以下、図面を参照して、本発明によるフライヤーのいくつかの実施の形態を説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明によるフライヤーの一実施の形態を示す概略的な断面図である。フライヤー100は、有底の外箱1を有し、該外箱1内に油槽2を収容している。ここで、油槽2は円筒体であり、周囲を区画する周側壁3と底板4と天板5とを有している。周側壁3には開口6が形成されており、外箱1には、該開口6を閉鎖することのできる開閉蓋7が取り付けられている。8は、開閉蓋7を開閉操作するときに用いる取っ手である。
外箱1における前記周側壁3の天板5よりも上位部には、マイクロ波発振器であるマグネトロン10が取り付けてある。該マグネトロン10からのマイクロ波は、導波管11によって前記天板5の上位部に導かれ、天板5の上位部に配置されたマイクロ波撹拌用のスターラ12によって撹拌されながら、天板5に形成した開口13から、油槽2内に照射される。なお本実施の形態及び以下に記載される他の実施の形態及び変形例では、マイクロ波発振器としてマグネトロン10を使用する例について説明するが、所望のマイクロ波を発生させる任意のデバイスをマイクロ波発振器として使用することが可能である。したがって例えば、マグネトロン10の代わりに半導体デバイスをマイクロ波発振器として使用してもよい。
平面視で円形である天板5の中心には、底板4に向けて垂直に延出する回転軸20が回転自在に取り付けられている。図2は、天板5に対して回転軸20を回転自在に取り付けるときの一態様を示している。図2において、24はスラスト軸受であり、円環状の下板21と、やはり円環状の上板22と、下板21と上板22との間に回転自在に組み込まれた適数個のボールベアリング23とで構成されている。前記回転軸20は、スラスト軸受24の下板21と上板22の中央穴124を通って上下方向に延出している。
回転軸20が上板22から上方に延出している部位には歯車30が固定されている。また、スラスト軸受24の下板21は、天板5の上面側に固定されている。天板5の前記スラスト軸受24の近傍にはモータ31が固定されており、該モータ31の回転軸32に取り付けられた歯車33が、回転軸20に固定されている歯車30とかみ合っている。上記の構成であり、モータ31を駆動することにより、モータ31の駆動力は歯車33を介して歯車30に伝達され、結果、回転軸20が回転する。そして、回転軸20の下端には食品収容容器40が固定されている。このモータ31による食品収容容器40の回転機構が、本発明でいう、「食品収容容器を油槽の水平面内で回転させる第1の移動機構」の一例に相当する。
図3に示すように、食品収容容器40は、円筒体である油槽2の内径よりは小さい直径の円筒体であり、円盤状の底板41と、該底板41の外周縁に立設する囲い板42と、底板41の中心から径方向に延出する適数枚(図では6枚)の上下方向に立ち上がる仕切り材43とで構成される。前記仕切り材43は、底板41に対して着脱自在に取り付けられていてもよい。底板41、囲い板42、および仕切り材43には、多数の円形状の小孔44が、全面にわたって形成されている(図1では、小孔44の図示を省略している)。また、図では、仕切り材43の高さは囲い板42と同じ高さとなっているが、両者は高さが異なっていてもよい。さらに、図では、仕切り材43は径方向に直線状に延出する平板として示したが、湾曲する形状の仕切り材であってもよい。底板41の中心には、前記回転軸20が固定されている。
なお、前記仕切り材43は、本発明でいう「食品移動拘束機構」の一例である。また、前記「円形状の小孔44」も、本発明でいう食品収容容器および/または食品移動拘束機構に形成した貫通部の一例であって、貫通部としては、長円形状の小孔であってもよく、三角形や四角形を含む多角形状などであってもよい。
貫通部は小さすぎると油中での移動によって目詰まりが生じる恐れがあり、目詰まりが生じると油の流動性が阻害される。また、大きすぎるとマイクロ波が通過しやすくなり、エネロギーロスが生じる恐れがある。そのために、貫通部は、最も狭いところが1.0mm以上であり、最も広いところが60.0mm以下、より好ましくは、30.0mm以下であることが望ましい。図示のように貫通部が円形状の小孔44である場合には、小孔44の直径が1.0mm~60.0mmの範囲、より好ましくは、1.0mm~30.0mmの範囲であることが望ましい。
食品収容容器40の素材は、金属もしくは樹脂が好ましい。中でも、SUSもしくはアルミニウムが好ましく、小孔44がパンチング形成されたSUSは特に好ましい。またマグネトロン10の導波管11から放出されるマイクロ波が食品収容容器40より下の油に吸収されるのを防いでエネルギーロスを低減する観点からは、食品収容容器40(特に食品が載せられる底板41)を金属製にすることが好ましい。また、比較的小さな限られたスペースにおいてマイクロ波をとどめて加熱効率を向上させる観点からは、油槽2内に食品収容容器40が配置された際に油槽2の周側壁3と食品収容容器40との間の距離を小さくすることが好ましい。また油槽2の周側壁3の内周側の断面形状を食品収容容器40の外周の断面形状と対応させてもよく、図示の例では、油槽2の周側壁3の内周部及び食品収容容器40の外周部は円形の断面形状を有する。
前記のように、回転軸20は油槽2の底板4に垂直方向に延出しており、前記食品収容容器40は底板4から所定の距離だけ上方に離れた位置において、底板4と平行な状態で回転軸20の下端に固定されている。そして、油槽2の底板4と前記食品収容容器40の間には、熱線ヒータ50が取り付けられている。なお、熱線ヒータ50は、本発明でいう、油槽2内の油を加熱するために用いられるマイクロ波発振器10以外の加熱機構の一例である。熱線ヒータ50に加えて、あるいは熱線ヒータ50に変えて、油槽2の外側に配置した、ガスバーナの火炎による熱、蒸気発生器からの蒸気熱、IHヒータによる発熱、等も適宜用いることができる。
必須ではないが、図1に示したフライヤー100は、油タンク60を備えており、該油タンク60と油槽2とは油供給管61によって連結されている。また、油供給管61にはポンプ62が配置されており、ポンプ62の正回転により油タンク60内の油は油槽2内に供給され、ポンプ62の逆回転により油槽2内の油は油タンク60内に戻される。この機構は、本発明でいう「油槽内の油面レベルを可変とする機構」の一例に相当する。
[フライヤー100の使用態様]
上記の構成のフライヤー100の使用態様の一例を説明する。
最初に、油槽2内に油ちょう用の油を入れる。注油に当たっては、外部の容器に貯留した油を油槽2の開口6から入れるようにしてもよく、油タンク60を備える形態のフライヤー100の場合には、該油タンク60内の油を油供給管61を通して油槽2内に供給してもよい。双方を同時に行ってもよい。いずれの場合も、油槽2内の油面レベルは油槽2の開口6よりも下位の位置とする。油を入れた後、熱線ヒータ50に通電して、油槽2内の油を所要の温度(例えば、160℃~200℃程度)まで加熱する。
次に、開閉蓋7を開き、油槽2内の食品収容容器40の上に、被油ちょう品である食品(例えば、冷凍コロッケ)の適数個を配置する。図1に示す形態のフライヤー100の場合には、食品収容容器40に取り付けた仕切り材43の高さが油面レベルよりも下位の位置となっているので、食品を食品収容容器40上の適正位置に配置することがやや困難となる場合がある。その場合には、食品収容容器40上の食品を配置した後で、油の注入を行うようにしてもよい。また、予定される油面レベルを超える高さの仕切り材43を備えた食品収容容器40を用いることもでき、その場合には、油の注入タイミングの如何を問わず、食品の配置を容易かつ適切に行うことができる。
次に、開閉蓋7を閉じ、マグネトロン10からのマイクロ波の照射を開始する。それと同時に、モータ31を駆動して、食品収容容器40に対して、回転軸20を中心とした水平面方向の回転を付与する。その状態を所要時間にわたって継続することで、食品収容容器40の上に配置されている食品は、油槽2内の油からの加熱とマイクロ波エネルギーによる加熱の双方を受け、マグネトロン10を備えないフライヤーで油ちょうを行う場合よりも短い時間で、所定の油ちょう処理を終えることができる。
図1に示すフライヤー100の場合、油槽2内へのマイクロ波の照射位置は、油槽2の中心から周方向に偏位した場所となっており、油槽内での水平面方向において照射量に偏りが生じるのを避けられない。しかし、被油ちょう品であるすべての食品は、食品収容容器40の回転に伴って油槽2内を水平面方向に移動しており、少なくとも油槽2内を360度の範囲で移動することで、すべての食品は、照射されているマイクロ波の偏りに左右されない量のマイクロ波エネルギー量を受けることができる。また、油中で食品を移動させることで、食品を覆う蒸気を素早く剥がし、常に高温の油と接触させることができる。結果、個々の食品間において、油ちょう処理の不均一(加熱の不均一)が生じるのを回避できる。前記した湾曲する形状の仕切り材を用いる場合には、食品収容容器40の回転時に湾曲の凹位置に食品を保持することができ、食品は中心軸(回転軸20)から一定の距離に保持されることとなる。それにより、より均一な加熱が可能となる。また、底板41に対して着脱自在とされた仕切り材43を採用する場合には、食品の種類や形状あるいは数に応じて、最適な食品保持領域を底板41の上に形成することができる。
所要時間の経過後に、マグネトロン10の作動を停止し、開閉蓋7を開いて油ちょう済みの食品を取り出す。油タンク60を備える形態のフライヤー100の場合には、油槽2内の油を油タンク60内に引き戻して油面レベルを低下させることで、食品の取り出しは容易となる。
[第2の実施の形態]
図1に示した第1の実施の形態では、食品収容容器40は、天板5に取り付けたモータ31の駆動力に起因する駆動機構によって回転する。しかし、食品収容容器40に対する回転駆動機構(すなわち、前記第1の移動機構)は、これに限らない。以下、食品収容容器40に対する他の回転駆動機構(第1の移動機構)を備えたフライヤーのいくつかの例を、第2の実施の形態として、図4~図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、第1の移動機構に係る構成のみを説明することとし、その他の機構は図1に示したフライヤー100と同じであってよいので、説明は省略する。
図4に示す形態では、食品収容容器40の回転駆動機構は、磁力による非接触型の駆動機構となっている。この形態において、図示のように、油槽2の周側壁3の内周面には、適数個の平面型ローラ144が、底面(底板4の上面)から等距離の位置で取り付けられており、食品収容容器40は平面型ローラ144に下面側が支持された状態で、自由に回転できるようになっている。食品収容容器40の回転軸20は、食品収容容器40の下面から底板4に向けて垂直に延びており、その下端は底板4に固定したスラスト軸受45によって支持されている。回転軸20には受動円板46が底板4と平行に取り付けてあり、該受動円板46の裏面には磁性体(例えば鉄片)47が固定されている。
油槽2の底板4を挟んで前記受動円板46と対向する部位には、磁石48を備えた駆動円板49が前記受動円板46に平行な姿勢で位置しており、該駆動円板49には図示しない適宜の駆動手段によって回転が付与される。駆動円板49が回転すると、磁力の作用により受動円板46も回転し、その回転により食品収容容器40が回動する。
図5に示す形態も、磁力による非接触型の駆動機構である。ここでは、食品収容容器40の裏面に適数個の磁性体47が固定されている。一方、駆動円板49には、食品収容容器40に固定した磁性体47の高さ位置近くまで伸びる適数本の支柱49aが、油槽2の周側壁3に沿って立設されており、該支柱49aの先端には磁石48が固定されている。この回転駆動機構でも、駆動円板49に適宜の駆動手段によって回転駆動が付与されることで、磁力の作用により食品収容容器40も回動する。
なお、図示しないが、油槽2内に、前記裏面に適数個の磁性体47を固定した食品収容容器40を上下方向に移動自在に設置し、かつ、駆動円板49および磁石48を備えた支柱49aとを、固定した油槽2に対して上下方向に移動できるように配置する場合には、駆動円板49の回転駆動によって食品収容容器40に回転運動を与えることができるとともに、駆動円板49を上下移動させることによって、食品収容容器40に対してその上下移動に追従した上下運動を付与することが可能となる。
図6に示す形態は、食品収容容器40に対する回転駆動機構(第1の移動機構)であって、油槽外に配置したモータの回転力を含む回転駆動機構の一例である。この形態において、油槽2内での食品収容容器40の支持機構は、図4に示したものと同様、食品収容容器40は平面型ローラ144によって下面側が支持された状態で、自由に回転できるようになっている。そして、食品収容容器40の回転軸20は、食品収容容器40の下面から垂直下方に延出しており、油槽2の底板4を貫通して、油槽2の外まで伸びている。底板4と回転軸20との間には適宜のオイルシール51が配置されており、油の漏れを防いでいる。そして、回転軸20の延出端にはモータ31の駆動軸が駆動連結している。
図7に示す形態は、油槽外に配置したモータの回転力を含む回転駆動機構の他の例である。この形態において、食品収容容器40は、その下面から垂下する回転軸20が油槽2の底板4に配置したスラスト軸受45によって回動自在に支持される。また、食品収容容器40の裏面には、回転軸20を中心とした同心円上に平歯車52が形成されている。駆動用のモータ31は油槽2の外に配置されており、その回転軸32が、油槽2の底板4に平行な姿勢で、油槽2の周側壁3を貫通して油槽2内に延出している。回転軸32の先端には歯車53が固定されており、該歯車53と食品収容容器40の裏面に形成した平歯車52とがかみ合っている。モータ31が回転駆動することで、その回転力は歯車伝動により、食品収容容器に伝達される。図で、51はオイルシールである。
なお、図7に示す歯車伝動の態様は一つの例示であって、内歯を持つリングギアと該リングギアの内歯と噛み合うスプロケットとによる歯車伝動、あるいは、ベベルギア同士のかみ合いによる歯車伝動なども用いることができる。
前記したように、図4~7に示した形態の食品収容容器40の駆動機構を備えたフライヤー(第2の実施の形態)では、図1に示した第1の実施の形態であるフライヤー100のように、油槽2の天板5の上に回転軸20の支持機構やモータ31のような駆動機構を備えることを必要としない。そのために、油槽2の天板5側の構成の自由度および使用の自由度が大きくなる。
図8および図9は、図6に示した回転駆動機構を備えたフライヤーを例として、当該フライヤーの天板側の変形例を示している。図8の例では、マグネトロン10の導波管11は天板5の中心よりも外周縁方向に偏位した位置に取り付けてあり、導波管11を取り付けた部位を除いた天板5の部分5aは、蝶番58等を利用して上方に開放できるようになっている。また、図9に示す例では、マグネトロン10の導波管11は、油槽2の周側壁3における天板5に近い部位に取り付けてあり、天板5のほぼ全体が蝶番58等の手段により上方に開放できるようになっている。
図8および図9に示す形態のフライヤーは、天板5の一部または全部が上方に開放できるようになっていることで、油ちょう時に、食品収容容器40への食品の配置作業、油ちょう後の食品の取り出し作業が容易となる利点がある。もちろん、導波管11がどの部位に取り付けられていても、食品収容容器40が回転することで、均一に加熱された油ちょう済み食品が得られることは、図1に示したフライヤーと同様である。
[食品収容容器40の他の形態]
次に、食品収容容器40の他の2つの形態について、図10および図11を参照して説明する。
[食品収容容器40の他の形態-その1]
