JP7191753B2 - セレン含有水の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セレン含有水の処理方法に関する。
セレン化合物を含有する水(以下、「セレン含有水」と記載することがある。)において、セレン化合物は、通常、亜セレン酸イオン(SeO 2-;4価セレン)及びセレン酸イオン(SeO 2-;6価セレン)の形態で溶存している。これらイオン(溶解性セレン)は、毒性が強い有害物質であるため、セレン及びその化合物は、水質汚濁防止法において有害物質として指定されており、その排水基準は、0.1mgSe/L以下に規制されている。それゆえ、排水基準を超えるセレンを含有する水においては、セレンの濃度が排水基準未満となるように、セレンを除去処理する必要がある。
セレン含有水から、亜セレン酸イオン(4価セレン:Se(IV))及びセレン酸イオン(6価セレン:Se(VI))の少なくとも一方を除去する方法としては、いわゆる、吸着法や凝集沈殿法などの物理化学的処理方法が知られている。吸着法は、セレン含有水中の溶解性セレンを吸着材により吸着して除去する方法であるが、Se(VI)は吸着できないこと、共存物質の影響が大きいこと、再生廃液の処理が必要になることなどの問題がある。また、凝集沈殿法では、セレン含有水に鉄塩などの凝集剤を添加して、Se(IV)を共沈させることができるが、Se(VI)の除去は困難であること、多量の凝集剤が必要となることなどの問題がある。
そこで、近年、セレン含有水中の溶解性セレンを嫌気的条件(実質的に酸素の介在を伴わない条件)下での微生物処理によって、不溶性の元素態セレン(Se(0);単体セレン、金属セレンなどとも称される。)に還元し、分離除去しやすくする生物学的処理方法が有力な方法として提案されている。また、その生物学的処理方法では、溶解性セレンの還元により生成した単体セレン(Se)や未還元の若干の溶解性セレンが残留する場合があるため、微生物処理の後段に凝集沈殿法を組み合わせた生物学的処理方法も提案されている。
例えば特許文献1には、セレン含有水を生物汚泥と嫌気状態で接触させてセレンを還元し、次にこの生物処理水に第1鉄塩を添加して凝集処理する方法が開示されている。また、例えば特許文献2には、所定のセレン酸還元菌を使用した微生物処理により、セレン含有水中の6価Seを4価Se又は/及び単体Seに還元したのち、固液分離する工程を含む方法が開示されている。
特開平9-136099号公報 特開平9-224656号公報
上述した生物学的処理方法による溶解性セレンの還元は、通性嫌気性条件下で微生物により進行し、Se(IV)はSe(0)に還元され、Se(VI)はSe(IV)を経てSe(0)まで還元される。このとき、Se(IV)及びSe(VI)の還元のためには、微生物の栄養源となる水素供与体が必要であり、水素供与体として、メタノール、酢酸、及び乳酸などの有機物が使用されている。このように、従来の生物学的処理方法では、還元反応に関与する微生物が、通性嫌気性細菌であって、その増殖に有機物が必要な従属栄養細菌であり、これらの還元菌が水素供与体(有機物)の存在下において、亜セレン酸イオンやセレン酸イオンの結合酸素(SeO 2-のOやSeO 2-のO)を利用することにより、それらイオンを単体セレンに還元すると考えられる。しかし、活性汚泥を使用した生物学的処理方法によって、セレン含有水から溶解性セレンを除去する報告事例はそれほど多くない。
本発明は、セレン含有水から溶解性セレンを安定して効率よく、かつ、より低コストで除去することが可能なセレン含有水の処理方法を提供しようとするものである。
本発明は、亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方の溶解性セレンを含有する被処理水に、活性汚泥と、マグネタイト、金属鉄、塩化鉄(II)、及び塩化鉄(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種のFeを含む無機物とを一緒に混合して、前記溶解性セレンを不溶化する不溶化処理工程と、前記不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する固液分離処理工程と、を含む、セレン含有水の処理方法を提供する。
本発明によれば、セレン含有水から溶解性セレンを安定して効率よく、かつ、より低コストで除去することが可能なセレン含有水の処理方法を提供することができる。
試験例における処理経過時間(日)に対する、試験例Aでの処理水の溶解性セレン濃度及び硫酸イオン濃度の測定値、並びに試験例Bでの処理経過時間12日までの処理水の溶解性セレン濃度の測定値の関係を表すグラフである。 試験例C1における処理経過時間(日)に対する、処理水の溶解性セレン濃度の測定値及び硫酸イオン濃度の測定値を示したグラフである。 試験例C2における処理経過時間(日)に対する、処理水の溶解性セレン濃度の測定値及び硫酸イオン濃度の測定値を示したグラフである。 試験例D1における処理経過時間(日)に対する、処理水の溶解性セレン濃度の測定値及び硫酸イオン濃度の測定値を示したグラフである。 試験例D2における処理経過時間(日)に対する、処理水の溶解性セレン濃度の測定値及び硫酸イオン濃度の測定値を示したグラフである。 試験例D3における処理経過時間(日)に対する、処理水の溶解性セレン濃度の測定値及び硫酸イオン濃度の測定値を示したグラフである。 試験例D4における処理経過時間(日)に対する、処理水の溶解性セレン濃度の測定値及び硫酸イオン濃度の測定値を示したグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
