JP7186920B2 - 構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、構造体に関し、より詳細には、第一のフィルムおよび樹脂層を備える構造体、または、第一のフィルム、樹脂層、および第二のフィルムをこの順に備える構造体に関する。
プリント配線板の製造方法として、絶縁層と導体層とを交互に積み重ねるビルドアップ工法によるプリント配線板製造方法が広く用いられている。ビルドアップ工法による製造方法においては、一般的には、絶縁層は硬化性樹脂層として硬化性樹脂組成物を熱硬化させることにより形成される。
近年では、ドライフィルムタイプにより、前述したビルドアップ工法による製造方法に用いられる絶縁層を形成することも提案されている。ドライフィルムは、別途準備する第一のフィルムの面上の領域に、所定の粘度に調整された液状の硬化性樹脂組成物を塗布後、乾燥して得られる硬化性樹脂層を有する構造体である。また、ドライフィルムは、一般的には、硬化性樹脂層の第一のフィルムとは反対側の面を保護するために第二のフィルムがさらに積層されている。
上述した構造体においては、第二のフィルムを先に剥がした後、基材にラミネート後もしくは硬化後に第一のフィルムを剥がすというように工程に順序があるため、第一のフィルムと第二のフィルムのどちらのフィルムから剥がすかを見分ける方法が必要ある。しかし、上述した構造体では、第一のフィルムと第二のフィルムの両方が透明である場合、フィルムの判別がしづらく、第一のフィルムと第二のフィルムの剥がす順序を間違える恐れがあった。特に第一のフィルムと第二のフィルムに同一仕様のものを使用するとその傾向は顕著であり、さらにかかる場合、構造体から第二のフィルムを剥がした際に、第一のフィルムとの関係により、樹脂層に線状の痕(以下、「フィルム痕」という)が入るという課題もあった。そこで、構造体の表裏の判別をし易くする方法としては、例えば、一方の面に表裏が目視にて識別できる色差となる着色層を設けることが提案されている(特許文献1参照)。
また、半導体素子、電子部品等のチップ型デバイス(チップ部品)の封止は、従来から、粉末状エポキシ樹脂組成物を用いたトランスファー成形法、液状エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂等を用いてポッティング法、ディスペンス法、印刷法等により行なわれてきた。しかしながら、現在では、高集積度のデバイスの搭載に好適であり、また、表面弾性波(SAW)デバイスや水晶デバイスなどの封止後に内部を中空とする必要があるデバイスを効率的に製造するため、複数のチップ型デバイスを有する基板上で一括封止してパッケ-ジ化することが求められている。
例えば、特許文献2においては、一括封止できる組成物として、(A)架橋性エラストマー、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤および(D)無機充填材を含むことを特徴とする熱硬化型樹脂組成物が提案されている。また、近年ではドライフィルムタイプにより、一括封止することも提案されている。
ドライフィルムは、通常、第一のフィルムの上に硬化性樹脂層を有する構造体である。一般には、テンションをかけた第一のフィルムの上に液状の硬化性樹脂組成物を塗布後、乾燥して硬化性樹脂層を形成することで、上記の構造体を製造することができる。
ところで、構造体に用いる第一のフィルムは、ロールに巻き取ったフィルムを巻き出して使用されるが、その際にフィルムにしわやたるみが生じるという課題があった。このような課題に対して、フィルムロールを幅方向に14等分したときの各部位におけるロール円周長D1~D14が特定の条件を満たし、かつ、14等分したフィルムロールの幅方向に一直線上に測定した各部位のフィルム厚みT1~T14における最大の厚みの差(Tm)が特定の条件を満たすものが提案されている(特許文献3参照)。
特開2010-069760号公報 特開2015-166403号公報 特開2016-44035号公報
<第一の形態の課題>
しかし、特許文献1の方法においては、コア材の両面に貼り合わされる熱可塑性プラスチックフィルムとは別個の層として着色層を設けているため、工程数が増え、製造コストが増加するという問題がある。
したがって、本発明の第一の形態の目的は、多層構造の構造体の第一のフィルムと第二のフィルムを見分け易く、第二のフィルムを剥がした際に樹脂層にフィルム痕が付きづらい構造体を提供することである。
<第二の形態の課題>
また、特許文献2や3のような構造体において、第一のフィルムが薄い場合には、第一のフィルムにテンションをかけた時にタテしわが生じてしまうという課題を知見した。一方、樹脂層の厚みが薄い場合には、第一のフィルムにしわが生じたとしても、しわに追従して厚みのばらつきの小さい樹脂層を形成することができた。しかし、樹脂層の厚みが例えば50μm以上のように厚い場合には、第一のフィルム上への樹脂層形成時において、第一のフィルムのしわの谷部に塗布した液状の硬化性樹脂組成物が溜まってしまい、その結果、乾燥後に厚みのばらつきの大きい樹脂層が形成されるという課題を知見した。
したがって、本発明の第二の形態の目的は、第一のフィルム上に、厚みが50μm以上であり、かつ、厚みのばらつきの小さい樹脂層を備える構造体を提供することである。
<第一の形態の手段>
本発明者等は、上記第一の形態の目的を達成するために鋭意検討した結果、第一のフィルムと第二のフィルム自体のヘーズ、あるいは構造体の第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値と構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値を調節し、各ヘーズあるいは各L*値、a*値、またはb*値に一定以上の差を付けることで、構造体の表裏の判別をし易くできることを知見した。
また、本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、第一のフィルムと第二のフィルムのトラウザー引裂力を調節し、各トラウザー引裂力に一定以上の差を付けることで、フィルム痕の発生を抑制できることを知見した。
すなわち、本発明の第一の形態の目的に対する第一の態様による構造体は、第一のフィルム、樹脂層、および第二のフィルムをこの順に備え、
前記第一のフィルムのトラウザー引裂力と、前記第二のフィルムのトラウザー引裂力の差が-0.05N以下または+0.05N以上であり、
前記第一のフィルムと前記第二のフィルムのヘーズの差が-5%以下または+5%以上であることを特徴とするものである。
本発明の第一の形態の目的に対する第二の態様による構造体は、第一のフィルム、樹脂層、および第二のフィルムをこの順に備え、
前記第一のフィルムのトラウザー引裂力と、前記第二のフィルムのトラウザー引裂力の差が-0.05N以下または+0.05N以上であり、
前記構造体の前記第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値と前記構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値の差が、下記条件(i)~(iii):
(i)L*値の差が-0.1以下または+0.1以上である、
(ii)a*値の差が-0.1以下または+0.1以上である、
(iii)b*値の差が-1以下または+1以上である、
の少なくとも1つを満たすことを特徴とする。
本発明の第一の形態の目的に対する第一および第二の態様においては、前記第二のフィルムのトラウザー引裂力が、前記第一のフィルムのトラウザー引裂力よりも小さいことが好ましい。
本発明の第一の形態の目的に対する第一および第二の態様においては、前記樹脂層が、硬化性樹脂層であることが好ましい。
本発明の第一の形態の目的に対する第一および第二の態様においては、前記第一のフィルムが、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムから選択されることが好ましい。
