以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.燃料電池システムの構成>
図1~図4を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の構成について説明する。
燃料電池システム1は、燃料電池10を備えるシステムであり、車両に搭載される。なお、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池を備えるものであればよく、例えば、車両以外の装置に搭載されてもよい。また、以下で説明する燃料電池システム1には電力源として燃料電池10の他に二次電池20が設けられているが、本発明に係る燃料電池システムにおいて、電力源として二次電池が設けられていなくてもよい。
[全体構成]
まず、図1を参照して、本実施形態に係る燃料電池システム1の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の概略構成を示す模式図である。
図1に示されるように、燃料電池システム1は、燃料電池10と、当該燃料電池10の燃料電池セルの故障時に故障した燃料電池セルである故障セルを導体化するための導体化機構50とを備える。さらに、燃料電池システム1は、二次電池20と、駆動用モータ30と、燃料電池コンバータ41と、二次電池コンバータ42と、インバータ43と、燃料ガス供給機構60と、電圧センサ70と、制御装置80とを備える。
燃料電池システム1が搭載される車両は、燃料電池10又は二次電池20から供給される電力を用いて駆動される駆動用モータ30を駆動源として走行する。駆動用モータ30の駆動に主として用いられる電力源は、燃料電池10又は二次電池20のいずれでもよいが、例えば、二次電池20に蓄電される電力が駆動用モータ30の駆動に主に用いられる場合、燃料電池10により発電される電力は主に二次電池20の充電に用いられる。この場合、燃料電池システム1が搭載される車両は、燃料電池レンジエクステンダー式の電動車両と称される車両に相当する。
燃料電池システム1において、燃料電池10は、燃料電池コンバータ41を介してインバータ43と接続されている。二次電池20は、二次電池コンバータ42を介してインバータ43に対して燃料電池10及び燃料電池コンバータ41と並列に接続されている。インバータ43は、駆動用モータ30と接続されており、当該駆動用モータ30が駆動輪9と接続されている。
燃料電池10は、燃料ガス(具体的には、水素含有ガス)と酸化ガス(具体的には、酸素含有ガス)とを反応させることにより発電する電池である。具体的には、燃料電池10は複数の燃料電池セルが積層されている燃料電池スタックを有している。なお、燃料電池10の詳細な構成については、導体化機構50の詳細な構成の説明とともに後述する。
燃料電池コンバータ41は、燃料電池10により発電される電力を昇圧可能な電力変換装置である。例えば、燃料電池コンバータ41は、いわゆるチョッパ方式の回路を含むDCDCコンバータであり、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによって、燃料電池コンバータ41による電力変換が制御される。燃料電池10により発電される電力は、例えば、燃料電池コンバータ41及び二次電池コンバータ42を介して二次電池20に供給され、二次電池20の充電に利用される。また、燃料電池10により発電される電力は、燃料電池コンバータ41及びインバータ43を介して駆動用モータ30に供給され、駆動用モータ30の駆動に利用されてもよい。
二次電池20は、電力を充放電可能な電池である。二次電池20としては、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池又は鉛蓄電池が用いられるが、これら以外の電池が用いられてもよい。燃料電池システム1が搭載される車両では、車両の外部の電源である外部電源から送電される電力を用いて二次電池20を充電できるようになっていてもよい。
二次電池コンバータ42は、二次電池20に蓄電される電力を昇圧可能であり、さらに二次電池コンバータ42又はインバータ43から供給される電力を降圧可能な電力変換装置である。例えば、二次電池コンバータ42は、いわゆるチョッパ方式の回路を含むDCDCコンバータであり、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによって、二次電池コンバータ42による電力変換が制御される。二次電池20に蓄電される電力は、二次電池コンバータ42及びインバータ43を介して駆動用モータ30に供給され、駆動用モータ30の駆動に利用される。