図10に示す食品収容容器40aは、底板41と囲い板42を有する点では、図3に示した食品収容容器40と同じであるが、「食品移動拘束機構」として、仕切り材43に変えて、適数個(図示のものでは6個)の適宜深さの凹所70を、底板41に一体成形している点で、食品収容容器40と相違している。図には、平面視で円形である凹所70が示されるが、凹所70の平面視形状、断面形状、あるいは大きさや深さは、任意であり、油ちょう処理しようとする食品の形状および大きさに応じて、適宜設定すればよい。油ちょう処理時に、食品は、全体がまたはその一部が凹所70内に入り込むことで、食品収容容器40aが回転移動しても、姿勢の安定性が確保される。図示の例では、小孔44は底板41にのみ形成されているが、囲い板42にも形成することができる。なお、凹所70の形状が食品の自由移動を十分に拘束できる大きさや深さを有している場合には、前記囲い板42を省略することもできる。
[食品収容容器40の他の形態-その2]
図11に示す食品収容容器40bは、図11(a)に示す容器本体40cと、容器本体40cの上方を覆うことのできる、図11(b)に示す押さえ材40dとで構成される。図11(a)に示すように、容器本体40cは、図3に示した食品収容容器40における底板41と囲い板42とからなる構成のものであり、図では省略してあるが、全体に小孔が形成されていてもよい。押さえ材40dは、図11(b)に示すように、平板状の部材であり、その大きさと形状は、容器本体40cの平面視形状とほぼ同じであることが望ましい。もちろん、容器本体40cの平面視形状よりも、やや大きくても、小さくても、また、形状が多少異なっていても、所期の目的は達成することができる。
図示の例において、押さえ材40dは円板体71と、該円板体71の下面に固定した上下方向に所定の高さを有する仕切り材72とで構成される。仕切り材72の数に制限はなく、図では6枚の仕切り材72を示しているが、容器本体40cの底板41に乗せられる食品の形状や数に応じて、適宜設定すればよい。押さえ材40dの中心部には、前記回転軸20が通過することのできる貫通孔73が形成されており、該押さえ材40dの上面における該貫通孔73に対応する部位には、図11(c)に示すように、該貫通孔73を通過する回転軸20を、ねじ締め等によって締め付け固定することのできるクランプ74が取り付けてある。
使用に当たっては、最初に、前記クランプ74を開いた状態で、その貫通孔73内に前記回転軸20を通過させる。その後、回転軸20の下端部に前記容器本体40cを固定する。その状態で、全体を図1に示すように、油槽2内にセットする。セットの際に、押さえ材40dを十分上位の位置に持ち上げておき、その位置でクランプ74を締め付けて、仮固定しておく。
仮固定の状態では、容器本体40cと押さえ材40dとの間には、十分なスペースが有るので、容器本体40cへの食品の配置は容易である。食品を配置した後、クランプ74を緩めると、自重により押さえ材40dは落下し、食品の上に乗った状態となるので、その位置でクランプ74を締め付けて、回転軸20に対する押さえ材40dの位置を固定する。
押さえ材40dの下面で食品は上方へ移動するのは制限され、また、仕切り材72によって、水平面方向の移動は制限される。そのために、油ちょう処理中において食品収容容器40b(ここでは、押さえ材40dも食品収容容器40bの一部を構成している)が水平面方向に回転しても、食品の自由移動は効果的に拘束される。
なお、食品の形状や個数によっては、押さえ材40dの下面に形成した仕切り材72を省略することも可能である。また、押さえ材40dと食品との間に少し隙間が形成されている高さ位置に、押さえ材40dを固定して、油ちょう処理を行うことも可能である。
なお、押さえ材40dにおいても、その下面に取り付けた仕切り材72を適宜の手段で着脱自在とすることもできる。
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態および第2の実施の形態によるフライヤーでは、食品収容容器40の移動は、前記第1の移動機構による油槽2内の垂直方向の同じ高さ位置での水平面方向の回転移動のみであったが、第3の実施の形態のフライヤー200では、食品収容容器40は、本発明でいう「第2の移動機構」をさらに備え、それにより、食品収容容器40は回転移動に加えて、油槽2の垂直軸方向に沿った上下移動も行うようにされている。
図12~図15は、第3の実施の形態でのフライヤーを示しており、図12は正面図、図13は上面図、図14は食品収容容器と開閉蓋とが下方位置にある状態を示す断面図、図15は食品収容容器と開閉蓋とが上方位置にある状態を示す断面図を示している。なお、図14および図15では、油槽を断面で示している。
このフライヤー200は、円筒体である油槽202を備える。油槽202は、周側壁203と底板204とで構成されている。油槽202の開放側である上端面には、油槽202とは別体である天板205が乗っている。後記するように、この天板205は、油槽202に対する開閉蓋として機能する。また、油槽202の底板204に近接して、熱線ヒータ50が取り付けられている。なお、熱線ヒータ50は、本発明でいう、油槽202内の油を加熱するために用いられるマイクロ波発振器10以外の加熱機構の一例である熱線ヒータ50が取り付けられている。
周側壁203の高さ方向の適所、好ましくは高さ方向の中央部には、マグネトロン10およびマグネトロン10が発振するマイクロ波を案内する導波管11a、導波管11bとの組み付け体が、導波管11b側が周側壁203側となるようにして固定されている。導波管11aと導波管11bとは、互いのフランジ部を対向させるようにして一体に固定されており、フランジ間には図示しない油の通過を阻止するための、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂またはガラスのような材料からなるフィルタが介装されている。
なお導波管11の開口は、導波管11が周側壁203に接続する箇所であって、マイクロ波が導波管11から油槽202内に進入する部分である。このような導波管11の開口は、導波管11の断面(すなわち内部空間)が周側壁203に形成された穴を介して油槽202内に直接的に連通するようにして設けられてもよいし、導波管11の断面(内部空間)が金属棒などの物体を介して油槽202内に接続されるようにして設けられてもよい。導波管11が金属棒などの物体を介して油槽202内に接続される場合、導波管11内を伝搬するマイクロ波は、その金属棒などの物体を介して、油槽202内に照射される。また、導波管11の開口には上述するようなフィルタを設けてもよい。
前記天板205の中心位置には、先に図2を参照して説明した、モータ31や歯車33、30等からなる歯車伝動機構が取り付けられており、図1および図2に示したと同様にして、受動側の歯車33には回転軸20が固定されている。そして、該回転軸20は、油槽202の内部に、油槽202の垂直軸方向に延出している。
油槽202の周側壁203における前記導波管11bが固定されている位置よりも上位の位置には、最大直径位置よりも少し偏位した位置に、対向するようにして給気口206と排気口207が形成されており、該給気口206には給気用ダクト208が、排気口207には排気用ダクト209がそれぞれ取り付けられている。なお、排気口207は図示していない。給気用ダクト208からの空気の流入方向と排気用ダクト209からの空気の流出方向が180°となるように、給気用ダクト208と排気用ダクト209が対向配置しているが、この角度は180°に限るものではなく、空気の流入方向と空気の流出方向とが90°~180°の範囲となるように、給気用ダクト208と排気用ダクト209との対向配置位置を適宜設定することもできる。
天板205の中央部には、前記したモータ31や歯車33、30等からなる歯車伝動機構の外側を囲うようにして4本の支柱210~213が立設固定されている。該支柱210~213の上端側には支持板214が止めねじ215等の手段により一体に固定されている。
該支持板214の上面には、前記天板205に回転自在に取り付けた回転軸20の中心軸線と同じ中心軸線を持つようにして、作動棒216が立設状態で固定されている。該作動棒216の先端は、その中心軸線の上方に位置するピストンシリンダー機構217の可動部材側に固定されている。前記ピストンシリンダー機構217は、油槽202に沿って立設されている支柱218の上端側に、取付部材219を介して、固定されている。
上記の構成であり、図示しない制御装置からの指令によって、前記ピストンシリンダー機構217の可動側部材に上下方向の反復した移動運動を与えると、作動棒216はそれに応じて上下方向に反復した移動するようになる。作動棒216が上方に移動すると、その動きに連動して前記天板205が上方に移動する。天板205が上方に移動すると、前記回転軸20も、天板205とともに上方に移動する。それとは逆に、所定の高さ位置から作動棒216が下方に向けて移動すると、その動きに連動して前記天板205が下方に向けて移動し、その移動によって前記回転軸20は天板205とともに下方に移動する。
図14に示すように、作動棒216が最も下位の位置まで下降したときに、前記天板205は油槽202の上端縁に乗った姿勢となり、油槽202を閉鎖する。また、図15に示すように、作動棒216がより高い位置まで上昇したときに、前記天板205は油槽202の上端縁から離れた上方の位置となり、油槽202は上端面側が開いた状態となる。このように、天板205は、油槽202開口部である上端面に対する開閉蓋としての機能を果たすことができる。
前記した回転軸20には、図1などに基づき説明したフライヤー100と同様にして、食品収容容器が取り付けられる。取り付ける食品収容容器は、図3に示した食品収容容器40、図10に示した食品収容容器40a、図11に示した食品収容容器40bのいずれであってもよい。図12~図15に示したフライヤー200では、図11に示した食品収容容器40bを、回転軸20に取り付けられる食品収容容器として、例示している。
また、フライヤー200において、前記回転軸20の長さは、図14に示すように、前記したように作動棒216が最も下位の位置まで下降して前記天板205が油槽202の上端縁に乗り、油槽202を閉じた状態となったときに、回転軸20の下端は油槽202の底板204に近接した長さとなるように設定されており、回転軸20の下端は油槽202の底板204に取り付けた適宜のスラスト軸受220によって支承されるようになっている。
前記したように、油槽202の周側壁203における導波管11bの取り付け位置は、周側壁203の高さ方向の中央部近辺であることが好ましいが、より上方の位置であってもよい。また、油ちょう時での油面レベルよりも上位の位置であってもよく、下位の位置であってもよい。油面レベルより上方の部位に導波管11bを取り付ける場合には油面レベルでのマイクロ波の反射が生じるのを避けられないが、油ちょう時での油面レベルよりも下位の位置に導波管11bを取り付ける場合には、そのような反射をなくすことができ、食品の加熱効率を向上させることができる利点がある。導波管11bを油面レベルよりも下位の位置に配置する場合、導波管11bの開口の少なくとも一部が油槽202の側面において油槽202の油面レベルより下位に位置していればよく、導波管11bの開口の上側の一部が油面レベルよりも上方に位置している状態であってもよい。加熱効率の観点からは、導波管11bの開口の中心点が油面レベルよりも下位に位置している方が好ましいと考えられる。
図に示すフライヤー200では、図14および図15に示すように、導波管11bの開口は、油面レベルPよりも下位の位置となるようにされる。さらに、フライヤー200では、油ちょう時の状態において、すなわち、作動棒216が最も下位の位置まで下降して天板205が油槽202を閉じた状態となったときに、回転軸20に取り付けられた食品収容容器40bの全体が油中に埋入した状態となる位置となるように、回転軸20に取り付けられており、かつ、油ちょう中における容器本体40cと押さえ材40dとの間のスペースに、導波管11bの開口が位置するようにされている。
また、前記作動棒216の上方位置、すなわち、天板205に取り付けた回転軸20が上方に持ち上げられる距離をどの程度にするかは、特に制限はない。食品の配置と取り出しの容易性を考慮すると、図15に示すように、回転軸20に固定した食品収容容器40bの全体が、油槽202の上端縁から露出した状態となる位置まで、開閉蓋として機能する天板205を上昇させることができるように、ピストンシリンダー機構217を設計することが好ましい。
図示しないが、フライヤー200においても、図1に示したフライヤー100のように、油タンク60による油槽202内の油面レベルPを可変とする機構をさらに備えることもできる。
[フライヤー200の使用態様]
上記の構成のフライヤー200の使用態様の一例を説明する。
フライヤー200の使用に当たっては、最初に、ピストンシリンダー機構217を操作して作動棒216を上方に引き上げる。それにより、天板205と該天板205に取り付けられた回転軸20も同時に上昇する。回転軸20に取り付けた食品収容容器40bの容器本体40cが油槽202の上端開放部よりも少し上位となった位置で、ピストンシリンダー機構217の作動を停止する。図示のフライヤー200では、前記のように、食品収容容器40bは押さえ材40dを有しているので、該押さえ材40dを、回転軸20に沿って適宜の位置まで上昇させ、その位置でクランプ74(図11(c)参照)を締め付けて固定しておく。その状態が、図15に示される。
図15に示すように、この状態では食品収容容器40bの全体が油槽202の外部に露出した状態にあり、作業者が食品収容容器40bの容器本体40cの上に食品Fの適数個を配置する作業はきわめて容易となる。食品Fを配置した後、クランプ74を緩めて、押さえ材40dを適宜の位置まで降下させ、再度、その位置で固定する。
それと並行して、油槽202の適宜の油面レベルPまで油ちょう油を注入する。好ましい油面レベルPは、図15に示すように、導波管11bの位置よりも上方のレベルである。また、油面レベルPの上限位置は、前記した給気口206および排気口207には達しないレベルである。もちろん、給気口206および排気口207を備えない油槽202を用いる場合には、油槽202の容積のほぼ全体を油ちょう用油の貯留部として利用することができる。
油槽202内に油を入れた後、油を所要の温度まで加熱する。油が適温(例えば、160℃~200℃程度)となった時点で、ピストンシリンダー機構217を操作し、開閉蓋として機能する天板205が油槽202の周側壁203の上縁に当接するまで、降下させる。その状態が図14に示される。この状態では、回転軸20の下端は、油槽202の底板204に取り付けたスラスト軸受220に支承された状態となり、回転軸20の姿勢は安定する。また、この状態では、図14に示すように、食品収容容器40bを構成する容器本体40cと押さえ材40dとの間に、前記導波管11bが位置するようになるとともに、油面レベルPは押さえ材40dよりも上位となっている。
図14に示すように、油槽202の上端開放部が天板(開閉蓋)205によって閉鎖された後、前記したフライヤー100の場合と同様に、食品収容容器40bをモータ31の駆動力で回転させながら、マグネトロンを作動し、導波管11aおよび導波管11bを介してマイクロ波を油槽202内に照射して油ちょう処理を行う。図示されるフライヤー200においては、前記のように、食品収容容器40bを構成する容器本体40cと押さえ材40dとの間に、前記導波管11bが位置するともに、油面レベルPは押さえ材40dよりも上位となっているために、導波管11bを通って油槽202内に照射されるマグネトロン10からのマイクロ波は、狭い空間で反射しほぼその全量がロスの無い状態で、容器本体40cと押さえ材40dとの間に配置されている食品Fに照射されることとなり、高いエネルギー効率が確保される。