前述の通り、従来のセレン含有水の生物学的処理方法では、嫌気的条件下、亜セレン酸及びセレン酸還元能(以下、「セレン還元能」と記載することがある。)のある微生物によって、セレン含有水中の溶解性セレンを不溶性の単体セレンに還元するには、微生物の栄養源となる水素供与体としての有機物が必要と考えられていた。しかし、本発明者らは、セレン含有水に、活性汚泥と特定の無機物(Feを含む無機物)とを一緒に混合することによって、速やかに溶解性セレンを還元することができ、しかも、有機物を供給せずとも、長期にわたって、溶解性セレンを還元することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記特定の無機物として、本発明の一実施形態のセレン含有水の処理方法(以下、単に「本方法」と記載することがある。)では、マグネタイト、金属鉄、塩化鉄(II)、及び塩化鉄(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種のFeを含む無機物を使用する。すなわち、本方法では、被処理水(セレン含有水)に、活性汚泥と、上記Feを含む無機物とを一緒に混合して、溶解性セレンを不溶化する不溶化処理工程と、不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する固液分離処理工程とを含む。
本方法では、上記不溶化処理工程によって、速やかに溶解性セレン(亜セレン酸イオン及びセレン酸イオン)を還元して不溶化することができ、しかも、有機物を供給せずとも、長期にわたって、溶解性セレンを不溶化することができる。
前述の通り、従来の生物学的処理方法による溶解性セレンの還元のためには、微生物の栄養源となる水素供与体としての有機物が必要であると考えられていた。しかし、本方法では、被処理水に、活性汚泥と上記特定の無機物とを一緒に混合することによって、意外にも、有機物を供給せずとも独立栄養細菌のごとく、溶解性セレンを還元し、不溶化することができる。この理由は明らかではないが、金属鉄などは、亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの生物的還元における、ある種の電子供与体として働くものと考えられる。
一方、セレン還元能のある活性汚泥には、一般的に、セレン還元能のある微生物のみならず、硫酸還元能のある微生物など、有機物を栄養にする他の微生物も共存していることが多い。このような場合で、かつ、被処理水が硫酸又は硫酸塩を含有する場合、従来の方法のように、微生物の栄養源として有機物を使用すると、被処理水中の硫酸又は硫酸塩による硫酸イオン(SO 2-)も還元されたり、その還元により亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの還元が阻害されたりする可能性があり、また、硫酸イオンが還元された場合には、硫化水素が発生するおそれもある。さらに、有機物を添加する場合、その有機物が硫酸還元にも利用されるため、有機物をセレン還元に必要な量よりも過剰な量を添加しなくてはならなくなる。これに対して、本方法において、上述の不溶化処理工程を、活性汚泥の栄養源としての有機物を供給することなく行えば、より低コストでの処理が可能となるだけでなく、硫酸イオンの還元が抑制されることにより、硫化水素が発生し難くなることから、より安全性の高い処理が可能となる。
そして、本方法では、上述の不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する工程により、不溶化物が分離された処理水を得ることができ、処理水から不溶化物を分離除去することができる。したがって、本方法によって、セレン含有水から溶解性セレンを安定して効率よく、かつ、より低コストで除去することが可能となる。以下、本方法における処理対象、不溶化処理工程、及び固液分離処理工程について、より詳細に説明する。
本方法における処理対象は、亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方の溶解性セレンを含有する被処理水である。この被処理水を、本明細書においては、セレン含有水と記載することもある。この被処理水中には、亜セレン酸イオン(SeO 2-;4価セレン)及びセレン酸イオン(SeO 2-;6価セレン)のいずれか一方が単独で存在していてもよく、両方が存在していてもよい。セレン化合物を含有する水中には、セレン化合物が水に溶解して溶解性セレンが存在し、通常、亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの両方が含まれている場合が多い。
水中に溶解性セレンを生じるセレン化合物としては、例えば、亜セレン酸(HSeO);亜セレン酸ナトリウム(NaSeO)、亜セレン酸カリウム(KSeO)、及び亜セレン酸バリウム(BaSeO)などの亜セレン酸塩;セレン酸(HSeO);セレン酸ナトリウム(NaSeO)、セレン酸カリウム(KSeO)、及びセレン酸バリウム(BaSeO)などのセレン酸塩;二酸化セレン(SeO);並びに三酸化セレン(SeO)などを挙げることができる。
本方法では、溶解性セレンに加えて、さらに硫酸イオンを含有する被処理水も処理対象として好適である。そのような被処理水を処理対象とする場合に、活性汚泥の栄養源として有機物を使用すると、前述の通り、硫酸還元に伴う硫化水素の発生が懸念されるが、本方法における不溶化処理工程は有機物を供給することなく行うことができ、それによって、硫酸還元に伴う硫化水素の発生を抑制できるためである。
