeolite Associationで規定されるコードで、MF
I、FAU、または、LTA等で表されるものが好適に用いられる。また前記ゼオライト
のイオン交換サイトの種類は特に限定されず、通常、プロトン型、1族金属イオン型、酸
点を有しないシリカライト等が挙げられるが、プロトンタイプのゼオライトはその表面酸
性の強さから、フルフラール化合物やフラン化合物が変性するまたは表面上で重合する可
能性があることから、1族金属イオン型やシリカライト等のゼオライトが好ましい。
これらの担体のうち、前記金属酸化物が好ましく、Al、SiO、TiO
ZrO、HfO、MgO、BaO、Cr、La、SrTiO、BaT
iO、PbZrO、LiNbO等の弱酸、弱塩基性の金属酸化物や複合酸化物、チ
タン酸塩、ジルコン酸塩、ニオブ酸塩がより好ましく、Al、SiO、ZrO
、HfO、MgO、BaO、Cr、La、SrTiO、BaTiO
PbZrO、LiNbO等の難還元性かつ絶縁体性(非半導体性)である金属酸化物
や複合酸化物、チタン酸塩、ジルコン酸塩、ニオブ酸塩がさらに好ましく、ZrO、H
fO、BaO、La、SrTiO、BaTiO、PbZrO、LiNbO
の高誘電率(比誘電率が10以上)の金属酸化物や複合酸化物、チタン酸塩、ジルコン
酸塩、ニオブ酸塩が特に好ましい。
ZrOの構造としてはモノクリニック型が好ましい。チタン酸塩、ジルコン酸塩、ニ
オブ酸塩の構造としてはペロブスカイト型、擬イルメナイト型、パイロクロア型、タング
ステンブロンズ型が好ましい。
これらが担体として好ましい理由のひとつは、これらの金属酸化物の表面が弱酸、弱塩
基性でフルフラール化合物やフラン化合物に対して不活性であり、担持される活性金属に
よるフルフラール化合物のフラン化合物への転化において副反応が起こりにくく、フルフ
ラール化合物やフラン化合物が担体表面上で重合しにくい、すなわち担体表面への炭素質
の蓄積が起こりにくいからである。
また、担体が難還元性かつ絶縁体性であることにより、触媒を製造する際の還元工程や
水素共存下での脱カルボニル反応において、担持される活性金属と担体とのインタラクシ
ョンが適切かつ安定的に保たれる。例えば、活性金属と担体成分との間の合金化や、いわ
ゆるSMSI(ストロングメタルサポートインタラクション)といわれる担体成分由来の
弱還元酸化物の生成とその活性金属上へのデコレーションは起こらない。したがって活性
金属に基づく触媒活性の消失は水素雰囲気下でも起こらず、安定的な触媒活性が得られる

担体の好ましい絶縁体性を禁止帯幅で示せば、通常、3.2eV以上、好ましくは3.
4eV以上、特に好ましくは3.6eV以上である。また、担体の難還元性を酸化還元電
位で示せば、そのカチオンや酸化物イオンの標準電極電位(カチオンの価数が+nから+
(n-1)に減少する場合も含む)として、通常-1.2V以下、好ましくは-1.4V
以下、特に好ましくは-1.5V以下である。
加えて、これらの誘電率の高い金属酸化物からなる担体は、担持される活性金属に電子
的に作用し、脱カルボニル反応中における活性金属の電子状態の維持に寄与する。例えば
、活性金属の電子状態が脱カルボニル反応中に酸化側(プラス)に傾くことが回避される
ので、π電子過剰であるフラン環を有する化合物(マイナスの電子状態を有する(電子リ
ッチな)化合物)が活性金属表面に付着することが避けられ、活性金属表面に炭素質が蓄
積することが阻止される。
この電子状態維持の効果は、後述する修飾助剤を含む触媒の場合により顕著に現れ、フ
ラン化合物の収率を最大限安定的に得たい場合に好適である。
さらには、前記担体の純度も触媒の性能に影響していることを見出した。担体の不純物
としてはSi(SiO)、Al(Al)やFe(Fe)が挙げられるが、
少なすぎると担体のラフネスが損なわれて比表面積が減少し、担持される活性金属が高分
散化しない。多すぎると、表面に無用な酸点や欠陥を発生させ、炭素質の生成および付着
と蓄積を促進する。XRF(蛍光X線)分析等で測定される担体の純度は通常95.0%

上、99.9%以下、より好ましくは96.0%以上99.8%以下、さらに好ましくは
97.0%以上、99.7%以下である。
(修飾助剤)
本発明の触媒は、さらに、周期表第1族、第2族、第4族、及び第6族からなる群から
選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有することが好ましい。これらの金属元素は、修
飾助剤として働き、本発明の触媒の性能を向上させることができる。
より具体的には、特に限定はされないが、例えば、周期表第1族金属元素やそれらのイ
オン、周期表第2族金属やそれらのイオン、周期表第4族金属やそれらのイオン、周期表
第6族金属やそれらのイオンが挙げられる。中でも、周期表第1族金属やそれらのイオン
であることが好ましい。さらに好ましくは、Cs、Rb、K、Na、およびLiからなる
群から選ばれる少なくとも一種の金属や、これらのイオン、特に好ましくはK、またはN
aの金属や、これらのイオンである。
修飾助剤の役割は完全には解明されていないが、特に誘電率の高い金属酸化物を担体と
して用いる場合に、活性金属の電子状態に影響する。修飾助剤が1族金属やそれらのイオ