所要の加熱処理が進行した後、マグネトロン10の作動を停止し、モータ31の回転も停止する。そして、再びピストンシリンダー機構217を操作して作動棒216を上昇させ、食品収容容器40bを天板205と共に上昇させて、再度、図15に示した状態とする。その状態で、使用者は油ちょう済みの食品を食品収容容器40bから取り出す。
上昇の過程で、食品収容容器40bが油面レベルPより上であって、油槽202の上端縁よりも下位の位置にあるときに、モータ31を回転駆動して、食品収容容器40bに回転を与える操作をしてもよい。それにより、食品には油ちょう後に油外での回転運動が与えられ、遠心力により付着した油分を強制的に振り払うことができる。また、振り払われた油分が外部に飛散することもなく、環境保全も図られる食品収容容器40bから取り出した後、直ちに紙容器などに収容することも可能となる。さらに、油槽202内における油の量の減少を抑えることができ、経済的である。
また、上記の食品の油切りは、ピストンシリンダー機構217の操作による油外での素早い上下運動によって行うこともできる。
[第4の実施の形態]
以下に説明する第4の実施の形態に係るフライヤー300には、導波管311の開口が複数設けられている。他の構成は、上述の及び下述の実施の形態及び変形例と同様としうる。また本明細書に具体的な構成が記載されていない他の形態に対しても、本実施の形態のフライヤー300(特に複数の導波管311の開口)を適用しうる。例えば、油槽、マイクロ波発振器、加熱機構及び食品収容容器を備えるフライヤーに対して本実施の形態のフライヤー300(特に複数の導波管311の開口)を応用することが可能であり、そのようなフライヤーは例えば食品移動拘束機構等を具備していなくてもよい。
図16は、第4の実施の形態の第1の態様を示す油槽302及び導波管311の断面図である。理解を容易にするため、図16には簡略化されたフライヤー300の構成が示されており、主として油槽302及び導波管311のみが図示され、例えば導波管311が接続されるマグネトロン310の本体の図示は省略されている。
図16に示すフライヤー300では、1つの油槽302に対して4つのマグネトロン310が設けられており、それぞれのマグネトロン310が有する4つの導波管311が油槽302に対して等間隔に接続されている。なお図16には、複数のマグネトロン310が設けられ、導波管311毎に固有のマグネトロン310が設けられる例が示されているが、マグネトロン310の数は限定されない。例えば分岐を介して1つのマグネトロン310に対して複数の導波管311を接続し、それらの複数の導波管311のそれぞれを油槽302に接続して開口させてもよい。各導波管311(特に油槽302に対する接続部の近傍)の配向方向320は、油槽302の内部空間の水平方向断面の中心Cに向けられており、各導波管311から油槽302内に向かって放たれるマイクロ波の主たる進行方向と一致する。すなわち各導波管311は、直線的に延在する端部が油槽302に接続し、各導波管311の中心を通過して配向方向320に延びる軸線は、油槽302の中心Cを通過する。各導波管311から放出されるマイクロ波の中心部は油槽302の中心Cに向かって進行する。
油槽302の垂直軸と平行な方向(すなわち上下方向)に関する各導波管311(特に油槽302に対する接続部)の高さ位置は特に限定されないが、食品収容容器40に載せられた食品が油槽302内の油中に沈められて油ちょうされる際の食品収容容器40及び食品の位置に応じて、各導波管311の高さ位置が決められることが好ましい。すなわち、各導波管311の開口から油槽302内に向かって放たれるマイクロ波が、油ちょう時の食品収容容器40上の食品に対して直接的又は間接的に適切に照射されるような高さ位置に、各導波管311を設けることが好ましい。典型的には、油ちょう時の食品収容容器40上の食品とほぼ同じ高さにおいて、各導波管311を油槽302内に向けて水平方向に開口させることができる。したがって例えば、各導波管311の開口の最下部と食品が載せられる食品収容容器40の底板41の上面とを同じ高さ位置に設定してもよい。なお油槽302に取り付けられる複数の導波管311の開口は、少なくとも一部がお互いに同じ高さ位置にある状態で、油槽302内に向けられることが好ましい。これにより、油槽302に取り付けられる導波管311の2以上の開口はお互いに、高さ方向に関し、開口領域の一部又は全部が同じ位置に配置される。なおこの場合、油槽302に取り付けられる導波管311の全ての開口に関し、開口領域の一部又は全部が高さ方向に関して同じ位置に配置されていることが最も好ましい。なお、油槽302に取り付けられる導波管311の開口の全てではないが2以上の開口に関し、開口領域の一部又は全部が高さ方向に関して同じ位置に配置されていてもよい。
図17は、第4の実施の形態の第2の態様を示す油槽302及び導波管311の断面図である。本態様では、複数のマグネトロン310のそれぞれの導波管311が芯ずらし形態で配置されており、それぞれの導波管311の中心線は、油槽302の内部空間の水平方向断面の中心Cから外れた位置に向けられている。すなわち図17に示すフライヤー300では、油槽302に接続されている4つの導波管311の各々の配向方向320が油槽302の中心Cからずれている(すなわち中心Cからオフセットされている)。各導波管311の中心線は、各導波管311の延在方向に垂直な方向の断面における各導波管311(特に各導波管311の内部空間)の中心を通る軌跡によって定められる。各導波管311の配向方向320を、概ね、油槽302の内壁に沿う方向(すなわち内壁の接線方向)に設定することで、各導波管311から油槽302内に向かって放たれるマイクロ波を、偏りを防ぎつつ、広範囲に照射することができる。
また図17に示すフライヤー300では、油槽302の水平方向断面を基準としたそれぞれの導波管311の延在方向及び開口向き(図中の符合「320」参照)は、マグネトロン310間で互いに異なっている。具体的には、各導波管311(特に油槽302に対する接続部の近傍部分)の配向方向320は隣り合う他の導波管311(特に油槽302に対する接続部の近傍部分)の配向方向320と90°ずらされている。これにより、油槽302内に向けて放たれるマイクロ波は、それぞれの導波管311からお互いに異なる方向へ放たれる。特に本態様では、円環状の油槽302の周側壁303(特にマイクロ波の反射面を形成しうる周側壁303の内壁面)の面方向(法線方向)は油槽302の中心Cに向けられる一方で、各導波管311の配向方向320が上述のように油槽302の中心Cから外れた位置に向けられている。そのため、各導波管311から発せられたマイクロ波が周側壁303において反射されても、反射されたマイクロ波が元の導波管311に向かって直接的に逆行するのを効果的に防ぐことができる。このように、反射マイクロ波が各導波管311を逆行してマグネトロン310に照射されるのを抑制することで、マグネトロン310の劣化を効果的に防止することができる。
また図17に示すフライヤー300では、それぞれの導波管311の開口は、お互いに対向しない。したがって、あるマグネトロン310の導波管311から油槽302内に放たれたマイクロ波が、他のマグネトロン310の導波管311に対して直接的に入射することを効果的に抑制することができる。
なお油槽302内がマイクロ波によってなるべく均一的に照射されるように、各導波管311のマイクロ波の伝達路(すなわち内部空間)の水平方向断面の幅Wは、油槽302の周側壁303に水平方向断面の内径dの半分(すなわちd/2)若しくはd/2よりも小さくてもよい。また油槽302に対する各導波管311の開口形状は、四角形状であってもよいし、円形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
図18は、第4の実施の形態の第3の態様を示す油槽302及び導波管311の断面図である。本態様では、油槽302の水平方向断面を基準としたそれぞれの導波管311の向き(図中の符合「320」参照)は、マグネトロン310間で互いに異なっている。図17に示すフライヤー300では、各導波管311は油槽302の中心Cに向けられているが、油槽302の中心C周りの方向(すなわち角度方向)に関して、それぞれの導波管311の配向方向320はお互いに異なっている。このように油槽302の水平方向断面を基準としたそれぞれの導波管311の向きは、マグネトロン310間で互いに異なっており、またお互いに対向しない。
図19は、第4の実施の形態の第4の態様を示す油槽302及び導波管311の断面図である。本態様では、油槽302に接続された複数の導波管311が互いに並んで配置され、同じ方向に向けられている。図19に示すフライヤー300では、2つの導波管311が油槽302に接続されており、各導波管311は、油槽302の内部空間の水平方向断面の中心Cから外れた方向に向けられている。また油槽302の水平方向断面を基準としたそれぞれの導波管311の向きは、マグネトロン310間で互いに同じである。さらに、それぞれの導波管311の開口はお互いに対向しない。
図20は、第4の実施の形態の第5の態様を示す油槽302及び導波管311の断面図である。本態様では、油槽302に接続された2つの導波管311の向きが互いに異なる方向に向けられており、油槽302の水平方向断面を基準としたそれぞれの導波管311の向きは、マグネトロン310間で互いに異なっている。具体的には、一方の導波管311の配向方向320と他方の導波管311の配向方向320とは180°異なっている。また図20に示すフライヤー300では、それぞれの導波管311は、油槽302の内部空間の水平方向断面の中心Cから外れた位置に向けられており、それぞれの開口はお互いに対向しない。
上述のように本実施の形態では、油槽302に対して複数のマグネトロン310の導波管311がバランス良く接続され、マイクロ波による加熱処理の高効率化による高速加熱処理を実現することができ、また油槽302内の場所に依存してマイクロ波による加熱にムラが生じないように工夫されている。
例えば、油槽302に対して1つの導波管311のみが接続されている場合、特にマイクロ波の出力を大きくして調理時間の更なる短縮を目指す場合、食品収容容器40上に載せられている複数の食品のうちマイクロ波が最初に照射される食品と最後に照射される食品との間に時間差が生じて、食品間で加熱ムラが生じることがある。また油槽302に対して1つの導波管311のみが接続され、その導波管311から放たれるマイクロ波が油槽302内の特定範囲のみしかカバーしていない場合、油槽302内には、マイクロ波が集中的に照射される区間とマイクロ波があまり照射されない区間とが存在することになる。この場合、マイクロ波が集中的に照射される区間に配置される食品の加熱温度と、マイクロ波があまり照射されない区間に配置される食品の加熱温度と、には大きな差が生じうる。また油ちょう時に食品収容容器40が回転して各食品がこれらの区間を繰り返し通過する場合にも、加熱ムラが生じることがあり、例えば食品のうち比誘電率の高い水分量が多い部分が先に溶け始めてしまうことがある。また、食品のうちマイクロ波を強く吸収する部位から周囲への十分な伝熱が行われず、局所的に食品の温度が極端に上がってしまうことがあり、食品が局所的に膨張するなどの現象が生じることもあり、調理品質の低下がもたらされうる。
一方、本実施の形態のように複数のマグネトロン310の導波管311を油槽302にバランス良く接続することによって、食品を高速に加熱することができるだけではなく、食品収容容器40上の複数の食品間で加熱開始の時間差を小さくすることができる。また油槽302内において食品収容容器40上の食品が配置される領域の全体をほぼ同じ強さのマイクロ波で照射することができるように、複数の導波管311の延在方向や複数の導波管311の油槽302に対する接続位置を調整することで、食品の配置位置に依存すること無く、マイクロ波によって食品をほぼ均等に加熱することが可能になる。また油槽302内で食品収容容器40が回転して食品の位置が連続的に変わっても、マイクロ波によって継続的に食品を加熱することができる。これにより、食品の加熱ムラを防ぐとともに、食品の局所的な加熱を緩和し、食品を品質良く加熱調理することができる。
また図17~図20に示す複数の導波管311のように、開口がお互いに対向しないように導波管311を油槽302に接続することによって、各導波管311の開口から放たれるマイクロ波が直接的にお互いに干渉することを効果的に防いで、加熱効率を向上させることができる。なお、導波管311の開口の向きは、導波管311(特に油槽302に対する接続部の近傍)の配向方向320に応じて決められ、対応のマグネトロン310で発生させられたマイクロ波の主たる進行方向と相関を有する。上述のように導波管311の開口同士が対向しないことによって、各導波管311の開口から発せられたマイクロ波が他の導波管311の開口に向かって直接的には進入しない。したがって、導波管311の開口は、当該開口から油槽302内に向かって放たれるマイクロ波の主たる進行方向と一致しうる。
なお上述の第4の実施の形態に係る各態様は例示に過ぎず、他の態様によって各導波管11が設置されてもよい。例えば各導波管11の開口は、油槽302内の空間を経ることなく直接的に油槽302内の油に向けられているが、全ての導波管11又は一部の導波管11の開口が油槽302内の油の上方の空間に対して直接的に向けられていてもよい。なお各導波管311の開口のうち油槽302内の空間に向けられている部分が大きいと油槽302内におけるマイクロ波の反射が増大する傾向がある。また各導波管11は、図16~図20に示す方向以外の方向に向けられていてもよい。この場合、油槽302に接続される複数の導波管311のうちの1以上の導波管311が、油槽302の水平方向断面において、油槽302の中心Cと油槽302(特に周側壁303)との間に向けられていてもよい(図17、図19及び図20参照)。また油槽302には、5以上のマグネトロン310の導波管311が接続されてもよい。
なお上述の油槽302の中心Cは、油槽302の水平方向断面(特に油槽302の周側壁303の内周部の水平方向断面)に基づいて定められる。例えば、油槽302の周側壁303の内周部が円、楕円、及びその他の点対称な形状を持つ場合には、その断面の重心を油槽302の中心Cとしうる。
[第5の実施の形態]
以下に説明する第5の実施の形態では、熱線ヒータ(加熱機構)50による油槽302内の油の加熱が制御されている。すなわち熱線ヒータ50は、少なくとも、油槽302内の油中に食品が入れられる前から油槽302内の油中に食品が入れられるまでの間、油槽302内の油を継続的に加熱する。なお油中に食品が入れられる前とは、例えば、食品収容容器への食品の投入を開始する信号を制御部が受信したタイミングや、油への食品(食品収容容器)の投入を自動で行うフライヤーにおいて、制御部が調理開始の信号を受信したタイミングとして、定められてもよい。また熱線ヒータ50は、少なくとも、油槽302内の油中に食品が入れられる時に、食品に応じて決められる油ちょう設定温度Tsよりも高い温度を油が有するように、油槽302内の油を加熱する。他の構成は、上述の及び下述の実施の形態及び変形例と同様としうる。また本明細書に具体的な構成が記載されていない他の形態に対しても、本実施の形態のフライヤー300を適用しうる。例えば、油槽、加熱機構及び食品収容容器を備えるフライヤーに対して本実施の形態のフライヤー300を応用することが可能であり、そのようなフライヤーは例えばマイクロ波発振器及び食品移動拘束機構等を具備していなくてもよい。
