JP7192205B2 - コート剤および耐油紙 - Google Patents

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Description

本発明は、油脂成分を含む食品などの被包装材の包装に用いられる包装材料に耐油性を付与することができるコート剤、およびかかるコート剤を含有する層を少なくとも有する耐油紙に関する。
ハンバーガー、フライドポテト、フライドチキン等の油脂成分を含む食品の包装材料には、食品中の油脂成分をはじき、食品に接していない面に油脂成分がにじみ出ないようにするために、通常、食品に接する部分に耐油性を付与した紙が使用されている。紙に耐油性を付与する方法としては、例えば、フッ素系耐油剤の塗工層を紙面に設ける方法が挙げられる。
しかしながら、このようなフッ素系耐油剤を使用した耐油紙は、高温条件下において、耐油剤からフッ化水素、フッ化カルボニル、フッ酸などのフッ素化合物が発生することが明らかになり、食品包装に使用した場合は加熱調理中、あるいは使用後に廃棄されて焼却される際に、有害なフッ素化合物が発生するおそれがあるため、安全面や環境面で問題があった。
かかる課題に鑑み、フッ素系耐油剤に代えて、ポリビニルアルコール系化合物を用いた耐油紙が種々開発されている。
例えば特許文献1には、鹸化度が85~100%であり、かつ平均重合度が500~2500であるポリビニルアルコールで、木材パルプを主体とした原紙の少なくとも片面に1~8g/mの処理層を設けたことを特徴とする透湿性を有する耐油性包装材料が開示されている。
また特許文献2には、紙支持体の少なくとも片面に、水素結合性樹脂と吸油性粒子を含む耐油層を有することを特徴とする耐油性紙が開示されている。
さらに特許文献3には、疎水化デンプンと架橋剤を含む少なくとも1層の塗工層を基材の少なくとも片面に設けた耐油性シート状物が開示されている。
特開2004-68180号公報 特開2006-183221号公報 特開2010-13792号公報
しかしながら、これらの技術は、コート性および耐油性の向上に関して未だ不十分であった。また、特許文献2の技術においては、ポリビニルアルコール(水素結合性樹脂)とデンプン粒子(吸油性粒子)とを混合して製膜された耐油層にひび割れが生じて、耐油性が十分に発現されないことがあった。
本発明の目的は、上記課題を解決することであり、詳しくは、安全性や環境性が高く、ひび割れが生じ難く、耐油性に優れるコート層が得られるコート剤、およびかかるコート剤を含有する層を少なくとも有する耐油紙を提供することである。
しかるに本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の平均ケン化度を有するポリビニルアルコール系樹脂と、疎水化デンプンを除く多糖類とを含有する組成物をコート剤として用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、平均ケン化度が75~96モル%のポリビニルアルコール系樹脂と多糖類(ただし、疎水化デンプンを除く。)とを含有し、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記多糖類との重量比(ポリビニルアルコール系樹脂/多糖類)が1/9~9/1であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂が酸変性ポリビニルアルコール系樹脂であるコート剤である。
本発明のコート剤において、前記多糖類が疎水化デンプンを除くデンプンであることが好ましい。
また本発明の要旨は、本発明のコート剤を含有する層を有する耐油紙である。
本発明のコート剤によれば、安全性や環境性が高く、ひび割れが生じ難く、耐油性に優れるコート層が得られる。また、本発明の耐油紙は、かかるコート層を有するので、安全性や環境性が高く、ひび割れが生じ難く、耐油性に優れる。したがって、本発明の耐油紙は、油脂成分を含む食品などの被包装材の包装に用いられる包装材料として好適に用いることができる。
以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
〔コート剤〕
本発明のコート剤は、平均ケン化度が75~96モル%のポリビニルアルコール系樹脂と多糖類とを含有する。まず本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂について説明する。
(ポリビニルアルコール系樹脂)
本発明で用いられるポリビニルアルコール(以下、PVAという。)系樹脂としては、例えば、未変性のPVAや変性PVAが挙げられ、なかでも変性PVAとしては酸変性PVAが好ましく、さらにはカルボン酸変性PVAが好ましい。
変性PVAには、例えば、共重合変性PVAと後変性PVAとがある。その変性量としては、変性基の性質により異なるが、通常0.1~30モル%、好ましくは0.5~20モル%、特に好ましくは1~10モル%である。
上記の共重合変性PVAは、酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマーと、ビニルエステル系モノマーと共重合可能な他の不飽和単量体とを共重合させた後、ケン化することにより製造することができる。