ンである場合、電気陰性度の低い1族金属の電子分極的な影響が誘電率の高い担体を介し
て担持される活性金属に伝わり、その電子状態の維持、安定化に寄与する。あるいは、1
族金属の電子分極的な影響を受けた活性金属の電子状態が誘電率の高い担体の分極的な支
持によって安定化される。具体的には、修飾助剤を含有しない触媒に比べると、担持され
る活性金属が酸化されにくく、還元されやすくなる傾向があり、修飾助剤は、脱カルボニ
ル反応の安定的な進行に貢献するとともに、触媒に蓄積した炭素質を取り除く際の各種の
処理を容易にする。例えば、修飾助剤を含有する触媒は、後述の触媒再生においては、低
温、短時間の酸化処理で十分に炭素質を取り除くことが可能で、再生後の触媒の性能が高
い。
前記担持金属触媒中の好ましい修飾助剤の含有量は、活性金属や担体の種類により適宜
調製可能であり、特に限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質
量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり
、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さ
らに好ましくは5質量%以下である。
本発明において、修飾助剤の導入方法は特に限定されないが、イオン交換法や含浸担持
法、ポアフィリング法、incipient-wetness法、スプレー担持法等が好
適に用いられる。イオン交換法や含浸担持等に用いる修飾助剤の原料としては、通常、ハ
ロゲン物や炭酸塩、硝酸塩などの水溶性の塩が用いられる。導入のタイミングは金属成分
を担体に担持する前でも後でもかまわないし、活性金属の塩と混合して混合溶液とし、共
含浸する方法で担持してもかまわない。
(活性化)
本発明の触媒は、脱カルボニル反応に使用する前に、空気焼成や、還元処理などの活性
化が好適に行われる。前記活性化においては、還元剤を用いた液相での還元や水素気流中
下での還元処理により金属の還元が行われるが、水素気流中下での還元処理がより好まし
い。水素気流中下の還元処理の温度は特にこだわらないが、通常250℃以上600℃以
下、好ましくは300℃以上、550℃以下、より好ましくは350℃以上、500℃以
下、特に好ましくは400℃以上、450℃以下である。還元温度が低すぎると活性金属
が充分に還元されず、還元温度が高すぎると担体の結晶構造の変化や活性金属のシンタリ
ングが生じて活性金属の表面積(金属露出面積)が低下する可能性がある。
活性化により得られる触媒の細孔分布は、基本的には担体の細孔分布を反映したものに
なる。本発明では、後述する特定の細孔径分布を有している触媒が脱カルボニル反応に対
して耐性が高くなることを見出した。担体の細孔径が広すぎると、脱カルボニル反応中に
触媒表面に蓄積する炭素質の量が多大になり、触媒活性の低下に至ることがある。また、
広い細孔径により触媒に蓄積する炭素質の量が多いと、炭素質を除去して触媒を再生する
に際にも多大な労力を有する。
一方で、細孔径が狭すぎても不都合があり、少量の炭素質の蓄積でフルフラール化合物
の活性金属へのアクセスが阻害されて活性低下が速くなる。本発明の触媒の細孔径分布の
好ましい範囲は5nm以上、50nm未満であり、5nm以上、50nm未満の細孔径を
有する細孔は、通常、全細孔容積の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは
95%以上である。
5nm未満の細孔径を有する細孔は、通常、全細孔容積の15%以下、好ましくは10
%以下、より好ましくは5%以下である。50nm以上の細孔径を有する細孔は、通常、
全細孔容積の10%以下、より好ましくは5%以下である。
また、本発明の触媒の細孔のメディアン径は5nm以上、40nm以下、好ましくは8
nm以上、30nm以下、より好ましくは 10nm以上、25nm以下である。
複数の細孔径分布ピーク、すなわちバイモーダルあるいはマルチモーダルな細孔径を有
する触媒が好ましい。担持される活性金属の分散度と原料化合物や生成物の拡散向上のバ
ランスに優れること、および炭素質の蓄積に対する耐性が向上することが理由である。
活性化で得られる触媒の比表面積は、基本的には担体の比表面積を反映したものになる
。本発明の触媒の比表面積は、通常1m/g以上、好ましくは10m/g以上、より
好ましくは20m/g以上であり、また、通常500m/g以下、好ましくは400
/g以下、より好ましくは200m/g以下である。触媒の比表面積が20m
g以上であると、担持した活性金属について触媒反応を進行させるうえで充分に有効な金
属露出面積が得られる傾向にあり、比表面積が200m/g以下であると、担体と担持
された活性金属との間のインタラクションが最適になると同時に、担体が露出する割合が
低くなることによって担体表面の触媒作用による副反応が進行しにくくなり、また担体へ
の炭素質の蓄積も抑制される傾向にある。
さらには、還元処理などによって活性化された本発明の触媒の活性金属の表面積(以下
、「金属露出面積」と呼ぶ)は、金属に選択的に吸着する水素や一酸化炭素等の吸着量の
測定等によって見積もることができる。一酸化炭素を用いる例を具体的に述べれば、一酸
