以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、式(1)で表される化合物(以下、トリアリールメタン化合物(1)ともいう)を含む。本発明の着色組成物を用いて布帛などを染色することで、耐光性に優れた染色物を得ることができる。詳細な理由は不明であるが、トリアリールメタン化合物(1)は、式(1)の所定の位置にフッ素原子を含む基を有し、かつ、フッ素原子の総和が5以上であることにより、布帛などの染色物の酸素透過を促進させて酸素をラジカル補足剤として機能させ易くでき、それによって染色物の耐光性を高めることができたものであると推測される。また、式(1)のR101及びR102が水素原子であるトリアリールメタン化合物(1)は、波長600~640nmの波長域で強い光吸収を示し、シアン色に適した分光を有している。したがって、式(1)のR101及びR102が水素原子であるトリアリールメタン化合物(1)は、耐光性に優れたシアン色染料として好ましく用いることができる。このため、本発明の着色組成物を用いることで、色味が鮮やかで、耐光性に優れた染色物を得ることができる。以下、本発明の着色組成物の各成分について説明する。
<<式(1)で表される化合物(トリアリールメタン化合物(1))>>
本発明の着色組成物は、式(1)で表される化合物(トリアリールメタン化合物(1)ともいう)を含む。本発明の着色組成物において、トリアリールメタン化合物(1)は、着色剤として用いられる。
式(1)中、R101及びR102は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す;
R111~R132は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R122とR126は互いに結合して環を形成してもよい;ただし、R111及びR115の少なくとも一方は置換基を表し、R116及びR120の少なくとも一方は置換基を表す;
Z1は、-SO3
-、-SO2-NRz1Rz2、又は、-SO2-Lz1-Rz3を表し、
Rz1及びRz2は各々独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、Rz1とRz2は互いに結合して環を形成してもよく、
Rz3は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、
Lz1は、カルボニル基又はスルホニル基を表す;
ただし、Z1が-SO3
-の場合、R111~R120及びR129~R132の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であり、かつ、R111~R120及びR129~R132に含まれるフッ素原子の総和は5以上であり、
Z1が-SO2-NRz1Rz2の場合、R111~R120、R129~R132、Rz1及びRz2の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であり、R111~R132の少なくとも1つは-SO3
-を含有する基であり、かつ、R111~R120、R129~R132、Rz1及びRz2に含まれるフッ素原子の総和は5以上であり、
Z1が-SO2-Lz1-Rz3の場合、R111~R120、R129~R132及びRz3の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であり、R111~R132の少なくとも1つは-SO3
-を含有する基であり、かつ、R111~R120、R129~R132及びRz3に含まれるフッ素原子の総和は5以上である。
式(1)において、R101及びR102は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。アルキル基、アリール基、及び、ヘテロ環基が有していてもよい置換基としては、後述の置換基A群で定義された置換基、フッ素原子を含有する基、-SO3
-を含有する基などが挙げられる。R101及びR102は各々独立に水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基であることが好ましく、シアン色に適した分光特性が得られやすいという理由から水素原子であることがより好ましい。
R101及びR102が表すアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれであってもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8がさらに好ましく、1~4が特に好ましく、1~3が最も好ましい。R101及びR102が表すアリール基の炭素数は、6~12が好ましく、6~10がより好ましく、6がさらに好ましい。R101及びR102が表すヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。ヘテロ環基は、芳香族ヘテロ環基であってもよく、非芳香族ヘテロ環基であってもよい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の種類は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロ環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
式(1)において、R111~R132は各々独立に水素原子又は置換基を表す。ただし、R111及びR115の少なくとも一方は置換基を表し、R116及びR120の少なくとも一方は置換基を表す。R111~R132が表す置換基としては、後述の置換基A群で定義された置換基、フッ素原子を含有する基、-SO3
-を含有する基などが挙げられる。
式(1)において、R111、R113、R115、R116、R118、及びR120は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルキルスルフィニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、アシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、又は、スルホ基を表し、かつ、R111及びR115の少なくとも一方、並びに、R116及びR120の少なくとも一方は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表すことが好ましく、R111、R113、R115、R116、R118、及びR120は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、かつ、R111及びR115の少なくとも一方、並びに、R116及びR120の少なくとも一方は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表すことがより好ましく、R111、R113、R115、R116、R118、及びR120は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、かつ、R111及びR115の少なくとも一方、並びに、R116及びR120の少なくとも一方は、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表すことが更に好ましく、R111、R113、R115、R116、R118、及びR120は各々独立に水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、かつ、R111及びR115の少なくとも一方、並びに、R116及びR120の少なくとも一方は、置換若しくは無置換のアルキル基を表すことが特に好ましい。アルキル基などが有してもよい置換基としては、後述の置換基A群で定義された置換基、フッ素原子を含有する基、-SO3
-を含有する基などが挙げられる。
また、カチオン近傍の立体障害を高めてより優れた耐光性が得られやすいという理由から、式(1)のR111、R115、R116及びR120は各々独立に置換若しくは無置換のアルキル基を表すことが好ましい。この場合において、R113及びR118は、各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基であることが好ましく、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基であることがより好ましく、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基であることが更に好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより一層好ましい。
また、カチオン近傍の立体障害を高めてより優れた耐光性が得られやすいという理由から、R111、R113、及び、R115の基に含まれる炭素数の合計、並びに、R116、R118、及び、R120の基に含まれる炭素数の合計の少なくとも一方は3以上であることが好ましく、両方が3以上であることがより好ましい。上記炭素数の合計の上限は、水溶性を向上させやすいという理由から15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。R111、R113、及び、R115の基に含まれる炭素数の合計が3以上とする好ましい態様としては、R111、R113及びR115がそれぞれ独立に炭素数1以上の置換若しくは無置換のアルキル基である態様、R111及びR115がそれぞれ独立に炭素数1以上の置換若しくは無置換のアルキル基で、かつ、R111及びR115の少なくも一方(好ましくは両方)が炭素数2以上の置換若しくは無置換のアルキル基である態様が挙げられる。また、R116、R118及びR120の基に含まれる炭素数の合計が3以上とする好ましい態様としては、R116、R118及びR120がそれぞれ独立に炭素数1以上の置換若しくは無置換のアルキル基である態様、R116及びR120がそれぞれ独立に炭素数1以上の置換若しくは無置換のアルキル基で、かつ、R116及びR120の少なくも一方(好ましくは両方)が炭素数2以上の置換若しくは無置換のアルキル基である態様が挙げられる。
