JP7310155B2 - リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、リチウムイオン二次電池用正極合剤ペーストおよびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、リチウムイオン二次電池用正極合剤ペーストおよびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、リチウムイオン二次電池用正極合剤ペーストおよびリチウムイオン二次電池に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPCなどの小型情報端末の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電源として出力特性と充放電サイクル特性が優れた二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、非水系電解質二次電池があり、代表的な非水系電解質二次電池としてリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解質等で構成され、負極および正極の活物質には、リチウムを脱離および挿入することの可能な材料が用いられている。
このようなリチウムイオン二次電池は、現在研究、開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
これまで主に提案されている材料としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウム金属複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などを挙げることができる。
正極活物質において、電池特性(出力特性、サイクル特性など)を向上させる技術として、例えば、正極活物質に、リチウム金属複合酸化物に含まれる金属元素以外の異種元素を含む層で被覆することがいくつか提案されている。
例えば、特許文献1では、少なくとも層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用正極活物質であって、リチウム遷移金属複合酸化物は、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在し、一次粒子のアスペクト比が1~1.8であり、粒子の少なくとも表面に、モリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を有する非水電解質二次電池用正極活物質が提案されている。特許文献1によれば、一次粒子の表面にモリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を有することにより、導電性が向上するとされている。
特許文献2には、リチウムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム遷移金属系化合物を主成分とし、該主成分原料に、B及びBiから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物と、Mo、W、Nb、Ta及びReから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物をそれぞれ1種併用添加した後、焼成されてなるリチウムイオン二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体が提案されている。特許文献2によれば、添加元素を併用添加した後、焼成することにより、粒成長及び焼結の抑えられた微細な粒子からなるリチウム遷移金属系化合物粉体が得られ、レートや出力特性が改善されるとともに、取り扱いや電極調製の容易なリチウム含有遷移金属系化合物粉体を得ることができるされている。
特許文献3には、一般式LiNi1-x-yCoM1wO(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.002≦z≦0.03、0≦w≦0.02、0≦x+y≦0.7、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも一種、M2はZr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも一種)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物と、少なくともホウ素元素及び酸素元素を含むホウ素化合物とを含む非水電解液二次電池用正極組成物が提案されている。特許文献3によれば、ニッケル及びタングステンを必須とするリチウム遷移金属複合酸化物と、特定のホウ素化合物とを含む正極組成物を用いることにより、リチウム遷移金属複合酸化物を用いた正極組成物において出力特性及びサイクル特性を向上させることができるとしている。
特許文献4には、ニオブ酸リチウムを含有する被覆層によって表面の一部または全部が被覆されたリチウム-遷移金属酸化物粒子からなるリチウム-遷移金属酸化物粉末であって、炭素含有量が0.03質量%以下である、リチウム-遷移金属酸化物粉末が提案されている。特許文献4によれば、リチウム遷移金属酸化物の粒子表面の一部または全部にニオブ酸リチウムを含有する被覆層を形成することにより、圧粉体抵抗が低いリチウム遷移金属酸化物粉末が得られるとしている。
また、特許文献5には、ニオブ源となる粒子であって動的光散乱法によるモード径(最頻粒径)が5~200nmである粒子Aとリチウムイオンを含む水溶液を、リチウム二次電池用活物質に付着させ、リチウム二次電池用活物質の粒子Bの表面にニオブ酸リチウム層を形成する工程とを有する、リチウム二次電池電極材料の製造方法が記載されている。特許文献5によれば、リチウム-ニオブ溶液を用いて、活物質の粒子の表面にニオブ酸リチウム層を形成することにより、リチウム二次電池電極およびその材料において放電容量の低下を抑制しかつ生産効率を向上させられるとしている。
ところで、リチウムイオン二次電池の正極は、例えば、正極活物質と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのバインダーや、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの溶剤とを混合して正極合剤ペーストを調製し、アルミ箔などの集電体に塗布することで作製される。このとき、正極合剤ペースト中の正極活物質からリチウムが遊離した場合、バインダーなどに含まれる水分と反応し水酸化リチウムが生成することがある。この生成した水酸化リチウムとバインダーとが反応し、正極合剤ペーストがゲル化を起こすことがある。正極合剤ペーストのゲル化は、集電体への塗工性の悪化、正極製造の歩留まり悪化を招く。この傾向は、正極活物質におけるリチウムが化学量論比よりも過剰で、且つニッケルの割合が高い場合に顕著となる。
そこで、正極合剤ペーストのゲル化を抑制する試みがいくつかなされている。例えば、特許文献6には、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質と、酸性酸化物粒子からなる添加粒子とを含む非水電解液二次電池用正極組成物が提案されている。この正極組成物は、バインダーに含まれる水分と反応して生成した水酸化リチウムが酸性酸化物と優先的に反応し、生成した水酸化リチウムとバインダーとの反応を抑制し、正極合剤ペーストのゲル化を抑制するとしている。また、酸性酸化物は、正極内で導電剤としての役割を果たし、正極全体の抵抗を下げ、電池の出力特性向上に寄与するとしている。
また、特許文献7では、リチウムイオン二次電池の製造方法について述べられており、正極活物質として、組成外にLiOHを含むリチウム遷移金属酸化物を用意すること;正極活物質1g当たりに含まれるLiOHのモル量Pを把握すること;LiOHのモル量Pに対して、LiOH1モル当たり、タングステン原子換算で0.05モル以上の酸化タングステンを用意すること;および、正極活物質と酸化タングステンとを、導電剤および結着剤とともに有機溶媒で混練して正極ペーストを調製することを包含する、リチウムイオン二次電池製造方法が提案されている。
特開2005-251716号公報 特開2011-108554号公報 特開2013-239434号公報 特開2012-074240号公報 特開2018-067474号公報 特開2012-028313号公報 特開2013-084395号公報
上記特許文献1~5では、いずれも出力特性などの電池特性が改善されるとされているが、電極作製時の正極合剤ペーストのゲル化の問題が生じることがあり、出力特性や電池容量などの電池特性の改善とともに、ゲル化を抑制するさらなる改善が望まれている。
例えば、上記特許文献4、5では、ニオブ酸リチウムを含有する被覆層を有する正極活物質が開示されているが、正極を作製する際における、正極合剤ペーストのゲル化抑制の効果については、一切、記載されていない。
また、上記特許文献6の方法では、電池中に酸性酸化物の粒子が残留することによってセパレータの破損、及び、それに伴う熱安定性の低下のおそれがあり、正極組成物はゲル化抑制が十分であるとはいえない。さらに、上記正極組成物への酸性酸化物の添加量を増やすことでゲル化の抑制を向上させることができるが、酸性酸化物を添加することにより、正極の重量が増加し、単位質量当たりの電池容量が劣化したり、原料費が増えたりする。