化炭素1分子が表面に露出した金属1原子に吸着するとして、吸着した一酸化炭素の分子
数と金属の原子半径から計算される、金属1原子あたりの面積を用いて計算する。
本発明の触媒の金属露出面積は、通常10m/g金属以上、好ましくは50m/g
金属以上、より好ましくは100m/g金属以上、特に好ましくは200m/g金属
以上である。触媒の金属露出面積が200m/g金属以上であると、当然ながら担持し
た金属あたりで高い触媒活性が得られると同時に、高分散に担持された活性金属と担体の
間のインタラクションが有効なものとなる。
(酸化還元特性)
本発明の触媒は、前述した活性金属と、誘電率が高い担体との電子的なインタラクショ
ンにより、担持された活性金属の酸化還元特性が特異的なものになる。これは、水素還元
等の還元処理により活性金属が還元された状態の触媒を酸素を含むガス中で酸化する際に
観察される活性金属の酸化されにくさによって特徴づけられ、具体的には、次の例のよう
な触媒解析によって明らかにすることができる。
450℃以上500℃以下で水素還元された還元状態の触媒(約0.5g)を室温まで
冷却し、気流を水素からHeに替えた後にパルス的にOガス(475μl)を与えて室
温で飽和(吸着)させる。そのまま、次に0.25体積%のO/Heを20ml/mi
nで流しながら、20℃/minで加熱昇温(TPO(Temperature-Pro
gramed Oxidation))すると、その際に出口に設けた質量分析計等を用
いて酸素消費をモニターすると酸素消費(触媒の酸化)がより高温で観察される。酸素消
費すなわち活性金属が酸化される挙動を温度に対するプロファイルとして表せば、その最
大消費(ピーク)温度が通常200℃以上500℃以下、好ましくは250℃以上450
℃以下、より好ましくは、300℃以上400℃以下である。
さらには、本発明の触媒は、450℃で水素還元された状態を0%、600℃の酸素処
理で酸化された状態を100%とすると、前記のTPOプロファイルにおいて50%の酸
化度に至る温度はより高くなり(酸化されにくくなり)、通常200℃以上450℃以下
、好ましくは250℃以上400℃以下、より好ましくは300℃以上350℃以下であ
る。これらは、本発明の触媒において、前述した活性金属と誘電率の高い担体との電子的
なインタラクションにより、担持された活性金属が酸化されにくくなっていることを示す

一方、本発明の触媒の担持された活性金属の酸化還元特性が特異性は、酸化状態にある
触媒について水素還元等の還元処理を施した際に観察される活性金属の還元されやすさに
よっても特徴づけられる。具体的には、次の例のような触媒解析によって明らかにするこ
とができる。
500℃で酸素を含むガスで酸化された酸化状態の触媒(約0.2g)を室温まで冷却
し、気流を2.7体積%のH/Heに替えて安定化させた後、20℃/minで450
℃まで加熱昇温(TPR(Temperature-Programed Reduct
ion))する。その際に出口に設けた質量分析計等を用いて水素消費をモニターすると
水素消費(触媒の還元)がより低温で観察される。水素消費すなわち活性金属が還元され
る挙動を温度に対するプロファイルとして表せば、その最大消費(ピーク)温度が通常5
0℃以上300℃以下、好ましくは75℃以上250℃以下、より好ましくは、100℃
以上200℃以下である。
[フラン化合物の製造方法]
本発明のフラン化合物の製造方法は、フルフラール化合物の脱カルボニル工程を必須と
するものであり、該脱カルボニル工程において、上述の本発明の触媒を用いることを特徴
とするものである。
<フルフラール化合物を含む原料>
本発明で原料として用いるフルフラール化合物は、如何なる方法で製造されたものでよ
く、その方法は特に限定されない。例えば、フルフラールは、通常、植物由来の原料を、
水熱処理や酸による加水分解によって得ることができる。また、フルフラール化合物は、
本発明の目的を阻害しない範囲で、フルフラール化合物以外の化合物やその他の成分(以
下、これらを総称して「不純物」という。)を含んでいてもよい。
通常、前記フルフラール化合物に含まれる不純物を分離除去、または精製により低減し
、含まれる不純物を所定量以下に低減したフルフラール化合物を原料として用いることが
好ましい。その純度は特に制限されないが、精製した原料全体を基準(100質量%)と
したとき、通常98質量%以上、好ましくは99質量%以上、より好ましくは99.5質
量%以上、さらに好ましくは99.7質量%以上である。なお上限は特に限定されないが
、通常100質量%以下である。
また、アルデヒド基を有するフルフラール化合物は自動酸化による過酸や過酸化物を発
生しやすい。過酸や過酸化物を多く含むフルフラール化合物は重合しやすく、また脱カル
ボニル反応における副反応も起こりやすいため、過酸や過酸化物の発生や混入は極力防ぐ
必要がある。通常、前記フルフラール化合物に含まれる過酸や過酸化物を分離除去、また
は精製により低減し、所定量以下に低減したフルフラール化合物を原料として用いること
が好ましい。
原料として用いるフルフラール化合物に含まれる過酸や過酸化物は、過酸化物価(PO
V meq/kg)として、通常0.01以上5.0以下、好ましくは0.02以上3.