R111、R113、R115、R116、R118及びR120が表すアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれであってもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8がさらに好ましく、1~4が特に好ましく、1~3が最も好ましい。R111、R113、R115、R116、R118、及びR120が表すアリール基の炭素数は、6~12が好ましく、6~10がより好ましく、6がさらに好ましい。R111、R113、R115、R116、R118、及びR120が表すヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。ヘテロ環基は、芳香族ヘテロ環基であってもよく、非芳香族ヘテロ環基であってもよい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の種類は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロ環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。
式(1)において、R112、R114、R117及びR119は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を含有する基、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルキルスルフィニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、アシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、又は、スルホ基であることが好ましく、水素原子、フッ素原子を含有する基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、カルバモイル基、イミド基、又は、スルホ基であることがより好ましい。なお、スルホ基は塩の状態であってもよい。塩を形成する対カチオンとしては、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン)が挙げられる。
式(1)において、R121~R128の少なくとも1つは置換基を表すことが好ましく、R121~R124の少なくとも1つとR125~R128の少なくとも1つは、それぞれ独立に置換基を表すことがより好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルキルスルフィニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、アシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、スルホ基、又は、-SO3
-を含有する基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基であることがより好ましく、置換若しくは無置換のアリール基であることが更に好ましい。アルキル基などの詳細については、後述する置換基Aの項目で説明する範囲と同義である。また、アルキル基などが有してもよい置換基としては、後述の置換基A群で定義された置換基、-SO3
-を含有する基などが挙げられる。
また、カチオン近傍の立体障害を高めてより優れた耐光性が得られやすいという理由から、式(1)のR121~R124の少なくとも1つ、及び、R125~R128の少なくとも1つは、それぞれ独立に炭素数3以上の基であることも好ましい。炭素数3以上の基としては、置換若しくは無置換の炭素数3以上(好ましくは炭素数3~30)のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。アルキル基は、直鎖、分岐のアルキル基が挙げられ、分岐のアルキル基であることが好ましい。炭素数3以上の基は、置換若しくは無置換の炭素数3以上の分岐のアルキル基または置換若しくは無置換のアリール基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
また、より優れた耐光性が得られやすいという理由から、式(1)のR121~R124の基に含まれる炭素数の合計、及び、R125~R128の基に含まれる炭素数の合計の少なくとも一方は3以上であることが好ましく、両方が3以上であることがより好ましい。上記の炭素数の合計の上限は、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましい。上記炭素数の合計の上限は、水溶性を向上させやすいという理由から15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
式(1)において、R122とR126は互いに結合して環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
式(1)において、R129~R132は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基、置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルキルスルフィニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、アシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、スルホ基、フッ素原子を含有する基、又は、SO3
-を含有する基であることが好ましく、置換若しくはニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、スルホ基、フッ素原子を含有する基、又は、SO3
-を含有する基であることがより好ましく、スルホ基、又は、SO3
-を含有する基であることが更に好ましい。アルキル基などの詳細については、後述する置換基Aの項目で説明する範囲と同義である。また、アルキル基などが有してもよい置換基としては、後述の置換基A群で定義された置換基、フッ素原子を含有する基、-SO3
-を含有する基などが挙げられる。
式(1)において、Z1は、-SO3
-、-SO2-NRz1Rz2、又は、-SO2-Lz1-Rz3を表し、Rz1及びRz2は各々独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、Rz1とRz2は互いに結合して環を形成してもよく、Rz3は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、Lz1は、カルボニル基又はスルホニル基を表す。
カチオン近傍の立体障害を高めてより優れた耐光性が得られやすいという理由から、Z1は、-SO2-NRz1Rz2、又は、-SO2-Lz1-Rz3であることが好ましい。
Rz1~Rz3が表すアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれであってもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8がさらに好ましく、1~4が特に好ましく、1~3が最も好ましい。Rz1~Rz3が表すアリール基の炭素数は、6~12が好ましく、6~10がより好ましく、6がさらに好ましい。Rz1~Rz3が表すヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。ヘテロ環基は、芳香族ヘテロ環基であってもよく、非芳香族ヘテロ環基であってもよい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の種類は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロ環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。Rz1~Rz3が表すアルキル基、アリール基、及び、ヘテロ環基が有してもよい置換基としては、後述の置換基T群で定義された置換基、及び、フッ素原子を含有する基が挙げられる。
Rz1とRz2は互いに結合して環を形成してもよい。Rz1とRz2が互いに結合して環を形成する場合、Rz1とRz2は-CR101R102-または-NR103-を介して結合して環を形成することが好ましい。R101~R103はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表す。置換基としては、後述の置換基T群で定義された置換基、及び、フッ素原子を含有する基が挙げられる。Rz1とRz2は互いに結合して形成される環は、5~7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましい。
式(1)において、Z1が-SO3
