JP2018053374A - 耐油紙及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明の耐油紙の製造方法は、上記の優れた耐油性を有した耐油紙を製造することができる。
本実施形態の耐油紙は、紙基材の少なくとも片面に塗工層を有する。当該塗工層は、紙基材に近い側から下塗り塗工層と上塗り塗工層をこの順に含む多層構造を有している。更に下塗り塗工層と上塗り塗工層はいずれも、デンプン及びその誘導体の少なくとも1種と、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスの少なくとも1種とを含有している。このような構成とすることによって、下塗り塗工層と上塗り塗工層の相乗効果が生まれ、油分の抜けや油分のしみが発生することを防止することが可能となり、薄葉の耐油紙であっても高いレベルの耐油性を発現させることが可能となった。
塗工層は、紙基材の片面にのみ形成されていてもよいし、紙基材の両面に形成されていてもよい。耐油紙の表面と裏面とで耐油性能に明確な差異を設けて使用するときは、紙基材の片面にのみ塗工層を形成するとよい。また、紙基材の両面に塗工層を形成すると、表面と裏面の両方から油分の浸透を防止することができるので、耐油紙の表裏を区別することなく使用することができ、より一層本実施形態の特徴を生かすことができるので好ましい。
デンプン類は、特に限定されず、各種公知のものの中から適宜選択して使用することができる。デンプンとしては、例えばデンプンの原料からみると、トウモロコシ、馬鈴薯、小麦、米、タピオカ、甘藷等を原料とするデンプンを使用することができる。また、これらのデンプンを2種類以上組み合わせて使用することもできる。塗工層にデンプン類が含有されていると、製袋時等に機械等で表面をこすられたときに、塊状の塗膜粕の発生を低減させることができる。
パラフィンワックス類は、一般に撥油性がないとされている。しかし、本発明者らは、下塗り塗工層及び上塗り塗工層にパラフィンワックス類を含有させることにより、デンプン類の有する耐油性をさらに向上できることを見出した。パラフィンワックス類の中でも、酸化デンプンまたは疎水化デンプンとの相溶性に優れ、耐油性をより一層高める観点から、アニオン系パラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスは、酸化ワックスであってもよい。
下塗り塗工層を構成する成分としては、紙基材上に皮膜を形成し、油分のしみと拡がりを抑制するという観点から、デンプン類が主成分であることが好ましい。ここで、主成分とは、デンプン類の合計の含有量が下塗り塗工層の全固形分中50質量%以上であることを意味している。さらに、下塗り塗工層中のデンプン類の合計の含有量は、下塗り塗工層の全固形分中50〜95質量%が好ましく、65〜95質量%がより好ましく、75〜95質量%が更に好ましい。デンプン類の合計の含有量を50質量%以上とすることにより、油分のしみと拡がりを効果的に抑制することができる。一方、デンプン類の合計の含有量が95質量%以上であると、パラフィンワックス類が少なくなるので、満足できる油分のしみの抑制効果が得られない。
本実施形態の耐油紙において、例えば表面側が専ら油分に接するときは、製袋時や製函時の加工性を向上させるために、紙基材の裏面の上塗り塗工層が、無機微粒子をさらに含有することが好ましい。上塗り塗工層に無機微粒子を含有させることによって、紙間の摩擦係数を増大させて、製袋時や製函時の滑りやブロッキングを防止することができるため、加工性を向上させることができる。
耐油紙に用いる紙基材は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができる。紙基材としては、例えば、晒または未晒クラフト紙、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、板紙、白板紙、ライナー、セミグラシン紙、グラシン紙、片艶紙、パーチメント紙等が挙げられる。
<紙基材の製造方法>
紙基材は、常法により各種抄紙機により抄紙され、湿紙を形成した後、乾燥させることにより得ることができる。その後、表面サイズプレス処理マシンカレンダー等による平滑化処理等、常法による処理工程を経て製造される。
塗工液は、前記の各種成分の他に、バインダー、顔料、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤等の各種助剤を適宜添加して、調製される。塗工液の溶剤としては、通常、水が使用される。下塗り塗工層用塗工液の濃度は、固形分の濃度で、2〜10質量%が好ましく、4〜8質量%がより好ましい。上塗り塗工層用塗工液の濃度は、固形分の濃度で、10〜20質量%が好ましく、12〜18質量%がより好ましい。下塗り塗工層用塗工液の濃度を2〜10質量%とすることにより、紙基材になるべく浸透させて、油分のしみの拡がりを効果的に抑えることができる。一方、上塗り塗工層用塗工液の濃度を10〜20質量%とすることにより、紙基材になるべく浸透させずに塗工層として油分の浸透をブロックすることができる。すなわち、下塗り塗工層用塗工液よりも上塗り塗工層用塗工液の方が濃度が高く、耐油紙の上塗り塗工層から下塗り塗工層にかけて塗工液に濃度勾配があることが好ましい。
紙基材の少なくとも片面に、下塗り塗工層用塗工液を塗工し、引き続き乾燥機を通して、塗工液を乾燥させる。次に、上塗り塗工層用塗工液を塗工し、引き続き乾燥機を通して、塗工液を乾燥させることによって、各塗工層を形成することができる。
[下塗り塗工層用塗工液(A液)の調製]