図21は、第5の実施の形態の一態様を説明するための図である。図21の横軸は時間を示し、縦軸は油槽302内の油の温度を示す。図21に示す、符合「S1」~「S5」は条件を変えて食品を油ちょうした場合の時間と油の温度との関係を示すサンプル(第1~第5サンプル)を示す。特に第1サンプルS1~第4サンプルS4は、油による食品の加熱処理に加えて、マイクロ波による食品の加熱処理を行った。一方、第5サンプルS5は、マイクロ波は用いず、油のみによって食品の加熱処理を行った。
図21において符合「Ts」は、食品の油ちょう処理に対して設定される油槽302内の油の最適温度を示す。例えば、すぐには油槽302内の油に食品が投入されないが、いつでも当該油に食品が投入されて油ちょうが開始されてもよいように待機している間に、図示しないセンサによって油槽302内の油の温度を検出しつつ、その検出温度が所定温度又はそれよりも低い温度に下がった場合に油槽302内の油の加熱をオンにする場合がある(ON/OFF制御)。この場合に、油槽302内の油の加熱をオンにするタイミング及びオフにするタイミングを決めるための基準として用いられる上記の所定温度を、油ちょう設定温度Tsとしてもよい。
なお油槽302内の油の温度調整の方法は特に限定されず、上述のON/OFF制御以外の方法が用いられてもよく、例えばPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)が用いられてもよい。ON/OFF制御式のフライヤーは、基本的には目標温度となる油ちょう設定温度Tsを設定すればよく、比較的安価に実現可能であるという利点があるが、油の温度の振れ幅が比較的大きくなる傾向がある。一方、PID制御式のフライヤーは、油ちょう設定温度Tsの設定に加えて温度低下時の上昇スピード等の設定を行うことができる反面、比較的価格が高くなる傾向があるが、油の温度の振れ幅を比較的小さくすることができ、食品の油ちょうを精度良く行うことができる。PID制御の一態様として、加熱時間を可変に設定してもよい。例えば、油槽302内の油が油ちょう設定温度Tsよりも高い温度を示す時間をON時間に設定し、当該油が油ちょう設定温度Ts以下の温度を示す時間をOFF時間に設定した場合、「(ON時間)/(ON時間+OFF時間)」で示される割合に相当する時間を加熱時間に設定し、当該加熱時間に相当する時間、熱線ヒータ50は油槽302内の油の加熱をオンにすることができる。またPID制御の他の態様として、熱線ヒータ50の出力(すなわち単位時間当たりの油の加熱量)を、例えば0~1kwの間で、可変に設定してもよい。
また符合「t1」は食品を油槽302内の油に入れたタイミングを示し、符合「t2」及び「t2’」は食品の加熱が完了して油槽302内の油から取り出すタイミングを示す。「t2」は第1サンプルS1~第4サンプルS1のタイミングを示し、「t2’」は第5サンプルS5のタイミングを示す。また符合「I1」は、第1サンプルS1~第3サンプルS3に関し、油槽302内の油中に食品が入れられる前から油槽302内の油中に食品が入れられるまでにおいて油槽302の油が継続的に加熱された時間を示す。また符合「I2」及び「I2’」は、油槽302内の油中に食品が入れられてから(符合「t1」参照)、油から食品が取り出されるまで(符合「t2」及び「t2’」参照)の時間を示す。
図21において、第1サンプルS1及び第2サンプルS2は、熱線ヒータ50によって、油槽302内の油中に食品が入れられる前から油槽302内の油中に食品が入れられるまでの間、油槽302の油が継続的に加熱された場合を示す。具体的には、図21に示す第1サンプルS1及び第2サンプルS2では、熱線ヒータ50は、少なくとも、油槽302内の油中に食品が入れられる前から、油槽302内の油中に入れられた食品が油槽302内の油から取り出されるまで、油槽302内の油を継続的に加熱した。なお第1サンプルS1及び第2サンプルS2では、図21において図示は省略したが、食品を油槽302内の油から取り出した後は、下記の第5サンプルS5と同様に、油ちょう設定温度Tsを基準にして油の加熱のオン/オフを行った。なお、第1サンプルS1では待機時に油槽302内の油を撹拌したが、第2サンプルS2では待機時にそのような油の撹拌は行わなかった。
一方、図21に示す第3サンプルS3及び第4サンプルS4では、第1サンプルS1及び第2サンプルS2で行われていた「油槽302内の油中に食品が入れられる前から油槽302内の油中に食品が入れられるまでの間、油槽302の油が継続的に加熱される」ことは行っておらず、下記の第5サンプルS5と同様に、油ちょう設定温度Tsに基づく一般的な温度制御が行われた。なお、第3サンプルS3では待機時に油槽302内の油を撹拌したが、第4サンプルS4では待機時にそのような油の撹拌は行わなかった。また第4サンプルS4ではマグネトロン310からのマイクロ波を使った食品の加熱処理を行った一方で、第5サンプルS5ではそのようなマイクロ波を使った食品の加熱処理を行わなかった。
また図21に示す第5サンプルS5は、一般的な温度制御が行われた場合を示し、図示しないセンサによって検知される油槽302内の油の温度が、予め定められた油ちょう設定温度Ts又はそれよりも低い温度に降下したか否かに応じて熱線ヒータ50による油の加熱がオン/オフされる。具体的には、油槽302内の油の温度が油ちょう設定温度Ts又はそれよりも低い温度に達した場合には熱線ヒータ50に対する通電がオンにされ、油槽302内の油の温度が油ちょう設定温度Tsよりも高い温度に達した場合には熱線ヒータ50による通電がオフにされる。
図21からも明らかなように、第5サンプルS5(図21の符合「I2’」参照)に比べ、第1サンプルS1~第4サンプルS4(図21の符合「I2」参照)では、油槽302内の油中に食品が入れられてから油から食品が取り出されるまでの時間を短縮することができた。これは、油による加熱処理に加え、マイクロ波による加熱処理の利用によるものである。また特に第1サンプルS1及び第2サンプルS2については、マイクロ波の使用に加え、油槽302内の油中に食品が入れられる前から油槽302内の油中に食品が入れられるまでの間、熱線ヒータ50によって油槽302の油を継続的に加熱したことによるものであり、また油に食品が入れられる時点で油が既に油ちょう設定温度Tsよりも高い温度を有していたことによるものである。なお第4サンプルS4は、第5サンプルS5と同様に、第1サンプルS1及び第2サンプルS2と比べて油の温度が大きく低下しており、実際、第4サンプルS4の油ちょう後の食品は、第1サンプルS1及び第2サンプルS2の油ちょう後の食品に比べ、表面部(すなわち外周部)の加熱処理の程度が弱かった。一般に、油に食品を投入した後に温度センサが油温の低下を検知してから油の加熱を開始した場合、実際に油が油ちょう設定温度Tsに達するまでには時間がかかるため、油の温度が油ちょう設定温度Tsを大幅に下回る時間帯が発生する(図21の第4サンプルS4及び第5サンプルS5参照)。このような油の温度の低下は加熱調理に大きな影響を及ぼし、特に本実施の形態のようにマイクロ波を組み合わせて短時間で食品の加熱調理を行う装置では、油の温度の大幅な落ち込みが調理時間の長大化及び調理精度の悪化に大きな影響を及ぼしうる。
一方、上述の第1サンプルS1及び第2サンプルS2のように油槽302内の油中に食品が入れられる前から油を加熱することにより、食品投入によってもたらされる油の温度の落ち込みの影響を軽減することができ、調理時間及び調理品質において非常に有利である。また食品投入によってもたらされる油の温度の落ち込みの影響を軽減する観点から、油に食品が投入される時点で、油の温度が油ちょう設定温度Tsよりも高い温度を有することが好ましく、例えば油ちょう設定温度Tsよりも数℃~15℃程度高い温度を有していてもよい。
本実施の形態のように油による食品の加熱に加えてマイクロ波を使って食品を加熱することで、食品の油ちょう(すなわち油を使った食品の加熱調理)を短時間で行うことができる。例えば、マイクロ波を用いずに油のみによって加熱処理を行う場合には油ちょうに6分程度かかる食品であっても、油による加熱処理にマイクロ波による加熱処理を組み合わせることによって、数十秒程度で食品を油ちょうすることも可能である。ただし衣などの外側部分を有する食品に関しては、高出力のマイクロ波であっても食品の外側部分を短時間で加熱することが難しい場合があり、例えば衣のメイラード反応が不十分になったり、たんぱく質の変性及び脱水なども不十分になったりする。その場合、油ちょう後の食品はクリスピー感が大幅に損なわれ、味が悪くなってしまう懸念がある。
このような懸念に対処するため、油による加熱処理に加えてマイクロ波による加熱処理を行う場合、油槽302内の油の油ちょう設定温度Tsを、マイクロ波を用いずに油のみによって食品の加熱処理を行う場合よりも、数℃~数十℃(例えば10℃~30℃)程度高く設定することが好ましい。
本件発明者は、油ちょう設定温度Tsを変えながら油ちょうした後の食品の食感の官能試験を行った。まず、マイクロ波を用いずに油のみによって食品(衣付きの肉:サンプルA)を加熱処理し、油ちょう後のこの食品の食感(クリスピー感)の官能評価を行った。この場合、油の油ちょう設定温度TsはA℃(具体的には170℃)で行い、官能評価の結果は5点満点中4.0点であった。次に、同種の食品(サンプルB及びサンプルC)を、マイクロ波及び油によって加熱処理し、油ちょう後のこの食品の食感の官能評価を行った。一方の食品(サンプルB)の加熱処理で用いた油の油ちょう設定温度Tsは、A℃とした。他方の食品(サンプルC)の加熱処理で用いた油の油ちょう設定温度Tsは、(A+20)℃とした。これらの食品の食感の官能試験の結果は、サンプルBは1.3点であったのに対し、サンプルCは4.2点であった。また、これらのサンプルA~サンプルCの油ちょう後の最大破断荷重を計測したところ、サンプルCはサンプルAとほぼ同等程度の最大破断荷重を示したが、サンプルBは、サンプルAが示した最大破断荷重の2分の1よりも小さい最大破断荷重を示した。
なお、油ちょう設定温度の具体的な温度は可変であってもよい。上述のように熱線ヒータ50(加熱機構)は、油槽302内の油の温度を検出する温度センサ(図示省略)の検出結果に基づいて油槽302内の油を加熱するが、その加熱の基準となる油ちょう設定温度は、待機時と調理時とで異なる温度であってもよい。
例えば熱線ヒータ50は、図示しない制御装置の制御下で、待機時には、油槽302内の油が第1の油ちょう設定温度(図21の符合「Ts」参照)を目標値として(一例として、油槽302内の油が第1の油ちょう設定温度以下を示す場合にのみ(ただしこの例には限定されない))、油槽302内の油を加熱しつつ、油槽302内の油中に食品が入れられる前から、油槽302内の油中に入れられた食品が油槽302内の油から取り出されるまでの間は、油槽302内の油が第1の油ちょう設定温度よりも高い第2の油ちょう設定温度(図21の符合「Ts’」参照)を目標値として(一例として、油槽302内の油が第2の油ちょう設定温度以下を示す場合にのみ(ただしこの例には限定されない))、油槽302内の油を加熱してもよい。このように第2の油ちょう設定温度を設定することによって、油槽302内の油の温度が高くなり過ぎることを防ぐことができる。
[油の撹拌]
上述のように、短時間で食品の油ちょうを行う場合には、油槽302内の油の温度が大きな影響を及ぼしうる。特に、安定的に高品質な油ちょうを行う観点からは、油槽302内の油の温度の分布が小さい方が好ましい。
一般に加熱源に近い位置ほど油の温度は高くなり、加熱源から遠ざかるほど油の温度は低くなる傾向があり、油槽302内の油の温度は必ずしも同じ温度を有さず、場所に応じて油の温度が異なり、特に油槽302内の油が多くなるほどその傾向は強くなる。例えば、上述の実施の形態ではマイクロ波発振器以外の加熱機構として油槽302内(特に油内)に設けられる熱線ヒータ50が利用されているが、この場合、熱線ヒータ50の配設位置に応じた温度ムラが油槽302内の油に生じる傾向がある。このような油の温度分布は、他の形態の加熱機構を用いる場合にも同様に発生する。例えば、熱線ヒータ50の代わりにIH(Induction Heating)式の加熱機構を用いる場合、油槽302のうちIH式加熱機構によって自己発熱される箇所(例えば底板4)からの距離に応じて、油に温度分布が生じうる。
このような油槽302内の油の温度分布は、油がある程度撹拌される食品投入中よりも、油槽302内で油が停滞している「油に食品が投入される前」に顕著に現れやすい。
そのような油の温度分布の程度を抑えて油槽302内の温度を均一化する観点から、フライヤー300は、油槽302内の油を撹拌する撹拌体を更に備えることが好ましい。そのような撹拌体は、少なくとも油槽302内の油中に食品が入れられる前に(すなわち油に食品が入れられていない状態で)、油槽302内の油を撹拌することが好ましい。上述の第1サンプルS1~第4サンプルS4からも明らかなように、油槽302内の油を撹拌した場合(第1サンプルS1及び第3サンプルS3)の方が、そのような撹拌を行わない場合(第2サンプルS2及び第4サンプルS4)よりも、油の温度の変動(特に低下)が抑えられて高温で食品を油ちょうできることが分かる。
そのような撹拌体として専用の部材(図示省略)が設けられてもよいが、上述の実施の形態では、回転駆動機構で回転させられる食品収容容器40を撹拌体として好適に用いることができる。ただし、油ちょう前の食品を食品収容容器40に載せるために食品収容容器40を油から取り出すケースにおいて、食品収容容器40に油ちょう前の食品を載せる際やその前後においても油槽302内の油を撹拌する場合には、食品収容容器40とは別個の撹拌体が設けられることが好ましい。
以上説明したように本実施の形態によれば、油槽302内の油中に食品が入れられる前から油槽302内の油を加熱しておくことで、加熱調理の時間を短縮することができ、また加熱調理後の食品の食感等の品質を向上させることができる。また油槽302内の油に食品を投入する時点で、当該油が油ちょう設定温度Tsよりも高い温度を有する場合にも、加熱調理の時間を短縮することができ、また加熱調理後の食品の食感等の品質を向上させることができる。また、油槽302内の油の温度を均一化することで、安定的に高品質な油ちょうを行うことができる。
なお図21に示すような油槽302内の油の温度制御は、油槽302内の油の量が比較的少ない場合にも有効である。油槽302の小型化、油によるマイクロ波の吸収の抑制、及びランニングコストの低減化の観点からは、油槽302内の油の量は少ない方が好ましく、例えば通常サイズの油槽302で使用される油の通常量の4分の1程度にまで油槽302内の油の量を抑えることも可能である。ただし油槽302内の油の量が少なくなるほど、食品投入等の外乱によって油の温度は変化しやすくなる。上述の本実施の形態は、そのように油の温度が変化しやすい「油槽302内の油の量が少ない場合」にも有効であり、少量の油によって短時間且つ高品質な加熱調理を行うことを可能にする。
[第6の実施の形態]
以下に説明する第6の実施の形態にかかるフライヤー200によれば、加熱調理後の食品を食品収容容器40bから簡単且つ高速に取り出すことができ、また装置の省スペース化を図ることができる。具体的には、フライヤー200は、排出口を有するガイド部材を更に備え、このガイド部材が食品収容容器40bの軸回転動作と組み合わせられる。他の構成は、上述の及び下述の実施の形態及び変形例と同様としうる。また本明細書に具体的な構成が記載されていない他の形態に対しても、本実施の形態のフライヤー(特にガイド部材)を適用しうる。例えば、油槽、加熱機構及び食品収容容器を備えるフライヤーに対して本実施の形態のフライヤーを応用することが可能であり、そのようなフライヤーは例えばマイクロ波発振器及び食品移動拘束機構等を具備していなくてもよい。
図22は、第6の実施の形態の一態様に係るフライヤー200を示す図であり、食品収容容器40bと、開閉蓋として機能する天板205とが上方位置にある状態を示す(油槽202は断面が示されている)。図23は、ガイド部材330及び食品収容容器40b(特に容器本体40c)の概略平面図であり、食品収容容器40bからの食品Fの取り出しを説明するための図である。