-の場合、R111~R132の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であり、かつ、R111~R120及びR129~R132に含まれるフッ素原子の総和は5以上である。R112~R114、R117~R119、R121~R132の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であることが好ましく、少なくとも2つがフッ素原子を含有する基であることがより好ましい。また、より優れた耐光性が得られやすいという理由から、R111~R120及びR129~R132に含まれるフッ素原子の総和は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。また、フッ素原子の総和は、水溶性を向上させやすいという理由から30以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。また、水溶性を向上させやすいという理由からR112~R114、R117~R119、R121~R132の少なくとも1つ、好ましくは1~6個、より好ましくは2~4個はスルホ基であることも好ましい。
式(1)において、Z1が-SO2-NRz1Rz2の場合、R111~R132、Rz1及びRz2の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であり、R111~R132の少なくとも1つは-SO3
-を含有する基であり、かつ、R111~R120、R129~R132、Rz1及びRz2に含まれるフッ素原子の総和は5以上である。R112~R114、R117~R119、R121~R132、Rz1及びRz2の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であることが好ましく、少なくとも2つはフッ素原子を含有する基であることがより好ましい。また、より優れた耐光性が得られやすいという理由から、R111~R120、R129~R132、Rz1及びRz2に含まれるフッ素原子の総和は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。また、フッ素原子の総和は、水溶性を向上させやすいという理由から30以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。また、R112~R114、R117~R119、R121~R132の少なくとも1つは-SO3
-を含有する基であることが好ましく、これらの基の1つが-SO3
-を含有する基であることが更に好ましい。また、水溶性を向上させやすいという理由からR112~R114、R117~R119、R121~R132の少なくとも1つ、好ましくは1~6個、より好ましくは2~4個はスルホ基であることも好ましい。また、より優れた耐光性が得られやすいという理由から、Rz1及びRz2の少なくとも一方が2級アルキル基又は3級アルキル基であるか、Rz1とRz2は互いに結合して環を形成していることも好ましい。
式(1)において、Z1が-SO2-Lz1-Rz3の場合、R111~R132及びRz3のうち少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であり、R111~R132のうち少なくとも1つは-SO3
-を含有する基であり、かつ、R111~R120、R129~R132及びRz3に含まれるフッ素原子の総和は5以上である。R112~R114、R117~R119、R121~R132、及びRz3の少なくとも1つはフッ素原子を含有する基であることが好ましく、少なくとも2つはフッ素原子を含有する基であることがより好ましい。また、より優れた耐光性が得られやすいという理由から、R111~R120、R129~R132及びRz3に含まれるフッ素原子の総和は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。また、フッ素原子の総和は、水溶性を向上させやすいという理由から30以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。また、R112~R114、R117~R119、R121~R132の少なくとも1つは-SO3
-を含有する基であることが好ましく、これらの基の1つが-SO3
-を含有する基であることが更に好ましい。また、水溶性を向上させやすいという理由からR112~R114、R117~R119、R121~R132の少なくとも1つ、好ましくは1~6個、より好ましくは2~4個はスルホ基であることも好ましい。
式(1)で表される化合物(トリアリールメタン化合物(1))に含まれるフッ素原子の総和は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、より優れた耐光性が得られやすいという理由から10以上であることが更に好ましい。また、フッ素原子の総和は、水溶性を向上させやすいという理由から30以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。
(フッ素原子を含有する基)
フッ素原子を含有する基としては、フッ素原子、-RF1、-ORF1、-SRF1、-CORF1、-COORF1、-OCORF1、-NRF1RF2、-NHCORF1、-CONRF1RF2、-NHCONRF1RF2、-NHCOORF1、-SO2RF1、-SO2ORF1及び-NHSO2RF1が挙げられ、フッ素原子、-RF1、-NRF1RF2、-OCORF1、-NHCORF1、-NHCONRF1RF2、-NHCOORF1、及び、-NHSO2RF1がより好ましい。RF1は、フッ素原子を含む炭化水素基を表し、RF2は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環基、または、フッ素原子を含む炭化水素基を表す。以下、フッ素原子を含む炭化水素基を含フッ素炭化水素基ともいう。
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、及び、芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は鎖式脂肪族炭化水素基であってもよく、環式脂肪族炭化水素基であってもよい。炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~5が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルケニル基及びアルキニル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~20がより好ましく、2~10が更に好ましく、2~5が特に好ましい。アルケニル基及びアルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
含フッ素炭化水素基としては、上記炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基が挙げられ、フルオロアルキル基及びフルオロアリール基であることが好ましい。含フッ素炭化水素基において、耐光性を向上させやすいという理由からフッ素原子の置換率は20~100%であることが好ましく、40~100%であることがより好ましく、50~100%であることがさらに好ましい。なお、フッ素原子の置換率とは、炭化水素基が有する全水素原子の数に対してフッ素原子に置換されている数の比率(%)をいう。
ヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。ヘテロ環基は、芳香族ヘテロ環基であってもよく、非芳香族ヘテロ環基であってもよい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基の環を構成するヘテロ原子の種類は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロ環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
(-SO3
-を含有する基)
-SO3
-を含有する基としては、-SO3
-、-RS1、-ORS1、-SRS1、-CORS1、-COORS1、-OCORS1、-NRS1RS2、-NHCORS1、-CONRS1RS2、-NHCONRS1RS2、-NHCOORS1、-SO2RS1、-SO2ORS1及び-NHSO2RS1が挙げられ、-SO3
-及び-RS1がより好ましい。RS1は、-SO3
-を含む炭化水素基を表し、RS2は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環基、または、-SO3
-を含む炭化水素基を表す。炭化水素基及びヘテロ環基の詳細については、フッ素原子を含有する基で説明した範囲と同様である。-SO3
-を含む炭化水素基としては、炭化水素基の水素原子の少なくとも一部が-SO3
-で置換された基が挙げられ、アルキル基またはアリール基の水素原子の少なくとも一部が-SO3
-で置換された基が好ましい。-SO3
-を含む炭化水素基は、炭化水素基の水素原子の1つが-SO3
-で置換された基が好ましく、アルキル基またはアリール基の水素原子の1つが-SO3
-で置換された基がより好ましく、アリール基の水素原子の1つが-SO3
-で置換された基が更に好ましい。
(置換基A)
置換基Aとしては、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、イオン性親水性基が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基Aから選択される基、上述したフッ素原子を含有する基、上述した-SO3