駆動用モータ30は、動力を出力可能であり、駆動用モータ30から出力される動力は、駆動輪9に伝達される。駆動用モータ30としては、例えば、多相交流式(例えば、三相交流式)のモータが用いられる。また、駆動用モータ30は、車両の減速時に回生駆動されて駆動輪9の回転エネルギを用いて発電する発電機としての機能(つまり、回生機能)を有してもよい。
インバータ43は、二次電池コンバータ42又は燃料電池コンバータ41から供給される直流電力を交流電力に変換して駆動用モータ30に供給可能であり、さらに駆動用モータ30により発電される交流電力を直流電力に変換して二次電池コンバータ42に供給可能な電力変換装置である。インバータ43は、例えば、多相ブリッジ回路(例えば、三相ブリッジ回路)を含み、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによって、インバータ43による電力変換が制御される。駆動用モータ30により発電される電力は、インバータ43及び二次電池コンバータ42を介して二次電池20に供給され、二次電池20の充電に利用される。
導体化機構50は、上述したように、燃料電池10の燃料電池セルの故障時に故障した燃料電池セルである故障セルを導体化するために設けられている機構である。具体的には、導体化機構50は、燃料電池10の燃料電池セルの電解質膜によるアノード電極とカソード電極との電気的絶縁を無効化することによって当該電解質膜を含む燃料電池セルを導体化する。なお、導体化機構50の詳細な構成については、後述する。
燃料ガス供給機構60は、燃料電池10の燃料電池スタックに燃料ガスを供給する機構である。
具体的には、燃料ガス供給機構60は、燃料ガスを貯蔵するタンク61と、タンク61と燃料電池10の燃料電池スタックとを接続する供給管62と、供給管62に設けられる開閉弁63とを有する。タンク61に貯蔵される燃料ガスは、供給管62を通過して燃料電池スタックに供給される。供給管62を通過して燃料電池スタックに供給される燃料ガスは、燃料電池スタックの各燃料電池セルに供給されるようになっている。
開閉弁63は、供給管62内の燃料ガスの流れを断接する機能を有する。開閉弁63が開状態である場合が燃料電池スタックの各燃料電池セルへ燃料ガスが供給されている状態に相当し、開閉弁63が閉状態である場合が燃料電池スタックの各燃料電池セルへの燃料ガスの供給が停止している状態に相当する。ゆえに、開閉弁63の開閉動作が制御されることによって、燃料電池スタックの各燃料電池セルへの燃料ガスの供給が行われている状態と行われていない状態とを切り替えることができる。
電圧センサ70は、燃料電池10の燃料電池スタックにおける各燃料電池セルの電圧を検出し、検出結果を制御装置80に出力する。
制御装置80は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
制御装置80は、燃料電池システム1における各装置の動作を制御する。詳細には、制御装置80は、制御対象である各装置に対して電気信号を用いて動作指令を出力することによって、各装置の動作を制御する。また、制御装置80は、電圧センサ70から出力される検出結果を受信する。制御装置80と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
なお、制御装置80が有する機能は複数の制御装置により少なくとも部分的に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置80が有する機能が複数の制御装置により少なくとも部分的に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。また、制御装置80は、下記で説明する以外の他の機能を追加的に有していてもよい。
具体的には、制御装置80は、導体化機構50の動作を制御する。詳細には、制御装置80は、導体化機構50の後述する切替部の各スイッチの開閉動作を制御することによって、導体化機構50による燃料電池セルの導体化を制御する。
また、制御装置80は、燃料ガス供給機構60の動作を制御する。詳細には、制御装置80は、燃料ガス供給機構60の開閉弁63の開閉動作を制御することによって、燃料電池10の燃料電池スタックへの燃料ガスの供給が行われている状態と行われていない状態とを切り替える。
なお、制御装置80が行う処理の詳細については、後述にて説明する。
[導体化機構の構成]
次に、図2~図4を参照して、本実施形態に係る導体化機構50の詳細な構成について説明する。
ここで、理解を容易にするために、導体化機構50の詳細な構成の説明に先立って、図2及び図3を参照して、燃料電池10の詳細な構成について説明する。
図2は、導体化機構50及び当該導体化機構50の周囲の構成を示す模式図である。図3は、燃料電池セル100を示す断面模式図である。なお、図3は、燃料電池セル100の積層方向に沿った断面における断面図である。