本発明の第一の形態の目的に対する第一および第二の態様においては、前記第二のフィルムが、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムから選択されることが好ましい。
<第二の形態の手段>
本発明者等は、上記第二の形態の目的を達成するために鋭意検討した結果、厚みが50μm以上の樹脂層を形成する際に、第一のフィルムのトラウザー引裂力を調節し、かつ、第一のフィルムの厚みを調節することで、厚みのばらつきの小さい樹脂層を形成できることを知見した。本発明はかかる知見によるものである。
本発明の態様による構造体は、第一のフィルムおよび樹脂層を備え、
前記第一のフィルムの厚みが30μm以上であり、
前記第一のフィルムのトラウザー引裂力が0.1N以上であり、
前記樹脂層の厚みが50μm以上であり、
前記樹脂層が硬化性樹脂層であることを特徴とするものである。
本発明の第二の形態の目的に対する態様においては、前記硬化性樹脂層が、熱硬化性樹脂および硬化剤を含むことが好ましい。
本発明の第二の形態の目的に対する態様においては、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ化合物であることが好ましい。
本発明の第二の形態の目的に対する態様においては、前記樹脂層が、硬化性樹脂層であることが好ましい。
本発明の第二の形態の目的に対する態様においては、前記第一のフィルムが、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム 、およびポリイミドフィルムからなる群から選択されることが好ましい。
本発明の第二の形態の目的に対する態様においては、前記第一のフィルムの厚みのばらつきが、±10%以下であることが好ましい。
<第一の形態の効果>
本発明によれば、多層構造の構造体の表と裏を見分け易く、第二のフィルムを剥がした際に樹脂層にフィルム痕が付きづらい構造体を提供することができる。
第一のフィルムと第二のフィルムのトラウザー引裂力を調節し、各トラウザー引裂力に一定以上の差を付けることで、フィルム痕の発生を抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測できる。すなわち、トラウザー引裂力の差を付けると、フィルムを剥がしたときに樹脂層にかかる負荷が、前記引裂力の差が無いものと比較して異なり、適当となる。その結果、樹脂層へのフィルム痕のつきやすさにも差が出るものと考えられる。しかし、あくまでも推測の域であり、この限りではない。
<第二の形態の効果>
また、本発明によれば、第一のフィルム上に、厚みが50μm以上であり、かつ、厚みのばらつきの小さい樹脂層を備える構造体を提供することができる。
第一のフィルムのトラウザー引裂力を調節し、かつ、第一のフィルムの厚みを調節することで、厚みのばらつきの小さい樹脂層を形成できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測できる。すなわち、上記調節により、第一のフィルムの表面状態が適当となり、前記第一のフィルムに張力をかけた際にもその力に耐えることができるため、シワが発生しにくく、その結果、第一のフィルム上に形成する樹脂層を形成しやすくなり、前記樹脂層の厚みのばらつきをも抑制することができるものと推測される。しかしながら、あくまでも推測の域であって、この限りではない。
本発明による構造体の一実施形態を示した概略断面図である。 本発明による構造体の一実施形態を示した概略断面図である。
<第一の形態の具体的な説明>
<構造体>
本発明による構造体は、第一のフィルム、樹脂層、および第二のフィルムをこの順に備えるものであり、第一のフィルムと第二のフィルムが後述する特定の条件を満たすものである。本発明においては、第一のフィルムと第二のフィルムが後述する特定の条件を満たすことで、多層構造の構造体の表と裏を見分け易く、第二のフィルムを剥がした際に樹脂層にフィルム痕が付きづらい構造体を提供することができる。
本発明による構造体について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による構造体の一実施形態を示した概略断面図である。図1に示すように、構造体1は、第一のフィルム10と、第一のフィルム10の一方の面に設けられた樹脂層20と、樹脂層20の第一のフィルム10を設けた面とは反対の面に設けられた第二のフィルム30とを備えている。以下、本発明による構造体を構成する各構成要素について説明する。
[第一のフィルムおよび第二のフィルム]
本発明においては、第一のフィルムと第二のフィルムのトラウザー引裂力の差、およびヘーズの差あるいはLab色空間におけるL*値、a*値、b*値の差が後述する範囲であればよい。
本発明における第一のフィルムとは、構造体の樹脂層を支持する役割を有するものであり、該樹脂層を形成する際に、樹脂組成物が塗布されるフィルムである。本発明においては、基板等の基材上に構造体の樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には、少なくとも樹脂層に接着しているものをいい、樹脂層を硬化した後に構造体から剥離することが好ましい。第一のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムおよびポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等のフッ素樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムを好適に使用することができる。第一のフィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理やマット化処理が施されていてもよいし、スパッタもしくは極薄銅箔、および粘着層が形成されていてもよい。
第一のフィルムの厚さは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。第一のフィルムの厚さは、機械的強度や取扱性等の観点から、好ましくは12μm以上125μm以下であり、より好ましくは15μm以上75μm以下である。
本発明における第二のフィルムとは、構造体の樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、樹脂層の第一のフィルムとは反対の面に設けられるフィルムである。特に本発明においては、基板等の基材上に構造体の樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に構造体から剥離するものをいう。第二のフィルムとしては、例えば、前記第一のフィルムで例示した熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムが好ましい。第二のフィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。
第二のフィルムの厚さは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。第二のフィルムの厚さは、機械的強度や取扱性等の観点から、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは15μm以上50μm以下である。
本発明による構造体は、第一のフィルムのトラウザー引裂力と、第二のフィルムのトラウザー引裂力の差(=「第一のフィルムのトラウザー引裂力」-「第二のフィルムのトラウザー引裂力」)が-0.05N以下または+0.05N以上であり、好ましくは-0.1N以下または+0.1N以上であり、より好ましくは-0.3N以上-0.1N以下または+0.1N以上+0.3N以下であり、さらに好ましくは+0.1N以上+0.3N以下である。第二のフィルムのトラウザー引裂力が、前記第一のフィルムのトラウザー引裂力よりも小さいことが、フィルム痕がより付きづらくなる点において好ましい。
