以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、便器装置100の斜視図である。便器装置100は、図1に示すように、便器102が壁面f2から突出して配置される壁掛けタイプである。便器装置100は、床面f1と壁面f2とに跨って配置されたライニング110を有する。ライニング110は、壁パネルPを有する。壁パネルPは、前壁面P1と上壁面P2とを備える。便器102は、壁パネルPの前壁面P1の前面に取り付けられている。なお、以下の説明において、便器102の便座103に着座した使用者から見た場合の前後の向きを前後方向とする。また、便器102の便座103に着座した使用者から見た場合の左右の向きを幅方向とする。更に、床面f1に対する鉛直方向に沿う上下の向きを上下方向とする。
便器装置100は、図1に示すように、便器102と、便座103と、ライニング110と、便器102を洗浄するための便器洗浄装置1と、を備えている。便器洗浄装置1は、ライニング110の内部に配置されている。
便器102は、ライニング110の壁パネルPの前壁面P1の背面側に設けられた便器固定スタンド(図示せず)によって支持されている。便器102の上部には、便座103が回動可能に取り付けられている。
便器102の上方の前壁面P1には、図1に示すように、背凭れ板3aが取り付けられ、背凭れ板3aの一方側には、手摺部3bが前方に突出するように取り付けられている。手摺部3bの下方側であって、便器102の一方側の前壁面P1(壁面)には、非常時(例えば停電時)に、洗浄動作を実行させるための手動操作部20が設けられている。背凭れ板3aの他方側には、電動洗浄機構部8(後述)における自動の便器洗浄等を実行するために、人体を感知する人体感知センサ3cが取り付けられている。
図2は、便器洗浄装置1の部分平面図である。図3は、便器洗浄装置1の縦断面図である。
図2及び図3に示すように、便器洗浄装置1は、便器洗浄タンク2(タンク)と、ボールタップ給水栓3と、フロート4と、吐水管5と、オーバーフロー管6と、を備える。
また、便器洗浄装置1は、便器洗浄タンク2の下部に形成される排水口2cに設けられた排水弁7(開閉弁)と、排水弁7から上方へ延びる第1玉鎖71及び第2玉鎖72とを有する。
また、便器洗浄装置1は、排水弁7を操作して便器102に洗浄水を供給する電動洗浄機構部8を有する。本実施形態においては、電動洗浄機構部8により自動で洗浄を行う自動洗浄の便器洗浄装置1について説明する。
便器洗浄タンク2は、タンク本体2aと、タンク蓋部2bと、を有する。タンク本体2aは、上部が開口し、洗浄水を貯留可能な略直方体の容器である。便器洗浄タンク2は、上部において外部の給水管(図示せず)に接続される。また、便器洗浄タンク2は、下部における幅方向の中央に排水口2cが形成され、排水口2cは便器洗浄タンク2の下方に配置される便器102に連通している。
排水弁7は、排水口2cを開閉可能に覆っている略円形の蓋体により構成されている。
第1玉鎖71及び第2玉鎖72は、排水弁7に接続され、第1玉鎖71又は第2玉鎖72が上方に引き上げられると、排水弁7が開き、排水口2cから便器洗浄タンク2に貯留された洗浄水を流すように構成されている。
電動洗浄機構部8は、駆動部としての電動式のアクチュエータ811と、アクチュエータ811に接続される回動軸部材812と、引き上げアーム部材81と、連動軸部材813と、支持ケース82(ケース体)と、を備える。支持ケース82は、アクチュエータ811、回動軸部材812及び連動軸部材813を支持する。
回動軸部材812は、便器洗浄タンク2の内部の一方側(右側)の上方において、アクチュエータ811から他方側(左側)に水平方向に延びるように配置される。回動軸部材812は、アクチュエータ811に接続され、アクチュエータ811の駆動力により回動する。
回動軸部材812の他方側(左側)の端部には、引き上げアーム部材81が接続される。引き上げアーム部材81は、第1玉鎖71及び第2玉鎖72の上端から便器洗浄タンク2の上部で略水平方向に延びている。引き上げアーム部材81は、回動軸部材812の回動に伴って、回動軸部材812と一体で回動可能に構成される。引き上げアーム部材81は、第1玉鎖71及び第2玉鎖72と接続されている。引き上げアーム部材81は、回動軸部材812と一体で回動することで、第1玉鎖71及び第2玉鎖72を引き上げる。
本実施形態においては、第1玉鎖71は、大洗浄用の玉鎖である。第1玉鎖71は、回動軸部材812と排水弁7とを接続する。第1玉鎖71の一端は、引き上げアーム部材81に取り付けられている。第1玉鎖71の他端は、排水弁7に接続される。第2玉鎖72は、小洗浄用の玉鎖である。第2玉鎖72は、引き上げアーム部材81と排水弁7とを接続する。第2玉鎖72の一端は、引き上げアーム部材81に接続される。第2玉鎖72の他端は、排水弁7に接続される。
電動洗浄機構部8は、例えば、人体感知センサ3c(図1参照)の検出出力に応じて、大量の洗浄水で便器102の洗浄を行う大洗浄モードと、小量の洗浄水で便器102の洗浄を行う小洗浄モードと、を実行することができる。具体的には、人体感知センサ3c(図1参照)に検出された検出時間の長短に応じて、図2に示すように、電動式のアクチュエータ811を動作させて、回動軸部材812を回動させる。ここで、引き上げられる玉鎖(第1玉鎖71、第2玉鎖72)は、回動軸部材812の回動方向の違いにより異なる。例えば、大洗浄モードが実行された場合には、回動軸部材812が第1回動方向C11(図4参照)に回動されて、第1玉鎖71が吊り上げられて、排水弁7が引き上げられる。小洗浄モードが実行された場合には、回動軸部材812が第2回動方向C12(図4参照)に回動されて、第2玉鎖72が吊り上げられて、排水弁7が引き上げられる。
連動軸部材813は、便器洗浄タンク2の内部の一方側(右側)の上方において、アクチュエータ811から一方側(右側)に水平方向に延びるように配置される。連動軸部材813は、アクチュエータ811を挟んで、回動軸部材812と同軸上に配置される。連動軸部材813は、回動軸部材812と一体的に回動可能に構成される。連動軸部材813は、回動軸部材812と同軸上になるように、回動軸部材812の延長線上に延びるアクチュエータ811の出力軸の先端に接続されている。つまり、連動軸部材813を回動させると、回動軸部材812も回動する。連動軸部材813にはワイヤー部材W(図3参照)が接続され、非常時(例えば停電時)において手動操作部20を手動で操作することで、ワイヤー部材W(図3参照)を引っ張って、連動軸部材813及び回動軸部材812を回動させる。これにより、非常時(例えば停電時)に、連動軸部材813が回動することにより、第1玉鎖71又は第2玉鎖72を引き上げて、排水弁7を引き上げることにより、排水弁7の開閉動作を行って、手動で洗浄動作を行うことができる。なお、手動操作部20及び非常時(例えば停電時)において手動で排水弁7を引き上げるための機構の詳細については後述する。