-を含有する基を挙げることができる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は1~30が好ましい。直鎖または分岐のアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~30のアルキル基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、エイコシル基、2-クロロエチル基、2-シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造などが挙げられる。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3~30の置換又は無置換のシクロアルキル基であり、具体例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4-n-ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5~30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5~30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基であり、具体例としては、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン-3-イル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、置換若しくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基が挙げられる。具体例としては、ベンジル基及び2-フェネチル基が挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられる。アルケニル基の炭素数は2~30が好ましい。環状のアルケニル基には、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基が包含される。直鎖または分岐のアルケニル基としては、好ましくは炭素数2~30の置換又は無置換のアルケニル基である。具体例としては、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられる。環状のアルケニル基としては、シクロアルケニル基、及び、ビシクロアルケニル基が挙げられる。シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3~30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3~30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。具体例としては、2-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基等が挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数5~30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。具体例としては、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-1-イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト-2-エン-4-イル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2~30の置換又は無置換のアルキニル基である。具体例としては、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アリール基としては、好ましくは、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリール基である。具体例としては、フェニル基、p-トリル基、ナフチル基、m-クロロフェニル基、o-ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
ヘテロ環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。芳香族のヘテロ環基の具体例としては、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。非芳香族のヘテロ環基の具体例としては、モルホリニル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換若しくは無置換のアルコキシ基である。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-メトキシエトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基である。具体例としては、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基、3-ニトロフェノキシ基、2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0~20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基である。具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2~30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基である。具体例としては、1-フェニルテトラゾール-5-オキシ基、2-テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2~30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基である。具体例としては、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基である。具体例としては、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N-ジ-n-オクチルアミノカルボニルオキシ基、N-n-オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2~30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基である。具体例としては、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7~30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基である。具体例としては、フェノキシカルボニルオキシ基、p-メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p-n-ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、-NH2、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基が挙げられ、好ましくは、-NH2、炭素数1~30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリールアミノ基である。具体例としては、-NH2、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基、トリアジニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1~30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基である。具体例としては、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5-トリ-n-オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基である。具体例としては、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2~30の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基である。具体例としては、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N-メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7~30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基である。具体例としては、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m-n-オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0~30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基である。具体例としては、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N-オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基である。具体例としては、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p-メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基である。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリールチオ基である。具体例としては、フェニルチオ基、p-クロロフェニルチオ基、m-メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