図22に示すフライヤー200は、図14及び図15に示すフライヤー200と基本的に共通の構成を有する。ただし図22に示すフライヤー200では、排出口331(図23参照)を有するガイド部材330が設けられている。食品収容容器40bの容器本体40cは、水平方向に延在する平坦な円盤形状の底板41によって構成され、底板41の周囲部分(すなわち外周部)には上方向に延在する突出部(図3の「囲い板42」参照)が設けられていない。また図11に示す食品収容容器40bとは異なり、図22及び図23に示すフライヤー200では、押さえ材40dには仕切り材が設けられておらず、食品収容容器40bの底板41上(特に食品Fが載せられる面上)に複数の仕切り材43が設けられている。各仕切り材43は、上下方向(すなわち高さ方向)に延在するとともに、食品収容容器40bの回転軸20から外周に向かう放射方向に延在する。これらの仕切り材43は、食品収容容器40bの回転軸20周りにおいて等角度間隔で配置される。
一方、図14及び図15に示すフライヤー200と同様に、図22に示すフライヤー200においてもピストンシリンダー機構217(第2の移動機構)は、食品収容容器40bを、食品収容容器40bに収容された食品Fを油槽202内の油中に配置するための下方位置(第1の位置)と、食品収容容器40bに収容された食品Fを油槽202内の油の外側(図22では油槽202よりも上方の位置)に配置するための上方位置(第2の位置)と、に配置することができる。
ガイド部材330は、水平方向に関して、この上方位置に配置された食品収容容器40b(特に食品Fが載せられる容器本体40c)を部分的に又は全体を取り囲むことができる位置に、固定的に設置されている。
このようにガイド部材330は、上方位置に配置された食品収容容器40b(特に容器本体40c)に対応する位置に設けられる。そして、上方位置に配置された食品収容容器40b(特に容器本体40c)を、回転軸20を介して回転駆動機構(第1の移動機構)により回転させる(図23の矢印「A1」参照)ことによって、食品収容容器40bに収容されている食品Fは、遠心力を受けつつ回転させられ、ガイド部材330によって排出口331に案内される。なお回転駆動機構(第1の移動機構)による食品収容容器40b(特に容器本体40c)の回転駆動は、上述の実施の形態と同様にして行うことができる。
上述のように本実施の形態によれば、ガイド部材330と食品収容容器40bの回転とを組み合わせることによって、簡単且つ高速に、油ちょう後の食品Fを食品収容容器40bから取り出すことができる。特に、食品収容容器40b及び食品を「油ちょうのための下方位置(第1の位置)」から「取り出しのための上方位置(第2の位置)」に移動させるために、食品収容容器40bを水平方向へ移動させる必要がなく、食品収容容器40bを垂直方向へ移動させるだけでよい。そのため、この食品収容容器40bの移動に要する時間を短縮することができ、また装置の設置スペースを小さくすることも可能である。また人手を介することなく食品Fを食品収容容器40bから取り出すことができるため、衛生的であるとともに、安定的に食品Fを食品収容容器40bから取り出すことができる。
なお図22に示すフライヤー200では、食品収容容器40bが垂直方向に関して2段階の位置(すなわち上方位置及び下方位置)に配置されるが、食品収容容器40bは垂直方向に関して3段階以上の位置に配置可能であってもよい。例えば、食品収容容器40b(すなわち容器本体40c)に油ちょう前の食品Fを設置するための食品収容容器40bの垂直方向位置(第3の位置)、油槽202内の油に食品Fを沈めて油ちょうを行うための食品収容容器40bの垂直方向位置(上述の第1の位置)、及び油ちょう後の食品Fをガイド部材330によって案内しつつ食品収容容器40bから排出するための食品収容容器40bの垂直方向位置(上述の第2の位置)を、互いに異なる位置とすることもできる。また油ちょう後の食品Fから余分な油を取り除くために、油槽202内において油よりも上方の空間に食品Fを配置するための食品収容容器40bの垂直方向位置(第4の位置)を、上述の第1の位置~第3の位置と異なる位置とすることもできる。
上述の構成を有するフライヤー200は、例えば専用のキッチンを持たないコンビニエンスストア等の店舗で使用するフライヤーとして好適である。一般に、コンビニエンスストア等の店舗では、店員が手動で、食品の油ちょうを行うとともに、油ちょう後の食品のパッケージングを行っている。具体的には、店員が、油槽から取り出した食品を油切りスペースに一旦置いた後に、袋等に油切り後の食品を入れている。そのため、通常は、油槽を設置するスペース、油切りを行うスペース、及びパッケージングを行うスペースが必要になる。一方、上述の構成を有するフライヤー200によれば、油ちょう後の食品Fを、ガイド部材330の排出口331を介し、食品収容容器40bからパッケージングスペースに直接的に送ってパッケージ用の袋等に入れることも可能である。その場合、油切りスペースを省略することが可能であり、また食品収容容器40bからパッケージングスペースに至る食品Fの搬送路を油切りスペースとしても活用することも可能である。このように処理の高速化及び装置の小型化に適している上述のフライヤー200は、小型フライヤーの店頭設置、油ちょう直後の食品の提供、及び一食分単位での食品の調理が求められるコンビニエンスストア等の店舗において、好適に用いられうる。
また上述のフライヤー200では、底板41の外周部に突出部が設けられていないが、底板41の外周部に突出部が設けられていてもよい。その場合、突出部の突出形態は、上述の回転力及び遠心力を利用した食品Fの取り出しを行うことが可能な形態で突出部を設ける必要がある。例えば、食品収容容器40b(容器本体40c)の軸回転時に食品Fがそのような突出部を乗り越えられる程度の、高さ、形状及び/又は傾斜によって、そのような突出部を設けることが好ましい。また図22及び図23に示すフライヤー200では、容器本体40cに仕切り材43が設けられているが、押さえ材40dに同様の仕切り材(図11の符合「72」参照)が設けられていてもよいし、そのような仕切り材が設けられていなくてもよい。
なお上述の図22及び図23に示すフライヤー200では、ガイド部材330が油槽202とは別体として設けられているが、油槽202(特に周側壁203)によってガイド部材が構成されていてもよい。すなわち、ピストンシリンダー機構217(第2の移動機構)が食品収容容器40bを配置する第2の位置であって、食品収容容器40bに収容された食品Fを油槽202内の油の外側に配置するための第2の位置を、油槽202内に設定してもよい。この場合、油槽202の周側壁203がガイド部材として働き、周側壁203のうち第2の位置に対応する位置の一部には上述の排出口(図23の符合「331」参照)として働く開口(図示省略)が形成されている。この場合にも、第2の位置に配置された食品収容容器40b(特に容器本体40c)を、回転軸20を介して回転駆動機構(第1の移動機構)により回転させることによって、食品収容容器40bに収容されている食品Fは、遠心力を受けつつ回転させられ、ガイド部材として働く油槽202の周側壁203によって、排出口として形成された開口に案内され、開口から油槽202外に排出される。本態様によれば、例えば油槽202と開閉蓋205との接触箇所においてカス等の異物が付着することを防ぐことができ、また油槽202の周側壁203をガイド部材に兼用することができる。なお本態様では、マイクロ波や油煙等が排出口(すなわち周側壁203に形成された開口)から流出することを防ぐために、当該排出口を開閉可能な蓋部材(図示省略)が設けられることが好ましい。
[第7の実施の形態]
以下に説明する第7の実施の形態にかかるフライヤー300は、給気口206を介して気体を油槽302内に供給するファンなどの気体供給機構を更に備え、油槽302内を陽圧にすることで、排気口207を介して油槽302内の気体を排出する。なお気体供給機構は、ファン以外の構成を有していてもよく、例えばポンプなどを使って気体を供給する機構であってもよい。他の構成は、上述の及び下述の実施の形態及び変形例と同様としうる。また本明細書に具体的な構成が記載されていない他の形態に対しても、本実施の形態のフライヤー(特に気体供給機構)を適用しうる。例えば、油槽、加熱機構及び食品収容容器を備えるフライヤーに対して本実施の形態のフライヤーを応用することが可能であり、そのようなフライヤーは例えばマイクロ波発振器及び食品移動拘束機構等を具備していなくてもよい。
図24は、第7の実施の形態の第1の態様に係るフライヤー300を示す図である。図25は、第7の実施の形態の第2の態様に係るフライヤー300を示す図である。図26は、第7の実施の形態の第3の態様に係るフライヤー300を示す図である。図24~図26には、油槽302、給気用ダクト208及び排気用ダクト209の断面が概略的に示されるとともに、給気用ダクト208に接続されるファン340が簡略的に示されている。
給気用ダクト208の一方の端部にはファン340が気密に接続され、他方の端部には油槽302に形成された給気口206が気密に接続される。ファン340は、給気用ダクト208外の周囲の空気を給気用ダクト208内に向かって送り出す。給気用ダクト208内に向かって送り出された空気は、給気口206を介して油槽302内(特に油槽302内に貯留されている油の上方の空間)に導入される。これにより油槽302内の圧力は陽圧になり、油槽302外の周囲の外気圧よりも高い圧力を有する。油槽302内の陽圧状態に少なくとも部分的に起因し、油槽302内の空気が排気口207を介して排気用ダクト209に排出される。特に、マイクロ波を使って加熱調理を行うフライヤー300では、加熱調理中はマイクロ波の漏出を防ぐために油槽302内が基本的には密閉されるため、比較的容易に油槽302内を陽圧状態にすることができる。なお、給排気用の空気の流通を確保するため、給気口206及び排気口207の各々は密閉されていないが、マイクロ波を電磁気的に遮断しつつ気液の通過を許容する金属製メッシュ等のマイクロ波遮断部材が、給気口206及び排気口207の各々には設けられている。
このように油槽302に対して連続的に空気(ガス)を供給し、且つ、油槽302から連続的に空気を排出しつつ油槽302内の上方空間において空気を流動させることで、油槽302の天井部や周側壁303に蒸気や油滴が付着することを有効に防ぐことができる。特に油槽302の天井部に対する蒸気や油滴の付着を防止する観点からは、給気口206及び排気口207のうちの少なくとも一方は、油槽302の開口部が開閉蓋7、205で閉じられた状態で油槽302の天面(図1の「天板5」及び図14の「天板205」参照)の近傍に配置されることが好ましい。なお給気口206及び排気口207は、同じ高さ位置に設けられてもよいし、互いに異なる高さ位置に設けられてもよい。
またエネルギー効率や利便性の観点から、食品の油ちょうが行われている間及びその前後(具体的には、食品が油槽302内の油中に沈められている間、油槽302内の油に食品が投入される前のある時間、及び油槽302内の油から食品が取り出されてからのある時間)においてのみ、ファン340を駆動して油槽302内を陽圧にすることが好ましい。油槽302において食品の油ちょうが行われていない間(すなわち油槽302内の油中に食品が沈められていない間(特に待機時))は、ファン340を停止させることが好ましく、油槽302内の圧力を常圧にしてもよい。
本件発明者は、鋭意研究の結果、油槽302内の上方空間において渦流空気Vを形成することで、油槽302に対する蒸気や油滴の付着を非常に効果的に防ぐことができるという新たな知見を得るに至った。空気流が油槽302の天井部や周側壁303(特に周側壁303)と接触するように渦流空気Vを形成することによって、油槽302内の蒸気や油滴を渦流空気Vにより絡め取って、油槽302に対する蒸気や油滴の付着を防ぐことができる。
なお本実施の形態における渦流空気Vは、従来の粉体分離機構において採用されているサイクロン式の気流とは、以下の点で異なる。すなわちサイクロン式の気流を採用する粉体分離機構は、回転気流により粉塵等を壁面にぶつけて重力により落下させ回収することを目的とした機構である。このように従来のサイクロン式の気流を採用する粉体分離機構は、汚れた空気(サイクロン気流)から粉塵を取り除いて清浄な空気を得るための機構である。一方、上述の本実施の形態は、調理時に油煙や蒸気が発生する油槽302「内」で気体を整流して渦流空気Vを作り出すことを目的としており、基本的には汚染されていない新鮮な乾燥した外気(渦流空気V)で油煙や蒸気を包み込み、油煙や蒸気を油槽302の壁面や天面に触れさせないようにしながら排出する機構である。このように本実施の形態に係るフライヤー300は、汚染されていない空気を取り入れて油煙や蒸気により汚れた空気を排出する機構を採用する。
本件発明者は、更に研究を重ね、渦流空気Vによって油槽302の天井部や周側壁303に蒸気や油滴が付着することを有効に防ぐ観点から、以下の好ましい関係を新たに見いだすに至った。すなわち、給気口206の中心206aを通る直線状の第1延長ラインL1であって、給気口206を介した油槽302内への空気(気体)の主たる供給方向D1に延びる第1延長ラインL1は、油槽302の内部空間の水平方向断面の中心である油槽断面中心Cを通過しないことが好ましい。また排気口207の中心207aを通る直線状の第2延長ラインL2であって、排気口207を介した油槽302内からの空気(気体)の主たる排出方向D2に延びる第2延長ラインL2は、油槽断面中心Cを通過しないことが好ましい。また油槽302の水平方向断面における内周に沿う2つの方向であって互いに逆の方向に向けられた2つの方向を順周方向C1及び逆周方向C2として定めた場合、順周方向C1及び逆周方向C2のうち主たる供給方向D1に基づいて定められる方向は、順周方向C1及び逆周方向C2のうち主たる排出方向D2に基づいて定められる方向と同じであることが好ましい。これらの関係を満たす場合、油槽302の天井部や周側壁303に対する蒸気や油滴の付着を防ぐのに好ましい渦流空気Vを、油槽302の内部空間に効果的に形成することができる。
なお「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる供給方向D1に基づいて定められる方向」は、例えば以下のようにして定められる。すなわち、順周方向C1及び逆周方向C2のうち、油槽302の水平方向断面における内周に対応する位置での給気口206の中心206aからの主たる供給方向D1を構成する方向成分と同じ方向成分を含む方向を、「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる供給方向D1に基づいて定められる方向」として定めることができる。また順周方向C1及び逆周方向C2のうち、油槽302の水平方向断面における内周に対応する位置での排気口207の中心207aに向かう主たる排出方向D2を構成する方向成分と同じ方向成分を含む方向を、「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる排出方向D2に基づいて定められる方向」として定めることができる。
さらに、油槽断面中心Cを通る直線状の第3延長ラインL3であって、第1延長ラインL1と垂直に交わる第3延長ラインLを基準に、油槽302を第1分割領域R1及び第2分割領域R2に区分する。この場合、第1分割領域R1及び第2分割領域R2のうち給気口206が設けられる領域は、第1分割領域R1及び第2分割領域R2のうち排気口207が設けられる領域と異なることが好ましい。この関係を満たす場合、油槽302の天井部や周側壁303に対する蒸気や油滴の付着を防ぐのに好ましい渦流空気Vを、油槽302の内部空間に効果的に形成することができる。