オーバーフロー管6は、上部に開口部6aを有し、上下方向に延びる略円筒状の管である。オーバーフロー管6は、下端側が、排水口2cに連通している。オーバーフロー管6は、便器洗浄タンク2に貯留された洗浄水の水位が所定位置を上回って溢れた際に、洗浄水が開口部6aから流入して排水の際に便器へ流出するようになっている。
フロート4は、便器洗浄タンク2内の洗浄水の水位に伴って上下に移動する。フロート4は、フロート本体41と、フロートアーム42と、アーム軸43と、を有する。
フロート本体41は、水に浮く浮きであり、略円筒状のプラスチック素材で形成される。
アーム軸43は、フロート本体41から上下に移動可能に配置される。アーム軸43の下端はフロート本体41に接続される。
フロートアーム42は、下端がアーム軸43に接続され、フロート本体41の上下移動に伴って縮んだり伸びたりするように屈曲している。フロートアーム42は、フロート本体41の上下移動に伴って、ボールタップ給水栓3の弁を開閉する。
吐水管5は、上下方向に延び、ボールタップ給水栓3から供給された洗浄水を便器洗浄タンク2へ供給する管である。吐水管5は、下端が開放され、便器洗浄タンク2内に貯留された水に浸漬されている。吐水管5は、上端側においてボールタップ給水栓3の側面に接続され、補給水供給口51を有する。
ボールタップ給水栓3は、便器洗浄タンク2の内部に配置され、便器洗浄タンク2に貯留された洗浄水の水位に応じて、給水管(図示せず)から洗浄水を便器洗浄タンク2に供給する。ボールタップ給水栓3は、便器洗浄タンク2の幅方向に沿って延びる略円筒形の形状に形成され、一方が給水管(図示せず)に接続され、他方がフロート4に接続される。また、ボールタップ給水栓3は、フロート4近傍の側部が分岐して吐水管5に接続され、給水管(図示せず)から供給された洗浄水を、吐水管5を介して便器洗浄タンク2に供給する。
次に、非常時(例えば停電時)において、手動で排水弁7を引き上げるための機構について説明する。図4は、電動洗浄機構部8を示す斜視図である。図5は、手動操作部20を示す斜視図である。
本実施形態の便器洗浄装置1は、図4に示すように、電動洗浄機構部8の連動軸部材813の回動軸J1に対して偏心した偏心軸J2を中心に回動させるための偏心機構91と、偏心機構91を介して連動軸部材813に連結される偏心アーム部材92(連動側アーム部材)と、巻きバネ部材93(弾性部材)と、を備える。また、便器洗浄装置1は、図5に示すように、手動操作部20(便器洗浄用の操作ハンドル)と、を備える。
連動軸部材813は、前述の通り、便器洗浄タンク2の内部の一方側の上方において、アクチュエータ811を挟んで、回動軸部材812と同軸上に配置される。連動軸部材813を回動させると、回動軸部材812も回動する。連動軸部材813は、手動操作部20(図1参照)を手動で操作することで回動可能である。連動軸部材813は、図4に示すように、支持ケース82の底面板821から立設される立設壁822に回転可能に支持される。
手動操作部20は、図1及び図5に示すように、ライニング110の前壁面P1(壁部)に設けられる。手動操作部20は、非常時(例えば停電時)に手動で操作することで、連動軸部材813及び回動軸部材812を回動させることができる。これにより、非常時(例えば停電時)に、連動軸部材813及び回動軸部材812を回動させて、引き上げアーム部材81を回動させることで、第1玉鎖71又は第2玉鎖72を引き上げて、手動で洗浄動作を行うことができる。
手動操作部20は、図4及び図5に示すように、ワイヤー部材W(線状部材)を介して、連動軸部材813に連結される偏心アーム部材92に接続される。ワイヤー部材Wは、便器102を洗浄する際に操作される。
図4及び図5に示すように、ワイヤー部材Wは、上端接続部Wa(他端部)と、ワイヤー線Wbと、下端接続部Wc(一端部)と、を有する。ワイヤー線Wbは、金属製の長尺の線材により形成され、ワイヤー線Wbの途中の部分は、ワイヤーチューブWtに通されて配置される。上端接続部Waは、ワイヤー線Wbの上端に設けられる。下端接続部Wcは、ワイヤー線Wbの下端に設けられる。上端接続部Wa及び下端接続部Wcは、厚みを有する円柱状に形成される。ワイヤー線Wbは、上端接続部Wa及び下端接続部Wcの円柱状の部分の周面に接続されている。ワイヤー部材Wは、ライニング110の壁パネルPの前壁面P1に設けられた手動操作部20が操作されることで、引っ張られる。手動操作部20の詳細については後述する。
偏心機構91及び偏心アーム部材92に関連する構成について説明する。
図6Aは、偏心機構91が初期位置に位置する状態を示す斜視図である。図6Bは、偏心機構91が初期位置に位置する状態を示す図である。図7Aは、偏心機構91が偏心位置に位置する状態を示す斜視図である。図7Bは、偏心機構91が偏心位置に位置する状態を示す図である。
図6A及び図6Bに示すように、偏心機構91は、連動軸部材813の径方向(軸方向に交差する方向)に延びる径方向延在アーム部材911と、連動軸部材813の回動軸J1から偏心した位置において偏心アーム部材92を径方向延在アーム部材911に接続する偏心軸部材912と、を備える。
径方向延在アーム部材911は、連動軸部材813の軸方向に厚みを有し、連動軸部材813の一方側の端部から、連動軸部材813の径方向(連動軸部材813の回動軸J1方向に交差する方向)に突出する板状に形成される。径方向延在アーム部材911は、連動軸部材813の回動軸J1を中心に回動可能である。
径方向延在アーム部材911は、連動軸部材813の回動軸J1を中心に、第1位置(図6A及び図6B参照)から第2位置(図7A及び図7B参照)に回動可能に構成される。径方向延在アーム部材911が第1位置に位置する場合、後述する偏心アーム部材92は、ワイヤー取付筒状部923が連動軸部材813の回動軸J1と同軸上に位置する初期位置(第1位置)に位置する。径方向延在アーム部材911が第2位置に位置する場合、ワイヤー取付筒状部923は、偏心機構91により連動軸部材813の回動軸J1から偏心された偏心位置(第2位置)に位置する。径方向延在アーム部材911の径方向の外側の先端側には、外側取付穴911a(外側取付部)が形成(配置)される。
外側取付穴911aには、偏心軸部材912が配置され、偏心軸部材912を介して、偏心アーム部材92が取り付けられている。偏心アーム部材92には、ワイヤー部材Wの上端接続部Wa(他端部)が取り付けられるワイヤー取付筒状部923(後述)が形成されている。つまり、外側取付穴911aには、後述するワイヤー取付筒状部923が形成された偏心アーム部材92が取り付けられ、偏心アーム部材92を介して、ワイヤー部材Wの上端接続部Wa(他端部)が取り付けられている。