固形分換算の部数で、酸化デンプン(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製、分子量8.7万)65部、パラフィンワックス(商品名:サイズパインSPW−116H、荒川化学社製)35部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度8%の下塗り塗工層用塗工液(A液)を得た。なお、上記部数は乾燥後の固形分換算の部数である。酸化デンプンは、まず22%水溶液を調製し、その後パラフィンワックスと混合して塗工液を調製し、塗工に供した(以下、B液〜N液も同様である)。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製、分子量8.7万)65部、パラフィンワックス(商品名:サイズパインSPW−116H、荒川化学社製)35部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(B液)(耐油面用塗工液)を得た。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製、分子量8.7万)65部、パラフィンワックス(商品名:サイズパインSPW−116H、荒川化学社製)35部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(C液)(裏面用塗工液)を得た。
カナダ標準フリーネスが220mlとなるようレファイナーで調整したLBKPからなるパルプを用い、坪量43.6g/m2で抄造した非塗工紙を紙基材として用いた。この紙基材の両面に、ポンドサイズプレスコーターにて、A液を乾燥後の塗工量が両面で3g/m2となるように塗工し、乾燥させることにより、下塗り塗工層が形成された下塗り原紙を得た。この下塗り原紙を用いて、フィルムトランスファーコーターとしてロッドメタリングサイズプレスコーター(ロッドメタリングサイザーともいう)にて、一方の面にB液を乾燥後の塗工量が1.7g/m2となるように塗工し、他方の面にC液を乾燥後の塗工量が1.7g/m2となるように塗工し、乾燥させた。得られた耐油紙の坪量は50g/m2であった。
[下塗り塗工層用塗工液(D液)の調製]
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)85部、パラフィンワックス(SPW−116H)15部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度8%の下塗り塗工層用塗工液(D液)を得た。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)85部、パラフィンワックス(SPW−116H)15部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(E液)(耐油面用塗工液)を得た。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)85部、パラフィンワックス(SPW−116H)15部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(F液)(裏面用塗工液)を得た。
実施例1の耐油紙の作製において、A液に代えてD液を用い、B液に代えてE液を用い、C液に代えてF液を用いた以外は、実施例1と同様にして耐油紙を得た。
[下塗り塗工層用塗工液(G液)の調製]
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)95部、パラフィンワックス(SPW−116H)5部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度8%の下塗り塗工層用塗工液(G液)を得た。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)95部、パラフィンワックス(SPW−116H)5部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(H液)(耐油面用塗工液)を得た。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)95部、パラフィンワックス(SPW−116H)5部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(I液)(裏面用塗工液)を得た。
実施例1の耐油紙の作製において、A液に代えてG液を用い、B液に代えてH液を用い、C液に代えてI液を用いた以外は、実施例1と同様にして耐油紙を得た。
[上塗り塗工層用塗工液(J液)の調製]
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)30部、パラフィンワックス(SPW−116H)15部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−97、ファイマテック社製)55部からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(J液)(裏面用塗工液)を得た。
実施例2の耐油紙の作製において、F液に代えてJ液を用いた以外は、実施例2と同様にして耐油紙を得た。
[下塗り塗工層用塗工液(K液)の調製]
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)45部、パラフィンワックス(SPW−116H)55部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度8%の下塗り塗工層用塗工液(K液)を得た。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)45部、パラフィンワックス(SPW−116H)55部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(L液)(耐油面用塗工液)を得た。