ヘテロ環チオ基としては、好ましくは、炭素数2~30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基である。具体例としては、2-ベンゾチアゾリルチオ基、1-フェニルテトラゾール-5-イルチオ基等が挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0~30の置換若しくは無置換のスルファモイル基である。具体例としては、N-エチルスルファモイル基、N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基、N-ベンゾイルスルファモイル基、N-(N’-フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6~30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基である。具体例としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p-メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6~30の置換又は無置換のアリールスルホニル基である。具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p-メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2~30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7~30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2~30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基である。具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、2-クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p-n-オクチルオキシフェニルカルボニル基、2-ピリジルカルボニル基、2-フリルカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7~30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基である。具体例としては、フェノキシカルボニル基、o-クロロフェノキシカルボニル基、m-ニトロフェノキシカルボニル基、p-t-ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2~30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基である。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1~30の置換若しくは無置換のカルバモイル基である。具体例としては、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル基、N-(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
アリール又はヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6~30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3~30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基である。具体例としては、フェニルアゾ基、p-クロロフェニルアゾ基、5-エチルチオ-1,3,4-チアジアゾール-2-イルアゾ基等が挙げられる。
イミド基としては、好ましくは、N-スクシンイミド基、N-フタルイミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0~30の置換若しくは無置換のホスフィノ基である。具体例としては、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0~30の置換若しくは無置換のホスフィニル基である。具体例としては、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0~30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基である。具体例としては、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0~30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基である。具体例としては、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
シリル基としては、好ましくは、炭素数0~30の置換若しくは無置換のシリル基である。具体例としては、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
イオン性親水性基としては、-SO3
-、-COO-、スルホ基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、スルフィノ基、ホスホノ基、ジヒドロキシホスフィノ基、4級アンモニウム基などが挙げられる。スルホ基、カルボキシル基、及び、ホスホノ基は塩の状態であってもよい。塩を形成する対カチオンとしては、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられる。
なお、式(1)で表される化合物(トリアリールメタン化合物(1))は、カチオンが以下のように非局在化して存在しており、下記の3つの構造式は同義であり、いずれも本発明に含まれる。また、式(1)で表される化合物は、一分子内にカチオンとアニオンとを有する分子内塩型の化合物である。
本発明で用いられるトリアリールメタン化合物(1)は、染料であることが好ましい。また、トリアリールメタン化合物(1)は、水に溶解する化合物であることが好ましく、25℃の水100g中に10g以上溶解する化合物であることがより好ましく、15g以上溶解する化合物であることが更に好ましく、20g以上溶解する化合物であることが特に好ましい。
また、トリアリールメタン化合物(1)の分子量は色価の観点から2000以下が好ましく、1800以下がより好ましく、1600以下が更に好ましい。
トリアリールメタン化合物(1)の具体例としては下記構造の化合物が挙げられる。以下に示す構造式中、Etはエチル基を表す。
トリアリールメタン化合物(1)の含有量は、着色組成物の全量に対して1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%がより好ましい。本発明の着色組成物は、トリアリールメタン化合物(1)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。トリアリールメタン化合物(1)を2種以上含む場合はそれらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
<<他の着色剤>>
本発明の着色組成物は、トリアリールメタン化合物(1)以外の着色剤を更に含んでいてもよい。併用してもよい他の着色剤としては、公知の着色剤が挙げられ、例えば、染色ノート(株式会社 色染社発行の第24版 以下同様)33頁~121頁の染料、124頁~130頁の顔料などが挙げられる。
他の着色剤の含有量は、着色組成物の全量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下がより一層好ましい。また、他の着色剤は実質的に含有しないことも好ましい。他の着色剤を実質的に含有しない場合とは、他の着色剤の含有量が着色組成物の全量に対して0.05質量%以下であることを意味し、0.01質量%以下であることが好ましく、含有しないことが更に好ましい。
<<溶剤>>
本発明の着色組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤の種類及び含有量は、トリアリールメタン化合物(1)の種類、染色濃さ、及び染色方法によって異なる。溶剤の種類としては、水、水溶性有機溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アミン類、一価アルコール類、多価アルコールのアルキルエーテル類等が挙げられる。また、特開2002-371079号公報の段落番号0076に記載の水混和性有機溶剤の例示として挙げられる各化合物を用いることもできる。溶剤としては、水を含むものが好ましく、溶剤全量に対して、水を50質量%以上含むものがより好ましい。溶剤の含有量は、着色組成物の全量に対して40質量%以上であることが好ましい。また、着色組成物の全量に対して、水を30質量%以上含有することが好ましい。
<<他の成分>>
本発明の着色組成物は、用途に応じてさらに後述する他の成分を含有することができる。例えば、本発明の着色組成物は、染色用の着色組成物として好ましく用いられる。着色組成物で染色される被染物としては、布帛、紙などが挙げられ、布帛であることが好ましい。すなわち、本発明の着色組成物は、布帛染色用の着色組成物として好ましく用いられる。また、本発明の着色組成物は、インクジェット用インクとして用いることも好ましい。特に、インクジェット捺染用インクとしてより好ましく用いられる。