偏心軸部材912は、偏心アーム部材92を径方向延在アーム部材911に接続する軸部材である。偏心軸部材912は、径方向延在アーム部材911における連動軸部材813の径方向の外側において、連動軸部材813の回動軸J1から偏心した位置において、連動軸部材813の回動軸J1に平行な偏心軸J2方向に延びる。偏心軸J2は、外側取付穴911aに設けられる。偏心軸部材912は、連動軸部材813の回動軸J1に対して偏心した偏心軸J2を中心に回動可能に、偏心アーム部材92を径方向延在アーム部材911に接続される。
偏心アーム部材92は、連動軸部材813の回動軸J1方向の一方側の端部(一端部)に配置される。偏心アーム部材92は、偏心軸J2を中心に回動可能に、偏心軸部材912により、径方向延在アーム部材911に接続される。偏心アーム部材92は、コ字状の連結部921と、連結部921から連動軸部材813側に延びる支持板922と、支持板922から連動軸部材813とは反対側に円筒状に突出するワイヤー取付筒状部923(第1線状部材取付部)と、支持板922から連結部921と反対側に延びる規制延在部924と、を有する。連結部921、支持板922及び規制延在部924は、連続して直線状に形成され、連動軸部材813の径方向に延びる。
連結部921は、径方向延在アーム部材911を偏心軸J2方向に挟んだコ字状に形成される。連結部921は、偏心軸部材912により径方向延在アーム部材911に連結される。偏心軸部材912は、連動軸部材813から偏心した位置において、連動軸部材813の回動軸J1に平行な偏心軸J2方向に延びて形成される。偏心軸部材912は、連結部921及び径方向延在アーム部材911を偏心軸J2方向に貫通して、連結部921及び径方向延在アーム部材911を連結する。
偏心軸部材912の軸芯には、巻きバネ部材93が巻き付けられている。巻きバネ部材93は、ワイヤー取付筒状部923が連動軸部材813の回動軸J1と同軸上となる同軸位置に戻るように、偏心アーム部材92を付勢する。なお、本実施形態においては、偏心軸部材912の軸芯には、巻きバネ部材93が巻き付けられているが、これに限定されない。巻きバネ部材93は無くてもよい。巻きバネ部材93が無い場合であっても、連動軸部材813が元の回転位置に戻る反動により、偏心アーム部材92も初期位置側に戻るように回動して、ワイヤー取付筒状部923は、連動軸部材813の回動軸J1と同軸上となる同軸位置に戻るように移動する。
支持板922は、連結部921から、連動軸部材813の径方向の回動軸J1側に延びる板状に形成される。支持板922は、ワイヤー取付筒状部923が連動軸部材813の回動軸J1と同軸上に位置する初期位置(第1位置)(図6A及び図6B参照)に位置する場合は、連動軸部材813の回動軸J1方向の一方側の端部の端面(連動軸部材813の回動軸J1に直交する端面)に対向して配置される。また、支持板922は、ワイヤー取付筒状部923が偏心機構91により連動軸部材813の回動軸J1から偏心された偏心位置(第2位置)(図7A及び図7B参照)に位置する場合には、連動軸部材813の回動軸J1方向の一方側の端部の端面(連動軸部材813の回動軸J1に直交する端面)の下方側に移動する。
ワイヤー取付筒状部923は、連動軸部材813の回動軸J1方向に延びる。ワイヤー取付筒状部923には、ワイヤー部材Wを下方に向けて直線状に真っ直ぐに配置した状態で、ワイヤー部材Wの上端接続部Wa(他端部)が挿入されて取り付けられる。ワイヤー部材Wが引っ張られていない場合には、偏心アーム部材92が巻きバネ部材93により付勢されて、ワイヤー取付筒状部923は、連動軸部材813の回動軸J1と同軸上に配置される。
偏心アーム部材92は、ワイヤー取付筒状部923が連動軸部材813の回動軸J1と同軸上に位置する初期位置(第1位置)(図6A及び図6B参照)と、ワイヤー取付筒状部923が偏心機構91により連動軸部材813の回動軸J1から偏心された偏心位置(第2位置)(図7A及び図7B参照)と、に移動可能に配置される。本実施形態においては、図6A及び図6Bに示すように、偏心アーム部材92の初期位置は、巻きバネ部材93により付勢された偏心アーム部材92において、ワイヤー取付筒状部923が連動軸部材813側に付勢された状態で、連動軸部材813と連動軸部材813の回動軸J1とが同軸上に配置される位置である。偏心アーム部材92の偏心位置は、図7A及び図7Bに示すように、手動の洗浄動作を行うために、ワイヤー取付筒状部923が、偏心アーム部材92を、偏心機構91により連動軸部材813の回動軸J1から偏心された偏心軸J2を中心に回動させながら、連動軸部材813の回動軸J1を中心に所定角度回動させた位置である。
偏心アーム部材92の初期位置において、図6A及び図6Bに示すように、連動軸部材813の回動軸J1(軸)とワイヤー取付筒状部923(線状部材取付部)とは、同軸上に位置する。また、図6Bに示すように、偏心アーム部材92の初期位置における連動軸部材813の軸J1と偏心軸J2とを繋ぐ第1位置設定仮想線Liの角度αは、垂直方向に延びる垂直仮想線Lpの上方側から、連動軸部材813の軸J1を中心に偏心アーム部材92が初期位置(第1位置)から偏心位置(第2位置)へ回動する場合の回動方向に、0~90°の範囲であることが好ましく、より好ましくは、45°±20°の範囲である。本実施形態においては、偏心アーム部材92の初期位置における垂直方向からの第1位置設定仮想線Liの角度αは、例えば、45°である。
偏心アーム部材92の初期位置における垂直方向の上方側からの連動軸部材813の回動軸J1を中心とした第1位置設定仮想線Liの角度αをこの範囲に設定した理由は、ワイヤー部材Wを真っ直ぐ下方に引っ張る場合に、連動軸部材813の回動軸J1を中心とした円の接線方向に近い方向に偏心アーム部材92を傾けた状態で、偏心軸J2を中心に偏心アーム部材92を回動させながら、連動軸部材813の回動軸J1を中心に回動することにより、ワイヤー部材Wの操作荷重を低減した状態で、ワイヤー部材Wを引っ張ることができるためである。
例えば、偏心アーム部材92の初期位置における垂直方向の上方側からの連動軸部材813の回動軸J1を中心とした第1位置設定仮想線Liの角度αを0°近傍に設定して、ワイヤー部材Wを引っ張る方向を真っ直ぐ下方とすると、偏心アーム部材92を偏心軸J2と連動軸部材813の回動軸J1とが、ワイヤー部材Wを引っ張る方向に沿って配置されるため、連動軸部材813の回動軸J1を中心とした円の径方向に近い方向に引っ張ることになる。そのため、ワイヤー部材Wを引っ張った際の偏心アーム部材92の回動開始時において、偏心アーム部材92の回動量が少なくなる。