被処理水としては、亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方の溶解性セレンと、水を含有するものであれば、特に限定されない。そのような被処理水としては、例えば、石炭火力発電所、金属精練工場、鉱山、及びガラス製造工場などから排出される廃水、並びに地下水などを挙げることができる。上述の通り、硫酸イオンを含有する被処理水も処理対象として好適であることから、例えば、排煙脱硫装置から排出された廃水(いわゆる脱硫排水)を好適な処理対象の一例として挙げることができる。被処理水中の硫酸イオン(SO 2-)濃度としては、例えば、5~200,000mg-SO/Lの範囲内であることが好ましく、1,000~100,000mg-SO/Lの範囲内であることがさらに好ましい。
なお、上述したような各種の被処理水には、通常、無機栄養源として、微生物の増殖に必要なミネラル及び微量元素(trace elements)などの元素(例えば、P、S、K、Ca、Mg、Fe、Na、Co、Cu、Zn、及びNiなど)の少なくとも1種が含まれると考えられる。また、被処理水には、微生物の増殖の栄養源として、例えばCO、NaHCO、及びNaCOなどの無機炭素源;アンモニウム塩などの無機窒素源;並びに上述のミネラル及び微量元素などを含有してもよく、それらを被処理水に添加してもよい。
本方法では、上述した被処理水に、活性汚泥と、特定の無機物とを一緒に混合する工程(不溶化処理工程)を含む。この工程では、被処理水に対して、活性汚泥及び特定の無機物を添加してもよく、活性汚泥に被処理水を導入し、そこに特定の無機物を添加してもよい。被処理水に活性汚泥及び特定の無機物を添加する場合のそれらの添加順序は特に限定されず、被処理水に活性汚泥を添加した後、特定の無機物を添加してもよく、その逆でもよく、それらを同時に添加してもよい。被処理水、活性汚泥、及び特定の無機物を接触させた後に、それらを一緒に混合すればよい。
活性汚泥としては、従来から活性汚泥法で使用されている好気性微生物を含む活性汚泥を用いることができ、本方法における特定の無機物との組み合わせによって、セレン還元能を示す活性汚泥を用いることができる。このような活性汚泥には、鉄酸化菌(例えば、Gallionella属細菌及びSphaerotilus natansなど)、若しくは嫌気的条件下において4価セレン及び6価セレンを金属セレン又は不溶性のセレン化合物まで還元しうるセレン還元菌(例えば、Bacillus selenitireducens、Sulfurospirillum barnesii、及びDechloromonas属など)、又は鉄酸化とセレン還元の両方を行う細菌が存在すると考えられる。また、活性汚泥に存在し得る微生物としては、Methanobacteriaceae科に属する細菌、Methyloversatilis属細菌、Dechloromonas属細菌、及びOleomonas属細菌などを挙げることができる。
活性汚泥とともに被処理水に混合する特定の無機物としては、マグネタイト(Fe2+Fe3+ ;四酸化三鉄及び磁鉄鉱とも称される)、金属鉄(Fe;単体鉄)、塩化鉄(II)(FeCl)、及び塩化鉄(III)(FeCl)からなる群から選ばれる少なくとも1種のFeを含む無機物が用いられる。これらのFeを含む無機物について、本明細書では、特定の無機物と記載することがある。これらの特定の無機物の少なくとも1種と活性汚泥とを被処理水に一緒に混合することで、被処理水中の溶解性セレン(亜セレン酸イオン及びセレン酸イオン)を速やかに還元して不溶化することができる。
不溶化処理工程では、被処理水と、活性汚泥と、Feを含む無機物とを接触させた後に嫌気的条件下で混合することが好ましい。例えば、反応槽などの任意の容器内に、被処理水、活性汚泥、及び特定の無機物を入れてそれらを接触させた後、その容器を密閉し、かつ、容器内の液中及び空間(気体)中の酸素を除去することにより、嫌気的条件にすることができる。酸素を除去する際には、例えば、窒素ガスを送るバブリング方式、溶存酸素除去装置を用いる方式、及び亜硫酸塩などの酸素除去剤を添加する方法などを採ることができる。なお、被処理水と、活性汚泥と、Feを含む無機物とを接触させた後の液中の溶存酸素濃度が十分に低くなるような場合には嫌気的条件にするための特別な操作は必要ない。また、Feを含む無機物は、反応槽内でどのような形態で存在させてもよく、例えば、プラスチックやゼオライトなどの流動担体上に固定化してもよいし、不織布やプラスチックなどの固定化担体上に固定化してもよい。
不溶化処理工程では、上述の嫌気的条件下を保ったまま、被処理水、活性汚泥、及び特定の無機物を混合することが好ましい。この際の処理温度及び混合(撹拌)条件は特に限定されず、不溶化処理工程を行う際の規模などに応じて、適宜決定することができる。例えば、処理温度は、好ましくは0~60℃、より好ましくは5~50℃、さらに好ましくは10~40℃にすることができる。また、混合方法としては、撹拌機による方法や気体を液中に吹き込んで撹拌力を得る曝気撹拌方式、被処理水を活性汚泥及び特定の無機物が流動する程度の上向流で通液し、接触・混合させる方式などを用いることができる。曝気撹拌の際は、吹き込んだ気体(例えば空気)によって、好気的条件にならないように留意する。
不溶化処理工程の際の被処理水、活性汚泥、及び特定の無機物の混合物のpHは、5.5~10.0であることが好ましく、6.0~9.0であることがより好ましい。混合物のpHを調整する際には、例えば、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、及び炭酸ナトリウムなどのpH調整剤を用いることができる。
Feを含む無機物のうち、マグネタイト及び金属鉄については、粉体の形態で、被処理水に混合することが好ましく、塩化鉄(II)及び塩化鉄(III)については、水溶液の形態で、被処理水に混合することが好ましい。Feを含む無機物としては、マグネタイト及び金属鉄のいずれか一方又は双方を、粉体の形態で被処理水に混合することが好ましく、少なくとも金属鉄を、粉体の形態で被処理水に混合することがより好ましい。マグネタイト及び金属鉄のいずれか一方又は双方(より好ましくは金属鉄)を粉体の形態で被処理水に混合することにより、被処理水中の溶解性セレンをより速やかに還元して不溶化することができ、しかも、有機物を供給せずとも、その効果を長期にわたって奏することができる。