また、上記特許文献7の方法においても、酸性酸化物の残留によるセパレータの破損のおそれ、さらには、ゲル化の抑制に関する問題点が解消されているとはいえない。また、充放電に寄与しない重元素であるタングステンを添加することにより、重量当たりの電池容量低下が大きいという問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みて、正極を作製する際に、正極合剤ペーストのゲル化が抑制され、かつ、優れた電池特性(高い電池容量、高い充放電効率、低い正極抵抗)を有する二次電池を得ることができる正極活物質を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の正極活物質を用いた正極合剤ペースト、及び、リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の正極活物質を簡便に生産性高く製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様では、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、任意にコバルト(Co)、マンガン(Mn)及び元素Mと、を含むリチウム金属複合酸化物と、リチウム及びニオブ(Nb)を含む化合物と、を含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、正極活物質に含まれるニオブ以外の各元素の物質量の比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=s:(1-x-y-z):x:y:z(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、0.95<s<1.30、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、W、ZrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、リチウム金属複合酸化物は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子を含み、一次粒子の表面の少なくとも一部がリチウム及びニオブを含む化合物で被覆され、中和滴定法によって測定される、正極活物質を水に分散させたときに溶出する水酸化リチウム量が、正極活物質全体に対して、0.003質量%以上0.15質量%以下である、リチウムイオン二次電池用正極活物質が提供される。
また、リチウム及びニオブを含む化合物に含まれるニオブの量は、正極活物質中のNi、Co、MnおよびMの合計に対して0.5mol%以上2mol%以下であるのが好ましい。また、リチウム及びニオブを含む化合物は、少なくともニオブ酸リチウムを含むのが好ましい。また、ニオブ酸リチウムは、LiNbO、LiNbO、LiNb及びLiNbのうちの少なくとも一つを含むのが好ましい。また、リチウム及びニオブを含む化合物は、非晶質であるのが好ましい。
本発明の第2の態様では、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、任意にコバルト(Co)、マンガン(Mn)及び元素Mと、を含むリチウム金属複合酸化物の粉末と、リチウムを含まず、リチウムと反応可能なニオブ化合物と、を混合して混合物を得ることと、混合物を熱処理することを備え、リチウム金属複合酸化物の粉末は、各元素の物質量の比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=s:(1-x-y-z):x:y:z(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、0.95<s<1.30、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、W、ZrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される層状の結晶構造を有し、かつ、一次粒子および一次粒子が凝集して形成された二次粒子を含み、ニオブ化合物の混合量は、中和滴定法によって測定される、正極活物質を水に分散させたときに溶出する水酸化リチウム量が、正極活物質全体に対して、0.003質量%以上0.15質量%以下となる量とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
また、混合物を得た後、熱処理をする前に、ニオブ化合物を溶解可能な溶媒を、リチウム金属複合酸化物の粉末に対して1質量%以上40質量%以下の範囲で混合すること、を備えることが好ましい。
また、熱処理は、熱処理温度が80℃以上450℃以下であることが好ましい。また、熱処理は、熱処理温度が80℃以上300℃以下である第1の熱処理と、第1の熱処理の温度よりも高い温度で熱処理する第2の熱処理とを含んでもよい。また、熱処理は、第2の熱処理の温度よりも高い温度で熱処理する第3の熱処理を含んでもよい。また、熱処理における最高温度が300℃以上450℃以下であってもよい。
また、正極活物質は、一次粒子表面が、リチウム及びニオブを含む化合物で被覆されることが好ましい。また、ニオブ化合物は、酸化ニオブの粉末、及び、酸化ニオブを含むゾルのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。また、ニオブ化合物は、二次粒子径が20nm以下であることが好ましい。また、ニオブ化合物に含まれるニオブの量は、リチウム金属複合酸化物粉末中のNi、Co、MnおよびMの合計量に対して0.5mol%以上2.0mol%以下であることが好ましい。
本発明の第3の態様では、第1の態様のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用正極合剤ペーストが提供される。
本発明の第4の態様では、第1の態様のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン二次電池が提供される。
本発明によれば、二次電池に用いた際に高い電池容量、及び、高い充放電効率を有し、かつ、正極を作製する際の正極合剤ペーストのゲル化が抑制された正極活物質を提供することができる。さらに、その製造方法は、容易で工業的規模での生産に適したものであり、その工業的価値は極めて大きい。
図1(A)は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の一例を示す図であり、図1(B)は、リチウム及びニオブを含む化合物の形成過程の一例を示す図である。 図2(A)、図2(B)は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。 図3は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。 図4は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。 図5は、インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。 図6は、電池評価に使用したコイン型電池の概略断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、リチウムイオン二次電池用正極合剤ペーストおよびリチウムイオン二次電池について説明する。なお、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
1.正極活物質
[正極活物質の形態]
まず、本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)について、図1(A)及び図1(B)を参照して説明する。図1(A)は、本実施形態に係る正極活物質の一例を模式的に示す図であり、図1(B)は、本実施形態に係るリチウム及びニオブを含む化合物の形成過程の一例を模式的に示す図である。
図1(A)に示すように、正極活物質20は、リチウムとニッケルとを少なくとも含むリチウム金属複合酸化物10と、リチウム及びニオブを含む化合物3(以下、「LiNb化合物3」ともいう。)と、を含む。リチウム金属複合酸化物10は、一次粒子1が凝集して形成された二次粒子2を含み、一次粒子1の表面の少なくとも一部がLiNb化合物3で被覆される。
リチウム金属複合酸化物10は、例えば、ニッケル複合水酸化物、又は、ニッケル複合水酸化物を酸化焙焼して得られたニッケル複合酸化物と、リチウム化合物と、を焼成して得られる。得られたリチウム金属複合酸化物10の二次粒子2や一次粒子1の表面には、主に原料由来の未反応のリチウム化合物が存在している。未反応のリチウム化合物は、正極合剤ペースト中に溶出して、バインダーや有機溶媒と反応し、正極合剤ペーストをゲル化させることがある。また、リチウム金属複合酸化物10(結晶構造)中に存在する過剰のリチウムが正極合剤ペースト中に溶出して、正極合剤ペーストをゲル化させる場合もある。本発明者らは、これらの未反応のリチウムや、複合酸化物(結晶構造)中から溶出するリチウム(余剰リチウム)の中でも、特に、正極活物質を溶媒に分散させたときに水酸化リチウム(LiOH)として溶出するリチウム(余剰水酸化リチウム)が、正極合剤ペーストのゲル化の一因となることを見出し、正極合剤ペーストのゲル化を抑制するためには、正極合剤ペースト中への水酸化リチウムの溶出量を制御することが重要であることに着目した。
本実施形態に係る正極活物質20は、図1(B)に示されるように、一次粒子1の表面に存在する余剰水酸化リチウムを含む余剰リチウムの少なくとも一部を、後述するニオブ化合物と反応させ、LiNb化合物3として一次粒子1の表面に固定化している。これにより、一次粒子1の表面の少なくとも一部をLiNb化合物3で被覆するとともに、ペースト中への余剰水酸化リチウムの溶出量を特定の範囲に制御して、正極合剤ペーストのゲル化を抑制できると考えられる。