図2に示されるように、燃料電池10は、複数の燃料電池セル100が積層されている燃料電池スタック11を有する。
なお、図2では、理解を容易にするために、燃料電池スタック11に含まれる燃料電池セル100として、5つの燃料電池セル100a,100b,100c,100d、100eが示されているが、燃料電池スタック11に含まれる燃料電池セル100の数はこのような例に限定されない。具体的には、燃料電池スタック11は、燃料電池10の発電電圧の設定値に応じた数の燃料電池セル100によって形成され、例えば、100個以上の燃料電池セル100を含み得る。
燃料電池スタック11は、複数の燃料電池セル100が積層されることにより形成される積層体に相当し、具体的には、図示しない一対のエンドプレートによって燃料電池セル100の積層方向に挟持されている。燃料電池スタック11では、各燃料電池セル100は、互いに直列に接続されている。例えば、図2では、5つの燃料電池セル100a,100b,100c,100d、100eがこの順に直列に接続されており、燃料電池セル100aが燃料電池スタック11の正極側の端部に位置する燃料電池セル100に相当し、燃料電池セル100eが燃料電池スタック11の負極側の端部に位置する燃料電池セル100に相当する例が示されている。
燃料電池セル100は、図3に示されるように、電解質膜111、アノード電極112及びカソード電極113を含む膜電極接合体110(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、アノード側セパレータ120と、カソード側セパレータ130とを有する。
膜電極接合体110は、燃料電池セル100において発電が行われる部分である。詳細には、電解質膜111は、水素イオンを通過させる性質を有する膜である。アノード電極112及びカソード電極113は、電解質膜111を挟んで対向して配置されており、例えば、白金又は白金を含有する合金がカーボン粒子上に担持されている触媒層を有する。アノード電極112は、発電時に電子を失う側の電極であり、カソード電極113は、発電時に電子を得る側の電極である。
アノード側セパレータ120及びカソード側セパレータ130は、膜電極接合体110を挟んで対向して配置されており、例えば、カーボン又は金属材料等の導電性を有する材料によって形成されている。アノード側セパレータ120におけるアノード電極112と接する面には、アノード電極112に供給される燃料ガスが流れる溝状の燃料ガス供給流路121が形成されている。例えば、アノード側セパレータ120において、複数の燃料ガス供給流路121が、互いに間隔を空けて略平行に延設されている。カソード側セパレータ130におけるカソード電極113と接する面には、カソード電極113に供給される酸化ガスが流れる溝状の酸化ガス供給流路131が形成されている。例えば、カソード側セパレータ130において、複数の酸化ガス供給流路131が、互いに間隔を空けて略平行に延設されている。なお、図3では、燃料ガス供給流路121の延在方向と酸化ガス供給流路131の延在方向とが一致している例が示されているが、両流路の延在方向は、例えば、互いに直交していてもよい。
燃料電池スタック11には、燃料電池10に供給される燃料ガス及び酸化ガスを各燃料電池セル100に供給するための流路と、燃料ガス及び酸化ガスを各燃料電池セル100から燃料電池10の外部に排出するための流路とが形成されている。それにより、燃料電池10に供給される燃料ガスは、各燃料電池セル100のアノード側セパレータ120の燃料ガス供給流路121に供給され、各燃料ガス供給流路121を通過した後、燃料電池10の外部に排出される。また、燃料電池10に供給される酸化ガスは、各燃料電池セル100のカソード側セパレータ130の酸化ガス供給流路131に供給され、各酸化ガス供給流路131を通過した後、燃料電池10の外部に排出される。
次に、図2を参照して、導体化機構50の詳細な構成について説明する。
図2に示されるように、導体化機構50は、燃料電池スタック11により発電される電力を蓄電するコンデンサ51と、コンデンサ51と複数の燃料電池セル100との接続状態を切り替える切替部52とを有する。さらに、導体化機構50は、コンデンサ51の充電時にコンデンサ51から燃料電池スタック11へ電流が逆流することを抑制するためのダイオード53と、コンデンサ51に過度に大きな電流が流れることを抑制するための抵抗体54とを有する。
導体化機構50は、後述にて詳細に説明するように、切替部52によりコンデンサ51と一部の燃料電池セル100とを接続することによって、当該一部の燃料電池セル100を導体化する機構である。
具体的には、切替部52は、複数のスイッチ521,522,523a,523b,523c,523d,523e,524a,524b,524c,524dを含み、コンデンサ51は、切替部52の各スイッチを介して燃料電池スタック11と接続されている。スイッチが開状態である場合が当該スイッチの両側の電気的な接続が遮断されている状態に相当し、スイッチが閉状態である場合が当該スイッチの両側が電気的に接続されている状態に相当する。
