JP7180580B2 - リチウム硫黄電池 - Google Patents
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Description
炭素材料は、式(1):
0.05≦X・Y・Z≦5.5 (1)
の関係を満たす。
式(1)中、Xは、炭素材料のラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比[無次元量]を示す。Yは、炭素材料の比表面積[m2/g]を示す。Zは、炭素材料の細孔容積[cc/g]を示す。
炭素材料(C)の表面には、リチウムイオン(Li+)と硫黄(S)とが反応する活性点が分布していると考えられる。活性点において、放電反応「2Li++2e-+S2-→Li2S」が進行する。放電反応により、Li2Sが生成される。
D/G比が大きい炭素材料においては、エッジ面が多いため、不均一に成長したLi2Sによって、細孔の入り口が閉塞しやすい。細孔の入り口が閉塞した場合、リチウムイオンが細孔内に入り込めないと考えられる。そのため、炭素材料が細孔内に大きい表面積を有していても、反応場として利用され難いと考えられる。その結果、硫黄の利用率が低下し得ると考えられる。
D/G比が小さい炭素材料においては、エッジ面(高活性点)が少ないため、放電反応が進行し難い。そのため、炭素材料が大きい表面積を有していても、硫黄の利用率が低下し得ると考えられる。
X・Y・Zが0.05以上5.5以下であることにより、エッジ面とベーサル面との存在比が適度になり得る。これにより高活性点は減少することになる。しかしLi2Sは均一に成長し得る。その結果、炭素材料の表面のうち、有効に利用できる面積が大きくなることが期待される。
Li2Sが均一に成長することにより、細孔の閉塞が起こり難くなると考えられる。その結果、細孔内の表面も有効に利用され得ると考えられる。
図6は、本実施形態におけるリチウム硫黄電池の構成を示す概念図である。
電池100は、リチウム硫黄電池である。電池100は、正極層10、負極層20および固体電解質層30を含む。固体電解質層30は、正極層10と負極層20との間に介在している。すなわち電池100は、全固体電池でもある。電池100は、例えば「全固体リチウム硫黄電池」等と称されてもよい。
正極層10は、正極合材を含む。正極合材は、硫黄および炭素材料を含む。すなわち正極層10が、硫黄および炭素材料を含む。硫黄は正極活物質である。例えば、正極合材が集電体の表面に塗着されることにより、正極層10が形成されていてもよい。集電体は、例えばAl箔等であってもよい。例えば、正極合材がペレットに成形されることにより、正極層10が形成されていてもよい。
炭素材料は、正極層10に電子伝導性を付与する。炭素材料は、硫黄とリチウムイオンとの反応場を提供する。炭素材料は、硫黄を担持していてもよい。炭素材料は、硫黄と複合化されていてもよい。例えば、メカノミリング処理等により、炭素材料が硫黄と複合化されていてもよい。炭素材料と硫黄との質量比は、例えば「炭素材料:硫黄=1:9から9:1」であってもよい。
本実施形態の炭素材料においては、「X・Y・Z」が0.05以上5.5以下である。これにより硫黄の利用率が向上することが期待される。「X・Y・Z」は、「X(D/G比)」、「Y(比表面積)」および「Z(細孔容積)」の積である。「X・Y・Z」は、例えば0.05以上3.5以下であってもよい。これにより硫黄の利用率が向上することが期待される。「X・Y・Z」は、例えば0.05以上0.255以下であってもよい。「X・Y・Z」は、例えば0.255以上3.5以下であってもよい。
D/G比は、炭素材料のラマンスペクトルにおける、Gバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比である。炭素材料のラマンスペクトルは、レーザラマン分光光度計により取得される。Gバンドは、1580cm-1付近に現れるピークである。Dバンドは、1350cm-1付近に現れるピークである。D/G比が大きい程、高活性点が多いと考えられる。D/G比は無次元量である。炭素材料は、例えば、0.05から0.9のD/G比を有していてもよい。