本発明の着色組成物を染色用着色組成物として用いる場合、本発明の着色組成物は、上述した成分の他、更に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分は、被染物の染色方法に応じて適宜選択することができる。ここで、被染物の染色法は浸染法と捺染法に大別される。浸染とは、染料などの着色剤を溶剤に溶解又は分散した着色組成物に被染物を浸漬し、着色剤を被染物表面に吸着させ、着色剤を被染物内部に拡散させ、結合によって染着を行う工程である。捺染とは、着色組成物を被染物上に塗布して模様の形を与え、染料などの着色剤を被染物に染着又は固着させることによって模様のある染色物をつくる染色法である。工業的には版を用いるスクリーン捺染、ローラー捺染、転写紙を用いる転写捺染、無製版のインクジェット捺染などが挙げられる。
本発明の着色組成物を浸染用の着色組成物として用いる場合、本発明の着色組成物は染料液として用いることが好ましい。また、着色組成物には、上述した成分の他、更に、均捺助剤、pH調整剤、無機中性塩、分散剤などを含有することができる。均捺助剤などの添加剤としては公知のものを使用でき、例えば、染色ノート134頁~145頁に記載の湿潤剤、浸透剤、染色ノート147頁~154頁記載の金属イオン封止剤、染色ノート216頁~222頁記載の分散剤、染色ノート230頁~255頁記載の均捺剤、染色ノート285頁~286頁記載の防染剤、染色ノート279頁~284頁記載のマイグレーション防止剤、染色ノート304頁~321頁記載の染料固着剤、染色堅牢度向上剤、染色ノート322頁~334頁記載のpH調整剤などが挙げられる。
本発明の着色組成物を、スクリーン捺染、ローラー捺染、または、転写捺染用着色組成物として用いる場合、本発明の着色組成物は、版又は転写紙を介して布帛に印捺する色糊として用いることが好ましい。色糊には、上述した成分の他、更に、糊剤、染色助剤などを含有することが好ましい。色糊は、例えば、糊を溶剤に溶解又は分散した糊溶液に染色助剤を添加し、これにトリアリールメタン化合物(1)を溶媒に溶解又は分散した染料液を添加撹拌して調製することができる。糊剤としては、着色組成物の媒体となるもので、水溶性高分子が用いられる。水溶性高分子としては、デンプン類、海藻類、天然ガム類、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、タンパク質物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の公知の天然水溶性高分子が挙げられる。また、ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系水性高分子、スチレン系水性高分子、無水マレイン酸系水性高分子等の公知の合成高分子も糊剤として用いられる。たとえば、染色ノート349頁~361頁記載の捺染用糊剤などが挙げられる。また、染色ノート367頁~369頁記載の捺染糊改質剤を併用することもできる。2種類以上の糊を混合して使用してもよい。染色助剤としては、酸やアルカリなどの発色剤、染料溶解剤、湿潤剤、吸湿剤、濃染剤、還元防止剤、金属イオン封止剤、紫外線吸収剤、分散剤、防染剤、抜染剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、マイグレーション防止剤、染料固着剤、消泡剤などが挙げられる。また、染色ノート336頁~338頁に記載の溶解剤、可溶化剤、染色ノート339頁~345頁に記載の濃染剤、均捺剤、浸透剤、染色ノート346頁~348頁記載の消泡剤、染色ノート147頁~154頁記載の金属イオン封止剤、染色ノート216頁~222頁記載の分散剤、染色ノート370頁~374頁記載の防染剤、染色ノート375頁~381頁記載の抜染剤、染色ノート362頁~363頁記載の防腐剤、防黴剤、染色ノート279頁~284頁記載のマイグレーション防止剤、染色ノート426頁~429頁記載の染料固着剤、特開平06-166969号公報に記載の湿潤堅牢度向上剤、米国特許第5336443号明細書に記載の光堅牢度向上剤などが挙げられる。
本発明の着色組成物をインクジェット用インクとして用いる場合、親油性媒体や水性媒体中にトリアリールメタン化合物(1)を溶解及び/又は分散させることによって製造ができる。好ましくは、水性媒体を用いたインクである。トリアリールメタン化合物(1)を水性媒体に分散させる場合は、特開2014-005462号公報の段落番号0232~0233に記載された方法で分散できる。水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤が挙げられる。
本発明の着色組成物をインクジェット用インクとして用いる場合、本発明の着色組成物は、インク適性、捺染適性、画像堅牢性を付与する目的で界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれの界面活性剤も用いることができる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。特開2002-371079号公報の段落番号0073に記載の表面張力調整剤の例示として挙げられる界面活性剤、特開2008-266466号公報に記載の界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤の含有量は、着色組成物の全量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%が更に好ましい。
本発明の着色組成物をインクジェット用インクとして用いる場合、本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤、還元防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、蛍光増白剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。油溶性染料を分散物の形にするときには分散剤を使用することができ、分散剤としては、例えば、染色ノート216頁~222頁記載の分散剤が用いられる。乾燥防止剤、褪色防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、キレート剤は特開2014-005462号公報の段落番号0224~0231に記載のものを適用できる。また、特開平06-166969号公報に記載の湿潤堅牢度向上剤、米国特許第5336443号明細書に記載の光堅牢度向上剤も含有することができる。浸透促進剤は、インクジェット用インクを繊維の内部により良く浸透、固着させる目的で好適に使用される。浸透促進剤としては、公知のものを使用でき、たとえば、染色ノート223頁~255頁に記載の湿潤剤、浸透剤、均捺剤、緩捺剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール,ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ノニオン性界面活性剤や、国際公開第2010/109867号、特開平06-057644号公報に記載の分岐多価アルコール等を用いることができる。これらは着色組成物の全量中に5~35質量%含有すれば通常効果があり、染色後の滲み、インクの裏漏れを起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
本発明の着色組成物をインクジェット用インクとして用いる場合、着色組成物の25℃での粘度は30mPa・s以下であることが好ましい。また、着色組成物の表面張力は25mN/m以上70mN/m以下であることが好ましい。粘度及び表面張力は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤及び界面活性剤を添加することによって、調整できる。
<着色化合物の好ましい形態と染色する布帛>
本発明の着色組成物が含有するトリアリールメタン化合物(1)は、布帛を染色することができる。トリアリールメタン化合物(1)の置換基の種類を変更することによって、様々な種類の染料を用意することができる。トリアリールメタン化合物(1)が、スルホ基又はカルボキシル基といった酸性基を少なくとも1つ含有する場合は、酸性染料として、絹や羊毛などの蛋白繊維、6ナイロン、66ナイロンなどのポリアミド繊維を染めることができる。トリアリールメタン化合物(1)が、アミノ基などの塩基性基を少なくとも1つ含有する場合には、カチオン染料として、アクリル繊維を染めることができる。トリアリールメタン化合物(1)が、繊維と反応する基を少なくとも1つ含有する場合には、反応染料として、綿などのセルロース繊維及びポリアミド繊維を染めることができる。繊維と反応する基としては、具体的には、クロロトリアジニル基、クロロピリミジル基、ビニルスルホニル基、クロロエチルスルホニル基、スルファトエチルスルホニル基、チオスルファトエチルスルホニル基が挙げられる。
布帛としては、1種類の繊維からなる布帛を使用してもよいし、2種類以上の繊維からなる複合繊維を使用してもよい。
トリアリールメタン化合物(1)は、酸性染料であることが好ましく、特に、ポリアミド繊維を染色したときに、顕著に、高い染着性を有し、かつ、耐光性を顕著に改善できる。被染布としての好ましいポリアミド繊維としては、ポリアミド繊維を含有していればよく、ポリアミド単独からなる布帛でもよいし、複合繊維からなる布帛でもよい。複合繊維としては、特開2008-202210号公報、特開2006-322131号公報、特開2007-100270号公報などに記載された繊維が挙げられる。ポリアミド繊維の中でも、6ナイロン、66ナイロンを含む繊維であることが好ましい。使用される繊維としては、布帛が好ましいが、糸を染めても同様の効果が得られる。
<布帛を染色する方法>