また、偏心アーム部材92の初期位置における垂直方向の上方側からの連動軸部材813の回動軸J1を中心とした第1位置設定仮想線Liの角度αを90°を超える角度に設定すると、偏心アーム部材92を偏心軸J2が連動軸部材813の回動軸J1から横方向にずれた位置に配置されるため、ワイヤー部材Wを引っ張る方向を真っ直ぐ下方とすると、偏心アーム部材92を横方向に沿った向きから上下方向に沿った向きに回動させることになる。そのため、大きな操作荷重を必要とする。
従って、偏心アーム部材92の初期位置における第1位置設定仮想線Liの角度αは、垂直方向に延びる垂直仮想線Lpの上方側から、連動軸部材813の軸J1を中心に偏心アーム部材92が初期位置(第1位置)から偏心位置(第2位置)へ回動する場合の回動方向に、0~90°の範囲であることが好ましく、より好ましくは、45°±20°の範囲である。このような第1位置設定仮想線Liの角度αを設定することで、ワイヤー部材Wを真っ直ぐ下方に引っ張る場合に、操作荷重を低減して、連動軸部材813の回動操作をスムーズに行うことができる。
また、本実施形態においては、偏心軸J2は、径方向延在アーム部材911の外側取付穴911aに設けられる。そのため、前述の第1位置設定仮想線Liは、径方向延在アーム部材911の第1位置における連動軸部材813の回動軸J1と径方向延在アーム部材911の外側取付穴911aとを繋ぐ仮想線でもある。よって、径方向延在アーム部材911の第1位置において、連動軸部材813の回動軸J1と径方向延在アーム部材911の外側取付穴911aとを繋ぐ第1位置設定仮想線Liの角度αは、連動軸部材813の回動軸J1と偏心軸J2とを繋ぐ第1位置設定仮想線Liの角度αと同様に、連動軸部材813の回動軸J1を中心に径方向延在アーム部材911が第1位置から第2位置へ回動する場合の回動方向に、0~90°の範囲であることが好ましく、より好ましくは、45°±20°の範囲である。径方向延在アーム部材911の第1位置における垂直方向の上方側からの連動軸部材813の回動軸J1を中心とした第1位置設定仮想線Liの角度αをこの範囲に設定した理由は、前述した偏心アーム部材92の初期位置における垂直方向の上方側からの連動軸部材813の回動軸J1を中心とした第1位置設定仮想線Liの角度αを設定した理由と同じである。
ワイヤー取付筒状部923には、図6Aに示すように、ワイヤー取付穴923aと、導入スリット923bと、干渉回避スリット923c(スリット)と、が形成される。
ワイヤー取付穴923aは、ワイヤー取付筒状部923の軸方向における連動軸部材813と反対側の一端部から、連動軸部材813側に窪む円柱状に形成される。ワイヤー取付穴923aには、ワイヤー部材Wの上端接続部Wa(他端部)が挿入されて配置される。
導入スリット923bは、ワイヤー取付筒状部923の筒状の周壁において、先端から基端に向けて軸方向に延びるスリット状に形成される。
干渉回避スリット923cは、ワイヤー取付筒状部923が同軸位置に配置される場合において、連動軸部材813の回動時にワイヤー部材Wの干渉を回避するためのスリットである。干渉回避スリット923cは、ワイヤー取付筒状部923の筒状の周壁を周方向に沿って延びるスリット状に形成される。干渉回避スリット923cは、ワイヤー取付筒状部923の筒状の部分の基端側において、導入スリット923bに連通して形成される。干渉回避スリット923cは、導入スリット923bから筒状の周壁の周方向に沿って、例えば180°の範囲でスリット状に形成される。なお、干渉回避スリット923cが形成される範囲は、180°の範囲に限定されない。
ワイヤー取付筒状部923にワイヤー部材Wを装着する場合には、ワイヤー線Wbを導入スリット923bに挿入しながら、ワイヤー取付穴923aにワイヤー部材Wの円柱状の上端接続部Waを挿入する。ワイヤー取付穴923aにワイヤー部材Wの上端接続部Waを挿入することで、ワイヤー線Wbは、干渉回避スリット923cに配置される。
ワイヤー線Wbを干渉回避スリット923cに配置した状態においては、洗浄時に、回動軸部材812及び連動軸部材813が回動して、ワイヤー取付筒状部923が回動した場合であっても、ワイヤー取付筒状部923の干渉回避スリット923cによりワイヤー部材Wの干渉を回避できる。そのため、ワイヤー部材Wが動かない状態で、連動軸部材813を回動させることができる。
図6Bに示す偏心アーム部材92の初期位置から、ワイヤー部材Wを真っ直ぐ下方に引っ張ることで、偏心アーム部材92を回動する方向において、偏心アーム部材92の初期位置における第1位置設定仮想線Liの角度αの位置から、図7Bに示すように、偏心アーム部材92を回動角度β回動させる。回動角度βは、例えば、90°程度である。これにより、偏心アーム部材92は、偏心アーム部材92の偏心位置に回動される。これにより、ワイヤー部材Wを真っ直ぐ下方に引っ張る場合に、連動軸部材813の回動軸J1を中心とした円の接線方向に近い方向に偏心アーム部材92を傾けた状態で、偏心軸J2を中心に偏心アーム部材92を回動させながら、連動軸部材813の回動軸J1を中心に回動して、ワイヤー部材Wを引っ張ることができる。
ここで、ワイヤー部材Wを支持ケース82に取り付ける構造について説明する。
支持ケース82は、図6A及び図7Aに示すように、底面板821の一方側の端部に配置される第1下面板823と、第1下面板823の他方側において段差側面824を介して配置され第1下面板823よりも上方に配置される第2下面板825と、を有する。
第1下面板823は、ワイヤー部材Wを固定するための支持ケース側ワイヤー固定穴823aを有する。支持ケース側ワイヤー固定穴823aは、円形状の貫通穴823bと、スリット溝823cと、を有する。貫通穴823bには、ワイヤー部材Wが貫通して配置される。スリット溝823cは、ワイヤー部材Wを貫通穴823bに取り付ける際にワイヤー部材Wが通される。
支持ケース側ワイヤー固定穴823aには、支持ケース側ワイヤー固定機構31により、ワイヤー部材Wが固定される。図6Aに示すように、支持ケース側ワイヤー固定機構31は、第1下面板823において、連動軸部材813の回動軸J1を通り且つ垂直方向に延びる垂直仮想線Lp上に配置されている。支持ケース側ワイヤー固定機構31を、第1下面板823において、垂直仮想線Lp上に配置することで、ワイヤー部材Wと支持ケース側ワイヤー固定機構31との間の摩擦抵抗が低減され、ワイヤー部材Wをスムーズに移動させることができる。