未変性のPVAは、通常、酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマーを重合して得られる重合体をケン化することにより製造することができる。
未変性PVAであっても、あるいは共重合変性PVAであっても、ビニルエステル系モノマーの(共)重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより行うことができる。なかでも、反応熱を効率的に除去できる溶液重合を還流下で行うことが好ましい。溶液重合の溶媒としては、通常はアルコールが用いられ、好ましくは炭素数1~3の低級アルコールが用いられる。
得られた(共) 重合体のケン化についても、従来より行われている公知のケン化方法を採用することができる。すなわち、重合体をアルコール又は水/アルコール溶媒に溶解させた状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行うことができる。
前記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートを用いることができる。
通常、無水アルコール系溶媒下、アルカリ触媒を用いたエステル交換反応が反応速度の点や脂肪酸塩等の不純物を低減できるなどの点で好適に用いられる。
ケン化反応の反応温度は、通常20~60℃である。反応温度が低すぎると、反応速度が小さくなり反応効率が低下する傾向があり、高すぎると反応溶媒の沸点以上となる場合があり、製造面における安全性が低下する傾向がある。なお、耐圧性の高い塔式連続ケン化塔などを用いて高圧下でケン化する場合には、より高温、例えば、80~150℃でケン化することが可能であり、少量のケン化触媒も短時間、高ケン化度のものを得ることが可能である。
また、ケン化後、得られたPVA系樹脂を、洗浄液で洗浄することが好ましい。
かかる洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類が挙げられ、洗浄効率と乾燥効率の観点からメタノールが好ましい。
また、洗浄方法としては、連続式でもよいが、通常はバッチ式が採用される。浴比(洗浄液の重量/PVA系樹脂の重量)は、通常、1~30であり、特に2~20が好ましい。浴比が大きすぎると、大きな洗浄装置が必要となり、コスト増につながる傾向があり、浴比が小さすぎると、洗浄効果が低下し、洗浄回数を増加させる傾向がある。
洗浄時の温度は、通常、10~80℃であり、特に20~70℃が好ましい。温度が高すぎると、洗浄液の揮発量が多くなり、還流設備を必要とする傾向がある。温度が低すぎると、洗浄効率が低下する傾向がある。洗浄時間は、通常、5分間~12時間である。洗浄時間が長すぎると、生産効率が低下する傾向があり、洗浄時間が短すぎると、洗浄が不十分となる傾向がある。また、洗浄回数は、通常、1~10回であり、特に1~5回が好ましい。洗浄回数が多すぎると、生産性が悪くなり、コストがかかる傾向がある。
洗浄されたPVA系樹脂は、連続式またはバッチ式にて熱風などで乾燥される。乾燥温度は、通常、50~150℃である。乾燥温度が高すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥温度が低すぎると、乾燥に長時間を要する傾向がある。乾燥時間は、通常、1~48時間である。乾燥時間が長すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥時間が短すぎると、乾燥が不十分となったり、高温乾燥を要したりする傾向がある。
乾燥後のPVA系樹脂に含まれる溶媒の含有量は、通常、0~10重量%であり、特に好ましくは0.1~5重量%、さらに好ましくは0.1~1重量%である。
また、PVA系樹脂には、通常、ケン化時に用いるアルカリ触媒に由来する酢酸のアルカリ金属塩が含まれている。アルカリ金属塩の含有量は、PVA系樹脂に対して通常、0.001~2重量%、好ましくは0.005~1重量%であり、更に好ましくは0.01~0.1重量%である。
アルカリ金属塩の含有量の調整方法としては、例えば、ケン化時に用いるアルカリ触媒の量を調節する方法、エタノールやメタノールなどのアルコールでPVA系樹脂を洗浄する方法などが挙げられる。
本発明で用いるアルカリ金属塩の定量法としては、例えば、PVA系樹脂粉体を水に溶かして、メチルオレンジを指示薬とし、塩酸にて中和滴定を行い、アルカリ金属塩の含有量を求める方法が挙げられる。
ビニルエステル系モノマーと共重合可能な上記他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、そのモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド;アリルトリメチルアンモニウムクロライド;ジメチルアリルビニルケトン;N-ビニルピロリドン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン等のポリオキシアルキレンアリルアミン;ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレンビニルアミン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類あるいはそのアシル化物、ビニルエチレンカーボネート;2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン;グリセリンモノアリルエーテル;3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のビニル化合物;酢酸イソプロペニル;1-メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