なお、本発明において、第一のフィルムおよび第二のフィルムのトラウザー引裂力は、JIS K 7128-1:1998「プラスチック-フィルム及びシートの引裂強さ試験方法-第一部:トラウザー引裂法」に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、下記の測定条件で測定した値である。但し、本発明において、測定方向については、方向による異方性の有無によらず、縦方向(MD方向)のみ測定するものとする。
(測定条件)
・試験室の温湿度:23±2℃、50±15%
・試験片寸法:150mm×50mm
・試験片中央のスリット長さ:75±1mm
・試験速度:200mm/min
・試験片のつかみ具間距離:75mm
第一のフィルムおよび第二のフィルムのトラウザー引裂力は、第一のフィルムおよび第二のフィルムの熱可塑性樹脂の種類、フィルム製膜時の延伸倍率、フィルムの厚さ、フィルムの破断強度、表面の粗さ等を調節することにより、所望の範囲内に調節することができる。
本発明による構造体は、第一のフィルムのヘーズと第二のフィルムのヘーズの差(=「第一のフィルムのヘーズ」-「第二のフィルムのヘーズ」)は、-5%以下または+5%以上であり、多層構造の構造体の表と裏をより見分け易くなる点において、好ましくは-8%以下または+8%以上であり、より好ましくは-85%以上-8%以下または+8%以上+85%以下である。第一のフィルムおよび第二のフィルムのヘーズは、第一のフィルムおよび第二のフィルムの表面の粗さ、着色剤の添加や種類、熱可塑性樹脂の種類、フィルム製膜時の延伸倍率、フィルムの厚さ等を調節することにより、所望の範囲内に調節することができる。第一のフィルムと第二のフィルムのヘーズの差が上記条件を満たすことで、多層構造の構造体の裏と裏を見分け易くなる。
なお、本発明において、第一のフィルムおよび第二のフィルムのヘーズは、フィルム自体を、ASTMD1003に準拠して、ヘーズメイターを用いて測定した値である。
あるいは、本発明による構造体は、構造体の第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値と構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値の差(=「構造体の第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値」-「構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値」)が下記条件(i)~(iii)の少なくとも1つを満たす。
(i)L*値の差が-0.1以下または+0.1以上であり、多層構造の構造体の表と裏をより見分け易くなる点において、好ましくは-10以下または+10以上であり、より好ましくは-30以上-15以下または+15以上+30以下である。
(ii)a*値の差が-0.1以下または+0.1以上であり、多層構造の構造体の表と裏をより見分け易くなる点において、好ましくは-0.3以下または+0.3以上であり、より好ましくは-30以上-0.3以下または+0.3以上+30以下である。
(iii)b*値の差が-1以下または+1以上であり、多層構造の構造体の表と裏をより見分け易くなる点において、好ましくは-2以下または+2以上であり、より好ましくは-10以上-2以下または+2以上+10以下である。
構造体の第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値および構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値は、第一のフィルムおよび第二のフィルムの表面の粗さ、着色剤の添加量や種類、熱可塑性樹脂の種類、フィルム製膜時の延伸倍率、フィルムの厚さ等を調節することにより、所望の範囲内に調節することができる。構造体の第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値および構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値の差が上記条件を満たすことで、多層構造の構造体の裏と裏を見分け易くなる。この中でも、より見分けやすくなる観点で特に(i)に記載の差、すなわち、L*値の差が上記条件を満たすことが好ましい。
なお、本発明において、構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値および構造体の第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値は、分光測色計を用いて下記の測定条件で測定した値である。
(測定条件)
・反射モード
・正反射光処理
・測定径:SAV(3mm)
・UV条件:100%Full
・視野:10°
・入射光65°
・測定方式:SCE(Specular Component Exclude)
・下地:黒色の台紙(L*値:27.3、a*値0.7、b*値2.0)
[樹脂層]
樹脂層は、構造体の第一のフィルムおよび第二のフィルムの間に位置する層であり、硬化性樹脂層であることが好ましい。硬化性樹脂層は、硬化性樹脂組成物を乾燥して得られる乾燥塗膜であり、加熱により硬化する熱硬化性樹脂層でもよいし、光照射により硬化する光硬化性樹脂層でもよいし、加熱により硬化し、かつ、光照射により硬化する熱硬化性・光硬化性樹脂層でもよい。
(硬化性樹脂組成物)
硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂の少なくともいずれか1種を含むことが好ましく、他の成分をさらに含んでもよい。
(熱硬化性樹脂)
硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含む場合、硬化物の耐熱性が向上し、また、下地との密着性が向上する。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等を用いることができる。これらの中でも、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有するものが好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような分子中に環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基若しくは環状チオエーテル基のいずれか一方または双方を有する化合物であり、例えば、エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物が好ましい。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695、および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂等も用いることができる。
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
(光硬化性樹脂(ラジカル重合))
光硬化性樹脂としては、特に、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーおよび光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル-n-ブチルエーテル、ビニル-t-ブチルエーテル、ビニル-n-アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル-n-オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル等のアリル化合物;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート等のイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