なお、本実施形態においては、支持ケース側ワイヤー固定機構31を、第1下面板823において、連動軸部材813の回動軸J1を通り且つ垂直方向に延びる垂直仮想線Lp上(垂直仮想線Lpの下方側から、連動軸部材813の回動軸J1を中心として0(ゼロ)°)に配置したが、これに限定されない。支持ケース側ワイヤー固定機構31を、例えば、図6Bに示すように、第1下面板823において、垂直仮想線Lpの下方側から、連動軸部材813の回動軸J1を中心として、±θ(例えば、±20°)の角度の範囲内に配置してもよい。
図6A及び図6Bに示すように、支持ケース側ワイヤー固定機構31は、上側ナット311と、上側ワッシャ312と、下側ナット313と、下側ワッシャ314と、上下方向に延びる筒状軸部材315と、を有する。筒状軸部材315は、支持ケース側ワイヤー固定穴823aに挿入されている。筒状軸部材315の内部には、ワイヤー部材Wが上下方向に貫通して配置されている。
ワイヤー部材Wを支持ケース側ワイヤー固定機構31に固定する場合には、ワイヤー部材Wのワイヤー線Wbを筒状軸部材315に挿通させて、筒状軸部材315を支持ケース側ワイヤー固定穴823aに挿入すると共に、筒状軸部材315の上方側から上側ナット311及び上側ワッシャ312を挿入した状態で、上側ナット311を筒状軸部材315の上方側に螺合させる。また、筒状軸部材315の下方側から下側ナット313及び下側ワッシャ314を挿入した状態で、下側ナット313を筒状軸部材315の下方側に螺合させる。これにより、ワイヤー線Wbを挿通させた筒状軸部材315を、第1下面板823に固定する。このようにして、支持ケース側ワイヤー固定機構31により、ワイヤー部材Wを真っ直ぐの状態で、第1下面板823に固定できる。
第1下面板823の支持ケース側ワイヤー固定穴823aの下方側には、ワイヤー部材Wを下方に引っ張ることができるように、ワイヤー部材配置空間Kが形成され、ワイヤー部材配置空間Kには、ワイヤー部材Wを下方に向けて真っ直ぐの状態で直線状に配置される。
以上の支持ケース側ワイヤー固定機構31においては、筒状軸部材315が上下方向に延びるため、筒状軸部材315の上下方向の位置を調整して、支持ケース側ワイヤー固定機構31により、ワイヤー部材Wを固定できる。
また、筒状軸部材315の上側及び下側を上側ナット311と下側ナット313で固定するため、支持ケース側ワイヤー固定穴823aからワイヤー部材Wが抜けることを防止した状態で、ワイヤー部材Wを真っ直ぐの状態で固定できる。
第2下面板825には、図6Aに示すように、回動止め部826と、移動規制部827と、が形成される。
回動止め部826は、複数の突出延在部826aにより構成される。複数の突出延在部826aは、第2下面板825の幅方向(連動軸部材813の回動軸J1方向に直交する方向のうちの水平方向)の一方側において、第2下面板825の上面から突出すると共に幅方向(連動軸部材813の軸に交差する方向)に延びる。複数の突出延在部826aは、連動軸部材813の回動軸J1方向に並列に並んで配置される。回動止め部826には、図7Aに示すように、偏心アーム部材92の規制延在部924の先端が第1回動方向C11に回動する場合に、偏心アーム部材92の偏心位置において、偏心アーム部材92の規制延在部924の先端が当接する。これにより、回動止め部826は、偏心アーム部材92の回動方向の移動を規制する。よって、偏心アーム部材92が過剰に回動されることを抑制できる。
移動規制部827は、第2下面板825の連動軸部材813側において、段差状に突出する壁状に形成される。移動規制部827は、図7Aに示すように、偏心アーム部材92の偏心位置において、偏心アーム部材92が回動止め部826により回動方向への移動が規制された状態で、偏心アーム部材92の規制延在部924における連動軸部材813側への移動を規制する。これにより、偏心アーム部材92の先端側が連動軸部材813側に移動することを抑制することで、偏心アーム部材92が傾くことを抑制できる。
手動操作部20(便器洗浄用の操作ハンドル)について説明する。手動操作部20は、便器洗浄装置1の便器102を洗浄する際に操作される。図8は、手動操作部20を示す断面図である。図9は、手動操作部20の操作側アーム部材24を回動させた状態を示す図である。
手動操作部20は、図5及び図8に示すように、ハンドル部21と、ハンドル支持筒体22と、支持体固定部材23と、操作側アーム部材24と、取付プレート25(取付部材)と、を有する。ハンドル部21、ハンドル支持筒体22及び操作側アーム部材24を、例えば工場などで組み立てることで、ユニット化したハンドルユニット200として構成することができる。
ハンドル部21は、ハンドル回動円板211と、軸部材212と、を有する。
ハンドル回動円板211は、所定の厚みを有する円板状に形成され、ライニング110の前壁面P1の前面側に配置される。本実施形態においては、図8に示すように、ハンドル回動円板211は、ライニング110の前壁面P1の前面から僅かに離れた位置において、ライニング110の前壁面P1の前面に平行に配置されている。
ハンドル回動円板211は、ライニング110の前壁面P1の前面に平行な平面上において、前壁面P1に対して直交する方向(交差する方向)に延びる回動軸Jaを中心に横回転可能である。回動軸Jaは、ハンドル回動円板211の円形部分の中心においてハンドル回動円板211に直交(交差)する方向に延びる。ハンドル回動円板211は、人により手動で回動させることが可能である。
ハンドル回動円板211の半径L1は、ライニング110の前壁面P1の取付開口111の孔径の半径L2よりも大きく形成される。また、ハンドル回動円板211の半径L1(図8参照)は、連動軸部材813の回動軸J1と偏心機構91の偏心軸J2(径方向延在アーム部材911の外側取付穴911a)との間の距離L5(図6A及び図6B参照)よりも大きい(L1>L5)。操作する側のハンドル部21の半径L1を、連動軸部材813の回動軸J1からの回動半径である距離L5(連動軸部材813の回動軸J1と偏心機構91の偏心軸J2(径方向延在アーム部材911の外側取付穴911a)との間の距離L5)よりも大きく構成することにより、ハンドル部21を操作する際の操作力を小さくすることができる。
また、偏心アーム部材92が初期位置に位置する場合には、偏心アーム部材92のワイヤー取付筒状部923と連動軸部材813の回動軸J1とは同軸上に位置する。そのため、偏心機構91の偏心軸J2と偏心アーム部材92のワイヤー取付筒状部923との距離L6(図6B及び図7B参照)は、連動軸部材813の回動軸J1と偏心機構91の偏心軸J2との間の距離L5と同じである(L6=L5)。本実施形態では、ハンドル回動円板211の半径L1が、連動軸部材813の回動軸J1と偏心機構91の偏心軸J2との間の距離L5よりも大きい(L1>L5)ことから、ハンドル回動円板211の半径L1は、偏心機構91の偏心軸J2と偏心アーム部材92のワイヤー取付筒状部923との距離L6よりも大きい(L1>L6)。