また、共重合変性PVAとして、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂が挙げられる。かかるPVA系樹脂としては、例えば、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル等を共重合して得られる、側鎖に1,2-ジオール結合を有するPVA系樹脂;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート等を共重合して得られる側鎖にヒドロキシメチル基を有するPVA系樹脂が挙げられる。
上記の側鎖に1,2-ジオール結合を有するPVA系樹脂は、例えば、(ア)ビニルエステル系モノマーと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)ビニルエステル系モノマーとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)ビニルエステル系モノマーと2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)ビニルエステル系モノマーとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法等により得られる。
前記の後変性PVAは、未変性のPVAを後変性することにより製造することができる。かかる後変性の方法としては、未変性のPVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
本発明においては、PVA系樹脂として、上記の各種PVA系樹脂のうち1種を単独で使用し、または2種以上を混合して併用することができ、例えば、未変性PVAと変性PVAとを組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられるPVA系樹脂の平均ケン化度(JIS K 6726 3.5に準拠して測定)は、75~96モル%であり、好ましくは78~95モル%、特に好ましくは80~92モル%、更に好ましくは80~90モル%、殊に好ましくは80~88モル%である。平均ケン化度が低すぎても高すぎてもコート層にひび割れが生じ易くなる傾向がある。
PVA系樹脂の重合度は一般的に水溶液の粘度で示すことができ、未変性PVAおよび変性PVAのいずれについても、PVA系樹脂の20℃における4重量%水溶液での粘度は、5~100mPa・sであることが好ましく、特には13~70mPa・s、さらには17~40mPa・sであることが好ましい。かかる粘度が小さすぎると、コート剤から形成されるコート層の機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると製膜時の水溶液粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
なお、20℃における4重量%水溶液での粘度は、JIS K 6726 3.11.2に準じて測定される。
PVA系樹脂の形状は通常、粉末、顆粒、ペレットなどが挙げられ、粉末や顆粒が好ましい。また、PVA系樹脂の平均粒子径は、通常、1~200μm、好ましくは5~170μm、特に好ましくは10~150μmである。平均粒子径が小さすぎると飛散するなどして扱いが困難となる傾向があり、大きすぎると錠剤の強度が低下する傾向がある。
なお、本発明におけるPVA系樹脂の平均粒子径は、レーザー回折で粒径別の体積分布を測定し、積算値(累積分布)が50%になる50%粒子径である。
(多糖類)
本発明で用いられる多糖類とは、種々の単糖類の縮重合による生体高分子であり、さらにそれらをもとに化学修飾したものも包含される。
多糖類としては、例えば、デンプン、グルコース誘導体、フルクトース誘導体、N-アセチルグルコサミン誘導体などが挙げられる。デンプンとしては、例えば、アミロース、アミロペクチン、マルトデキストリンなどが挙げられる。グルコース誘導体としては、例えば、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;プルラン;カードラン;キサンタンなどが挙げられる。フルクトース誘導体としては、例えば、フルクタン、イヌリンが挙げられる。N-アセチルグルコサミン誘導体としては、例えば、キチン、キトサンなどが挙げられる。
これら多糖類の中から選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