(光硬化性樹脂(カチオン重合))
光硬化性樹脂としては、脂環エポキシ化合物およびビニルエーテル化合物等を好適に用いることができる。このうち脂環エポキシ化合物としては、3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキシル、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)-1,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、1-[1,1-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル)メチル-3’,4’-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、シクロヘキセンオキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n-ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル、αおよび/またはβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。
(アルカリ可溶性樹脂)
硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有することができる。アルカリ可溶樹脂としては、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂を用いることが好ましい。下地との密着性を向上させるだけでなく、特に、カルボキシル基含有樹脂を用いると、現像性の面からより好ましい。カルボキシル基含有樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂でもよい。
(1)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(2)エポキシ樹脂の水酸基を、さらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(3)エポキシ化合物に、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(4)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物等の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(5)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に、不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(6)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に、酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(7)ジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(8)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(9)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
(10)オキセタン樹脂に、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に、2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(11)上述した(1)~(10)のカルボキシル基含有樹脂に、1分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
上述のカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40~200mgKOH/gの範囲が好ましく、45~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であるとアルカリ現像が容易となり、一方、200mgKOH/g以下である正常なレジストパターンの描画が容易となる。
また、上述のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上であると、タックフリー性能、露光後の塗膜の耐現像性、解像性が良好となる。一方、重量平均分子量が150,000以下であると、現像性に優れる。
カルボキシル基含有樹脂は、上述以外のものも使用することができ、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
フェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を有する化合物、例えば、ビフェニル骨格若しくはフェニレン骨格またはその両方の骨格を有する化合物、または、フェノール性水酸基含有化合物、例えば、フェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、メタクレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール等を用いて合成した、様々な骨格を有するフェノール樹脂を用いてもよい。
例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS型フェノール樹脂、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物等公知慣用のフェノール樹脂を用いることができる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、アルカリ可溶性樹脂として、カルボキシル基含有樹脂およびフェノール樹脂のいずれか一方、または、これらの混合物を用いてもよい。
なお、アルカリ可溶性樹脂としてエチレン性不飽和基を含まない材料を用いる場合には、上記光硬化性樹脂を併用することが好ましい。光硬化性樹脂は、活性エネルギー線照射により、光硬化し、かつアルカリ可溶性樹脂のアルカリ水溶液への溶解を助長するものである。いずれの場合にも、1種類または複数種類の光硬化性樹脂を用いることができる。
(熱可塑性樹脂)
硬化性樹脂組成物は、得られる硬化被膜の機械的強度を向上させるために、さらに熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂は、溶剤に可溶であることが好ましい。溶剤に可溶である場合、ドライフィルムの柔軟性が向上し、クラックの発生や粉落ちを抑制できる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂等が挙げられる。前記高分子樹脂としては、アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(硬化剤)
硬化性樹脂組成物は硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、マレイミド化合物、脂環式オレフィン重合体等が挙げられる。硬化剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化剤は、熱硬化性樹脂のエポキシ基等の熱硬化反応が可能な官能基と、その官能基と反応する硬化剤中の官能基との比率が、硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.2~2となるような割合で配合することが好ましい。硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)を上記範囲内とすることで、デスミア工程におけるフィルム表面の粗化を防止することができる。より好ましくは硬化剤の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.2~1.5である。