比表面積は、比表面積測定装置により測定される。吸着ガスは窒素である。比表面積は、BET多点法により算出される。炭素材料は、例えば、10m2/gから80m2/gの比表面積を有していてもよい。
細孔容積は、炭素材料の全細孔容積を示す。細孔容積は、細孔分布測定装置により測定される。吸着ガスは窒素である。細孔容積は、BJH法により算出される。炭素材料は、例えば、0.05cc/gから0.125cc/g(0.05cm3/gから0.125cm3/g)の細孔容積を有していてもよい。
固体電解質層30は、固体電解質材料を含む。固体電解質層30は、実質的に固体電解質材料のみからなっていてもよい。固体電解質層30は、例えばバインダ等をさらに含んでいてもよい。
負極層20は、リチウム(Li)を含む。負極層20は、例えばLi金属(単体)、Li合金等を含んでいてもよい。負極層20は、例えば、実質的にLi金属のみからなっていてもよい。Li合金としては、例えば、リチウム-インジウム(Li-In)合金、リチウム-アルミニウム(Li-Al)合金等が考えられる。
《実施例1》
1.正極合材の調製
以下の材料が準備された。
正極活物質:硫黄
炭素材料:VGCF
固体電解質材料:Li2S-P2S5(ガラスセラミックス)
ペレット金型に正極合材が充填された。プレス成形により、正極層10が形成された。ペレット金型内において、正極層10の上に、固体電解質材料(Li2S-P2S5)が充填された。プレス成形により、固体電解質層30が形成された。さらに、固体電解質層30の上に、Li箔が圧着された。Li箔は負極層20に相当する。以上より、テストセルが製造された。本実施例におけるテストセルは、リチウム硫黄電池である。
VGCFに代えて、CNF(高温熱処理品)が炭素材料として使用されることを除いては、実施例1と同様に、テストセルが製造された。
VGCFに代えて、CNF(低温熱処理品)が炭素材料として使用されることを除いては、実施例1と同様に、テストセルが製造された。
VGCFに代えて、粒状炭素が炭素材料として使用されることを除いては、実施例1と同様に、テストセルが製造された。
VGCFに代えて、活性炭が炭素材料として使用されることを除いては、実施例1と同様に、テストセルが製造された。
VGCFに代えて、CNF(非熱処理品)が炭素材料として使用されることを除いては、実施例1と同様に、テストセルが製造された。なお「非熱処理品」は、CNFの合成後に、追加の熱処理が施されていないものを示す。
Bio-Logic社製の充放電試験装置(マルチチャンネル ポテンショ/ガルバノスタッド、モデル名「VMP3」)が準備された。1/3Cの電流レートにより、テストセルが放電された。放電終止電圧は1.5Vであった。これにより、放電容量が測定された。測定結果は、下記表1の「放電容量 at 1/3C[mAh/g-Sulfur]」の欄に示される。同欄に示される値は、テストセルの放電容量が、テストセルに含まれる硫黄の質量により除された値である。同欄に示される値が大きい程、硫黄の利用率が高いと考えられる。
図7は、本実施例における実験結果を示すグラフである。
図7は、片対数グラフである。グラフの横軸は、対数目盛を有する。図7に示されるように、「X・Y・Z」が0.05以上5.5以下である範囲において、硫黄の利用率が顕著に向上する傾向がみられる。
Claims (1)
- 正極層、負極層および固体電解質層を含み、
前記固体電解質層は、前記正極層と前記負極層との間に介在しており、
前記固体電解質層は、固体電解質材料を含み、
前記負極層は、リチウムを含み、
前記正極層は、硫黄および炭素材料を含み、
前記炭素材料は、式(1):
0.05≦X・Y・Z≦5.5 (1)
の関係を満たし、
前記式(1)中、
Xは、前記炭素材料のラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比[無次元量]を示し、
Yは、前記炭素材料の比表面積[m2/g]を示し、
Zは、前記炭素材料の細孔容積[cc/g]を示す、
リチウム硫黄電池。
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