0以下、より好ましくは0.03以上1.0以下、特に好ましくは0.05以上0.5以
下である。
不純物や過酸、過酸化物の分離除去や精製の方法は特にこだわらないが、通常、蒸留精
製や活性炭や無機酸化物などの吸着材による吸着分離が用いられる。また、トリフェニル
フォスフィンなどの酸化されやすい物質との反応により除去する方法も好適に用いられる
純度や過酸化物価を上記範囲に制御したフルフラール化合物を原料として用いることに
より、触媒の経時的な活性低下を抑制し、安定的にフルフラール化合物を転化し、目的物
であるフラン化合物を効率的に製造することができる。
<反応条件>
本発明で実施する脱カルボニル反応は、常圧あるいは加圧状態でフルフラール化合物を
本発明の触媒と接触させてフラン化合物を製造する方法であって、液相反応、気相反応の
いずれの方法でも実施できるが、気化させたガス状のフルフラール化合物を、触媒と接触
させて脱カルボニル反応を行なう気相反応が好ましい。以下、先ず気相反応の条件、次に
液相反応の条件について、さらに具体的に説明する。
<気相反応>
気相反応の場合、原料として用いられる前記フルフラール化合物を、予め気化させてガ
ス状とし、該ガス状フルフラール化合物と水素を少なくとも含む原料ガスを、本発明の触
媒と接触させることが好ましい。
気化の方法は特に限定されないが、あらかじめ設けた気化器においてガス状とすること
が好ましく、例えば液体状の前記フルフラール化合物を主成分とする原料に、水素や不活
性ガス等をガスバブリングする方法や、スプレー気化による方法等が挙げられる。
前記ガスバブリングに用いる不活性ガスの純度は特に限定されないが、通常95体積%
以上、好ましくは99体積%以上、より好ましくは99.9体積%以上、特に好ましくは
99.99体積%以上である。
気相反応においては、前記ガス状のフルフラール化合物を含む原料ガスを、通常、本発
明の触媒を装填した管型反応器(反応管)に供給し、前記反応器内の触媒と接触させるこ
とでフラン化合物を得る。
反応形式は特に限定されるものではなく、例えば回分反応及び連続流通反応のいずれの
方法でも実施することができるが、工業的には連続流通反応を用いるのが好ましい。
気相反応においては、前記のとおり、気化させたガス状のフルフラール化合物を、本発
明の触媒と接触させて脱カルボニル反応を行なう気相反応が好ましい。気相反応は単位体
積あたりのフルフラール化合物の濃度が小さくなるため、フルフラール化合物の縮合や重
合等のようなフラン化合物の収率に悪影響を及ぼす副反応等が軽減される。また気相反応
は反応器を工夫することにより触媒の入れ替えや再生が容易となる長所も有する。
前記原料ガス中のフルフラール化合物の濃度は、通常25体積%以上、好ましくは30
体積%以上、より好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上であり、
上限は、通常90体積%以下、好ましくは80体積%以下、より好ましくは75体積%以
下である。上限を超えると、フルフラール化合物が重合しやすくなる傾向がある。
気相反応の場合、原料ガス中のフルフラール化合物の濃度を調整するために前記同伴ガ
スとして、窒素、アルゴン等の不活性ガスや水素、COが好適に用いられる。
触媒が担持金属触媒の場合、COは活性金属を被毒することから、脱カルボニル反応の
反応速度は遅くなるが、用いるCOとして脱カルボニル反応で生成したCO、すなわち、
フラン化合物や副生物、未反応のフルフラール化合物を分離した後のCOを一部再使用す
ることが可能となる点で好ましい。
また、COの再使用にあたっては、触媒と接触させる水素や一部ロスしたフラン化合物
などをCOと分離せずにそのまま用いることが好適に行われる。
本発明で実施する脱カルボニル反応は、常圧あるいは加圧状態でフルフラール化合物を
触媒と接触させてフラン化合物を製造する方法であって、好ましくは水素共存下で反応を
行う。反応時に水素を導入しなければ、脱カルボニル反応中に活性金属の電子状態が維持
しにくくなり、活性金属表面に炭素質が付着し、触媒の活性は急速に失われる。一方、水
素の導入量を多くし過ぎると、フルフラール化合物の活性金属表面への吸着が妨げられ、
脱カルボニル反応の反応速度の低下や副反応の進行が起こる。したがって、フルフラール
化合物に対する水素の量を制御することにより、活性維持や副生物の低減をはかることが
できる。
共存させる水素の量は、フルフラール化合物に対する水素のモル比で、通常0を超え、
好ましくは0.001以上、より好ましくは0.002以上、さらに好ましくは0.00
5以上、特に好ましくは0.01以上であり、通常0.2以下、より好ましくは0.1以
下、さらに好ましくは0.05以下である。
本発明において、共存させる水素ガスの純度は特に限定はされないが、通常99体積%
以上、好ましくは99.9体積%以上、さらに好ましくは99.99体積%以上、特に好
ましくは99.999体積%以上である。
前記フルフラール化合物の供給量は、前記触媒に用いられる前期金属元素1molに対
し、通常0.0001mol/h以上、好ましくは0.001mol/h以上、より好ま
しくは0.01mol/h以上、さらに好ましくは0.1mol/h以上であり、通常5
0000mol/h以下、好ましくは10000mol/h以下、より好ましくは500
0mol/h以下、さらに好ましくは1000mol/h以下である。
また前記フルフラール化合物の供給量は、前記触媒の重量1gに対し、通常1mmol
/h以上、好ましくは10mmol/h以上、より好ましくは20mmol/h以上、さ
らに好ましくは30mmol/h以上であり、通常3000mmol/h以下、好ましく
は1500mmol/h以下、より好ましくは500mmol/h以下、さらに好ましく
は200mmol/h以下である。
前記のフルフラール化合物の供給量とすることで、反応で生成したフランとCOを分離
する際にフラン化合物の回収が容易になり、生産効率が向上する点で好ましい。
気相反応における接触時間は特に限定されないが、通常0.001秒以上、好ましくは
0.01秒以上、より好ましくは0.05秒以上、さらに好ましくは0.1秒以上であり
、通常100秒以下、好ましくは50秒以下、より好ましくは20秒以下、さらに好まし
くは10秒以下である。接触時間がこの範囲であることで、フルフラール化合物を主成分
とする原料が十分に転化し、未反応のフルフラール化合物の回収等が不要になるため効率
的である。また、生成したフラン化合物の逐次的な反応を抑制し、収率を向上することが
できる。ただし、長時間に及ぶ連続反応を行う場合、触媒の活性低下を予測してあらかじ
め過剰量の触媒を装填することが行われることがある。
反応温度は特に限定されないが、通常170℃以上、好ましくは180℃以上、より好
ましくは200℃以上、さらに好ましくは230℃以上であり、通常450℃以下、好ま
しくは380℃以下、より好ましくは340℃以下、さらに好ましくは300℃以下であ
る。反応温度がこの範囲であることで、フルフラール化合物が十分に転化し、未反応のフ
ルフラール化合物の回収等が不要となり、また、生成したフラン化合物の逐次的な反応が
抑制されるため、フラン化合物の収率が向上する。
反応圧力は、特に限定されないが、絶対圧で、通常0.1MPa以上、好ましくは0.
15MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上であり、通常3MPa以下、好ましく
は2MPa以下、より好ましくは1MPa以下である。反応圧力がこの範囲であることで
、生成物の分離が効率よく行われ、特に共存させる水素のフルフラール化合物に対するモ
ル比が高い場合に、フルフリルアルコールや水素化分解物の生成を抑制できる。
<液相反応>
液相反応の場合には、液体のフルフラール化合物と触媒とを反応器に仕込み、撹拌下、
水素を共存させて適切な温度にて反応させることにより、フラン化合物を得ることができ
る。
液相反応において、共存させる水素の量、水素ガスの純度、フルフラール化合物の供給
量等の条件は、特に明記しない限り、気相反応の場合と同様である。また、反応形式は特
に限定されるものではなく、例えば触媒懸濁床方式による回分反応及び連続流通反応、お
よび触媒固定床方式による連続流通反応のいずれの方法でも実施することができる。
反応温度は特に限定されないが、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好まし
くは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは1
60℃以下である。
反応時間は特に限定されないが、回分反応の場合、通常1分以上、好ましくは5分以上
、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上であり、通常12時間以下、
好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下、さらに好ましくは2時間以下である
連続反応の場合は、滞留時間は特に限定されないが、通常0.1秒以上、好ましくは0
.5秒以上、より好ましくは1秒以上、さらに好ましくは2秒以上であり、通常2時間以
下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、さらに好ましくは10分以下で
ある。接触時間がこの範囲であることで、フルフラール化合物を主成分とする原料が十分
に転化し、未反応のフルフラール化合物の回収等が不要になるため効率的である。また、
生成したフラン化合物の逐次的な反応を抑制し、収率を向上することができる。ただし、
長時間に及ぶ連続反応を行う場合、触媒の活性低下を予測してあらかじめ過剰量の触媒を
装填することが行われることがある。
反応圧力は、加圧状態であれば特に限定されないが、絶対圧で、通常0.1MPa以上
、好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上であり、通常1MP
a以下、好ましくは0.6MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。
溶媒は特に必要ないが、例えば、ガンマブチルラクトン、N-メチルピロリドン、トリ
グライム、テトラグライム等の高沸点極性溶媒を用いてもよい。また、炭酸カリウム、炭
酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の塩基性添加剤を用いても良いし、水等の液体の添加剤
を用いても良い。必要に応じて副生成物のパージ除去や、触媒の添加や入れ替えを行うこ
とができる。また、連続的にフルフラール化合物や水素を供給することも好適に行われる

さらに、生成したフラン化合物の沸点が低い場合には、気相よりフランを捕集すること
ができる。
<製造装置の構成等>
フルフラール化合物を連続的に脱カルボニル反応器に供給する場合、不純物等の低減の
ための精製装置と脱カルボニル反応器を連結させることが好適に行われる。すなわち、フ
ルフラール化合物粗原料を連続的に蒸留精製、あるいはフルフラール化合物粗原料の不純
物を連続的に吸着除去精製して上記の反応器に供給する。蒸留精製の場合には、高沸点の
不純物の排除だけではなく、低沸点の不純物も除去して脱カルボニル反応器に供給するこ
とが効果的である。
<生成物の精製方法>
本発明の方法によって得られたフラン化合物は、未反応のフルフラール化合物、フルフ
ラール化合物由来の不純物、副生する一酸化炭素や副生成物、および反応開始剤として導
入した水素と分離された後、必要に応じて、蒸留等の操作によって精製してもよい。分離
された水素はリサイクルして、再度原料として用いることも可能であり、また脱カルボニ
ル反応で副生する一酸化炭素と共に他の用途に有効利用することもできる。
<触媒の再生等>
長時間の連続的な使用によって触媒活性が低下した場合は、触媒表面に蓄積した炭素質
を除去することによって、触媒の活性を回復することができる。具体的には、過酸化水素
水や空気などの酸素を含むガスを用いて、炭素質を酸化しながらCOとして触媒から取
り去ることが効果的である。空気などの酸素を含むガスを用いて酸化する場合、その酸化
処理の温度は、通常250℃以上750℃以下、好ましくは300℃以上700℃以下、
より好ましくは400℃以上650℃以下、特に好ましくは500℃以600℃以下であ
る。急激な発熱を避けるために、不活性ガスの使用や酸素濃度の調節、およびゆっくりと
した加熱昇温が好適に行われる。
前記の再生処理は脱カルボニル反応を停止した後、脱カルボニル反応器から触媒抜き出
して別の再生処理用の装置で行ってもよいし、脱カルボニル反応器に触媒を装填したまま
、流通させるガスを変更して、再生処理を行うこともできる。
再生された触媒は脱カルボニル反応に使用する前に、空気焼成や、還元処理などの活性
化が好適に行われる。前記活性化においては、還元剤を用いた液相での還元や水素気流中
下での還元処理により金属の還元が行われるが、水素気流中下での還元処理がより好まし
い。水素気流中下の還元処理の温度は特にこだわらないが、通常250℃以上600℃以
下、好ましくは300℃以上、550℃以下、より好ましくは350℃以上、500℃以
下、特に好ましくは400℃以上、450℃以下である。還元温度が低すぎると活性金属
が十分に還元されず、高すぎると担体の結晶構造の変化や活性金属のシンタリングが生じ
て活性金属の表面積(金属露出面積)が低下する恐れがある。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例においては、フルフラール化合物としてフルフラール
を用いた。原料となるフルフラールの純度は、FID-ガスクロマトグラフ(以下、「G
C」という。)のピーク面積割合から求めた。フルフラール中に不純物として含まれる硫
黄濃度の測定は、燃焼-吸収-イオンクロマト法で求めた。フルフラールの酸価の測定は