本件発明者は、油槽302における給気口206及び排気口207の相対位置、給気口206に対する給気用ダクト208の接続態様、排気口207に対する排気用ダクト209の接続態様、及びその他の条件を変えながら、油槽302内に形成される空気流(例えば渦流の有無や程度)を観察し、油槽302の天井部や周側壁303における蒸気や油滴の付着の程度を評価した。このようにして評価したもののうち、代表的な評価例を以下において評価例1~5として説明する。
評価例1として、図26に示す構成を有するフライヤー300を使った。図26に示すフライヤー300では、給気口206の中心206aを通る第1延長ラインL1及び排気口207の中心207aを通る第2延長ラインL2は、同一直線上に存在し且つ油槽断面中心Cを通過する。そのため図26のフライヤー300では、上述の「主たる供給方向D1に基づいて定められる方向」及び「主たる排出方向D2に基づいて定められる方向」は、順周方向C1及び逆周方向C2の双方と垂直を形成し、順周方向C1及び逆周方向C2のいずれにも分類することができない。なお給気口206は第1分割領域R1に設けられ、排気口207は第2分割領域R2に設けられている。
評価例2として、図24に示す構成を有するフライヤー300を使った。図24に示すフライヤー300では、給気口206の中心206aを通る第1延長ラインL1及び排気口207の中心207aを通る第2延長ラインL2は、同一直線上に存在するが、油槽断面中心Cを通過しない。また給気口206を介した空気の主たる供給方向D1及び排気口207を介した空気の主たる排出方向D2は、同一方向に設定されていた。そして「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる供給方向D1に基づいて定められる方向」及び「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる排出方向D2に基づいて定められる方向」は、いずれも順周方向C1であり、同一方向に設定されている。なお給気口206は第1分割領域R1に設けられ、排気口207は第2分割領域R2に設けられている。
評価例3として、図25に示す構成を有するフライヤー300を使った。図25に示すフライヤー300では、給気口206の中心206aを通る第1延長ラインL1及び排気口207の中心207aを通る第2延長ラインL2は、垂直を形成し、油槽断面中心Cを通過しない。また給気口206を介した空気の主たる供給方向D1及び排気口207を介した空気の主たる排出方向D2は、お互いに垂直を形成するように設定されていた。そして「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる供給方向D1に基づいて定められる方向」及び「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる排出方向D2に基づいて定められる方向」は、いずれも順周方向C1であり、同一方向に設定されている。なお給気口206は第1分割領域R1に設けられ、排気口207は第2分割領域R2に設けられている。
評価例4として、図示しないフライヤー300であって、給気口206の中心206aを通る第1延長ラインL1及び排気口207の中心207aを通る第2延長ラインL2は、垂直を形成し、油槽断面中心Cを通過しないフライヤー300を使った。また給気口206を介した空気の主たる供給方向D1及び排気口207を介した空気の主たる排出方向D2は、お互いに垂直を形成するように設定されていた。そして、給気口206は第1分割領域R1に設けられ、排気口207は第2分割領域R2に設けられていた。このフライヤー300において、「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる供給方向D1に基づいて定められる方向」は順周方向C1だが、「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる排出方向D2に基づいて定められる方向」は逆周方向C2であった。
評価例5として、図示しないフライヤー300であって、給気口206の中心206aを通る第1延長ラインL1及び排気口207の中心207aを通る第2延長ラインL2は、互いに平行の関係にあり、油槽断面中心Cを通過しないフライヤー300を使った。また給気口206を介した空気の主たる供給方向D1及び排気口207を介した空気の主たる排出方向D2は、お互いに逆向き(180度)を形成するように設定されていた。なお給気口206及び排気口207は共に第1分割領域R1に設けられていた。このフライヤー300において、「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる供給方向D1に基づいて定められる方向」及び「順周方向C1及び逆周方向C2のうち、主たる排出方向D2に基づいて定められる方向」は、いずれも順周方向C1であり、同一方向に設定されている。
これらの評価例1~5に関し、評価例1(図26参照)では、油槽302の中心Cを通過する「給気口代表位置206aと排気口代表位置207aとを結ぶ直線」の両サイドに渦流空気Vが形成され、油槽302の天井部や周側壁303に対する蒸気や油滴の付着を良好に防ぐことができたが、評価例2及び3に比べると、蒸気や油滴の付着防止効果は多少劣っていた。また評価例2(図24参照)及び評価例3(図25参照)でも、油槽302の周側壁303に沿って流動する渦流空気Vが形成され、油槽302の天井部や周側壁303に対する蒸気や油滴の付着をさらに良好に防ぐことができた。一方、評価例4及び評価例5(図示省略)では、渦流空気が形成されたが、非常に乱れた状態の渦流となり、油槽302の天井部や周側壁303に対する蒸気や油滴の付着の防止の効果は、評価例1~3と比べると劣っていた。
なお図24及び図25の各々に示すフライヤー300では、給気用ダクト208及び排気用ダクト209が、概ね油槽302(特に内周壁面)の接線方向に延在している。これにより、給気用ダクト208から油槽302内に向かって送り出される空気流の方向は概ね油槽302(特に内周壁面)の接線方向となる。また油槽302内から排気用ダクト209に送り出される空気流の方向も概ね油槽302(特に内周壁面)の接線方向となる。このように、油槽302内において、概ね油槽302(特に内周壁面)の接線方向に流動する空気流を形成することによって、油槽302に壁面に接触する空気流(特に渦流)を効果的に作り出して、油槽302の壁面に対する水や油の付着を抑えることができる。
上述のようにフライヤーにおいてマイクロ波及び油により食品の多重加熱調理を行う場合、マイクロ波の漏洩を防止するために油槽302は基本的に密閉される(ただし給気口206及び排気口207を除く)。そのため加熱調理が行われている間、油槽302内の空間には大量の油煙と蒸気が充満し、通常は、油槽302の天面や壁面に水や油が結露して付着する。油槽302の天面や壁面に結露した水や油は、マイクロ波を吸収して加熱効率を悪化させ、また天面や壁面から高温の油に水分が落下すると、激しい破裂音が生じる。さらに油槽302の天面や壁面に付着した水や油は装置故障(例えば漏電故障や油煙による部材間の意図しない固着)の要因となりうる。
一方、本実施の形態のフライヤー300によれば、油槽302内を陽圧にして空気の給排を連続的に行うことで、油槽302内に確実に大量の空気を供給することができる。特に、油槽302内に渦流空気Vを作り出すことによって、油槽302内において局所的に空気が滞留することを防ぐことができ、油槽302の天面及び壁面を効果的に空気流に晒すことができる。これにより、油槽302の天面及び壁面に対する水や油の付着を効果的に抑えることができ、上述の不具合を有効に防ぐことができる。
なお上述のような渦流空気Vを作り出す観点からは、油槽302内の上方空間を形成する内周壁面は起伏の少ないスムーズな面形状を有することが好ましく、油槽302(特に油槽302内の上方空間を形成する内周壁面)の水平方向断面形状が円形(楕円径を含む)や正多角形上であることが好ましい。また油槽302の水平方向断面において、給気用ダクト208内から給気口206を介して油槽302内に進行する空気流の代表的な方向と、油槽302内から排気口207を介して排気用ダクト209内に進行する空気流の代表的な方向とは、互いに向かい合う方向の成分を含まないことが好ましい。ここで言う空気流の代表的な方向とは、給気用ダクト208のうち給気口206に接続される部分が十分な長さを有する直線状部分である場合や排気用ダクト209のうち排気口207に接続される部分が十分な長さを有する直線状部分である場合には、それらの直線状部分の方向と一致する。
[臭気を抑制する機構]
上述のようにして油槽302内の水や油を絡め取って排気用ダクト209に排出された空気には臭気をもたらす成分が含まれ、そのような臭気が含まれる空気をそのままフライヤー300外に排出することは好ましくない。一般に、フライヤーに対しては排煙フードなどの換気装置が設置されるのが通常であるが、コンビニエンスストア等の店舗では、設置スペース不足やその他の理由によってそのような換気装置の設置が難しい場合がある。したがって換気装置を設置することなく、排出空気から臭気をもたらす成分を効果的に取り除くことができる装置の提案が望まれている。
そのような事情を背景に、本件発明者は、空気から臭気をもたらす成分を効果的に取り除くことができる小型化可能な装置を新たに見いだした。具体的には、そのようなフライヤー300は、排気路(排気用ダクト209)の一方側の端部が排気口207に接続され、排気路(排気用ダクト209)の他方側の端部が貯留タンクに貯留される液体の中で開口し、排気路(排気用ダクト209)のうちの一方側の端部と他方側の端部との間にミストを供給するミスト供給部を設置する。このようなフライヤー300は、上述の及び下述の実施の形態及び変形例に対しても適用することが可能であり、また本明細書に具体的な構成が記載されていない他の形態に対しても適用可能である。
図27は、臭気を抑制するフライヤー300の一態様を示す概念図である。図28は、図27に示すフライヤー300の具体的構成例を示す図である。
図27に示すフライヤー300は、油槽302の給気口206に給気用ダクト208が接続され、油槽302の排気口207に排気用ダクト209が接続され、ファン340によって給気用ダクト208内に空気が送り込まれ、油槽302内の上方空間が陽圧に調整される点は、上述の図24~図26に示すフライヤー300と共通する。図27に示すフライヤー300では、更に、排気用ダクト209の途中にミスト供給部350が接続されており、排気用ダクト209の出口側端部は液体貯留容器351内に貯留されている液体(典型的には水及び洗剤の混合液)の中で開口する。
図27に示すフライヤー300において、油槽302から排気口207を介して排気用ダクト209に排出された臭気をもたらす成分を含む空気は、液体貯留容器351に至る前に、ミスト供給部350によってミスト(典型的には水或いは水及び洗剤の混合液)が供給される。ミスト供給部350の具体的な構成は限定されず、例えば超音波発生器(超音波素子)によって水をミスト化し、そのミストを排気用ダクト209内に送り込むことで、臭気をもたらす成分を含む空気に対してミストを供給することができる。
そして臭気をもたらす成分を含む空気は、ミストともに排気用ダクト209から液体貯留容器351内の液体中に排出される(バブリング処理)。これにより、液体貯留容器351内の液体によって、排出空気中の臭気等をもたらす成分(粒子を含む)が除去されるとともに、臭気等を含有するミストを排出空気から取り除くことができる。なお液体貯留容器351内に貯留される液体は特に限定されず、例えば単なる水、水等の液体に対して洗剤、亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤及び/又はアルコールなどの有機溶媒を混合した液体、等を液体貯留容器351内に貯留してもよいが、水等の液体の表面張力を弱める界面活性剤を含む液体を液体貯留容器351内に貯留することが好ましい。この場合、液体貯留容器351内の液体が良好な泡立ち性を示し、ミストを含む空気が液体貯留容器351内の液体中に排出されるのに伴って、液体貯留容器351内で泡が多重的に発生し、液体貯留容器351内の液体による吸着効果を多重的に得ることができる。
ミストを排出空気に混合させることなく、単に液体貯留容器351内の液体中で排出空気を放出する場合、液体中の空泡の外周面近傍からは臭気を取り除くことができるが、空泡の中心付近からは臭気を取り除くことができない。特に、空泡の大きさが大きくなるほど、空泡の空気量に対する表面積の割合が小さくなり、臭気の除去効率が悪くなる。一方、ミストは、表面積の割合が非常に大きいため排気用ダクト209内の排出空気との接触面積も大きく、またミストによって排出空気中の水や油が冷却されてミストに取り込まれるため、臭気の除去効率が高い。また、そのようなミストは、液体貯留容器351内の液体を通過させることで、その液体中に確実に捕捉され、液体貯留容器351から大気に放出されない。
このように「ミスト供給部350により供給されるミスト」及び「液体貯留容器351に貯留されている液体」の組み合わせによって、油槽302から排出される空気から臭気を効果的に取り除くことができる。特に、ミストを使った臭気除去作用と、液体貯留容器351内の液体を使った臭気除去作用とはお互いを補完し合い、一方の不利な点が他方によって補われている。したがって図26及び図27に示すフライヤー300は、ミスト供給部350によって供給されるミストを使った臭気の除去効果と、液体貯留容器351内の液体を使った臭気の除去効果とが単純に足し合わされた以上の、特別顕著な効果を示す。
なおミスト供給部350により供給されるミストは、非常に小さな粒子径を有し、例えば数十ナノメートル~数百ナノメートル程度の粒子径を有することが好ましい。
例えば、一般的な水道に接続されるシャワー装置は、噴出する水滴の粒子径が非常に大きく(数ミリメートル程度)、使用水量が膨大になる。また水を循環して使用する場合、循環水路だけではなく循環用ポンプの設置が必要であり、設置スペースの増大及び設置コストの増大が伴う。さらに衛生保持の観点から、配管路を定期的に洗浄して菌の増殖を防ぐ必要があり、メンテナンスの手間及びコストもかかる。一方、噴霧ノズルから噴出される水粒子は、典型的には数十マイクロメートル~数百マイクロメートル程度の粒子径を有し、上述のシャワー装置から噴出される水滴よりも粒子径が小さく、使用水量を抑えることができる。しかしながら、粒子径は圧力(噴出圧)に依存して反比例の関係があるため、霧状の粒子径を得るためには0.6MPa程度の圧力が必要である一方で、水道圧は0.2MPa程度であるため、加圧ピストンポンプやエアーコンプレッサー等の追加の加圧手段が必要になる。また安全性の観点からは、噴霧ノズルを用いる場合には、加圧配管経路においての不注意による取り外しなどの可能性があり、コンビニエンスストア等の店舗などで経験不十分な作業者の取り扱い上の懸念がある。
一方、超音波素子を用いたミスト供給部350によれば、数十ナノメートル~数百ナノメートル程度の非常に小さな粒子径を持つミストを簡単に発生させることができ、水等の液体の使用量も非常に少量ですむ。そのため、例えば1日分の食品の油ちょうを行ったとしても、ミスト供給部350で使用する液量は数リットル程度ですみ、ペットボトル等の容器を使って1日に1度程度、液をミスト供給部350に補給するだけでよい。また超音波素子の駆動も通電のみで済むため、設置スペース面でも有利である。またミスト生成が、超音波素子の微小振動による液体の霧化によるため、安全性も非常に高い。また超音波素子を用いたミスト供給部350では、目的に応じて選定された液体を用いることができる。例えば、洗剤を混ぜた水、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤、アルコールなどの有機溶媒も濃度によっては超音波素子によって霧化可能であり、菌の増殖抑制効果、洗浄効果、及び消臭効果等の様々な付帯的な効果も期待することができる。