詳細には、コンデンサ51の正極側は、燃料電池スタック11の正極側(つまり、燃料電池セル100aの正極側)とスイッチ521を介して接続されている。また、コンデンサ51の負極側は、燃料電池スタック11の負極側(つまり、燃料電池セル100eの負極側)とスイッチ522を介して接続されている。ダイオード53及び抵抗体54は、コンデンサ51の正極側と燃料電池スタック11の正極側との間に、互いに直列に設けられている。スイッチ521及びスイッチ522の開閉動作が制御されることによって、コンデンサ51の充電が制御される。
図4は、導体化機構50におけるコンデンサ51を充電する際のスイッチの開閉状態を示す模式図である。
制御装置80は、コンデンサ51を充電する際に、図4に示されるように、スイッチ521及びスイッチ522をともに閉状態にする。それにより、コンデンサ51の正極側及び負極側が、それぞれ燃料電池スタック11の正極側及び負極側と接続される。ゆえに、燃料電池スタック11により発電される電力によってコンデンサ51を充電することができる。燃料電池システム1では、燃料電池セル100の故障時に、コンデンサ51に蓄電されている電力を用いて故障セルの導体化が行われる。ゆえに、制御装置80は、燃料電池セル100の故障が生じていない正常時に、あらかじめ、コンデンサ51を充電する処理を実行する。
図2に示されるように、コンデンサ51の正極側とダイオード53との間の接続点P1は、燃料電池セル100a,100b,100c,100d,100eの正極側と、それぞれスイッチ523a,523b,523c,523d,523eを介して接続されている。また、コンデンサ51の負極側は、燃料電池セル100a,100b,100c,100dの負極側と、それぞれスイッチ524a,524b,524c,524dを介して接続されており、上述したように、燃料電池セル100eの負極側と、スイッチ522を介して接続されている。ゆえに、制御装置80は、スイッチ523a,523b,523c,523d,523e,524a,524b,524c,524d,522の開閉動作を制御することによって、コンデンサ51と一部の燃料電池セル100とを接続させることができる。
燃料電池スタック11により発電される電力によってあらかじめ充電されたコンデンサ51と一部の燃料電池セル100とが切替部52によって接続された場合、コンデンサ51の電圧が当該一部の燃料電池セル100に印加されることによって、当該一部の燃料電池セル100の電解質膜111が絶縁破壊され(つまり、絶縁性を保てなくなり)、当該一部の燃料電池セル100内を電流が流れる。それにより、当該一部の燃料電池セル100の電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁が無効化されることによって、当該一部の燃料電池セル100が導体化される。このように、導体化機構50は、切替部52によりコンデンサ51と一部の燃料電池セル100とを接続することによって、当該一部の燃料電池セル100を導体化する。なお、導体化機構50によって一部の燃料電池セル100が導体化される様子の詳細については、後述にて説明する。
ここで、一部の燃料電池セル100をより適切に導体化する観点では、切替部52は、コンデンサ51と複数の燃料電池セル100の各々との接続状態を個別に切り替えることが好ましい。例えば、スイッチ523a,523b,523c,523d,523eのうちスイッチ523aのみを閉状態にし、スイッチ524a,524b,524c,524d,522のうちスイッチ524aのみを閉状態にすることによって、コンデンサ51と燃料電池セル100aとが接続された状態にすることができる。それにより、燃料電池セル100aを適切に導体化することができる。同様に、スイッチ523a,523b,523c,523d,523eのうち閉状態にするスイッチと、スイッチ524a,524b,524c,524d,522のうちのうち閉状態にするスイッチとを適宜選択することによって、コンデンサ51と各燃料電池セル100とが接続された状態を実現することができる。
上記のように、燃料電池システム1には、燃料電池10の燃料電池セル100の電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁を無効化することによって当該電解質膜111を含む燃料電池セル100を導体化する導体化機構50が設けられている。それにより、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、故障セルを導体化させることができるので、故障した一部の燃料電池セル100の発電量の低下に伴って正常な燃料電池セル100の発電量が低下してしまうことを抑制することができる。