多糖類の中でもデンプンが好ましい。本発明で用いられるデンプンとしては、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、コムギデンプン、キッサバデンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、モロコシデンプン、コメデンプン、マメデンプン、クズデンプン、ワラビデンプン、ハスデンプン、ヒシデンプン等の生デンプン(自家変性デンプン):α-デンプン、分別アミロース、湿熱処理デンプン、熱化学変性デンプンなどの物理的変性デンプン:加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロースなどの酵素変性デンプン;酸処理デンプン、次亜塩素酸酸化デンプンなどの酸化デンプン、ジアルデヒドデンプンなどの化学分解変性デンプン;エステル化デンプン、エーテル化デンプン、カチオン化デンプン、架橋デンプンなどの化学変性デンプン誘導体などが挙げられる。
なお、化学変性デンプン誘導体のうちエステル化デンプンとしては、例えば、酢酸エステル化デンプン、コハク酸エステル化デンプン、硝酸エステル化デンプン、リン酸エステル化デンプン、尿素リン酸エステル化デンプン、キサントゲン酸エステル化デンプン、アセト酢酸エステル化デンプン、カルバミン酸エステル化デンプンなどが挙げられる。エーテル化デンプンとしては、例えば、アリルエーテル化デンプン、メチルエーテル化デンプン、カルボキシエーテル化デンプン、カルボキシメチルエーテル化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプンなどが挙げられる。ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン、カチオン化デンプンとしては、例えば、デンプンと2-ジエチルアミノエチルクロライドの反応物、デンプンと2,3 -エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの反応物などが挙げられる。架橋デンプンとしては、例えば、ホルムアルデヒド架橋デンプン、エビクロルヒドリン架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、アクロレイン架橋デンプンなどが挙げられる。これらの中でも入手の容易さや経済性点からトウモロコシデンプンが実用的である。
これらデンプンの中から選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては疎水化デンプンを除く多糖類が用いられる。疎水化デンプンとは、疎水化処理されたデンプンであり、上記のデンプンのうち特に生デンプンに疎水化処理がされたものを指す。疎水化処理とは、デンプンをアルミン酸アルカリまたは水酸化アルカリの存在下でオルガノシラン水溶液と密に接触させる方法、シリコーンやアルケニルで誘導体化する方法、水性系においてオクテニルコハク酸無水物またはドゼセニルコハク酸無水物とデンプンを反応させる方法、デンプンにアクリロニトリル等の疎水性モノマーや疎水性不飽和単量体を共重合させる方法、エーテル化やエステル化により炭化水素基を含む疎水基をデンプンに付与させる方法、コハク酸デンプンアルキルとする方法である。
本発明においては、上記のように疎水化されていないデンプン、例えば未変性デンプンが好ましい。
デンプンなどの多糖類の平均粒子径は、0.1~100μmが好ましく、特に好ましくは1~50μm、さらに好ましくは3~20μmである。多糖類の平均粒子径は、多糖類の水分散物について光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置を用いて測定した値である。なお、トウモロコシデンプンは平均粒子径が15μm、タピオカデンプンは平均粒子径が20μm、馬鈴薯デンプンは平均粒子径が40μmである。
本発明のコート剤に含有されるPVA系樹脂と多糖類との重量比(PVA系樹脂/多糖類)は、好ましくは1/9~9/1であり、特に好ましくは2/8~8/2、さらに好ましくは3/7~7/3である。PVA系樹脂と多糖類との重量比を上記範囲内とすることにより、耐油性と耐水性の両方に優れた耐油紙を得ることができる。
(他の添加剤)
本発明のコート剤は、必要に応じて、架橋剤、無機層状化合物、他の非水溶性樹脂、顔料、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤などの各種添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量は、コート剤の全固形分重量に対して、好ましくは30重量%以下であり、特に好ましくは10重量質量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
