JP7181719B2 - 肉まんの保温中の風味劣化を抑制する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、肉まんやシュウマイを保温した際に発生するむれ臭を抑制し、好ましい風味を保持するための食品素材に関する。
肉まんは、中華まんじゅうの一種であり、肉、玉ねぎ、椎茸、タケノコのみじん切り等の具材を醤油、ショウガ、香辛料等で調味して作った中具(肉あん、ともいう)を、発酵させた小麦粉の皮部生地で包み、蒸したものである。
肉まんを工業的に量産する場合、中具を調製し、加熱処理した後、それを小麦粉の皮部生地で包み(包餡工程)、2次発酵工程を経た後、蒸し器で蒸して仕上げるというのが一般的な製造方法である。
このように製された肉まんは、一旦冷却保存された後、コンビニエンスストア等の店頭で、65~85℃の保温器で加温しながら販売されていることが多いが、保温器に入っている時間の経過に伴い、むれたような臭い(むれ臭)が発生することがあり、その場合商品価値が低下するという問題があった。また、シュウマイなどについても、保温器で保温する場合は同様のことが起こる。
このような肉まん等において、保温中に起こる風味劣化や臭いを防止する方法として、これまでにいくつかの報告がなされている。たとえば、肉まんの外皮の原料穀粉に、カードラン及び/又はトランスグルタミナーゼ、コーンフラワーを添加する方法(特許文献1)、臭気がこもりにくい蒸し器(特許文献2)などがある。
しかしながら、肉まんやシュウマイのように、具材として挽肉、醤油、香味野菜、香辛料等を用いる食品の場合、保温時間と共に、中具からむれ臭、酸化臭が発生してしまう。反対に、肉、香味野菜、香辛料そのものの香りは減弱するため、これがむれ臭や酸化臭を際立たせる一因ともなっている。そのため、中具における風味劣化の防止策も必要であった。
特開2000-125770号公報 特開2013-81773号公報
本発明の課題は、肉まんやシュウマイにおいて、保温中に起こる中具の風味劣化を抑制する方法を提供することである。用いる方法は簡便であり、また添加するものは一般的に食品として用いられているものであることが望ましい。
本発明者らは、肉まんを保温すると、むれ臭の香気成分とされるイソバレルアルデヒド、酸化臭の香気成分であるヘキサナールが顕著に増加し、反対にショウガや香辛料の香気成分であるカンフェンや1,8シネオールはいずれも大きく減弱することを確認した。
そして、肉まんやシュウマイの中具に、赤ワインを適量添加することで、むれ臭や酸化臭を大幅に抑制することを見出した。また、中具に老酒または加熱処理した酵母エキスを添加することで、ショウガ、香辛料などの香気成分を大きく増加させて、それによりむれ臭等をマスキングすることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(3)に関する。
(1)肉まんまたはシュウマイの中具に、ポリフェノール含量250mg/100ml以上のワイン、老酒、または加熱処理した酵母エキスを配合する、肉まんまたはシュウマイの保温による風味劣化の抑制方法。
(2)肉まんまたはシュウマイの中具に、ポリフェノール含量250mg/100ml以上のワインおよび老酒もしくは加熱処理した酵母エキスを配合する、肉まんまたはシュウマイの保温による風味劣化の抑制方法。
本発明によれば、肉まんまたはシュウマイの中具に特定の食品素材を配合するだけで、保温中における不快臭の発生を抑制することができる。あるいは、素材のもつ好ましい香りを増強することができる。そして、肉まんまたはシュウマイの保温中における風味劣化を抑制することができる。
添加する食品素材は、ワイン、老酒または加熱処理した酵母エキスであり、いずれも一般に食品として用いられているものであるため、安価で使用が簡単で、かつ安全性の高いものである。
本発明の方法において、肉まんまたはシュウマイ(以下「肉まん等」という)の中具を調製する際に、ポリフェノールを含むワインを配合する。
配合するワインはポリフェノール250mg/100ml以上含むものであり、望ましくはポリフェノール350mg/100ml以上、さらに望ましくは450mg/100ml以上含むものである。このようなワインとしては赤ワインがあり、中でもMCフードスペシャリティーズ社製の「アルボーノ(登録商標)PR赤」が特に望ましい。
ポリフェノール含量が低いワインを用いた場合、効果が出にくく、添加量を増やすとワインの味が目立って肉まん等の風味を損なうことがある。
ポリフェノールの測定方法としては、フォーリン・デニス(Folin-Denis)法を用いる。
肉まん等の中具へのワインの配合量は、添加するワインの種類にもよるが、中具に対して0.2~1.2重量%となる量を添加することが望ましく、たとえばポリフェノール350~500mg/100ml含有するワインの場合は0.4~0.8重量%が望ましい。