<2.燃料電池システムの動作>
続いて、図5~図8を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の動作について説明する。
図5は、本実施形態に係る制御装置80が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示される制御フローは、具体的には、燃料電池セル100の故障時に故障セルを導体化するための処理の流れの一例に相当し、例えば、燃料電池システム1の起動後に開始され、その後、繰り返し実行される。
図5に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、制御装置80は、燃料電池セル100の故障が発生しているか否かを判定する。燃料電池セル100の故障が発生していると判定された場合(ステップS501/YES)、ステップS503に進む。一方、燃料電池セル100の故障が発生していないと判定された場合(ステップS501/NO)、ステップS501の判定処理が繰り返される。
具体的には、制御装置80は、複数の燃料電池セル100の各々について故障が発生している故障セルが存在しているか否かを判定し、故障セルが存在する場合に、燃料電池セル100の故障が発生していると判定する。制御装置80は、例えば、燃料電池セル100の電圧が基準値を下回った場合に、当該燃料電池セル100が故障セルであると判断する。例えば、燃料電池セル100の酸化ガス供給流路131に埃等の異物が滞留することに起因して当該燃料電池セル100の発電量が低下する場合には、当該燃料電池セル100の電圧が低下する。ゆえに、上記基準値は、例えば、燃料電池セル100の発電量が過度に低下していると判断し得る程度に燃料電池セル100の電圧が低下しているか否かを適切に判断し得る値に適宜設定される。
ステップS501でYESと判定された場合、ステップS503において、制御装置80は、燃料ガス供給機構60による燃料電池スタック11への燃料ガスの供給を停止させる。
具体的には、制御装置80は、燃料ガス供給機構60の開閉弁63を閉状態にする。それにより、燃料ガス供給機構60による故障セルを含む各燃料電池セル100への燃料ガスの供給が停止する。
次に、ステップS505において、制御装置80は、故障セルを導体化機構50により導体化させる。
具体的には、制御装置80は、導体化機構50の切替部52の各スイッチの開閉動作を制御することによって、コンデンサ51と故障セルとを接続させることによって、故障セルを導体化させる。以下、ステップS505の処理の一例として、燃料電池スタック11の複数の燃料電池セル100のうちの燃料電池セル100bが故障した場合における処理について、図6~図8を参照して説明する。
図6は、導体化機構50における故障セル(つまり、燃料電池セル100b)を導体化する際のスイッチの開閉状態を示す模式図である。
図6に示されるように、燃料電池セル100bが故障した場合、制御装置80は、スイッチ523a,523b,523c,523d,523eのうちスイッチ523bのみを閉状態にし、スイッチ524a,524b,524c,524d,522のうちスイッチ524bのみを閉状態にする。それにより、コンデンサ51と故障セルである燃料電池セル100bとを接続させることができる。上述したように、燃料電池セル100の故障が生じていない正常時に、導体化機構50のコンデンサ51は、燃料電池セル100により発電される電力によって、あらかじめ充電されている。ゆえに、コンデンサ51と燃料電池セル100bとが接続されることによって、コンデンサ51の電圧が燃料電池セル100bに印加される。
図7は、導体化機構50のコンデンサ51と接続された故障セル(つまり、燃料電池セル100b)に電流が流れる様子を示す模式図である。図7では、燃料電池セル100bに流れる電流の経路が太線矢印F1によって示されている。
例えば、スイッチ523a,523b,523c,523d,523eは、燃料電池セル100a,100b,100c,100d,100eのカソード側セパレータ130とそれぞれ接続されている。また、例えば、スイッチ524a,524b,524c,524d,522は、燃料電池セル100a,100b,100c,100d,100eのアノード側セパレータ120とそれぞれ接続されている。この場合、コンデンサ51と燃料電池セル100bとがスイッチ523b及びスイッチ524bを介して接続された際に、コンデンサ51と、燃料電池セル100bのカソード側セパレータ130、カソード電極113、電解質膜111、アノード電極112及びアノード側セパレータ120とによって閉回路が形成される。それにより、コンデンサ51の電圧が燃料電池セル100bのカソード電極113とアノード電極112との間に印加されることによって、燃料電池セル100bの電解質膜111が絶縁破壊される。