このように、コンビニエンスストア等の店舗では、コスト面、メンテナンス面、衛生面、設置スペース面、及び安全面のいずれに関しても、ミスト供給部350として超音波素子を好適に用いることができる。
なお図27及び図28に示す臭気除去構成を具備するフライヤー300においても、待機時における、臭気の飛散やミストの消費を防ぐ観点から、食品の油ちょうが行われている間及びその前後(具体的には、油槽302内の油に食品が投入されている間、油槽302内の油に食品が投入される前のある時間、及び油槽302内の油から食品が取り出されてからのある時間)においてのみ、ファン340を駆動することが好ましく、油槽302において食品の加熱処理が行われていない間(すなわち油槽302内の油に食品が投入されていない間(例えば待機時))は、ファン340を停止させることが好ましい。
図28に示すフライヤー300は、図27に示すフライヤー300を具現化したものである。図28に示すフライヤー300では、ミスト供給部350は、排気用ダクト209内にミストを供給する際に、ミストを水平方向に送り出して排気用ダクト209内の空気と合流させている。ミスト供給部350から排気用ダクト209内へのミストの供給方向は特に限定されず、ミスト供給部350におけるミストの発生方向とミスト供給部350から排気用ダクト209内へのミストの供給方向とを一致させることが好ましい。ただし、ミスト供給部350におけるミストの発生方向とミスト供給部350から排気用ダクト209内へのミストの供給方向とが一致していなくてもよい。その場合、例えば図示しない送風器をミスト供給部350に設置し、ミスト供給部350で発生したミストをその送風器によって排気用ダクト209に向けて送り出すことで、排気用ダクト209内の空気にミストを適切に供給することができる。
上述の図27及び図28に示すフライヤー300であれば、コンビニエンスストア等の小規模店舗において、例えばカウンター付近において、設置することも可能である。すなわち、カウンターから店奥までダクトや排気管を設置することなく、フライヤー300単独で、現実的なレベルまで排出空気中の臭気を抑えることが可能である。しかも図27及び図28に示すフライヤー300によれば、基本的に電源のみ用意すれば他のユーティリティ(例えば圧縮空気を作り出すコンプレッサーや給水ホースなど)の設置が不要である。そのため、省スペース化を図ることができるだけではなく、フライヤー300に関わる装置の洗浄を簡便に行うことが可能である。なお、換気装置の設置を不要とするために、フライヤー300の熱源として、ガスを用いずに電気のみを用いることで、フード設置必須条件が適用されないようにすることが望ましい。
なお上述の図27及び図28には、気体から臭気や粒子等を効果的に取り除くことができる気体清浄装置をフライヤー300及びフライヤー300を用いた油ちょうに対して適用した場合を例示したが、上述の気体清浄装置はフライヤー300以外の装置及び方法に対しても適用が可能であり、空気浄化装置及び空気浄化方法としても活用可能である。
例えば図29に示す気体清浄装置400のように、図27に示す実施の形態と同様の排気用ダクト209、ミスト供給部350及び液体貯留容器351を設けるとともに、排気用ダクト209に気体清浄ファン410を取り付けてもよい。気体清浄ファン410は外気を排気用ダクト209内に送り込み、排気用ダクト209内に送り込まれた空気は、上述のように、ミスト供給部350によって発生されるミスト及び液体貯留容器351に貯留される液体によって気体清浄される。
なお気体清浄装置400の適用分野は特に限定されず、気体清浄装置400の気体清浄ファン410によって排気用ダクト209内に送り込まれる空気(ガス)は限定されない。例えば、部屋などの比較的大きな空間に気体清浄装置400を設置し、当該気体清浄装置400を空気清浄機として利用することも可能である。また、他の管やダクトに対して排気用ダクト209を接続し、その他の管やダクトを介して送られてくる汚染空気等の汚染ガスを浄化する装置として気体清浄装置400を利用することも可能である。したがって例えば発電機のエンジンの排気管に排気用ダクト209を接続することで、気体清浄装置400はエンジンの排気を浄化することが可能である。なお、排気用ダクト209に対して対象の汚染空気(汚染ガス)を適切に送り込むことができるのであれば、気体清浄ファン410の設置位置や設置態様は限定されず、気体清浄ファン410が設置されなくてもよい。
[他の実施の形態]
上記したすべての形態のフライヤーにおいて、油槽2(202、302)および食品収容容器40(40a,40b)の形状および大きさに特に制限はない。油槽2(202、302)の中で食品収容容器40(40a,40b)が自由に回転できる形状であれば、双方とも、任意の形状であってよい。一つの例として、フライヤーを、コンビニエンスストアのような、店頭で不特定多数の購買者を相手に油ちょうされた食品を販売するような店舗で使用することを予定する場合には、スペース的な要因と油ちょう作業の容易性と迅速性の観点から、油槽2(202、302)とその中での食品収容容器40(40a,40b)は、ともに平面視で円形であり、油槽2の直径は100mm~350mmの範囲、また油槽2の高さは100mm~300mm程度のものが好適である。
また、後の実施例に示すように、油ちょうの条件として、油温は、通常のフライヤーと同様、160℃~200℃程度とし、マグネトロン出力は、500W~1500Wとし、油中での食品収容容器の回転数は5rpm~180rpmとしたときに、短時間で優れた高品質の油ちょう済み食品が得られるようになる。
また油槽2やその他の要素の形状は特に限定されない。油槽2は、典型的には上述のように断面円形の有底円筒形状を有するが、断面形状が楕円形、四角形等の多角形、或いは他の形状であってもよく、また垂直方向に関して同一の断面形状及び/又はサイズを有していてもよいし、異なる断面形状及び/又はサイズを有していてもよい。
上述の各実施の形態及び変形例に係るフライヤーによれば、マイクロ波及び油による加熱処理を組み合わせることで、食品の内部の加熱処理及び食品の外部の加熱処理をバランス良く行って、小量(例えば1食分)の食品を短時間で効率良く油ちょうできる。すなわち、マイクロ波によって食品の内部に対して十分な熱を加えつつ、油によって食品の外部に対しても十分な熱を加えることで、食品の内部は柔らかく且つ食品の外部は適度な固さに調理することができ、食感(クリスピー感等)に優れた油ちょう食品を提供することも可能である。またガイド部材330(図22及び図23参照)を利用することによって、油ちょう後の食品の排出や包装を限られたスペースで行うこともできる。したがって、卓上設置可能なサイズにまでフライヤーを小型化することができ、コンビニエンスストアなどの小型店舗においてフライ等の油ちょう食品を即食可能な形態でユーザに提供することができる。さらに図24~図27に示すような形態にて油槽2に対する給排気及び気体清浄処理を行うことにより、専用の換気扇を設置しなくても、排出空気における臭気を抑えることができるフライヤーを設置することが可能である。
なお上述の及び下述の各実施の形態及び変形例に係る装置同士及び方法同士は適宜組み合わせ可能である。また上述の及び下述の各実施の形態及び変形例に係る装置及び方法の一部又は全部が、本明細書には直接的には開示されていないが本発明の範囲に含まれる形態に対して適用されてもよい。また上述の及び下述の各実施の形態及び変形例において、同じ対象物に対して異なる符合が付されている場合があるが、そのような符合の使い分けは単なる便宜上の理由によるものである。したがって、同じ構造及び機能を持つ対象物であっても異なる符合が付されている場合があり、また具体的な実施の形態に最適化されて異なる構造及び異なる機能を持つ対象物であっても同じ符合が付されている場合がある。そのため上述の及び下述の実施の形態及び変形例を互いに組み合わせる際には、実質的に同じ対象物であれば、符合の異なる一方の対象物を他の対象物に置き換えることが可能な場合もある。
また本発明は、フライヤー、フライヤーを用いた油ちょう食品の製造方法、気体清浄装置、及び気体清浄方法以外の装置や方法等として具体化されてもよく、本発明の適用対象は特に限定されない。
[動作フロー]
上述の各実施の形態及び各変形例に係るフライヤーは、例えば以下のフローに従って動作する。なお、上述の各実施の形態及び各変形例に係るフライヤーは、互いに構成が異なっており、以下の動作フローのうち実施可能な動作フローが選択的に行われてもよい。
まず人手又は機械を介し、図示しない投入機構上に油ちょう前の食品が投入される。
そして調理開始信号に応じて、投入機構から図示しない連結管を経由して食品収容容器40に食品が配置される。その際、投入機構は例えば軸回転等を行い遠心力、回転力及び/又は重力を利用して、食品を連結管及び食品収容容器40に送り出すことも可能である。
そして食品収容容器40が油槽2の油内に沈められて食品の加熱調理(油ちょう)が開始される。その際、開閉蓋7又は天板205によって油槽2の開口6が閉じられ、油槽2内は基本的に密閉され(ただし油槽2内への空気の給排のために給気口206及び排気口207は設けられている)、マイクロ波の漏出が防がれている。また食品収容容器40が油槽2の油内に沈められる前、沈められている最中、及び/又は油から取り出された後には、熱線ヒータ50は発熱し、マグネトロン310からはマイクロ波が発せられ、給気口206及び排気口207を介して油槽2内への空気の給排が行われる。
油槽2の油に沈められた食品収容容器40は、回転軸20を介して油内で回転させられつつ、マグネトロン10から発せられたマイクロ波が食品収容容器40に載せられた食品に照射される。
マイクロ波及び油による加熱処理がある時間続けられた後に、食品に対するマイクロ波の照射が停止され、油槽2の油から食品収容容器40か取り出され、食品の油ちょうが終了する。なお、マイクロ波を使った食品の加熱処理の停止と、油を使った食品の加熱処理の停止と、は同時に停止されてもよいし、一方が他方に先立って停止されてもよい。
また油槽2の油から食品収容容器40を取り出す際、油槽2内の油の上方空間において、食品収容容器40を回転させて、遠心力により食品から余分な油を振りきることが好ましい。このような動作は、典型的には、垂直方向に関して食品収容容器40を停止させた状態で行われるが、垂直方向に関して食品収容容器40を移動させつつ行われてもよい。また、油槽2の油から食品収容容器40を取り出す際、油槽2内の油の上方空間において、食品収容容器40を回転させなくてもよい。
そして油槽2の外側に食品収容容器40を移動させた後、油ちょう後の食品が食品収容容器40から排出される。この際、例えば図22及び図23に示すようなガイド部材330が設けられている場合には、食品収容容器40を回転させて、食品に遠心力及び回転力を作用させることで、素早く食品収容容器40から食品を排出することができる。
上述の一連の処理によって、食品の油ちょうが行われる。なお、食品が油に投入されない待機時には、油槽202内の油の温度が偏らないように油の撹拌が行われてもよい。この場合、上述のように図示しない撹拌体によって油を撹拌してもよいし、食品が載せられていない空の食品収容容器40を油中に沈めて回転させることで油を撹拌してもよい。
[実施例1]
図12~図15で示した形態のフライヤー200を用いて25gの冷凍唐揚げ5個を調理したときの実施例を説明する。なお、食品収容容器40bには、図11に示したものを用いた。食品収容容器40bには、油ちょう中に25rpmの回転を与えた。使用したフライヤー200において、油槽202は円筒形であり、直径180mm、高さ250mmである。周側壁203には、開口広さが高さ55mm×幅109mmである導波管11(導波管11a+導波管11b)を、その開口部底辺が、底板204から97.7mmの高さ位置となるようにして取り付けた。
油ちょう時での油面レベルPは、周側壁203の底板204から167.7mmの高さ位置を維持できるようにした。したがって、油ちょう時中は、油面レベルPよりも15mm下がった位置に、導波管11の開口部上辺が位置するようになった。また、図14に示した油ちょう時の状態において、食品収容容器40bの容器本体40cは導波管11の開口部底辺よりも少し下位の位置に回転軸20に固定した。また、油ちょう時には、押さえ材40dを油面レベルPより少し下位の位置となるように回転軸20に固定した。
[実施例2]
実施例1で用いたフライヤー200であるが、食品収容容器40として、押さえ材40dを有しないものを用いて、実施例1と同様に、油ちょう処理を行った。
[実施例3]
実施例2で用いたフライヤー200を改変したフライヤーを用いた。改変は、導波管11の取り付け位置であり、周囲壁を形成する周側壁203における油面レベルPよりも高い位置となる場所に導波管11を取り付けた。
[比較例1]
実施例3で用いたフライヤー200であるが、マイクロ波を照射せず、食品収容容器40には回転を与えずに油ちょう処理を行った。
[比較例2]
実施例3で用いたフライヤー200であるが、食品収容容器40には回転を与えずに油ちょう処理を行った。
[油ちょう処理の結果-その1]
実施例1~3ならびに比較例1および2について、油温度180℃、マグネトロンの出力750Wにおいて、すべての食品の中心温度が75℃以上になるのに必要な加熱時間を測定し、その食感を確かめた。その結果を表1に示す。ただし、比較例2では135秒加熱した時点で、加熱を停止した。
[油ちょう処理の結果-その2]
実施例3と比較例2の加熱処理直後の冷凍唐揚げ5個をそれぞれ最大直径部で2つに切り分けて、その中心断面について、日本アビオニクス株式会社製:G100を用い、放射率:0.98にて、サーモグラフィーによる撮影を行った。その撮像写真を図30A及び図30Bに示した。図30Aは実施例3での食品であり、隣り合う食品同士がもともと1つの食品である。同様に、図30Bは比較例2での食品である。撮像写真から、実施例3の食品はすべて中心までムラなく加熱されていることが観察されたが、比較例2の食品は、写真に示すように、著しい加熱ムラが生じ、正常な調理ができなかった。また、食品の配置位置によって個々の食品について大きな加熱ムラが生じているのも観察された。
[他の変形例]
本発明は、上述の実施形態及びその変形例に限定されず、上述の実施形態及びその変形例に対して各種要素の追加、削除、及び/又は変形を適宜行うことが可能である。
例えば各仕切り材43と底板41との間には、部分的又は全体的に間隙が形成されていてもよい。すなわち、食品移動拘束機構は、それぞれが回転軸20から食品収容容器40の外周に向かう放射方向に延在する複数の仕切り材43であって、食品収容容器40の底板41を複数の区画領域に区分する複数の仕切り材43を含み、食品Fは、複数の区画領域の各々に載せられることができ、複数の仕切り材43は、回転軸20に直接的又は間接的に取り付けられ、回転軸20の回転に応じて回転軸20を中心に回転し、複数の仕切り材43の各々と底板41との間には間隙が形成されていてもよい。この場合、マイクロ波が間隙を通って伝達可能である。