(硬化促進剤)
硬化性樹脂層は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。このような硬化促進剤の具体例としては、イミダゾールおよびその誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、ヘキサ(N-メチル)メラミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m-アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、トリス-2-シアノエチルフォスフィン等の有機フォスフィン類;トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6-トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合触媒;スチレン-無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤の中でも、BHAST耐性が得られることから、ホスホニウム塩類が好ましい。硬化促進剤は、1種を単独または2種以上混合して用いることができる。
(光反応開始剤)
硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有することができる。光反応開始剤としては、光照射によりラジカル、塩基、酸等を発生して硬化性樹脂を硬化させることができればいずれでもよい。光反応開始剤としては、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルフォスフィンオキサイド系、オキシムエーテル系、オキシムエステル系、チタノセン系等の公知慣用の化合物が挙げられる。光反応開始剤としては、オキシムエステル系、α-アミノアセトフェノン系アシルフォスフィンオキサイド系、およびチタノセン系からなる群から選択される1種または2種以上を含有することが好ましい。
オキシムエステル系光反応開始剤としては、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン等が挙げられる。オキシムエステル系光反応開始剤は、オキシムエステル基を複数有する化合物でもよい。
α-アミノアセトフェノン系光反応開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系光反応開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
チタノセン系光反応開始剤としては、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
さらに、硬化性樹脂組成物は、上述した化合物以外の光反応開始剤や、光開始助剤および増感剤を含むことができ、例えば、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、キサントン化合物、および、3級アミン化合物等を挙げることができる。
(無機充填剤)
硬化性樹脂組成物は無機充填材を含んでもよい。無機充填材は、硬化物の密着性、機械的強度、線膨張係数等の特性を向上させるものであることが好ましい。無機充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸ジルコニウム、雲母粉等の公知慣用の無機充填剤が使用できる。ここで、無機充填剤は、硫酸バリウムおよびシリカのうちいずれか少なくとも一種を含むことが好ましい。
無機充填剤の平均粒径は、0.1~20μmであることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社(Nanotrac wave)などが挙げられる。ここで、平均粒径とは、平均一次粒径および平均二次粒径を含む概念である。
(有機溶剤)
硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を使用することができる。これらの有機溶剤は、単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
(着色剤)
硬化性組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、特に限定されず、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、着色剤は、環境負荷低減や人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ-インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60、染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
その他、紫、オレンジ、茶色、黒、白等の着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
[用途]
本発明による構造体は、プリント配線板の硬化膜の形成用であることが好ましく、永久保護膜の形成用であることがより好ましく、層間絶縁層、カバーレイ、ソルダーレジストまたは穴埋め充填(材)の形成用であることが特に好ましい。また、本発明の構造体は、薄膜でも膜強度に優れた硬化物を形成できることから、薄膜化が要求されるプリント配線板、例えばパッケージ基板(半導体パッケージに用いられるプリント配線板)におけるパターン層の形成にも好適に用いることができる。さらに、本発明の構造体は、フレキシブルプリント配線板にも好適に使用できる。
<第二の形態の具体的な説明>
<構造体>
本発明による構造体は、第一のフィルムおよび樹脂層を備えるものであり、第一のフィルムと樹脂層が後述する特定の条件を満たすものである。本発明においては、第一のフィルムおよび樹脂層が後述する特定の条件を満たすことで、第一のフィルム上に厚みのばらつきの小さい樹脂層を形成した構造体を得ることができる。
本発明による構造体について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明による構造体の一実施形態を示した概略断面図である。図2に示すように、構造体1は、第一のフィルム10と、第一のフィルム10の一方の面に設けられた樹脂層20とを備えている。以下、本発明による構造体を構成する各構成要素について説明する。
[第一のフィルム]
第一のフィルムとは、構造体の樹脂層を支持する役割を有するものであり、該樹脂層を形成する際に、樹脂組成物が塗布されるフィルムである。第一のフィルムは、樹脂層を硬化した後に、構造体から剥離できるものであればよい。第一のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムおよびポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等のフッ素樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムを好適に使用することができる。第一のフィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理やマット化処理が施されていてもよいし、スパッタもしくは極薄銅箔、および粘着層が形成されていてもよい。