ここで、あらかじめ充電されているコンデンサ51の電圧は、燃料電池スタック11により発電される電力の電圧に相当し、電解質膜111の耐電圧に対して大きな電圧となっている。ゆえに、コンデンサ51の電圧による電解質膜111の絶縁破壊が実現される。上記のように、コンデンサ51と燃料電池セル100bとが接続された際に、燃料電池セル100bの電解質膜111が絶縁破壊されることにより、図7に示されるように、燃料電池セル100bにおいて、カソード側セパレータ130からカソード電極113、電解質膜111及びアノード電極112を通ってアノード側セパレータ120へ電流が流れる。なお、図7で太線矢印F1によって示される燃料電池セル100b内の電流の経路は、あくまでも一例であり、燃料電池セル100b内の各部材間の接触状態や各部材の形状等に応じて様々に異なり得る。
図8は、導体化機構50によって導体化された故障セル(つまり、燃料電池セル100b)を示す模式図である。
上記のように、コンデンサ51と接続された燃料電池セル100bの電解質膜111が絶縁破壊されることによって、燃料電池セル100bの電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁が無効化される。具体的には、燃料電池セル100bの電解質膜111が絶縁破壊されて当該電解質膜111に電流が流れることによって、電解質膜111における絶縁破壊が生じた部分が熱により消失し、図8に示されるように、カソード電極113及びアノード電極112が部分的に互いに接触した状態になる。それにより、燃料電池セル100bが導体化する。
次に、ステップS507において、制御装置80は、燃料ガス供給機構60による燃料電池スタック11への燃料ガスの供給を再開させる。
具体的には、制御装置80は、燃料ガス供給機構60の開閉弁63を開状態にする。それにより、燃料ガス供給機構60による故障セルを含む各燃料電池セル100への燃料ガスの供給が再開する。
次に、図5に示される制御フローは終了する。
上記のように、図5に示される制御フローでは、制御装置80は、複数の燃料電池セル100の各々について故障が発生している故障セルが存在しているか否かを判定し、故障セルが存在する場合に、故障セルを導体化機構50により導体化させる。それにより、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、故障セルを導体化させることが適切に実現される。
ここで、導体化機構50による導体化によって水素を含有する燃料ガスが点火されることを抑制する観点では、図5に示される制御フローのように、制御装置80は、故障セルが存在する場合に、燃料ガス供給機構60による故障セルへの燃料ガスの供給を停止させた後に、故障セルを導体化機構50により導体化させることが好ましい。
<3.燃料電池システムの効果>
続いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の効果について説明する。
本実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池10の燃料電池セル100の電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁を無効化することによって当該電解質膜111を含む燃料電池セル100を導体化する導体化機構50を備える。それにより、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、故障セルを導体化させることができるので、故障した一部の燃料電池セル100の発電量の低下に伴って正常な燃料電池セル100の発電量が低下してしまうことを抑制することができる。ゆえに、燃料電池10の発電量の低下を抑制することができる。よって、例えば、燃料電池システム1が搭載される車両の航続距離が燃料電池セル100の故障によって低下することを抑制することができる。
さらに、本実施形態に係る導体化機構50によれば、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、例えば、酸化ガス供給流路131に滞留した埃等の異物を除去することが困難な場合であっても、故障セルを導体化させることにより、燃料電池10の発電量の低下を適切に抑制することができる。