また各仕切り材43と底板41との間に形成された間隙を通過可能な可動ガイド部材を設けてもよい。すなわちフライヤーは、移動可能に設けられる可動ガイド部材であって、底板41の上方のガイド位置と水平方向に関して底板41の外側の退避位置とに配置可能な可動ガイド部材を更に備えてもよい。各仕切り材43と底板41との間の間隙は、複数の仕切り材43の各々に関して回転軸20から最も離れた位置から回転軸20に向かって延在し、ガイド位置に配置された可動ガイド部材は、回転軸20を中心に複数の仕切り材43が回転した場合に、当該間隙を通過してもよい。そして、可動ガイド部材がガイド位置に配置されつつ複数の仕切り材43が回転軸20を中心に回転させられることによって、可動ガイド部材及び複数の仕切り材43は、複数の区画領域に載せられた食品Fを、水平方向に関して底板41の外側に案内することも可能である。この場合、例えば、食品Fを底板41から排出するための位置(例えば油槽の上方位置)に食品収容容器40を移動させる際には、可動ガイド部材を退避位置に配置することで、食品収容容器40の移動が可動ガイド部材によって阻害されることを回避できる。一方、食品Fを底板41上から排出する際には、可動ガイド部材をガイド位置に配置しつつ回転軸20を中心に複数の仕切り材43を回転させればよい。
また複数の仕切り材43の各々は、放射方向に延在する放射延在部と、水平方向のうち放射方向と直角を成す接線方向に関して放射延在部よりも突出する突出制限部と、を有し、複数の区画領域に載せられた食品Fは、回転軸20と突出制限部との間に配置されてもよい。この場合、複数の仕切り材43を回転させることで回転軸20を中心に食品Fを回転させても、遠心力を受けた食品Fが底板41上から脱落することを突出制限部が防ぐことができる。なお突出制限部は、接線方向に突出していればよく、必ずしも接線方向に沿って(すなわち接線方向と平行に)延在している必要はない。
また回転軸20は、相互に逆向きである第1回転方向(正回転方向)及び第2回転方向(逆回転方向)に軸回転可能に設けられてもよい。この場合、突出制限部は、接線方向のうち第1回転方向側に突出してもよい。例えば、回転軸20とともに複数の仕切り材43が第1回転方向に回転させられる場合、突出制限部は、複数の区画領域に載せられた食品Fの放射方向への移動を制限するように設けられてもよい。一方、回転軸20とともに複数の仕切り材43が第2回転方向に回転させられる場合、放射延在部は、複数の区画領域に載せられた食品Fを放射方向へ案内するように設けられてもよい。この場合、食品Fを底板41上に保持しつつ回転軸20を中心に回転させる必要がある場合には、回転軸20を第1回転方向に回転させればよい。一方、食品Fを41上から排出する場合には、回転軸20を第2回転方向に回転させればよい。
図31は、フライヤー(特に食品収容容器40及び食品移動拘束機構)の一変形例を示す斜視図である。図32は、図31に示す食品収容容器40及び仕切り材543等を上方から見た状態を示す概略図である。なお理解を容易にするため、図32において一部の図示が省略されており、例えば底板41に形成された小孔44の図示が省略されている。なお本変形例において、上述の実施形態及び変形例と共通する事項については、その詳細な説明を省略する。
図31及び図32に示す例では、回転軸20を取り囲むようにカラー520が設けられており、カラー520は回転軸20に対して固定されている。複数の仕切り材543(図示の例では5つの仕切り材543)は、カラー520に対して固定されており、相互に等角度間隔に配置されている。したがって、回転軸20、カラー520及び仕切り材543は、回転軸20の中心軸(すなわち回転軸線)を中心に、一体的に回転する。なお図示の例では、底板41も回転軸20、カラー520及び各仕切り材543のうちのいずれか1以上の部材(例えば回転軸20)に固定されており、回転軸20、カラー520、仕切り材543及び底板41が一体的に回転する。ただし、底板41は回転軸20、カラー520及び各仕切り材543に対して固定されていなくてもよい。この場合、回転軸20が回転しても、底板41は基本的には回転しないが、底板41上の食品Fは仕切り材543によって回転軸20を中心に回転移動させられる。また後述の間隙Spが適切に形成されるのであれば、各仕切り材543の固定態様も限定されない。したがって各仕切り材543は、例えば溶接、接着及び/又は機械的係合を介し、回転軸20に対して直接的に固定されてもよいし、カラー520又は底板41を介して回転軸20に固定されてもよい。
底板41は、複数の仕切り材543によって複数の区画領域510に区分けされる。各区画領域510は、底板41における互いに隣り合う2つの仕切り材43の間の領域であり、食品Fが載せられる。各仕切り材543と底板41との間には間隙Spが形成されている。図示の例では、放射方向に関して各仕切り材543の全体と底板41との間に間隙Spが存在する。各仕切り材543は、L字形状に設けられており、放射方向に延在する放射延在部541と、接線方向(特に正回転方向Df)に放射延在部541から突出した突出制限部542とを有する。放射延在部541の一方の端部はカラー520に固定されており、他方の端部には突出制限部542が一体的に設けられている。
各仕切り材543は、例えば円形断面や楕円断面を有する棒状に形成されてもよいし、多角形状(例えば長方形や正方形などの四角形状)の断面を有する板状に形成されてもよい。一般に、円以外の形状の断面を有する仕切り材543に比べ、円形断面を有する仕切り材543の方が外方に露出される面積(表面積)が小さくなる傾向がある。そのため、例えば各仕切り材543に付着する油の量及び各仕切り材543から垂れる油の量を低減する観点からは、円形又は円形に近い形状の断面を有する仕切り材543が好ましい。 図示の放射延在部541は、概ね全体にわたって円形断面を有する棒形状に形成されている。突出制限部542は、対応の区画領域510に配置される食品Fの外方向(すなわち放射方向)への移動を効果的に抑えることができるように、当該食品Fと対向する側において概ね平坦な面を有する。
放射延在部541に対して突出制限部542が成す角度は限定されず、突出制限部542は放射延在部541に対して必ずしも接線方向(すなわち放射方向に対して90度を成す角度)に沿って延在している必要はない。すなわち各突出制限部542は、対応の放射延在部541から接線方向(特に正回転方向Df)に突出していればよく、例えば対応の放射延在部541に対して斜め方向(すなわち放射方向に対して90度及び180度以外の角度を成す方向)に延びていてもよい。ただし、各突出制限部542の大きさや、突出制限部542と放射延在部541との間の角度は、各仕切り材543が正回転方向Dfへ回転した際に底板41上の食品F(すなわち各区画領域510に配置された食品F)が遠心力により放射方向に移動することを突出制限部542が有効に制限できるように決められる。
また図示の突出制限部542は、放射延在部541の端部から特定の方向に向かって概ね直線的に延びており、各仕切り材543がL字状に屈曲するように放射延在部541及び突出制限部542が設けられている。ただし、各仕切り材543において放射延在部541及び突出制限部542の接続箇所の近傍において、スムーズな曲線(すなわち曲率半径が連続的に変化するような曲線)を描くように、突出制限部542及び放射延在部541が相互に接続していてもよい。また図示の突出制限部542は、放射延在部541の一方の端部に接続しているが、放射延在部541のうちの端部以外の箇所(すなわち中間箇所)に接続していてもよい。また典型的には、放射延在部541及び突出制限部542は一体構造を有し、一体構造部材を屈曲させることによって放射延在部541及び突出制限部542を形成することができる。ただし、放射延在部541及び突出制限部542は、別部材によって構成されてもよく、例えば溶接、接着及び/又は機械的係合を介して放射延在部541及び突出制限部542を相互に固定してもよい。
食品Fを底板41上から後段に送り出すための場所(排出場所)には、移動可能に設けられた可動ガイド部材550が設置されている。可動ガイド部材550の設置態様は限定されず、例えば固定的に設けられた図示しない架台やフレームに据え付けられていてもよい。可動ガイド部材550は、水平方向に往復移動可能に設けられており、図示しない制御装置の制御下で、底板41の上方に定められたガイド位置P1と、水平方向に関して底板41の外側に定められた退避位置P0との間を往復移動し、ガイド位置P1及び退避位置P0の各々に配置可能である。可動ガイド部材550は水平方向に延在し、可動ガイド部材550がガイド位置P1及び退避位置P0の一方から他方に移動する際には、各仕切り材543と底板41との間の間隙Spを通過することができる。またガイド位置P1に可動ガイド部材550を配置した状態で、回転軸20によって各仕切り材543を回転させる場合にも、可動ガイド部材550は各仕切り材543と底板41との間の間隙Spを通過することができる。
言い換えれば、高さ方向(すなわち鉛直方向に平行な方向)に関し、可動ガイド部材550の最上位置は、間隙Spよりも上方に位置する各仕切り材543の最下方位置よりも低く、可動ガイド部材550の最下方位置は、底板41の最上方位置よりも高い。なお、ここで言う「各仕切り材543の最下方位置」及び「底板41の最上方位置」は、排出場所に配置された食品収容容器40及び食品移動拘束機構を基準としており、且つ、可動ガイド部材550の軌道に対応する範囲を基準としている。それぞれの区画領域510に配置された食品Fは、仕切り材543(特に放射延在部541)によって、隣り合う他の区画領域510に進入することが防がれており、また仕切り材543(特に突出制限部542)によって、底板41上から放射方向に移動して落下することが防がれている。したがって高さ方向に関し、各仕切り材543(すなわち放射延在部541及び突出制限部542の各々)の最下方位置は、底板41上に載せられる食品Fの最上方位置よりも低い。
なお可動ガイド部材550の具体的な構成は限定されず、可動ガイド部材550がガイド位置P1及び退避位置P0の一方から他方に移動する際の具体的な挙動も限定されない。図32に示す可動ガイド部材550は細長い棒形状を有し、可動ガイド部材550の一方の端部を貫通するように設定される回転軸を中心に可動ガイド部材550が水平方向に回転動作を行うことで、可動ガイド部材550はガイド位置P1及び退避位置P0の一方から他方に移動する。他の形態として、例えば、可動ガイド部材550はシリンダー等を使って伸縮可能に構成されてもよい。例えば、可動ガイド部材550を縮小状態に置くことで可動ガイド部材550を退避位置P0に配置する一方で、可動ガイド部材550を伸長状態に置くことで可動ガイド部材550をガイド位置P1に配置することも可能である。このような可動ガイド部材550の伸縮動作は、図示しない制御装置の制御下で実施可能である。
また図32に示す可動ガイド部材550は、ガイド位置P1に配置された状態で、各仕切り材543の下方の間隙Spのみを通過するように設けられているが、各仕切り材543の下方の間隙Spだけではなく各仕切り材543の上方を通過するように設けられてもよい。図示は省略するが、可動ガイド部材550は、途中で第1の延在部及び第2の延在部に分岐し、ガイド位置P1に配置された状態で、第1の延在部が各仕切り材543の下方の間隙Spを通過可能な位置に配置される一方で、第2の延在部が各仕切り材543の上方を通過可能な位置に配置されてもよい。このように可動ガイド部材550が分岐構造を有することで、底板41上の食品Fを可動ガイド部材550によってより確実に案内することができ、例えば食品Fが可動ガイド部材550を乗り越えてしまう等の不具合を防ぐことができる。
また図32に示す可動ガイド部材550は直線的に延在する形状(すなわち直線形状)を有するが、可動ガイド部材550の形状は限定されず、可動ガイド部材550は湾曲形状を有していてもよい。
上述の構成を有する食品収容容器40及び食品移動拘束機構(各仕切り材43)によれば、以下のようにして、食品F(例えば油ちょう後の食品F)を後段に向けて排出することができる。
すなわち、可動ガイド部材550を退避位置P0に配置しつつ、食品収容容器40及び食品移動拘束機構が排出場所に配置される。これにより、食品収容容器40及び食品移動拘束機構は、可動ガイド部材550に衝突することなく、排出場所に適切に配置される。そして、可動ガイド部材550が、退避位置P0からガイド位置P1に移動させられ、ガイド位置P1に配置される。この際、可動ガイド部材550は比較的近くに配置されている仕切り材543の下方の間隙Spを通ってガイド位置P1に到達する。そのため、可動ガイド部材550は、仕切り材543と衝突することなく、ガイド位置P1に適切に配置される。
ガイド位置P1に配置された可動ガイド部材550は、各区画領域510に配置される食品Fを正回転方向側の仕切り材543(特に放射延在部541)に対して押し当てることが可能であり且つカラー520等の他の部材と衝突しないような、長さを有する。すなわち退避位置P0とガイド位置P1との間を移動する可動ガイド部材550の軌道上には、各間隙SP及び各区画領域510に配置された食品Fが存在しうるが、それら以外の物体は存在しない。なおガイド位置P1に配置された可動ガイド部材550は、回転軸20に向かって延在していなくてもよく、ガイド位置P1に配置された可動ガイド部材550の延長線上に回転軸20が存在していなくてもよい。またガイド位置P1に配置された可動ガイド部材550の向きは限定されない。例えば、各区画領域510の食品Fを仕切り材543(特に放射延在部541)及び可動ガイド部材550によって適切に底板41の外方に向かって移動させることができるように、食品Fの形状や硬さ等の性状に応じて、ガイド位置P1に配置された可動ガイド部材550の向きが決められてもよい。
そして、回転軸20が逆回転方向Drに回転させられることによって各仕切り材543が逆回転方向Drに回転させられ、各区画領域510に配置された食品Fは、対応の放射延在部541及びガイド位置P1に配置された可動ガイド部材550により挟まれつつ放射方向に案内されて、最終的には底板41外に排出される(図32の符号「Dd」によって示される矢印参照)。なお放射延在部541及び可動ガイド部材550によって食品Fが底板41外に排出される箇所には、図示しない案内斜路(案内スロープ)が設けられており、底板41外に排出された食品Fは案内斜路を介して後段に送られる。
上述のように各仕切り材543はL字形状を有し、接線方向のうち正回転方向Df側に突出制限部542が突出しているが、接線方向のうち逆回転方向Dr側には突出部(突起体)は無い。すなわち、各仕切り材543によって区画される相互に隣り合って配置される区画領域510のうち、正回転方向Df側の区画領域510に向かって延びる突出部(すなわち突出制限部542)を各仕切り材543は有するが、逆回転方向Dr側の区画領域510に向かって延びる突出部を各仕切り材543は有していない。これにより、可動ガイド部材550と仕切り材543とにより挟まれた食品Fを、スムーズに底板41の外方に案内及び排出することができる。
なお、可動ガイド部材550及び仕切り材543の各々において上述の排出工程で底板41上の食品Fに接触する面は、放射方向に直線的に延在することが好ましい。すなわち、上方から下方への投影により得られる可動ガイド部材550の像において、各区画領域510における食品Fに対向する側の部分(図32の符号「550a」参照)は、底板41の外方に向かって直線的に延びることが好ましい。また、上方から下方への投影により得られる各仕切り材543の像において、逆回転方向Dr側の区画領域510上の食品Fに対向する側の部分(図32の符号「543a」参照)は、底板41の外方に向かって直線的に延在することが好ましい。
なお基本的には、ガイド位置P1において可動ガイド部材550が停止した状態で各仕切り材543が回転することによって、各区画領域510の食品Fは底板41外に排出される。ただし、可動ガイド部材550が退避位置P0からガイド位置P1に移動する経路に食品Fが存在する場合、当該食品Fは、退避位置P0からガイド位置P1に向かう可動ガイド部材550により叩かれて、その衝撃により底板41外に排出されてもよい。