本発明のコート剤が含有し得る架橋剤としては、PVAの架橋剤として使用される架橋剤であれば特に限定されず、例えば、ホウ酸などのホウ素化合物、オキサゾリン基を有する化合物、グリオキザール誘導体、グリオキシル酸金属塩、メチロール誘導体、エピクロルヒドリン誘導体などのエポキシ化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン、ヒドラジド誘導体、カルボジイミド誘導体などが挙げられる。これら架橋剤の中から選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、PVAがカルボン酸変性PVAである場合には、耐水性の点でエポキシ化合物が好ましく、さらにはエピクロルヒドリン誘導体が特に好ましい。さらに、エピクロルヒドリン誘導体としては、例えば、ポリアミドポリアミンにエピクロロヒドリンを付加した化合物が特に好ましい。
本発明のコート剤が架橋剤を含有することにより、コート層の耐水性をさらに向上させることができる。
本発明のコート剤が含有し得る無機層状化合物としては、例えば、天然マイカ、合成マイカ、スメクタイト、モンモリロナイトなどの粘土鉱物、合成スメクタイトなどが挙げられる。
本発明のコート剤が無機層状化合物を含有することにより、コート層の耐油性や耐水性をさらに向上させることができる。
本発明のコート剤が含有し得る他の非水溶性樹脂としては、ガラス転移温度が50℃以下の非水溶性樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、カルボキシメチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂とワックスの混合物、スチレン・アクリル系樹脂とワックスの混合物等を挙げることができる。中でも、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂またはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、本発明のコート剤はスチレン・ブタジエンゴムを含有していてもよい。
本発明のコート剤が非水溶性樹脂を含有することにより、優れた耐水性を発揮することができる。
本発明のコート剤が含有し得る顔料としては、無機顔料や有機顔料等の各種顔料が挙げられる。無機顔料の具体例としては、例えば、カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、焼成カオリン、合成マイカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物が挙げられる。中でもカオリンは優れた耐油性と耐水性を示すので好ましく用いられる。また、有機顔料の具体例としては、密実型、中空型、または貫通孔型粒子等が挙げられ、例えば、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類;ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類;酢酸ビニル;スチレン;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;メチルビニルエーテル等のビニル系モノマーの重合体や共重合体類;ポリウレタン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;尿素系樹脂;メラミン系樹脂;ベンゾグアナミン系樹脂などが挙げられる。
これら顔料の中から選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
(コート剤の調製)
本発明のコート剤は、上記成分を混合し撹拌することによって作製でき、流動性のある粉体混合物や溶液または懸濁液などとして得ることができる。例えば、濃度が0.1~80重量%のPVA系樹脂溶液と、濃度が0.1~50重量%の多糖類分散液とを混合し、さらに必要に応じて、他の成分を混合することにより本発明のコート剤が得られる。
撹拌は、プロペラ式ミキサー、プラネタリーミキサー、ハイブリッドミキサー、ニーダー、乳化用ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等の各種撹拌装置を適宜選択して行うことができる。また、必要に応じて加熱または冷却しながら撹拌することもできる。
〔耐油紙〕
本発明の耐油紙は、本発明のコート剤を含有する層を有する耐油紙であり、紙基材の少なくとも片面にコート剤を含有する層(コート層)を有する。
(紙基材)
本発明のコート剤を塗工する紙基材としては特に限定されず、例えば、坪量30~500g/m程度の上質紙、中質紙、塗工紙、微塗工紙、グラシン紙、未晒または晒クラフト紙(酸性紙または中性紙)、片艶紙、クラフト紙、板紙(段ボール用、建材用、白ボ-ル用、チップボ-ル用など)、白板紙、マニラボールなどが挙げられる。なお、紙基材にサイズ剤や硫酸バンドなどの添加剤を含有させてもよい。
紙基材を構成するパルプとしては、通常製紙用として使用されるあらゆるものが使用できる。例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)などの化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ;などが使用できる。さらには、コットン、コットンリンター、麻、バガス、ケナフ、エスパルト、楮、三椏、雁皮などの非木材パルプ;合成パルプ、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維;無機繊維;なども必要に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