リチウム金属複合酸化物10の一次粒子1の表面がLiNb化合物3で被覆された正極活物質20では、LiNb化合物3が保護膜として機能し、正極において、リチウム金属複合酸化物10の劣化を抑制して、二次電池の充放電効率を向上させる。また、適切な工程で形成されたLiNb化合物3は、リチウムイオン伝導性が高く、二次電池の充放電の際のリチウムイオンの移動を促す効果がある。よって、LiNb化合物3が、正極活物質20と電解液との界面でLiの伝導パスを形成することにより、二次電池の正極抵抗の大幅な上昇を抑制できる。
ここで、リチウム金属複合酸化物10の一次粒子1の表面とは、図1(A)に示されるように、二次粒子2の外面(表面)に露出している一次粒子1(例、図1(A)の1a)の表面部分だけでなく、二次粒子2の外部と通じて電解液が浸透可能な二次粒子2の表面近傍、及び、内部の空隙に露出している一次粒子1(例、図1(A)の1b)の表面を含む。さらに、一次粒子1間の粒界であっても一次粒子1の結合が不完全で電解液が浸透可能な状態となっていれば含まれる。すなわち、余剰リチウム(余剰水酸化リチウムを含む)の溶出は、電解液との接触面で生じるため、電解液との接触面(すなわち、一次粒子1の表面)において、余剰リチウムと、ニオブ化合物とを反応させて、LiNb化合物3を形成させることにより、余剰リチウム(余剰水酸化リチウムを含む)の溶出を抑制できる。
また、LiNb化合物3は、電解液と接触する一次粒子1の表面全体に形成されてもよく、一次粒子1の表面に部分的に形成されてもよい。LiNb化合物3が一次粒子1の表面において部分的に形成された場合でも、正極合剤ペーストのゲル化抑制の効果は得られる。
二次粒子2の表面に露出する一次粒子1の表面のLiNb化合物3の存在は、例えば、X線光電子分光分析(XPS)などにより確認することができる。また、二次粒子2の内部の一次粒子1の表面のニオブ(Nb)の存在は、例えば、走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope;STEM)に取り付けたエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy;EDS)などにより確認することができる。
なお、正極活物質20において、二次粒子2の内部に存在する微量のニオブの存在形態を、直接確認することは困難であるが、(i)ニオブと化合物を形成する元素としては、リチウムが考えられること、及び、(ii)二次粒子2の表面に露出する一次粒子1の表面においては、ニオブの少なくとも一部は、LiNb化合物3の形態で存在することを考慮すると、二次粒子2の内部の一次粒子1の表面においても、LiNb化合物3(例えば、ニオブ酸リチウム)を形成しているものと推定される。
また、正極活物質20は、一次粒子1の表面にLiNb化合物3が形成されていればよく、一次粒子1の内部には、Nbが存在してもよいし、Nbが存在しなくてもよい。また、一次粒子1の内部にNbが存在する場合、一次粒子1の表面から内部にかけてNbの濃度に、濃度勾配があってもよい。一次粒子1の表面にLiNb化合物3が形成され、かつ、一次粒子1の内部に含まれるNbの量が少ない場合、リチウム金属複合酸化物10が本来有する高い電池容量を維持しつつ、正極合剤ペーストのゲル化を抑制することができる。
[正極活物質から溶出する水酸化リチウム量]
正極活物質20は、正極活物質20を水に分散させたときに溶出する水酸化リチウム(LiOH)量(「溶出する水酸化リチウム量」と略す場合もある。)が、正極活物質20全体に対して、0.15質量%以下、好ましくは0.003質量%以上0.15質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上0.13質量%以下である。溶出する水酸化リチウム量(余剰水酸化リチウム量)が上記範囲である場合、正極合剤ペーストのゲル化が非常に抑制され、電池特性に優れた二次電池を得ることができる。なお、溶出する水酸化リチウム量は、中和滴定により測定され、得られる正極活物質20を水に分散させたときに、正極活物質20から溶出するリチウム化合物(ただし、炭酸塩に由来するリチウム化合物を除く)のうち、中和滴定により、第一中和点までに用いた酸の量から算出されるLi量をいう。
また、溶出する水酸化リチウム量が0.15質量%を超える場合、正極を作製する際に溶出する水酸化リチウムが多い状態となり、正極合剤ペーストのゲル化を抑制することが難しい。一方、溶出する水酸化リチウム量が0.003質量%未満である場合、ニオブ化合物が過剰にリチウム金属複合酸化物10からリチウムを引き抜きながらLiNb化合物3を生成していると考えられ、電池特性が悪化することがある。なお、溶出する水酸化リチウム量の下限は、電池特性の向上という観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。
溶出する水酸化リチウム量は、正極活物質2gを125mLの純水と混合し1分間撹拌して分散させた後、10質量%塩化バリウム溶液を5mL加え、1.0mol/Lの塩酸を用いて中和滴定した時の、第一中和点までの塩酸量から求めることができる。溶出する水酸化リチウム量を測定することにより、ペースト中への水酸化リチウムの溶出の度合い(程度)について評価することができる。
[リチウム及びニオブを含む化合物]
本実施形態のリチウム金属複合酸化物10は、一次粒子1表面上にLiNb化合物3が形成させている。LiNb化合物3は、Li原子及びNb原子を含有する化合物であり、少なくともニオブ酸リチウムを含むことが好ましい。ニオブ酸リチウムとしては、例えば、LiNbO、LiNbO、LiNb及びLiNbのうちの少なくとも一つを含むのが好ましい。また、LiNb化合物3は、非晶質(アモルファス)であってもよいし、結晶構造を有してもよい。LiNb化合物3が非晶質である場合、リチウムイオン伝導性が向上し、二次電池における正極抵抗を低減することができる。
[リチウム金属複合酸化物の組成]
また、リチウム金属複合酸化物10は、層状構造の結晶構造を有し、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、任意にコバルト(Co)、マンガン(Mn)及び元素Mと、を含む。また、正極活物質全体における、ニオブ以外の各元素の物質量の比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=s:(1-x-y-z):x:y:z(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、0.95<s<1.30、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、W、ZrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される。リチウム金属複合酸化物10中のNi、Co、MnおよびMの組成は、上記範囲内で、公知のリチウム金属複合酸化物の組成を用いることができ、二次電池に要求される特性に応じて適宜、組成を選択することができる。
上記モル比において、Liの含有量を示すsは、0.95を超え1.30未満であり、1.0以上1.10以下であってもよく、1.0を超え1.10以下であってもよい。sの値が小さすぎる場合、リチウム金属複合酸化物10の粒子の結晶内でリチウムが占めるべき部位が他の元素で占められ、二次電池における充放電容量が低下することがある。一方、sの値が1.3以上である場合、充放電に寄与しない余剰のリチウム化合物が存在して、正極抵抗(反応抵抗)が増大したり、電池容量が低下したりすることがある。
上記モル比において、ニッケル(Ni)の含有量を示す(1-x-y-z)は、0.2以上1.0以下であり、0.3以上1.0以下であってもよい。また、高い電池容量の観点から、(1-x-y-z)は、0.55以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。ニッケルの含有量が(1-x-y)が0.55を超える場合、高い電池容量を有することができる。
ニッケル(Ni)を多く含むリチウムニッケル複合酸化物は、電極作製時に正極合剤ペーストの粘度が上昇して、ゲル化が生じやすい傾向がある。しかし、本実施形態に係る正極活物質20では、ニッケル量を上記範囲とした場合においても、リチウム金属複合酸化物10の一次粒子1の表面をLiNb化合物3で被覆することにより、正極合剤ペーストの粘度上昇を抑制することができる。
上記モル比において、コバルト(Co)の含有量を示すxは、0≦x≦0.35であり、0.05≦x≦0.35であってもよく、0.1≦x≦0.3であってもよい。コバルトを上記範囲内で含む場合、高い電池容量を有し、かつ、サイクル特性に優れる。
上記モル比において、マンガン(Mn)の含有量を示すyは、0≦y≦0.35であり、0≦y≦0.10であってもよい。マンガンを上記範囲で含む場合、熱安定性に優れる。
上記モル比において、元素Mの含有量を示すzは、例えば、0≦z≦0.10である。Mは、要求される特性に応じて複数の元素から選択できる。また、Mは、Alを含むことが好ましい。MがAlを含み、上記モル比における、Alの含有量をz1、Al以外のMの含有量をz2(ただし、z1+z2=z)とする場合、z1の値は、好ましくは0.01以上0.1以下である。また、y2の値は、0以上0.1以下であってもよく、0であってもよい。なお、正極活物質20は、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記Ni、Co、Mn、及び、元素M以外の元素を少量含んでもよい。