軸部材212は、ハンドル回動円板211の裏面から後方側に延びる軸状に形成される。軸部材212は、ハンドル支持筒体22の内部を貫通して配置され、後方側の端部が、ハンドル支持筒体22から後方側に突出する。軸部材212は、ハンドル回動円板211を回動させた場合に、ハンドル回動円板211と一体で回動軸Jaを中心に回動する。
ハンドル支持筒体22は、筒状に形成され、ライニング110の前壁面P1の取付開口111に貫通して配置された状態で、ライニング110の前壁面P1の取付開口111に取り付けられる。ハンドル支持筒体22は、ハンドル部21を支持する。ハンドル支持筒体22の内部には、ハンドル部21の軸部材212が貫通されて配置されており、ハンドル回動円板211は、ハンドル支持筒体22の手前側に配置されることで、ライニング110の前壁面P1の表面に配置される。
操作側アーム部材24は、ハンドル部21の回動動作に連動して回動軸Jaを中心に回動可能である。操作側アーム部材24は、操作軸部材241と、上下方向に延びる上下方向延在部242と、を有する。操作軸部材241は、ハンドル部21の軸部材212の後端に固定(接続)される。上下方向延在部242は、操作軸部材241の後方側の端部に連結され、操作軸部材241の後方側の端部から操作軸部材241の径方向の上方側に延びる。操作側アーム部材24は、上下方向に延びる上下方向延在部242を有すると共に回動軸Jaを中心に回動するように構成されることで、奥行方向に大きくなることを抑制できる。
操作側アーム部材24の後端部の上下方向の長さL4は、ライニング110の前壁面P1の取付開口111の孔径L3(直径)よりも小さい(L4<L3)。上下方向延在部242の上端には、ワイヤー部材Wを取り付けるためのハンドル側ワイヤー取付部243(第2線状部材取付部)が形成される。
ハンドル側ワイヤー取付部243には、ワイヤー部材Wの下端接続部Wcが取り付けられる。ハンドル側ワイヤー取付部243には、ワイヤー取付穴243a(線状部材配置部)と、ワイヤー導入スリット243b(線状部材導入スリット)と、移動範囲スリット243c(線状部材回避スリット)と、が形成される。
ワイヤー取付穴243aは、図5及び図8に示すように、ハンドル部21側の手前から後方側に水平に円柱状に窪む。ワイヤー取付穴243aには、ワイヤー部材Wの下端接続部Wc(一端部)が挿入されて配置される。
ワイヤー導入スリット243bは、図5に示すように、ハンドル側ワイヤー取付部243の前面側の前面壁において、ワイヤー取付穴243aから斜め下方に延びるスリット状に形成される。ワイヤー導入スリット243bは、ワイヤー部材Wの下端接続部Wcをワイヤー取付穴243aに配置する際に、ワイヤー部材Wを導入するためのスリットである。
移動範囲スリット243cは、操作側アーム部材24の回動時にワイヤー部材Wの干渉を回避するためのスリットである。移動範囲スリット243cは、ワイヤー取付穴243aに連通し、ハンドル側ワイヤー取付部243の上部において、ワイヤー部材Wの移動範囲に亘って、上方側に向けて開放する溝状に形成される。移動範囲スリット243cは、ハンドル側ワイヤー取付部243を回動する場合に、ワイヤー線Wbがハンドル側ワイヤー取付部243の回動を妨げないように、ハンドル側ワイヤー取付部243との干渉を避ける範囲にスリット状に形成される。
ワイヤー取付穴243aにワイヤー部材Wを装着する場合には、ワイヤー線Wbをワイヤー導入スリット243bに挿入しながら、ワイヤー取付穴243aにワイヤー部材Wの円柱状の下端接続部Wcを挿入する。ワイヤー取付穴243aにワイヤー部材Wの下端接続部Wcを挿入することで、ワイヤー線Wbは、移動範囲スリット243cに配置される。
ワイヤー線Wbを移動範囲スリット243cに配置した状態においては、洗浄時に、操作側アーム部材24が回動した場合であっても、ハンドル側ワイヤー取付部243の移動範囲スリット243cによりワイヤー部材Wの干渉を回避できる。そのため、ワイヤー部材Wの干渉を回避した状態で、操作側アーム部材24を回動させることができる。
以上のハンドル側ワイヤー取付部243において、手動操作部20を手動で操作して洗浄動作を実行する場合には、手動操作部20のハンドル部21を回動させる。本実施形態においては、ハンドル部21を、第1回転方向C21又は第2回転方向C22のいずれの回転方向に回しても、ワイヤー部材Wを引っ張ることができる。
ここで、ワイヤー導入スリット243bは、図9に示すように、ハンドル部21を基準位置から第1回転方向C21(時計回り)に第1角度A1(例えば、90°)回動させた場合においても、ハンドル部21を基準位置から第1回転方向C21と反対の第2回転方向C22(半時計回り)に第2角度A2(例えば、90°)回動させた場合においても、ワイヤー部材Wは、移動範囲スリット243cの範囲内における第1周方向範囲D1又は第2周方向範囲D2内において移動するため、ワイヤー導入スリット243bが形成されていない範囲を移動する。本実施形態においては、ワイヤー導入スリット243bは、ワイヤー部材Wが入り込まない位置に形成される。これにより、ワイヤー部材Wがハンドル側ワイヤー取付部243から外れることを防止できる。
取付プレート25には、図5及び図8に示すように、ハンドルユニット200(ハンドル部21、ハンドル支持筒体22及び操作側アーム部材24をユニット化したもの)が取り付けられる。取付プレート25は、前面部251と、手前側水平板部252と、底面部253と、背面部254と、上側水平板部255と、を有する。
前面部251は、正面視で上部が閉じ且つ下部が開放されたコ字状であってライニング110の前壁面P1に平行な板状に形成される。前面部251には、水平方向に貫通する前面側開口251aが形成される。前面側開口251aには、操作側アーム部材24の操作軸部材241が配置される。
手前側水平板部252は、前面部251の上端部から手前側に延びる板状に形成される。手前側水平板部252の下面には、手前側水平板部252を上方側から下方側に貫通するネジ256により、ハンドル支持筒体22の後端側上面221が固定される。
底面部253は、前面部251の下端部から後方側に延びる一対の底面板253a(図5参照)により形成される。底面部253には、上下方向に貫通する底面側開口253b(開口部)が形成される。底面側開口253bには、底面部253を操作側アーム部材24の上方側から移動させることで操作側アーム部材24を挿入させることが可能である。
背面部254は、底面部253の後方側の端部から上方側に延び正面視で上部が閉じ且つ下部が開放されたコ字状であってライニング110の前壁面P1に平行な板状に形成される。背面部254は、水平方向に貫通する背面側開口254aが形成される。