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、導体化機構50は、燃料電池スタック11により発電される電力を蓄電するコンデンサ51と、コンデンサ51と複数の燃料電池セル100との接続状態を切り替える切替部52とを有し、切替部52によりコンデンサ51と一部の燃料電池セル100とを接続することによって、当該一部の燃料電池セル100を導体化することが好ましい。それにより、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、故障セルの電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁を適切に無効化することができるので、故障セルを適切に導体化させることができる。
ここで、電解質膜111による両電極間の電気的絶縁(つまり、アノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁)を無効化する方法として、上記の方法以外の他の方法が考えられる。例えば、電解質膜111中に電熱線を配置し、当該電熱線を発熱させることにより、電解質膜111を焼き切ることによって、電解質膜111による両電極間の電気的絶縁を無効化する方法が考えられる。ここで、電解質膜111を焼き切ることには、電解質膜111を熱により溶かす(つまり、電解質膜111を融解させる)ことが含まれ得る。また、例えば、電解質膜111、アノード電極112及びカソード電極113を含む膜電極接合体110に導電性部材を当該膜電極接合体110の厚み方向に貫通させることにより、電解質膜111による両電極間の電気的絶縁を無効化する方法が考えられる。
これらの他の方法と比較して、上記の導体化機構50により電解質膜111による両電極間の電気的絶縁を無効化する方法では、電解質膜111中に配置される電熱線や膜電極接合体110を貫通する導電性部材等の微細な部品を用いることなく、燃料電池セル100を導体化させることができるので、微細な部品が追加されることによる製造コストの増大を抑制しつつ、燃料電池セル100を適切に導体化させることができる点で好ましい。
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、導体化機構50の切替部52は、コンデンサ51と複数の燃料電池セル100の各々との接続状態を個別に切り替えることが好ましい。それにより、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、コンデンサ51を故障セルのみと接続させることができるので、コンデンサ51の電圧を故障セルのみに対して印加することができる。ゆえに、コンデンサ51を故障セルに加えて正常な燃料電池セル100を含む複数の燃料電池セル100に接続させた場合と比較して、故障セルに印加させる電圧を高めることができる。よって、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、故障セルの電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁をより適切に無効化することができるので、故障セルをより適切に導体化させることができる。
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、制御装置80は、複数の燃料電池セル100の各々について故障が発生している故障セルが存在しているか否かを判定し、故障セルが存在する場合に、故障セルを導体化機構50により導体化させることが好ましい。それにより、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、故障セルを導体化させることを適切に実現することができる。ゆえに、燃料電池10の発電量の低下を抑制することを適切に実現することができる。
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、制御装置80は、故障セルが存在する場合に、燃料ガス供給機構60による故障セルへの燃料ガスの供給を停止させた後に、故障セルを導体化機構50により導体化させることが好ましい。それにより、故障セルを導体化機構50により導体化させる際に、水素を含有する燃料ガスが点火されることを抑制することができる。例えば、上述したコンデンサ51の電圧を利用する導体化機構50により故障セルを導体化させる際には、故障セルの電解質膜111が絶縁破壊されることにより放電が生じて火花が発生する場合がある。このような場合であっても、あらかじめ故障セルへの燃料ガスの供給を停止させておくことによって、燃料ガスが点火されることを抑制することができる。