なお、リチウム金属複合酸化物10は、一般式:LiNi1-x-y-zCoMn2+α(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、0.95<s<1.30、0≦α≦0.2、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、W、ZrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されてもよい。また、正極活物質全体における、ニオブ以外の各金属元素の組成比は、上記の範囲と同様である。なお、上記一般式中、αは、リチウム金属複合酸化物に含まれるリチウム以外の金属元素の価数、及びリチウム以外の金属元素に対するリチウムの原子数比に応じて変化する係数である。
[ニオブの含有量]
また、LiNb化合物3に含まれるニオブの量は、リチウム金属複合酸化物10中のNi、Co、MnおよびMの合計に対して0.5mol%以上2.0mol%以下であることが好ましい。また、LiNb化合物3に含まれるニオブの量は、電池特性をより向上させ、かつ、ゲル化を抑制するという観点から、0.6mol%以上1.8mol%以下であることがより好ましい。
[体積平均粒径Mv]
正極活物質20の体積平均粒径Mvは、例えば、5μm以上30μm以下であり、好ましくは5μm以上20μm以下である。体積平均粒径Mvが5μm未満である場合、正極活物質20の比表面積が増加することで二次電池にした際に高い出力は得られるが、正極の充填密度が低下して容積あたりの充放電容量が低下するとともに、電極ペーストを調製する際に導電剤と正極活物質の分散性が悪化することがある。また、電極内で個々の正極活物質粒子に印加される電圧が不均一となることで、高電圧が加えられた粒子は充放電を繰り返すと劣化していき、二次電池の充放電容量が低下する。逆に、体積平均粒径Mvが30μmを超える場合、正極活物質の比表面積が低下して、電解液との界面が減少することによりリチウムイオンが出入りする経路が少なくなるため、正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下することがある。なお、体積平均粒径Mvは、レーザー回折散乱法により測定される値である。
[粒度分布の広がり]
粒度分布の広がりを示す指標である[(d90-d10)/体積平均粒径Mv]は、特に限定されないが、高い充填性を有するという観点から、0.70以上であることが好ましく、0.70以上1.2以下であることがより好ましい。後述する正極活物質20の製造方法を用いることにより、正極活物質20の粒度分布の広がりが比較的大きい場合においても、LiNb化合物3を一次粒子1の表面に均一に被覆することができる。
なお、d10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を意味し、d90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味する。また、d10およびd90は、平均粒径と同様に、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
[一次粒子の平均粒径]
一次粒子1の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.2μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.7μm以下であることがより好ましい。これにより、二次電池の正極に用いた際のより高い出力特性と電池容量、さらに高いサイクル特性を得ることができる。一次粒子1の平均粒径が0.2μm未満である場合、焼成が不十分である場合があり、十分な電池性能が得られないことがある。また、一次粒子1の平均粒径が0.7μmを超える場合、高い出力特性や高いサイクル特性が得られないことがある。
なお、正極活物質20は、二次粒子2が、粒内に中空部を形成した中空構造を有してもよい。二次粒子2が中空構造を有する場合、二次粒子2の粒内への電解質の侵入がさらに容易となり、高い出力特性がさらに容易に得られる。なお、中空部は、一つでもよく、複数あってもよい。また、正極活物質20は、二次粒子2の粒内に多数の空隙を有する多孔質構造であってもよい。
なお、リチウム金属複合酸化物10は、複数の一次粒子1が凝集して形成される二次粒子2を含むが、リチウム金属複合酸化物10は、例えば、二次粒子2として凝集しなかった一次粒子1や、凝集後に二次粒子2から脱落した一次粒子1など少量の単独の一次粒子1を含んでもよい。また、正極活物質20は、本発明の効果を阻害しない範囲で上述したリチウム金属複合酸化物10以外のリチウム金属複合酸化物を含んでもよい。
なお、正極活物質20の製造方法は、上記特性を有する正極活物質20が得られる方法であれば、特に限定されないが、後述する正極活物質の製造方法を用いることが好ましい。
2.正極活物質の製造方法
次に、図2(A)を参照して、本実施形態に係る正極活物質の製造方法について説明する。図2(A)は、本実施形態に係る正極活物質の製造方法の一例を示した図である。前述した正極活物質20は、図2(A)に示すような正極活物質の製造方法により、工業的規模で、容易に生産性高く製造することができる。
正極活物質20の製造方法は、図2(A)に示すように、層状の結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物の粉末と、リチウムを含まず、リチウムと反応可能なニオブ化合物(Nbを含む化合物)とを混合すること(ステップS10)と、混合して得られた混合物を熱処理(乾燥)すること(ステップS20)と、を備える。以下、各ステップについて説明する。
[ステップS10(混合工程)]
まず、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)と、リチウムを含まず、リチウムと反応可能なニオブ化合物と、を混合して混合物を得る(ステップS10)。
この際、ニオブ化合物の混合量は、上記した中和滴定法によって測定される、得られる正極活物質20を水に分散させたときに溶出する水酸化リチウム量が、正極活物質20全体に対して、0.15質量%以下、好ましくは0.003質量%以上0.15質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上0.13質量%以下となる量とする。また、ニオブ化合物の混合量は、電池特性の向上という観点から、溶出する水酸化リチウム量の下限が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上となる量に調整してもよい。
上記水酸化リチウム(LiOH)量は、上述したように、得られる正極活物質20を水に分散させたときに、正極活物質20から溶出するリチウム化合物(ただし、炭酸塩に由来するリチウム化合物を除く)のうち、中和滴定により、第一中和点までに用いた酸の量から算出されるLi量をいう。水酸化リチウム量は、例えば、正極活物質2gを125mlの純水と混合し1分間撹拌して分散させた後、10質量%塩化バリウム溶液を5ml加え、1.0mol/リットルの塩酸を用いて中和滴定した後、第一中和点までに用いた塩酸の量から算出することができる。
ニオブ化合物は、リチウムを含まず、リチウムと反応可能な化合物であれば、限定されない。ニオブ化合物としては、ニオブ酸、酸化ニオブ、硝酸ニオブ、五塩化ニオブ、硝酸ニオブなどが挙げられ、これらの中でも酸化ニオブが好ましい。なお、ニオブ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ニオブ化合物は、粉末、水溶液(分散媒)にニオブ化合物を分散させたゾル(コロイド溶液)、ニオブ化合物を溶解した水溶液、又は、これらの混合物などであってもよいが、分散性の向上の観点から、粉末、及び、ゾルのうち少なくとも一方であることが好ましく、ゾルであることがより好ましい。
ニオブ化合物は、一次粒子、及び、複数の一次粒子を含む二次粒子の少なくとも一方から構成されてもよい。ニオブ化合物の体積平均粒径Mv(二次粒子径)は、特に限定されないが、ニオブ化合物の分散性の向上の観点から、1μm以下であってもよく、100nm以下であってもよく、好ましくは20nm以下である。なお、ニオブ化合物の体積平均粒径Mv(二次粒子径)の下限は、特に限定されず、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。また、ニオブ化合物の一次粒子径は、5nm以下であってもよい。
ニオブ化合物として、例えば、体積平均粒径Mv(二次粒子径)が20nm以下の酸化ニオブゾルを用いた場合、その一次粒子径が数nmと微細であり、かつ、分散媒中に酸化ニオブが分散して存在しているため、リチウムとの反応性に非常に優れ、正極活物質20の表面により均一なLiNb化合物3を形成することができる。
なお、酸化ニオブゾルの分散媒は、特に限定されず、公知の水溶液を用いることができるが、好ましくはアンモニアを含む水溶液である。
混合工程(ステップS10)では、正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量が前記範囲となるようにニオブの添加量を調節して混合する。酸化ニオブゾル等のニオブ化合物は、中和反応を経て水和物としてLiNb化合物3を形成し、後の熱処理(乾燥)工程(ステップS20)で水分が蒸発し、無水のLiNb化合物3を形成する。このLiNb化合物3の作用により、正極合剤ペースト中へのリチウムの溶出を抑制されると考えられる。
なお、正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量は、リチウム金属複合酸化物10におけるNi、Co、MnおよびMの合計に対するLiの原子数比(Li/Me)、あるいは該粉末の製造条件によって変動する。よって、ニオブ等のニオブ化合物の添加量は、余剰リチウムとLiNb化合物3を形成して、正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量を前記範囲に制御できる量を添加すればよい。