紙基材の厚みは、好ましくは30μm以上であり、特に好ましくは40μm以上である。また、紙基材の厚みは、好ましくは500μm以下であり、特に好ましくは300μm以下である。基材の厚みを上記範囲内とすることにより、適度な強度を有することができ、コート剤の塗工適性を高めることができる。
紙基材は添加剤をさらに含有していてもよい。かかる添加剤としては、例えば、ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸などのサイズ剤;硫酸バンド、カチオン性高分子電解質などの定着剤;クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、無定形シリカ、尿素-ホルマリン樹脂粒子などの填料類;ポリアクリルアミド系ポリマー、デンプンなどの紙力増強剤;メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド-ポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂などの湿潤紙力増強剤、その他、濾水剤、青み付けなどの色調調整用の染料、蛍光染料など各種添加剤を挙げることができる。
(紙基材の製造)
紙基材は、常法にて各種抄紙機により抄紙され、湿紙を形成した後、乾燥させることにより得ることができる。なお、紙基材には、必要に応じて、デンプン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、填料などを含んでいてもよく、表面サイズプレス処理マシンカレンダーなどによる平滑化処理などの常法による処理工程を経て製造することができる。
使用される抄紙機としては、例えば、エアクッションヘッドボックスやハイドロリックヘッドボックスを有する長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ型ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機などを挙げることができる。
(耐油紙の製造)
本発明の耐油紙は、例えば、紙基材の少なくとも片面に本発明のコート剤を含む塗工液を塗工し、乾燥させることにより製造することができる。
塗工液の塗工方法としては特に限定されず、例えば、アプリケーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、スライドビードコーター、ツーロールあるいはロッドメタリング方式のサイズプレスコーター、ビルロッドメタリングサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター、キャレンダーによるニップコーターなどが適宜用いられる。中でも、生産効率を高めるために、バーコーター、ブレードコーターまたはロッドメタリングサイズプレスコーターを用いることが好ましく、ロッドメタリングサイズプレスコーターを用いることが特に好ましい。
コート層の塗工量(乾燥後)は、好ましくは0.1~20g/m2、特に好ましくは0.5~15g/m2である。コート層の塗工量を上記範囲内とすることにより、十分な耐油性能を発揮し得る耐油層を得ることができる。
本発明では、紙基材の少なくとも片面にコート層が1層のみ設けられていてもよいが、基材の少なくとも片面にコート層が複数層設けられていてもよい。また、紙基材の両面にコート層が設けられていてもよい。
基材の片面にコート剤を塗工した後には、そのコート剤を乾燥させる工程が設けられる。また本発明では、コート層の形成後に、必要に応じて、平滑化処理を行なってもよい。平滑化処理は、通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダーなどの平滑化処理装置を用いて、オンマシンまたはオフマシンで行われる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例中「部」および「%」とあるのは重量基準である。
また、下記実施例および比較例中におけるPVA系樹脂の4%粘度、平均ケン化度は前述の方法に従って測定した。
〔PVA(1)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル100部、メタノール26部、マレイン酸モノメチル0.1部(酢酸ビニル総量に対して0.09モル%)を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で60℃まで上昇させてから、重合触媒としてt-ブチルパーオキシネオデカノエート(半減期が1時間になる温度が65℃)を0.001モル%(酢酸ビニル総量に対して)投入し、重合を開始した。重合開始直後にマレイン酸モノメチル2部(酢酸ビニル総量に対して2モル%)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート0.008モル%(酢酸ビニル総量に対して)を重合速度に合わせて連続追加し、酢酸ビニルの重合率が73%となった時点で、4-メトキシフェノールを0.01部および希釈・冷却用メタノールを58部添加して重合を終了した。