マグネタイトを用いる場合、マグネタイトの使用量は、被処理水中のマグネタイトの濃度で、0.05~500g/Lであることが好ましく、0.1~300g/Lであることがより好ましく、0.2~250g/Lであることがさらに好ましい。金属鉄を用いる場合、金属鉄の使用量は、被処理水中の鉄の濃度で、0.05~500g-Fe/Lであることが好ましく、0.1~300g-Fe/Lであることがより好ましく、0.2~250g-Fe/Lであることがさらに好ましい。塩化鉄(II)又は塩化鉄(III)を用いる場合、それらの使用量は、被処理水中のFe換算濃度で、0.02~50g-Fe/Lであることが好ましく、0.03~40g-Fe/Lであることがより好ましく、0.04~30g-Fe/Lであることがさらに好ましい。
不溶化処理工程によって、被処理水中に、溶解性セレンが不溶化された不溶化物を得ることができる。この不溶化物としては、亜セレン酸イオン(4価セレン)が還元された不溶性の単体セレン(Se)、セレン酸イオン(6価セレン)が亜セレン酸イオン(4価セレン)を経て還元された単体セレン(Se)、溶解性セレンと特定の無機物とが反応した不溶性反応物(亜セレン酸鉄及びセレン酸鉄)などが考えられる。
本方法では、前述の不溶化処理工程の後、不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する工程(固液分離処理工程)を含む。この工程により、被処理水中に生じた不溶化物を処理水と分離することができ、その結果、不溶化物が分離された処理水、すなわち、溶解性セレンが除去処理された処理水を得ることができる。また、得られた不溶化物における特定の無機物のうち、反応に関与しなかった部分はなお溶解性セレンを不溶化する能力を有しているため、これらを再度反応槽に戻してもよい。
固液分離処理の手法としては、沈殿処理、ろ過処理、膜分離処理、遠心分離処理、及び電磁的分離処理などを採用することができる。これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、より低コストでの処理が可能となることから、沈殿処理を用いることが好ましい。その際には、必要に応じて、無機凝集剤及び高分子凝集剤などの凝集剤を用いてもよい。また、固液分離処理には、例えば、シックナーなどの沈降装置、各種膜分離装置、並びにバースクリーン、ロータリードラムスクリーン、ベルトスクリーン、及び振動スクリーンなどの各種の固液分離機を用いてもよく、上昇流を利用した処理を行ってもよい。
以上の通り、本発明の一実施形態のセレン含有水の処理方法は、次の構成をとることが可能である。
[1]亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方の溶解性セレンを含有する被処理水に、活性汚泥と、マグネタイト、金属鉄、塩化鉄(II)、及び塩化鉄(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種のFeを含む無機物とを一緒に混合して、前記溶解性セレンを不溶化する不溶化処理工程と、前記不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する固液分離処理工程と、を含む、セレン含有水の処理方法。
[2]前記不溶化処理工程を、前記活性汚泥の栄養源としての有機物を供給することなく行う前記[1]に記載のセレン含有水の処理方法。
[3]前記被処理水が、さらに硫酸イオンを含有する前記[1]又は[2]に記載のセレン含有水の処理方法。
[4]前記被処理水と、前記活性汚泥と、前記Feを含む無機物とを接触させた後に嫌気的条件下で混合して、前記不溶化処理工程を行う前記[1]~[3]のいずれかに記載のセレン含有水の処理方法。
[5]前記Feを含む無機物として、前記マグネタイト及び前記金属鉄のいずれか一方又は双方を、粉体の形態で前記被処理水に混合する前記[1]~[4]のいずれかに記載のセレン含有水の処理方法。
以下、試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の試験例によって限定されるものではない。
〔試験例A〕
<被処理水>
処理対象である被処理水として、溶解性セレン(亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方)並びに硫酸イオンを含有し、有機物を含有しない被処理水を用いた。具体的には、純水に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、りん酸二水素ナトリウム(NaHPO)、塩化アンモニウム(NHCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、セレン酸ナトリウム(NaSeO)、及びその他の成分を添加し、水中の各成分の濃度が表1に示す濃度である模擬廃水を調製し、それを被処理水として用いた。
Figure 0007191753000001
<活性汚泥>
活性汚泥法による生物処理を行っている終末処理場(下水処理場)から採取した余剰汚泥(懸濁物質(SS)=15000mg/L)を用いた。この余剰汚泥をSS濃度が1000mg/Lとなるように上記被処理水(模擬廃水)で15倍希釈することで、汚泥懸濁液を得た。
<処理手順>
(試験例A1)