第一のフィルムの厚さは、30μm以上であり、好ましくは35μm以上125μm以下である。第一のフィルムの厚さが上記数値範囲内であれば、第一のフィルムにテンションをかけた時にタテしわが生じるのを抑制することができる。
第一のフィルムのトラウザー引裂力は、0.1N以上であり、好ましくは0.15N以上2N以下であり、より好ましくは0.2N以上1.5N以下である。第一のフィルムのトラウザー引裂力が上記数値範囲内であると、シワが発生しにくく、第一のフィルム上に形成する樹脂層の厚みのばらつきを抑制することができる。
なお、本発明において、第一のフィルムのトラウザー引裂力は、JIS K 7128-1:1998に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、下記の測定条件で測定した値である。
(測定条件)
・試験室の温湿度:23±2℃、50±15%
・試験片寸法:150mm×50mm
・試験片中央のスリット長さ:75±1mm
・試験速度:200mm/min
・試験片のつかみ具間距離:75mm
第一のフィルムのトラウザー引裂力は、第一のフィルムの素材の種類、フィルム製膜時の延伸倍率、フィルムの厚さ、フィルムの破断強度、フィルムの熱収縮率等を調節することにより、所望の範囲内に調節することができる。
本発明の構造体における第一のフィルムは、前記第一のフィルムの厚みのばらつきが、±10%以下であることが、樹脂層がばらつきなく塗布されることより、膜厚がコントロールされやすい点で好ましい。より好ましくは、±5%以下である。
なお、第一のフィルムの厚みのばらつきは以下のようにして測定するものとする。すなわち、第一のフィルムのフィルム端部からMD方向に1mの位置から、MD方向に40mm切り出して、測定サンプルとした。測定サンプルについて、自動測定式膜厚計(山文電気社製、TOF-J)を用いて、フィルム端部より15mm離れた位置からTD方向に20mmピッチで25点測定した。25点の測定結果から、最大値、最小値、および平均値を算出し、最大値と最小値の差から下記式により厚みのばらつきを算出する。
・厚みのばらつき(%)=(最大値-最小値)/平均値×100
[樹脂層]
樹脂層は、構造体の第一のフィルム上に形成される硬化性樹脂層である。硬化性樹脂層は、液状の硬化性樹脂組成物を乾燥して得られる乾燥塗膜であり、加熱により硬化する熱硬化性樹脂層でもよいし、光照射により硬化する光硬化性樹脂層でもよいし、加熱により硬化し、かつ、光照射により硬化する熱硬化性光硬化性樹脂層でもよい。
樹脂層の厚みは、50μm以上であり、好ましくは50μm以上200μm以下である。樹脂層の厚みが上記数値範囲内であれば、幅広いサイズの部品を封止することができる。
なお、本発明において、樹脂層の厚みは、以下の方法により測定したものである。
構造体の塗膜(樹脂層)端部からMD方向に10mの位置から、MD方向に40mm切り出して、測定サンプルとした。測定サンプルについて自動測定式膜厚計(山文電気社製、TOF-J)を用いて、塗膜(樹脂層)端部より15mm離れた位置からTD方向に20mmピッチで25点測定した。25点の測定結果から算出した平均値を樹脂層の厚みとした。
(硬化性樹脂組成物)
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂および硬化剤を含むことが好ましく、他の成分をさらに含んでもよい。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂の少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂については、第一の形態の具体的な説明の通りである。なお、エポキシ化合物の中でも、硬化塗膜の破断点強度、熱膨張係数、および貯蔵弾性率の各最適化の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、これらの2種以上を併用することがより好ましく、これらの3種を併用することがさらに好ましい。
(光硬化性樹脂(ラジカル重合))
光硬化性樹脂(ラジカル重合)については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(光硬化性樹脂(カチオン重合))
光硬化性樹脂(カチオン重合)については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(アルカリ可溶性樹脂)
硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有することができる。アルカリ可溶性樹脂については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(熱可塑性樹脂)
硬化性樹脂組成物は、得られる硬化被膜の機械的強度を向上させるために、さらに熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(硬化剤)
硬化性樹脂組成物は硬化剤を含んでもよい。硬化剤については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(硬化促進剤)
硬化性樹脂層は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(光反応開始剤)
硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有することができる。光反応開始剤については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(無機充填剤)
硬化性樹脂組成物は無機充填材を含んでもよい。無機充填材については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(有機溶剤)
硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(着色剤)
硬化性組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤については、第一の形態の具体的な説明の通りである。
(第二のフィルム)
本発明の構造体は第二のフィルムを含んでいても良い。第二のフィルムとは、構造体の樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、樹脂層の第一のフィルムとは反対の面に設けられるフィルムである。第二のフィルムは、使用の際基板に貼りつける前に樹脂層から剥離できるものであればよい。第二のフィルムとしては、例えば、前記第一のフィルムで例示した熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムが好ましい。第二のフィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。
第二のフィルムの厚さは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。第二のフィルムの厚さは、機械的強度や取扱性等の観点から、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは15μm以上50μm以下である。
[用途]
本発明による構造体は、SAWフィルター用の封止や保護用途として好ましく用いることができる。また上記用途以外においては、プリント配線板の硬化膜の形成用であることが好ましく、永久保護膜の形成用であることがより好ましく、層間絶縁層、カバーレイ、ソルダーレジスト、または穴埋め充填(材)の形成用であることが特に好ましい。また、本発明の構造体は、薄膜でも膜強度に優れた硬化物を形成できることから、薄膜化が要求されるプリント配線板、例えばパッケージ基板(半導体パッケージに用いられるプリント配線板)におけるパターン層の形成にも好適に用いることができる。さらに、本発明の構造体は、フレキシブルプリント配線板にも好適に使用できる。
[電気電子部品]