また、肉まん等の中具を調製する際に、老酒または加熱処理した酵母エキスを配合すると、肉、香味野菜、香辛料の本来の好ましい香りが大幅に増強され、このことにより、むれ臭や酸化臭といった不快臭をマスキングすることができる。
本発明で用いる老酒は、籾、粟、黍などの穀物を主原料とし、麹や酵母などで発酵させたものである。長期熟成させた黄酒を老酒と定義する場合もあるが、本発明では老酒と黄酒とは同義とする。老酒の例としては、たとえば紹興酒があり、塩など他の成分を添加されているもの(老酒調整品)であってもよい。望ましい老酒としては、MCフードスペシャリティーズ社製の老酒調整品「厨用紹興料酒」が挙げられる。肉まん等の中具に老酒を配合する場合、その配合量は、他の具材に対して0.2~1.2重量%であることが望ましい。
本発明で用いる加熱処理した酵母エキスとは、酵母エキスを加熱処理して得られるものである。加熱処理の温度は70~180℃、望ましくは90~120℃であり、加熱時間は10~120分間である。加熱処理に用いる酵母エキスには制限はなく、また加熱処理の際に水や他の成分を配合してよい。酵母エキスを加熱処理すると、含有される成分によりメイラード反応等の変化が起こり、新たな風味が形成される。加熱処理した酵母エキスとしては、「クックアップ(登録商標)FT-D」(MCフードスペシャリティーズ社製)が挙げられる。
加熱処理した酵母エキスを配合する場合、その配合量は、他の具材に対して0.05~0.2重量%であることが望ましい。
前記のポリフェノールを含むワインと、老酒および/または加熱処理した酵母エキスを併用することで、さらに保温中の風味劣化を抑える効果を向上させることができる。
本発明の肉まんの中具は、前記のとおりワイン、老酒または加熱処理した酵母エキスを添加する以外は、通常の肉あんの製造方法に準じて製造することができる。
用いられる肉は、肉まんの中具に通常用いられる肉であればいずれでもよく、豚肉、牛肉、鶏肉等の畜肉、エビ、カニ、ホタテ、イカ、サケ等の魚介類の肉が挙げられるが、豚肉、牛肉が好ましい。肉の形態は特に限定されないが、通常は挽肉か、1~2cm程度の塊りである。
肉以外の具材としては、肉まんの中具に通常使用されるものでよく、玉ねぎ、椎茸、タケノコ、ニラ、ネギ、キャベツ、白菜、ショウガ、ニンニク等が挙げられる。
また、調味料としては、醤油、砂糖、食塩、日本酒、みりん、ごま油、アミノ酸、オイスターソース等が挙げられる。
さらに必要に応じて、油脂類、ゲル化剤、澱粉類、糖類、甘味料、香辛料、香料、色素等を配合することもできる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
玉ねぎ2個、タケノコ水煮400g、しいたけ8枚のみじん切りをサラダ油で炒め、豚挽き肉800gを加えて色が変わるまで炒めた。これに水600ml、鶏がらスープのもと小さじ4、塩小さじ2、砂糖大さじ4、醤油100ml、おろしショウガ小さじ4を入れて煮詰めて、汁が3分の2になったところでごま油大さじ4を入れた。火を弱めて、片栗粉大さじ6を水180mlに溶かしたものを回し入れて、とろみをつけ、肉まんの中具を製した。
前記の中具を約100gずつとり、何も添加しないものをコントロールのサンプルとした。
中具に対して、ポリフェノールを490mg/100ml含有する赤ワイン「アルボーノ(登録商標)PR赤」(MCフードスペシャリティーズ社製)を0.5重量%添加混合したものをサンプル1とした。
中具に対して、老酒調整品「厨用紹興料酒」(MCフードスペシャリティーズ社製)を0.5重量%添加混合したものをサンプル2とした。
中具に対して、酵母エキス「クックアップ(登録商標)FT-D」(MCフードスペシャリティーズ社製)を0.1重量%添加混合したものをサンプル3とした。
コントロール、サンプル1、サンプル2、サンプル3の具のそれぞれ適量を、別に作っておいた肉まんの外皮にくるんで肉まんを形成し、75℃の蒸し器で0時間、4時間、8時間保温した。
外皮を外して、それぞれの具について、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィーを用いて、香気成分の量を測定した。測定した香気成分は、むれ臭と考えられるイソバレルアルデヒド、酸化臭であるヘキサナール、ショウガや香辛料の香気成分であるカンフェンと1,8-シネオールである。
実施例1の結果
コントロールサンプル(具に何も添加しなかったもの)の不快臭について見ると、むれ臭のイソバレルアルデヒドの量は4時間保温後には保温前の129%、8時間保温後には164%に増大し。また、酸化臭のヘキサナールは4時間保温後には109%、8時間保温後には180%に増大した。