ニオブ化合物の混合量は、上述のように、正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量に応じて適宜調整される量であるが、ニオブ化合物に含まれるニオブの量は、例えば、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)中のNi、Co、MnおよびMの合計に対して0.5mol%以上2.0mol%以下、好ましくは0.6mol%以上1.8mol%以下である。これにより、LiNb化合物3の形成される量を好適な範囲とし、正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量を特定の範囲に制御するとともに、電池容量などの電池特性を良好なものとすることができる。なお、本実施形態に係る製造方法においては、Ni、Co、MnおよびMの合計に対するニオブの量は、得られる正極活物質20中においても維持される。
チウム金属複合酸化物の粉末(母材)の粉体特性や粒子構造は、正極活物質20まで継承されるため、粉末の組成、粉体特性及び粒子構造などは、LiNb化合物3を含まないこと以外については、上述した正極活物質と同様のものとすることができる。また、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)は、得ようとする正極活物質に合わせて選択される。
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)は、例えば、各元素の物質量の比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=s:(1-x-y-z):x:y:z(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、0.95<s<1.30、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、W、ZrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、層状の結晶構造を有する。また、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子を含む。
なお、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)の製造方法は、特に限定されず、例えば、晶析法によって得られたニッケル複合水酸化物、又は、該ニッケル複合水酸化物を焙焼して得られたニッケル複合酸化物と、リチウム化合物と、を混合した後、焼成して製造してもよい。ニッケル複合水酸化物の製造方法としては、バッチ法または連続法のいずれも適用可能である。コストの観点、及び、より広い粒度分布を有するニッケル複合水酸化物を得るという観点から、反応容器からオーバーフローしたニッケル複合水酸化物粒子を連続的に回収する連続法がより好ましい。
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に含まれる正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量は、好ましくは0.05質量%以上1.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上0.7質量%以下である。リチウム金属複合酸化物粉末の正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量が上記範囲である場合、添加したニオブ化合物と反応して形成されるLiNb化合物3を好適な量とすることができ、正極合剤ペーストのゲル化抑制と、電池特性(電池容量、出力特性等)とを高いレベルで両立させることができる。
正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量は、前記と同様に、リチウム金属複合酸化物粉末を水に分散させたときに溶出する水酸化リチウム量を、酸による中和滴定により測定することで求めることができる。
一方、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)から溶出する水酸化リチウム量が0.05質量%未満である場合、形成されるLiNb化合物3が不足して、電池特性が低下することがある。また、正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量が1.0質量%を超える場合、ニオブ化合物と反応しても、残留する余剰水酸化リチウム量が多くなり、正極を製造した際に正極合剤ペーストのゲル化が発生することがある。
また、熱処理(ステップS20)後に得られる正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量は、リチウム金属複合酸化物の母材(母材)から溶出する水酸化リチウム量よりも少ないことが好ましく、例えば、リチウム金属複合酸化物の母材(母材)から溶出する水酸化リチウム量よりも、0.05質量%以上少なくてもよく、0.1質量%以上少なくてもよい。正極活物質20から溶出する水酸化リチウム量が、母材から溶出する水酸化リチウム量よりも少ない場合、LiNb化合物3が一次粒子1の表面に好適に形成されることを示す。
[ステップS11]
また、図2(B)に示すように、上記の混合物を得た後、後述する熱処理(ステップS20)をする前に、ニオブ化合物を溶解可能な溶媒を、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に対して1質量%以上40質量%以下の範囲で、混合物に混合すること(ステップS11)、を備えてもよい。ステップS11を備える場合、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)の表面により均一にニオブ化合物を分散させることができる。
ニオブ化合物を溶解可能な溶媒としては、特に限定されず、公知の溶媒を用いることができるが、不純物を低減する観点から、水を用いることが好ましい。
ニオブ化合物を溶解可能な溶媒の混合量は、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に対して1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であってもよい。ニオブ化合物を溶解可能な溶媒の混合量は、リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)の構造等により、適宜、調整することができる。
[ステップS20(熱処理工程)]
次いで、混合して得られた混合物を熱処理(乾燥)する(ステップS20)。このステップは、ニオブ化合物とリチウム金属複合酸化物の粉末とを混合した混合物を乾燥させ、この混合物中の水に溶解している余剰リチウムおよびリチウム金属複合酸化物の粒子中の過剰なリチウムと、ニオブ化合物とを反応させて、一次粒子1の表面にLiNb化合物3を形成させる工程である。
熱処理温度は、450℃以下とすることが好ましく、80℃以上450℃以下であってもよい。熱処理温度が450℃を超える場合、生成したLiNb化合物3が分解する、又は、ニオブ(Nb)がリチウム金属複合酸化物の粒子内部に拡散し、LiNb化合物3が減少することがある。また、熱処理温度が低すぎる場合、高いリチウムイオン伝導度を有するLiNb化合物3が十分に形成されず、電池特性が向上しないことがある。
得られた混合物を十分に乾燥させ、リチウム金属複合酸化物からのリチウムの遊離を防止するという観点から、熱処理温度は100℃以上450℃以下とすることが好ましく、100℃以上300℃以下としてもよい。
また、熱処理工程(ステップS20)全体における熱処理時間は、特に限定されないが、例えば、1時間以上24時間以下である。
また、熱処理時の雰囲気は、雰囲気中の水分や炭酸とリチウム金属複合酸化物粒子の表面のリチウムの反応を避けるため、脱炭酸雰囲気、不活性雰囲気、または、真空雰囲気とすることが好ましい。また、200℃以上で熱処理する場合は、酸素雰囲気下としてもよい。さらに、熱処理時の雰囲気の圧力は1気圧以下とすることが好ましい。1気圧よりも気圧が高い場合には、正極活物質の水の含有量が十分に下がらない恐れがある。
熱処理後のリチウム金属複合酸化物粒子の水分率はとくに限定されないが、0.2質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。なお、水分率の下限は、例えば、0質量%以上であり、0.01質量%以上であってもよい。粉末の水分率が0.2質量%を超えると、大気中の炭素、硫黄を含むガス成分を吸収して表面にリチウム化合物を生成することがある。なお、前記水分率の測定値は、気化温度300℃の条件においてカールフィッシャー水分計で測定した場合の測定値である。
また、熱処理工程(ステップS20)は、異なる複数の温度で処理してもよい。熱処理(ステップS20)は、例えば、図3に示すように、第1の熱処理(ステップS21)と、第1の熱処理温度よりも高い温度で熱処理する第2の熱処理(ステップS22)とを含んでもよい。また、例えば、図4に示すように、第2の熱処理温度よりも高い温度で熱処理する第3の熱処理(ステップS23)を含んでもよい。以下、各工程について、説明する。
[第1の熱処理工程(ステップS21)]