本発明の着色組成物を用いて布帛を染色する方法について説明する。布帛の染色方法は、着色組成物の種類に応じて、浸染法にて染色してもよく、捺染法にて染色してもよい。
(浸染法での染色方法)
浸染法での染色方法は、布帛を着色組成物に浸漬して繊維を染着させる工程と、繊維に染着しない未固着の着色組成物を洗い流す洗浄工程と、乾燥工程とを含むことが好ましい。本発明の着色組成物を用いて浸染法で布帛を染色する場合には、着色組成物は、布帛を浸漬できる染料液として用いる。洗浄工程では、一般に、常温から100℃の範囲の水若しくは温水を使用する。洗浄する水は、ソーピング剤を含有してもよい。未固着の着色組成物が完全に除去されていることで、種々の耐水性、例えば、洗濯堅牢性、耐汗堅牢性等において良好な結果が得られる。乾燥工程では、具体的には、洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。このようにして着色組成物によって染色された布帛を得ることができる。染色した布帛は、必要に応じて、後述する堅牢性改良処理を行ってもよい。また、堅牢性改良処理は、染色する前に行ってもよい。
(スクリーン捺染、ローラー捺染、又は転写捺染での染色方法)
スクリーン捺染、ローラー捺染、又は転写捺染での染色方法は、着色組成物を布帛に印捺する工程と、印捺した布帛に蒸気をあてる工程と、印捺した布帛を水洗する洗浄工程と、乾燥工程とを含むことが好ましい。本発明の着色組成物を用いてスクリーン捺染、ローラー捺染、又は転写捺染にて布帛を染色する場合には、本発明着色組成物は、版又は転写紙を介して布帛に印捺する色糊として用いる。
これらの捺染での染色方法では、浸染での染色方法と異なり、布帛に着色組成物(色糊)を印捺した後、布帛に印捺された着色組成物を繊維に染着させる処理を行う。これを発色工程といい、加熱空気を用いる方法、常圧飽和蒸気、過熱蒸気を用いる方法があり、常圧飽和蒸気を用いる方法が好ましい。本発明では、印捺した布帛に蒸気をあてる工程を行うことが好ましい。印捺した布帛に蒸気をあてる工程において、蒸気で処理する温度、時間は、着色組成物の種類や布帛の種類によって異なるが、温度は90℃~140℃が好ましく、100℃~108℃がより好ましい。時間は1~60分が好ましく、1~30分がより好ましい。印捺した布帛に蒸気をあてる工程の後は、浸染と同様の、洗浄工程、乾燥工程を経て着色組成物によって染色された布帛を得ることができる。染色した布帛は、必要に応じて、後述する堅牢性改良処理を行ってもよい。また、堅牢性改良処理は、染色する前に行ってもよい。
(インクジェット捺染での染色方法)
インクジェット捺染での染色方法は、本発明の着色組成物を用いて、インクジェット法により布帛を捺染する工程を含むことが好ましい。より好ましくは、少なくとも高分子化合物及び水を含む糊を布帛に付与する工程と、本発明の着色組成物を用いてインクジェット法により布帛に印捺する工程と、印捺した布帛に蒸気をあてる工程と、印捺した布帛を水洗する洗浄工程と、乾燥工程とを含むことが好ましい。本発明の着色組成物をインクジェット捺染で用いる場合には、本発明の着色組成物は、インクジェット用インクとして用いる。インクジェット捺染方法は従来の捺染方法と比較すると、手早く階調性に優れた画像を形成できる利点を有しており、納期短縮、少量多品種生産対応、製版工程が必要ない等のメリットを備えている。更に、形成画像として必要な量のインクのみを使用するため、従来方法に比較すると廃液が少ない等の環境的利点も有する優れた画像形成方法であるといえる。
インクジェット捺染は、従来の捺染方法で使用している色糊を使用するとノズルを目詰まりさせてしまうため、予め布帛に糊を付与しておく前処理工程(少なくとも高分子化合物及び水を含む糊を布帛に付与する工程)を行うことが好ましい。前処理工程を施すことで、布帛の取り扱いも容易になる。具体的には、糊剤、溶媒及びヒドロトロピー剤を含有する糊溶液を布帛に付着し、乾燥することで前処理した布帛が得られる。布帛はポリアミド繊維を含むことが好ましい。糊剤としては、スクリーン捺染等で使用する糊剤と同様のものを使用することができる。溶剤としては、水溶性溶媒が好ましく用いられ、水を少なくとも含む溶剤が最も好ましい。ヒドロトロピー剤は、一般に、インク組成物が付与された布帛が蒸気下で加熱される際に、画像の発色濃度を高める役割を果たす。例えば、通常、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン価テトラアルキルアンモニウム等が使用される。また、公知のものも使用でき、染色ノート426頁~429頁記載の染料固着剤などが挙げられる。糊溶液の全固形分に対するヒドロトロピー剤の含有量は0.01質量%~20質量%であることが好ましい。糊溶液は、必要に応じて、pH調整剤、水性(水溶性)金属塩、撥水剤、界面活性剤、マイグレーション防止剤、ミクロポーラス形成剤等を更に含有していてもよい。これらの添加剤としては、公知のものを使用でき、例えば、染色ノート336頁~338頁に記載の溶解剤、可溶化剤、染色ノート339頁~345頁に記載の濃染剤、均捺剤、浸透剤、染色ノート147頁~154頁記載の金属イオン封止剤、染色ノート370頁~374頁記載の防染剤、染色ノート375頁~381頁記載の抜染剤、染色ノート362頁~363頁記載の防腐剤、防黴剤、染色ノート279頁~284頁記載のマイグレーション防止剤、特開平07-316991号公報に記載のミクロポーラス形成剤、特開平06-166969号公報に記載の湿潤堅牢度向上剤、米国特許第5336443号明細書に記載の光堅牢度向上剤等が挙げられる。また、特開2013-209786号公報の段落番号0096~0101に記載のものも使用することができる。
前処理においては、絞り率5%~150%、好ましくは10%~130%の範囲で糊溶液をパッティングすることが好ましい。前処理において、上記各糊溶液を布帛に含有させる方法は、特に制限されないが、通常行われる浸漬法、パッド法、コーティング法、スクリーン法、スプレー法、転写法、インクジェット法等を挙げることができる。
次に、前処理した布帛に、インクジェット用インクを用いて、印捺する。インクジェット法により印捺した布帛は、乾燥後、他の捺染方法と同様に、発色工程、洗浄工程、乾燥工程を経て、捺染物を得ることが好ましい。発色工程~乾燥工程の好ましい方法は、スクリーン捺染等と同様である。このようにして着色組成物によって染色された布帛を得ることができる。
インクジェット捺染で用いる布帛は、必要に応じて、予め処理されたものを使用してもよい。処理は、インクジェット捺染方法においては、糊剤を布帛に付着する前に行ってもよいし、後に行ってもよい。また、染色前に付着する糊溶液に前処理剤を添加して使用してもよい。具体的には、特開2002-339268号公報、特開2000-054277号公報、特開平07-150482号公報、特開2008-174865号公報、特開2012-154006号公報、特開2012-012730号公報、特開平02-068372号公報、特公昭63-031594号公報、特開2002-275769号公報、特開2001-081680号公報、特開2004-068208号公報、特開平11-043873号公報、特開2007-217829号公報、特開2006-083495号公報、特開2005-154936号公報、特開2002-105875号公報、特開2002-348786号公報、特開平11-081163号公報、特開平02-061183号公報、特開2001-295186号公報、特開2004-060073号公報、特開2003-113583号公報、特開平08-100379号公報、特開平02-053976号公報、特開2000-226781号公報、特開2004-292989号公報、特開2002-249991号公報、特開2002-363872号公報、特開平06-341070号公報、特開2004-197237号公報、特開2008-223192号公報、特開2011-179130号公報に記載の前処理方法などが挙げられる。
染色した布帛は、必要に応じて、特開昭62-257464号公報などに記載の難燃処理、特開平02-047378号公報等に記載のプラズマ処理、特開昭60-094678号公報、特開2002-266236号公報、特開2007-321247号公報、特開平03-287873号公報、特開2004-131919号公報などに記載の耐光性や耐湿潤性、耐塩素性などの堅牢性改良処理を行ってもよい。これらの処理は、染色する前に行ってもよいし、染色後に行ってもよい。
インクジェット捺染での染色方法は、着色組成物(インクジェット用インク)をインクジェット装置を用いて布帛にインクを吐出する工程が含まれていれば限定しない。例えば、特開平09-296379号公報、特開平11-043873号公報、特開平07-070953号公報、特開平07-197384号公報、特開平07-070950号公報、特開平03-104977号公報、特開2007-303046号公報、特開2007-313717号公報、特開2008-248437号公報などに記載されたインクジェット捺染方法が知られている。008-248437などに、インクジェット捺染する方法が知られている。また、インクジェット捺染に用いられる装置としては、任意のインクジェット装置を使用できる。例えば、特開平03-045774号公報、特開2001-277656号公報、特開2000-290882号公報、特開2001-018390号公報、特開2010-083040号公報、特開2011-031418号公報などに記載された装置が知られている。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
フラスコに2,4,6-トリメチル-3-ニトロアニリンを30.0g、ジメチルアセトアミドを120mL、テトラフルオロベンゼンスルホン酸クロリドを46.6g加えた後、20℃で1時間撹拌し反応液を得た。得られた反応液に水240mLを添加した後、得られたTAM-2Aの結晶をろ取した(66.9g)。
