JP7191753B2 - セレン含有水の処理方法 - Google Patents
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Description
[1]亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方の溶解性セレンを含有する被処理水に、活性汚泥と、マグネタイト、金属鉄、塩化鉄(II)、及び塩化鉄(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種のFeを含む無機物とを一緒に混合して、前記溶解性セレンを不溶化する不溶化処理工程と、前記不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する固液分離処理工程と、を含む、セレン含有水の処理方法。
[2]前記不溶化処理工程を、前記活性汚泥の栄養源としての有機物を供給することなく行う前記[1]に記載のセレン含有水の処理方法。
[3]前記被処理水が、さらに硫酸イオンを含有する前記[1]又は[2]に記載のセレン含有水の処理方法。
[4]前記被処理水と、前記活性汚泥と、前記Feを含む無機物とを接触させた後に嫌気的条件下で混合して、前記不溶化処理工程を行う前記[1]~[3]のいずれかに記載のセレン含有水の処理方法。
[5]前記Feを含む無機物として、前記マグネタイト及び前記金属鉄のいずれか一方又は双方を、粉体の形態で前記被処理水に混合する前記[1]~[4]のいずれかに記載のセレン含有水の処理方法。
<被処理水>
処理対象である被処理水として、溶解性セレン(亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方)並びに硫酸イオンを含有し、有機物を含有しない被処理水を用いた。具体的には、純水に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、りん酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、セレン酸ナトリウム(Na2SeO4)、及びその他の成分を添加し、水中の各成分の濃度が表1に示す濃度である模擬廃水を調製し、それを被処理水として用いた。
活性汚泥法による生物処理を行っている終末処理場(下水処理場)から採取した余剰汚泥(懸濁物質(SS)=15000mg/L)を用いた。この余剰汚泥をSS濃度が1000mg/Lとなるように上記被処理水(模擬廃水)で15倍希釈することで、汚泥懸濁液を得た。
(試験例A1)
三角フラスコに汚泥懸濁液を500mL入れるとともに、マグネタイト(和光純薬工業社製、四酸化三鉄粉末)を、汚泥懸濁液中のマグネタイトの濃度が16.7g/Lとなる量にて添加し、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムを用いて液中のpHを7.2に調整した。次いで、窒素ガスを用いたバブリングを15分間行うことにより、汚泥懸濁液中、及び三角フラスコのヘッドスペース中の酸素を除き、三角フラスコの口を密栓することで嫌気的条件とした。この嫌気的条件を保ったまま、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、汚泥中の微生物の培養を行った。この処理を長期間継続して行い、その過程において一定期間ごとに、振盪を停止して、三角フラスコを1時間静置し、フラスコ内の液中の汚泥及び不溶化物を沈殿させ、上澄水(処理水)を得た。この上澄水を分取して、そのpHを測定した。その後、上澄水をJIS P3801に記載の5種Cのろ紙を用いてろ過し、得られたろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度を測定した。また、所定の経過日数においては、硫酸イオン(SO4 2-)濃度の測定も行った。溶解性セレン(T-Se)濃度の測定は、JIS K0102に記載のICP質量分析法により行った。硫酸イオン濃度の測定は、JIS K0102に記載のイオンクロマトグラフ法により行った。
試験例A1において使用したマグネタイト及びその添加量16.7g/Lを、鉄粉(和光純薬工業社製、粒径150μm)及びその添加量16.7g/Lに変更したこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、セレン含有水の処理を実施した。
試験例A1において使用したマグネタイト及びその添加量16.7g/Lを、塩化鉄(II)水溶液(塩化鉄(II)四水和物(和光純薬工業社製)を水で溶解し、Fe換算濃度で10g-Fe/Lに調整した濃厚水溶液)及びその添加量50mg-Fe/Lに変更したこと、並びに上記液相入れ換えの方法を若干変更したこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、セレン含有水の処理を実施した。試験例A3における液相入れ換えの方法が、試験例A1における液相入れ換えの方法と異なるのは、遠心分離後の上澄水を除いた後に添加した被処理水500mLに加えて、さらに上記塩化鉄(II)水溶液を50mg-Fe/L添加した点であった。