三角フラスコに汚泥懸濁液を500mL入れるとともに、マグネタイト(和光純薬工業社製、四酸化三鉄粉末)を、汚泥懸濁液中のマグネタイトの濃度が16.7g/Lとなる量にて添加し、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムを用いて液中のpHを7.2に調整した。次いで、窒素ガスを用いたバブリングを15分間行うことにより、汚泥懸濁液中、及び三角フラスコのヘッドスペース中の酸素を除き、三角フラスコの口を密栓することで嫌気的条件とした。この嫌気的条件を保ったまま、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、汚泥中の微生物の培養を行った。この処理を長期間継続して行い、その過程において一定期間ごとに、振盪を停止して、三角フラスコを1時間静置し、フラスコ内の液中の汚泥及び不溶化物を沈殿させ、上澄水(処理水)を得た。この上澄水を分取して、そのpHを測定した。その後、上澄水をJIS P3801に記載の5種Cのろ紙を用いてろ過し、得られたろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度を測定した。また、所定の経過日数においては、硫酸イオン(SO 2-)濃度の測定も行った。溶解性セレン(T-Se)濃度の測定は、JIS K0102に記載のICP質量分析法により行った。硫酸イオン濃度の測定は、JIS K0102に記載のイオンクロマトグラフ法により行った。
溶解性セレン(T-Se)濃度の低減を確認した場合には、三角フラスコ中の液相入れ換えを行った。液相入れ換えの方法は、三角フラスコ内の汚泥懸濁液を3000rpm及び10分間の条件で遠心分離して得られた上澄水を除いた後、そこに被処理水を500mL添加することにより行った。そして、液相入れ換え後も上記と同様にして、pH調整及び窒素ガスを用いたバブリングを行い、嫌気的条件下で再び振盪及び培養を行った。以上の手順を所定期間繰り返し行うことで、セレン含有水の処理を実施した。
(試験例A2)
試験例A1において使用したマグネタイト及びその添加量16.7g/Lを、鉄粉(和光純薬工業社製、粒径150μm)及びその添加量16.7g/Lに変更したこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、セレン含有水の処理を実施した。
(試験例A3)
試験例A1において使用したマグネタイト及びその添加量16.7g/Lを、塩化鉄(II)水溶液(塩化鉄(II)四水和物(和光純薬工業社製)を水で溶解し、Fe換算濃度で10g-Fe/Lに調整した濃厚水溶液)及びその添加量50mg-Fe/Lに変更したこと、並びに上記液相入れ換えの方法を若干変更したこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、セレン含有水の処理を実施した。試験例A3における液相入れ換えの方法が、試験例A1における液相入れ換えの方法と異なるのは、遠心分離後の上澄水を除いた後に添加した被処理水500mLに加えて、さらに上記塩化鉄(II)水溶液を50mg-Fe/L添加した点であった。
(試験例A4)
試験例A1において使用したマグネタイト及びその添加量16.7g/Lを、塩化鉄(III)水溶液(塩化鉄(III)(和光純薬工業社製)を水で溶解し、10g-Fe/Lに調整した濃厚水溶液)及びその添加量50mg-Fe/Lに変更したこと、及び上記液相入れ換えの方法を若干変更したこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、セレン含有水の処理を実施した。試験例A4における液相入れ換えの方法が、試験例A1における液相入れ換えの方法と異なるのは、遠心分離後の上澄水を除いた後に添加した被処理水500mLに加えて、さらに上記塩化鉄(III)水溶液を50mg-Fe/L添加した点であった。
(試験例A5)
試験例A1において使用したマグネタイト16.7g/Lを、使用しなかったこと以外は、試験例A1と同様の処理手順で、対照実験(ブランク試験)を行った。
試験例A1~5のそれぞれの上記処理手順において、測定したpHの結果を表2-1に、測定した溶解性セレン(T-Se)濃度、及び硫酸イオン(SO 2-)濃度の結果を表2-2に示す。また、それらの表には、液相入れ換えの回数と、液相入れ換えを行った時の被処理水での測定も併せて示す。なお、表2-1における処理経過日数31日目、35日目、及び36日目では、再度、液中のpHを7.2に調整した。
Figure 0007191753000002
Figure 0007191753000003
試験例A1~5の結果から、液相入れ換え1回目までは、Feを含む無機物を添加した場合(試験例A1~A4)に加えて、Feを含む無機物を添加しなかった場合(試験例A5)でも、溶解性セレン濃度の低下が認められた。しかし、液相入れ換え2回目(特に3回目)以降、試験例A5では、溶解性セレン濃度の低下が認められず、試験例A1~4では、溶解性セレン濃度の低下が引き続き認められた。
これらの結果から、液相入れ換え1回目までは、活性汚泥中にもともと存在していたと考えられる有機物が電子供与体(水素供与体)として利用されたことにより、溶解性セレンの還元が生じたと考えられる。そして、液相入れ換え2回目(特に3回目)以降は、活性汚泥中に存在していたと考えられる、利用可能な有機物がほぼ使い切られたために、試験例A5では、溶解性セレン濃度の低下がみられなくなったと考えられる。一方、特定の無機物を添加した試験例A1~4では、利用可能な有機物がほぼ使い切られたと考えられる液相入れ換え2回目においても、溶解性セレン濃度の低下が認められた。このことから、活性汚泥と、特定の無機物との組み合わせにより、溶解性セレンの不溶化が促進されることが確認された。試験例A1~4のなかでも、試験例A1及びA2では、比較的長期にわたって溶解性セレン濃度の低下が認められ、特に鉄粉を使用した試験例A2では、より長期にわたって、溶解性セレン濃度の低下が認められた。なお、試験例A1~4において、フラスコ内に沈殿した不溶化物を、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)にて分析した結果、固体状態のセレンの存在が確認された。