それに対し、サンプル1(赤ワインを添加したもの)は、イソバレルアルデヒドの量は4時間保温後で67%、8時間保温後でも105%となった。また、酸化臭のヘキサナールは4時間保温後で45%、8時間保温後で90%となった。これらのことから、中具への赤ワイン0.5重量%の添加により、肉まんの保温後のむれ臭や酸化臭を顕著に抑制できることが示された。
サンプル2(老酒を添加したもの)とサンプル3(酵母エキスを添加したもの)は、コントロールと比べて、イソバレルアルデヒドの量にはあまり影響しなかったが、ヘキサナールの量を若干低減させる効果があった。
一方、コントロールサンプル(具に何も添加しなかったもの)における、ショウガや香辛料の香気成分について見ると、カンフェンの量は4時間保温後には保温前の80%、8時間保温後には48%に減弱した。また、1,8-シネオールは4時間保温後には75%、8時間保温後には53%に減弱した。
それに対し、サンプル2(老酒を添加したもの)は添加直後からカンフェン、1,8-シネオールの成分を顕著に増大させ、カンフェンの量は8時間保温後でも104%、1,8-シネオールは8時間保温後でも96%となり、保温前のコントロールサンプルとほぼ同じ芳香を維持することができた。
サンプル3(酵母エキスを添加したもの)もサンプル2に準じる効果を示し、カンフェンの量は8時間保温後で62%、1,8-シネオールは8時間保温後で66%となり、コントロールに比べると、芳香の減弱は抑えられた。
<実施例2>
実施例1と同様にして作られた肉まんの中具に、何も加え無いものをコントロールのサンプルとした。
具に対して、ポリフェノールを490mg/100ml含有する赤ワイン「アルボーノ(登録商標)PR赤」(MCフードスペシャリティーズ社製)を0.5重量%添加混合したものをサンプル4とした。
具に対して、老酒調整品「厨用紹興料酒」(MCフードスペシャリティーズ社製)を0.5重量%添加混合したものをサンプル5とした。
具に対して、酵母エキス「クックアップ(登録商標)FT-D」(MCフードスペシャリティーズ社製)を0.1重量%添加混合したものをサンプル6とした。
具に対して、赤ワイン「アルボーノ(登録商標)PR赤」を0.4重量%、老酒調整品「厨用紹興料酒」を0.4重量%添加混合したものをサンプル7とした。
具に対して、緑茶粉末(ポリフェノール含量218mg/g、うちカテキン含量142mg/g)0.012重量%添加混合したものをサンプル8とした。
具に対して、白ワイン(ポリフェノール含量56mg/100ml)を0.5重量%添加混合したものをサンプル9とした。
コントロールのサンプル、サンプル4、サンプル5、サンプル6、サンプル7、サンプル8、サンプル9について、適量を肉まんの外皮にくるんで肉まんを形成し、75℃の蒸し器で8時間保温した後、外皮を外して、その香りについて、パネラーで官能試験を行った。
それぞれを、保温していないコントロールサンプルを同じ温度にしたものと比較して、その差についてコメントした。
実施例2の結果(保温していないコントロールサンプルとの比較)
8時間保温後のコントロールサンプルは、むれた臭い、脂の酸化した臭いを強く感じ、保温前と比べると明らかに風味が劣化していた。
8時間保温後のサンプル4(赤ワインを添加したもの)は、むれ臭や酸化臭は顕著に低減されており、全体的に香りが抑えられていた。
8時間保温後のサンプル5(老酒を添加したもの)は、むれ臭や酸化臭は低減され、中華風の芳しい香りがした。
8時間保温後のサンプル6(酵母エキスを添加したもの)は、むれ臭や酸化臭は低減され、酵母エキス特有の甘い香りがした。
8時間保温後のサンプル7(赤ワインと老酒を添加したもの)は、むれ臭や酸化臭はほぼ完全に抑えられ、ショウガや香辛料のような芳香は残っており、保温による風味劣化をほとんど感じなかった。
8時間保温後のサンプル8(緑茶粉末を添加したもの)は、むれ臭や酸化臭はある程度低減されていたが、サンプル4に比べると、酸化臭が強めに感じられ、また後味に苦味も感じられた。
8時間保温後のサンプル9(白ワインを添加したもの)は、むれ臭は多少減少しているように感じられたが、酸化臭はコントロールサンプルと同程度であった。
以上の結果より、肉まん等の中具に対して、ポリフェノール高含有のワイン、老酒、加熱処理した酵母エキスのいずれか1つ以上を添加することで、保温器で保温した後も風味の劣化が抑えられることが示された。

Claims (1)

  1. 肉まんまたはシュウマイの中具にポリフェノール含量250mg/100ml以上のワインおよび老酒または加熱処理した酵母エキスを配合する、肉まんまたはシュウマイの保温による風味劣化の抑制方法。
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