第1の熱処理工程(ステップS21)は、混合物を乾燥させて、混合物中の水分の少なくとも一部を除去する工程である。混合物に水分が多く含まれる状態で、高温で熱処理した場合、リチウム金属複合酸化物(母材)の凝集や分解が生じやすくなる。そこで、段階的に温度を上げて、水分の大部分を除去した後、より高い温度で熱処理することにより、リチウム金属複合酸化物(母材)の表面にLiNb化合物3を確実に形成することができる。
第1の熱処理工程(ステップS21)における熱処理条件は、混合物中の水分の少なくとも一部が除去される条件であればよく、熱処理温度が80℃以上300℃以下であることが好ましく、80℃以上200℃以下であってもよく、80℃以上150℃以下であってもよい。
[第2の熱処理工程(ステップS22)]
第2の熱処理工程(ステップS22)は、混合物を、第1の熱処理工程(ステップS21)よりも高い温度で熱処理する工程である。ステップS22を備える場合、リチウム金属複合酸化物(母材)の表面での(Li)とニオブ(Nb)の反応を促進して、高いリチウムイオン伝導度を有するLiNb化合物3を形成することができる。
第2の熱処理工程(ステップS22)における熱処理温度は、第1の熱処理工程(ステップS21)よりも高い温度、かつ、450℃以下であればよい。例えば、後述するように、第3の熱処理工程(ステップS23)をさらに備える場合、第2の熱処理工程(ステップS22)の熱処理温度は、100℃以上300℃であってもよく、150℃以上250℃以下であってもよい。また、熱処理の時間は、特に限定されないが、例えば、1時間以上12時間以下である。
[第3の熱処理工程(ステップS23)]
第3の熱処理工程(ステップS23)は、混合物を、第2の熱処理工程(ステップS22)よりも高い温度で熱処理する工程である。ステップS23を備える場合、リチウム金属複合酸化物(母材)の表面での(Li)とニオブ(Nb)の反応をより促進して、高いリチウムイオン伝導度を有するLiNb化合物3をより確実に形成することができる。
第3の熱処理工程(ステップS23)における熱処理温度は、第2の熱処理工程(ステップS22)よりも高い温度、かつ、450℃以下であればよく、200℃以上450℃以下が好ましく、200℃以上350℃以下がより好ましい。また、熱処理の時間は、特に限定されないが、例えば、1時間以上12時間以下である。
また、熱処理工程(ステップS20)全体において、熱処理の最高温度は、例えば、100℃以上450℃以下であってもよく、150℃以上450℃以下であってもよく、200℃以上450℃以下であってもよく、300℃以上450℃以下であってもよい。上記温度範囲において、熱処理の最高温度が高いほど、形成されるLiNb化合物3のリチウムイオン伝導度が向上する傾向がある。
なお、熱処理工程(ステップS20)は、単一の温度で熱処理してもよく、上記のように複数の温度で熱処理してもよい。また、複数の温度で熱処理する場合、上記以外のパターンで熱処理してもよい。
[非水系二次電池用正極合剤ペースト]
次に、本発明に係る非水系二次電池用正極合剤ペースト(以下、「正極合剤ペースト」ともいう。)の製造方法について説明する。本実施形態の正極合剤ペースト中では、正極活物質からのリチウムの溶出が低減され、ペーストのゲル化が抑制される。したって、長期間の保存でもペーストの粘度変化が少なく、高い安定性を有するペーストとなっている。このようなペーストを用いて正極を製造することで、正極も安定して優れた特性を有するものとなり、最終的に得られる電池の特性を安定して高いものとすることができる。
正極合剤ペーストは、正極活物質を含む。正極合剤ペーストの構成材料は特に限定されず、公知の正極合剤ペーストと同等なものを用いることができる。正極合剤ペーストは、例えば、正極活物質、導電剤及びバインダーを含む。正極合剤ペーストは、さらに溶剤を含んでもよい。正極合剤ペーストは、溶剤を除いた正極合剤の固形分の全質量を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60~95質量部とし、導電剤の含有量を1~20質量部とし、結着剤の含有量を1~20質量部とすることが好ましい。
導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
バインダー(結着剤)は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
なお、必要に応じ、正極活物質、導電剤、活性炭を分散させ、バインダー(結着剤)を溶解する溶剤を正極合剤に添加してもよい。溶剤としては、具体的には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機溶媒を用いることができる。また、正極合剤には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。正極合剤ペーストは、粉末状の正極活物質、導電剤、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合剤ペーストを作製できる。
正極合剤ペーストの76時間保管前後の粘度比(76時間保管後のペースト粘度/作製直後のペースト粘度)は、リチウム金属複合酸化物粉末として用いるリチウム金属複合酸化物の特性等により変化するため、特に限定されないが、例えば、0.5以上2.3以下とすることができ、好ましくは0.5以上1.9以下、より好ましくは0.5以上1.5以下とすることができる。76時間保管前後の粘度比は、正極活物質25.0gと、導電剤のカーボン粉1.5gと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)2.9gとを遊星運動混練機により混合し正極合剤ペーストを得た後、得られたペーストを大気雰囲気中で76時間保管して、保管前後の粘度比(76時間保管後のペースト粘度/作製直後のペースト粘度)を測定することにより評価できる。粘度は、例えば、振動式粘度計(セコニック社製VM10A)にて測定することができる。
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、上述した正極活物質20を含む正極と、負極と、電解質とを備える。リチウムイオン二次電池は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素により構成されることができ、例えば、正極、負極、及び、非水系電解液を備えた非水電解液二次電池であってもよい。また、二次電池は、例えば、正極、負極、及び、固体電解質を備えた全固体二次電池であってもよい。以下、各構成要素について、説明する。
なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良した形態で実施することができる。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(正極)
正極活物質20を含む正極合剤ペーストを用いて、例えば、以下のようにして、リチウムイオン二次電池の正極を作製してもよい。
正極合剤ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレス等により加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
(負極)
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合剤を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、非水系電解液、固体電解質などが用いられる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO等、およびそれらの複合塩を用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
固体電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質などが用いられる。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、酸素(O)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO-LiPO、LiSiO-LiVO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiO-B-ZnO、Li1+XAlTi2-X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2-X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3-XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等が挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、硫黄(S)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiS-B、LiPO-LiS-SiS、LiPO-LiS-SiS、LiPO-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P等が挙げられる。
なお、無機固体電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN-LiI-LiOH等を用いてもよい。
有機固体電解質としては、イオン電導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。なお、固体電解質を用いる場合は、電解質と正極活物質の接触を確保するため、正極材中にも固体電解質を混合させてもよい。
(電池の形状、構成)