フラスコにTAM-2Aを40.0g、メタノールを200mL、ヒドラジン一水和物を7.3g、パラジウム炭素(10%)を4.0g加えた後、65℃で2時間撹拌し反応液を得た。得られた反応液をセライトでろ過し、ろ液をエバポレーターで減圧濃縮した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展液:n-ヘキサン/酢酸エチル(3/1)にて精製することで、TAM-2Bを得た(35.6g)。
フラスコにTAM-2Bを35.0g、2-イソプロピルブロモアニリンを18.3g、tert-ブトキシナトリムを17.7g、トルエンを270mL加えて、窒素雰囲気下20℃で1時間撹拌した。ここに、酢酸パラジウムを103mg、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド391mgを加えた後、110℃で6時間撹拌し反応液を得た。得られた反応液を20℃まで冷却した後、酢酸エチルを加え、中間体001-1を酢酸エチルで抽出した。得られた酢酸エチル相をエバポレーターで減圧濃縮した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開液:n-ヘキサン/酢酸エチル(10/1))にて精製することで、TAM-2Cを得た(39.0g)。
フラスコにTAM-2Cを35.0g、4-ホルミルベンゼン-1、3-ジスルホン酸ナトリウム10.9g、メタンスルホン酸180mLをフラスコにいれ100℃で6時間撹拌し反応液を得た。得られた反応液を3.5Lの氷水に注ぎ、得られたTAM-2Dの結晶をろ取した(36.7g)。
フラスコにTAM-2Dを35.0g、クロラニルを9.8g、メタノール175mLを混合し、50℃で4時間撹拌し反応液を得た。20℃に戻して、得られた反応液を1.8Lの氷水に注ぎ、得られたTAM-002の結晶をろ取した。得られたウェット結晶を200mLのメタノールに溶かして、1mol/Lナトリウムメトキシド/メタノール溶液にてpH6まで中和した後、カラムクロマトグラフィー(充填剤:セファデックス、展開液:メタノール)にて精製することで、TAM-002を21.0g得た。TAM-2の溶液吸収スペクトル:λmax=615nm(水溶液)。エレクトロスプレーイオン化(ESI)-マススペクトル(Posi):1243.2(M-Na+2H)。
2,4,6-トリメチルフェニルボロン酸を16.4g、2-ブロモアニリンを17.2g、t-ブトキシカリウムを28.0g、1,4-ジオキサンを100mL、水を100mL、をフラスコに加えて、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。ここに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を0.90g、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド0.85gを加えてた後、100℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、反応液を酢酸エチルで抽出した後、エバポレーターで減圧濃縮した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開液:n-ヘキサン/酢酸エチル(10/1))にて精製することで、TAM-3Aを17.2g得た。
TAM-2の合成において、TAM-2BをTAM-3Aへ、2-イソプロピルブロモベンゼンをN-(3-ブロモ-2,4,6-トリメチルフェニル)-ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アミドへ換えて、以降同様の合成を行うことで、TAM-3Dを得た。
フラスコにTAM-3Dを3.0g、硫酸を12mLに加えて、冷却しながら撹拌した。ここへ25%発煙硫酸9.0mLを内温が5℃を超えぬよう2時間かけて滴下した。滴下後30分間、内温を5℃以下で撹拌した後、反応液を氷120gに注いで析出した結晶をろ取した。得られたウェット結晶を120mLのメタノールに溶かして、1mol/Lナトリウムメトキシド/メタノール溶液にてpH6まで中和した後、カラムクロマトグラフィー(充填剤:セファデックス、展開液:メタノール)にて精製することで、TAM-3を1.6g得た。TAM-3の溶液吸収スペクトル:λmax=616nm(水溶液)。ESI-マススペクトル(Posi):1555.2(M-3Na+4H)。
TAM-3の合成において、N-(3-ブロモ-2,4,6-トリメチルフェニル)-ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アミドをN-(3-ブロモ-2,4,6-トリメチルフェニル)-トリフルオロメタンスルホン酸アミドへ、4-ホルミルベンゼン-1、3-ジスルホン酸ナトリウムを2-ホルミルベンゼン-1-スルホン酸ナトリウムへ換えて、以降同様の合成を行うことで、TAM-8Cを得た。
フラスコにTAM-8Cを10.0g、アセトニトリルを10mL、ジメチルホルムアミドを4.0mL加えて、窒素雰囲気下20℃で塩化ホスホリル5.2gを1時間かけて滴下した後、80℃で4時間撹拌し反応液を得た。得られた反応液を20℃に戻して、100mLの氷水に注いで1時間撹拌した後、得られた中間体TAM-8Dの結晶をろ取した(9.4g)。
フラスコに中間体TAM-8Dを9.0g、塩化メチレン27mL、トリエチルアミンを2.0g、3,3,4,4-テトラフルオロピロリジンを1.4g加えた後、20℃で1時間撹拌し反応液を得た。得られた反応液にエタノール45mLを添加した後、得られたTAM-8Eの結晶をろ取した(8.5g)。
TAM-3の合成において、TAM-3DをTAM-8Eへ換えて、以降同様の合成を行うことで、TAM-8を得た。TAM-8の溶液吸収スペクトル:λmax=618nm(水溶液)。ESI-マススペクトル(Posi):1404.3(M-Na+2H)。
TAM-8の合成において、N-(3-ブロモ-2,4,6-トリメチルフェニル)-トリフルオロメタンスルホン酸アミドをN-(3-ブロモ-2,4,6-トリメチルフェニル)-ペンタフルオロエタンスルホン酸アミドへ、3,3,4,4-テトラフルオロピロリジンをトリフルオロメタンスルホンアミドへ換えて、以降同様の合成を行うことで、TAM-14を得た。TAM-14の溶液吸収スペクトル:λmax=617nm(水溶液)。ESI-マススペクトル(Posi):1510.2(M-Na+2H)。
〔インクジェット捺染〕
インクジェット捺染においては、特開2013-209786号公報に記載の方法に準じて行った。
<前処理工程>
布帛であるナイロン6ジャージについて、以下に示す成分を混合して前処理剤Aを調製した。得られた前処理剤Aを用い、布帛を絞り率90%としてパッティングして、自然乾燥させ、処理済み布帛を得た。
(前処理剤A)
・糊剤:グアーガム〔日晶株式会社製、MEYPRO GUM NP〕
2g
・ヒドロトロピー剤:尿素〔富士フイルム和光純薬社製〕 5g
・pH調整剤:硫酸アンモニウム〔富士フイルム和光純薬社製〕 4g
・水 89g
<印捺工程>
次いで、下記組成からなるインクジェット用インクを、30~40℃で加熱しながら1時間撹拌した。得られた液を平均孔径0.5μmのミクロフィルターで減圧濾過しインクジェット用インクを調製した。
(インクジェット用インクの組成)
・表1に示す染料 5質量%
・グリセリン〔富士フイルム和光純薬社製〕(水性有機溶媒) 10質量%
・ジエチレングリコール〔富士フイルム和光純薬社製〕(水性有機溶媒) 10質量%
・オルフィンE1010〔日信化学社製〕(アセチレングリコール系界面活性剤)
1質量%
・水 74質量%
インクジェットプリンター(ディマティックス社製、DMP-2381)に、得られた各インクジェット用インクをセットし、得られた前処理済み布帛にベタ画像を印捺した。
<後処理工程>
印捺した布帛を乾燥した後、スチーム工程にて飽和蒸気中、100℃で、30分間スチームをかけ、染料を布帛の繊維に固着させた。その後、布帛を冷水で10分、60℃の温水で5分洗った後、自然乾燥した。染色した布帛は、色落ちすることなく、高濃度のシアンから青色に染まった染色物(染色サンプル)が得られた。
〔耐光性の評価方法〕
キセノンフェードメーターを用い、ISO 105-B02に準じて作製された染色サンプルにキセノン光を6時間照射した。分光濃度測定計(Xrite社製、「X-rite938」)にてキセノン光の照射前後における各サンプルのCIE L*a*b*表色系(国際照明委員会規格(1976年))における明度L*と色度a*及びb*を測定し、L*a*b*表色系における座標値L*、a*、b*の差であるΔL*、Δa*、Δb*によって定義される2つの試料間の色差として△Eabを求めた。値が小さいほど、光照射前後の挙動が小さく、耐光性に優れることを示す。
ΔEab=((△L*)2+(△a*)2+(△b*)2)0.5
上記表に示すように、実施例の染色物は耐光性に優れていた。
別途、布帛を、ナイロン6ジャージから、ナイロン66ジャージ、ナイロン6タフタに変更して、同様に特開2013-209786号公報に記載の方法に準じて、それぞれの布帛にインクジェット捺染を施したところ、水洗後も色落ちすることなく、高濃度に染まった染色物が得られ、耐光性も良好であった。また、記録媒体を布帛から、普通紙に変更し、特開2013-49776号公報に記載の方法に準じて、インクジェット印画し、評価したところ、優れた分光特性、耐光性を示し、紙用インクとしても優れた性質を示すことがわかった。
なお、実施例1-1~1-29の染料の欄に記載の化合物TAM-1~TAM-29は上述したトリアリールメタン化合物(1)の具体例として示した構造の化合物である。また、比較例1-1の染料の欄に記載の化合物AB9は、下記構造の化合物(C.I.Acid Blue 9)である。