本発明による電気電子部品は、上記のプリント配線板を備えるものである。本発明による電気電子部品は、従来公知の様々な電気機器に用いることができる。なかでも、SAWフィルターが好ましい。
上記基材としては、例えば、プリント配線基板、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板(以下、低温同時焼成セラミック基板ともいう)、セラミック基板、シリコン基板、金属基板などが挙げられる。電気電子部品としては、センサー、MEMS、SAWチップなどが挙げられる。なかでも、圧力センサー、振動センサー、SAWチップを好適に使用でき、SAWチップが特に好ましい
熱硬化性樹脂組成物をドライフィルム化した場合、基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、部品実装された基板を用いた場合に、凹凸があっても、基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、電気電子部品の封止性が向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う硬化は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。この中でも、硬化性の観点から、熱風循環乾燥炉を用いることが好ましい。例えば、80~120℃、好ましくは90~110℃で、10~60分、好ましくは20~40分、1段階目の加熱を行った後、さらに180℃~220℃、好ましくは190~210℃で、30~120分、好ましくは50~70分、2段階目の加熱硬化を行い、硬化物を形成することができる。2段階硬化をすることにより、硬化時の気泡の発生を抑制することができる点で好ましい。具体的には1段階目において残有溶剤分を揮発させることにより、本硬化時の気泡の発生を抑制させることができる。次に2段階目においてさらに高温で硬化させることで、硬化を完了させることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
<第一の形態の実施例>
<硬化性樹脂組成物の調製例A>
(配合例A1)
下記表1の配合例A1に示す溶剤を容器に入れ、溶剤が揮発しないように50℃に加温し、それぞれのエポキシ樹脂を加えて、十分に撹拌し、溶解させた。その後、添加剤およびフィラーを加えて、3本ロールミルにて混練し、さらに硬化剤、硬化促進剤、およびその他の樹脂を加えて、撹拌機により十分に撹拌して、硬化性樹脂組成物を得た。
(配合例A2)
下記表1の配合例A2に示す処方にて各成分を配合し、3本ロールミルで分散して、硬化性樹脂組成物を得た。
(配合例A3)
下記表1中に示す配合例A3に示す処方に変更した以外は、配合例1と同様の手順で硬化性樹脂組成物を得た。
Figure 0007186920000001
表1中、各成分の配合量は質量部基準である。
*1:三菱ケミカル株式会社製、jER828
*2:DIC株式会社製、HP-7200L
*3:DIC株式会社製、EPICLON N-740
*4:三菱ケミカル株式会社製、ST-6100
*5:DIC株式会社製、HP-4032
*6:明和化成株式会社製、HF-4M
*7:ナガセケムテックス株式会社製、テイサンレジン SG-P3
*8:三菱ケミカル株式会社製、YX6954BH30
*9:四国化成工業株式会社製、2E4MZ
*10:信越化学工業株式会社製、KBM-403
*11:デンカ株式会社製、FB-7SDX
*12:アドマテックス株式会社製、SO-C2
*13:カーボンブラック
*14:C.I.Pigment Yellow 147
*15:フタロシアニンブルー、DIC株式会社製、ファーストゲンブルー 5380
*16:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
*17:シクロヘキサノン
[実施例A1~7、比較例A1~4]
<構造体の製造>
構造体の製造のために、以下のフィルムを準備した。
・フィルムA:外観:光沢無し、材質:PET、厚み38μm、TD方向の引っ張り強さ215MPa、MD方向の引っ張り強さ243MPa
・フィルムB:外観:光沢有り、材質:PET、厚み50μm、TD方向の引っ張り強さ235MPa、MD方向の引っ張り強さ185MPa
・フィルムC:外観:光沢無し、材質:PP、厚み16μm、TD方向の引っ張り強さ250MPa、MD方向の引っ張り強さ120MPa
・フィルムD:外観:光沢有り、材質:PET、厚み38μm、TD方向の引っ張り強さ260MPa、MD方向の引っ張り強さ270MPa
・フィルムE:外観:光沢有り、材質:PET、厚み38μm、TD方向の引っ張り強さ225MPa、MD方向の引っ張り強さ205MPa
続いて、各実施例および比較例において、表2に記載の第一のフィルム、上記の硬化性樹脂組成物を用いた樹脂層(熱硬化性樹脂層)、および第二のフィルムの組み合わせで3層構造の構造体を得た。具体的には、上記で得られた硬化性樹脂組成物をバーコーターを用いて、樹脂層の膜厚が乾燥後100μmになるように第一のフィルム上に塗布した。次に、熱風循環式乾燥炉にて残留溶剤量が1.0~4.0%となるように85℃、5~15分間乾燥を行い、第一のフィルム上に樹脂層を形成した。続いて、第二のフィルムを乾燥塗膜面上にロールラミネーターを用いて設定温度90℃、圧力0.15MPaの条件で張り合わせ、3層構造の構造体を得た。
<トラウザー引裂力の測定>
上記で準備したフィルムについて、JIS K 7128-1:1998「プラスチック-フィルム及びシートの引裂強さ試験方法-第一部:トラウザー引裂法」に準拠して、下記の条件で、引張試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、トラウザー引裂力を測定した。但し、測定方向については、方向による異方性の有無によらず、縦方向(MD方向)のみ測定した。引裂き開始20mmと引裂き終了前5mmを除外し、残り50mmの引裂強さの近似の平均値を求めた。測定結果を表2に示した。
(測定条件)
・試験室の温湿度:23±2℃、50±15%
・試験片寸法:150mm×50mm
・試験片中央のスリット長さ:75±1mm
・サンプル数:5
・試験速度:200mm/min
・試験片のつかみ具間距離:75mm
<ヘーズの測定>
上記で準備したフィルムについて、ASTMD1003に準拠して、ヘーズメイター(日本電色工業株式会社製、NDH7000II)を用いて、ヘーズを測定した。測定結果を表2に示した。
<L*a*b*の測定>
上記で得られた構造体の第一のフィルムおよび第二のフィルムについて、下記の条件で、分光測色計(CM-2600d;コニカミノルタ社製)を用いて、L*、a*、b*の測定を行った。なお、第一のフィルムのL*、a*、b*は構造体の第一のフィルム側から測定した。また、第二のフィルムのL*、a*、b*は構造体の第二のフィルム側から測定した。測定結果を表2に示した。
(測定条件)
・サンプル数:n=3
・反射モード
・正反射光処理
・測定径:SAV(3mm)
・UV条件:100%Full
・視野:10°
・入射光65°
・測定方式:SCE(Specular Component Exclude)
・下地:黒色の台紙(L*値:27.3、a*値0.7、b*値2.0)
Figure 0007186920000002
<フィルム痕の有無>
上記で得られた構造体の第二のフィルム側から角度180度、速度2cm/secで剥がしたときの樹脂層の外観を目視にて確認した。以下の基準にて樹脂層のフィルム痕を評価し、評価結果を表3に示した。
(評価基準)
◎:樹脂層にフィルム痕が無かった。
○:樹脂層に使用上影響ないフィルム痕が有った。
×:樹脂層に使用上影響の大きいフィルム痕が有った。
<構造体の外観の視認性>
上記で得られた構造体の第二のフィルム側(表)からと第一のフィルム側(裏)からで、外観の視認性を目視にて確認した。以下の基準にて構造体の外観の視認性を評価し、評価結果を表3に示した。