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解質で構成される本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
また、固体電解質を用いる場合には、正極および負極を、固体電解質を介して積層させて、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
(特性)
本実施形態に係る二次電池は、上記の正極活物質を用いて製造され、高い電池容量を有することができる。好ましい実施形態で得られた正極活物質を用いた二次電池は、例えば、図3に示されるような、2032型のコイン型電池CBAの正極に用いた場合、190mAh/g以上の高い初期放電容量が得られる。また、このコイン型電池CBAは、初期充放電効率を90%以上とすることができる。
なお、初期充放電効率は、実施例で使用されるコイン型電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を測定した値である。
好ましい実施形態で得られた正極活物質は、例えば、コイン型電池CBAを用いて測定した正極抵抗が4Ω以下であってもよく、3Ω以下であってもよい。正極抵抗の測定は、実施例に記載の方法で行った。
なお、コイン型電池CBAを用いた正極抵抗の測定方法を例示すれば、次のようになる。電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うと、溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、および正極抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図が図4のように得られる。電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極NE、正極PEの並列回路を直列に接続した等価回路で表される。この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。正極抵抗は、得られるナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。したがって、正極PEについて、交流インピーダンス測定を行い、得られたナイキスト線図に対し等価回路でフィッティング計算することで、正極抵抗を見積もることができる。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。本実施形態により得られた正極活物質およびこの正極活物質を用いた正極合剤ペースト、二次電池について、その性能を測定した。なお、本実施例では、複合水酸化物製造、正極活物質および二次電池の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
(水酸化リチウム量)
得られた正極活物質2gを125mlの純水と混合し1分間撹拌して分散させた後、10質量%塩化バリウム溶液を5ml加え、1.0mol/リットルの塩酸を用いて中和滴定を行い、第一中和点までの塩酸量から純水に溶出した水酸化リチウム量を算出した。
(水分率)
気化温度300℃の条件においてカールフィッシャー水分計で測定した。
(正極合剤ペーストの粘度安定性)
正極活物質25.0gと、導電剤のカーボン粉1.5gと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)2.9gとを遊星運動混練機により混合し正極合剤ペーストを得た。得られたペーストを大気雰囲気中で76時間保管して、保管前後の粘度比(76時間保管後のペースト粘度/作製直後のペースト粘度)を評価した。粘度は、振動式粘度計(セコニック社製VM10A)にて測定した。
(電池の製造および評価方法)
得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質の評価は、以下のように図3に示す2032型のコイン型電池CBAを作製し、充放電容量を測定することで行なった。リチウムイオン二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して正極PE(評価用電極)を作製した。その作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極PEを用いてコイン型電池CBAを、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
負極NEには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた体積平均粒径Mv20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用い、電解液には、1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータSEには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池CBAは、ガスケットGAとウェーブワッシャーWWを有し、正極缶PCと負極缶NCとでコイン状の電池に組み立てられた。
製造したコイン型電池CBAを用いて初期放電容量、正極抵抗を、以下のように評価した。
(初期放電容量)
初期放電容量は、コイン型電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
(初期充放電効率)
初期充放電効率は、前項記載の方法で初期充放電容量を測定し、初期放電容量/初期充電容量×100として算出した。
(正極抵抗)
また、正極抵抗は、コイン型電池CBAを充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定すると、図4に示すナイキストプロットが得られる。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算を行い、正極抵抗の値を算出した。
[実施例1]
(正極活物質の製造)
Niを主成分とする水酸化物の粉末と水酸化リチウムとを混合した後、焼成してリチウム金属複合酸化物の粉末を得た。得られたリチウム金属複合酸化物は、Li1.025Ni0.82Co0.15Al0.03で表され、体積平均粒径Mvが6.2μm、〔(d90-d10)/体積平均粒径Mv〕が0.74であった。得られたリチウム金属複合酸化物を母材として用いた。
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に酸化ニオブゾル(多木化学株式会社製、バイラールNb-G6000)を混合した。酸化ニオブゾルは、リチウム金属複合酸化物の粉末中に含有されるNi、CoおよびAlの合計(Li以外の金属元素の合計)に対する酸化ニオブゾル中のニオブ量で0.5mol%となる量を混合した。その後、水をリチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に対して10質量%添加して、さらに混合した。
その後、得られた混合物を、真空雰囲気中において、室温から100℃まで昇温して12時間、熱処理(第1の熱処理)した後、さらに190℃まで昇温して10時間、熱処理(第2の熱処理)して、正極活物質を得た。
得られた正極活物質をXRD測定したところ、明確なニオブ化合物のピークが得られなかった。よって、正極活物質の表面に存在するニオブ化合物は、非晶質状態であると考えられる。得られた正極活物質の水酸化リチウム量、水分率及び正極合剤ペーストの粘度安定性の評価結果を表1に示す。
また、得られた正極活物質を使用して作製された正極を有するコイン型電池の電池特性を評価した。コイン型電池の初期放電容量、初期充放電効率、及び正極抵抗の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、酸化ニオブゾルをニオブ量で1.0mol%混合した以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、酸化ニオブゾルをニオブ量で1.5mol%混合した以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、酸化ニオブゾルをニオブ量で1.5mol%混合し、第2の熱処理工程後に、300℃で5時間、熱処理(第3の熱処理)した以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、酸化ニオブゾルをニオブ量で2.0mol%混合した以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例6]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)として、Niを主成分とする水酸化物の粉末と水酸化リチウムとを混合した後焼成して得た、組成がLi1.025Ni0.82Mn0.15Al0.03で表され、体積平均粒径Mvが6.5μm、〔(d90-d10)/体積平均粒径Mv〕が0.75であったリチウム金属複合酸化物を用いた以外は実施例2と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例7]
第3の熱処理を、100℃で5時間熱処理とした以外は、実施例4と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例8]