試験例A1において使用したマグネタイト及びその添加量16.7g/Lを、塩化鉄(III)水溶液(塩化鉄(III)(和光純薬工業社製)を水で溶解し、10g-Fe/Lに調整した濃厚水溶液)及びその添加量50mg-Fe/Lに変更したこと、及び上記液相入れ換えの方法を若干変更したこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、セレン含有水の処理を実施した。試験例A4における液相入れ換えの方法が、試験例A1における液相入れ換えの方法と異なるのは、遠心分離後の上澄水を除いた後に添加した被処理水500mLに加えて、さらに上記塩化鉄(III)水溶液を50mg-Fe/L添加した点であった。
試験例A1において使用したマグネタイト16.7g/Lを、使用しなかったこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、対照実験(ブランク試験)を行った。
(試験例B1~5)
また、活性汚泥と、特定の無機物との組み合わせによる効果を確認するために、上記の試験例A1~5のそれぞれの方法で、活性汚泥を使用しない条件においても同様の試験を行った。すなわち、試験例B1~5では、それぞれ、上記試験例A1~5に対応し、試験例A1~5において使用した活性汚泥を使用しなかったこと、及び液相入れ換えの回数を変更したこと以外は、上記試験例A1~5と同様の処理手順により、試験を行った。試験例BでのpH、及び溶解性セレン(T-Se)濃度の測定結果を表3に示す。
上述した試験例A2については、以下の表4に示すように、処理経過日数79日目まで、上述した処理手順で、適宜、処理水(上澄水)のpH測定、及び処理水から得られたろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度の測定を行い、セレン含有水の処理を実施した。そして、後述の通り、試験例A2における処理経過日数79日目の汚泥を含む試料の一部を採取し、同様の水質条件及び鉄粉量で培養を行い、セレン濃度の低下がみられたら、再び試料の一部を採取し、同様の条件下で培養を行うという実験により、得られた試料の微生物相解析を行った。
試験例A2における処理経過日数79日目の処理過程中の液を十分に撹拌したものを26mL採取して、これを試料1とした。この試料1の25mLを別の容器に移し、その容器に、全液量250mLにおいて試験例A2と同様の被処理水の組成及び鉄粉濃度となるように、被処理水及び鉄粉を添加し、試験例A2と同様、嫌気的条件下において培養を行った。この容器内の液(試料)を適宜採取し、セレン濃度を測定し、セレン濃度が低下した20日後の液を試料2とした。さらに、この試料2の25mLをまた別の容器に移し、その容器に、全液量250mLにおいて試験例A2と同様の被処理水の組成及び鉄粉濃度となるように、被処理水及び鉄粉を添加し、試験例A2と同様、嫌気的条件下において培養を行い、培養7日後の液を十分に撹拌後、一部を採取して、これを試料3とした。各試料1mlずつを微生物相解析に使用した。
試験例Cでは、活性汚泥に対し、有機物を添加する処理方法(以下の試験例C1)と、鉄粉を添加する処理方法(以下の試験例C2)とを比較検証する試験を行った。
試験例Aで使用した活性汚泥と同様に、活性汚泥法による生物処理を行っている終末処理場(下水処理場)から採取した余剰汚泥(懸濁物質(SS)=15000mg/L)を用いた。
(試験例C1)
三角フラスコに、上記活性汚泥(余剰汚泥)を20mL、及びこの活性汚泥に対する馴養液として、試験例Aで使用した被処理水(模擬廃水;表1参照、以下「馴養液」と記載することがある。)を280mL入れ、全量を300mL(この液中のSS濃度1000mg/L)、フラスコ内のヘッドスペースを60mLとした。このフラスコ内の液に、Na2SeO4を10mg-Se/Lとなるように添加した後、pHを7.2に調整した。次いで試験例Aで述べた方法と同様の方法でバブリングを行うことにより系内(フラスコ内)を嫌気的条件とし、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、pH7.2~9.0の範囲内で活性汚泥の馴養を行った。この馴養期間の17日目、21日目、29日目、34日目、38日目、45日目、52日目、63日目、71日目に液相入れ換えを行い、セレンを系内に保持し続けた。液相入れ換えの方法は、三角フラスコ内の液を3000rpm及び10分間の条件で遠心分離して得られた上澄水を除いた後、そこに上記馴養液を全量が300mLとなるように添加することにより行った。上記の馴養を行ってからの経過日数79日目の三角フラスコ内の液を、3000rpm及び10分間の条件で遠心分離し、得られた上澄水を除いた後、その上澄水の換わりに、以下に述べる被処理水を全量が300mLとなるように添加したことにより、液相入れ換えを行い、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させた。被処理水は、活性汚泥の有機物栄養源としてグルコースを500mg/L含有し、かつ、グルコースを含有させた分、馴養液(試験例Aで使用した被処理水)よりもN濃度及びP濃度を少し高めた液を用いた。表6に試験例C1で用いた被処理水の組成を示す。
