JP7179494B2 - カートリッジ - Google Patents
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Description
本実施形態に係るカートリッジは、試料の分析に用いることができるカートリッジである。ここでいう試料とは、検体そのものであってもよいし、検体に対して精製や濃縮、分析対象物の化学修飾や断片化など、分析のための前処理や調整を施したものであってもよい。分析対象物は、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素などが挙げられ、これらが共存していてもよい。分析対象物は、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素の少なくともいずれかが共有結合等で結合または付着した分子、マイクロ粒子、ナノ粒子、さらにはウイルス、細菌、細胞などであってもよい。分析方法の一例としては、デジタルPCR法が知られている。デジタルPCR法では、分析の対象とする核酸を含む試料を、核酸を増幅するための増幅試薬、核酸を検出するための蛍光試薬などと混合して希釈し、物理的に独立した多数の反応場に分割する。エマルジョンに含まれるそれぞれの液滴はデジタルPCR法において反応場として用いられることがある。そして、多数の反応場(液滴)のそれぞれにおいて独立にPCRが行われ、核酸が増幅される。増幅後に蛍光試薬により核酸を検出し、当該蛍光試薬のシグナルが検出された反応場の数(陽性反応場数)と、増幅後にシグナルが検出されなかった反応場の数(陰性反応場数)とに基づいて、試料中の核酸の濃度を推定することができる。
ステップS2000において、図3に示す油相注入手段306によって第2の液体(油相)が注入されカートリッジに充填される。第2の液体(油相)は、油と界面活性剤とを含む。油相は水相と相溶せず分離する溶剤から成り、典型的には脂肪族炭化水素やシリコーンオイル等のオイルから成る。
ステップS2010において、水相注入手段305によって第1の液体(水相)が注入され、第1の部材101に充填される。第1の液体(水相)は反応液で構成され、反応液は水と試料と増幅試薬と蛍光試薬とを含有する。なお、反応液の構成はこれに限定されない。また、水相注入手段305には、シリンジ等の所定の容量の液体を吐出する手段や、流路内の空気を加圧または減圧するポンプやポンプとバルブの組み合わせなどを用いることができる。すなわち、水相注入手段305は、カートリッジ内に水相を注入できる機能を有する任意の手段により実現される。
ステップS2020において、駆動手段が第1の部材101からカートリッジ100内を加圧する、もしくは第2の部材106からカートリッジ100内を減圧することにより、カートリッジ100内に充填された第2の液体(油相)を駆動させる。または、両方を行うことによりカートリッジ100内に充填された第2の液体(油相)を駆動させる。
ステップS2030において、傾動手段(不図示)がカートリッジ100を傾動させることで、連続相となる第2の液体(油相)を駆動し、ステップS2020で生成した液滴を保持部103に保持する。傾動手段には、例えばチルトステージなどを用いることができる。なお、チルトステージはカートリッジ100を傾動させるための手段の一例であり、角度を傾けることで連続相を駆動できる手段であればこれに限定されない。さらに、連続相を駆動させるために傾ける角度も限定されない。また、本実施例ではステップS2020で液滴を生成した後にカートリッジ100を傾動させたが、ステップS2000の段階で既にカートリッジ100を傾動させておいてもよい。すなわち、本ステップS2030で行う傾動手段によるカートリッジ100の傾動は、S2040以前のステップであればいつ行われてもよい。
ステップS2040において、温度調整手段(不図示)によりステップS2030で保持部103に保持された液滴に含まれる核酸試料に対するPCR処理が行われる。具体的には、温度調整手段は、ペルチェ素子とコントローラを含み、カートリッジ100の保持部103に保持された液滴内で核酸増幅反応を発生させている。温度調整手段には、例えばサーマルサイクラーを用いることができる。核酸の増幅反応としては、液滴(反応場)をサーマルサイクルに供することで反応を進行させるPCR法やLCR(Ligase Chain Reaction)法を用いることができる。また、液滴(反応場)をサーマルサイクルに供さずに温度調整することで反応を進行させるSDA(Strand Displacement Amplification)法、ICAN(Isothermal andChimeric primer-initiated Amplificationof Nucleic acids)法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法なども用いることができる。なお、温度調整手段として用いられる装置や核酸増幅の方法は上記に限定されない。また、サーマルサイクルをかける際に、液滴損失の原因となる気泡を液滴から遠ざけやすくするために保持部103のZ軸方向の高さは高い方が好ましい。なお、保持部103のZ軸方向の高さは高いほど気泡が逃げやすいが、カートリッジの熱容量が大きくなり長い処理時間が必要となるため、0.2~0.8mmの寸法に収めることが望ましい。
ステップS2050において、傾動手段がカートリッジ100を傾動させることにより連続相となる第2の液体(油相)を駆動し、内部の核酸を増幅させた液滴を保持部103から保持部103とはZ軸方向に異なる高さを有する液滴充填領域104へと駆動する。なお、液滴充填領域104は保持部103よりもZ軸方向の高さが低いことが望ましい。これは、液滴充填領域104は保持部103と同じ高さにしてしまうと液滴観察時に分析結果の信頼度劣化の原因となる液滴の重なりが生じやすくなってしまうためである。