、原料として用いるフルフラールをエタノールで希釈した後に0.01Nの水酸化カリウ
ム水溶液を用いて滴定することによって測定した。また、フルフラールの過酸化物価は、
試料5mLにヨウ化カリウムを作用させて遊離してくるヨウ素を0.005mol/Lの
チオ硫酸ナトリウム液によって滴定することにより求めた。
脱カルボニル反応における未反応フルフラールや生成物等の定量分析は、反応装置に連
結されたオンラインGCで行った。GC、イオンクロマト法の装置、測定条件等は次のと
おりである。
(フルフラール純度のGC測定方法)
装置:FID-GC島津GC2025(無極性キャピラリーカラム、50m)
測定条件:スプリット機構、カラム部プログラム昇温使用
(燃焼-吸収-イオンクロマト法)
燃焼装置:三菱化学社製 試料燃焼装置 QF-02
分析装置:日本ダイオネクス社製 イオンクロマトDX-500
(生成物のGC測定方法)
・有機物
装置:TCD-GC 島津GC14B(中極性カラム、3m)
測定条件:カラム部プログラム昇温使用
・無機ガス
装置:TCD-GC 島津GC8A(モレキュラーシーブ、3m)
測定条件:カラム部50℃
(触媒の酸化還元特性解析 TPO測定方法、およびTPR測定方法)
一方、用いた担持金属触媒の酸化還元特性を測るため、TPO(Temperatur
e-Programed Oxidation)による触媒解析を次のように行った。4
50℃で水素還元された還元状態の触媒(約0.5g)をin-situで室温まで冷却
し、気流を水素からHeに変えた後にパルス的にOガス(475μl)を与えて室温で
飽和(吸着)させる。そのまま、次に2.7体積%のO/Heを20ml/minで流
しながら20℃/minで加熱昇温し、出口に設けた質量分析計(キャノンアネルバ M-
400)で酸素の消費をモニターし、触媒が酸化される挙動を温度に対するプロファイル
として得た。
また、TPR(Temperature-Programed Reduction)
については、触媒調製工程の空気焼成段階で得た酸化された状態の触媒(約0.2g)に
ついて、TPOと同様の反応管、装置を用いてTPR分析を行った。具体的には、酸素を
含むガス気流下で500℃焼成後、TPR分室温まで冷却し、気流を2.7体積%のH
/Heを20ml/minで流しながら20℃/minで加熱昇温し、出口に設けた質量
分析計(キャノンアネルバ M-400)で水素の消費をモニターし、触媒が還元される
挙動を温度に対するプロファイルとして得た。
以下の実施例および比較例において、原料として使用したフルフラールは、市販フルフ
ラールを単蒸留精製したフルフラールである。この精製されたフルフラールの純度は99
%以上、不純物である硫黄の濃度は2ppm以下、酸価0.5mgKOH/g、過酸化物
価(POV)0.3meq/kg以下であった。以下、これを「原料フルフラール」とい
う。
(実施例1)
担体として比誘電率が20以上であるZrO(比表面積90m/g、ZrO含有
量97.7wt%、ZrOとHfOを合わせた含有量99.0wt%以上、SiO
含有量0.5wt%以下、バンドギャップエネルギー3.6eV以上)を用いて担持Pd
-K触媒(1質量%Pd-1質量%K/ZrO)を国際公開第2009/069714
号の実施例2に記載の方法に準じて調製した。当該ZrOの結晶形はモノクリニック型
であり、窒素吸着法によって測定された細孔径分布は、細孔のメディアン径が12nmで
あり、5nm以上50nm未満の細孔径を有する細孔は全細孔容積の95%以上、50n
m以上の細孔径を有する細孔は全細孔容積の5%以下であった。ZrOとHfO以外
の不純物は1wt%以下であった。当該ZrO担体を、用いて調製した触媒の細孔径分
布は、細孔のメディアン径が10nmで、5nm以上50nm未満の細孔径を有する細孔
が全細孔容積の95%以上、50nm以上の細孔径を有する細孔は全細孔容積の5%以下
であった。
調製した触媒0.75gを内径6mmφのパイレックス(登録商標)製反応管に装填し
、水素10Nml/min流通下で5~10℃/minで昇温した。触媒の温度が260
℃に達した後、約10分間同温度において同水素気流下で保持した。流通させるガスの組
成を水素40Nml/min、窒素1910Nml/Hrに変更した後、比重1.16の
原料フルフラールを3ml/hの割合で、気化器を通して反応管に導入した。
このとき反応管に供給される原料フルフラールのガス濃度は29体積%、水素/フルフ
ラールのモル比は0.05であった。
原料フルフラールの導入から2時間後、および6時間後に反応管出口からの留出ガスの
一部をGCに導入し、フラン、一酸化炭素、窒素およびその他の生成物について定量的に
分析した。以下の式より「フルフラール転化率(%)」、「フラン選択率(%)」、「フ
ルフリルアルコール選択率(%)」を求めた。
フルフラール転化率(%)=[1-{反応後フルフラール残量(mol)/フルフラー
ル供給量(mol)}]×100
フラン選択率(%)={フラン収率(%)/フルフラール転化率(%)}×100
フルフリルアルコール選択率(%)={フルフリルアルコール収率(%)/フルフラー
ル転化率(%)}×100
以上の分析の結果、圧力0.1MPa(絶対圧)、フルフラールのガス濃度29体積%
、水素/フルフラールのモル比0.05の条件下で前記ZrO担持Pd-K触媒を用い
て連続反応を行った場合、フルフラール導入から2時間後のフルフラール転化率は98%
、フラン選択率は99.5%であった。導入したフルフルラールのほとんどがフランに転
化された。6時間後の連続反応後の反応成績は、フルフラール転化率98%、フラン選択
率99.5%であり、触媒活性の低下は観察されなかった。
別途、前記ZrO担持Pd-K触媒0.5gを、質量分析計を備えたTPO装置の分
析管に装填し、水素気流下で450℃で還元した後にTPO分析を行ったところ、最大酸
素消費(ピーク)を示す温度は310℃、酸化度50%の酸素消費に至る温度は300℃
以上であった。
また、触媒調製工程の空気焼成段階で得た酸化された状態の前記ZrO担持Pd-K
触媒(約0.2g)について、酸素を含むガス気流下で500℃焼成後、TPR分析を行
ったところ、最大水素消費(ピーク)を示す温度は130℃であった。
(実施例2)
用いる担体を比誘電率が100以上のBaTiO(堺化学製、純度99.9wt%以
上、ペロブスカイト型、比表面積38m/g、バンドギャップ3.3eV以上)に変更
したこと以外は、実施例1と同様にBaTiO担持Pd-K触媒(1質量%Pd-1質
量%K/BaTiO)を調製した。
次に、調製した触媒0.75gを用いて、実施例1と同様の条件、操作でフルフラール
の脱カルボニル反応を行った。
フルフラール導入から2時間後のフルフラール転化率は93%、フラン選択率は99.