続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整して水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して30ミリモルとなる割合で混合し、温度を40~50℃にてケン化反応を行った。ケン化反応により固化した樹脂をカットし、70℃で乾燥し、カルボキシル基含有するPVA(1)を得た(4%粘度22. 7mPa・s、平均ケン化度81. 4モル%)。
〔PVA(2)~PVA(7)〕
上記のPVA(1)の製造において、ケン化時間を変更した以外は同様にして、表1に示すPVA(2)~PVA(4)を得た。また、以下の実施例および比較例で表1に示すPVA(5)~PVA(7)を用いた。
Figure 0007192205000001
(実施例1~6、比較例1)
(1)ひび割れ評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液、PVA(1)~PVA(7)の各10%水溶液を5/5の配合比で混合した後、10cm×10cmのPET製の型枠に13g流し入れ、23℃×50%RH×3日間の風乾(乾燥後の膜厚約100μm)を行なって、ひび割れ評価用サンプルを作製した。
(1-1)ひび割れ評価
上記で作製した各サンプルについて乾燥後のひび割れの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表2に示す。
ひび割れがないもの:〇
部分的にひび割れが発生したもの:△
全体的にひび割れが発生したもの:×
(2)耐油性評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液、PVA(1)~PVA(7)の各10%水溶液を5/5の配合比で混合して得られた配合液を、市販コピー紙(OSTクリーンコピー、坪量64g/m)に50μmのアプリケーターで塗工し、70℃×5分間の乾燥を行ない、膜厚5μmのコート層を形成して、耐油性評価用サンプルを作製した。なお、PVAを配合せず、日食コーンスターチYのみで作成したサンプルを対照とした。
(2-2)耐油性評価
上記で作製した各サンプルについてサンプル表面に食用油を0.2g滴下し、15秒後の染み込みの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表2に示す。
浸み込みが全くなかったもの:◎
わずかに染み込みが見られたもの:〇
部分的に染み込みが見られたもの:△
全体的に染み込みが見られたもの:×
Figure 0007192205000002
表2に示すとおり、本発明のコート剤を含有する層(コート層)を有する耐油紙は、平均ケン化度が本発明の規定範囲外のPVA系樹脂を用いた比較例1と比べて、ひび割れが生じ難く、耐油性に優れる。なお、本発明のコート剤はフッ素系化合物を含有しないため、安全性や環境性も高い。
(実施例7~10)
(1)ひび割れ評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液、PVA(1)~PVA(7)の各10%水溶液を7/3の配合比で混合した後、10cm×10cmのPET製の型枠に13g流し入れ、23℃×50%RH×3日間の風乾(乾燥後の膜厚約100μm)を行なって、ひび割れ評価用サンプルを作製した。
(1-1)ひび割れ評価
上記で作製した各サンプルについて乾燥後のひび割れの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表3に示す。
ひび割れがないもの:〇
部分的にひび割れが発生したもの:△
全体的にひび割れが発生したもの:×
(2)耐油性評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液、PVA(1)~PVA(7)の各10%水溶液を7/3の配合比で混合して得られた配合液を、市販コピー紙(OSTクリーンコピー、坪量64g/m)に50μmのアプリケーターで塗工し、70℃×5分間の乾燥を行ない、膜厚5μmのコート層を形成して、耐油性評価用サンプルを作製した。なお、PVAを配合せず、日食コーンスターチYのみで作成したサンプルを対照とした。
(2-2)耐油性評価
上記で作製した各サンプルについてサンプル表面に食用油を0.2g滴下し、15秒後の染み込みの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表3に示す。
浸み込みが全くなかったもの:◎
わずかに染み込みが見られたもの:〇
部分的に染み込みが見られたもの:△
全体的に染み込みが見られたもの:×
Figure 0007192205000003
表3に示すとおり、本発明のコート剤を含有する層(コート層)を有する耐油紙は、トウモロコシデンプン/PVAの配合比(重量)が7/3であり、コート層にひび割れが生じ易い条件であっても、ひび割れの発生を抑えることができ、耐油性にも優れる。
(比較例2)