三角フラスコに、上記活性汚泥(余剰汚泥)を20mL、及び上記馴養液を280mL入れるとともに、鉄濃度が16.7g/Lの濃度となる量の鉄粉を入れ、全量を300mL(この液中のSS濃度1000mg/L)、フラスコ内のヘッドスペースを60mLとした。このフラスコ内の液に、Na2SeO4を10mg-Se/Lとなるように添加した後、pHを7.2に調整した。次いで試験例Aで述べた方法と同様の方法でバブリングを行うことにより系内(フラスコ内)を嫌気的条件とし、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、pH7.2~9.0の範囲内で活性汚泥の馴養を行った。この馴養期間の17日目、21日目、29日目、34日目、38日目、45日目、52日目、63日目、71日目に液相入れ換えを行い、セレンを系内に保持し続けた。液相入れ換えの方法は、三角フラスコ内の液を3000rpm及び10分間の条件で遠心分離して得られた上澄水を除いた後、そこに上記馴養液を全量が300mLとなるように添加することにより行った。上記の馴養を行ってからの経過日数79日目の三角フラスコ内の液を、3000rpm及び10分間の条件で遠心分離し、得られた上澄水を除いた後、その上澄水の換わりに、上記馴養液を被処理水として全量が300mLとなるように添加したことにより、液相入れ換えを行い、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させた。この液相入れ換えを処理の開始とし、液相入れ換えを行ってから(処理開始から)、処理経過日数で0日目(液相入れ換え直後)、3日目、6日目、10日目の上記フラスコ内の液について、試験例Aで述べた方法と同様の方法によって、ろ液を採取し、ろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度、及び硫酸イオン(SO4 2-)濃度を測定した。
(試験例D1~D4)
試験例Dでは、硫酸イオン濃度の異なる4つの被処理水を用い、その硫酸イオン濃度の違いによる処理性能の影響を確認する試験を行った。
試験例D1では、試験例Aで使用したものと同じ組成で調製した被処理水(MgSO4を20mg-SO4/L含有する被処理水)を用いた。また、試験例D2~D4では、MgSO4の濃度(20mg-SO4/L)を、それぞれ、試験例D2で200mg-SO4/L、試験例D3で2000mg-SO4/L、試験例D4で20000mg-SO4/Lに変更したこと以外は、試験例Aで使用したものと同じ組成で調製した被処理水を用いた。
三角フラスコに、試験例Cで使用したものと同じ活性汚泥(余剰汚泥)を13.3mL、及びこの活性汚泥に対する馴養液として、試験例Aで使用したものと同じ被処理水(表1参照;「馴養液」)を186.6mL入れるとともに、鉄濃度が16.7g/Lの濃度となる量の鉄粉を入れ、全量を200mLとした。このフラスコ内の液に、Na2SeO4を10mg-Se/Lとなるように添加した後、pHを7.2に調整した。次いで試験例Aで述べた方法と同様の方法でバブリングを行うことにより系内(フラスコ内)を嫌気的条件とし、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、pH7.2~9.0の範囲内で活性汚泥の馴養を行った。この馴養期間の17日目、21日目、29日目、34日目、38日目、45日目、52日目、63日目、71日目に液相入れ換えを行い、セレンを系内に保持し続けた。液相入れ換えの方法は、三角フラスコ内の液を3000rpm及び10分間の条件で遠心分離して得られた上澄水を除いた後、そこに上記馴養液を全量が200mLとなるように添加することにより行った。上記の馴養を行ってからの経過日数79日目の三角フラスコ内の液を、馴養汚泥として使用した。
操作1:フラスコ内の被処理水、馴養汚泥、及び鉄粉を含有する混合液(全量200mL)のうち、180mLを除去し、3.0gの鉄粉及び被処理水180mLを加える操作。
操作2:フラスコ内に、フラスコ内のSe換算濃度が10mg-Se/L上昇するようにセレン酸ナトリウム(Na2SeO4)を添加する操作。
Claims (5)
- 亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方の溶解性セレン、並びに硫酸イオンを含有する被処理水に、活性汚泥と、マグネタイト、金属鉄、塩化鉄(II)、及び塩化鉄(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種のFeを含む無機物とを一緒に混合して、前記溶解性セレンを不溶化する不溶化処理工程と、
前記不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する固液分離処理工程と、を含み、
前記活性汚泥は、独立栄養細菌を含み、
前記不溶化処理工程を、前記活性汚泥の栄養源としての有機物を利用せずに行う、セレン含有水の処理方法。 - 前記被処理水に無機栄養源を添加することを含む請求項1に記載のセレン含有水の処理方法。
- 前記無機栄養源は、無機炭素源、又は無機窒素源である請求項2に記載のセレン含有水の処理方法。
- 前記被処理水と、前記活性汚泥と、前記Feを含む無機物とを接触させた後に嫌気的条件下で混合して、前記不溶化処理工程を行う請求項1~3のいずれか1項に記載のセレン含有水の処理方法。
- 前記Feを含む無機物として、前記マグネタイト及び前記金属鉄のいずれか一方又は双方を、粉体の形態で前記被処理水に混合する請求項1~4のいずれか1項に記載のセレン含有水の処理方法。
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