また、試験例A1~5の結果から、液相入れ換え1回目までは、いずれの試験例Aにおいても、硫酸イオン濃度の低下が認められたことから、硫酸イオンの還元が生じたと考えられる。一方、液相入れ換え2回目以降(液相入れ換え直前の処理経過日数29日目、34日目、及び38日目)においては、硫酸イオン濃度の低下が認められず、硫酸イオンの還元が生じなかったと考えられることからも、有機物が使い切られたことが推測される。それにも関わらず、試験例A1~4では、溶解性セレン濃度の低下が認められたことから、溶解性セレンの不溶化処理を、活性汚泥の栄養源として有機物を供給することなく、したがって、硫酸還元及びそれによる硫化水素の発生を伴わずに行い得ることが確認された。
〔試験例B〕
(試験例B1~5)
また、活性汚泥と、特定の無機物との組み合わせによる効果を確認するために、上記の試験例A1~5のそれぞれの方法で、活性汚泥を使用しない条件においても同様の試験を行った。すなわち、試験例B1~5では、それぞれ、上記試験例A1~5に対応し、試験例A1~5において使用した活性汚泥を使用しなかったこと、及び液相入れ換えの回数を変更したこと以外は、上記試験例A1~5と同様の処理手順により、試験を行った。試験例BでのpH、及び溶解性セレン(T-Se)濃度の測定結果を表3に示す。
Figure 0007191753000004
活性汚泥を使用しなかった試験例B1~5では、鉄粉を使用した試験例B2以外、溶解性セレン濃度の低減は認められなかった。また、試験例B2では、溶解性セレン濃度の低減を確認できたが、上述の活性汚泥を使用した試験例A1~4と比較して、溶解性セレン濃度の低減効果がみられるまでの処理経過日数が多く、溶解性セレン濃度の低減速度(処理時間当たりのT-Se減少量)が明らかに小さかった。この結果がより明瞭となるように、処理経過時間(日)に対する、試験例AでのT-Se濃度及び液相入換え直前におけるSO 2-濃度の測定結果、並びに試験例Bの処理経過時間12日までのT-Se濃度の測定値の関係を表すグラフを図1に示す。なお、図1中の矢印は、液相入れ換えを行った時の被処理水の水質を表す。
以上の試験例A及びBの結果から、試験例Aで使用した活性汚泥は、セレン還元能及び硫酸還元能のある活性汚泥であることが認められた。また、セレン含有水に、活性汚泥と、特定の無機物とを一緒に混合することにより、溶解性セレンの不溶化処理を速やかに行い得ることが認められた。しかも、その不溶化処理を、有機物を供給することなく行うことができ、それにより、より低コストでの処理が可能となるだけでなく、硫酸還元が抑制され得ることにより、硫化水素が発生し難くなり、より安全性の高い処理を提供し得ることが認められた。
(微生物相解析)
上述した試験例A2については、以下の表4に示すように、処理経過日数79日目まで、上述した処理手順で、適宜、処理水(上澄水)のpH測定、及び処理水から得られたろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度の測定を行い、セレン含有水の処理を実施した。そして、後述の通り、試験例A2における処理経過日数79日目の汚泥を含む試料の一部を採取し、同様の水質条件及び鉄粉量で培養を行い、セレン濃度の低下がみられたら、再び試料の一部を採取し、同様の条件下で培養を行うという実験により、得られた試料の微生物相解析を行った。
Figure 0007191753000005
セレン酸還元に関与する菌体割合が大きくなると考えられる実験で培養を行い、得られた3種の試料1~3について、DNAシーケンサー(製品名「MiSeq」、イルミナ社製)を用いて、16S rRNA遺伝子を解析対象としたDNAシークエンシングを行った。このDNAシークエンシングにより、各試料における全微生物に対する微生物の存在割合を解析した。その解析結果のうち、最も馴致が進んでいる(すなわち、セレン還元反応に関与する微生物の割合が最も高いと考えられる)試料3において、全微生物に対する存在割合が1.0%以上検出された微生物種を表5に示す。なお、試料1~3については次の方法で得た。
試験例A2における処理経過日数79日目の処理過程中の液を十分に撹拌したものを26mL採取して、これを試料1とした。この試料1の25mLを別の容器に移し、その容器に、全液量250mLにおいて試験例A2と同様の被処理水の組成及び鉄粉濃度となるように、被処理水及び鉄粉を添加し、試験例A2と同様、嫌気的条件下において培養を行った。この容器内の液(試料)を適宜採取し、セレン濃度を測定し、セレン濃度が低下した20日後の液を試料2とした。さらに、この試料2の25mLをまた別の容器に移し、その容器に、全液量250mLにおいて試験例A2と同様の被処理水の組成及び鉄粉濃度となるように、被処理水及び鉄粉を添加し、試験例A2と同様、嫌気的条件下において培養を行い、培養7日後の液を十分に撹拌後、一部を採取して、これを試料3とした。各試料1mlずつを微生物相解析に使用した。
Figure 0007191753000006
試料の微生物相解析の結果から、活性汚泥を含む試料における全微生物に対する存在割合は、Dechloromonas属に属する微生物が最も高く、次いで、Methanobacteriaceae科に属する微生物、Oleomonas属に属する微生物、Methyloversatilis属に属する微生物が高かった。したがって、活性汚泥とともに鉄粉を使用した試験例A2においては、主に上記の微生物(特にDechloromonas属に属する微生物)によって、セレン酸還元が行われたと考えられる。また、微生物相解析の結果から、様々な独立栄養細菌の増殖が確認されたため、それらの微生物種が増殖することで形成された微生物共生系により、セレン酸還元反応が成立した可能性があると考えられる。