4%であった。6時間の連続反応後の反応成績は、フルフラール転化率93%、フラン選
択率99.5%であり、触媒活性の低下は観察されなかった。
別途、前記BaTiO担持Pd-K触媒0.5gを、質量分析計を備えたTPO装置
の分析管に装填し、水素気流下で450℃で還元した後にTPO分析を行ったところ、最
大酸素消費(ピーク)を示す温度は310℃、酸化度50%の酸素消費に至る温度は30
0℃以上であった。
また、触媒調製工程の空気焼成段階で得た酸化された状態の前記BaTiO担持Pd
-K触媒(約0.2g)について、酸素を含むガス気流下で500℃焼成後、TPR分析
を行ったところ、最大水素消費(ピーク)を示す温度は170℃であった。
(実施例3)
用いる担体を比誘電率が100以上のSrTiO(堺化学製、ペロブスカイト型、純
度99wt%以上、比表面積5m/g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にSr
TiO担持Pd-K触媒(0.5質量%Pd-0.5質量%K/SrTiO)を調製
した。
次に、調製した触媒1.50gを用いて、実施例1と同様の条件、操作でフルフラール
の脱カルボニル反応を行った。
フルフラール導入から2時間後のフルフラール転化率は59%、フラン選択率は99.
5%であった。6時間の連続反応後の反応成績は、フルフラール転化率59%、フラン選
択率99.6%であり、触媒活性の低下は観察されなかった。
別途、前記SrTiO担持Pd-K触媒1.0gを、質量分析計を備えたTPO装置
の分析管に装填し、水素気流下で450℃で還元した後にTPO分析を行ったところ、最
大酸素消費(ピーク)を示す温度は320℃、酸化度50%の酸素消費に至る温度は30
0℃以上であった。
(比較例1)
用いる担体を比誘電率が5以下のSiO(サンゴバン社SS69137、比表面積1
58m/g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にSiO担持Pd-K触媒(1
質量%Pd-1質量%K/SiO)を調製した。当該SiOはアモルファスであり、
窒素吸着法によって測定された細孔径分布は、細孔のメディアン径が110nmであり、
5nm以上50nm未満の細孔径を有する細孔が全細孔容積の85%を、50nm以上の
細孔径を有する細孔が全細孔容積の15%以上を占めていた。
次に、調製した触媒0.75gを用いて、実施例1と同様の条件、操作でフルフラール
の脱カルボニル反応を行った。フルフラール導入から2時間後のフルフラール転化率は9
5%、フラン選択率は99%であった。6時間の連続反応後の反応成績は、フルフラール
転化率85%、フラン選択率99%となり、触媒活性の経時的な低下が観察された。
別途、前記SiO担持Pd-K触媒0.5gを、質量分析計を備えたTPO装置の分
析管に装填し、水素気流下で450℃で還元した後にTPO分析を行ったところ、最大酸
素消費(ピーク)を示す温度は210℃、酸化度50%の酸素消費に至る温度は250℃
以下であった。
(比較例2)
用いる担体を比誘電率が10未満のγ-Al3(日揮触媒化成社N612、比表面積
178m/g、細孔容積0.35cc/g、純度94.4wt%)に変更したこと以外
は、実施例1と同様にγ-Al3担持Pd-K触媒(1質量%Pd-1質量%K/Al
3)を調製した。
次に、調製した触媒0.75gを用いて、実施例1と同様の条件、操作でフルフラール
の脱カルボニル反応を行った。フルフラール導入から2時間後のフルフラール転化率は9
8%、フラン選択率は98%であった。6時間の連続反応後の反応成績は、フルフラール
転化率88%、フラン選択率98%となり、触媒活性の経時的な低下が観察された。
別途、前記Al3担持Pd-K触媒0.5gを、質量分析計を備えたTPO装置の
分析管に装填し、水素気流下で450℃で還元した後にTPO分析を行ったところ、最大
酸素消費(ピーク)を示す温度は240℃、酸化度50%の酸素消費に至る温度は250
℃以下であった。
また、触媒調製工程の空気焼成段階で得た酸化された状態の前記Al3担持Pd-
K触媒(約0.2g)について、酸素を含むガス気流下で500℃焼成後、TPR分析を
行ったところ、最大水素消費(ピーク)を示す温度は230℃であった。
(実施例4)
実施例1のZrO担持Pd-K触媒(1質量%Pd-1質量%K/ZrO)0.7
5gを用いて、実施例1と同様の条件、操作でフルフラールの脱カルボニル反応を開始し
た。フルフラール導入から2時間後に供給するガスを フルフラールのガス濃度はそ
のままに水素を含まないガス(H/フルフラール/N=0.0/1.0/3.1)に
変更した。ガス組成の変更から3時間後のフルフラール転化率は84%、フラン選択率は
99.5%であった。その後、供給するガスをもとの組成(H/フルフラール/N
0.05/1.0/2.45)に変更した。再変更から1時間後の反応成績は、フルフラ
ール転化率は93%、フラン選択率は99.5%であり、触媒活性の回復が観察された。
(実施例5)