第3の熱処理を、500℃で5時間熱処理とした以外は、実施例4と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、酸化ニオブゾルを混合しなかった以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、酸化ニオブゾルをニオブ量で0.3mol%混合とした以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、市販の酸化ニオブ(V)粉末(フジフィルム和光純薬社製)をボールミルで平均粒径1.0μmに粉砕したものを、ニオブ量で1.0mol%混合した以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例4]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、別途調製したLi-Nb化合物を、ニオブ量で1.0mol%混合した以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。Li-Nb化合物は、水酸化リチウム(フジフィルム和光純薬社製)5.0gと酸化ニオブ(V)粉末(同上)27.75gを混合し酸素雰囲気の電気炉中1000℃で10時間焼成した後、ボールミルで平均粒径1μmに粉砕したものを用いた。
[比較例5]
リチウム金属複合酸化物の粉末(母材)に、酸化ニオブゾルを混合した後、水を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0007310155000001
(評価)
実施例の正極活物質を用いた二次電池は、初期放電容量、正極抵抗のいずれも良好な結果が得られた。また、正極合剤ペーストの粘度比は、2以下であり、正極合剤ペーストの粘度が安定していることが確認された。また、実施例の二次電池は、初期充放電効率が高いことが確認された。さらに、第3の熱処理工程を行って得られた実施例4、8の正極活物質では、これを用いた二次電池は、第3の熱処理工程を行わなかった以外は、同様の条件で得られた実施例3の正極活物質と比較して、初期放電容量がより高く、正極抵抗が低減した。これは、第3の熱処理により、母材の表面に形成されたLiNb化合物のリチウムイオン伝導度が向上したためと考えられる。また、第2の熱処理の温度よりも高い温度で第3の熱処理をした実施例4、8の正極活物質では、第2の熱処理の温度よりも低い温度で熱処理をした実施例7の正極活物質よりも、初期放電容量が高かった。
一方、比較例1の正極活物質は、ニオブを添加していないため、水酸化リチウム量が正極活物質に対して0.150質量%を超えていた。比較例1の正極活物質を用いた正極合剤ペーストは、粘度の上昇が大きかった。比較例2の正極活物質は、ニオブの添加量が少ないため、滴定による正極活物質から溶出する水酸化リチウム量が0.15質量%を超えており、正極合剤ペーストのゲル化を抑制できず、粘度の上昇が大きかった。さらに比較例3、4、5の正極活物質は良好なLiNb化合物が十分に形成されていないため、正極活物質から溶出する水酸化リチウム量が多く、ペースト粘度比が高いとともに、正極抵抗も大きかった。
以上の結果から、本実施形態に係る正極活物質は、高い初期放電容量、及び、高い初期充放電効率と、電極作製時の正極合剤ペーストのゲル化抑制と、を両立できることが示された。
1、1a、1b…一次粒子
2…二次粒子
3…LiNb化合物
10…リチウム金属複合酸化物
20…正極活物質
CBA…コイン型電池
PE…正極(評価用電極)
NE…負極
SE…セパレータ
GA…ガスケット
WW…ウェーブワッシャー
PC…正極缶
NC…負極缶

Claims (15)

  1. リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、任意にコバルト(Co)、マンガン(Mn)及び元素Mと、を含むリチウム金属複合酸化物と、リチウム及びニオブ(Nb)を含む化合物と、を含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
    前記正極活物質に含まれるニオブ以外の各元素の物質量の比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=s:(1-x-y-z):x:y:z(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、0.95<s<1.30、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、W、ZrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、
    前記リチウム金属複合酸化物は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子を含み、前記一次粒子の表面の少なくとも一部が前記リチウム及びニオブを含む化合物で被覆され、
    中和滴定法によって測定される、前記正極活物質を水に分散させたときに溶出する水酸化リチウム量が、前記正極活物質全体に対して、0.003質量%以上0.15質量%以下であ
    前記リチウム及びニオブを含む化合物に含まれるニオブの量は、正極活物質中のNi、Co、MnおよびMの合計に対して0.5mol%以上2mol%以下である、
    リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 前記リチウム及びニオブを含む化合物は、少なくともニオブ酸リチウムを含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 前記ニオブ酸リチウムは、LiNbO、LiNbO、LiNb及びLiNbのうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 前記リチウム及びニオブを含む化合物は、非晶質である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  5. リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、任意にコバルト(Co)、マンガン(Mn)及び元素Mと、を含むリチウム金属複合酸化物の粉末と、リチウムを含まず、リチウムと反応可能なニオブ化合物と、を混合して混合物を得ることと、
    前記混合物を熱処理することを備え、
    前記リチウム金属複合酸化物の粉末は、各元素の物質量の比(モル比)が、Li:Ni:Co:Mn:M=s:(1-x-y-z):x:y:z(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、0.95<s<1.30、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、W、ZrおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される層状の結晶構造を有し、かつ、一次粒子および一次粒子が凝集して形成された二次粒子を含み、
    前記ニオブ化合物の混合量は、中和滴定法によって測定される、前記正極活物質を水に分散させたときに溶出する水酸化リチウム量が、正極活物質全体に対して、0.003質量%以上0.15質量%以下となる量と
    前記ニオブ化合物に含まれるニオブの量は、前記リチウム金属複合酸化物の粉末中のNi、Co、MnおよびMの合計量に対して0.5mol%以上2.0mol%以下である、
    リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記混合物を得た後、前記熱処理をする前に、前記ニオブ化合物を溶解可能な溶媒を、前記リチウム金属複合酸化物の粉末に対して1質量%以上40質量%以下の範囲で混合すること、を備える、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 前記熱処理は、熱処理温度が80℃以上450℃以下である、請求項または請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 前記熱処理は、熱処理温度が80℃以上300℃以下である第1の熱処理と、前記第1の熱処理の温度よりも高い温度で熱処理する第2の熱処理とを含む、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 前記熱処理は、前記第2の熱処理の温度よりも高い温度で熱処理する第3の熱処理を含む、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  10. 前記熱処理における最高温度が300℃以上450℃以下である、請求項~請求項のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  11. 前記正極活物質は、前記一次粒子の表面が、リチウム及びニオブを含む化合物で被覆される、請求項~請求項10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  12. 前記ニオブ化合物は、酸化ニオブの粉末、及び、酸化ニオブを含むゾルのうち少なくとも一方を含む、請求項~請求項11のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  13. 前記ニオブ化合物は、二次粒子径が20nm以下である、請求項~請求項12のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  14. 請求項1~請求項のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用正極合剤ペースト。
  15. 請求項1~請求項のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン二次電池。
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