ステップS2060において、カートリッジ100は,観察ステージに移送され蛍光などの光が計測される。すなわち、S2040において増幅された試料中の分析対象物の分析が行われる。蛍光は照明手段(不図示)と観察手段(不図示)とで計測され、照明手段は、所定の波長の光を液滴充填領域104に充填された複数の液滴に照射する。照明手段としては、LEDライト、ハロゲンランプおよび蛍光灯などを用いることができる。観察手段は、光が照射された複数の液滴のそれぞれから発せられたシグナルを検出し、液滴内増幅産物の有無を観察する。また、液滴径の測定を行う。観察手段としては、フォトダイオードやラインセンサ、イメージセンサ(撮像素子)等を用いることができ、中でも、多数の液滴について一括してシグナルの検出ができる点で、イメージセンサを用いることが好ましい。イメージセンサとしては、CCD(電荷結合素子)、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサを用いることができる。観察手段は、イメージセンサを備えたデジタルカメラであってもよい。
ステップS2070において、S2060で行われた観察の結果から試料の全体積に対する増幅産物を含まない液滴の体積の割合からプロセッサ(不図示)が試料内の濃度推定を行う。
分析対象物の濃度の計算は、従来行われているデジタル分析における濃度計算方法を採用して実施することができる。温度調整手段における反応の前に、それぞれの反応場が含む分析対象物が1個または0個のいずれかであるとみなせる場合について説明する。この場合は、分析対象物が検出された反応場(陽性反応場)の数xを、観察手段が分析対象物の検出の対象とした体積Vsの反応液中に含まれていた分析対象物の数とみなすことができる。よって、下記式(1)により、反応液中の分析対象物の濃度λrを計算することができる。なお、観察手段が分析対象物の検出の対象とした体積Vsは、観察手段から取得される反応場のサイズに関する情報に基づいて算出することができる。
λr=x/Vs・・・式(1)
P(n,C)=(Cn-e-C)/n! ・・・式(2)
P(0,C)=e-C ・・・式(3)
C=-ln(F0) ・・・式(4)
λr=C/v ・・・式(5)
本実施形態に係る図4に示すカートリッジ400は、実施形態1と同様に試料の分析に用いることができるカートリッジ400である。本実施形態に係るカートリッジ400は、実施形態1と比較し、保持部103が第1の流路403と液滴保持領域404と第2の流路405とがU字型に連通した流路形状で形成されている。これにより、PCR工程において液滴損失の原因となる気泡を、液滴から遠ざけやすくなり液滴の損失をより防ぐことができる。
ステップS5030において、傾動手段(不図示)がカートリッジ400を傾動させることで、連続相となる第2の液体(油相)を駆動させる。そして、連続相の駆動に伴い生成部402により生成された液滴は、第1の流路403を通り液滴保持領域404に保持される。これは、分散相の比重を連続相の比重よりも高く設定することにより、カートリッジ400を傾斜させることで生成した液滴が図3に示すように傾けた側に滞留するためである。傾動手段には、例えばチルトステージなどを用いることができる。なお、チルトステージはカートリッジ400を傾動させるための手段の一例であり、角度を傾けることで連続相を駆動できる手段であればこれに限定されない。さらに、連続相を駆動させるために傾ける角度も限定されない。また、本実施例ではステップS5020で液滴を生成した後にカートリッジ400を傾動させたが、ステップS4000の段階で既にカートリッジ400を傾動させておいてもよい。すなわち、本ステップS5030で行う傾動手段によるカートリッジ400の傾動は、S5040以前のステップであればいつ行われてもよい。
ステップS5050において、PCR処理を施した液滴を液滴充填領域407に充填する。具体的には傾動手段がカートリッジ400を傾動させることで、連続相となる第2の液体(油相)を駆動させる。そして、連続相の駆動に伴い液滴保持領域404でPCR処理を施された液滴は、第2の流路405を通り液滴充填領域407へと充填される。
102 生成部
103 保持部
104 液滴充填領域
105 液滴堰き止め部
106 第2の部材
Claims (8)
- 核酸を含む試料の分析に用いられるカートリッジであって、
前記試料を含む液滴を生成する生成部と、
前記核酸を増幅するために前記液滴を保持する保持部と、
増幅された前記核酸を含む前記液滴が充填され、前記液滴の観察が行われる液滴充填領域と、を有し、
前記カートリッジの底面に対して直交する方向において、
前記保持部における前記カートリッジの底面から上面までの高さは、
前記液滴充填領域における前記カートリッジの底面から上面までの高さよりも高いことを特徴とするカートリッジ。 - 前記保持部は、第1の流路と液滴保持領域と前記液滴充填領域に連通している第2の流路とを含み、前記第1の流路と前記液滴保持領域と前記第2の流路とはU字型に連通していることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
- 前記底面に対して直交する方向において、前記液滴保持領域における前記カートリッジの底面から上面までの高さは、前記液滴充填領域における前記カートリッジの底面から上面までの高さよりも高いことを特徴とする請求項2に記載のカートリッジ。
- 前記底面に対して直交する方向において、前記第2の流路における前記カートリッジの底面から上面までの高さは、前記液滴保持領域における前記カートリッジの底面から上面までの高さよりも高いことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のカートリッジ。
- 前記底面に対して直交する方向において、前記第1の流路における前記カートリッジの底面から上面までの高さは、前記液滴保持領域における前記カートリッジの底面から上面までの高さよりも高いことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のカートリッジ。
- 前記第1の流路の幅は前記第2の流路の幅以上の長さであることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のカートリッジ。
- 前記保持部は、前記液滴に熱を付加する際に前記液滴を保持することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカートリッジ。
- 前記カートリッジはデジタルPCR法による分析に用いられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のカートリッジ。
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