前面側開口251aと底面側開口253bと背面側開口254aとは、連続した開口として形成される。これにより、取付プレート25は、前面側開口251a、底面側開口253b及び背面側開口254aにより、前方側、後方側及び下方側が開口する。
上側水平板部255は、背面部254の上端部から手前側に延びる板状に形成される。上側水平板部255には、ワイヤー部材Wを固定するための操作側ワイヤー固定穴255aが形成される。操作側ワイヤー固定穴255aは、貫通穴255bと、スリット溝255cと、を有する。貫通穴255bには、ワイヤー部材Wが貫通して配置される。スリット溝255cは、ワイヤー部材Wを貫通穴255bに取り付ける際にワイヤー部材Wが通される。
操作側ワイヤー固定穴255aには、操作側ワイヤー固定機構32により、ワイヤー部材Wが固定される。図6A及び図6Bに示すように、操作側ワイヤー固定機構32は、上側ナット321と、上側ワッシャ322と、下側ナット323と、下側ワッシャ324と、上下方向に延びる筒状軸部材325と、を有する。筒状軸部材325は、操作側ワイヤー固定穴255aに挿入されている。筒状軸部材325の内部には、ワイヤー部材Wが上下方向に貫通して配置されている。
ワイヤー部材Wを操作側ワイヤー固定機構32に固定する場合には、ワイヤー部材Wのワイヤー線Wbを筒状軸部材325に挿通させて、筒状軸部材325を操作側ワイヤー固定穴255aに挿入すると共に、筒状軸部材325の上方側から上側ナット321及び上側ワッシャ322を挿入した状態で、上側ナット321を筒状軸部材325の上方側に螺合させる。また、筒状軸部材325の下方側から下側ナット323及び下側ワッシャ324を挿入した状態で、下側ナット323を筒状軸部材325の下方側に螺合させる。これにより、ワイヤー線Wbを挿通させた筒状軸部材325を、取付プレート25の上側水平板部255に固定する。これにより、操作側ワイヤー固定機構32により、ワイヤー部材Wを真っ直ぐの状態で、取付プレート25の上側水平板部255に固定できる。
以上の操作側ワイヤー固定機構32においては、筒状軸部材325が上下方向に延びるため、筒状軸部材325の上下方向の位置を調整して、操作側ワイヤー固定機構32により、ワイヤー部材Wを固定できる。
また、筒状軸部材325の上側及び下側を上側ナット321と下側ナット323で固定するため、操作側ワイヤー固定穴255aからワイヤー部材Wが抜けることを防止した状態で、ワイヤー部材Wを真っ直ぐの状態で固定できる。
手動操作部20をライニング110の前壁面P1の取付開口111に取り付ける場合について説明する。図10は、ハンドルユニット200をライニング110の前壁面P1の取付開口111に取り付ける状態を示す図である。図11は、ハンドルユニット200に取付プレート25を取り付ける状態を示す図である。
図10に示すように、ハンドルユニット200(ハンドル部21、ハンドル支持筒体22及び操作側アーム部材24をユニット化したもの)を、ライニング110の前壁面P1の取付開口111の正面側から取り付ける。ここで、図8に示すように、操作側アーム部材24の上下方向延在部242の長さL4は、ライニング110の前壁面P1の取付開口111の孔径L3(直径)よりも小さい(L4<L3)。そのため、操作側アーム部材24を前壁面P1に取り付ける際に、操作側アーム部材24を前壁面P1の取付開口111に容易に挿入できる。これにより、組立作業を容易に行うことができる。なお、操作側アーム部材24を取付開口111から挿入する際に、操作側アーム部材24を傾けて挿入してもよい。操作側アーム部材24を取付開口111から挿入した後に、前壁面P1の裏面側において、支持体固定部材23によりハンドル支持筒体22を固定する。
続けて、取付プレート25を操作側アーム部材24に取り付ける。この場合には、図11に示すように、操作側アーム部材24の上方から、取付プレート25を移動させる。これにより、取付プレートの底面側開口253bの下方側から、操作側アーム部材24の上下方向延在部242を底面側開口253bに挿入しながら、操作側アーム部材24の操作軸部材241を底面側開口253b及び前面側開口251aに挿入することで、図5に示すように、前面側開口251aに操作側アーム部材24の操作軸部材241を配置できる。この状態において、取付プレート25の手前側水平板部252は、ハンドル支持筒体22の後端側上面221に載置される。そして、図11に示すように、上方側からネジ256によりネジ止めすることで、ハンドル支持筒体22の後端側上面221に、取付プレート25の手前側水平板部252を固定することができる。
このように、取付プレート25を操作側アーム部材24の上方側から移動させるだけで、底面側開口253bに操作側アーム部材24を挿入して、取付プレート25に操作側アーム部材24を容易に取り付けることができる。また、取付プレート25を上方側から移動させることで取付プレート25に操作側アーム部材24を取り付けることができるため、奥行方向の大きさを小さくできる。これにより、奥行方向が狭い場所であっても、取付プレート25に操作側アーム部材24を容易に取り付けることができる。
次に、便器洗浄装置1の動作について説明する。
非常時(例えば停電時)においては、図6Bに示す状態から、手動操作部20を操作してワイヤー部材Wを引っ張ることで、偏心アーム部材92のワイヤー取付筒状部923を下方側に移動させる。これにより、図7Bに示すように、偏心アーム部材92を偏心軸J2を中心に回動させつつ、連動軸部材813を回動軸J1を中心に回動させることができる。
ここで、手動操作部20は、回動軸Jaを中心に横回転が可能なハンドル部21を備える。そのため、ハンドル部21を回動軸Jaを中心に横回転できるため、奥行方向に大きくなることを抑制できる。これにより、手動操作部20をコンパクトに構成できる。また、ハンドル部21の半径L1は、便器洗浄装置1の連動軸部材813の軸J1と偏心軸J2(径方向延在アーム部材911の外側取付穴911a)との間の距離L5よりも大きい。そのため、半径が大きいハンドル部21の操作により、偏心軸J2を中心に便器洗浄装置1の連動軸部材813を回動できるため、操作荷重を低減できる。
また、偏心アーム部材92の初期位置における連動軸部材813の軸J1と偏心軸J2とを繋ぐ第1位置設定仮想線Liの角度αは、垂直方向に延びる垂直仮想線Lpの上方側から、連動軸部材813の軸J1を中心に偏心アーム部材92が初期位置(第1位置)から偏心位置(第2位置)へ回動する場合の回動方向に、0~90°の範囲である。そのため、連動軸部材813の回動軸J1を中心とした円の接線方向に近い方向に偏心アーム部材92を傾けた状態で偏心軸J2を中心に偏心アーム部材92を回動させながら、連動軸部材813の回動軸J1を中心に回動して、ワイヤー部材Wを引っ張ることができる。これにより、操作荷重を低減でき、操作性を向上できる。