<4.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池10の燃料電池セル100の電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁を無効化することによって当該電解質膜111を含む燃料電池セル100を導体化する導体化機構50を備える。それにより、燃料電池10の燃料電池セル100の故障時に、故障セルを導体化させることができるので、燃料電池10の発電量の低下を抑制することができる。よって、例えば、燃料電池システム1が搭載される車両の航続距離が燃料電池セル100の故障によって低下することを抑制することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記では、導体化機構50の切替部52がコンデンサ51と複数の燃料電池セル100の各々との接続状態を個別に切り替える例を説明したが、一部の燃料電池セル100のコンデンサ51との接続状態が他の一部の燃料電池セル100のコンデンサ51との接続状態と連動して切り替えられるようになっていてもよい。例えば、図2に示される切替部52の構成からスイッチ523c及びスイッチ524bが省略されていてもよい。その場合、燃料電池セル100bのコンデンサ51との接続状態は、燃料電池セル100cのコンデンサ51との接続状態と連動して切り替えられる。ゆえに、燃料電池セル100bが故障した場合、スイッチ523b及びスイッチ524cを閉状態にすることによって、コンデンサ51と燃料電池セル100b及び燃料電池セル100cとを接続させることができる。それにより、故障セルである燃料電池セル100bを導体化することができるので、燃料電池10の発電量の低下を抑制することができる。なお、この場合には、切替部に設けられるスイッチの個数を低減することができるので、製造コストを低減することができる。
また、例えば、上記では、導体化機構50がコンデンサ51の電圧を利用して電解質膜111による両電極間の電気的絶縁を無効化することによって燃料電池セル100を導体化する機構である例を説明したが、本発明に係る燃料電池システムに設けられる導体化機構は、上記の例と異なる方法により電解質膜111による両電極間の電気的絶縁を無効化するものであってもよい。例えば、本発明に係る燃料電池システムに設けられる導体化機構として、電解質膜111中に配置された電熱線を有し、当該電熱線を発熱させることにより、電解質膜111を焼き切ることによって、当該電解質膜111を含む燃料電池セル100を導体化する機構が用いられてもよい。また、例えば、本発明に係る燃料電池システムに設けられる導体化機構として、電解質膜111、アノード電極112及びカソード電極113を含む膜電極接合体110に導電性部材を当該膜電極接合体110の厚み方向に貫通させることにより、電解質膜111によるアノード電極112とカソード電極113との電気的絶縁を無効化する機構が用いられてもよい。
また、例えば、上記では、燃料ガス供給機構60の開閉弁63の開閉状態に応じて、各燃料電池セル100への燃料ガスの供給が行われている状態と行われていない状態とが切り替えられる例について説明したが、本発明に係る燃料電池システムに設けられる燃料ガス供給機構は、燃料ガスの供給が行われている状態と行われていない状態とを、各燃料電池セル100について個別に切り替え可能なものであってもよい。例えば、上述した供給管62から燃料電池セル100への燃料ガスの流れを断接する開閉弁が各燃料電池セル100に対して設けられており、このような各開閉弁の開閉動作を制御することによって、燃料ガスの供給が行われている状態と行われていない状態とを、各燃料電池セル100について個別に切り替えることができるようになっていてもよい。なお、この場合、燃料電池セル100の故障時に、導体化機構50により故障セルを導体化させる前に故障セルへの燃料ガスの供給のみを停止させることによって、他の正常な燃料電池セル100への燃料ガスの供給を停止させずに、燃料ガスが点火されることを抑制することができる。ゆえに、故障セルの導体化が完了した後に、燃料電池10の暖気にかかる時間を低減することができる。
また、例えば、上記では、図7を参照して、コンデンサ51と燃料電池セル100とが切替部52により接続された際に、コンデンサ51と、当該燃料電池セル100のカソード側セパレータ130、カソード電極113、電解質膜111、アノード電極112及びアノード側セパレータ120とによって閉回路が形成される例を説明したが、この際に、コンデンサ51と、当該燃料電池セル100のカソード電極113、電解質膜111及びアノード電極112とによって閉回路が形成されるようになっていてもよい。つまり、コンデンサ51の正極側が燃料電池セル100のカソード電極113と接続されており、コンデンサ51の負極側が燃料電池セル100のアノード電極112と接続されていてもよい。この場合にも、コンデンサ51の電圧をカソード電極113とアノード電極112との間に印加することができるので、燃料電池セル100の電解質膜111を絶縁破壊することができる。
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理において、追加的な処理ステップが採用されてもよい。