(1)ひび割れ評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液を用いず、疎水化デンプンのオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム(商品名:オクティエ、日澱化学株式会社製)の10%水分散液を用いた以外は同様に、PVA(3)の10%水溶液を5/5の配合比で混合した後、10cm×10cmのPET製の型枠に13g流し入れ、23℃×50%RH×3日間の風乾(乾燥後の膜厚約100μm)を行なって、ひび割れ評価用サンプルを作製した。
(1-1)ひび割れ評価
上記で作製した各サンプルについて乾燥後のひび割れの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表4に示す。
ひび割れがないもの:〇
部分的にひび割れが発生したもの:△
全体的にひび割れが発生したもの:×
(2)耐油性評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液を用いず、疎水化デンプンのオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム(商品名:オクティエ、日澱化学株式会社製)の10%水分散液を用いた以外は同様に、PVA(3)の10%水溶液を5/5の配合比で混合して得られた配合液を、市販コピー紙(OSTクリーンコピー、坪量64g/m)に50μmのアプリケーターで塗工し、70℃×5分間の乾燥を行ない、膜厚5μmのコート層を形成して、耐油性評価用サンプルを作製した。
(2-2)耐油性評価
上記で作製した各サンプルについてサンプル表面に食用油を0.2g滴下し、15秒後の染み込みの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表4に示す。
浸み込みが全くなかったもの:◎
わずかに染み込みが見られたもの:〇
部分的に染み込みが見られたもの:△
全体的に染み込みが見られたもの:×
Figure 0007192205000004
(比較例3)
(1)ひび割れ評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液を用いず、疎水化デンプンのオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム(商品名:オクティエ、日澱化学株式会社製)の10%水分散液を用いた以外は同様に、PVA(3)の10%水溶液を7/3の配合比で混合した後、10cm×10cmのPET製の型枠に13g流し入れ、23℃×50%RH×3日間の風乾(乾燥後の膜厚約100μm)を行なって、ひび割れ評価用サンプルを作製した。
(1-1)ひび割れ評価
上記で作製した各サンプルについて乾燥後のひび割れの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表5に示す。
ひび割れがないもの:〇
部分的にひび割れが発生したもの:△
全体的にひび割れが発生したもの:×
(2)耐油性評価用サンプルの作製
トウモロコシデンプン(商品名:日食コーンスターチY、日本食品化工株式会社製)の10%水分散液を用いず、疎水化デンプンのオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム(商品名:オクティエ、日澱化学株式会社製)の10%水分散液を用いた以外は同様に、PVA(3)の10%水溶液を7/3の配合比で混合して得られた配合液を、市販コピー紙(OSTクリーンコピー、坪量64g/m)に50μmのアプリケーターで塗工し、70℃×5分間の乾燥を行ない、膜厚5μmのコート層を形成して、耐油性評価用サンプルを作製した。
(2-2)耐油性評価
上記で作製した各サンプルについてサンプル表面に食用油を0.2g滴下し、15秒後の染み込みの有無を下記評価基準に従い目視で評価した。結果を表5に示す。
浸み込みが全くなかったもの:◎
わずかに染み込みが見られたもの:〇
部分的に染み込みが見られたもの:△
全体的に染み込みが見られたもの:×
Figure 0007192205000005
本発明のコート剤は、油脂成分を含む食品の包装材料に用いられる耐油紙に好適に利用することができる。また本発明の耐油紙は、ハンバーガー、フライドポテト、フライドチキンなどのファーストフード食品;天ぷら、トンカツ、サラダなどの惣菜;チョコレート、ピザ、ドーナツなどの菓子;などの油脂成分を含む食品を包装または梱包するための包装用紙、容器、化粧板原紙として利用することができる。

Claims (3)

  1. 平均ケン化度が75~96モル%のポリビニルアルコール系樹脂と多糖類(ただし、疎水化デンプンを除く。)とを含有し、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記多糖類との重量比(ポリビニルアルコール系樹脂/多糖類)が1/9~9/1であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂が酸変性ポリビニルアルコール系樹脂であるコート剤。
  2. 前記多糖類が、疎水化デンプンを除くデンプンである請求項1に記載のコート剤。
  3. 請求項1または2に記載のコート剤を含有する層を有する耐油紙。
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