このように、非常時(例えば停電時)において、手動操作部20を操作することで、ワイヤー部材Wを引っ張って、偏心アーム部材92を偏心機構91により偏心させた状態で、連動軸部材813を回動させることができる。よって、手動で洗浄動作を容易に実行できる。なお、手動操作部20による操作後には、巻きバネ部材93により、偏心アーム部材92は、ワイヤー取付筒状部923が連動軸部材813の回動軸J1と同軸上の同軸位置に戻される。
また、非常時(例えば停電時)でない場合には、偏心アーム部材92のワイヤー取付筒状部923が連動軸部材813の回動軸J1と同軸位置に配置された状態で、自動洗浄時において、回動軸部材812が回動することに連動して、図4に示す待機から、第1回動方向C11又は第2回動方向C12に、連動軸部材813が回動する。ここで、本実施形態においては、ワイヤー取付筒状部923には、連動軸部材813の回動時にワイヤー部材Wの干渉を回避するための干渉回避スリット923cが形成されている。
そのため、連動軸部材813が、図4に示す待機位置から、第1回動方向C11に回動して大洗浄位置に位置した場合や、図4に示す待機位置から、第2回動方向C12に回動して小洗浄位置に位置した場合において、ワイヤー取付筒状部923の干渉回避スリット923cにより、ワイヤー取付筒状部923は、ワイヤー部材Wの干渉を回避できる。
よって、自動洗浄時において、連動軸部材813の回動軸J1とワイヤー取付筒状部923とが同軸上に位置した状態で連動軸部材813が回動することで、ワイヤー取付筒状部923の干渉回避スリット923cにより、ワイヤー取付筒状部923とワイヤー部材Wとの干渉を回避できる。よって、ワイヤー部材Wが動かない状態で、連動軸部材813を安全に回動させることができる。
以上説明した本実施形態に係る手動操作部20によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態の手動操作部20は、便器102を洗浄する際に動作される線状部材Wの一端部Wcが取り付けられた操作側アーム部材24と、操作側アーム部材24に接続され前壁面P1に対して直交する方向(交差する方向)に延びる回動軸Jaを中心に横回転可能なハンドル部21と、を備える。ハンドル部21を横回転できるため、奥行方向に大きくなることを抑制できる。これにより、手動操作部20をコンパクトに構成できる。よって、奥行方向において、省スペース化を実現できる。
また、本実施形態においては、手動操作部20は、便器洗浄装置1の便器102を洗浄する際に操作され、ハンドル部21の半径L1は、便器洗浄装置1の連動軸部材813の軸J1と径方向延在アーム部材911の外側取付穴911aとの間の距離L5よりも大きい。そのため、便器洗浄装置1の連動軸部材813の軸J1と径方向延在アーム部材911の外側取付穴911aとの距離L5よりも回動半径が大きいハンドル部21の操作により、便器洗浄装置1の連動軸部材813を回動できるため、ハンドル部21を操作する際の操作力を小さくすることができ、操作荷重を低減できる。
また、本実施形態においては、手動操作部20は、便器洗浄装置1の便器102を洗浄する際に操作され、ハンドル部21の半径L1は、便器洗浄装置1の連動軸部材813の軸J1と偏心軸J2との間の距離L5よりも大きい。そのため、便器洗浄装置1の連動軸部材813の軸J1と偏心軸J2との間の距離L5よりも回動半径が大きいハンドル部21の操作により、偏心軸J2を中心に便器洗浄装置1の連動軸部材813を回動できるため、ハンドル部21を操作する際の操作力を小さくすることができ、操作荷重を低減できる。
また、本実施形態においては、操作側アーム部材24は、上下方向に延びる上下方向延在部242を有する。そのため、奥行方向に大きくなることを一層抑制でき、手動操作部20を一層コンパクトに形成できる。
また、本実施形態においては、取付プレート25の底面部253は、操作側アーム部材24の上方側から移動させることで操作側アーム部材24を挿入させることが可能な底面側開口253bを有する。これにより、取付プレート25を操作側アーム部材24の上方側から移動させることで、取付プレート25に操作側アーム部材24を容易に取り付けることができる。また、取付プレート25を上方側から移動させることで取付プレート25に操作側アーム部材24を取り付けることができるため、奥行方向の大きさを小さくできる。これにより、奥行方向が狭い場所であっても、取付プレート25に操作側アーム部材24を容易に取り付けることができる。
また、本実施形態においては、操作側アーム部材24の上下方向の長さL4は、ハンドル部21を取り付ける前壁面P1の取付開口111の孔径L3よりも小さい。そのため、操作側アーム部材24を前壁面P1に取り付ける際に、操作側アーム部材24を前壁面P1の取付開口111に容易に挿入できる。これにより、組立作業を容易に行うことができる。
また、本実施形態においては、ハンドル側ワイヤー取付部243は、ワイヤー導入スリット243bと移動範囲スリット243cとを有し、ワイヤー導入スリット243bは、ハンドル部21を基準位置から第1回転方向C21に第1角度A1回動させた場合においても、ハンドル部21を基準位置から第2回転方向C22に第2角度A2回動させた場合においても、ワイヤー部材Wが入り込まない位置に形成される。これにより、ワイヤー部材Wがハンドル側ワイヤー取付部243から外れることを防止できる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、非常時(例えば停電時)に、ワイヤー部材Wを引っ張ることで、手動で洗浄動作を行うように構成したが、これに限定されない。例えば、紐などを引っ張ることで、手動で洗浄動作を行うように構成してもよい。ワイヤー部材及び紐などは、線状部材の一例である。
また、前記実施形態では、非常時(例えば停電時)にワイヤー部材Wを操作するように構成したが、これに限定されない。非常時でない場合に、ワイヤー部材Wを操作してもよい。つまり、本発明の便器洗浄装置1及び手動操作部20(便器洗浄用の操作ハンドル)は、非常時でないときに使用する場合にも適用可能である。
また、前記実施形態では、手動操作部20を、円形状のハンドルにより構成したが、これに限定されない。例えば、手動操作部を、回転軸から一方側に延びた持ち手を有するハンドルにより構成してもよい。
また、前記実施形態では、偏心アーム部材92を介して、ワイヤー部材Wの上端接続部Waを径方向延在アーム部材911の外側取付穴911aに間接的に取り付けたが、これに限定されない。例えば、偏心アーム部材92を設けずに、ワイヤー部材Wの上端接続部Waを、径方向延在アーム部材911の外側取付穴911aに直接的に取り付けてもよい。