〔試験例C〕
試験例Cでは、活性汚泥に対し、有機物を添加する処理方法(以下の試験例C1)と、鉄粉を添加する処理方法(以下の試験例C2)とを比較検証する試験を行った。
<活性汚泥>
試験例Aで使用した活性汚泥と同様に、活性汚泥法による生物処理を行っている終末処理場(下水処理場)から採取した余剰汚泥(懸濁物質(SS)=15000mg/L)を用いた。
<処理手順>
(試験例C1)
三角フラスコに、上記活性汚泥(余剰汚泥)を20mL、及びこの活性汚泥に対する馴養液として、試験例Aで使用した被処理水(模擬廃水;表1参照、以下「馴養液」と記載することがある。)を280mL入れ、全量を300mL(この液中のSS濃度1000mg/L)、フラスコ内のヘッドスペースを60mLとした。このフラスコ内の液に、NaSeOを10mg-Se/Lとなるように添加した後、pHを7.2に調整した。次いで試験例Aで述べた方法と同様の方法でバブリングを行うことにより系内(フラスコ内)を嫌気的条件とし、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、pH7.2~9.0の範囲内で活性汚泥の馴養を行った。この馴養期間の17日目、21日目、29日目、34日目、38日目、45日目、52日目、63日目、71日目に液相入れ換えを行い、セレンを系内に保持し続けた。液相入れ換えの方法は、三角フラスコ内の液を3000rpm及び10分間の条件で遠心分離して得られた上澄水を除いた後、そこに上記馴養液を全量が300mLとなるように添加することにより行った。上記の馴養を行ってからの経過日数79日目の三角フラスコ内の液を、3000rpm及び10分間の条件で遠心分離し、得られた上澄水を除いた後、その上澄水の換わりに、以下に述べる被処理水を全量が300mLとなるように添加したことにより、液相入れ換えを行い、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させた。被処理水は、活性汚泥の有機物栄養源としてグルコースを500mg/L含有し、かつ、グルコースを含有させた分、馴養液(試験例Aで使用した被処理水)よりもN濃度及びP濃度を少し高めた液を用いた。表6に試験例C1で用いた被処理水の組成を示す。
Figure 0007191753000007
試験例C1で用いた被処理水の添加による液相入れ換えを処理の開始とし、液相入れ換えを行ってから(処理開始から)、処理経過日数で0日目(液相入れ換え直後)、3日目、6日目、10日目の上記フラスコ内の液について、試験例Aで述べた方法と同様の方法によって、ろ液を採取し、ろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度、及び硫酸イオン(SO 2-)濃度を測定した。
(試験例C2)
三角フラスコに、上記活性汚泥(余剰汚泥)を20mL、及び上記馴養液を280mL入れるとともに、鉄濃度が16.7g/Lの濃度となる量の鉄粉を入れ、全量を300mL(この液中のSS濃度1000mg/L)、フラスコ内のヘッドスペースを60mLとした。このフラスコ内の液に、NaSeOを10mg-Se/Lとなるように添加した後、pHを7.2に調整した。次いで試験例Aで述べた方法と同様の方法でバブリングを行うことにより系内(フラスコ内)を嫌気的条件とし、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、pH7.2~9.0の範囲内で活性汚泥の馴養を行った。この馴養期間の17日目、21日目、29日目、34日目、38日目、45日目、52日目、63日目、71日目に液相入れ換えを行い、セレンを系内に保持し続けた。液相入れ換えの方法は、三角フラスコ内の液を3000rpm及び10分間の条件で遠心分離して得られた上澄水を除いた後、そこに上記馴養液を全量が300mLとなるように添加することにより行った。上記の馴養を行ってからの経過日数79日目の三角フラスコ内の液を、3000rpm及び10分間の条件で遠心分離し、得られた上澄水を除いた後、その上澄水の換わりに、上記馴養液を被処理水として全量が300mLとなるように添加したことにより、液相入れ換えを行い、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させた。この液相入れ換えを処理の開始とし、液相入れ換えを行ってから(処理開始から)、処理経過日数で0日目(液相入れ換え直後)、3日目、6日目、10日目の上記フラスコ内の液について、試験例Aで述べた方法と同様の方法によって、ろ液を採取し、ろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度、及び硫酸イオン(SO 2-)濃度を測定した。
試験例C1及びC2におけるT-Se濃度及びSO 2-濃度の測定結果を表7に示す。また、それらの結果を表したグラフを図2及び図3に示す。
Figure 0007191753000008
表7、並びに図2及び図3に示すように、活性汚泥の栄養源として、鉄粉を用いた試験例C2では、有機物(グルコース)を用いた試験例C1に比べて、T-Se濃度が速く低下し、速やかに溶解性セレンを還元して不溶化したことが確認された。また、処理経過日数に対し、試験例C2では、硫酸イオン濃度がほとんど変化しなかったのに対し、試験例C1では、硫酸イオン濃度の低下が認められ、硫酸イオンの還元が生じたと考えられる。この結果について、さらに以下のように分析した。