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)45部、パラフィンワックス(SPW−116H)55部、からなる組成物を混合し、水を加えて固形分濃度15%の上塗り塗工層用塗工液(M液)(裏面用塗工液)を得た。
実施例1の耐油紙の作製において、A液に代えてK液を用いて、B液に代えてL液を用いて、C液に代えてM液を用いた以外は、実施例1と同様にして耐油紙を得た。
[耐油紙の作製]
実施例2の耐油紙の作製において、A液に代えて水を用いた以外は、実施例2と同様にして耐油紙を得た。
[下塗り塗工層用塗工液(N液)の調製]
固形分換算の部数で、酸化デンプン(エースA)100部からなる水溶液を作製し、水を加えて固形分濃度8%の下塗り塗工層用塗工液(N液)を得た。
実施例2の耐油紙の作製において、A液に代えてN液を用いた以外は、実施例2と同様にして耐油紙を得た。
TAPPI UM−557法(キット法)により耐油紙の表面側の塗工面の耐油度を測定した。本評価において耐油度は5級以上が好ましいと判定した。
耐油紙の表面側の塗工面上に、サラダ油を含浸させた3×3cmの正方形のろ紙を載せた。30分経過後、ろ紙を取り除き、油を拭き取った後、耐油紙への油のしみ広がりを目視観察し、下記の基準で評価した。3級以上が好ましいと判定した。
5級:全くしみが見えない。
4級:小さなしみがほとんど見られない。
3級:しみが僅かに見られるが、その広がりがほとんどない。
2級:しみが広がって見られるが、その広がりが不完全なろ紙(正方形)の形である。
1級:しみが著しく、完全なろ紙(正方形)の形まで広がっている。
白色のコピー用紙の上に2枚の耐油紙を、裏面側を向い合せて重ねて載せた。耐油紙の表面側の塗工面上に、サラダ油を1滴のせ、4×4cmのプラスチック板を更に載せ、更にプラスチック板の上に100gの重りを載せた。30分経過後の、耐油紙の下に敷いたコピー用紙への油の抜けを目視観察し、下記の基準で評価した。○以上が好ましいと判定した。
◎:全く油が抜けず、コピー用紙に油のしみが全く見られない。
○:油抜けがほとんどなく、コピー用紙に油のしみがほとんどみられない。
△:油が抜けており、コピー用紙に小さなしみが数点見られる。
×:油が著しく抜けており、コピー用紙に大きなしみが見られる。
摩擦係数測定機(佐川製作所製)上にA4にカットされた2枚の耐油紙を、裏面側を向い合せて重ねて載せた。その上に6×10cmの寸法の1000gの重りを更に載せ、下側の耐油紙を固定したまま、上側の耐油紙に載せた重りを150mm/minの速度で45mm引張った。このときの耐油紙の裏面同士の静摩擦係数を測定した。摩擦係数が0.3以上であるとき、好ましいと判定した。
Claims (7)
- 紙基材の少なくとも片面に塗工層を有する耐油紙であって、
前記塗工層が、下塗り塗工層と上塗り塗工層とからなる多層構造を有し、
前記下塗り塗工層及び前記上塗り塗工層がいずれも、デンプン及びその誘導体の少なくとも1種と、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスの少なくとも1種とを含有することを特徴とする耐油紙。 - 前記紙基材の両面に前記塗工層を有する請求項1に記載の耐油紙。
- 前記上塗り塗工層の少なくとも1つが更に無機微粒子を含有する請求項1または請求項2に記載の耐油紙。
- 前記下塗り塗工層の全固形分中の前記パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスの合計の含有量が5〜35質量%であり、
前記上塗り塗工層の全固形分中の前記パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスの合計の含有量が5〜35質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐油紙。 - 前記下塗り塗工層の全固形分中の前記デンプン及びその誘導体の合計の含有量が50〜95質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐油紙。
- 前記下塗り塗工層及び前記上塗り塗工層の全固形分中の、前記デンプン及びその誘導体の合計の質量と、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスの合計の質量との質量比が50:50〜95:5である請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐油紙。
- 紙基材の少なくとも片面に塗工層を有し、前記塗工層が、下塗り塗工層と上塗り塗工層とからなる多層構造を有する耐油紙の製造方法であって、
紙基材の少なくとも片面にサイズプレスを用いて下塗り塗工層用塗工液を塗工して、下塗り塗工層を形成する工程と、
前記下塗り塗工層上に、フィルムトランスファーコーターを用いて上塗り塗工層用塗工液を塗工して、上塗り塗工層を形成する工程とを有し、
前記下塗り塗工層用塗工液及び前記上塗り塗工層用塗工液がいずれも、デンプン及びその誘導体の少なくとも1種と、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスの少なくとも1種とを含有することを特徴とする耐油紙の製造方法。
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