(評価基準)
◎:構造体の表と裏を見分けることが容易にできた。
○:構造体の表と裏を見分けることができた。
×:構造体の表と裏を見分けることができなかった。
Figure 0007186920000003
表3から明らかなように、本願の第一の形態の実施例の構造体は、表と裏を見分け易く、第二のフィルムを剥がした際に樹脂層にフィルム痕が付きづらくすることができた。
<第二の形態の実施例>
<硬化性樹脂組成物の調製例B>
(配合例B1)
下記表4の配合例B1に示す溶剤を容器に入れ、溶剤が揮発しないように50℃に加温し、それぞれのエポキシ樹脂を加えて、十分に撹拌し、溶解させた。その後、添加剤およびフィラーを加えて、3本ロールミルにて混練し、さらに硬化剤、硬化促進剤、およびその他の樹脂を加えて、撹拌機により十分に撹拌して、硬化性樹脂組成物を得た。
(配合例B2)
下記表4の配合例B2に示す処方にて各成分を配合し、3本ロールミルで分散して、硬化性樹脂組成物を得た。
Figure 0007186920000004
表4中、各成分の配合量は質量部基準である。
*18:三菱ケミカル株式会社製、jER828
*19:DIC株式会社製、HP-7200L
*20:DIC株式会社製、EPICLON N-740
*21:三菱ケミカル株式会社製、ST-6100
*22:DIC株式会社製、HP-4032
*23:明和化成株式会社製、HF-4M
*24:ナガセケムテックス株式会社製、テイサンレジン SG-P3(固形分:15質量%)
*25:三菱ケミカル株式会社製、YX6954BH30(固形分:30質量%)
*26:四国化成工業株式会社製、2E4MZ
*27:信越化学工業株式会社製、KBM-403
*28:デンカ株式会社製、FB-7SDX
*29:カーボンブラック
*30:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
*31:シクロヘキサノン
[実施例B1~7、比較例B1~4]
<構造体の製造>
構造体の製造のために、以下の第一のフィルムを準備した。
・フィルムA:材質:PET、厚み50μm、片面離型剤付MD方向の引っ張り強さ186MPa、MD方向の伸び率130%
・フィルムB:材質:PET、厚み38μm、片面離型剤付MD方向の引っ張り強さ206MPa、MD方向の伸び率120%
・フィルムC:材質:PI(ポリイミド)、厚み50μm、MD方向の引っ張り強さ300MPa、MD方向の伸び率85%
・フィルムD:材質:PP、厚み30μm、片面粘着層有り、MD方向の引っ張り強さM80Pa、MD方向の伸び率225%
・フィルムE:材質:PP、厚み15μm、MD方向の引っ張り強さ100MPa、MD方向の伸び率150%
・フィルムG:材質:PET 厚み125μm、MD方向の引っ張り強さ225MPa、MD方向の伸び率125%
・フィルムH:材質:PET 厚み25μm、MD方向の引っ張り強さ186MPa、MD方向の伸び率130%
続いて、各実施例および比較例において、表5に記載の第一のフィルムおよび上記の硬化性樹脂組成物を用いた樹脂層(硬化性樹脂層)の組み合わせで構造体を得た。具体的には、MD方向に100N/mの張力をかけた第一のフィルム上に、上記で得られた硬化性樹脂組成物をダイコーターにて塗布した後、100℃で3.5分間乾燥して、硬化性樹脂層を形成して、構造体を得た。
<第一のフィルムの厚みおよびそのばらつきの測定>
上記で準備した第一のフィルムのフィルム端部からMD方向に1mの位置から、MD方向に40mm切り出して、測定サンプルとした。測定サンプルについて、自動測定式膜厚計(山文電気社製、TOF-J)を用いて、フィルム端部より15mm離れた位置からTD方向に20mmピッチで25点測定した。25点の測定結果から、最大値、最小値、および平均値を算出し、最大値と最小値の差から下記式により厚みのばらつきを算出した。算出結果を表5に示す。
・厚みのばらつき(%)=(最大値-最小値)/平均値×100
<トラウザー引裂力の測定>
上記で準備したフィルムについて、JIS K 7128-1:1998に準拠して、下記の条件で、引張試験機(株式会社島津製作所製、EZ-SX)を用いて、トラウザー引裂力を測定した。引裂き開始20mmと引裂き終了前5mmを除外し、残り50mmの引裂強さの近似の平均値を求めた。測定結果を表5に示した。
(測定条件)
・試験室の温湿度:23±2℃、50±15%
・試験片寸法:150mm×50mm
・試験片中央のスリット長さ:75±1mm
・サンプル数:5
・試験速度:200mm/min
・試験片のつかみ具間距離:75mm
<樹脂層の厚みおよびそのばらつきの測定>
上記で得られた構造体の乾燥塗膜(樹脂層)端部からMD方向に10mの位置から、MD方向に40mm切り出して、測定サンプルとした。測定サンプルについて、自動測定式膜厚計(山文電気社製、TOF-J)を用いて、乾燥塗膜(樹脂層)端部より15mm離れた位置からTD方向に20mmピッチで25点測定した。25点の測定結果から、最大値、最小値、および平均値を算出した。平均値を表5に示す。
また、最大値と最小値の差から下記式により厚みのばらつきを算出し、以下の基準により評価した。
・厚みのばらつき(%)=(最大値-最小値)/平均値×100
(評価基準)
◎:25点の最大値と最小値の差が平均値に対して5%以下であった。
○:25点の最大値と最小値の差が平均値に対して5%超10%以下であった。
×:25点の最大値と最小値の差が平均値に対して10%超であった。
Figure 0007186920000005
表5からも明らかなように、本願の第二の形態の実施例の構造体の樹脂層は、厚みが50μm以上でありながら、厚みのばらつきの小さいものであった。
1 構造体
10 第一のフィルム
20 樹脂層
30 第二のフィルム

Claims (5)

  1. 第一のフィルム、硬化性樹脂層、および第二のフィルムをこの順に備える構造体であって、
    前記第一のフィルムおよび前記第二のフィルムが、前記硬化性樹脂層から剥離可能であり、
    前記第一のフィルムのトラウザー引裂力と、前記第二のフィルムのトラウザー引裂力の差が-0.05N以下または+0.05N以上であり、
    前記第一のフィルムと前記第二のフィルムのヘーズの差が-5%以下または+5%以上であることを特徴とする、構造体。
  2. 第一のフィルム、硬化性樹脂層、および第二のフィルムをこの順に備える構造体であって、
    前記第一のフィルムおよび前記第二のフィルムが、前記硬化性樹脂層から剥離可能であり、
    前記第一のフィルムのトラウザー引裂力と、前記第二のフィルムのトラウザー引裂力の差が-0.05N以下または+0.05N以上であり、
    前記構造体の前記第一のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値と前記構造体の第二のフィルム側から測定したLab色空間におけるL*値、a*値、b*値の差が、下記条件(i)~(iii):
    (i)L*値の差が-0.1以下または+0.1以上である、
    (ii)a*値の差が-0.1以下または+0.1以上である、
    (iii)b*値の差が-1以下または+1以上である、
    の少なくとも1つを満たすことを特徴とする、構造体。
  3. 前記第二のフィルムのトラウザー引裂力が、前記第一のフィルムのトラウザー引裂力よりも小さい、請求項1または2に記載の構造体。
  4. 前記第一のフィルムが、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の構造体。
  5. 前記第二のフィルムが、ポリエステルフィルムおよびポリオレフィンフィルムから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の構造体。
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