処理経過日数10日目の上記フラスコを開栓後、速やかに上記フラスコのヘッドスペース内の気体50mLを採取し、その気体中の硫化水素(HS)濃度を測定した。気体の採取及び気体中の硫化水素濃度の測定には、気体採取器(製品名「気体採取器GV-100型」、ガステック社製)と検知管(製品名「No.4LK」、ガステック社製;測定範囲2~20ppm)とで構成された検知管式気体測定器を用いた。その結果、試験例C1では、硫化水素が測定範囲を大きく超えて検出され(20ppm超)、試験例C2では、硫化水素は検出されなかった(2ppm未満)。そのため、試験例C2のような方法では、硫酸還元及びそれによる硫化水素の発生を伴わずに処理を行い得ることが確認された。
〔試験例D〕
(試験例D1~D4)
試験例Dでは、硫酸イオン濃度の異なる4つの被処理水を用い、その硫酸イオン濃度の違いによる処理性能の影響を確認する試験を行った。
<被処理水>
試験例D1では、試験例Aで使用したものと同じ組成で調製した被処理水(MgSOを20mg-SO/L含有する被処理水)を用いた。また、試験例D2~D4では、MgSOの濃度(20mg-SO/L)を、それぞれ、試験例D2で200mg-SO/L、試験例D3で2000mg-SO/L、試験例D4で20000mg-SO/Lに変更したこと以外は、試験例Aで使用したものと同じ組成で調製した被処理水を用いた。
<処理手順>
三角フラスコに、試験例Cで使用したものと同じ活性汚泥(余剰汚泥)を13.3mL、及びこの活性汚泥に対する馴養液として、試験例Aで使用したものと同じ被処理水(表1参照;「馴養液」)を186.6mL入れるとともに、鉄濃度が16.7g/Lの濃度となる量の鉄粉を入れ、全量を200mLとした。このフラスコ内の液に、NaSeOを10mg-Se/Lとなるように添加した後、pHを7.2に調整した。次いで試験例Aで述べた方法と同様の方法でバブリングを行うことにより系内(フラスコ内)を嫌気的条件とし、30℃の恒温室において、120~130rpmで振盪させながら、pH7.2~9.0の範囲内で活性汚泥の馴養を行った。この馴養期間の17日目、21日目、29日目、34日目、38日目、45日目、52日目、63日目、71日目に液相入れ換えを行い、セレンを系内に保持し続けた。液相入れ換えの方法は、三角フラスコ内の液を3000rpm及び10分間の条件で遠心分離して得られた上澄水を除いた後、そこに上記馴養液を全量が200mLとなるように添加することにより行った。上記の馴養を行ってからの経過日数79日目の三角フラスコ内の液を、馴養汚泥として使用した。
別の三角フラスコに、試験例D1~D4のそれぞれで用いる上記被処理水を180mL、及び上記馴養汚泥を20mL入れ、再度、被処理水に対する鉄濃度が16.7g/Lの濃度となるように鉄粉(3.0g)を入れ、この状態から処理開始とした。この処理開始から経過日数78日目までの間、一定期間ごとに、試験例Aで述べた方法と同様の方法によって、ろ液を採取し、ろ液中の溶解性セレン(T-Se)濃度、及び硫酸イオン(SO 2-)濃度を測定した。その間、溶解性セレン濃度の十分な低減を確認した場合、その確認後、以下の「操作1」又は「操作2」を行った。
操作1:フラスコ内の被処理水、馴養汚泥、及び鉄粉を含有する混合液(全量200mL)のうち、180mLを除去し、3.0gの鉄粉及び被処理水180mLを加える操作。
操作2:フラスコ内に、フラスコ内のSe換算濃度が10mg-Se/L上昇するようにセレン酸ナトリウム(NaSeO)を添加する操作。
上記の試験例D1~D4のそれぞれの上記処理手順において、溶解性セレン(T-Se)濃度、及び硫酸イオン(SO 2-)濃度の測定結果を表8に示す。また、試験例D1~D4における溶解性セレン(T-Se)濃度及び硫酸イオン(SO 2-)濃度の測定結果を表したグラフをそれぞれ図4~7に示す。なお、図4~7中の上部に示した実線矢印は上記操作1を行った日を表し、破線矢印は上記操作2を行った日を表す。また、処理経過日数78日目において、試験例Cで述べた方法と同様の方法により、フラスコのヘッドスペースの気体について、硫化水素(HS)濃度を測定したところ、試験例D1~D4では、硫化水素は検出されなかった。
Figure 0007191753000009
表8及び図4~7に示すように、試験例D1~D4の結果、セレン含有水(被処理水)中の硫酸イオン濃度に関わらず、セレン含有水に、活性汚泥及び鉄粉を一緒に混合することにより、T-Se濃度が速く低下し、速やかに溶解性セレンを還元して不溶化処理を速やかに行い得ることが認められた。また、硫酸濃度についても目立った低下は見られなかったことから、硫酸還元も生じ難いことが確認された。

Claims (5)

  1. 亜セレン酸イオン及びセレン酸イオンの少なくとも一方の溶解性セレン、並びに硫酸イオンを含有する被処理水に、活性汚泥と、マグネタイト、金属鉄、塩化鉄(II)、及び塩化鉄(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種のFeを含む無機物とを一緒に混合して、前記溶解性セレンを不溶化する不溶化処理工程と、
    前記不溶化処理工程によって得られた不溶化物を固液分離する固液分離処理工程と、を含
    前記活性汚泥は、独立栄養細菌を含み、
    前記不溶化処理工程を、前記活性汚泥の栄養源としての有機物を利用せずに行う、セレン含有水の処理方法。
  2. 前記被処理水に無機栄養源を添加することを含む請求項1に記載のセレン含有水の処理方法。
  3. 前記無機栄養源は、無機炭素源、又は無機窒素源である請求項2に記載のセレン含有水の処理方法。
  4. 前記被処理水と、前記活性汚泥と、前記Feを含む無機物とを接触させた後に嫌気的条件下で混合して、前記不溶化処理工程を行う請求項1~3のいずれか1項に記載のセレン含有水の処理方法。
  5. 前記Feを含む無機物として、前記マグネタイト及び前記金属鉄のいずれか一方又は双方を、粉体の形態で前記被処理水に混合する請求項1~4のいずれか1項に記載のセレン含有水の処理方法。
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