実施例2のBaTiO担持Pd-K触媒(1質量%Pd-1質量%K/BaTiO
)0.75gを用いて、実施例3と同様の条件、操作でフルフラールの脱カルボニル反応
を開始した。フルフラール導入から2時間後に供給するガスをフルフラールのガス濃度は
そのままに水素を含まないガス(H/フルフラール/N=0.0/1.0/3.1)
に変更した。ガス組成の変更から3時間後のフルフラール転化率は60%、フラン選択率
(%)は99.5%であった。その後、供給するガスをもとの組成(H/フルフラール
/N=0.05/1.0/2.45)に変更した。再変更から1時間後の反応成績は、
フルフラール転化率74%、フラン選択率99.5%であり、触媒活性の回復が観察され
た。
(比較例3)
比較例1のSiO担持Pd-K触媒(1質量%Pd-1質量%K/SiO
0.75gを用いて、実施例3と同様の条件、操作でフルフラールの脱カルボニル反応を
開始した。フルフラール導入から2時間後に供給するガスをフルフラールのガス濃度はそ
のままに水素を含まないガス(H/フルフラール/N=0.0/1.0/3.1)に
変更した。ガス組成の変更から2時間後のフルフラール転化率は5%以下となり、触媒活
性は急激に低下した。その後、供給するガスをもとの組成(H/フルフラール/N
0.05/1.0/2.45)に変更した。再変更から1時間後の反応成績は、フルフラ
ール転化率20%以下であり、触媒活性の回復割合は非常に小さいものであった。
(比較例4)
比較例2のAl3担持Pd-K触媒(1質量%Pd-1質量%K/Al3)0.
75gを用いて、実施例3と同様の条件、操作でフルフラールの脱カルボニル反応を開始
した。フルフラール導入から2時間後に供給するガスをフルフラールのガス濃度はそのま
まに水素を含まないガス(H/フルフラール/N=0.0/1.0/3.1)に変更
した。ガス組成の変更から2時間後のフルフラール転化率は2%以下となり、触媒活性は
急激に低下した。その後、供給するガスをもとの組成(H/フルフラール/N=0.
05/1.0/2.45)に変更した。再変更から1時間後の反応成績は、フルフラール
転化率45%以下であり、触媒活性の回復割合は非常に小さいものであった。
上述の実施例および比較例のデータを表1にまとめて示す。
Figure 0007192268000004
実施例1~3および比較例1、2の結果より、担持金属酸化物触媒の担体として比誘電
率の高い金属酸化物を含む担体を適用することにより、経時的な活性低下の小さい脱カル
ボニル触媒が得られ、効率的にフラン化合物を製造できることがわかる。
また、実施例1および比較例1の結果より、50nm以上の細孔径を有する細孔が10
%以下である担体を用いて調製された特定の細孔径分布を有する触媒を用いることで、触
媒の経時的な活性低下は抑制され、効率的にフラン化合物を製造できることがわかる。
実施例4、5および比較例3、4の結果より、担持金属酸化物触媒の担体として誘電率
の高い金属酸化物を含む担体を適用することにより、耐性の高い脱カルボニル触媒が得ら
れ、水素非共存下の脱カルボニル反応においても活性低下が小さく、安定的にフラン化合
物を製造できることがわかる。

Claims (7)

  1. 金属と担体とを有する担持金属触媒であって、
    該担体の比誘電率が20以上であり、
    前記担体の細孔径分布において、50nm以上の細孔径を有する細孔が、全細孔容積の
    10%以下である
    ことを特徴とする、フルフラール化合物の脱カルボニル触媒。
  2. 前記触媒が、前記金属として、周期表第8族、第9族、及び第10族からなる群から選
    ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、請求項1に記載のフルフラール化合物の脱
    カルボニル触媒。
  3. 前記触媒が、さらに、周期表第1族、第2族、第4族、及び第6族からなる群から選ば
    れる少なくとも1種の金属元素を含有する、請求項1または請求項2に記載のフルフラー
    ル化合物の脱カルボニル触媒。
  4. フルフラール化合物を脱カルボニルする工程を有するフラン化合物の製造方法であって
    、該脱カルボニル工程において、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒を用いること
    を特徴とする、フラン化合物の製造方法。
  5. 前記フルフラール化合物の純度が99質量%以上である、請求項4に記載のフラン化合
    物の製造方法。
  6. 前記フルフラール化合物を、予め気化させてガス状とし、少なくとも、該ガス状フルフ
    ラール化合物および水素を含む原料ガスを、前記触媒と接触させる、請求項4または請求
    項5に記載のフラン化合物の製造方法。
  7. 前記原料ガス中のフルフラール化合物の濃度が25体積%以上である、請求項4~6の
    いずれか一項に記載のフラン化合物の製造方法。
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